(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】エネルギー伝送網を試験すること及びエネルギー伝送ケーブルの障害箇所を特定すること
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20220421BHJP
G01R 31/08 20200101ALI20220421BHJP
【FI】
H04L12/28 400
G01R31/08
(21)【出願番号】P 2019566737
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2018063556
(87)【国際公開番号】W WO2018219750
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-01-27
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】519425316
【氏名又は名称】オミクロン・エナジー・ソリューションズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OMICRON ENERGY SOLUTIONS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】コベット,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル,ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】キューリング,ダーヴィト
(72)【発明者】
【氏名】メラー,ヤン
【審査官】平井 嗣人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-169775(JP,A)
【文献】特開2008-141866(JP,A)
【文献】特開平06-102308(JP,A)
【文献】特開2000-258487(JP,A)
【文献】特開平08-062277(JP,A)
【文献】特開2013-106329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/08-31/20
H04L 7/00
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電網(1)の試験方法であって、以下の工程:
1つの測定点(E
1~E
6)で事象を検出すること、
前記測定点(E
1~E
6)からの前記事象に関する情報項目を制御手段(E
0)へ送信すること、
前記事象に関する前記情報項目が前記制御手段(E
0)によって検出される時刻を検出すること、
前記測定点(E
1~E
6)からの前記情報項目の前記制御手段(E
0)への送信によって生じる時間遅延を決定すること、
前記時間遅延によって前記時刻を補正すること、及び
前記事象と前記補正された時刻に応じて前記送電網(1)を試験すること、
を包含
し、
前記事象に関する情報項目が、前記測定点から、少なくとも1つの別の測定点を介して、前記制御手段(E
0
)へ送信されること、
前記測定点、少なくとも1つの別の測定点、及び前記制御手段(E
0
)は、前記情報項目が送信される複数のライン(5)を介して互いに接続されていること、及び
前記時間遅延を決定することは、前記各測定点で前記情報項目を検出し且つ前記情報項目を送信する際に、前記ライン(5)の伝搬時間及び前記少なくとも1つの別の測定点の処理時間を決定すること、
前記測定点と、前記少なくとも1つの別の測定点と、及び前記制御手段(E
0
)とが、前記複数のライン(5)によってデイジーチェーン技術で接続されている複数のユニットに対応していること、
時間遅延Δtは、次式;
【数5】
で計算される、
ここで、RXBWjは、特定のデータパケットがj番目のユニットで逆方向において受信される時刻に対応し、
RXFWjは、特定のデータパケットがj番目のユニットで順方向において受信される時刻に対応し、
TXBWjは、特定のデータパケットがj番目のユニットで逆方向に送信される時刻に対応し、
TXFWjは、特定のデータパケットがj番目のユニットで順方向に送信される時刻に対応し、
xは、前記少なくとも1つの別の測定点の数に対応し、
前記制御手段(E
0
)は、第0番目のユニットに対応し、前記測定点は第「x+1」番目のユニット(E
1
~E
6
)に対応する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法は、送電ケーブル(1)の障害箇所(6)の位置を特定する方法であって、以下の工程:
