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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20220421BHJP
   H01G 4/224 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
H01G4/30 311E
H01G4/224 100
H01G4/30 201F
H01G4/30 201M
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/30 517
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021033590
(22)【出願日】2021-03-03
(62)【分割の表示】P 2016179228の分割
【原出願日】2016-09-14
(65)【公開番号】P2021090071
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】飯島 淑明
(72)【発明者】
【氏名】笹木 隆
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-283180(JP,A)
【文献】特開2006-287200(JP,A)
【文献】特開平7-235441(JP,A)
【文献】特開2012-253245(JP,A)
【文献】特開平4-65106(JP,A)
【文献】特開2004-202831(JP,A)
【文献】実開昭55-75139(JP,U)
【文献】実開昭59-77212(JP,U)
【文献】特開2003-31424(JP,A)
【文献】特開2013-183028(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0061260(KR,A)
【文献】特開2012-28457(JP,A)
【文献】実開平4-87623(JP,U)
【文献】特開昭59-43515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/224
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体状であり、複数の内部電極層が誘電体層を介して積層された容量部を有する略直方体状の容量素子と、当該容量素子の少なくとも高さ方向一面の長さ方向両端部に設けられた第1下地導体膜と、前記容量素子の少なくとも高さ方向一面における2個の前記第1下地導体膜の間に設けられた補助誘電体層と、を有するコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体の長さ方向両端部に設けられた1対の外部電極とを備え、前記外部電極それぞれが前記コンデンサ本体の少なくとも高さ方向一面に回り込んだ回り込み部を有する積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
キャリアフィルムの表面にグリーンシートが形成された第1シートを作製する工程と、
前記第1シートの前記グリーンシートの表面に内部電極層パターンが形成された第2シートを作製する工程と、
前記第1シートの前記グリーンシートの表面に前記第1下地導体膜に対応した第1下地導体膜パターンと前記補助誘電体層に対応した補助誘電体層パターンとが形成された第3シートを作製する工程と、
高さ方向の両面に配置された前記第1シートのグリーンシートから取り出した単位シートの間に前記第2シートのグリーンシートから取り出した単位シートを積み重ねることで前記容量部に対応した部位が形成された第1積層シートを作製する工程と、
前記第1積層シートの少なくとも高さ方向一面に、前記第3シートのグリーンシートから取り出した単位シートを積み重ね、第2積層シートを作製する工程と、含み、
前記第3シートを作製する工程は、隣接する前記第1下地導体膜パターンを、間隔を空けて形成する工程と、隣接する前記第1下地導体膜パターンの間に、前記第1下地導体膜パターンの厚さよりも厚めに、かつ、隣接する前記第1下地導体膜パターンの間隔よりも大きめにセラミックスラリーを供給して乾燥させる工程と、前記セラミックスラリーの乾燥物の不要分を除去し、前記第1下地導体膜パターンの表面と略面一の表面を有する前記補助誘電体層パターンを形成する工程と、を含む、
積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項2】
略直方体状であり、複数の内部電極層が誘電体層を介して積層された容量部を有する略直方体状の容量素子と、当該容量素子の少なくとも高さ方向一面の長さ方向両端部に設けられた第1下地導体膜と、前記容量素子の少なくとも高さ方向一面における2個の前記第1下地導体膜の間に設けられた補助誘電体層と、を有するコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体の長さ方向両端部に設けられた1対の外部電極とを備え、前記外部電極それぞれが前記コンデンサ本体の少なくとも高さ方向一面に回り込んだ回り込み部を有する積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
キャリアフィルムの表面にグリーンシートが形成された第1シートを作製する工程と、
前記第1シートの前記グリーンシートの表面に内部電極層パターンが形成された第2シートを作製する工程と、
前記第1シートの前記グリーンシートの表面に前記第1下地導体膜に対応した第1下地導体膜パターンと前記補助誘電体層に対応した補助誘電体層パターンとが形成された第3シートを作製する工程と、
高さ方向の両面に配置された前記第1シートのグリーンシートから取り出した単位シートの間に前記第2シートのグリーンシートから取り出した単位シートを積み重ねることで前記容量部に対応した部位が形成された第1積層シートを作製する工程と、
前記第1積層シートの少なくとも高さ方向一面に、前記第3シートのグリーンシートから取り出した単位シートを積み重ね、第2積層シートを作製する工程と、含み、
