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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20220421BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220421BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20220421BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20220421BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
F01N3/28 301P
F01N3/24 C
F01N3/24 E
F01N3/035 E
B01D53/94 222
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021065946
(22)【出願日】2021-04-08
(62)【分割の表示】P 2017057246の分割
【原出願日】2017-03-23
(65)【公開番号】P2021107713
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】牧野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正悟
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507118(JP,A)
【文献】特開2014-198319(JP,A)
【文献】特開2013-124610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00~ 3/38
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1SCR触媒コンバータ、酸化触媒コンバータ、フィルタ部、及び第2SCR触媒コンバータ、を備え、
前記第1SCR触媒コンバータ、前記酸化触媒コンバータ、前記フィルタ部、及び前記第2SCR触媒コンバータは、内燃機関の排気系に接続される筐体内に収容された状態で、前記排気系の排ガスの流れ方向に対して直列に配設され、
前記酸化触媒コンバータは、前記第1SCR触媒コンバータの下流側に配置され、
前記フィルタ部は、前記酸化触媒コンバータの下流側に配置され、
前記第2SCR触媒コンバータは、前記フィルタ部の下流側に配置され、
前記第1SCR触媒コンバータは、第一端面から第二端面まで延びる排ガスの流路となる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造体を備え、
前記ハニカム構造体のセル密度が、31~78個/cmであり、
前記ハニカム構造体の前記隔壁の気孔率が、50~65%であり、
前記ハニカム構造体は、前記隔壁の表面及び前記隔壁に形成された細孔の内部に、第1SCR触媒が担持されたものであり、
前記隔壁の表面及び前記細孔の内部に担持された前記第1SCR触媒の担持量が200~500g/Lであり、且つ、前記細孔の内部に担持された前記第1SCR触媒の担持量が5~80g/Lであり、
前記第2SCR触媒コンバータは、第2SCR触媒が担持された柱状の第2ハニカム構造体を備え、前記第2ハニカム構造体のセル密度が、39~54個/cmであり、
前記第1SCR触媒コンバータにおける前記ハニカム構造体の単位体積当たりの前記第1SCR触媒の担持量(g/L)が、前記第2SCR触媒コンバータにおける前記第2ハニカム構造体の単位体積当たりの前記第2SCR触媒の担持量(g/L)よりも大である、排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記隔壁の厚さが、0.076~0.254mmである、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記ハニカム構造体の開口率が、50~90%である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記第1SCR触媒が、金属置換されたゼオライトである、又は、バナジウム及びチタニアのうちの少なくとも1種を含有する触媒である、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置に関する。