(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】ウェハレンズを成型するための金型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/42 20060101AFI20220421BHJP
C03B 11/08 20060101ALI20220421BHJP
B29L 11/00 20060101ALN20220421BHJP
【FI】
B29C33/42
C03B11/08
B29L11:00
(21)【出願番号】P 2020138274
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2020-08-18
(31)【優先権主張番号】201910770835.8
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519312957
【氏名又は名称】エーエーシー オプティックス ソリューションズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】ピーター クローネ ニールセン
(72)【発明者】
【氏名】ニールス クリスチャン ローマー ホルム
(72)【発明者】
【氏名】▲ヂゥー▼ ▲ビン▼▲クゥー▼
(72)【発明者】
【氏名】潘 政民
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-204632(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0075264(US,A1)
【文献】特開2011-209699(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102193115(CN,A)
【文献】特開2012-179768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/42
C03B 11/08
B29D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハレンズを成型するための金型であって、
上型と、下型とを備え、
前記上型は、第1成型面を備え、前記第1成型面は、複数の第1成型部を備え、前記第1成型部は、前記第1成型面から凹んで形成された第1窪み部を備え、
前記下型は、前記上型に対応して嵌合しており、前記下型は、前記第1成型面に正対する第2成型面を備え、前記第2成型面は、複数の第2成型部を備え、且つ前記第2成型部は、前記第2成型面から前記第1成型面の方向に向かって凸設されて形成された第1凸起部を備え、
前記第1成型部と第2成型部とは、1対1に対応して設けられ、
前記第1成型部は、前記第1成型面から前記下型から離れる方向に向かって凹んで形成された第2窪み部をさらに備え、前記第2窪み部は、前記第1窪み部を取り囲んで設けられ、
前記第1凸起部の体積V1は、条件式(1)を満たし、
V1=V2+V3 (1)
ここで、V2は、第1窪み部の容積であり、V3は、第2窪み部の容積であり、
前記第1窪み部は、前記第2窪み部と間隔を隔てて設けられ、前記第1成型部は、前記第1窪み部と前記第2窪み部との間に設けられ
、略平面状を呈した接続部をさらに備え、前記接続部と前記第1窪み部との間は、滑らかに遷移し、前記接続部と前記第2窪み部との間は、滑らかに遷移し、前記接続部は、リング状をなすことを特徴とするウェハレンズを成型するための金型。
【請求項2】
前記第2窪み部の内面は、滑らかな曲面であることを特徴とする請求項1に記載のウェハレンズを成型するための金型。
【請求項3】
前記第2窪み部の断面は、弧状をなすことを特徴とする請求項1に記載のウェハレンズを成型するための金型。
【請求項4】
前記第2窪み部は、前記第1窪み部の外周に対称的に取り囲むことを特徴とする請求項1に記載のウェハレンズを成型するための金型。
【請求項5】
前記第2窪み部は、連続したリング状をなすことを特徴とする請求項4に記載のウェハレンズを成型するための金型。
【請求項6】
複数の前記第1窪み部は、マトリクス状に配列され、複数の前記第2窪み部は、マトリクス状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載のウェハレンズを成型するための金型。
【請求項7】