前記第3シートを作製する工程は、隣接する前記第1下地導体膜パターンを、間隔を空けて形成する工程と、隣接する前記第1下地導体膜パターンの間に、セラミックスラリーを供給し、供給された前記セラミックスラリーを均して前記第1下地導体膜パターンの表面と略面一の表面を得る工程と、前記セラミックスラリーを乾燥して前記補助誘電体層パターンを形成する工程と、を含む、
積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項3】
略直方体状であり、複数の内部電極層が誘電体層を介して積層された容量部を有する略直方体状の容量素子と、当該容量素子の少なくとも高さ方向一面の長さ方向両端部に設けられた第1下地導体膜と、前記容量素子の少なくとも高さ方向一面における2個の前記第1下地導体膜の間に設けられた補助誘電体層と、を有するコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体の長さ方向両端部に設けられた1対の外部電極とを備え、前記外部電極それぞれが前記コンデンサ本体の少なくとも高さ方向一面に回り込んだ回り込み部を有する積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
キャリアフィルムの表面にグリーンシートが形成された第1シートを作製する工程と、
前記第1シートの前記グリーンシートの表面に内部電極層パターンが形成された第2シートを作製する工程と、
前記第1シートの前記グリーンシートの表面に前記第1下地導体膜に対応した第1下地導体膜パターンと前記補助誘電体層に対応した補助誘電体層パターンとが形成された第3シートを作製する工程と、
高さ方向の両面に配置された前記第1シートのグリーンシートから取り出した単位シートの間に前記第2シートのグリーンシートから取り出した単位シートを積み重ねることで前記容量部に対応した部位が形成された第1積層シートを作製する工程と、
前記第1積層シートの少なくとも高さ方向一面に、前記第3シートのグリーンシートから取り出した単位シートを積み重ね、第2積層シートを作製する工程と、含み、
前記第3シートを作製する工程は、隣接する前記第1下地導体膜パターンを、間隔を空けて形成する工程と、隣接する前記第1下地導体膜パターンの間に、前記第1下地導体膜パターンの厚さよりも厚めに、かつ、隣接する前記第1下地導体膜パターンの間隔よりも小さめにセラミックスラリーを供給する工程と、前記セラミックスラリーを押し広げて前記第1下地導体膜パターンの表面と略面一の表面を得る工程と、前記セラミックスラリーを乾燥して前記補助誘電体層パターンを形成する工程と、を含む、
積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記第1下地導体膜は、誘電体粒子を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記積層セラミックコンデンサのサイズが長さL、幅W及び高さHで表されるとき、各寸法は、長さL>幅W=高さHの関係を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記積層セラミックコンデンサのサイズが長さL、幅W及び高さHで表されるとき、各寸法は、長さL>幅W>高さHの関係、または、幅W>長さL>高さHの関係を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記補助誘電体層の主成分は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、酸化チタンのいずれかである、
請求項1から6のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記第2積層シートを作製する工程に続いて、当該第2積層シートを格子状に切断して前記コンデンサ本体に対応したコンデンサ本体を作製する工程と、当該コンデンサ本体の長さ方向両面に前記外部電極に含まれる第2下地導体膜を作製する工程をさらに含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項9】
第2積層シートを作製する工程に続いて、当該未焼成の第2積層シートを格子状に切断して前記コンデンサ本体に対応した未焼成のコンデンサ本体を作製し、当該未焼成のコンデンサ本体に焼成を施して、前記コンデンサ本体を作製する工程と、当該コンデンサ本体の長さ方向両面に前記外部電極に含まれる第2下地導体膜を形成する工程をさらに含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記回り込み部及び前記補助誘電体層は、前記コンデンサ本体の高さ方向一面のみに設けられた、
請求項1から9のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項11】
内部電極層の厚さは、0.5~0.3μmの範囲である、
請求項1から10のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項12】
誘電体層の厚さは、0.5~0.3μmの範囲である、
請求項1から11のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項13】
前記容量素子は、前記容量部の高さ方向両面に誘電体マージン部を備え、
前記第1積層シートは、前記容量部に対応した部位の高さ方向両面に前記誘電体マージン部に対応した部位が形成され、
前記第1積層シートを作製する工程は、第1シートのグリーンシートから取り出した単位シートを積み重ねて圧着し、前記誘電体マージン部に対応した部位を形成する工程を含み、
前記誘電体マージン部の厚さは、5~30μmの範囲である、
請求項1から12のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項14】
前記容量素子と、前記第1下地導体膜と、前記補助誘電体層は、それぞれ誘電体粒子を含み、
前記第1下地導体膜と前記補助誘電体層とを焼結に基づく前記誘電体粒子の相互結合によって連結させ、
前記容量素子と前記第1下地導体膜とを焼結に基づく前記誘電体粒子の相互結合によって連結させ、
前記容量素子と前記補助誘電体層とを焼結に基づく前記誘電体粒子の相互結合によって連結させた、