更に詳しくは、ディーゼル内燃機関等の内燃機関から排出される排ガス中に含まれるNOxの浄化をより良好に行うことが可能な排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼル内燃機関等の内燃機関に対して、排ガス中に含まれる有害物質の排出規制が適用されており、その規制は年々厳しくなっている。このため、内燃機関の排気系には、複数のフィルタや触媒コンバータ(Catalytic Converter)が取りつけられている。例えば、有害物質の1つであるNOxを浄化するための触媒コンバータとしては、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒を担持したハニカム構造体を含むSCR触媒コンバータが挙げられる。SCR触媒コンバータは、その上流側に取りつけられた還元剤噴射部から噴射される還元剤を用いて、NOxを還元している。
【0003】
従来、このような排ガス浄化装置として、排ガスの流動方向に対して、還元剤溶液用の調量装置、SCR触媒コンバータ、酸化触媒コンバータ、ディーゼル微粒子フィルタを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015―163790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような排ガス浄化装置は、SCR触媒コンバータを排ガス浄化装置の上流側に配置している。このため、SCR触媒の触媒反応に最適である0.3~0.7のほぼ最適なNO/NOx比の排ガスが、SCR触媒コンバータに、他のコンバータを介さず流れこむ。そして、エンジンの排ガス温度が200℃を下回るコールドスタート(Cold Start)点及び低負荷点でさえも、最適な脱硝率が得られることができるとされている。しかしながら、排ガス浄化装置の長期使用により、SCR触媒コンバータのSCR触媒が劣化し、NOx浄化効率が悪くなるという問題があった。また、エンジンのコールドスタート点及び低負荷点におけるNOx浄化効率も、年々厳しくなる排ガスの法規制を満足し得るものではなかった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、内燃機関から排出される排ガス中のNOx浄化効率が高い排ガス浄化装置が提供される。更に、長期間に渡り排ガスを浄化しても、触媒被毒によるNOx浄化効率の低下が少なく、且つ、内燃機関の低温始動時においても、高いNOx浄化効率が期待される排ガス浄化装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示す、排ガス浄化装置が提供される。
【0008】
[1] 第1SCR触媒コンバータ、酸化触媒コンバータ、フィルタ部、及び第2SCR触媒コンバータ、を備え、
前記第1SCR触媒コンバータ、前記酸化触媒コンバータ、前記フィルタ部、及び前記第2SCR触媒コンバータは、内燃機関の排気系に接続される筐体内に収容された状態で、前記排気系の排ガスの流れ方向に対して直列に配設され、
前記酸化触媒コンバータは、前記第1SCR触媒コンバータの下流側に配置され、
前記フィルタ部は、前記酸化触媒コンバータの下流側に配置され、
前記第2SCR触媒コンバータは、前記フィルタ部の下流側に配置され、
前記第1SCR触媒コンバータは、第一端面から第二端面まで延びる排ガスの流路となる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造体を備え、
前記ハニカム構造体のセル密度が、31~78個/cmであり、
前記ハニカム構造体の前記隔壁の気孔率が、50~65%であり、
前記ハニカム構造体は、前記隔壁の表面及び前記隔壁に形成された細孔の内部に、第1SCR触媒が担持されたものであり、
前記隔壁の表面及び前記細孔の内部に担持された前記第1SCR触媒の担持量が200~500g/Lであり、且つ、前記細孔の内部に担持された前記第1SCR触媒の担持量が5~80g/Lであり、
