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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】人工肺及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20220421BHJP
   A61M 1/18 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A61M1/16 120
A61M1/18 525
A61M1/18 510
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019568535
(86)(22)【出願日】2018-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2018003719
(87)【国際公開番号】W WO2019150568
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】平口 竜士
(72)【発明者】
【氏名】行天 章
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/051600(WO,A1)
【文献】特表平9-509351(JP,A)
【文献】特開2001-79083(JP,A)
【文献】特開平4-200562(JP,A)
【文献】国際公開第2016/009780(WO,A1)
【文献】特開2016-39995(JP,A)
【文献】特表2016-518209(JP,A)
【文献】米国特許第5270004(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中空糸膜を巻回することによって構成された筒状の熱交換部と第2中空糸膜を巻回することによって構成された筒状のガス交換部とが、径方向に互いに重なるように配置された状態で前記第1中空糸膜の外側と前記第2中空糸膜の外側に血液流路が形成されるようにハウジングに収容され、
前記ハウジングは、前記熱交換部及び前記ガス交換部よりも軸線方向の両側の空間のそれぞれを熱媒体流路とガス流路とに区画する一組の隔壁部を有する人工肺であって、
各前記隔壁部は、前記熱交換部及び前記ガス交換部の端部同士の間に挿入され、
前記熱交換部と前記ガス交換部との間には、中間中空糸膜を巻回することによって筒状の中間スペーサが配設され、
前記中間スペーサの少なくとも一方の端部は、前記熱交換部及び前記ガス交換部の端部における前記隔壁部に対して径方向に重ならない部分に位置し
前記中間スペーサと前記隔壁部との間には、前記血液流路を流通する血液の外部への漏出を防止するための封止部材が充填されている、
ことを特徴とする人工肺。
【請求項2】
請求項1記載の人工肺において、
前記隔壁部のうち前記熱交換部及び前記ガス交換部の端部同士の間に挿入された部分の厚さは、前記中間スペーサの肉厚よりも薄い、
ことを特徴とする人工肺。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の人工肺において、
前記中間スペーサは、前記中間中空糸膜の内腔に流体が流通しないように形成されている、
ことを特徴とする人工肺。
【請求項4】
請求項3記載の人工肺において、
前記中間スペーサは、連続した1本の前記中間中空糸膜によって構成され、
前記中間スペーサを構成する前記中間中空糸膜の少なくとも一方の端部の開口部は、閉塞されている、
ことを特徴とする人工肺。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の人工肺において、
前記中間スペーサは、前記中間中空糸膜が径方向に互いに重ねられて形成されている、
ことを特徴とする人工肺。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の人工肺において、
前記中間スペーサの各端部は、前記熱交換部及び前記ガス交換部の端部における前記隔壁部に対して径方向に重ならない部分に位置している、
ことを特徴とする人工肺。
【請求項7】
径方向に互いに重なるように配置された熱交換部とガス交換部とを備えた人工肺の製造方法であって、
コアの外面に第1中空糸膜を巻回することにより第1筒状部を形成する第1巻回工程と、
中間中空糸膜を前記第1筒状部の外面に巻回することによって筒状の中間スペーサを配設する配設工程と、
前記中間スペーサの外面に第2中空糸膜を巻回することにより第2筒状部を形成する第2巻回工程と、
前記第2筒状部の外面を覆うように外筒を配置する外筒配置工程と、
前記第1筒状部及び前記第2筒状部の両端部を切断することにより前記熱交換部及び前記ガス交換部を形成する切断工程と、
前記熱交換部及び前記ガス交換部の両端部における前記第1中空糸膜及び前記第2中空糸膜の外側を封止部材で封止する封止工程と、
前記コア及び前記外筒の両端部にカバー部材を装着し、各前記カバー部材内に熱媒体流路とガス流路とを形成する装着工程と、を順次行い、
前記配設工程では、前記装着工程の際に、前記熱交換部及び前記ガス交換部の一端部同士の間及び他端部同士の間の少なくともいずれかに隙間が形成されるように前記中間スペーサを前記第1筒状部の外面に配設し、
前記装着工程では、前記中間スペーサによって形成された前記隙間に前記カバー部材の隔壁部を挿入することにより、前記中間スペーサと前記隔壁部との間に前記封止部材を位置させる、