前記送電ケーブル(1)において特定の部分放電パルスが検出される第1の時刻を、前記送電ケーブル(1)の一方の終端部に配置された第1の測定点(E
1)で検出すること、
前記送電ケーブル(1)において前記特定の部分放電パルスが検出される第2の時刻を、前記送電ケーブル(1)の他方の終端部に配置された第2の測定点(E
6)で検出すること、
前記特定の部分放電パルスが生成された、前記送電ケーブル(1)に沿う障害箇所(6)を、前記第1及び第2の時刻に応じて決定すること、
第3及び第4の測定点が、前記障害箇所(6)が存在し且つそれ以上の測定点が配置されていない前記送電ケーブル(1)の区間の範囲を定めるように、前記送電ケーブルに配置された測定点(E
1~E
6)から前記第3及び第4の測定点を決定すること、
別の特定の部分放電パルスが前記送電ケーブル(1)における前記第3の測定点で検出される第3の時刻を検出すること、
前記別の特定の部分放電パルスが前記第4の測定点で検出される第4の時刻を検出すること、
前記決定された障害箇所(6)を、前記第3及び第4の時刻に応じて補正すること、
を包含する、
請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記障害箇所(6)が、次式
【数4】
ここで、t
3は前記第3の時刻に対応し、t
4は前記第4の時刻に、v
PDは前記部分放電パルスの前記送電ケーブル(1)上の伝搬速度に、そしてlは前記区間の長さに対応する、
を用いて、前記第3の測定点からの距離l
fとして決定されることを特徴とする、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記別の特定の部分放電パルスが前記特定の部分放電パルスに対応し、その結果、夫々の場合において、同一の部分放電パルスが、前記第1、第2、第3、及び第4の時刻
に夫々の前記測定点で検出されることを特徴とする、請求項
2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の時刻、前記第2の時刻、前記第3の時刻、及び前記第4の時刻は、前記特定の部分放電パルス又は前記別の特定の部分放電パルスに関する情報項目が、制御手段(E
0)によって検出され
る時刻に、夫々対応することを特徴とし、及び
本方法が、さらに、
前記各測定点(E
1~E
6)から前記制御手段(E
0)への夫々の情報項目の送信によって生成された夫々の時間遅延を決定すること、及び
夫々の前記時間遅延によって、夫々の前記時刻を補正すること、
を包含することを特徴とする、請求項
2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
送電網を試験するためのシステム(1)であって、
本システムは、制御手段(E
0)と複数の測定ユニット(E
1~E
6)を備え、
前記送電網(1)における夫々の測定点(2;4)に接続されている夫々の測定ユニット(E
1~E
6)は、夫々の測定点(2;4)で事象を検出するように、且つ前記事象に関する情報項目を制御手段(E
0)へ送信するように構成され、
前記制御手段(E
0)は、前記事象に関する情報項目が前記制御手段(E
0)によって検出される時刻を検出するように構成され、
本システムは、前記事象を検出する前記測定ユニットから前記制御手段(E
0)への情報項目の送信によって生じる時間遅延を決定するように構成され、
前記制御手段(E
0)は、前記時間遅延によって前記時刻を補正し、且つ前記事象及び補正された時刻に応じて前記送電網(1)を試験するように構成さ
れ、
前記システムは、請求項1に記載の方法を実行するように構成されている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
前記システムは、
送電ケーブル(1)の障害箇所(6)を特定するシステムを包含し、
第1の測定ユニット(E
1)は、前記送電ケーブル(1)の一方の終端部で第1の測定点(4)に接続され、
第2の測定ユニット(E
6)は、前記送電ケーブル(1)の他方の終端部で第2の測定点(4)に接続され、
前記複数の測定ユニット(E
1~E
6)は、前記送電ケーブル(1)の前記夫々の測定ユニットが接続された測定点(2;4)で部分放電パルスを検出するように構成されており、
前記特定するシステムは更に、
前記第1の測定点(4)で前記第1の測定ユニット(E
1)によって、前記特定の部分放電パルスが検出される第1の時刻を検出するように、
前記第2の測定点(4)で前記第2の測定ユニット(E