前記第2SCR触媒コンバータは、第2SCR触媒が担持された柱状の第2ハニカム構造体を備え、前記第2ハニカム構造体のセル密度が、39~54個/cmであり、
前記第1SCR触媒コンバータにおける前記ハニカム構造体の単位体積当たりの前記第1SCR触媒の担持量(g/L)が、前記第2SCR触媒コンバータにおける前記第2ハニカム構造体の単位体積当たりの前記第2SCR触媒の担持量(g/L)よりも大である、排ガス浄化装置。
【0009】
[2] 前記隔壁の厚さが、0.076~0.254mmである、前記[1]に記載の排ガス浄化装置。
【0010】
[3] 前記ハニカム構造体の開口率が、50~90%である、前記[1]又は[2]に記載の排ガス浄化装置。
【0011】
[4] 前記第1SCR触媒が、金属置換されたゼオライトである、又は、バナジウム及びチタニアのうちの少なくとも1種を含有する触媒である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の排ガス浄化装置
【発明の効果】
【0012】
本発明の排ガス浄化装置は、第1SCR触媒コンバータ、酸化触媒コンバータ、フィルタ部、及び第2SCR触媒コンバータを備える。第1SCR触媒コンバータ、酸化触媒コンバータ、フィルタ部、及び第2SCR触媒コンバータは、内燃機関の排気系に接続される筐体内に収容された状態で、排気系の排ガスの流れ方向に対して直列に配設されている。そして、筐体内では、第1SCR触媒コンバータの下流側に酸化触媒コンバータが配置され、酸化触媒コンバータの下流側にフィルタ部が配置され、フィルタ部の下流側に第2SCR触媒コンバータが配置されている。第1SCR触媒コンバータは、第一端面から第二端面まで延びる排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造体を備えている。ハニカム構造体のセル密度は、31~78個/cmであり、ハニカム構造体の隔壁の気孔率は、50~65%である。そして、ハニカム構造体は、隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内部に、第1SCR触媒が担持されている。本発明の排ガス浄化装置は、隔壁の表面及び細孔の内部に担持された第1SCR触媒の担持量が200~500g/Lであり、且つ、細孔の内部に担持された第1SCR触媒の担持量が5~80g/Lである。
【0013】
本発明の排ガス浄化装置は、排ガス中の有害物質の浄化効率が高く、特に、NOxの浄化効率に優れる。即ち、本発明の排ガス浄化装置に用いられる第1SCR触媒コンバータは、細孔の内部に担持された第1SCR触媒の担持量が5~80g/L以上であり、従来の排ガス浄化装置におけるSCR触媒コンバータに比して、細孔の内部に担持された第1SCR触媒の担持量が非常に多くなっている。このため、長期間に渡り排ガスを浄化しても、触媒被毒によるNOxの浄化効率の低下が少ない。
【0014】
また、本発明の排ガス浄化装置においては、第1SCR触媒コンバータが、酸化触媒コンバータ、フィルタ部、及び第2SCR触媒コンバータの3つの浄化部材よりも排気系の上流側に配設されている。このため、排ガスが持つ熱エネルギーが、第1SCR触媒コンバータにより多く伝わりやすくなり、内燃機関の低温始動時においても、第1SCR触媒が触媒活性温度まで上昇しやすい。したがって、内燃機関の低温始動時においても、NOx浄化効率が高くなる。また、ハニカム構造体の隔壁の気孔率が50~65%という高気孔率であるため、ハニカム構造体の熱容量が低く、隔壁に担持された第1SCR触媒の昇温が速くなる。このため、内燃機関の低温始動時においてもNOx浄化効率が高くなる。更に、本発明の排ガス浄化装置は、その製造も比較的簡便であり、生産性に資する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の排ガス浄化装置の第一実施形態を模式的に示す、平面透視図である。
図2図1に示す第1SCR触媒コンバータにおける、ハニカム構造体を第一端面側からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0017】
(1)排ガス浄化装置:
本発明の排ガス浄化装置の第一実施形態は、図1に示すような排ガス浄化装置100である。本実施形態の排ガス浄化装置100は、第1SCR触媒コンバータ1、酸化触媒コンバータ2、フィルタ部3、及び第2SCR触媒コンバータ4を備える。第1SCR触媒コンバータ1、酸化触媒コンバータ2、フィルタ部3、及び第2SCR触媒コンバータ4は、内燃機関の排気系に接続される筐体5内に収容された状態で、排気系の排ガスの流れ方向Gに対して直列に配設されている。筐体5内での配列は、第1SCR触媒コンバータ1の下流側に酸化触媒コンバータ2が配置され、酸化触媒コンバータ2の下流側にフィルタ部3が配置され、フィルタ部3の下流側に第2SCR触媒コンバータ4が配置されている。このように構成することにより、排ガスが持つ熱エネルギーが、第1SCR触媒コンバータ1により多く伝わりやすくなり、内燃機関の低温始動時においても、第1SCR触媒が触媒活性温度まで上昇しやすくなる。即ち、第1SCR触媒が活性温度に到達する時間を、従来の排ガス浄化装置に比して短くすることができる。このため、本実施形態の排ガス浄化装置100は、内燃機関の低温始動時においても、NOx浄化効率が高くなる。なお、「排ガスの流れ方向Gに対して直列に配設されている」とは、排ガスの流れに沿って一線に並ぶように配設されていることを意味する。したがって、排ガスの流れが直線状であれば、各要素は、排ガスの流れに沿って直線状に配列した状態となる。一方、例えば、排ガスの流れが曲がった状態であれば、各要素は、排ガスの流れに沿って曲線状に配列した状態となる。ここで、図1は、本発明の排ガス浄化装置の第一実施形態を模式的に示す、平面透視図である。図1において、矢印Gは、排ガスの流れ方向を示している。図2は、図1に示す第1SCR触媒コンバータにおける、ハニカム構造体を、第一端面側からみた斜視図である。
【0018】
第1SCR触媒コンバータ1及び第2SCR触媒コンバータ4は、排ガス中の有害物質であるNOxを浄化対象とすることができ、NOxの浄化に触媒活性を有する第1SCR触媒及び第2SCR触媒をそれぞれ含んでいる。なお、NOxとは窒素酸化物の総称であり、NO、NO、NO、N、N、N等が含まれる。
【0019】
排ガス浄化装置100は、第1SCR触媒コンバータ1の上流側に、還元剤を噴射可能な還元剤噴射部(図示せず)を備えることが好ましい。また、フィルタ部3と第2SCR触媒コンバータ4との間にも、還元剤を噴射可能な還元剤噴射部(図示せず)を備えることが好ましい。第1SCR触媒コンバータ1及び第2SCR触媒コンバータ4は、それぞれの還元剤噴射部(図示せず)から噴射される還元剤を用いて、NOxをN等に好適に浄化することができる。
【0020】
還元剤としては、尿素水、アンモニア水、シアヌル酸水溶液、硫酸アンモニウム水溶液等を用いることができる。
【0021】
還元剤として、尿素水及びアンモニア水を用いる場合には、排ガス浄化装置100は、第2SCR触媒コンバータ4の下流側にアンモニアスリップ触媒コンバータ(図示せず)を備えていてもよい。アンモニアスリップ触媒コンバータ(図示せず)は、アンモニアを酸化して浄化するためのものである。すなわち、還元剤噴射部(図示せず)から噴射された尿素から生じたアンモニア、又は還元剤噴射部(図示せず)から噴射されたアンモニアは、その全部がNOx浄化反応に寄与せずに、その一部が第2SCR触媒コンバータ4の下流側に漏出してくることがある。アンモニアスリップ触媒コンバータ(図示せず)を備えることにより、第2SCR触媒コンバータ4の下流側に漏出してきたアンモニアを浄化することができ、アンモニアを含まない処理済みの排ガスを、排ガス浄化装置100から排出することができる。
【0022】
酸化触媒コンバータ2は、排ガス中の有害物質であるHC、COを主な浄化対象とすることができ、HC、NOの浄化に触媒活性を有する酸化触媒を含んでいる。また、このような酸化触媒は、NOxのうち、NOをNOに酸化することもできる。
【0023】
フィルタ部3は、排ガス中の有害物質である煤や有機物等からなる粒子状物質を主な浄化対象とすることができる。また、フィルタ部3に堆積した粒子状物質に、フィルタ部3の上流側にある酸化触媒コンバータから流れてきたNOが接触すると、粒子状物質の酸化・燃焼が促進される。
【0024】