請求項1から13のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項15】
前記第1下地導体膜それぞれの幅と前記補助誘電体層の幅は、前記容量素子の幅と略同じである、
請求項1から14のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項16】
前記第1下地導体膜それぞれの厚さと前記補助誘電体層の厚さは略同じであり、前記補助誘電体層の厚さは前記外部電極それぞれの前記回り込み部の厚さよりも小さい、
請求項1から15のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項17】
前記第1下地導体膜それぞれの長さは、前記積層セラミックコンデンサの長さの1/6~3/7の範囲内で設定されている、
請求項1から16のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項18】
前記外部電極それぞれは、前記コンデンサ本体の高さ方向両面に回り込んだ2個の回り込み部を有している、
請求項1から17のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電極がコンデンサ本体の少なくとも高さ方向一面に回り込んだ回り込み部を有する積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
長さと幅と高さによってサイズが規定されている積層セラミックコンデンサは、一般に、複数の内部電極層が誘電体層を介して積層された容量部を有する略直方体状のコンデンサ本体と、コンデンサ本体の長さ方向両端部に設けられ、かつ、複数の内部電極層が交互に接続された1対の外部電極とを備えている。また、各外部電極は、コンデンサ本体の少なくとも高さ方向一面に回り込んだ回り込み部を有している。
【0003】
積層セラミックコンデンサは、回路基板に実装されるときに部品実装機等から付加される力や回路基板に実装された後に回路基板等から付加される力等によって、コンデンサ本体にクラックが発生することがある。このクラック発生にはコンデンサ本体の強度が関係しているため、通常はコンデンサ本体の高さが小さくなって強度不足を生じやすくなるとクラックも発生しやすくなる。
【0004】
コンデンサ本体の高さが小さくなっても強度不足を補える手法としては、後記特許文献1の第4図および第5図に示されているように、各外部電極の回り込み部が存するコンデンサ本体の面における2個の回り込み部の間に誘電体層を設ける手法が利用できる。
【0005】
この手法を利用する場合、2個の回り込み部と誘電体層との間に隙間があると(後記特許文献1の第4図を参照)、隙間がある部位においてコンデンサ本体の強度不足を補うことが難しくなるため、2個の回り込み部と誘電体層との間に隙間がないようにすることが望ましい(後記特許文献1の第5図を参照)。また、誘電体層の厚さが2個の回り込み部の厚さよりも大きくなってしまうと(後記特許文献1の第4図および第5図を参照)、積層セラミックコンデンサを回路基板に実装するときの障害となってしまうため、誘電体層の厚さを2個の回り込み部の厚さ以下にすることが望ましい。
【0006】
しかしながら、2個の回り込み部と誘電体層との間に隙間がないようにしても、2個の回り込み部と誘電体層とが接しているだけでは、コンデンサ本体の強度不足を補うことは実際のところは難しい。すなわち、2個の回り込み部と誘電体層とが隙間なく接していて
も、積層セラミックコンデンサにコンデンサ本体が高さ方向に反るような力が付加されると、2個の回り込み部と誘電体層との接触箇所が開いてコンデンサ本体に至る隙間が生じてしまうため、先に述べた隙間がある場合と同様の不具合を生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実公昭61-025234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、各外部電極の回り込み部が存するコンデンサ本体の面における2個の回り込み部の間に誘電体層を設ける場合でも、この誘電体層によってコンデンサ本体の強度不足を確実に補うことができる積層セラミックコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る積層セラミックコンデンサは、略直方体状のコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体の長さ方向両端部に設けられた1対の外部電極とを備え、前記外部電極それぞれが前記コンデンサ本体の少なくとも高さ方向一面に回り込んだ回り込み部を有する積層セラミックコンデンサであって、前記コンデンサ本体は、(a1)複数の内部電極層が誘電体層を介して積層された容量部を有する略直方体状の容量素子と、(a2)前記容量素子の少なくとも高さ方向一面の長さ方向両端部に設けられた第1下地導体膜と、(a3)前記容量素子の少なくとも高さ方向一面における2個の前記第1下地導体膜の間に設けられた補助誘電体層とを有し、(a4)前記容量素子の少なくとも高さ方向一面における2個の前記第1下地導体膜と前記補助誘電体層とはそれぞれに含まれる誘電体粒子の相互結合に基づいて連結され、(a5)前記容量素子の少なくとも高さ方向一面における2個の前記第1下地導体膜と前記容量素子とはそれぞれに含まれる誘電体粒子の相互結合に基づいて連結され、(a6)前記容量素子の少なくとも高さ方向一面の前記補助誘電体層と前記容量素子とはそれぞれに含まれる誘電体粒子の相互結合に基づいて連結されており、前記外部電極の一方は、(b1)前記容量素子の長さ方向一面と、前記コンデンサ本体の長さ方向一側に存する前記第1下地導体膜の長さ方向一端縁とに付着した第2下地導体膜と、(b2)前記第2下地導体膜の表面と前記第1下地導体膜の表面とに連続して付着した表面導体膜とを有し、(b3)前記第1下地導体膜と前記表面導体膜の前記第1下地導体膜に付着した回り込み箇所とによって前記回り込み部を構成しており、前記外部電極の他方は、(c1)前記容量素子の長さ方向他面と、前記コンデンサ本体の長さ方向他側に存する前記第1下地導体膜の長さ方向他端縁とに付着した第2下地導体膜と、(c2)前記第2下地導体膜の表面と前記第1下地導体膜の表面とに連続して付着した表面導体膜とを有し、(c3)前記第1下地導体膜と前記表面導体膜の前記第1下地導体膜に付着した回り込み箇所とによって前記回り込み部を構成している。