ことを特徴とする人工肺の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の人工肺の製造方法において、
前記配設工程では、前記装着工程の際に、前記熱交換部及び前記ガス交換部の一端部同士の間及び他端部同士の間のそれぞれに前記隙間が形成されるように前記中間スペーサを前記第1筒状部の外面に配設し、
前記装着工程では、前記中間スペーサによって形成された各前記隙間に各前記カバー部材の前記隔壁部を挿入する、
ことを特徴とする人工肺の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の人工肺の製造方法において、
前記配設工程では、前記第1筒状部の両端部のみを覆うように環状部材を配置し、
前記第2巻回工程では、前記第2中空糸膜を前記中間スペーサ及び前記環状部材のそれぞれの外面に巻回し、
前記封止工程の後で、前記環状部材を除去する除去工程を行う、
ことを特徴とする人工肺の製造方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の人工肺の製造方法において、
前記第1巻回工程では、連続した1本の前記第1中空糸膜を前記第1筒状部の外面に巻回するとともに軸線方向に複数回往復させることにより前記第1筒状部を形成し、
前記第2巻回工程では、連続した1本の前記第2中空糸膜を前記中間スペーサの外面に巻回するとともに軸線方向に複数回往復させることにより前記第2筒状部を形成する、
ことを特徴とする人工肺の製造方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか1項に記載の人工肺の製造方法において、
前記封止工程では、前記中間スペーサを構成する前記中間中空糸膜の少なくとも一方の端部の開口部を前記封止部材によって閉塞させる、
ことを特徴とする人工肺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1中空糸膜を巻回することによって構成された筒状の熱交換部と第2中空糸膜を巻回することによって構成された筒状のガス交換部とが、径方向に互いに重なるように配置された状態で前記第1中空糸膜の外側と前記第2中空糸膜の外側に血液流路が形成されるようにハウジングに収容された人工肺及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の人工肺は、例えば、国際公開第2016/009780号に開示されている。この人工肺のハウジングは、熱交換部及びガス交換部よりも軸線方向の両側の空間を熱媒体流路とガス流路とに区画する一組の隔壁部を有する。
【発明の概要】
【0003】
上述した人工肺では、ハウジングを組み付ける際に、熱交換部及びガス交換部の端部同士の間に隔壁部を挿入することがある。しかしながら、従来の人工肺では、熱交換部の第1中空糸膜の外面にガス交換部の第2中空糸膜が巻回されているため、熱交換部の端部とガス交換部の端部とが隔壁部によって径方向に押される。そうすると、第1中空糸膜の内腔及び第2中空糸膜の内腔が潰されて熱交換率及びガス交換率が低下するおそれがある。
【0004】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、熱交換部及びガス交換部のそれぞれが中空糸膜を巻回することによって形成される場合であっても、熱交換率及びガス交換率が低下することを抑えることができる人工肺及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る人工肺は、第1中空糸膜を巻回することによって構成された筒状の熱交換部と第2中空糸膜を巻回することによって構成された筒状のガス交換部とが、径方向に互いに重なるように配置された状態で前記第1中空糸膜の外側と前記第2中空糸膜の外側に血液流路が形成されるようにハウジングに収容され、前記ハウジングは、前記熱交換部及び前記ガス交換部よりも軸線方向の両側の空間のそれぞれを熱媒体流路とガス流路とに区画する一組の隔壁部を有する人工肺であって、各前記隔壁部は、前記熱交換部及び前記ガス交換部の端部同士の間に挿入され、前記熱交換部と前記ガス交換部との間には、中間中空糸膜を巻回することによって筒状の中間スペーサが配設され、前記中間スペーサの少なくとも一方の端部は、前記熱交換部及び前記ガス交換部の端部における前記隔壁部に対して径方向に重ならない部分に位置し、前記中間スペーサと前記隔壁部との間には、前記血液流路を流通する血液の外部への漏出を防止するための封止部材が充填されていることを特徴とする。
【0006】
このような構成によれば、中間スペーサによって熱交換部及びガス交換部の端部同士の間に隔壁部が挿入可能な隙間を形成することができる。これにより、隔壁部によって熱交換部の端部及びガス交換部の端部が径方向に押され、第1中空糸膜の内腔及び第2中空糸膜の内腔が潰されることを抑制できる。従って、熱交換率及びガス交換率が低下することを抑えることができる。また、中間中空糸膜を巻回することによって中間スペーサを構成しているため、ハウジングの隔壁の厚さに応じて中間スペーサ自体の厚さを容易に調整することができる。
【0007】
上記の人工肺において、前記隔壁部のうち前記熱交換部及び前記ガス交換部の端部同士の間に挿入された部分の厚さは、前記中間スペーサの肉厚よりも薄くてもよい。
【0008】
このような構成によれば、隔壁部によって第1中空糸膜の内腔及び第2中空糸膜の内腔が潰されることを一層抑えることができる。
【0009】