排ガスの流れる方向における、第1SCR触媒コンバータ1と酸化触媒コンバータ2との距離は、25~100mmであることが好ましく、25~75mmであることが更に好ましく、25~50mmであることが特に好ましい。第1SCR触媒コンバータ1と酸化触媒コンバータ2との距離が、25mmより小さいと、車両等の振動により両者が接触して破損することがある。第1SCR触媒コンバータ1と酸化触媒コンバータ2との距離が、100mmより大きいと、排ガスの熱エネルギーが酸化触媒コンバータ2に伝わりにくくなり、排ガスの浄化効率が低くなることがある。
【0025】
(1-1)第1SCR触媒コンバータ:
排ガス浄化装置100における第1SCR触媒コンバータ1は、図2に示すような柱状のハニカム構造体20を備える。ハニカム構造体20は、第一端面21から第二端面22まで延びる排ガスの流路となる複数のセル23を区画形成する多孔質の隔壁24を有する。なお、以下、第1SCR触媒コンバータ1(図1参照)に用いられるハニカム構造体20を、単に、「ハニカム構造体20」ということがある。
【0026】
第1SCR触媒コンバータ1(図1参照)に用いられるハニカム構造体20は、隔壁24の気孔率が50~65%である。隔壁24の気孔率は、52~65%であることが好ましく、55~65%であることがより好ましい。隔壁24の気孔率が、50%より小さいと、ハニカム構造体20の熱容量が大きくなったり、十分な量の第1SCR触媒を担持することが出来なくなったりする。このため、ハニカム構造体20に担持された第1SCR触媒のNOx浄化効率が悪くなることがある。また、隔壁24の気孔率が、50%より小さいと、隔壁24による圧力損失が高くなることがある。隔壁24の気孔率が、65%より大きいと、ハニカム構造体20の機械強度が低くなることがある。隔壁24の気孔率は、ハニカム構造体20に第1SCR触媒が担持されていない状態における隔壁24の気孔率である。
【0027】
隔壁24の気孔率は、下記のようにして測定することができる。まず、測定対象のハニカム構造体20を、エポキシ樹脂に埋設する。これにより、試験片となる隔壁24の細孔をエポキシ樹脂で埋める。このようにして得られた試験片について、セル23の延びる方向と直交する方向における断面を、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう)にて観察し、SEM画像を取得する。SEMとは、「Scanning Electron Microscope」の略である。走査型電子顕微鏡としては、例えば、日立ハイテクノロジー社製の走査型電子顕微鏡「型番:S3200-N」を用いることができる。次に、得られたSEM画像について、EDSによる元素分析を行い、EDSマッピングを作製する。EDSとは、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)のことである。なお、EDSによる元素分析についても、日立ハイテクノロジー社製の走査型電子顕微鏡「型番:S3200-N」を用いて行うことができる。そして、EDSマッピングから、隔壁24」、「隔壁24の細孔内に担持された第1SCR触媒」、及び「隔壁24の細孔の空隙部分」をそれぞれ区別する。なお、以下の説明では、SEM画像中にセル23による空間部分が撮像されていない場合の例について説明する。次に、画像解析ソフトを用いて、「隔壁24の面積」、「第1SCR触媒の面積」、及び「画像解析範囲の面積」を求める。画像解析ソフトとしては、Media Cybernetics社製の「Image-Pro Plus 6.2J(商品名)」を用いることができる。ここで、「画像解析範囲の面積」から、「隔壁24の面積」を減算した値が、「細孔の面積」となる。隔壁24の気孔率は、「画像解析範囲の面積」に対する「細孔の面積」の百分率として求めることができる。なお、気孔率の測定においては、ハニカム構造体20の軸方向の中央部と、当該ハニカム構造体20の端面の外周部と、の2箇所から、測定用の試験片を採取する。そして、採取した2つの試験片について、それぞれ3視野(計6視野)のSEM画像を取得する。そして、取得した6視野で算出された6つの値の平均値を、隔壁24の気孔率とする。気孔率の測定において、SEM画像を取得する1視野の大きさは、縦5mm、横5mmの範囲とし、この範囲を200倍に拡大して観測するものとする。
