(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20220421BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220421BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220421BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220421BHJP
C04B 35/01 20060101ALI20220421BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/052
H01M10/0566
C04B35/01
C04B38/00 303Z
(21)【出願番号】P 2020553761
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2019040650
(87)【国際公開番号】W WO2020090470
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2018206455
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】由良 幸信
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/147248(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/155156(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/155155(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/147387(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/025594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/052
H01M 10/0566
C04B 35/01
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ50μm以上のリチウム複合酸化物焼結体板である正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在されるセパレータと、電解液とを備えた、リチウム二次電池であって、
前記リチウム複合酸化物焼結体板は、層状岩塩構造を有する複数の一次粒子が結合した構造を有しており、
前記リチウム複合酸化物がLi
x(Co
1-yM
y)O
2±δ(式中、1.0≦x≦1.1、
0.1≦y≦0.8、0≦δ<1、M
はNi、Al、Ti及びMnからなる群から選択される少なくとも1種である)で表される組成を有し、かつ、
前記複数の一次粒子の平均傾斜角が0°を超え30°以下であり、前記平均傾斜角は、前記複数の一次粒子の(003)面と前記リチウム複合酸化物焼結体板の板面とがなす角度の平均値である、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記リチウム複合酸化物焼結体板の厚さが50~500μmである、請求項
1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記リチウム複合酸化物焼結体板の厚さが90~400μmである、請求項
2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記リチウム複合酸化物焼結体板の気孔率が10~55%である、請求項1~
3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記リチウム複合酸化物焼結体板の平均気孔径が0.07~5μmである、請求項1~
4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記リチウム複合酸化物焼結体板は、体積基準D10、D50及びD90気孔径が、
1.1≦D50/D10≦7.1、
1.1≦D90/D50≦7.0、及び
1.2≦D90/D10≦50.0
の関係を満たす、請求項1~
5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
平均気孔アスペクト比が1.5~15である、請求項1~
6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池(リチウムイオン二次電池とも称される)用の正極活物質層として、リチウム複合酸化物(典型的にはリチウム遷移金属酸化物)の粉末とバインダーや導電剤等の添加物とを混練及び成形して得られた、粉末分散型の正極が広く知られている。かかる粉末分散型の正極は、容量に寄与しないバインダーを比較的多量に(例えば10重量%程度)含んでいるため、正極活物質としてのリチウム複合酸化物の充填密度が低くなる。このため、粉末分散型の正極は、容量や充放電効率の面で改善の余地が大きかった。
【0003】
そこで、正極ないし正極活物質層をリチウム複合酸化物焼結体板で構成することにより、容量や充放電効率を改善しようとする試みがなされている。この場合、正極又は正極活物質層にはバインダーが含まれないため、リチウム複合酸化物の充填密度が高くなることで、高容量や良好な充放電効率が得られることが期待される。
【0004】
例えば、特許文献1(特許第5587052号公報)には、正極集電体と、導電性接合層を介して正極集電体と接合された正極活物質層とを備えた、リチウム二次電池の正極が開示されている。この正極活物質層は、厚さが30μm以上であり、空隙率が3~30%であり、開気孔比率が70%以上であるリチウム複合酸化物焼結体板(典型的にはLiCoO2焼結体板)からなるとされている。また、リチウム複合酸化物焼結体板は、粒子径が5μm以下であり且つ層状岩塩構造を有する一次粒子が多数結合した構造を有し、且つ、X線回折における、(104)面による回折強度に対する(003)面による回折強度の比率[003]/[104]が2以下であるとされている。
【0005】
特許文献2(特許第5752303号公報)には、リチウム二次電池の正極に用いられる、リチウム複合酸化物焼結体板(典型的にはLiCoO2焼結体板)が開示されており、このリチウム複合酸化物焼結体板は、厚さが30μm以上であり、空隙率が3~30%であり、開気孔比率が70%以上であるとされている。また、このリチウム複合酸化物焼結体板は、粒子径が2.2μm以下であり且つ層状岩塩構造を有する一次粒子が多数結合した構造を有し、且つ、X線回折における、(104)面による回折強度に対する(003)面による回折強度の比率[003]/[104]が、2以下であるとされている。
【0006】
特許文献3(特許第5703409号公報)には、リチウム二次電池の正極に用いられるリチウム複合酸化物焼結体板(典型的にはLiCoO2焼結体板)で開示されており、このリチウム複合酸化物焼結体板は、多数の一次粒子が結合した構造を有しており、一次粒子の大きさである一次粒子径が5μm以下である。また、リチウム複合酸化物焼結体板は、厚さが30μm以上であり、平均気孔径が0.1~5μmであり、空隙率が3%以上であり且つ15%未満であるとされている。このリチウム複合酸化物焼結体板も、X線回折における、(104)面による回折強度に対する(003)面による回折強度の比率[003]/[104]が、2以下であるとされている。