上記の人工肺において、前記中間スペーサは、前記中間中空糸膜の内腔に流体が流通しないように形成されていてもよい。
【0010】
このような構成によれば、中間中空糸膜の内腔にガス(酸素)や熱媒体が流通して熱交換率又はガス交換率が低下することを抑えることができる。
【0011】
上記の人工肺において、前記中間スペーサは、連続した1本の前記中間中空糸膜によって構成され、前記中間スペーサを構成する前記中間中空糸膜の少なくとも一方の端部の開口部は、閉塞されていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、中間スペーサの中間中空糸膜の内腔に熱媒体又はガスが流通することを阻止することができる。
【0013】
上記の人工肺において、前記中間スペーサは、前記中間中空糸膜が径方向に互いに重ねられて形成されていてもよい。
【0014】
このような構成によれば、中間スペーサの厚さ(肉厚)を容易に調整することができる。
【0015】
上記の人工肺において、前記中間スペーサの各端部は、前記熱交換部及び前記ガス交換部の端部における前記隔壁部に対して径方向に重ならない部分に位置していてもよい。
【0016】
このような構成によれば、中間スペーサによって熱交換部及びガス交換部の両方の端部同士の間に隔壁部が挿入可能な隙間を形成することができる。これにより、熱交換率及びガス交換率が低下することを一層抑えることができる。
【0017】
本発明に係る人工肺の製造方法は、径方向に互いに重なるように配置された熱交換部とガス交換部とを備えた人工肺の製造方法であって、コアの外面に第1中空糸膜を巻回することにより第1筒状部を形成する第1巻回工程と、中間中空糸膜を前記第1筒状部の外面に巻回することによって筒状の中間スペーサを配設する配設工程と、前記中間スペーサの外面に第2中空糸膜を巻回することにより第2筒状部を形成する第2巻回工程と、前記第2筒状部の外面を覆うように外筒を配置する外筒配置工程と、前記第1筒状部及び前記第2筒状部の両端部を切断することにより前記熱交換部及び前記ガス交換部を形成する切断工程と、前記熱交換部及び前記ガス交換部の両端部における前記第1中空糸膜及び前記第2中空糸膜の外側を封止部材で封止する封止工程と、前記コア及び前記外筒の両端部にカバー部材を装着し、各前記カバー部材内に熱媒体流路とガス流路とを形成する装着工程と、を順次行い、前記配設工程では、前記装着工程の際に、前記熱交換部及び前記ガス交換部の一端部同士の間及び他端部同士の間の少なくともいずれかに隙間が形成されるように前記中間スペーサを前記第1筒状部の外面に配設し、前記装着工程では、前記中間スペーサによって形成された前記隙間に前記カバー部材の隔壁部を挿入することにより、前記中間スペーサと前記隔壁部との間に前記封止部材を位置させる、ことを特徴とする。
【0018】
このような方法によれば、上述した人工肺を製造することができる。
【0019】
上記の人工肺の製造方法において、前記配設工程では、前記装着工程の際に、前記熱交換部及び前記ガス交換部の一端部同士の間及び他端部同士の間のそれぞれに前記隙間が形成されるように前記中間スペーサを前記第1筒状部の外面に配設し、前記装着工程では、前記中間スペーサによって形成された各前記隙間に各前記カバー部材の前記隔壁部を挿入してもよい。
【0020】
このような方法によれば、熱交換率及びガス交換率が低下することを一層抑えることができる。
【0021】
上記の人工肺の製造方法において、前記配設工程では、前記第1筒状部の両端部のみを覆うように環状部材を配置し、前記第2巻回工程では、前記第2中空糸膜を前記中間スペーサ及び前記環状部材のそれぞれの外面に巻回し、前記封止工程の後で、前記環状部材を除去する除去工程を行ってもよい。
【0022】
このような方法によれば、環状部材によって熱交換部及びガス交換部の両方の端部同士の間に隔壁部が挿入可能な隙間を確実に形成することができる。
【0023】
上記の人工肺の製造方法において、前記第1巻回工程では、連続した1本の前記第1中空糸膜を前記第1筒状部の外面に巻回するとともに軸線方向に複数回往復させることにより前記第1筒状部を形成し、前記第2巻回工程では、連続した1本の前記第2中空糸膜を前記中間スペーサの外面に巻回するとともに軸線方向に複数回往復させることにより前記第2筒状部を形成してもよい。
【0024】
このような方法によれば、第1筒状部と第2筒状部とを効率的に形成することができる。
【0025】
上記の人工肺の製造方法において、前記封止工程では、前記中間スペーサを構成する前記中間中空糸膜の少なくとも一方の端部の開口部を前記封止部材によって閉塞させてもよい。
【0026】
このような方法によれば、中間中空糸の内腔に流体が流通することを阻止することができる。
【0027】
本発明によれば、中間スペーサによって熱交換部及びガス交換部の端部同士の間に隔壁部が挿入可能な隙間を形成することができるため、隔壁部によって第1中空糸膜の内腔及び第2中空糸膜の内腔が潰されることを抑制できる。従って、熱交換率及びガス交換率が低下することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る人工肺の縦断面図である。
図2図1の人工肺の一部拡大断面図である。
図3図1のIII-III線に沿った横断面図である。
図4】人工肺の流体の流れを示す断面説明図である。
図5図1の人工肺の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図6図6Aは準備工程の説明図であり、図6Bは第1巻回工程の説明図である。