【0010】
本発明に係る積層セラミックコンデンサによれば、各外部電極の回り込み部が存するコンデンサ本体の面における2個の回り込み部の間に誘電体層を設ける場合でも、この誘電体層によってコンデンサ本体の強度不足を確実に補うことができる積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明を適用した積層セラミックコンデンサを高さ方向一面側から見た図である。
図2図2図1に示した積層セラミックコンデンサを幅方向一面側から見た図である。
図3図3図1に示した積層セラミックコンデンサのS1-S1線に沿う断面図である。
図4図4図3に示した第1下地導体膜と補助誘電体層との連結状態を示す図である。
図5図5図1図4に示した積層セラミックコンデンサの製造方法例を説明するための第3シートの断面図である。
図6図6(A)~図6(C)それぞれは図5に示した第3シートの作製方法例を説明するための図5対応図である。
図7図7図1図4に示した積層セラミックコンデンサの製造方法例を説明するための図3対応図である。
図8図8図1図4に示した積層セラミックコンデンサの製造方法例を説明するための図3対応図である。
図9図9図1図4に示した積層セラミックコンデンサの製造方法例を説明するための図3対応図である。
図10図9図1図4に示した積層セラミックコンデンサの製造方法例を説明するための図3対応図である。
図11図11は本発明を適用した他の積層セラミックコンデンサを示す図3対応図である。
図12図12は本発明を適用したさらに他の積層セラミックコンデンサを示す図3対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、図1図4を用いて、本発明を適用した積層セラミックコンデンサ10の構造について説明する。この説明では、図1の左右方向を長さ方向、図1の上下方向を幅方向、図2の上下方向を高さ方向と表記するとともに、これら長さ方向と幅方向と高さ方向のそれぞれに沿う寸法を長さと幅と高さと表記する。
【0013】
図1図4に示した積層セラミックコンデンサ10のサイズは長さLと幅Wと高さHによって規定されている。参考までに、図1図4の基になってい試作品の長さLと幅Wと高さHの実寸はそれぞれ600μmと300μmと300μmであり、長さL>幅W=高さHの関係を有している。この積層セラミックコンデンサ10は、略直方体状のコンデンサ本体11と、コンデンサ本体11の長さ方向一端部(図1図3の左端部)に設けられた第1外部電極12と、コンデンサ本体11の長さ方向他端部(図1図3の右端部)に設けられた第2外部電極13とを備えている。
【0014】
コンデンサ本体11は、(a1)複数の内部電極層11a1が誘電体層11a2を介して積層された容量部11aと、容量部11aの高さ方向両側に設けられた誘電体マージン部11bとを有する略直方体状の容量素子11’と、(a2)容量素子11’の高さ方向両面それぞれの長さ方向両端部に設けられた第1下地導体膜11c(計4個)と、(a3)容量素子11’の高さ方向両面それぞれにおける2個の第1下地導体膜11cの間に設けられた補助誘電体層11d(計2個)とを有し、(a4)容量素子11’の高さ方向両面それぞれにおける2個の第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dとはそれぞれに含まれる誘電体粒子DP(図4を参照)の相互結合に基づいて連結され、(a5)容量素子11’の高さ方向両面それぞれにおける2個の第1下地導体膜11cと容量素子11’とはそれぞれに含まれる誘電体粒子の相互結合に基づいて連結され、(a6)容量素子11’の高さ方向両面それぞれにおける補助誘電体層11dと容量素子11’とはそれぞれに含まれる誘電体粒子の相互結合に基づいて連結されている。なお、図2および図3には、図示の便宜上、計24個の内部電極層11a1を描いているが、内部電極層11a1の数に特段の制限はない。
【0015】
各内部電極層11a1は、略同じ外形(略矩形状)と略同じ厚さを有している。各内部電極層11a1の長さ(符号省略)は、容量素子11’の長さ(符号省略)よりも小さく、各内部電極層11a1の幅(符号省略)は、容量素子11’の幅(符号省略)よりも小さい。各内部電極層11a1の厚さは、例えば0.5~3μmの範囲内で設定されている。
【0016】
各誘電体層11a2は、略同じ外形(略矩形状)と略同じ厚さを有している。各誘電体層11a2の長さ(符号省略)は、容量素子11’の長さ(符号省略)と略同じであり、各誘電体層11a2の幅(符号省略)は、容量素子11’の幅(符号省略)と略同じである。各誘電体層11a2の厚さは、例えば0.5~3μmの範囲内で設定されている。
【0017】
各誘電体マージン部11bは、略同じ外形(略矩形状)と略同じ厚さを有している。各誘電体マージン部11bの長さ(符号省略)は、容量素子11’の長さ(符号省略)と略同じであり、各誘電体マージン部11bの幅(符号省略)は、容量素子11’の幅(符号省略)と略同じである。各誘電体マージン部11bの厚さは、例えば5~30μmの範囲内で設定されている。
【0018】
各内部電極層11a1の主成分は、例えばニッケル、銅、パラジウム、白金、銀、金、これらの合金等の金属材料である。各誘電体層11a2の主成分と各誘電体マージン部11bの主成分、すなわち、容量素子11’の内部電極層11a1を除く部分の主成分は、例えばチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、酸化チタン等の誘電体材料(誘電体セラミック材料)である。
【0019】
各第1下地導体膜11cは、略同じ外形(略矩形状)と略同じ厚さを有している。各第1下地導体膜11cの長さLaは、例えば積層セラミックコンデンサ10の長さLの1/6~3/7の範囲内で設定されており、各第1下地導体膜11cの幅(符号省略)は、容量素子11’の幅(符号省略)と略同じである。各第1下地導体膜11cの厚さtaは、例えば2~6μmの範囲内で設定されている。
【0020】