6)によって、前記特定の部分放電パルスが検出される第2の時刻を検出するように、
前記制御手段(E
0)によって、前記特定の部分放電パルスが生成された前記送電ケーブル(1)に沿う障害箇所(6)を、前記第1と第2の時刻に応じて決定するように、
前記制御手段(E
0)によって、第3及び第4の測定点
が、前記障害箇所(6)が存在し、且つ前記夫々の測定ユニット(E
1~E
6)の1つに接続されうる別の測定点(2)が存在しない、前記送電ケーブル(1)の区間の範囲を定めるようにする方法で、前記第3の測定点及び第4の測定点を決定するように、
前記第3の測定点に接続されている第3の前記測定ユニットによって、別の特定の部分放電パルスが前記第3の測定点で検出されるところの第3の時刻を検出するように、
前記第4の測定点に接続されている第4の前記測定ユニットによって、別の特定の部分放電パルスが前記第4の測定点で検出されるところの第4の時刻を検出するように、
前記制御手段(E
0)によって、前記決定された障害箇所(6)を、前記第3と第4の時刻に応じて補正するように、
構成されている、
請求項
6に記載の上記システム。
【請求項8】
前記システムは、請求項
2~5のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項
7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1に、障害(例えば絶縁の破壊)について送電網を試験すること、第2に、送電ケーブルの障害箇所を特定することにより、この種の障害を特定することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術によれば、或る事象(イベント;例えば、部分放電の影響)は、送電網の試験、特に障害箇所の特定に関して、送電網の1つの測定点でのみ検出される。この事象が測定点で生じる時刻と、この事象の反射が測定点で生じる時刻とが決定されるので、障害の場所が特定されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、送電網(又はより正確には送電網の送電ケーブル)における障害箇所のこの公知の位置特定は、非常に不正確である。したがって、本発明の目的は、送電ケーブル内の障害箇所の位置特定を、従来技術と比較して改善することである。この問題の解決策が、特定の事象が送電網の特定の測定点で発生する時刻を可能な限り正確に決定することに基づいているので、本発明による目的は更に、時刻を可能な限り正確に決定することを含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の障害箇所の位置特定方法、請求項5に記載の送電網の試験方法、及び請求項8又は10に記載のシステムによって達成される。従属請求項は、本発明の有利な且つ好ましい実施形態を記載している。
【0005】
本発明は、送電ケーブルの障害箇所の位置を特定する方法を提供し、本発明による方法は以下の工程を含む。
【0006】
・上記送電ケーブルにおいて上記障害箇所で生成される特定の部分放電パルスが検出される第1の時刻を、上記送電ケーブルの一方の終端部に配置された第1の測定点で検出すること。従って、上記第1の時刻は、上記障害箇所で発生する特定の部分放電の影響が上記送電ケーブルを介して上記第1の測定点に伝播する時を規定する。この場合の部分放電の影響の伝播は、特に電荷減衰を含み、送電ケーブルに沿って伝播するために時間を必要とする。
【0007】
・上記送電ケーブルで上記特定の部分放電パルスが検出される第2の時刻を、上記送電ケーブルの他方の終端部に配置された第2の測定点で検出すること。上記第1の時刻と同じように、上記第2の時刻は、特定の部分放電パルス又は特定の部分放電の影響が送電ケーブルを介して第2の測定点に伝播したときを規定する。
【0008】
・上記特定の部分放電パルス又は部分放電が生成された、上記送電ケーブルに沿った上記障害箇所を、上記第1及び第2の時刻に応じて決定すること。後でさらに詳しく説明するように、障害箇所は、特に送電ケーブルの長さと送電ケーブル上の放電パルスの伝搬速度に関する知識を用いて、第1の測定点又は第2の測定点からの距離として非常に正確に決定されうる。
【0009】
・第3と第4の測定点を、上記送電ケーブル内又は上記送電ケーブルに沿って配置された測定点の或る量から決定すること。この場合、上記第3と第4の測定点は、これらが、送電ケーブルの区間(この区間では、障害箇所(その位置は先の工程で決定されている)が存在し且つ別の測定点は存在しない)の範囲を定めるように決定される。この工程において、測定点の上記量からの2つの測定点(これら2つの測定点の間に障害箇所が存在し、且つそれらは全ての測定点の中で障害箇所から可能な限り最小の距離にある)は、上記第3と第4の測定点を用いて決定される。