図7図6Bの一部省略縦断面説明図である。
図8】配設工程の第1の説明図である。
図9】配設工程の第2の説明図である。
図10】中間スペーサの形成方法を示す説明図である。
図11】第2巻回工程の説明図である。
図12】外筒配置工程の説明図である。
図13】切断工程及び封止工程の説明図である。
図14】除去工程及び装着工程の説明図である。
図15】配設工程の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る人工肺についてその製造方法との関係で好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る人工肺10は、人体の心臓外科等の手術において一時的に肺の機能を代行する医療機器である。具体的には、人工肺10は、体外血液循環において、血液温度調整と、血液中の二酸化炭素を除去するとともに血液中に酸素を供給するための装置である。
【0031】
図1図3に示すように、人工肺10は、ハウジング12、熱交換部14、ガス交換部16及び中間スペーサ18を備える。
【0032】
図1において、ハウジング12は、人工肺10の中心部分を構成するコア20と、コア20の外周側に設けられた外筒22と、コア20の一端部と外筒22の一端部とに装着された第1カバー部材24aと、コア20の他端部と外筒22の他端部とに装着された第2カバー部材24bとを有する。
【0033】
コア20、外筒22、第1カバー部材24a及び第2カバー部材24bによって、筒状の熱交換部14及び筒状のガス交換部16を収容するための環状の収容空間Sが形成されている。収容空間Sは、血液流路28として機能する。コア20、外筒22、第1カバー部材24a及び第2カバー部材24bのそれぞれは、硬質樹脂によって一体的に構成されている。
【0034】
コア20は、コア20の一端部を構成する第1コア部30と、コア20の他端部を含む部分を構成する第2コア部32とを備える。第1コア部30と第2コア部32とは、複数の接続部34によって互いに連結されている。
【0035】
第1コア部30は、一端部に図示しないチューブが接続可能な血液流入部36と、血液流入部36から径方向外方に延出した円環状の壁部38とを有する。壁部38の外端部には、熱交換部14を支持するための第1支持部40と、第1支持部40から外筒22の軸線方向の一方側(図1の矢印X1方向)に突出した第1環状凸部42とが設けられている。
【0036】
第2コア部32は、有底筒状に構成されており、筒部44と、筒部44の一端部(矢印X1方向の端部)に設けられた閉塞部46とを有する。閉塞部46は、壁部38に対して隙間を空けて対向するように配置されている。閉塞部46と壁部38との間の隙間は、血液流入部36から流入した血液を収容空間S内に導くための血液導入路48として機能する。筒部44の外面には、熱交換部14を支持するための第2支持部50と、第2支持部50から外筒22の軸線方向の他端側(図1の矢印X2方向)に突出した第2環状凸部52とが設けられている。第2支持部50は、筒部44の他端部に位置している。
【0037】
外筒22は、コア20の径方向外方に隙間を空けて配置された円筒部材である(図3参照)。外筒22の軸線方向の全長は、第2コア部32の軸線方向の全長よりも若干長い。外筒22には、収容空間S内の血液を外部に流出させるための血液流出部54が設けられている。
【0038】
図1及び図2に示すように、第1カバー部材24aは、熱交換部14の一端面とガス交換部16の一端面とに隙間を空けて対向するように設けられた第1カバー本体56aと、第1カバー本体56a内の空間を第1熱媒体流路58aと第1ガス流路60aとに区画する第1隔壁部62aとを有する。
【0039】
第1カバー本体56aは、円環状に延在するとともに軸線方向に延在している。第1カバー本体56aの内端部(径方向内方の端部)は、接着剤64aによって第1環状凸部42に対して固定されている。第1カバー本体56aの外端部(径方向外方の端部)は、接着剤64aによって外筒22に対して固定されている。第1カバー本体56aには、第1熱媒体流路58a内に熱媒体を流入させるための熱媒体流入部68と、第1ガス流路60aにガス(酸素ガス)を流入させるためのガス流入部70とが設けられている。
【0040】
第1隔壁部62aは、第1カバー本体56aの内面から熱交換部14及びガス交換部16が位置する側に向かって軸線方向に突出するとともに環状に延在している。第1隔壁部62aの突出端部は、熱交換部14及びガス交換部16の一端部同士の間に挿入された状態で接着剤64aによって固定されている。第1隔壁部62aの突出端部(第1隔壁部62aのうち熱交換部14及びガス交換部16の一端部同士の間に挿入された部分)の厚さは、中間スペーサ18の肉厚よりも薄い。第1隔壁部62aの根本部(第1カバー本体56aに近い側の部分)の厚さは、第1隔壁部62aの突出端部の厚さよりも厚い。
【0041】
第1熱媒体流路58aは、熱媒体を熱交換部14に導くための流路であって、第1隔壁部62aよりも径方向内方に位置している。第1ガス流路60aは、酸素ガスをガス交換部16に導くための流路であって、第1隔壁部62aよりも径方向外方に位置している。
【0042】
第2カバー部材24bは、熱交換部14の他端面とガス交換部16の他端面とに隙間を空けて対向するように設けられた第2カバー本体56bと、第2カバー本体56b内の空間を第2熱媒体流路58bと第2ガス流路60bとに区画する第2隔壁部62bとを有する。
【0043】