前記第1窪み部の内面と前記第1凸起部の外面とは、いずれも球面をなすことを特徴とする請求項1に記載のウェハレンズを成型するための金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、レンズ製造技術分野に関し、特にウェハレンズを成型するための金型に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズの製造の基本プロセスは、通常、ガラス又は樹脂などの材料を下型の表面に配分し、上型パーツを下型パーツに置き、その凹面と凸面を互いに対向させてレンズ形状のレンズキャビティを形成し、レンズキャビティ内に形成されたレンズは、個々のレンズにカットされるか、又は直接適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
製造過程において、材料の径方向の流れが大きいため、レンズに気泡や割れが発生したり、充填物が欠けたりしてしまい、レンズの品質に影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、材料の径方向の流れを低下させることができる、ウェハレンズを成型するための金型を提供する。
【0005】
本発明によるウェハレンズを成型するための金型は、
上型と、下型とを備え、
前記上型は、第1成型面を備え、前記第1成型面は、複数の第1成型部を備え、前記第1成型部は、前記第1成型面から凹んで形成された第1窪み部を備え、
前記下型は、前記上型に対応して嵌合し、前記下型は、前記第1成型面に正対する第2成型面を備え、前記第2成型面は、複数の第2成型部を備え、且つ前記第2成型部は、前記第2成型面から前記第1成型面の方向に向かって凸設されて形成された第1凸起部を備え、
前記第1成型部と第2成型部とは、1対1に対応して設けられ、
前記第1成型部は、前記第1成型面から前記下型から離れる方向に向かって凹んで形成された第2窪み部をさらに備え、前記第2窪み部は、前記第1窪み部を取り囲んで設けられ、
前記第1凸起部の体積V1は、条件式(1)を満たし、
V1=V2+V3 (1)
ここで、V2は、第1窪み部の容積であり、V3は、第2窪み部の容積である。
【0006】
1種の可能な設計では、前記第2窪み部の内面は、滑らかな曲面である。
【0007】
1種の可能な設計では、前記第2窪み部の断面は、弧状をなす。
【0008】
1種の可能な設計では、前記第2窪み部は、前記第1窪み部の外周に対称的に取り囲むようになる。
【0009】
1種の可能な設計では、前記第2窪み部は、連続したリング状をなす。
【0010】
1種の可能な設計では、複数の前記第1窪み部は、マトリクス状に配列され、複数の前記第2窪み部は、マトリクス状に配列されている。
【0011】
1種の可能な設計では、前記第1窪み部の内面と前記第1凸起部の外面とは、いずれも球面をなす。
【0012】
1種の可能な設計では、前記第1窪み部は、前記第2窪み部と間隔を隔てて設けられ、前記第1成型部は、前記第1窪み部と前記第2窪み部との間に設けられる接続部をさらに備える。
【0013】
1種の可能な設計では、前記接続部と前記第1窪み部との間は、滑らかに遷移し、前記接続部と前記第2窪み部との間は、滑らかに遷移する。
【0014】
1種の可能な設計では、前記接続部は、リング状をなす。
【発明の効果】
【0015】
本願による技術案は、以下の有益な効果を奏することができる。
本願によるウェハレンズを成型するための金型は、上型と下型とを備え、上型と下型で形成された成型部により、レンズの材料をレンズの形状に形成することができる。上型は、複数の第1成型部を備え、第1成型部は、第1窪み部が設けられ、第1窪み部の頂面の形状は、レンズの光学頂面の形状と同じである。下型は、上型に対応して嵌合しており、複数の第2成型部を備え、且つ第2成型部は、第1凸起部が設けられ、第1凸起部の形状は、レンズの光学底面の形状と同じであり、第1成型部と第2成型部とは、1対1に対応して設けられている。なお、第1成型部は、第2窪み部が設けられ、第2窪み部は、第1窪み部を取り囲んで設けられる。第2窪み部を設けることで、上型キャビティの容積を適切に補償して、上型キャビティの体積を下型における凸起の体積に近づき、上型と下型との体積差を低下させることができる。これによって、多量の材料が第1窪み部の中心に流れることを防止し、即ち、径方向の材料の流れを減少させ、径方向の流れをゼロに近づくことができるので、レンズに気泡や割れが発生したり、充填物が欠けたりするなどによってレンズの品質が影響されるという技術問題を低減させることができる。
【0016】
本願に提供される上記の一般的な説明および以下の詳細な説明は例示にすぎず、本願を限定するものではないと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本願の実施形態の技術案をより明確に説明するために、以下は、実施例に必要な図面を簡単に紹介するが、以下の説明における図面は、本願のいくつかの実施例に過ぎないことは明らかである。当業者は、創造的な作業なしにこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0018】
【