【0010】
・別の特定の部分放電パルスが上記送電ケーブルで上記第3の測定点で検出されるところの第3の時刻を検出すること。
【0011】
・上記別の特定の部分放電パルスが上記第4の測定点で検出されるところの第4の時刻を検出すること。これら最後の2つの工程は、本発明による方法の上記最初の2つの工程に非常に類似しているが、最後の工程においては、複数の測定点(すなわち、第3と第4の測定点)が、本発明による方法の最初の2つの工程におけるよりも障害箇所により近くに配置されている点のみが異なる。
【0012】
・前記第3及び第4の時刻に応じて、前記決定された障害箇所(6)を補正すること。障害箇所の位置は、第3と第4の測定点が第1と第2の測定点よりも障害箇所に近いために、第1と第2の時刻に基づくよりも第3と第4の時刻に基づいてより効果的に決定されうる。この場合、決定された障害箇所の補正は、特に、決定された障害箇所の位置がより正確に決定されることを意味すると理解される。
【0013】
本発明によれば、障害箇所の位置の決定又は障害箇所の位置特定は、図面の送電ケーブルにおける障害箇所の右側及び左側に夫々配置された2つの測定点に基づいて行われるので、障害箇所の特定は、唯1つの測定点と部分放電パルスの反射のみが用いられる従来技術によるよりも実質的により正確に実行されうる。さらに、障害箇所の特定は、いわば2段階で有利に実行される。第1段階においては、2つの測定点(即ち、第3と第4の測定点)を、大まかな位置特定に基づく最適な方法で(即ち、障害箇所に可能な限り近く)選択するように、障害箇所は大まかに位置特定される。次に、障害箇所の位置は、上記最適に選択された2つの測定点に基づく第2段階における非常に正確な方法で有利に決定されうる。
【0014】
この場合、測定点は、特に、ケーブル接続部材部(継ぎ手部)又はケーブル端子部(終端部)を意味すると理解される。
【0015】
この場合、特定の測定点での部分放電の検出と夫々の測定は、特に静的な方法で実行される。この場合、検出と夫々の測定は、相関誤りを回避するために、多数の事象(部分放電)に基づいて繰り返し実行される。
【0016】
特定の部分放電パルスが送電ケーブルにおいて特定の測定点で検出される時刻を検出するには、上記特定の部分放電パルスと別の部分放電パルスとを上記特定の測定点で区別する機能が必要である。言い換えれば、本発明は、上記障害箇所の位置を時間ベースで特定することを可能にするために、上記障害箇所での同じ部分放電の影響が第1(第3)及び第2(第4)の測定点で検出されることを要する。
【0017】
複数の部分放電パルスの間の区別の描画は、例えば、比較されるべき上記複数の部分放電パルスの特性に基づいて実行されうる。例えば、特定の測定点で夫々検出される部分放電パルスは、上記特定の部分放電パルスを別の部分放電パルスと区別できるようにするために、送電ケーブル上で伝送される電力パルスに応じて、及び上記部分放電パルスが例えば特定の性質を有する時刻に基づいて分析されうる。特定の部分放電パルスが送電ケーブルにおいて特定の測定点で検出される時刻を検出するこの手順は、従来技術によって公知であり、したがって、ここではこれ以上詳細に説明しない。
【0018】
本発明による好ましい実施形態によれば、障害箇所は、以下の式(1)を用いて、第3の測定点からの距離l
fとして決定される。
【数1】
ここで、t
3は第3の時刻に相当し、t
4は第4の時刻に相当し、v
PDは送電ケーブルに沿った部分放電パルス(つまり、部分放電の効果)の伝播速度に相当し、lは、第3と第4の測定点で区切られた送電ケーブルの区間の長さである。
【0019】
式(1)は、第1と第2の時刻に依存する障害箇所を特定するためにも用いられうることに注意されたい。この場合、t3は最初の時刻に対応し、t4は第2の時刻に対応する。lは、送電ケーブルの第1の測定点(又は一方の終端部)から第2の測定点(又は他方の終端部)までの送電ケーブルの長さに対応する。この場合、距離lfは、送電ケーブルの第1の測定点(又は一方の終端部)からの障害箇所の距離を規定する。
【0020】
さらに、本発明によれば、各場合において、例え異なる減衰であっても、同じ部分放電パルス又は同じ部分放電の効果に関して、第1、第2、第3、及び第4の測定点で、第1、第2、第3、及び第4の時刻に検出されることが可能である。この場合、上記特定の部分放電パルスは、上記別の特定の部分放電パルスに対応する。