第2カバー本体56bは、円環状に延在している。第2カバー本体56bの内端部は、接着剤64bによって第2環状凸部52に対して固定されている。第2カバー本体56bの外端部は、接着剤64bによって外筒22に対して固定されている。図1において、第2カバー本体56bには、第2熱媒体流路58b内の熱媒体を流出させるための熱媒体流出部76と、第2ガス流路60b内のガス(二酸化炭素ガス)を外部に流出させるためのガス流出部78とが設けられている。
【0044】
図1及び図2に示すように、第2隔壁部62bは、第2カバー本体56bの内面から熱交換部14及びガス交換部16が位置する側に向かって突出するとともに環状に延在している。第2隔壁部62bの突出端部は、熱交換部14及びガス交換部16の他端部同士の間に挿入された状態で接着剤64bによって液密及び気密に固定されている。第2隔壁部62bの突出端部(第2隔壁部62bのうち熱交換部14及びガス交換部16の他端部同士の間に挿入された部分)の厚さは、中間スペーサ18の肉厚よりも薄い。第2隔壁部62bの根本部(第2カバー本体56bに近い側の部分)の厚さは、第2隔壁部62bの突出端部の厚さよりも厚い。
【0045】
第2熱媒体流路58bは、熱交換部14から導かれた熱媒体を熱媒体流出部76に導くための流路であって、第2隔壁部62bよりも径方向内方に位置している。第2ガス流路60bは、ガス交換部16から導かれたガス(二酸化炭素ガス)をガス流出部78に導くための流路であって、第2隔壁部62bよりも径方向外方に位置している。
【0046】
熱交換部14は、血液流路28を流れる血液と熱媒体との間の熱交換を行うためのものである。熱媒体としては、例えば、水(純水)が用いられる。ただし、熱媒体は、水に限定されず、他の液体又は気体であってもよい。熱交換部14の全長は、外筒22の全長よりも若干長い。つまり、熱交換部14は、その両端部が外筒22の外側に突出している。
【0047】
熱交換部14は、複数の第1中空糸膜14aによって筒状に構成されている。各第1中空糸膜14aは、熱交換部14の全長に亘って延在するようにコア20の外面(第1支持部40及び第2支持部50)に巻回されている。互いに隣り合う第1中空糸膜14aの間には、血液が流通可能な隙間が形成されている。各第1中空糸膜14aの一端の開口部は、第1熱媒体流路58a内に連通し、各第1中空糸膜14aの他端の開口部は、第2熱媒体流路58b内に連通している。すなわち、各第1中空糸膜14aの内腔には、熱媒体が流通する。
【0048】
第1中空糸膜14aは、熱媒体及び血液を透過させないように構成されている。第1中空糸膜14aの構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロチレン、ポリメチルペンテン等の高分子材料が用いられ、好ましくは、ポリアミドである。第1中空糸膜14aの内径は、例えば、50μm~700μmの範囲に設定するのが好ましい。この場合、第1中空糸膜14aの内腔を流通する熱媒体の流路抵抗を比較的小さくすことができる。第1中空糸膜14aの外径は、100μm~1000μmの範囲に設定するのが好ましく、120μm~800μmの範囲に設定するのがより好ましい。この場合、第1中空糸膜14aの表面積を効率的に大きくすることができる。
【0049】
ガス交換部16は、血液流路28を流れる血液に酸素ガスを供給するとともに血液中の二酸化炭素を除去するためのものである。ガス交換部16は、熱交換部14の外周側に配設されている。つまり、ガス交換部16と熱交換部14とは径方向で互いに重なるように配置されている。ガス交換部16の全長は、熱交換部14の全長と同一である。
【0050】
ガス交換部16は、複数の第2中空糸膜16aによって筒状に構成されている。各第2中空糸膜16aは、ガス交換部16の全長に亘って延在するように熱交換部14の外面に配設された中間スペーサ18の外面に巻回されている。互いに隣り合う第2中空糸膜16aの間には、血液が流通可能な隙間が形成されている。各第2中空糸膜16aの一端の開口部は、第1ガス流路60a内に連通し、各第2中空糸膜16aの他端の開口部は、第2ガス流路60b内に連通している。すなわち、各第2中空糸膜16aの内腔には、ガス(酸素ガス及び二酸化炭素ガス)が流通する。
【0051】
第2中空糸膜16aは、酸素ガス及び二酸化炭素ガスを透過させる一方で血液を透過させないように構成されている。第2中空糸膜16aの構成材料及び内径は、第1中空糸膜14aの構成材料及び内径と同様に設定することができる。
【0052】
図1図3に示すように、中間スペーサ18は、熱交換部14の外周面に配設されている。換言すれば、中間スペーサ18は、熱交換部14とガス交換部16との間に設けられている。中間スペーサ18は、円筒状に構成され、第1端部18a及び第2端部18bを有する。
【0053】
図1及び図2において、中間スペーサ18の第1端部18a(一端部)は、熱交換部14及びガス交換部16の一端部における第1隔壁部62aに対して径方向に重ならない部分に位置している。換言すれば、中間スペーサ18の第1端部18aは、第1隔壁部62aの突出端の近傍に位置している。すなわち、中間スペーサ18の第1端部18aは、第1隔壁部62aの突出端よりも第2カバー部材24b側に若干ずれて位置している。
【0054】
中間スペーサ18の第2端部18b(他端部)は、熱交換部14及びガス交換部16の他端部における第2隔壁部62bに対して径方向に重ならない部分に位置している。換言すれば、中間スペーサ18の第2端部18bは、第2隔壁部62bの突出端の近傍に位置している。すなわち、中間スペーサ18の第2端部18bは、第2隔壁部62bの突出端よりも第1カバー部材24a側に若干ずれて位置している。