図1】本願の実施例に係るウェハレンズを成型するための金型の構成概略図である。
【0019】
ここでの図面は、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、本願と一致する実施例を示し、本願の原理を説明するために本明細書と一緒に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願の技術案をよりよく理解するために、以下は、添付の図面を参照して本願の実施例を詳細に説明する。
【0021】
説明した実施例は、本願の実施例の一部にすぎず、すべての実施形態ではないことは明らかである。本願の実施例に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本願の保護範囲に含まれる。
【0022】
本願の実施例で使用される用語は、特定の実施例を説明することのみを目的とし、本願を限定する意図はない。本願の実施例および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1種」、および「当該」は、文脈が他の意味を明確に示さない限り、複数の形を含むことも意図される。
【0023】
本明細書で使用される「および/または」という用語は、関連するオブジェクトを説明する単なる関連関係であり、例えば、Aおよび/またはBは、Aが単独で存在し、AおよびBが同時に存在し、Bが単独で存在するという3つの関係があり得ることを示すと理解されたい。また、本明細書の「/」という符号は一般的に、前後の関連オブジェクトが「または」の関係にあることを示す。
【0024】
なお、本願の実施例に記載の「上」、「下」、「左」、「右」等の向きを示す用語は、図面の示す角度から記載したものであり、本願実施例を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、この文脈では、ある要素が別の要素に「上」または「下」に接続されていると記載される場合、他の要素に「上」または「下」に直接接続することができるだけでなく、中間要素を介して、別の要素の「上」または「下」に間接的に接続されてもよいと理解されるべきである。
【0025】
図1及び
図2に示すように、本実施例に係るウェハレンズを成型するための金型は、上型1及び下型2を備え、上型1は、第1成型面11を備え、第1成型面11は、複数の第1成型部を備え、第1成型部は、第1成型面11から凹んで形成された第1窪み部111を備え、下型2は、上型1に対応して嵌合するものであり、下型2は、第1成型面11に正対する第2成型面21を備え、第2成型面21は、複数の第2成型部を備え、且つ第2成型部は、第2成型面21から第1成型面11の方向に向かって凸設されて形成された第1凸起部211を備え、第1成型部と第2成型部とは、1対1に対応して設けられている。上型1と下型2で形成された成型部により、レンズ3の材料をレンズ3の形状に形成することができる。上型1は、複数の第1成型部を備え、第1成型部は、第1窪み部111が設けられ、第1窪み部111の頂面の形状は、レンズ3の光学頂面の形状と同じである。下型は、複数の第2成型部を備え、且つ第2成型部は、第1凸起部211が設けられ、第1凸起部211の形状は、レンズ3の光学底面の形状と同じであり、第1成型部と第2成型部とは、キャビティを形成可能であり、キャビティの形状は、製造されるレンズ3の形状と相補的である。ここで、第1成型部は、第1成型面11から下型2から離れる方向に向かって凹んで形成された第2窪み部112をさらに備え、第2窪み部112は、第1窪み部111を取り囲んで設けられ、第2窪み部112を設けることにより、上型1のキャビティの容積を適切に補償することができ、上型1におけるキャビティの容積を下型2における凸起の体積に近づき、上型1と下型2との体積差を低下させ、多量の材料が第1窪み部111の中心に流れることを防止し、即ち、径方向の材料の流れを減少させ、径方向の流れをゼロに近づき、レンズ3に気泡や割れが発生したり、充填物が欠けたりするなどによってレンズ3の品質が影響されるという技術問題を低減させることができる。
【0026】
また、径方向の材料の流れが小さくなるため、レンズ3にウェハの厚さの変化が発生すること、レンズに非点収差及び形状の間違いが発生すること、レンズ3に流線が現れること、キャビティ内に充填物が欠けることなどの技術問題の確率も低下させることができ、レンズ3の表面及び塗層の摩耗も低減させることができる。
【0027】
第1窪み部111及び第1凸起部211の幾何学的軸線は同じであり、金型でプレスするとき、幾何学的軸線の方向を基準とすることが可能であり、金型を取り外すとき、同じ基準を維持して、レンズ3に形状間違いが発生する確率を低下させる。
【0028】
図2に示すように、第1凸起部211の体積V1は、条件式(1)を満たす。