【0021】
たとえば、全ての測定点は、それらが部分放電パルスを検出する時刻を夫々決定し保存するように設計されうる。それに続く評価の工程において、上記部分放電パルスが第1、第2、第3、及び第4の測定点で検出されたとき、同じ部分放電パルスについて決定することが可能であり、それから、上述されたように、この情報から障害箇所の位置を確認することができる。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、第1、第2、第3、及び第4の時刻の各々は、上記夫々の部分放電パルスに関する情報項目が制御装置又は制御手段によって検出される対応した時刻に対応する。別の実施形態によれば、上記対応する測定点から上記制御手段への上記夫々の情報項目の送信によって生じる夫々の時間遅延も決定される。次に、この夫々の時刻は、上記対応する時間遅延によって補正される。
【0023】
この別の実施形態によれば、第1、第2、第3、及び第4の測定ユニット(それらは、上記第1、第2、第3、及び第4の測定点に夫々接続されている)は、上記夫々の測定ユニットが、上記関連する測定点で上記対応する部分放電パルスを検出すると直ぐに、対応する部分放電パルスを介して上記対応する情報項目を制御手段へ送信する。次に、上記制御手段は、夫々の情報項目が制御手段に到達する第1、第2、第3、及び第4の時刻に応じて障害箇所の位置を決定及び補正する。この場合、上記夫々の時間遅延(それは、上記対応する測定点又は上記対応する測定ユニットから上記制御手段への上記夫々の情報項目の送信によって発生する)が考慮される。
【0024】
上記対応する測定ユニットから上記制御手段への上記夫々の情報項目の送信のための上記夫々の時間遅延が決定される方法は、以下により詳細に概説される。
【0025】
本発明はまた、送電網を試験するための方法を提供する。この場合、送電網を試験する方法は、次の工程を包含している。
【0026】
・測定点又は上記測定点に接続されている測定ユニットで事象(例えば、部分放電パルス又は部分放電の影響)を検出すること。
【0027】
・上記事象に関する情報項目を上記測定点から制御手段へ送信すること。特に、上記測定点に接続されている上記測定ユニットが上記事象を検出すると直ぐに、対応する情報項目が上記制御手段へ送信される。
【0028】
・上記事象に関する情報項目が上記制御手段によって検出される時刻を検出すること。従って、上記時刻は、上記事象に関する上記情報項目が上記制御手段にいつ到達するかを規定する。
【0029】
・上記測定点又は上記測定点に接続されている上記測定ユニットから上記制御手段への上記情報項目の送信によって生じる時間遅延を決定すること。
【0030】
・上記決定された時間遅延に応じて上記時刻を補正すること。上記時間遅延による上記時刻の上記補正により、上記時刻は、上記事象が上記夫々の測定点で検出された時刻を正確に反映することは有利である。
【0031】
・上記事象及び上記補正された時刻に応じて上記送電網の試験をすること。
【0032】
上記補正された時刻は、検出されるべき事象が上記夫々の測定点で検出された時刻に実質的に対応するので、上記送電網の試験は、この時刻に基づいて有利的に実行されうる。その結果、特に、送電網の試験は、事象がいくつかの異なる測定点で発生する夫々の時刻が役割を演ずる場合に、より正確に実行されうる。特に、いくつかの測定点が制御手段から異なる距離にある場合に、夫々の測定点又は上記夫々の測定点に接続された測定ユニットからの伝送時間は、同じ事象又は上記同じ事象の影響が夫々の測定点で発生した時刻の間の時間差を決定するために、役割を果たす。本発明による時間遅延を考慮することによって、同じ事象又は上記同じ事象の効果が夫々の測定点で発生した時刻は、それらに基づく送電網の試験が同様により正確に実行されうる結果として、従来技術の場合よりもより正確に規定されうる。
【0033】
送電網を試験する方法の本発明による好ましい実施形態によれば、事象に関する情報項目は、測定点から(又はこの測定点に接続された測定ユニットから)少なくとも1つの別の測定点を介して(又はこの測定点に接続された測定ユニットを介して)制御手段へ送信される。この場合、上記測定点(又は上記測定ユニット)、上記少なくとも1つの別の測定点(又は上記少なくとも1つの別の測定ユニット)、及び上記制御手段は、上記情報項目が送信されるラインを介して互いに接続されている。この実施形態において、時間遅延を決定することは、夫々の測定点(測定ユニット)で情報項目を検出し且つその情報項目を渡すために、まず、ラインを渡る情報項目の走行時間を決定すること、そして次に、夫々の測定点(又は上記夫々の測定点に接続された夫々の測定ユニット)の処理時間を決定することを包含する。