【0055】
中間スペーサ18は、連続した1本の中間中空糸膜19をガス交換部16の外周面に巻回することによって筒状に形成されている。中間スペーサ18は、中間中空糸膜19がガス交換部16の径方向に二重以上に重ねられて形成されている。中間中空糸膜19の重ね数は、中間スペーサ18の厚さ(肉厚)が第1隔壁部62a及び第2隔壁部62bのそれぞれの突出端部の厚さよりも厚くなるように設定されている。ただし、中間中空糸膜19は、ガス交換部16の径方向に互いに重ねられていなくてもよい。換言すれば、中間中空糸膜19は、ガス交換部16の外周面に一重に巻回されていてもよい。
【0056】
中間中空糸膜19は、第1中空糸膜14aと同じものが用いられている。ただし、中間中空糸膜19の内径及び構成材料は、第1中空糸膜14aの内径及び構成材料と異なっていてもよい。この場合、中間中空糸膜19の内径及び構成材料は、上述した第1中空糸膜14aの内径及び構成材料から選択することができる。
【0057】
図2に示すように、収容空間Sの一端側には、血液の外部(第1熱媒体流路58a及び第1ガス流路60a)への漏出を防止するための第1封止部材82aが充填されている。具体的には、第1封止部材82aは、熱交換部14の一端部と第1環状凸部42との間、熱交換部14の一端部とガス交換部16の一端部との間、ガス交換部16の一端部と外筒22の一端部との間に充填されている。
【0058】
収容空間Sの他端側には、血液の外部(第2熱媒体流路58b及び第2ガス流路60b)への漏出を防止するための第2封止部材82bが充填されている。具体的には、第2封止部材82bは、熱交換部14の他端部と第2環状凸部52との間、熱交換部14の他端部とガス交換部16の他端部との間、ガス交換部16の他端部と外筒22の他端部との間に充填されている。第1封止部材82a及び第2封止部材82bのそれぞれは、例えば、ウレタン等の樹脂が用いられる。
【0059】
次に、このように構成される人工肺10の動作について説明する。
【0060】
図4に示すように、人工肺10では、熱媒体は熱媒体流入部68に供給され、酸素ガスはガス流入部70に供給され、人体の血液は図示しない遠心ポンプによって血液流入部36に導かれる。熱媒体は、熱媒体流入部68から第1熱媒体流路58aを介して熱交換部14の各第1中空糸膜14aの内腔に導入される。酸素ガスは、ガス流入部70から第1ガス流路60aを介してガス交換部16の各第2中空糸膜16aの内腔に導入される。
【0061】
血液は、血液流入部36から血液導入路48を介して血液流路28(収容空間S)に導かれる。血液流路28の血液は、収容空間S内を径方向外方に向かって熱交換部14の隣り合う第1中空糸膜14aの隙間を流通する。これにより、血液と第1中空糸膜14a内の熱媒体との間で熱交換が行われる。
【0062】
熱交換が行われた血液は、収容空間S内を径方向外方に向かってガス交換部16の隣り合う第2中空糸膜16aの隙間を流通する。これにより、第2中空糸膜16a内の酸素ガスが第2中空糸膜16aの壁部を透過して血液中に供給されるとともに血液中の二酸化炭素ガスが第2中空糸膜16aの壁部を透過して第2中空糸膜16a内に除去される。ガス交換が行われた血液は、血液流路28内を周方向に流れて血液流出部54から人工肺10の外部に流出されて人体に戻される。
【0063】
血液との間で熱交換が行われた熱媒体は、各第1中空糸膜14aの内腔から第2熱媒体流路58b及び熱媒体流出部76を介して外部に流出される。各第2中空糸膜16aの内腔の二酸化炭素ガスは、第2ガス流路60b及びガス流出部78を介して外部に流出される。
【0064】
次に、人工肺10の製造方法について説明する。
【0065】
人工肺10を製造する場合、図5の準備工程(ステップS1)を行う。準備工程では、図6Aに示すように、コア部材90を準備する。コア部材90は、上述したコア20と、コア20の一端に装着された円環状の第1キャップ部材92aと、コア20の他端に装着された円環状の第2キャップ部材92bとを備える。第1キャップ部材92aは第1環状凸部42に嵌合され、第2キャップ部材92bは第2環状凸部52に嵌合されている(図7参照)。
【0066】
続いて、図5図6B及び図7に示すように、第1巻回工程(ステップS2)において、第1中空糸膜14aをコア部材90の外周面に巻回することにより第1筒状部94を形成する。具体的には、連続した1本の第1中空糸膜14aをコア部材90の外周面に巻回するとともに軸線方向に複数回往復させることにより第1筒状部94を形成する。この際、第1中空糸膜14aは、第1キャップ部材92a及び第2キャップ部材92bの外周面にも巻回される。
【0067】
次に、図5の配設工程(ステップS3)を行う。配設工程では、図8に示すように、第1筒状部94の外周面の一端部のみを覆うように第1環状部材96aを配置する。第1環状部材96aは、第1キャップ部材92aに装着される。そして、図9に示すように、第1筒状部94の外周面の中央部分に中間スペーサ18を配設する。この際、中間スペーサ18は、第1端部18aが第1支持部40の径方向外方に位置するとともに第2端部18bが第2支持部50の径方向外方に位置するように配置される。
【0068】
中間スペーサ18は、第1筒状部94の外周面に中間中空糸膜19を巻回することにより形成する。具体的には、連続した1本の中間中空糸膜19を第1筒状部94の外面に巻回するとともに軸線方向に複数回往復させることにより中間スペーサ18を形成する。