各第1下地導体膜11cの第1の主成分は、例えばニッケル、銅、パラジウム、白金、銀、金、これらの合金等の金属材料であり、好ましくは各内部電極層11a1の主成分と同じ金属材料である。また、各第1下地導体膜11cは、第2の主成分として、例えばチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、酸化チタン等の誘電体材料(誘電体セラミック材料)、好ましくは各補助誘電体層11dの主成分と同じ誘電体材料を含んでいる。各第1下地導体膜11cにおける第1の主成分に対する第2の主成分の重量比(第2の主成分/第1の主成分)は、例えば1/8~3/8の範囲内で設定されている。
【0021】
各補助誘電体層11dは、略同じ外形(略矩形状)と略同じ厚さを有している。各補助誘電体層11dの長さLbは、容量素子11’の長さ(符号省略)から各第1下地導体膜11cの長さLaの2倍値を減じた値に略一致しており、各補助誘電体層11dの幅(符号省略)は、容量素子11’の幅(符号省略)と略同じである。各補助誘電体層11dの厚さtbは、例えば2~6μmの範囲内で設定されており、好ましくは第1下地導体膜11cの厚さtaと略同じである。
【0022】
各補助誘電体層11dの主成分は、例えばチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、酸化チタン等の誘電体材料(誘電体セラミック材料)であり、好ましくは容量素子11’の内部電極層11a1を除く部分の主成分と同じ誘電体材料である。
【0023】
ここで、図4を用いて、前記(a4)に記載した第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dとの連結状態について補足するとともに、前記(a5)に記載した第1下地導体膜11cと容量素子11’との連結状態と、前記(a6)に記載した補助誘電体層11dと容量素子11’との連結状態について補足する。
【0024】
〈第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dとの連結状態〉
図4は第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dとの連結状態を示す図であり、同図は電子顕微鏡によって得た試作品の要部の画像に基づいて描いたものである。
【0025】
第1下地導体膜11cは、金属材料を第1の主成分とし誘電体材料を第2の主成分とする焼結体であるため、図4に示したように、多数の金属粒子MPおよび多数の誘電体粒子DPが不規則な配列で結合しており、相互結合した多数の金属粒子MPによって導電性を保有している。一方、補助誘電体層11dは誘電体材料を主成分とする焼結体であるため、図4に示したように、多数の誘電体粒子DPが不規則な配列で結合している。
【0026】
第1下地導体膜11cに含まれる誘電体材料と補助誘電体層11dに含まれる誘電体材料が同じ組成物の場合、両誘電体材料が同じ組成物をともに含む場合、または両誘電体材料が同じ元素を含む組成物をともに含む場合、焼結に基づく粒子結合によって、第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dとの境目(図4の破線を参照)では、第1下地導体膜11cの誘電体粒子DPの一部が補助誘電体層11dに入り込み、かつ、補助誘電体層11dの誘電体粒子DPの一部が第1下地導体膜11cに入り込んだ状態、すなわち、第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dのそれぞれに含まれる誘電体粒子DPの一部が入り交じった状態で相互結合しており、この相互結合に基づいて第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dは密着下で強く連結されている。
【0027】
〈第1下地導体膜11cと容量素子11’との連結状態〉
容量素子11’の内部電極層11a1を除く部分は誘電体材料を主成分とする焼結体であるため、図4の右部と同様に、多数の誘電体粒子DPが不規則な配列で結合している。第1下地導体膜11cに含まれる誘電体材料と容量素子11’に含まれる誘電体材料が同じ組成物の場合、両誘電体材料が同じ組成物をともに含む場合、または両誘電体材料が同じ元素を含む組成物をともに含む場合、焼結に基づく粒子結合によって、第1下地導体膜11cと容量素子11’との境目では、第1下地導体膜11cの誘電体粒子の一部が容量素子11’に入り込み、かつ、容量素子11’の誘電体粒子の一部が第1下地導体膜11cに入り込んだ状態、すなわち、図4と同様に、第1下地導体膜11cと容量素子11’のそれぞれに含まれる誘電体粒子の一部が入り交じった状態で相互結合しており、この相互結合に基づいて第1下地導体膜11cと容量素子11’は密着下で強く連結されている。
【0028】
〈補助誘電体層11dと容量素子11’との連結状態〉
容量素子11’の内部電極層11a1を除く部分は誘電体材料を主成分とする焼結体であるため、図4の右部と同様に、多数の誘電体粒子DPが不規則な配列で結合している。補助誘電体層11dに含まれる誘電体材料と容量素子11’に含まれる誘電体材料が同じ組成物の場合、両誘電体材料が同じ組成物をともに含む場合、または両誘電体材料が同じ元素を含む組成物をともに含む場合、焼結に基づく粒子結合によって、補助誘電体層11dと容量素子11’との境目では、補助誘電体層11dの誘電体粒子の一部が容量素子11’に入り込み、かつ、容量素子11’の誘電体粒子の一部が補助誘電体層11dに入り込んだ状態、すなわち、補助誘電体層11dと容量素子11’のそれぞれに含まれる誘電体粒子の一部が入り交じった状態で相互結合しており、この相互結合に基づいて補助誘電体層11dと容量素子11’は密着下で強く連結されている。
【0029】
第1外部電極12は、(b1)容量素子11’の長さ方向一面(図3の左面)と、コンデンサ本体11の長さ方向一側(図3の左側)に存する2個の第1下地導体膜11cの長さ方向一端縁(図3の左端縁)とに付着した第2下地導体膜12aと、(b2)第2下地導体膜12aの表面と前記2個の第1下地導体膜11cの表面とに連続して付着した表面導体膜12bとを有し、(b3)前記2個の第1下地導体膜11cと、表面導体膜12bの各第1下地導体膜11cに付着した回り込み箇所12b1とによって、コンデンサ本体11の高さ方向両面それぞれに回り込んだ2個の回り込み部12cを構成している。