【0034】
この実施形態において、測定点又は測定ユニットは、例えばデイジーチェーン(数珠つなぎ)技術により互いに接続されている。この場合、情報項目は、放電測定ユニットから制御手段の方向に隣接する測定ユニットへ渡され、次にその部分は、情報項目が最終的に制御手段に到達するまで、情報項目を制御手段の方向に隣接する測定ユニットへ渡すことを繰り返す。
【0035】
事象が検出される測定点(測定ユニット)、少なくとも1つの別の測定点(測定ユニット)、及び制御手段は、各々ユニットと見なされ、それらユニットはラインを介してデイジーチェーン技術で接続され、時間遅延Δtは、次式(2)を用いて計算されうる。
【数2】
ここで、RXBWjは、特定のデータパケットがj番目のユニットで逆方向において受信される時刻に対応する。RXFWjは、特定のデータパケットがj番目のユニットで順方向において受信される時刻に対応する。TXBWjは、特定のデータパケットがj番目のユニットに逆方向で送信される時刻に対応する。TXFWjは、特定のデータパケットがj番目のユニットに順方向で送信される時刻に対応する。xは、制御手段と事象が検出された測定点(測定ユニット)との間に位置する別の測定点(測定ユニット)の数に対応する。制御手段(E
0)は第0番目のユニットに対応し、測定点は第「x+1」番目のユニット(E
1~E
6)に対応する。
【0036】
障害箇所を特定するための本発明による方法は、送電網を試験するための本発明による方法と組み合わせることができることに留意されたい。特に、第1、第2、第3、又は第4の時刻の検出により、夫々の測定点から制御手段への対応する部分放電パルスに関する情報項目の送信により生じる時間遅延が考慮されるので、部分放電パルスが対応する測定点で検出されたところの夫々の時刻の検出又は決定は、実質的により正確に実行されうる。
【0037】
本発明はまた、送電ケーブルの障害箇所を特定するためのシステムを提供する。この場合、本発明によるこのシステムは、制御手段と複数の測定ユニットとを備えている。これらの測定ユニットの第1番目は、送電ケーブルの一方の終端部に配置された第1の測定点に接続され、一方これら測定ユニットの第2番目は、送電ケーブルの他方の終端部に配置された第2の測定点に接続されている。各測定ユニットは、各場合に1つの部分放電パルスを、送電ケーブルの夫々の測定ユニットに接続されているその測定点で検出するように構成されている。本システムは、特定の部分放電パルスが第1の測定ユニットを手段として第1の測定ユニットにより第1の測定点で検出されるところの第1の時刻を検出するように、且つ上記特定の部分放電パルスが第2の測定ユニットを手段として第2の測定ユニットにより第2の測定点で検出されるところの第2の時刻を検出するように構成されている。本システムは、送電ケーブルに沿う障害箇所(そこで特定の部分放電パルスが生成された)を、上記制御手段によって上記第1及び第2の時刻に応じて決定するように更に構成されている。次に、本システムは、第3の測定点及び第4の測定点がその中に障害箇所が有り且つ測定ユニットの1つに接続されている別の測定点が無いような送電ケーブルの区画の範囲を定めるような方法で、制御手段によって上記第3及び第4の測定点を決定する。本システムは、別の特定の部分放電パルスが、第3の測定点に接続されている第3の測定ユニットを介して第3の測定ユニットによって第3の測定点で検出されるところの第3の時刻を検出し、そして本システムは、上記別の特定の部分放電パルスが、第4の時刻を検出する第4測定点に接続された第4の測定ユニットを介して第4の測定ユニットによって第4の測定点で検出される。最後に、本システムは、第3と第4の時刻に応じて、制御手段によって決定された障害箇所を補正する。
【0038】
本発明による本システムの利点は、上で詳細に説明されたような障害箇所を特定するための本発明による方法の利点に実質的に対応しており、従って、上記の利点はここでは繰り返さない。
【0039】
最後に、本発明は、送電網を試験するためのシステムを提供する。本システムは、先のシステムと同様に、制御手段と複数の測定ユニットとを含む。この場合、これらの測定ユニットの各々は、送電網内の夫々の測定点に接続される。各測定ユニットは、夫々の測定点で事象を検出し、この事象に関する情報項目を制御手段に渡すように構成されている。制御手段は、測定ユニットからの情報項目を検出し、事象に関する情報項目が制御手段によって検出される時刻を検出するように構成される。本システムは、事象を検出する測定ユニットから制御手段への情報項目の送信によって生じる時間遅延を決定するように構成される。制御手段は、時間遅延によって時刻を補正するようにさらに構成され、その結果、補正された時刻は、事象が夫々の測定点で検出されたときに反映される。最後に、本システムは、送電網を事象と補正された時刻に応じて試験するように構成されている。