【0069】
中間中空糸膜19と第1中空糸膜14aとは1本の中空糸膜として構成されている。そのため、中間中空糸膜19の始端19a(中間中空糸膜19と第1中空糸膜14aとの境界)は、第1筒状部94の一端部に位置している。中間中空糸膜19の巻回する範囲は、第1筒状部94の全長(第1中空糸膜14aの巻回範囲)よりも短い。図10において、中間中空糸膜19は、その終端19bが第1筒状部94のうち第1封止部材82aが充填される範囲R1に位置するように切断される。すなわち、中間中空糸膜19の終端19bは、後述する切断工程において切断される第1切断線C1よりも内側(第2キャップ部材92b側)に位置している。そして、中間中空糸膜19の終端19bは、第1筒状部94に対して仮止めされる。この時点で、中間中空糸膜19の終端19bは、開口している。
【0070】
その後、第1筒状部94の外周面の他端部のみを覆うように第2環状部材96bを配置する。第2環状部材96bは、第2キャップ部材92bに装着される。これにより、中間スペーサ18は、第1環状部材96aと第2環状部材96bとの間に位置する。
【0071】
続いて、図5及び図11に示すように、第2巻回工程(ステップS4)において、第2中空糸膜16aを第1環状部材96a、中間スペーサ18及び第2環状部材96bの外周面に巻回することにより第2筒状部98を形成する。具体的には、連続した1本の第2中空糸膜16aを第1環状部材96a、中間スペーサ18及び第2環状部材96bの外周面に連続的に巻回するとともに軸線方向に複数回往復させることにより第2筒状部98を形成する。
【0072】
次に、図5及び図12に示すように、外筒配置工程(ステップS5)において、第2筒状部98の外面を覆うように外筒22を配置する。そして、図5及び図13に示すように、切断工程(ステップS6)において、第1切断線C1(図12参照)及び第2切断線C2(図12参照)に沿って第1筒状部94及び第2筒状部98の両端部を切断することにより、熱交換部14及びガス交換部16を形成する。
【0073】
この際、第1キャップ部材92a、第1環状部材96a、第2キャップ部材92b及び第2環状部材96bのそれぞれの一部についても切除される。これにより、熱交換部14と第1環状凸部42との間には第1キャップ部材92aの一部が残され、熱交換部14及びガス交換部16の一端部同士の間には第1環状部材96aの一部が残されている。また、熱交換部14と第2環状凸部52との間には第2キャップ部材92bの一部が残され、熱交換部14及びガス交換部16の他端部同士の間には第2環状部材96bの一部が残されている。さらに、中間中空糸膜19は、第1切断線C1の位置で開口する。
【0074】
そして、封止工程(ステップS7)において、熱交換部14及びガス交換部16の一端部における第1中空糸膜14a及び第2中空糸膜16aの外側を第1封止部材82aで封止するとともに熱交換部14及びガス交換部16の他端部における第1中空糸膜14a及び第2中空糸膜16aの外側を第2封止部材82bで封止する。この際、中間中空糸膜19の終端19bの開口部は、第1封止部材82aによって閉塞される。
【0075】
その後、図5及び図14に示すように、除去工程(ステップS8)において、第1キャップ部材92a、第1環状部材96a、第2キャップ部材92b及び第2環状部材96bを除去する。これにより、熱交換部14及びガス交換部16の一端部同士の間に第1隙間100aが形成されるとともに熱交換部14及びガス交換部16の他端部同士の間に第2隙間100bが形成される。
【0076】
そして、装着工程(ステップS9)において、外筒22及びコア20の一端部に第1カバー部材24aを装着した状態で接着剤64aによって固定するとともに外筒22及びコア20の他端部に第2カバー部材24bを装着した状態で接着剤64bによって固定する。この際、第1隔壁部62aの突出端部は第1隙間100aに挿入され、第2隔壁部62bの突出端部は第2隙間100bに挿入される。これにより、図1の人工肺10が製造されるに至る。
【0077】
次に、本実施形態の効果について以下に説明する。
【0078】
図1及び図2に示すように、人工肺10において、第1隔壁部62aは、熱交換部14及びガス交換部16の一端部同士の間に挿入されている。第2隔壁部62bは、熱交換部14及びガス交換部16の他端部同士の間に挿入されている。熱交換部14とガス交換部16との間には、筒状に構成された中間スペーサ18が配設されている。中間スペーサ18の第1端部18aは、熱交換部14及びガス交換部16の一端部における第1隔壁部62aに対して径方向に重ならない部分に位置している。
【0079】
これにより、中間スペーサ18によって熱交換部14及びガス交換部16の一端部同士の間に第1隔壁部62aが挿入可能な第1隙間100aを形成することができる。よって、第1隔壁部62aによって熱交換部14の一端部及びガス交換部16の一端部が径方向に押され、第1中空糸膜14aの内腔及び第2中空糸膜16aの内腔が潰されることを抑制できる。従って、熱交換率及びガス交換率が低下することを抑えることができる。
【0080】
中間スペーサ18の第2端部18bは、熱交換部14及びガス交換部16の他端部における第2隔壁部62bに対して径方向に重ならない部分に位置している。これにより、中間スペーサ18によって熱交換部14及びガス交換部16の他端部同士の間に第2隔壁部62bが挿入可能な第2隙間100bを形成することができる。よって、第2隔壁部62bによって熱交換部14の他端部及びガス交換部16の他端部が径方向に押され、第1中空糸膜14aの内腔及び第2中空糸膜16aの内腔が潰されることを抑制できる。従って、熱交換率及びガス交換率が低下することを一層抑えることができる。