【0030】
第2外部電極13は、(c1)容量素子11’の長さ方向他面(図3の右面)と、コンデンサ本体11の長さ方向他側(図3の右側)に存する2個の第1下地導体膜11cの長さ方向他端縁(図3の右端縁)とに付着した第2下地導体膜13aと、(c2)第2下地導体膜13aの表面と前記2個の第1下地導体膜11cの表面とに連続して付着した表面導体膜13bとを有し、(c3)前記2個の第1下地膜11cと、表面導体膜13bの各第1下地導体膜11cに付着した回り込み箇所13b1とによって、コンデンサ本体11の高さ方向両面それぞれに回り込んだ2個の回り込み部13cを構成している。
【0031】
つまり、各外部電極12および13は、コンデンサ本体11の高さ方向両面に回り込んだ2個の回り込み部12cおよび13cを有している。図3から分かるように、先に述べた複数の内部電極層11a1の端縁は、第1外部電極12の第2下地導体膜12aと、第2外部電極13の第2下地導体膜13aに、交互に接続されている。なお、図1図3には、各外部電極12および13の第2下地導体膜12aおよび13aとして、各々の高さ方向両端縁が各第1下地導体膜11cに僅かに乗り上げたものを描いているが、この乗り上げ部分はなくてもよいし、乗り上げ部分の長さは図示した長さよりも多少大きくてもよい。
【0032】
各外部電極12および13の第2下地導体膜12aおよび13aの厚さtcは、例えば5~15μmの範囲内で設定されている。各外部電極12および13の表面導体膜12bおよび13bの厚さtdは、例えば2~6μmの範囲内で設定されている。また、各外部電極12および13の表面導体膜12bおよび13bの回り込み箇所12b1および13b1の長さ(符号省略)は、第1下地導体膜11cの長さLaと略同じである。
【0033】
各外部電極12および13の第2下地導体膜12aおよび13aの主成分は、例えばニッケル、銅、パラジウム、白金、銀、金、これらの合金等の金属材料である。また、各外部電極12および13の表面導体膜12bおよび13bの主成分は、例えば銅、ニッケル、スズ、パラジウム、金、亜鉛、これらの合金等の金属材料である。
【0034】
ここで、各外部電極12および13の表面導体膜12bおよび13bの層構成についていて補足する。図3には、図示の便宜上、表面導体膜12bおよび13bの層構成が分かるように描いていないが、各表面導体膜12bおよび13bには1層の膜から成る単層構成の他、2層以上の膜から成る多層構成を採用することができる。
【0035】
各内部電極層11a1の主成分と各第1下地導体膜11cの第1の主成分と各第2下地導体膜12aおよび13aの主成分がいずれもニッケルである場合を例にあげて説明すれば、表面導体膜12bおよび13bが単層構成の場合には、スズを主成分とする膜を好ましく用いることができる。また、表面導体膜12bおよび13bが2層構成の場合には、ニッケルを主成分とする第1膜とスズを主成分とする第2膜との組み合わせを好ましく用いることができる。さらに、表面導体膜12bおよび13bが3層構成の場合には、銅を主成分とする第1膜とニッケルを主成分とする第2膜とスズを主成分とする第3膜との組み合わせを好ましく用いることができる。勿論、各膜には前記以外の金属材料を主成分としたものを適宜用いてもよい。また、各膜は好ましくはメッキ膜であり、メッキ膜の作製には周知の湿式メッキ法や乾式メッキ法が適宜利用できる。
【0036】
次に、図5図10を用い、かつ、図1図4に示した符号を引用して、図1図4に示した積層セラミックコンデンサ10の製造方法例、具体的には容量素子11’の内部電極層11a1を除く部分の主成分と各第1下地導体膜11cの第2の主成分と各補助誘電体層11dの主成分がチタン酸バリウム、各内部電極層11a1の主成分と各第1下地導体膜11cの第1の主成分と各第2下地導体膜12aおよび13aの主成分がいずれもニッケル、各表面導体膜12bおよび13bが単層構成でスズを主成分とする膜から成る場合の製造方法例について説明する。ここで説明する製造方法はあくまでも例であって、前記積層セラミックコンデンサ10の製造方法を制限するものではない。
【0037】
製造に際しては、まず、チタン酸バリウム粉末と有機溶剤と有機バインダーと分散剤等を含有したセラミックスラリーと、ニッケル粉末と有機溶剤と有機バインダーと分散剤等を含有した第1電極ペーストと、ニッケル粉末とチタン酸バリウム粉末と有機溶剤と有機バインダーと分散剤等を含有した第2電極ペーストを用意する。
【0038】
続いて、前記セラミックスラリーを塗工して乾燥する手法によって、キャリアフィルムの表面にグリーンシートが形成された第1シートを作製する。また、前記第1電極ペーストを印刷して乾燥する手法によって、第1シートのグリーンシートの表面にマトリクス配列または千鳥配列の未焼成の内部電極層パターン群が形成された第2シートを作製する。さらに、第1シートのグリーンシートの表面に各第1下地導体膜11cに対応したストライプ状の未焼成の第1下地導体膜パターン群と各補助誘電体層11dに対応したストライプ状の未焼成の補助誘電体層パターン群とが形成された第3シートを作製する。
【0039】
ここで、図5および図6を用いて、前記第3シートの構成と、前記第3シートの作製方法例について補足する。ここで説明する作製方法はあくまでも例であって、前記第3シートの作製方法を制限するものではない。
【0040】
第3シートは、図5に示したように、キャリアフィルムCFの表面に形成されたグリーンシートGSと、グリーンシートGSの表面に形成されたストライプ状の未焼成の第1下地導体膜パターン群CLPおよびストライプ状の未焼成の補助誘電体層パターン群DLPとを有している。未焼成の第1下地導体膜パターン群CLPの厚さと未焼成の補助誘電体層パターン群DLPは略同じである。なお、図5には、図示の便宜上、未焼成の第1積層シートとして前記積層セラミックコンデンサ10の1個に対応したものを描いているが、実際の第3シートは多数個取りに対応したサイズを有している。
【0041】