【0040】
送電網を試験するための本発明によるシステムの利点は、上で詳細に説明した送電網を試験するための本発明による方法の利点に実質的に対応し、従って、上記の利点はここでは繰り返さない。
【0041】
本発明による上記2つの方法と同様の方法で、本発明による上記2つのシステムを組み合わせることができる。結果として、夫々の測定ユニットによってそれに関連する測定点で特定の部分放電パルスが検出される夫々の時刻は、夫々の測定ユニットから制御手段への、検出された部分放電パルスに関する情報項目の送信によって生じる時間遅延に応じて決定されうる。
【0042】
高電圧ケーブル内の部分放電は、本発明により2mの精度で有利に特定されうる。
【0043】
本発明は、本発明による好ましい実施形態を用いて、図面を参照しつつ以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】複数の測定点を備えた高電圧ケーブルを示した図であり、これらの測定点の各々は、夫々が制御装置又は制御手段に接続されている測定ユニットに接続されている。
【
図2】本発明による、3つの測定ユニットの制御手段への接続を詳細に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、高電圧ケーブル1を示し、このケーブル1は、その両端の夫々でケーブル端子4によって終端されている。高電圧ケーブル1を異なるセクションに分割する接続部材2は、高電圧ケーブル1に沿って様々な点に配置されている。上記接続部材2の夫々及び2つのケーブル端子4の夫々は、測定ケーブルを介して測定ユニットE
1~E
6に接続されている。本発明によれば、6つの測定ユニットよりもかなり多くの測定ユニットが用いられうることに留意されたい。
【0046】
測定ユニットE1からE6は、デイジーチェーン(数珠つなぎ)技術で(例えば最大20kmまで)光ファイバーケーブル5を介して互いに順番に接続され、測定ユニットE1は、光ファイバーケーブルを介して制御装置E0へ同様に接続されている。
【0047】
部分放電パルスが生成される障害箇所6は、第4の測定ユニットE
4と第5の測定ユニットE
5との間に位置する。つまり、部分放電は、高電圧ケーブル1の障害箇所6で発生し、高電圧ケーブル1に沿って伝播する部分放電パルスの形での部分放電の影響を測定ユニットE
1~E
6で検出することが可能である。高電圧ケーブル1に沿って隣接し、且つ接続部材2又はケーブル端子4により実現される2つの測定点間の距離は、夫々の場合に知られている。第4の測定点と第5の測定点との間の距離lは、例として
図1に示されている。障害箇所6の位置を特定する本発明による方法の目的は、1つの測定点2;4と障害箇所6との間の距離l
fを可能な限り正確に決定することである。
【0048】
この目的を達成し且つ夫々障害箇所6を特定するために、障害箇所6で発生する特定の部分放電パルスが、第1の測定ユニットE1に接続されている高電圧ケーブル1の一方の終端部(第1の測定点4)で検出される第1の時刻は、第1段階の第1工程で決定される。上記特定の部分放電パルスが、第6の測定ユニットE6に接続されている高電圧ケーブル1の他方の終端部(第6の測定点4)で検出される第2の時刻は、上記第1段階の第2工程で同様に決定される。高電圧ケーブル1の長さ(即ち、第1と第6の測定点の間の距離)、及び部分放電パルスの高電圧ケーブル1に沿った伝播速度が分かっていると、例えば、第1測定点と障害箇所6の間の距離は、上記の式(1)を用いて非常に正確に決定されうる。
【0049】
高電圧ケーブル1内の障害箇所6の位置は、このようにして決定された距離に基づいて知られる。障害箇所6に最も近い高電圧ケーブル1に沿った2つの測定点は、その位置に基づいて決定されうる。この方法で決定された2つの測定点(
図1における第4と第5の測定点)は、最初に障害箇所6があり且つさらに単一でない第2の測定点2が存在する高圧ケーブル1の区画を限定する。上述のように、障害箇所6の位置特定は、このようにして決定されたこれらの2つの測定点を用いて同じように繰り返される。
【0050】