【0007】
特許文献4(国際公開第2017/146088号)には、固体電解質を備えるリチウム二次電池の正極として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)等のリチウム複合酸化物で構成される複数の一次粒子を含み、複数の一次粒子が正極板の板面に対して0°超30°以下の平均配向角度で配向している、配向正極板を用いることが開示されている。
【0008】
特許文献5(特開2015-185337号公報)には、正極、負極及び固体電解質層を有し、正極又は負極にチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)焼結体を用いた全固体電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5587052号公報
【文献】特許第5752303号公報
【文献】特許第5703409号公報
【文献】国際公開第2017/146088号
【文献】特開2015-185337号公報
【発明の概要】
【0010】
ところで、リチウム二次電池のエネルギー密度を向上するために、正極板を厚くすることが望まれる。しかしながら、単に厚さを50μm以上に厚くしただけの無配向LiCoO2焼結体板を正極として備えたリチウム二次電池は、45℃以上の高温で駆動又は保存した場合に、抵抗の上昇や性能の劣化等の問題が起こりうる。このため、高温耐久性の更なる改善が望まれる。
【0011】
本発明者らは、今般、LiCoO2焼結体板において一次粒子の(003)面を板面に対して平均で0°を超え30°以下の角度に配向させ、なおかつ、Coの一部をMg、Ni、Al、Ti及びMnから選択される特定の元素Mで置換することにより、当該焼結体板を正極として用いたリチウム二次電池において高温耐久性が大きく改善するとの知見を得た。
【0012】
したがって、本発明の目的は、45℃以上の高温(例えば60℃)で駆動又は保存された際においても抵抗上昇や性能劣化が生じにくい、すなわち高温耐久性に優れた、リチウム二次電池を提供することにある。
【0013】
本発明の一態様によれば、厚さ50μm以上のリチウム複合酸化物焼結体板である正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在されるセパレータと、電解液とを備えた、リチウム二次電池であって、
前記リチウム複合酸化物焼結体板は、層状岩塩構造を有する複数の一次粒子が結合した構造を有しており、
前記リチウム複合酸化物がLix(Co1-yMy)O2±δ(式中、1.0≦x≦1.1、0<y≦0.8、0≦δ<1、MはMg、Ni、Al、Ti及びMnからなる群から選択される少なくとも1種である)で表される組成を有し、かつ、
前記複数の一次粒子の平均傾斜角が0°を超え30°以下であり、前記平均傾斜角は、前記複数の一次粒子の(003)面と前記リチウム複合酸化物焼結体板の板面とがなす角度の平均値である、リチウム二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の二次電池の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本発明を特定するために用いられるパラメータの定義を以下に示す。
【0016】
本明細書において「気孔率」とは、リチウム複合酸化物焼結体板における、気孔(開気孔及び閉気孔を含む)の体積比率である。この気孔率は、焼結体板の断面SEM像を画像解析することにより測定することができる。例えば、焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)で加工して研磨断面を露出させる。この研磨断面を所定の倍率(例えば1000倍)及び所定の視野(例えば125μm×125μm)でSEM(走査電子顕微鏡)により観察する。得られたSEM像を画像解析し、視野内の全ての気孔の面積を視野内の焼結体板の面積(断面積)で除し、得られた値に100を乗じることにより気孔率(%)を得る。
【0017】
本明細書において「平均気孔径」とは、リチウム複合酸化物焼結体板について測定された、横軸を気孔径、縦軸を(全気孔容積100%に対する)累積体積%とした気孔径分布(積算分布)における体積基準D50気孔径である。体積基準D50気孔径は粉末の粒度分布において広く知られる体積基準D50径と同義である。したがって、体積基準D50気孔径は、累積気孔容積が全気孔容積の50%となる気孔径を意味する。気孔径分布は、水銀ポロシメーターを用いて水銀圧入法により測定することができる。
【0018】
本明細書において「一次粒径」とは、リチウム複合酸化物焼結体板を構成する複数の一次粒子の平均粒径である。この一次粒径は、焼結体板の断面SEM像を画像解析することにより測定することができる。例えば、焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)で加工して研磨断面を露出させる。この研磨断面を所定の倍率(例えば1000倍)及び所定の視野(例えば125μm×125μm)でSEM(走査電子顕微鏡)により観察する。このとき、視野内に20個以上の一次粒子が存在するように視野を設定する。得られたSEM像中の全ての一次粒子について外接円を描いたときの当該外接円の直径を求め、これらの平均値を一次粒径とする。
【0019】
本明細書において「一次粒子の傾斜角」とは、一次粒子の(003)面とリチウム複合酸化物焼結体板の板面とがなす角度である。この一次粒子の傾斜角は、焼結体板の断面を電子線後方散乱回折法(EBSD)により解析することにより測定することができる。例えば、焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)で加工して研磨断面を露出させる。この研磨断面を所定の倍率(例えば1000倍)及び所定の視野(例えば125μm×125μm)で電子線後方散乱回折法(EBSD)により解析する。EBSDにより得られるEBSD像においては各一次粒子の傾斜角が色の濃淡で表され、色が濃いほど配向角度が小さいことを示す。こうして各一次粒子の傾斜角を知ることができる。また、本明細書において「一次粒子の平均傾斜角」とは、複数の一次粒子の(003)面とリチウム複合酸化物焼結体板の板面とがなす角度の平均値であり、上記所定の倍率(例えば1000倍)及び所定の視野(例えば125μm×125μm)のEBSD像において、全ての粒子面積に占める、(003)より0~30°の範囲内に含まれる面積の割合(%)を算出することにより得ることができる。
【0020】
本明細書において「体積基準D10、D50及びD90気孔径」とは、リチウム複合酸化物焼結体板について測定された、横軸を気孔径、縦軸を(全気孔容積100%に対する)累積体積%とした気孔径分布(積算分布)における体積基準D10、D50及びD90気孔径である。体積基準D10、D50及びD90気孔径は粉末の粒度分布において広く知られる体積基準D10、D50及びD90径と同義である。したがって、体積基準D10、D50及びD90気孔径は、累積気孔容積が全気孔容積のそれぞれ10%、50%及び90%となる気孔径を意味する。気孔径分布は、水銀ポロシメーターを用いて水銀圧入法により測定することができる。
【0021】