【0028】
ハニカム構造体20の隔壁24の平均細孔径は、10~40μmであることが好ましく、15~30μmであることが更に好ましく、20~25μmであることが特に好ましい。このように構成することにより、隔壁24のそれぞれの細孔に均一に第1SCR触媒を担持することができる。なお、隔壁24の平均細孔径は、第1SCR触媒が担持されていない状態における細孔の大きさの平均値である。
【0029】
ハニカム構造体20の隔壁24の平均細孔径は、例えば、以下のようにして測定することができる。隔壁24の気孔率の測定方法と同様にして、まず、試験片となる隔壁24のSEM画像を取得する。次に、得られたSEM画像について、EDSによる元素分析を行い、EDSマッピングを作製する。そして、EDSマッピングから、「隔壁24」、「隔壁24の細孔内に担持された第1SCR触媒」、及び「隔壁24の細孔の空隙部分」をそれぞれ区別する。次に、画像解析ソフトを用いて、任意の50個の細孔の直径を求める。細孔の直径は、当該細孔の最大内接円の直径とする。細孔内に、第1SCR触媒が担持されている細孔の直径を求める場合は、第1SCR触媒が存在する領域を細孔の領域と見做し、その細孔の最大内接円の直径を求める。このようにして求めた50個の細孔の面積の平均値をとり、隔壁24の平均細孔径とする。なお、SEM画像を取得するための走査型電子顕微鏡、及び画像解析ソフトについては、隔壁24の気孔率の測定に使用したものと同様のものを用いることができる。
【0030】
ハニカム構造体20の隔壁24の表面及び隔壁24に形成された細孔の内部には、第1SCR触媒が担持されており、細孔の内部に担持された第1SCR触媒の担持量は、5~80g/Lである。このため、排ガス浄化装置が長時間排ガスを浄化し、第1SCR触媒の一部が被毒されたとしても、残余の第1SCR触媒で十分に高いNOx浄化効率を得ることができる。ここで、上記した「細孔の内部に担持された第1SCR触媒の担持量」とは、ハニカム構造体20の隔壁24に形成された細孔の内部に担持された第1SCR触媒の、当該ハニカム構造体20の単位体積当たりの質量のことを意味する。以下、「ハニカム構造体20の隔壁24に形成された細孔の内部に担持された第1SCR触媒の、当該ハニカム構造体20の単位体積当たりの質量」を、単に、「第1SCR触媒の細孔担持量」ということがある。即ち、上記した「細孔の内部に担持された第1SCR触媒の担持量」と、「第1SCR触媒の細孔担持量」とは、同じ値のことを意味する。第1SCR触媒の細孔担持量は、35~80g/Lであることが好ましく、45~80g/Lであることが更に好ましく、55~80g/Lであることが特に好ましい。
【0031】
第1SCR触媒の細孔担持量(g/L)は、以下の工程A~工程Gに従い測定することができる。
【0032】
工程Aでは、まず、第1SCR触媒が担持されたハニカム構造体の質量(g)を測定する。以下、第1SCR触媒が担持されたハニカム構造体を、「触媒担持ハニカム構造体」ということがある。工程Aによって測定された触媒担持ハニカム構造体の質量(g)を、「触媒担持ハニカム構造体の質量A」とする。
【0033】
次に、工程Bとして、第1SCR触媒が担持されたハニカム構造体と、同材質、同寸法、同形状、及び同気孔率のハニカム構造体を用意し、このハニカム構造体の質量(g)を測定する。なお、用意するハニカム構造体は、隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内部に、第1SCR触媒等の触媒が担持されていないものとする。なお、第1SCR触媒が担持されたハニカム構造体と同寸法及び同形状とは、隔壁の厚さやセル密度等の、ハニカム構造体のセル構造においても、同等の値を有していることを意味する。以下、このようなハニカム構造体を、「触媒未担持ハニカム構造体」という。工程Bによって測定された触媒未担持ハニカム構造体の質量(g)を、「触媒未担持ハニカム構造体の質量B」とする。
【0034】
次に、工程Cとして、「触媒担持ハニカム構造体の質量A」から「触媒未担持ハニカム構造体の質量B」を減算して、触媒担持ハニカム構造体における、第1SCR触媒の質量(g)を算出する。工程Cによって算出された第1SCR触媒の質量(g)を、「第1SCR触媒の全質量C」とする。