さらに、障害箇所6で発生する特定の部分放電パルスが、特定の測定点で第4の測定ユニットE4(これはこの特定の測定点に接続されている)によって検出される第3の時刻は、第2段階の第1工程で決定される。上記特定の部分放電パルスが、別の特定の測定点で第5の測定ユニットE5(これはこの別の特定の測定点に接続されている)によって検出される第4の時刻は、第2段階の第2工程で決定される。ここでも、第4の測定点と障害箇所6との間の距離lfは、第4と第5の測定点の間の距離lの情報を有する式(1)を用いて、今や非常に正確に決定されうる。
【0051】
本発明によれば、特定の部分放電パルスが、特定の測定点で検出される時刻を確認するためのいくつかのオプションがある。先ず、測定ユニット(これは、これと接続されている測定点で部分放電パルスを検出する)が、時刻を決定することができ、これは、この測定ユニットの非常に正確なタイマーに基づいて可能である。もう1つのオプションは、測定ユニット(これは、これと接続されている測定点で部分放電パルスを検出する)が、測定ユニットが部分放電パルスを検出したことを示す適切な情報項目を制御装置E
0に送信し、次いでそれが時刻を決定する。しかし、この第2のオプションの場合、放電測定ユニットから制御装置E
0への適切な情報項目の送信のために必要とされる時間遅延を考慮することが有利である。具体的には、
図1に(及び
図2にも)示されるように、測定ユニットE
1~E
6がデイジーチェーン技術を用いて接続されている場合、この時間遅延は、光ファイバーケーブル5に沿った伝播時間によってだけでなく、むしろ放電測定ユニットと制御装置E
0との間に位置する測定ユニットの処理時間によっても影響を受けるので、この時間遅延は考慮されるべきである。
【0052】
制御装置E
0と測定ユニットがデイジーチェーン技術で相互に接続される方法は、原理的且つより詳細には、
図1よりも
図2に示されている。説明のために、3つの測定ユニットE
1~E
3のみが(
図1の6つの測定ユニットE
1~E
6の代わりに)、
図2に示されている。
【0053】
制御装置E0によって送出されたデータパケットは、時刻TXFW0で第1の測定ユニットE1に送信され、時刻RXFW1で第1の測定ユニットE1によって受信され、さらに時刻TXFW1で第2の測定ユニットE2に送信される。リターンパスでは、データパケットは、時刻TXBW3で第3の測定ユニットE3によって第2の測定ユニットE2に送信される。この第2の測定ユニットは、時刻RXBW2でデータパケットを受信し、さらに上記データパケットを時刻TXBW2で第1の測定ユニットE1に送信する。
【0054】
上述の式(2)によれば、遅延時間Δt
VZi,i+1は、いわば、測定ユニット(それは、部分放電パルスをその測定点で検出し終えている)から制御装置E
0への経路について合計される。この場合、各遅延時間Δt
VZi,i+1は、情報項目を測定ユニットiから隣接する測定ユニットi+1に(又は測定ユニットi+1から隣接する測定ユニットiへの反対方向に)送信するのに必要とされる時間を表す。この場合、遅延時間Δt
VZi,i+1は、次式(3)に従って決定されうる。
【数3】
【0055】
次に、部分放電パルスが夫々の測定ユニットによって検出されたという情報項目を制御装置E
0が検出する時刻は、式(2)によって計算された時間遅延Δtに基づいて補正される。すなわち、補正時間は、制御装置E
0で検出された時刻と時間遅延Δtとの差に基づいて算出される。夫々の時間遅延を考慮して、第1の測定点(測定ユニットE
1)での、及び第6の測定点(測定ユニットE
6)での、及び第4の測定点(測定ユニットE
4)での、及び第5の測定点(測定ユニットE
5)での(
図1を参照)夫々の部分放電パルスが検出される夫々の時刻は、第4の測定点(測定ユニットE
4)からの障害箇所の距離l
fが非常に高い精度で決定されうる結果として、高精度で決定されうる。
【符号の説明】
【0056】
1 高電圧ケーブル(送電ケーブル、送電網)
2 接続部材(継ぎ手、測定点)
3 測定ケーブル
4 ケーブル端子(終端部、測定点)
5 光ファイバーケーブル(ライン)
6 障害箇所
E0 ユニット又は制御装置(制御手段)
E1~E6 ユニット又は測定ユニット(測定点)
l 高電圧ケーブル(送電ケーブル、送電網)の区間の長さ
lf 測定点と障害箇所の間の距離
RXBWy ユニットyにおける逆方向(「受信機逆方向」の受信機(の受信時刻)
RXFWy ユニットyにおける順方向(「受信機順方向」の受信機(の受信時刻)
TXBWy ユニットyにおける逆方向(「送信機逆方向」)の送信機(の送信時刻)TXFWy ユニットyにおける順方向(「送信機順方向」)の送信機(の送信時刻)