(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】SCR触媒を有するファブリックフィルターバッグを用いて煙道ガスから有害化合物を除去するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/90 20060101AFI20220421BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20220421BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20220421BHJP
B01D 46/24 20060101ALI20220421BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20220421BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20220421BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20220421BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
B01D53/90 ZAB
B01D53/86 222
B01D39/20 D
B01D46/24 Z
B01J32/00
B01J35/02 F
F23J15/00 A
F01N3/08 B
(21)【出願番号】P 2019558391
(86)(22)【出願日】2018-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2018058747
(87)【国際公開番号】W WO2018197176
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-01
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエルソン・ペル・エル・ティー
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006813(JP,A)
【文献】特開2013-017934(JP,A)
【文献】特表2008-542609(JP,A)
【文献】特開平08-281061(JP,A)
【文献】特開2016-070244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73,53/86-53/90,53/94,53/96
F01N 3/00,3/02,3/04-3/38,9/00-11/00
B01J 21/00-38/74
F23J 13/00-99/00
B01D 39/00-41/04
B01D 46/00-46/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼設備の煙道ガスから窒素酸化物を除去する方法であって、
煙道ガスに添加されたアンモニアそれ自体またはその前駆体の形態のいずれかの存在下で、煙道ガスを窒素酸化物の選択的還元用触媒
を有する1つもしくは複数のファブリックフィルターバッグに通すステップ;
1つもしくは複数のファブリックフィルターバッグの上流で、二酸化窒素を含有する排ガスを煙道ガスに注入するステップ;
酸化触媒の存在下で、アンモニアまたはその前駆体を酸素含有雰囲気下で触媒酸化して、一酸化窒素および酸素を含有する排ガスにするステップ、
一酸化窒素および酸素を含有する排ガスを周囲温度まで冷却し、冷却された排ガス中の一酸化窒素を酸化して、二酸化窒素を含有する排ガスにするステップ
により、二酸化窒素を含有する排ガスを得るステップ
を含む、方法。
【請求項2】
酸素含有雰囲気が煙道ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸素
含有雰囲気が周囲空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
二酸化窒素含有排ガスが、窒素酸化物の選択的還元用触媒の入口で、窒素酸化物の45~55体積%が二酸化窒素になるような量で煙道ガスに注入される、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
冷却された排ガス中の一酸化窒素の二酸化窒素含有排ガスへの酸化が、酸化触媒の存在下で行われる、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載の方法における使用のためのシステムであって、
煙道ガスダクト内に、窒素酸化物の選択的還元用触媒
を有する1つもしくは複数のファブリックフィルターバッグを有するフィルターバッグハウス;
1つもしくは複数のファブリックフィルターバッグまたはフィルターバッグハウスの上流に、アンモニアまたは尿素溶液の煙道ガスダクトへの注入のための注入手段;
1つもしくは複数のファブリックフィルターバッグまたはフィルターバッグハウスの上流に、二酸化窒素含有排ガスの注入のための注入手段;ならびに
煙道ガスダクトの外側に、
アンモニア酸化触媒ユニット、および
その出口端で二酸化窒素含有排ガスの注入のための注入手段に接続された、アンモニア酸化触媒
ユニットから回収された一酸化窒素含有排ガスを冷却および酸化して二酸化窒素含有排ガスにするための手段
を含む、システム。
【請求項7】
一酸化窒素含有排ガスを冷却および酸化するための手段が、熱交換
器である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
一酸化窒素含有排ガスを冷却および酸化するための手段が、渦巻き
管である、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
一酸化窒素含有排ガスを冷却および酸化するための手段が、酸化触媒を備えている、請求項6~8のいずれか一つに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフガスおよび煙道ガス(燃料排ガス)から排出される粒子状物質および窒素酸化物(NOx)を還元するための方法およびシステムに関する。特に、本発明の方法およびシステムは、低いガス温度でNOxの還元の改善をもたらす。
【背景技術】
【0002】
様々な燃焼設備、例えば、固体または液体火力発電所(solid or liquid fired power plants)のボイラー、ガス石油火力発電機またはセメントキルン、バイオ燃料燃焼プラント、およびごみ焼却場からの煙道ガスは、多数の環境上問題のある、またはさらには毒性のある化合物を含有する。これらは、粒子状物質およびNOxを含む。
【0003】
粒子フィルターおよび煙道ガスの触媒浄化の使用は、粒子状物質およびNOxの量を低減するので、一般に環境に有益である。ほとんどの地域において、煙道ガス中のNOxの還元が法規で必要とされている。
【0004】
ファブリックフィルターバッグは、多くの業界において、煙道ガスおよびプロセスガスからの粒子状物質の除去に広く用いられている。これらは、最も効率的な種類の集塵機である。