【0035】
次に、工程Dとして、触媒担持ハニカム構造体の外径寸法から、触媒担持ハニカム構造体の嵩体積(L)を求める。触媒担持ハニカム構造体の嵩体積(L)は、触媒担持ハニカム構造体の隔壁、隔壁に形成された細孔、及び隔壁によって区画されたセルの総容積のことであり、例えば、触媒担持ハニカム構造体の形状(外形)が円柱状の場合には、その円柱の体積である。触媒担持ハニカム構造体の外径は、例えば、ノギス等によって測定することができる。触媒担持ハニカム構造体の嵩体積(L)を、「触媒担持ハニカム構造体の嵩体積D」とする。
【0036】
次に、工程Eとして、「第1SCR触媒の全質量C」を、「触媒担持ハニカム構造体の嵩体積D」で除算し、「第1SCR触媒の総担持量(g/L)」を求める。この「第1SCR触媒の総担持量(g/L)」は、触媒担持ハニカム構造体の隔壁の表面及び細孔の内部に担持された第1SCR触媒の、当該触媒担持ハニカム構造体の単位体積当たり(即ち、1L当たり)の質量(g)である。
【0037】
工程Fでは、まず、隔壁の気孔率の測定等において取得したSEM画像から、「隔壁の表面に担持された触媒の面積」と、「隔壁の細孔内の触媒の面積」と、を算出する。なお、この算出において使用するSEM画像は、1つのSEM画像中に、隔壁及びセルが一定の比率で撮像されているものとする。そして、SEM画像から得られた面積の算出結果を元に、第1SCR触媒の全質量(g)に対する、隔壁の細孔内の第1SCR触媒の質量(g)の割合(g/g)を算出する。そして、工程Fで求めた「第1SCR触媒の総担持量(g/L)」と、上記した「隔壁の細孔内の第1SCR触媒の質量(g)の割合(g/g)」とから、隔壁の細孔内に担持された触媒の担持量(即ち、第1SCR触媒の細孔担持量(g/L))を算出する。以上の工程Aから工程Fによって、第1SCR触媒の細孔担持量(g/L)を求めることができる。
【0038】
図2に示すようなハニカム構造体20において、隔壁24の表面及び細孔の内部に担持された第1SCR触媒の担持量は、200~500g/Lである。ハニカム構造体20の隔壁24の表面及び細孔の内部に担持された第1SCR触媒の、当該ハニカム構造体20の単位体積当たりの質量を、単に、「第1SCR触媒の総担持量」ということがある。第1SCR触媒の総担持量は、200~450g/Lであることが好ましく、200~400g/Lであることが更に好ましく、200~350g/Lであることが特に好ましい。第1SCR触媒の総担持量が200g/Lより少ないと、第1SCR触媒コンバータ1(図1参照)のNOx浄化効率が低下する。第1SCR触媒の総担持量が500g/Lより多いと、第1SCR触媒によってセル23が詰まりやすくなり、第1SCR触媒コンバータ1(図1参照)の圧力損失が増大しやすくなる。
【0039】
第1SCR触媒の総担持量(g/L)は、第1SCR触媒の細孔担持量(g/L)の測定方法における「工程A」~「工程E」に基づいて求めることができる。
【0040】
ハニカム構造体20は、隔壁24によって区画形成されるセル23のセル密度が、31~78個/cmである。セル密度は、39~70個/cmであることが好ましく、39~54個/cmであることが更に好ましい。セル密度が31個/cmより少ないと、圧力損失が増大することがある。セル密度が78個/cmより多いと、排ガスに含まれる粒子状物質がセル23に詰まることがある。セル密度は、ハニカム構造体20のセル23の延びる方向に直交する断面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。
【0041】
ハニカム構造体20は、隔壁24の厚さが、0.076~0.254mmであることが好ましく、0.102~0.229mmであることが更に好ましく、0.127~0.203mmであることが特に好ましい。隔壁24の厚さが、0.076mm未満であると、ハニカム構造体20の機械強度が低くなることがある。隔壁24の厚さが、0.254mmを超えると、圧力損失が増大したり、ハニカム構造体20の熱容量が大きくなったりすることがある。隔壁24の厚さは、ハニカム構造体20のセル23の延びる方向に直交する断面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。