本明細書において「平均気孔アスペクト比」とは、リチウム複合酸化物焼結体板内に含まれる気孔のアスペクト比の平均値である。気孔のアスペクト比は、気孔の長手方向の長さの気孔の短手方向の長さに対する比である。平均気孔アスペクト比は、焼結体板の断面SEM像を画像解析することにより測定することができる。例えば、焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)で加工して研磨断面を露出させる。この研磨断面を所定の倍率(例えば1000倍)及び所定の視野(例えば125μm×125μm)でSEM(走査電子顕微鏡)により観察する。得られたSEM像を画像解析ソフトで二値化し、得られた二値化画像から気孔を判別する。判別した気孔について、長手方向の長さを短手方向の長さで除することによりアスペクト比を算出する。二値化画像中の全ての気孔についてのアスペクト比を算出し、それらの平均値を平均気孔アスペクト比とする。
【0022】
リチウム二次電池
図1に本発明によるリチウム二次電池の一例を模式的に示す。
図1に示されるリチウム二次電池10は、正極板12と、負極板16と、セパレータ20と、電解液22とを備える。正極板12は、厚さ50μm以上のリチウム複合酸化物焼結体板である。このリチウム複合酸化物焼結体板は、層状岩塩構造を有する複数の一次粒子が結合した構造を有している。ここで、「結合」とは、塗工電極に見られるような粒子の単なる凝集による接触ではなく、焼結によってもたさられる化学的又は物理的な結合を意味する。リチウム複合酸化物はLi
x(Co
1-yM
y)O
2±δ(式中、1.0≦x≦1.1、0<y≦0.8、0≦δ<1、MはMg、Ni、Al、Ti及びMnからなる群から選択される少なくとも1種である)で表される組成を有し、かつ、複数の一次粒子の平均傾斜角が0°を超え30°以下であり、平均傾斜角は、複数の一次粒子の(003)面とリチウム複合酸化物焼結体板の板面とがなす角度の平均値である。セパレータ20は、正極板12と負極板16との間に介在される。このようにLiCoO
2焼結体板において一次粒子の(003)面を板面に対して平均で0°を超え30°以下の角度に配向させ、なおかつ、Coの一部をMg、Ni、Al、Ti及びMnから選択される特定の元素Mで置換することにより、当該焼結体板を正極として用いたリチウム二次電池において高温耐久性を大きく改善することができる。
【0023】
すなわち、前述のとおり、リチウム二次電池のエネルギー密度を向上するために、正極板を厚くすることが望まれる。しかしながら、単に厚さを50μm以上に厚くしただけの無配向LiCoO2焼結体板を正極として備えたリチウム二次電池は、45℃以上で駆動又は保存した場合に、抵抗の上昇や性能の劣化等の問題が起こりうる。これに対し、本発明のリチウム二次電池においては、LiCoO2焼結体板における低角度配向と元素置換により、予想外なことに、45℃以上の高温(例えば60℃)で駆動又は保存した際においても抵抗上昇や性能劣化が生じにくくなる。その理由は定かではないが、以下のようなものと推察される。すなわち、高温状態では、厚い焼結体内においてイオン拡散、電子伝導性、及び充放電時の膨張収縮等の性能にばらつきがあると性能が劣化するところ、上述のような低角度配向及び元素置換を行ったことで、電子やイオンの動きを均一化することができ、それによって性能の劣化が抑制できたのではないかと考えられる。また、焼結体板である正極板は100℃以上の高温下において熱分解するバインダー等を基本的に含んでおらず、この点も高温駆動時の性能劣化等の抑制に寄与するといえる。
【0024】
正極板12は、厚さ50μm以上のリチウム複合酸化物焼結体板である。リチウム複合酸化物焼結体板は、層状岩塩構造を有する複数の(すなわち多数の)一次粒子が結合した構造を有している。したがって、これらの一次粒子は層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物で構成される。正極板12に用いられるリチウム複合酸化物は、Lix(Co1-yMy)O2±δ(式中、1.0≦x≦1.1、0<y≦0.8、0≦δ<1、MはMg、Ni、Al、Ti及びMnからなる群から選択される少なくとも1種である)で表される組成を有する。すなわち、この組成はLiCoO2におけるCoの一部が他の元素Mで置換されたものに相当する。xは典型的には1.0である。yは好ましくは0.01≦y≦0.8、より好ましくは0.02≦y≦0.8、さらに好ましくは0.1≦y≦0.8である。δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。典型的なリチウム複合酸化物は層状岩塩構造を有する。層状岩塩構造とは、リチウム層とリチウム以外の遷移金属層とが酸素の層を挟んで交互に積層された結晶構造をいう。すなわち、層状岩塩構造は、酸化物イオンを介して遷移金属イオン層とリチウム単独層とが交互に積層した結晶構造(典型的にはα-NaFeO2型構造:立方晶岩塩型構造の[111]軸方向に遷移金属とリチウムとが規則配列した構造)であるといえる。
【0025】
正極板12には、焼結性を改善させる目的で添加剤を添加してもよい。好ましい添加剤は、融点が1000℃以下のものであり、より好ましくはホウ酸、酸化ホウ素、酸化ビスマス、又はそれらの組合せである。
【0026】
正極板12の表面を化学的及び/又は物理的に修飾してもよい。修飾の代表的な形態としては、正極板12の表面が酸化物若しくはリチウム含有酸化物で被覆された形態、又は正極板12の表面に酸化物若しくはリチウム含有酸化物が点在(典型的には島状に存在)する形態が挙げられる。酸化物の例としては、ZrO2、Al2O3、WO3、Nb2O5等が挙げられる。また、正極板12の表面には、正極板12の板面のみならず、気孔に面する一次粒子の表面も包含される。修飾方法は特に限定されないが、粉末を水、アルコール等の溶媒に分散させ、正極板12の表面に塗布して熱処理する手法や、アルコキシド溶液を正極板12の表面にディップコート又はスピンコートして熱処理する手法等が挙げられる。このように正極板12の表面を修飾することでリチウムイオン伝導性の改善が見られる。
【0027】
正極板12であるリチウム複合酸化物焼結体板を構成する複数の一次粒子の平均傾斜角(すなわち(003)面と板面とがなす角度の平均値)は0°を超え30°以下であり、好ましくは5°以上28°以下、より好ましくは10°以上25°以下である。また、リチウム複合酸化物焼結体板を構成する複数の一次粒子のうち、傾斜角(すなわち(003)面と板面とがなす角度)が0°以上30°以下である一次粒子の占める割合は60%以上であるのが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。上限値は特に限定されず100%であってもよいが、傾斜角が0°以上30°以下である一次粒子の占める割合は典型的には95%以下であり、より典型的には90%以下である。上述した範囲内であると、充放電した際の応力をより一層好都合に分散させることで、急速充放電性能等の性能をより一層向上させることができると考えられる。
【0028】