この第3シートは、未焼成の第1下地導体膜パターン群CLPを形成した後に、未焼成の補助誘電体層パターン群DLPを形成することによって作製される。未焼成の第1下地導体膜パターン群CLPの形成には、好ましくはグリーンシートGSの表面に前記第2電極ペーストを印刷して乾燥する方法が採用できる。一方、未焼成の補助誘電体層パターン群DLPの形成には、好ましくは図6(A)~図6(C)それぞれに示した方法が適宜採用できる。
【0042】
図6(A)に示した方法は、隣接する未焼成の第1下地導体膜パターンCLPの間に、スクリーン印刷等によって、未焼成の第1下地導体膜パターンCLPの厚さよりも厚めに、かつ、隣接する未焼成の第1下地導体膜パターンCLPの間隔よりも大きめに前記セラミックスラリーCSを印刷して、これを乾燥した後、研磨等によって、このセラミックスラリーCSの乾燥物の不要分を除去して、未焼成の第1下地導体膜パターンCLPの表面と略面一の表面SUを有する未焼成の補助誘電体層パターンDLPを形成する方法である。
【0043】
図6(B)に示した方法は、隣接する未焼成の第1下地導体膜パターンCLPの間に、ディスペンサ等によって、未焼成の第1下地導体膜パターンCLPの厚さよりも厚めに前記セラミックスラリーCSを供給した後、ブレードBL等によって、供給されたセラミックスラリーCSを均して未焼成の第1下地導体膜パターンCLPの表面と略面一の表面SUを得てから、このセラミックスラリーCSを乾燥して未焼成の補助誘電体層パターンDLPを形成する方法である。
【0044】
図6(C)に示した方法は、隣接する未焼成の第1下地導体膜パターンCLPの間に、スクリーン印刷等によって、未焼成の第1下地導体膜パターンCLPの厚さよりも厚めに、かつ、隣接する未焼成の第1下地導体膜パターンCLPの間隔よりも小さめに前記セラミックスラリーCSを印刷した後、プレートPL等によって、印刷されたセラミックスラリーCSを押し広げて未焼成の第1下地導体膜パターンCLPの表面と略面一の表面SUを得てから、このセラミックスラリーCSを乾燥して未焼成の補助誘電体層パターンDLPを形成する方法である。
【0045】
第1シート、第2シートおよび第3シートを作製した後は、第1シートのグリーンシートから取り出した単位シートを所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返すことにより、高さ方向一方の誘電体マージン部11bに対応した部位を形成する。続いて、第2シートのグリーンシートから取り出した単位シート(未焼成の内部電極層パターン群を含む)を所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返すことにより、容量部11aに対応した部位を形成する。続いて、第1シートのグリーンシートから取り出した単位シートを所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返すことにより、高さ方向他方の誘電体マージン部11bに対応した部位を形成する。最後に、全体に対して熱圧着を施すことにより、未焼成の第1積層シートを作製する(図7を参照)。なお、図7には、図示の便宜上、未焼成の第1積層シートとして前記積層セラミックコンデンサ10の1個に対応したものを描いているが、実際の未焼成の第1積層シートは多数個取りに対応したサイズを有している。
【0046】
続いて、第1積層シートの高さ方向両面それぞれに、第3シートのグリーンシートから取り出した単位シート(未焼成の第1下地導体膜パターン群および未焼成の補助誘電体層パターン群を含む)を積み重ねて熱圧着し、必要に応じて全体に対して熱圧着を施すことにより、未焼成の第2積層シートを作製する(図8を参照)。なお、図8には、未焼成の第2積層シートとして前記積層セラミックコンデンサ10の1個に対応したものを描いているが、実際の未焼成の第2積層シートは多数個取りに対応したサイズを有している。
【0047】
続いて、多数個取りに対応したサイズを有する未焼成の第2積層シートを格子状に切断することにより、コンデンサ本体11に対応した未焼成のコンデンサ本体を作製する(図8を参照)。続いて、ディップやローラ塗布等によって、未焼成のコンデンサ本体の長さ方向両面に前記第2電極ペーストを塗布して乾燥することにより、各第2下地導体膜12aおよび13aに対応した未焼成の第2下地導体膜を作製する(図9を参照)。
【0048】
続いて、未焼成の第2下地導体膜を有する未焼成のコンデンサ本体を焼成炉に投入し、還元雰囲気においてチタン酸バリウムとニッケルに応じた温度プロファイルにて多数個一括で焼成して(脱バインダ処理と焼成処理を含む)、第2下地導体膜12aおよび13aを有するコンデンサ本体11を作製する(図9を参照)。
【0049】
続いて、電解メッキ等によって、各第2下地導体膜12aおよび13aの表面と各第1下地導体膜11cの表面とに連続して付着した表面導体膜12bおよび13bを作製する(図10を参照)。
【0050】
なお、各第2下地導体膜12aおよび13aは、先に述べた未焼成のコンデンサ本体(図8を参照)に前記同様の焼成を施してコンデンサ本体11を作製した後、このコンデンサ本体11の長さ方向両面に第2電極ペーストを塗布して乾燥し、これに焼き付け処理を施すことによって作製してもよい。
【0051】
次に、本発明を適用した他の積層セラミックコンデンサの構造について説明する。
【0052】
図11に示した積層セラミックコンデンサは、その高さHを、図1図4に示した積層セラミックコンデンサ10の高さHの1/2としたものである。参考までに、図11の基になっている試作品の長さLと幅Wと高さHの実寸はそれぞれ600μmと300μmと150μmであり、長さL>幅W>高さHの関係を有している。ここに示した高さHの数値(150μm)があくまでも例であって、前記積層セラミックコンデンサ10の幅Wよりも小さければ高さHの数値に特段の制限はない。なお、図11には、図1図3と同様に、各外部電極12および13の第2下地導体膜12aおよび13aとして、各々の高さ方向両端縁が各第1下地導体膜11cに僅かに乗り上げたものを描いているが、この乗り上げ部分はなくてもよいし、乗り上げ部分の長さは図示した長さよりも多少大きくてもよい。
【0053】