V1=V2+V3 (1)
但し、V2は、第1窪み部111の容積であり、V3は、第2窪み部112の容積である。
【0029】
第2窪み部112の体積V3は、上型1のキャビティの体積を補償することができ、上型1のキャビティの体積和であるV2+V3を下型2における凸起の体積V1と同じにすることで、材料の径方向の流れをゼロに近づけることが可能となり、それによってレンズ3に気泡や割れが発生したり、充填物が欠けたりするなどによりレンズ3の品質が影響されるという技術問題を低減させる。径方向の材料の流れが小さくなるため、さらにレンズ3にウェハの厚さの変化が発生すること、レンズに非点収差及び形状の間違いが発生すること、レンズ3に流線が現れること、キャビティ内に充填物が欠けることなどの技術問題の確率も低下させ、レンズ3の表面及び塗層の摩耗も低減させることができる。
【0030】
図4及び
図5に示すように、第2窪み部112の内面は、滑らかな曲面であり、これによって、レンズ3にウェハの厚さの変化などが発生する確率を低下させることが可能となる。
【0031】
1つの具体的な実施形態では、第2窪み部112の断面は、弧状をなし、これによって、レンズ3にウェハの厚さの変化が発生すること、レンズに非点収差及び形状間違いが発生すること、またはレンズ3に流線が現れることなどの確率を低下させる。
【0032】
1つの具体的な実施形態では、第2窪み部112は、第1窪み部111の外周に対称に取り囲むことで、多量の材料が第1窪み部111の中心に流れることを防止し、即ち径方向の材料の流れを低減させて、径方向の流れをゼロに近づくことによって、レンズ3に気泡や割れが発生したり、充填物が欠けたりするなどによってレンズ3の品質が影響されるという技術問題を低減させることができる。
【0033】
1つの具体的な実施形態では、第2窪み部112は、連続するリング状をなし、これによって、多量の材料が第1窪み部111の中心に流れることを防止し、即ち径方向の材料の流れを低減させ、径方向の流れをゼロに近づくことができる。よって、レンズ3に気泡や割れが発生したり、充填物が欠けたりするなどによってレンズ3の品質が影響されるという技術問題を低減させることができる。
【0034】
図3に示すように、複数の第1窪み部111は、マトリクス状に配列され、複数の第2窪み部112は、マトリクス状に配列され、即ち、レンズを形成するためのキャビティは、マトリクス状に配列され、よって、複数のレンズ3を同時に製造することができ、製造完了後、カットすることにより、複数のレンズ3が得られる。なお、キャビティの配列は、方形のパターンであってもよく、多角形の密集したパターンであってもよい。
【0035】
1つの具体的な実施形態では、第1窪み部111の内面と第1凸起部211外面とは、いずれも球面をなし、よって、加工しやすくなり、レンズ3の加工効率を向上させることができる。
【0036】
1つの具体的な実施形態では、第1窪み部111は、第2窪み部112と間隔を隔てて設けられ、第1成型部は、第1窪み部111と第2窪み部112との間に設けられる接続部113をさらに備え、これによって、材料が外へ流れることを増加させ、径方向の材料の流れを低減させ、径方向の流れをゼロに近づくことができる。よって、レンズ3に気泡や割れが発生したり、充填物が欠けたりするなどによってレンズ3の品質が影響されるという技術問題を低減させることができる。
【0037】
1つの具体的な実施形態では、接続部113と第1窪み部111との間は、滑らかに遷移し、接続部113と第2窪み部112との間は、滑らかに遷移することにより、レンズ3にウェハの厚さの変化が発生すること、レンズに非点収差及び形状の間違いが発生すること、レンズ3に流線が現れることの確率を低下させることができる。
【0038】
1つの具体的な実施形態では、接続部113は、リング状をなし、これによって、多量の材料が第1窪み部111の中心に流れることを防止し、即ち径方向の材料の流れを低減させ、径方向の流れをゼロに近づくことができる。よって、レンズ3に気泡や割れが発生したり、充填物が欠けたりするなどによってレンズ3の品質が影響されるという技術問題を低減させることができる。
【0039】
本発明の実施例に係る金型は、例示に過ぎず、金型は、凹光学表面又は凸光学表面を含むイ任意に組み合わせたレンズ3を製造することが可能である。
【0040】
上記は、本願の好ましい実施例にすぎず、本願を限定することを意図するものではなく、当業者にとって、本願は、様々な修正および変更を有し得る。本願の精神と原則の範囲内での変更、同等の交換、改善などは、すべて本願の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 上型
11 第1成型面
111 第1窪み部
112 第2窪み部
113 接続部
2 下型
21 第2成型面
211 第1凸起部
3 レンズ