正極板12であるリチウム複合酸化物焼結体板は気孔を含んでいる。焼結体板が気孔を含むことで、充放電サイクルにおけるリチウムイオンの出入りに伴う結晶格子の伸縮によって発生する応力が、当該気孔によって良好(均一)に開放される。このため、充放電サイクルの繰り返しに伴う粒界クラックの発生が可及的に抑制される。また、導電性接合層との界面に含まれる気孔(開気孔)により、接合強度が高まる。このため、充放電サイクルにおけるリチウムイオンの出入りに伴う結晶格子の伸縮による、リチウム複合酸化物焼結体板の形状変化を起因とする、上述の接合界面剥離の発生が、良好に抑制される。したがって、良好なサイクル特性を維持しつつ、高容量化を図ることができる。また、気孔内に電解液が充填されることで、三次元的にリチウムイオン伝導パスが形成される点も、高速充放電性能やサイクル性能に好影響を与える。
【0029】
正極板12であるリチウム複合酸化物焼結体板の気孔率は10~55%であるのが好ましく、より好ましくは15~50%、さらに好ましくは20~40%である。上記範囲内であると、気孔による応力開放効果が改善するとともに、高容量化にも寄与する。
【0030】
正極板12であるリチウム複合酸化物焼結体板の平均気孔径は0.07~5μmであるのが好ましく、より好ましくは0.3~3μm以下である。上記範囲内であると、気孔による応力開放効果が改善するとともに、高容量化にも寄与する。
【0031】
気孔の分布及び形状は特に限定されるものではないが、リチウム複合酸化物焼結体板の構成粒子は、典型的には、揃った配向方位を持ち、かつ、所定のアスペクト比を有する。このため、気孔の形状や分布についても好ましい状態が存在する。例えば、気孔は、リチウムイオン伝導面に接するように配向していてもよいし、リチウムイオン伝導面に広く接することができるような形状(球状や不定形など)であってもよい。また、気孔がそのようなアスペクト比を持つ場合、アスペクト比によって規定される異方性を有する気孔形状が、充放電した際の応力を好都合に分散させることで、急速充放電性能等の性能の向上に寄与するものと考えられる。具体的には、正極板12であるリチウム複合酸化物焼結体板の平均気孔アスペクト比は1.5~15であるのが好ましく、より好ましくは2.5~12である。
【0032】
正極板12であるリチウム複合酸化物焼結体板における体積基準D10、D50及びD90気孔径は、1.1≦D50/D10≦7.1、1.1≦D90/D50≦7.0、及び1.2≦D90/D10≦50.0の関係を満たすのが好ましい。かかる特有の気孔径分布が、充放電した際の応力を好都合に分散させることで、急速充電性能等の性能の向上に寄与するものと考えられる。D50/D10は、好ましくは1.1~7.1であり、より好ましくは1.2~5.5、さらに好ましくは1.3~4.0である。D90/D50は、好ましくは1.1~7.0であり、より好ましくは1.2~5.0、さらに好ましくは1.3~4.0である。D90/D10は、好ましくは1.2~50.0であり、より好ましくは1.5~40である。
【0033】
正極板12であるリチウム複合酸化物焼結体板の厚さは、50μm以上であり、好ましくは50~500μm、より好ましくは90~400μm、特に好ましくは100~300μmである。前述のとおり、リチウム複合酸化物焼結体板が厚いほど、高容量及び高エネルギー密度の電池を実現しやすくなる。リチウム複合酸化物焼結体板の厚さは、例えば、リチウム複合酸化物焼結体板の断面をSEM(走査電子顕微鏡)によって観察した場合における、略平行に観察される板面間の距離を測定することで得られる。また、正極板12(すなわちリチウム複合酸化物焼結体板)のサイズは、好ましくは5mm×5mm平方以上、より好ましくは10mm×10mm平方以上であり、別の表現をすれば、好ましくは25mm2以上、より好ましくは100mm2以上である。
【0034】
正極板12であるリチウム複合酸化物焼結体板を構成する複数の一次粒子の平均粒径である一次粒径は20μm以下であるのが好ましく、より好ましくは15μm以下である。一般に一次粒子径が小さくなるほど、粒界の数が増加する。そして、粒界の数が多いほど、充放電サイクルに伴う結晶格子の伸縮の際に発生する内部応力が、良好に分散される。また、クラックが生じた際にも、粒界の数が多いほど、クラックの伸展が良好に抑制される。一方、本発明においては、焼結体板内部の粒子は配向方位が揃っており、その結果、粒界に応力がかかりにくく、大きい粒子径においてもサイクル性能が優れる。また、粒子径が大きい場合、充放電時のリチウムの拡散が粒界で遮られることが少なくなり、高速充放電に好ましい。一次粒径は0.2μm以上が典型的であり、より典型的には0.4μm以上である。
【0035】
負極板16は、リチウム二次電池10に適用可能な負極活物質を含む層であれば特に限定されないが、酸化物形態の負極活物質を含むのが好ましい。好ましい酸化物形態の負極活物質は、少なくともTiを含有する酸化物である。そのような負極活物質の好ましい例としては、チタン酸リチウムLi4Ti5O12(以下、LTO)、ニオブチタン複合酸化物Nb2TiO7、酸化チタンTiO2が挙げられ、より好ましくはLTO及びNb2TiO7である。なお、LTOは典型的にはスピネル型構造を有するものとして知られているが、充放電時には他の構造も採りうる。例えば、LTOは充放電時にLi4Ti5O12(スピネル構造)とLi7Ti5O12(岩塩構造)の二相共存にて反応が進行する。したがって、LTOはスピネル構造に限定されるものではない。
【0036】
負極板16に含まれる負極活物質の複数の粒子は、物理的及び電気的に互いに連結しているのが、エネルギー密度を高めつつ電子伝導性及びイオン導電性を高める観点から好ましい。したがって、負極板16は焼結体板(例えばLTO又はNb2TiO7焼結体板)であるのが好ましい。焼結体板の場合、負極板にはバインダーが含まれないため、負極活物質(例えばLTO又はNb2TiO7)の充填密度が高くなることで、高容量や良好な充放電効率を得ることができる。なお、負極板にはバインダーが含まれない理由は、グリーンシートにバインダーが含まれていたとしても、焼成時にバインダーが消失又は焼失するからである。LTO焼結体板は、特許文献5(特開2015-185337号公報)に記載される方法に従って製造することができる。また、負極板16はバインダーを含まないため、100℃以上の高温で長時間電気的に安定し、電池駆動もしくは電池の保存性能を担保させることができる。
【0037】
負極板16は気孔を含んでいるのが好ましい。負極板16が気孔を含むことで、充放電サイクルにおけるキャリアイオン(例えばリチウムイオン)の出入りに伴う結晶格子の伸縮によって発生する応力が、当該気孔によって良好(均一)に開放される。このため、充放電サイクルの繰り返しに伴う粒界クラックの発生が可及的に抑制される。
【0038】
負極板16の気孔率は2~55%であるのが好ましく、より好ましくは10~40%である。このような範囲内であると、気孔による応力開放効果と、高容量化の効果とを望ましく実現することができる。負極板16の気孔率は、負極板16における、気孔(開気孔及び閉気孔を含む)の体積比率であり、後述する実施例で詳述されるように、負極板16の断面SEM像を画像解析することにより測定することができる。
【0039】
負極板16の厚さは、単位面積当りの活物質容量を高めてリチウム二次電池10のエネルギー密度を向上する観点から、25μm以上であり、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは40μm以上、特に好ましくは50μm以上、最も好ましくは55μm以上である。厚さの上限値は特に限定されないが、充放電の繰り返しに伴う電池特性の劣化(特に抵抗値の上昇)を抑制する観点から、負極板16の厚さは400μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以下である。また、負極板16のサイズは、好ましくは5mm×5mm平方以上、より好ましくは10mm×10mm平方以上であり、別の表現をすれば、好ましくは25mm2以上、より好ましくは100mm2以上である。