図12に示した積層セラミックコンデンサは、図1図4に示した積層セラミックコンデンサ10のコンデンサ本体11の高さ方向他面(図3の上面)に存する2個の第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dを排除するともに、この排除に伴って各外部電極12および13の表面導体膜12bおよび13bから高さ方向他面側の回り込み箇所12b1および13b1も排除したものである。つまり、図12に示した積層セラミックコンデンサの各外部電極12および13は、コンデンサ本体11の高さ方向一面(図12の下面)のみに回り込んだ1個の回り込み部12cおよび13cを有している。ここに示した各外部電極12および13の形態は、図11を用いて説明した高さHが小さい積層セラミックコンデンサにも適用することができる。なお、図12には、図1図3と同様に、各外部電極12および13の第2下地導体膜12aおよび13aとして、各々の高さ方向両端縁が各第1下地導体膜11cとコンデンサ本体11の高さ方向他面(図12の上面)に僅かに乗り上げたものを描いているが、この乗り上げ部分はなくてもよいし、乗り上げ部分の長さは図示した長さよりも多少大きくてもよい。
【0054】
また、図示を省略したが、図1図4に示した積層セラミックコンデンサ10のコンデンサ本体11の幅方向両側に、第3下地導体膜を各第1下地導体膜11cと連続するように設け、かつ、各第3下地導体膜の表面にも付着するように表面導体膜(12bおよび13b)を設ければ、コンデンサ本体11の高さ方向両面の他に幅方向両面にも回り込んだ計4個の回り込み部を有する各外部電極(12および13)を構成することも可能である。
【0055】
さらに、図1図4図11図12のそれぞれには、長さLが600μmで幅Wが300μmの試作品を基にした積層セラミックコンデンサを示したが、長さLと幅Wはこれら以外の数値としてもよい。加えて、図1図4図11図12のそれぞれには、長さL>幅W=高さHの関係または長さL>幅W>高さHの関係を有する積層セラミックコンデンサを示したが、長さLと幅Wと高さHの関係はL>H>WやW>L=HやW>L>HやW>H>Lとしてもよい。
【0056】
次に、図1図4に示した積層セラミックコンデンサ10で得られる効果について説明する。ここで説明する効果は、先に述べた他の積層セラミックコンデンサでも同様に得ることができる。
【0057】
[効果1]容量素子11’の少なくとも高さ方向一面における2個の第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dとが、それぞれに含まれる誘電体粒子DP(図4を参照)の相互結合に基づいて連結されている。そのため、積層セラミックコンデンサ10にコンデンサ本体11が高さ方向に反るような力が付加されても、前記2個の第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dとの間にコンデンサ素子11’に至る隙間が生じることはない。よって、コンデンサ素子11’の高さが小さくなっても、前記2個の第1下地導体膜11cの間に設けられた補助誘電体層11dによって、コンデンサ素子11’の強度不足を確実に補うことができる。
【0058】
加えて、容量素子11’の少なくとも高さ方向一面における2個の第1下地導体膜11cと容量素子11’とが、それぞれに含まれる誘電体粒子の相互結合に基づいて連結されており、容量素子11’の少なくとも高さ方向一面における補助誘電体層11dと容量素子11’とが、それぞれに含まれる誘電体粒子の相互結合に基づいて連結されている。そのため、積層セラミックコンデンサ10にコンデンサ本体11が高さ方向に反るような力が付加されても、前記2個の第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dのそれぞれが容量素子11’から剥離することも確実に防止できるため、これらに基づいて前掲の強度不足をより確実に補うことができる。
【0059】
[効果2]前記の「誘電体粒子の相互結合」が焼結に基づく粒子結合であるため、前記2個の第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dとの連結と、前記2個の第1下地導体膜11cと容量素子11’との連結と、補助誘電体層11dと容量素子11’との連結ののそれぞれに高い強度を確保して、前掲の強度不足をより一層確実に補うことができる。
【0060】
[効果3]前記2個の第1下地導体膜11cの幅と補助誘電体層11dの幅が、容量素子11’の幅と略同じであるため、前記2個の第1下地導体膜11cの厚さtaと補助誘電体層11dの厚さtbが小さい場合でも、前記2個の第1下地導体膜11cと補助誘電体層11dとの連結を極力広い面積下で的確に行うことができる。加えて、前記2個の第1下地導体膜11cと容量素子11’との連結と、補助誘電体層11dと容量素子11’との連結をも、広い面積下で的確に行うことができる。
【0061】
[効果4]前記2個の第1下地導体膜11cの厚さtaと補助誘電体層11dの厚さtbが略同じであり、補助誘電体層11dの厚さtbが各外部電極12および13の回り込み部12cおよび13cの厚さ(ta+tdに相当)よりも小さいため、積層セラミックコンデンサ10を回路基板に実装するときや部品内蔵基板に収容するときに各補助誘電体層11dが邪魔になることがない。
【0062】
[効果5]各外部電極12および13の回り込み部12cおよび13cを構成する第1下地導体膜11cの長さLaが、積層セラミックコンデンサ10の長さLの1/6~3/7の範囲内で設定されているので、積層セラミックコンデンサ10を回路基板に実装するときや部品内蔵基板に収容するときに各外部電極12および13の回り込み部12cおよび13cに十分な接続面積を確保することができる。
【符号の説明】
【0063】
10…積層セラミックコンデンサ、11…コンデンサ本体、11’…容量素子、11a…容量部、11a1…内部電極層、11a2…誘電体層、11b…誘電体マージン部、11c…第1下地導体膜、11d…補助誘電体層、12…第1外部電極、12a…第2下地導体膜、12b…表面導体膜、12b1…表面導体膜の回り込み箇所、12c…第1外部電極の回り込み部、13…第2外部電極、13a…第2下地導体膜、13b…表面導体膜、13b1…表面導体膜の回り込み箇所、13c…第2外部電極の回り込み部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12