【0005】
上記のように、オフガスおよび煙道ガスは、複数の汚染物質、とりわけ窒素酸化物を各国の法規に応じて除去または低下されるべき濃度で含有する場合が非常に多い。いくつかの従来の方法がこの目的のために利用できる。いかなる場合でも、ファブリックフィルターバッグの上流/下流に追加のユニットを設置し、操作する必要がある。
【0006】
参照によりその全体が本明細書に含まれる、同時継続中の米国仮特許出願第2017/0080387号(特許文献1)の譲渡人により、SCR活性触媒で触媒されたフィルターバッグが開示されている。オフガスまたは煙道ガスがこれらのフィルターバッグを通ると、フィルターバッグにより、濃縮NOxおよび粒子状物質が還元または除去される。
【0007】
フィルターバッグを構成する繊維の組成により、これらは、250℃未満の温度で操作されねばならない。
【0008】
NOxの選択的触媒還元(SCR)において、酸化窒素化合物は、触媒上でアンモニアなどの還元剤と反応することにより無害な窒素と水に選択的に還元される。
【0009】
フィルターバッグの組成により必要とされる低いガス温度は、SCRによるNOxの除去において問題に直面する。
【0010】
公知のSCR触媒の問題は、250℃未満のガス温度で効率が相対的に低いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国仮特許出願第2017/0080387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、煙道ガスダクトの外側でNO2を生成し、調製されたNO2をいわゆる「Fast」SCR反応(fast SCR reaction)を促進する量で煙道ガスに注入することに基づく。第1のステップでの貴金属含有触媒上でのNH3のNOへの酸化、その後、第2のステップでのNOのNO2への酸化により、NO2をNH3から生成できる。
【0013】
「Fast」SCR反応:2NH3+NO+NO2→2N2+3H2Oにより、煙道ガス中等モル量のNOとNO2で、SCR反応は著しく促進され得、低温活性は著しく上昇し得ることが公知である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、第1の態様において、本発明は、燃焼設備の煙道ガスから窒素酸化物を除去する方法であって、
煙道ガスに添加されたアンモニアそれ自体またはその前駆体の形態のいずれかの存在下で、煙道ガスを窒素酸化物の選択的還元用触媒で触媒された1つもしくは複数のファブリックフィルターバッグに通すステップ;
1つもしくは複数のファブリックフィルターバッグの上流で、二酸化窒素を含有する排ガスを煙道ガスに注入するステップ;
酸化触媒の存在下で、アンモニアまたはその前駆体を酸素含有雰囲気下で触媒酸化して、一酸化窒素および酸素を含有する排ガスにするステップ、
排ガスを周囲温度まで冷却し、冷却された排ガス中の一酸化窒素を酸化して、二酸化窒素を含有する排ガスにするステップ
により、二酸化窒素を含有する排ガスを得るステップ
を含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
公知の方法およびシステムの問題は、本明細書で上述したように250℃未満の煙道ガス温度でSCR触媒の効率が相対的に低いことである。この問題は、「Fast」SCR反応を促進するために低温でNO2を煙道ガスに注入することを伴う本発明により解決される。この反応は、低温でのSCRの促進に関与する。
【0016】
煙道ガス温度が250℃超のとき、SCR触媒は十分な効率を有し、ガス温度が250℃に到達すると、NO2の煙道ガスへの注入は中断され得る。
【0017】
煙道ガスダクトの外側でのアンモニアのNOへの酸化は、通常、酸素含有雰囲気の存在下で、250~800℃の反応温度で、微量成分として典型的には白金または白金と他の貴金属との合金などの貴金属触媒を有する反応器中で行われる。
【0018】
必要とされる反応温度にするために、酸化反応器は、例えば、通電加熱または誘導加熱により加熱され得る。
【0019】
一実施形態において、酸素含有雰囲気は高温再循環ガス(hot recirculated gas)を含み、これはひいてはさらに、酸化反応器の加熱負荷の一部を担う。
【0020】
平衡反応
【0021】
【化1】
を進めてNO
2を生成するために、NO含有排ガスを周囲温度まで冷却することにより、貴金属含有触媒との接触によるNH
3の酸化により第1のステップにおいてNH
3から生成されたNOをその後酸化して、第1のステップからのNO含有排ガス中のNO
2にする。
【0022】
本明細書で使用する用語「周囲温度」は、本発明の方法およびシステムを使用する燃焼設備の周辺で優勢な任意の温度を意味するものとする。典型的には周囲温度は-20℃~40℃である。
【0023】
NO含有排ガスの冷却および酸化は、ガスの滞留時間が約1分以上であるように定寸されたエージング反応器(aging reactor)中で行われ得る。
【0024】
一実施形態において、酸化反応は、NOのNO2への酸化を促進する触媒の存在下で行われる。これらの触媒は当技術分野で公知であり、TiO2上のPt、SiO2上のPt、ならびにアルミナ上の活性炭またはPtおよび/もしくはPdを含む。
【0025】
上述のように、所望されるFast SCR反応には等量のNOとNO2が必要とされる。したがって、250℃未満の温度で煙道ガスに注入されるNO2の量は、SCR触媒ユニットの入口で、煙道ガス中の窒素酸化物含有量の45~55体積%がNO2になるように制御される。
【0026】
別の態様において、本発明は、本発明による方法における使用のためのシステムを提供する。
【0027】
システムは、煙道ガスダクト内に、窒素酸化物の選択的還元用触媒で触媒された1つもしくは複数のファブリックフィルターバッグを有するフィルターバッグハウス;
1つもしくは複数のファブリックフィルターバッグまたはフィルターバッグハウスの上流に、アンモニアまたは尿素溶液の煙道ガスダクトへの注入のための注入手段;
1つもしくは複数のファブリックフィルターバッグまたはフィルターバッグハウスの上流に、二酸化窒素含有排ガスの注入のための注入手段;ならびに
煙道ガスダクトの外側に、
アンモニア酸化触媒ユニット、および
その出口端で二酸化窒素含有排ガスの注入のための注入手段に接続された、アンモニア酸化触媒から回収された一酸化窒素含有排ガスを冷却および酸化して二酸化窒素含有排ガスにするための手段
を含む。
【0028】
上述のように、NOのNO2への酸化反応には、少なくとも1分間のNO含有ガスの滞留時間が必要とされる。典型的には1~2分である。
【0029】
これは、ガス冷式または水冷式のいずれかの熱交換器において、または成形する場合、所望の滞留時間でガスが管を通るような長さを有する渦巻き管のような冷却および酸化手段において実現され得る。
【0030】
別の実施形態において、一酸化窒素含有排ガスを冷却および酸化する手段は、NOのNO2への酸化を促進する酸化触媒を備えている。