【0040】
セパレータ20は、セルロース製又はセラミック製のセパレータであるのが好ましい。セルロース製のセパレータは安価でかつ耐熱性に優れる点で有利である。また、セルロース製のセパレータは、広く用いられている、耐熱性に劣るポリオレフィン製セパレータとは異なり、それ自体の耐熱性に優れるだけでなく、耐熱性に優れる電解液成分であるγ-ブチロラクトン(GBL)に対する濡れ性にも優れる。したがって、GBLを含む電解液を用いる場合に、電解液をセパレータに(弾かせることなく)十分に浸透させることができる。一方、セラミック製のセパレータは、耐熱性に優れるのは勿論のこと、正極板12及び負極板16と一緒に全体として1つの一体焼結体として製造できるとの利点がある。セラミックセパレータの場合、セパレータを構成するセラミックはMgO、Al2O3、ZrO2、SiC、Si3N4、AlN、及びコーディエライトから選択される少なくとも1種であるのが好ましく、より好ましくはMgO、Al2O3、及びZrO2から選択される少なくとも1種である。
【0041】
電解液22は特に限定されず、有機溶媒等の非水溶媒中にリチウム塩を溶解させた液等、リチウム電池用の市販の電解液を使用すればよい。特に、耐熱性に優れた電解液が好ましく、そのような電解液は、非水溶媒中にホウフッ化リチウム(LiBF4)を含むものが好ましい。この場合、好ましい非水溶媒は、γ-ブチロラクトン(GBL)、エチレンカーボネート(EC)及びプロピレンカーボネート(PC)からなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはEC及びGBLからなる混合溶媒、PCからなる単独溶媒、PC及びGBLからなる混合溶媒、又はGBLからなる単独溶媒であり、特に好ましくはEC及びGBLからなる混合溶媒又はGBLからなる単独溶媒である。非水溶媒はγ-ブチロラクトン(GBL)を含むことで沸点が上昇し、耐熱性の大幅な向上をもたらす。かかる観点から、EC及び/又はGBL含有非水溶媒におけるEC:GBLの体積比は0:1~1:1(GBL比率50~100体積%)であるのが好ましく、より好ましくは0:1~1:1.5(GBL比率60~100体積%)、さらに好ましくは0:1~1:2(GBL比率66.6~100体積%)、特に好ましくは0:1~1:3(GBL比率75~100体積%)である。非水溶媒中に溶解されるホウフッ化リチウム(LiBF4)は分解温度の高い電解質であり、これもまた耐熱性の大幅な向上をもたらす。電解液22におけるLiBF4濃度は0.5~2mol/Lであるのが好ましく、より好ましくは0.6~1.9mol/L、さらに好ましくは0.7~1.7mol/L、特に好ましくは0.8~1.5mol/Lである。
【0042】
電解液22は添加剤としてビニレンカーボネート(VC)及び/又はフルオロエチレンカーボネート(FEC)及び/又はビニルエチレンカーボネート(VEC)をさらに含むものであってもよい。VC及びFECはいずれも耐熱性に優れる。したがって、かかる添加剤を電解液22が含むことで、耐熱性に優れたSEI膜を負極板16表面に形成させることができる。
【0043】
外装体24は密閉空間を備え、この密閉空間内に正極板12、負極板16、セパレータ20及び電解液22が収容される。外装体24は、図示例のようにコイン形電池に一般的に採用される構造を採用してもよいし、その他の構成を採用してもよく、特に限定されない。コイン形電池の場合、典型的には、外装体24は、正極缶24a、負極缶24b及びガスケット24cを備え、正極缶24a及び負極缶24bがガスケット24cを介してかしめられて密閉空間を形成している。正極缶24a及び負極缶24bはステンレス鋼等の金属製であることができ、特に限定されない。ガスケット24cはポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の絶縁樹脂製の環状部材であることができ、特に限定されない。
【0044】
リチウム二次電池10は、正極集電体14及び/又は負極集電体18をさらに備えているのが好ましい。正極集電体14及び負極集電体18は特に限定されないが、好ましくは銅箔やアルミニウム箔等の金属箔である。正極集電体14は正極板12と正極缶24aとの間に配置されるのが好ましく、負極集電体18は負極板16と負極缶24bとの間に配置されるのが好ましい。また、正極板12と正極集電体14との間には接触抵抗低減の観点から正極側カーボン層13が設けられるのが好ましい。同様に、負極板16と負極集電体18との間には接触抵抗低減の観点から負極側カーボン層17が設けられるのが好ましい。正極側カーボン層13及び負極側カーボン層17はいずれも導電性カーボンで構成されるのが好ましく、例えば導電性カーボンペーストをスクリーン印刷等により塗布することにより形成すればよい。
【0045】
製造方法
本発明のリチウム複合酸化物焼結体板はいかなる方法で製造されたものであってもよいが、好ましくは、(a)リチウム複合酸化物含有グリーンシートの作製、及び(b)グリーンシートの焼成を経て製造される。
【0046】
(a)リチウム複合酸化物含有グリーンシートの作製
まず、リチウム複合酸化物で構成される原料粉末を用意する。この粉末は、Li(Co,M)O2なる基本組成(MはMg、Ni、Al、Ti及びMnから選択される少なくとも1種の置換元素である)の合成済みの板状粒子を含むのが好ましい。原料粉末の体積基準D50粒径は0.3~30μmが好ましい。例えば、Li(Co,M)O2板状粒子の作製方法は次のようにして行うことができる。まず、Co3O4原料粉末とLi2CO3原料粉末と置換元素Mを含む化合物の粉末(例えばMgCO3粉末、Ni(OH)2粉末、AlOOH粉末、MnCO3粉末、及び/又はTiO2粉末、あるいは共沈法によって得られる複合水酸化物)とを、所定の組成をもたらすように秤量して混合し、焼成(500~900℃、1~20時間)することによって、Li(Co,M)O2粉末を合成する。得られたLi(Co,M)O2粉末をポットミルにて体積基準D50粒径0.2μm~10μmに粉砕することによって、板面と平行にリチウムイオンを伝導可能な板状のLi(Co,M)O2粒子が得られる。このようなLi(Co,M)O2粒子は、Li(Co,M)O2粉末スラリーを用いたグリーンシートを粒成長させた後に解砕する手法や、フラックス法や水熱合成、融液を用いた単結晶育成、ゾルゲル法など板状結晶を合成する手法によっても得ることができる。得られたLi(Co,M)O2粒子は、劈開面に沿って劈開しやすい状態となっている。Li(Co,M)O2粒子を解砕によって劈開させることで、Li(Co,M)O2板状粒子を作製することができる。
【0047】