【0081】
第1隔壁部62a及び第2隔壁部62bのそれぞれのうち熱交換部14及びガス交換部16の端部同士の間に挿入された部分の厚さ(突出端部の厚さ)は、中間スペーサ18の肉厚よりも薄い。これにより、第1隔壁部62a及び第2隔壁部62bによって第1中空糸膜14aの内腔及び第2中空糸膜16aの内腔が潰されることを一層抑えることができる。
【0082】
中間スペーサ18は、中間中空糸膜19の内腔に流体が流通しないように形成されている。これにより、中間中空糸膜19の内腔にガス(酸素)や熱媒体が流通して熱交換率又はガス交換率が低下することを抑えることができる。
【0083】
中間スペーサ18は、連続した1本の中間中空糸膜19によって構成され、中間中空糸膜19の少なくとも一方の端部の開口部は閉塞されている。これにより、中間スペーサ18の中間中空糸膜19の内腔に熱媒体又はガスが流通することを阻止することができる。
【0084】
中間スペーサ18は、中間中空糸膜19が径方向に互いに重ねられて形成されている。これにより、中間スペーサ18の厚さ(肉厚)を容易に調整することができる。
【0085】
人工肺10の製造方法では、配設工程において、封止工程と装着工程との間で、熱交換部14及びガス交換部16の一端部同士の間に第1隙間100aが形成されるとともに熱交換部14及びガス交換部16の他端部同士の間に第2隙間100bが形成されるように中間スペーサ18を第1筒状部94の外面に配設している。そして、装着工程において、第1隙間100aに第1隔壁部62aを挿入するとともに第2隙間100bに第2隔壁部62bを挿入している。これにより、人工肺10の熱交換率及びガス交換率が低下することを抑えることができる。
【0086】
配設工程では、第1筒状部94の一端部のみを覆うように第1環状部材96aを配置するとともに第1筒状部94の他端部のみを覆うように第2環状部材96bを配置している。第2巻回工程では、第2中空糸膜16aを中間スペーサ18、第1環状部材96a及び第2環状部材96bのそれぞれの外面に巻回している。そして、封止工程の後で、第1環状部材96a及び第2環状部材96bを除去する除去工程を行っている。
【0087】
これにより、第1環状部材96aによって熱交換部14及びガス交換部16の一端部同士の間に第1隔壁部62aが挿入可能な第1隙間100aを確実に形成することができる。また、第2環状部材96bによって熱交換部14及びガス交換部16の他端部同士の間に第2隔壁部62bが挿入可能な第2隙間100bを確実に形成することができる。
【0088】
第1巻回工程では、連続した1本の第1中空糸膜14aを巻回するとともに軸線方向に複数回往復させることにより第1筒状部94を形成している。これにより、第1筒状部94を効率的に形成することができる。第2巻回工程では、連続した1本の第2中空糸膜16aを巻回するとともに軸線方向に複数回往復させることにより第2筒状部98を形成している。これにより、第2筒状部98を効率的に形成することができる。
【0089】
封止工程では、中間スペーサ18を構成する中間中空糸膜19の終端19bの開口部を第1封止部材82aによって閉塞させている。これにより、中間中空糸膜19の内腔に流体が流通することを阻止することができる。
【0090】
図15に示すように、配設工程において、中間中空糸膜19は、その終端19bが第1筒状部94のうち第2封止部材82bが充填される範囲R2に位置するように切断されてもよい。すなわち、中間中空糸膜19の終端19bは、第2切断線C2よりも内側(第1キャップ部材92a側)に位置している。そして、中間中空糸膜19の終端19bは、第1筒状部94に対して仮止めされる。この時点で、中間中空糸膜19の終端19bは開口している。この場合、封止工程において、中間中空糸膜19の終端19bの開口部は、第2封止部材82bによって閉塞される。このように中間スペーサ18を形成した場合であっても同様の効果を奏する。
【0091】
人工肺10において、中間スペーサ18は、第1端部18aが熱交換部14及びガス交換部16の一端部における第1隔壁部62aに対して径方向に重ならない部分に位置し、第2端部18bが熱交換部14及びガス交換部16の他端部でない部分(例えば、軸線方向の中央部)に位置していていてもよい。この場合であっても、熱交換部14及びガス交換部16の一端部において、第1隔壁部62aによって第1中空糸膜14aの内腔と第2中空糸膜16aの内腔が潰されることを抑制できる。
【0092】
人工肺10では、熱交換部14をガス交換部16よりも径方向内方に位置させてもよい。
【0093】
また、人工肺10において、中間スペーサ18は、第1端部18aが熱交換部14及びガス交換部16の一端部でない部分(例えば、軸線方向の中央部)に位置し、第2端部18bが熱交換部14及びガス交換部16の他端部における第2隔壁部62bに対して径方向に重ならない部分に位置していてもよい。
【0094】
人工肺10の製造方法において、配設工程では、第1環状部材96a及び第2環状部材96bを第1筒状部94の外面に設けなくてもよい。この場合であっても、中間スペーサ18によって、第1隙間100a及び第2隙間100bを形成することが可能である。
【0095】
本発明に係る人工肺及びその製造方法は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15