上記板状粒子を単独で原料粉末として用いてもよいし、上記板状粉末と他の原料粉末(例えばCo3O4粒子及び元素M含有化合物の粒子)との混合粉末を原料粉末として用いてもよい。後者の場合、板状粉末を配向性を与えるためのテンプレート粒子として機能させ、他の原料粉末(例えばCo3O4粒子及び元素M含有化合物の粒子)をテンプレート粒子に沿って成長可能なマトリックス粒子として機能させるのが好ましい。この場合、テンプレート粒子とマトリックス粒子を100:0~3:97に混合した粉末を原料粉末とするのが好ましい。Co3O4原料粉末及び元素M含有化合物粉末をマトリックス粒子として用いる場合、Co3O4原料粉末及び元素M含有化合物粉末の体積基準D50粒径は特に制限されず、例えば0.1~1.0μmとすることができるが、Li(Co,M)O2テンプレート粒子の体積基準D50粒径より小さいことが好ましい。Co系マトリックス粒子は、Co(OH)2原料を500℃~800℃で1~10時間熱処理を行なうことによっても得ることができる。また、Co系マトリックス粒子には、Co3O4のほか、Co(OH)2粒子を用いてもよいし、LiCoO2粒子を用いてもよい。
【0048】
原料粉末がLi(Co,M)O2テンプレート粒子100%で構成される場合、又はマトリックス粒子としてLi(Co,M)O2粒子を用いる場合、焼成により、大判(例えば90mm×90mm平方)でかつ平坦なLi(Co,M)O2焼結板を得ることができる。そのメカニズムは定かではないが、焼成過程でLi(Co,M)O2への合成が行われないため、焼成時の体積変化が生じにくい若しくは局所的なムラが生じにくいことが予想される。
【0049】
原料粉末を、分散媒及び各種添加剤(バインダー、可塑剤、分散剤等)と混合してスラリーを形成する。スラリーには、後述する焼成工程中における粒成長の促進ないし揮発分の補償の目的で、他のリチウム化合物(例えば炭酸リチウム)が0.5~30mol%程度過剰に添加されてもよい。スラリーには造孔材を添加してもよく、原料粒径、成形体密度、焼成条件等を調整することで狙いの気孔を焼結体に導入できる。スラリーは減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000~10000cPに調整するのが好ましい。得られたスラリーをシート状に成形してリチウム複合酸化物含有グリーンシート(例えばLi(Co,M)O2グリーンシート)を得る。こうして得られるグリーンシートは独立したシート状の成形体である。独立したシート(「自立膜」と称されることもある)とは、他の支持体から独立して単体で取り扱い可能なシートのことをいう(アスペクト比が5以上の薄片も含む)。すなわち、独立したシートには、他の支持体(基板等)に固着されて当該支持体と一体化された(分離不能ないし分離困難となった)ものは含まれない。シート成形は、原料粉末中の板状粒子(例えばテンプレート粒子)にせん断力を印加可能な成形手法を用いて行われるのが好ましい。こうすることで、一次粒子の平均傾斜角を板面に対して0°超30°以下にすることができる。板状粒子にせん断力を印加可能な成形手法としては、ドクターブレード法が好適である。リチウム複合酸化物含有グリーンシートの厚さは、焼成後に上述したような所望の厚さとなるように、適宜設定すればよい。
【0050】
(b)グリーンシートの焼成
下部セッターに、リチウム複合酸化物含有グリーンシート(例えばLi(Co,M)O2グリーンシート)を載置し、その上に上部セッターを載置する。上部セッター及び下部セッターはセラミックス製であり、好ましくはジルコニア又はマグネシア製である。セッターがマグネシア製であると気孔が小さくなる傾向がある。上部セッターは多孔質構造やハニカム構造のものであってもよいし、緻密質構造であってもよい。上部セッターが緻密質であると焼結体板において気孔が小さくなる傾向がある。
【0051】
下部セッターにリチウム複合酸化物含有グリーンシート(例えばLi(Co,M)O2グリーンシート)を載置した段階で、このグリーンシートを、所望により脱脂した後、600~850℃で1~10時間仮焼してもよい。
【0052】
そして、上記グリーンシート及び/又は仮焼板をセッターで挟んだ状態で、所望により脱脂した後、中温域の焼成温度(例えば700~1000℃)で熱処理(焼成)することで、リチウム複合酸化物焼結体板(例えばLi(Co,M)O2焼結体板)が得られる。この焼成工程は、2度に分けて行ってもよいし、1度に行なってもよい。2度に分けて焼成する場合には、1度目の焼成温度が2度目の焼成温度より低いことが好ましい。こうして得られる焼結体板もまた独立したシート状である。
【実施例】
【0053】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。なお、以下の説明では、Lix(Co1-yMy)O2±δ(式中、x、y及びδは前述したとおりであり、MはMg、Ni、Al、Ti及びMnから選択される少なくとも1種である)なる組成をLi(Co,M)O2と略称するものとする。
【0054】
例1~6
(1)正極板の作製
(1a)Li(Co,M)O2グリーンシートの作製
Li2CO3粉末(本荘ケミカル株式会社製)、Ni(OH)2粉末(伊勢化学工業株式会社製)、Co3O4粉末(平均粒径D50:0.9μm、正同化学工業株式会社製)、MnCO3粉末(株式会社高純度化学製)、MgCO3粉末(神島化学工業株式会社製)、AlOOH粉末(関東電化工業株式製)、TiO2粉末(石原産業株式会社製)を用意した。これらの粉末の3~4種類を表1に示される組成を焼成後にもたらすように秤量して混合した。得られた混合物を800℃で5時間保持して仮焼粉末を得た。この仮焼粉末をポットミルにて平均粒径D50が0.5μmの板状粒子となるように粉砕した。得られた粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM-2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2-ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP-O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、Li(Co,M)O2スラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、グリーンシートを形成した。乾燥後のグリーンシートの厚さは220μmであった。
【0055】
(1b)Li(Co,M)O2焼結板の作製
PETフィルムから剥がしたLi(Co,M)O2グリーンシートをカッターで50mm角に切り出し、下部セッターとしてのマグネシア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置し、その上に上部セッターとしての多孔質マグネシア製セッターを載置した。上記グリーンシート片をセッターで挟んだ状態で、120mm角のアルミナ鞘(株式会社ニッカトー製)内に載置した。このとき、アルミナ鞘を密閉せず、0.5mmの隙間を空けて蓋をした。得られた積層物を昇温速度200℃/hで600℃まで昇温して3時間脱脂した後、800℃で20時間保持することで焼成を行った。焼成後、室温まで降温させた後に焼成体をアルミナ鞘より取り出した。こうしてLi(Co,M)O2焼結体板を正極板として得た。得られた正極板を10mm×10mm平方の形状にレーザー加工した。
【0056】
(2)負極板の作製
(2a)LTOグリーンシートの作製
LTO粉末(体積基準D50粒径0.06μm、シグマアルドリッチジャパン合同会社製)100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM-2、積水化学工業株式会社製)20重量部と、可塑剤(DOP:Di(2-ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP-O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた負極原料混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、LTOスラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、LTOグリーンシートを形成した。乾燥後のLTOグリーンシートの厚さは焼成後の厚さが240μmとなるような値とした。
【0057】
(2b)LTOグリーンシートの焼成
得られたグリーンシートを25mm角にカッターナイフで切り出し、エンボス加工されたジルコニア製セッター上に載置した。セッター上のグリーンシートをアルミナ製鞘に入れて500℃で5時間保持した後に、昇温速度200℃/hにて昇温し、800℃で5時間焼成を行なった。得られたLTO焼結体板のセッターに接触していた面にスパッタリングによりAu膜(厚さ100nm)を集電層として形成した後、10mm×10mm平方の形状にレーザー加工した。
【0058】
(3)コイン形リチウム二次電池の作製
図1に模式的に示されるようなコイン形リチウム二次電池10を以下のとおり作製した。
【0059】
(3a)負極板と負極集電体の導電性カーボンペーストによる接着
アセチレンブラックとポリイミドアミドを質量比で3:1となるように秤量し、溶剤としての適宜量のNMP(N-メチル-2-ピロリドン)とともに混合して、導電性カーボンペーストを調製した。負極集電体としてのアルミニウム箔上に導電性カーボンペーストをスクリーン印刷した。未乾燥の印刷パターン(すなわち導電性カーボンペーストで塗布された領域)内に収まるように上記(2)で作製した負極板を載置し、60℃で30分間真空乾燥させることで、負極板と負極集電体とがカーボン層を介して接合された負極構造体を作製した。なお、カーボン層の厚さは10μmとした。
【0060】
(3b)カーボン層付き正極集電体の準備
アセチレンブラックとポリイミドアミドを質量比で3:1となるように秤量し、溶剤としての適宜量のNMP(N-メチル-2-ピロリドン)とともに混合して、導電性カーボンペーストを調製した。正極集電体としてのアルミニウム箔上に導電性カーボンペーストをスクリーン印刷した後、60℃で30分間真空乾燥させることで、表面にカーボン層が形成された正極集電体を作製した。なお、カーボン層の厚さは5μmとした。
【0061】
(3c)コイン形電池の組立
電池ケースを構成することになる正極缶と負極缶との間に、正極缶から負極缶に向かって、正極集電体、カーボン層、Li(Co,M)O2正極板、セルロースセパレータ、LTO負極板、カーボン層、及び負極集電体がこの順に積層されるように収容し、電解液を充填した後に、ガスケットを介して正極缶と負極缶をかしめることによって封止した。こうして、直径12mm、厚さ1.0mmのコインセル形のリチウム二次電池10を作製した。このとき、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)及びγ-ブチロラクトン(GBL)を1:3の体積比で混合した有機溶媒に、LiBF4を1.5mol/Lの濃度となるように溶解させた液を用いた。
【0062】
(4)評価
上記(1b)で合成されたLi(Co,M)O2焼結体板(正極板)及び上記(3)で作製された電池について、以下に示されるとおり各種の評価を行った。
【0063】
<組成及びCo量>
ICP発光分光分析により各元素のモル数を求めてLi(Co,M)O2焼結体板の組成を算出した。また、ICP発光分光分析により、表1に示される置換元素Mのモル量AMと、Coのモル量ACoとを測定し、以下の式に基づき(Co,M)サイトにおけるCoの占有割合R(%)をCo量として算出した。
R=[ACo/(ACo+AM)]×100
【0064】
<一次粒子の平均傾斜角>
Li(Co,M)O2焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB-15000CP)により研磨し、得られた正極板断面(正極板の板面に垂直な断面)を1000倍の視野(125μm×125μm)でEBSD測定して、EBSD像を得た。このEBSD測定は、ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、型式JSM-7800F)を用いて行った。得られたEBSD像において特定される全ての粒子について、一次粒子の(003)面と正極板の板面とがなす角度(すなわち(003)からの結晶方位の傾き)を傾斜角として求め、それらの角度の平均値を一次粒子の平均傾斜角とした。
【0065】
<板厚>
Li(Co,M)O2焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB-15000CP)により研磨し、得られた正極板断面をSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)して正極板の厚さを測定した。なお、工程(1a)に関して前述した乾燥後のLiCoO2グリーンシートの厚さも、上記同様にして測定されたものである。
【0066】
<気孔率>
Li(Co,M)O2焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB-15000CP)により研磨し、得られた正極板断面を1000倍の視野(125μm×125μm)でSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)した。得られたSEM像を画像解析し、全ての気孔の面積を正極の面積で除し、得られた値に100を乗じることにより気孔率(%)を算出した。
【0067】
<平均気孔径>
水銀ポロシメーター(島津製作所製、オートポアIV9510)を用いて水銀圧入法によりLi(Co,M)O2焼結体板の体積基準の気孔径分布を測定した。こうして得られた横軸を気孔径、縦軸を累積体積%とした気孔径分布曲線から体積基準D50気孔径を求め、平均気孔径とした。
【0068】
<気孔径分布>
水銀ポロシメーター(島津製作所製、オートポアIV9510)を用いて水銀圧入法によりLi(Co,M)O2焼結体板の体積基準の気孔径分布を測定した。こうして得られた横軸を気孔径、縦軸を累積体積%とした気孔径分布曲線から体積基準D10、D50及びD90気孔径を求め、D50/D10、D90/D50及びD90/D10の各比率を算出した。
【0069】
<平均気孔アスペクト比>
Li(Co,M)O2焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB-15000CP)により研磨し、得られた正極板断面を1000倍の視野(125μm×125μm)でSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)した。得られたSEM像を画像解析ソフトImageJを用いて二値化し、得られた二値化画像から気孔を判別した。二値化画像において判別した個々の気孔について、長手方向の長さを短手方向の長さで除することによりアスペクト比を算出した。二値化画像中の全ての気孔についてのアスペクト比を算出し、それらの平均値を平均気孔アスペクト比とした。
【0070】
<高温での容量維持率(高温耐久性)>
45℃又は60℃の作動温度における電池の容量維持率を2.7V-1.5Vの電位範囲において以下の手順で測定した。
(i)0.2Cレートで電池電圧が2.7Vとなるまで定電流充電し、引き続き電流値が0.02Cレートになるまで定電圧充電した後、0.2Cレートで1.5Vになるまで放電することを含む充放電サイクルを合計3回繰り返すことにより放電容量の測定を行い、それらの平均値を初期放電容量とした。
(ii)充電レート0.5Cにて2.7Vまで充電を行い、1週間保存後放電レート0.5Cで1.5Vとなるまで放電を行った。
(iii)0.2Cレートで電池電圧が2.7Vとなるまで定電流充電し、引き続き0.02Cレートになるまで定電圧充電した後、0.2Cレートで1.5Vになるまで放電することを含む充放電サイクルを合計3回繰り返すことにより放電容量の測定を行い、それらの平均値を高温耐久後放電容量とした。
(iv)上記(i)で得られた初期放電容量に対する、上記(iii)で得られた放電容量の比率を算出して100を乗じることにより、容量維持率(%)を得た。この容量維持率は、電池の高温耐久性を示す指標とみなすことができる。
【0071】
例7
正極板の厚さが50μmとなるようにグリーンシートを薄くしたこと以外は、例1と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
【0072】
例8
正極板の厚さが400μmとなるようにグリーンシートを厚くしたこと以外は、例1と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
【0073】
例9
正極板の作製における仮焼粉末の粉砕を平均粒径D50で0.2μmの板状粒子となるように行ったこと以外は、例1と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
【0074】
例10
正極板の作製において、1)仮焼粉末を得るための焼成を、500℃で10時間保持した後に、昇温速度200℃/hにて昇温して850℃で5時間保持することにより行ったこと、2)仮焼粉末の粉砕を平均粒径D50が0.5μmの板状粒子となるように行ったこと、及び3)グリーンシートの焼成を、500℃で10時間保持した後に、昇温速度200℃/hにて昇温して825℃で40時間保持することにより行ったこと以外は、例1と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
【0075】
例11
正極板の作製において、1)Co原料として平均粒径D50が0.3μmの酸化コバルト(正同化学工業株式会社製)を用いたこと、2)原料粉末の秤量後にポットミルにて20時間の粉砕を行ったこと、3)仮焼粉末の粉砕を平均粒径D50が0.2μmの板状粒子となるように行ったこと以外は、例1と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
【0076】
例12
正極板の作製において、1)仮焼粉末を得るための焼成を900℃で5時間行ったこと、2)仮焼粉末の粉砕を平均粒径D50が0.8μmの板状粒子となるように行ったこと、3)テープ成形用のスラリーにLi/(Co,Mn,Ni)のモル比にて1.05となるようにLiOH・H2O(和光化学株式会社製)を添加したこと、4)焼成条件を500℃で10時間保持した後に、昇温速度200℃/hにて昇温し、900℃で1時間焼成した後に800℃で20時間焼成を行ったこと以外は、例1と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
【0077】
例13
正極板の作製において、仮焼粉末の粉砕により得られた板状粒子を気流分級に付して1μm以上の粗粒子を除外したこと以外は、例1と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
【0078】
例14
正極板の作製において、1)仮焼粉末の粉砕により得られる板状粒子として、例1、例11及び例12で得られた板状粒子を20%:40%:40%の重量割合で含む混合粉末を使用したこと、2)グリーンシートの焼成を、500℃で10時間保持した後に、昇温速度200℃/hにて昇温して700℃で72時間保持することにより行ったこと以外は、例1と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
【0079】
例15
正極板の作製において、1)仮焼粉末を得るための焼成を600℃で行ったこと、2)仮焼粉末の粉砕を平均粒径D50が0.6μmの板状粒子となるように行ったこと、3)上記2)で粉砕した粉末と、例1の粉砕粉末とを70%:30%の重量割合で含む混合粉末をスラリーの調製に用いたこと以外は、例1と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
【0080】
例16
正極板の作製において、1)Co3O4粉末の代わりにCo(OH)2粉末(Coremax社製)を用いたこと、2)Ni(OH)2粉末として例1とは別のタイプのNi(OH)2粉末(伊勢化学工業株式会社製)を用いたこと、3)仮焼粉末の粉砕を平均粒径D50が0.4μmの板状粒子となるように行ったこと、及び4)グリーンシート(テープ成形体)を焼成に先立ち90℃、200kg/cm2の条件で冷間等方圧加圧(CIP)に付したこと以外は、例1と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
【0081】
例17(比較)
グリーンシートの作製を以下のようにして行ったこと以外は、例1と同様にして、正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
【0082】
(グリーンシートの作製)
例10で作製した粉砕粉末(平均粒径D50:0.2μm)100重量部と、分散媒としての純水400重量部と、バインダー(ポリビニルアルコール:品番VP-18、日本酢ビ・ポバール株式会社製)1重量部と、分散剤(マリアリムKM-0521、日油株式会社製)1重量部と、消泡剤(1-オクタノール:和光純薬工業株式会社製)0.5重量部とを混合した。得られた混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、粘度を0.5Pa・s(ブルックフィールド社製LVT型粘度計を用いて測定)に調整することで、スラリーを調製した。このスラリーをスプレードライヤ(大川原化工機株式会社製:型式OC-16)を用いて、液量150g/min、入口温度160℃、アトマイザ回転数25000rpmの条件下で処理して、球状の成形体を得た。得られた粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM-2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2-ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP-O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、Li(Co,Mg)O2スラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、グリーンシートを形成した。乾燥後のグリーンシートの厚さは220μmであった。グリーンシートを酸素雰囲気にて昇温速度200℃/hで600℃まで昇温して3時間脱脂した後、1000℃で20時間保持することでグリーンシートの焼成を行った。
【0083】
評価結果
表1に例1~17の評価結果を示す。
【0084】