【0042】
ハニカム構造体20は、複数のセル23の最外周を囲繞するように配設された外周壁25を有していてもよい。外周壁25は、ハニカム構造体20と一体的に形成されたものであっても、セラミック材料をハニカム構造体20の最外周に塗工して形成されたものであってもよい。また、外周壁25の厚さに特に制限はない。内燃機関の低温始動時に、ハニカム構造体20を速く昇温するためには、1.5~6.0mmであることが好ましく、1.5~4.5mmであることがより好ましく、1.5~3.0mmであることが特に好ましい。
【0043】
ハニカム構造体20の開口率は、50~90%であることが好ましく、55~90%であることが更に好ましく、60~90%であることが特に好ましい。ハニカム構造体20の開口率を上記のような範囲とすることで、ハニカム構造体20の昇温性、圧力損失、及び浄化効率のバランスがよくなる。なお、ハニカム構造体20の開口率は、ハニカム構造体に第1SCR触媒が担持されていない状態における、ハニカム構造体20の端面の総面積に対する、セル23の開口部の面積比率である。ハニカム構造体20の開口率は、ハニカム構造体20の一方の端面(例えば、第一端面21)を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。また、ハニカム構造体20に外周壁25が形成されている場合には、開口率を求める際の端面の総面積に、外周壁25の厚さを含めることとする。なお、ハニカム構造体20に既に第1SCR触媒が担持されている場合には、研削等により、隔壁24の表面に担持された第1SCR触媒を除去した上で測定を行うことが好ましい。
【0044】
ハニカム構造体20は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁24と外周壁25との材質は異なっていても同じであってもよい。隔壁24及び外周壁25の材質としては、コージェライト、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素-コージェライト系複合材料から構成される群より選択される少なくとも1種を含む材料を好適例として挙げることができる。「セラミックを主成分とする」というときは、セラミックを全体の90質量%以上含有することを意味する。
【0045】
ハニカム構造体20の隔壁24の表面及び隔壁24に形成された細孔の内部に、第1SCR触媒が担持されており、細孔の内部に担持された第1SCR触媒の細孔担持量が5~80g/Lであれば、第1SCR触媒の細孔担持量に勾配があってもよい。例えば、ハニカム構造体20のセル23の延びる方向において、排気系の上流側から0~30%までの位置に担持された第1SCR触媒の総量が、70~100%の位置に担持された第1SCR触媒の総量よりも多くなるように構成されていてもよい。例えば、0~30%までの位置に担持された第1SCR触媒の総量が、70~100%の位置に担持された第1SCR触媒の総量よりも、50~200%多くなるように構成されていてもよい。
【0046】
ハニカム構造体20は、全ての隔壁24が一体的に構成された、所謂、一体型のハニカム構造体20であってもよい。また、ハニカム構造体20は、図示は省略するが、複数のセグメント構造のハニカム構造部が接合された、セグメント構造のハニカム構造体であってもよい。
【0047】
隔壁24によって区画形成されるセル23の形状については、特に制限はない。ここで、セル23の形状とは、セル23の延びる方向に直交する断面における形状のことを意味する。セル23の形状としては、円形、楕円形、多角形、その他不定形等を挙げることができる。
【0048】
ハニカム構造体20の形状については、特に制限はない。例えば、円柱状、端面が楕円形の柱状、端面が長円形の柱状、端面が四角形、五角形、六角形等の多角形の角柱状等を挙げることができる。ハニカム構造体20の端面の形状が四角形である場合には、正方形、長方形、台形等を挙げることができる。また、ハニカム構造体20の端面の形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形の角部に丸みを持たせた形状であってもよい。
【0049】
ハニカム構造体20の大きさについては、特に制限はない。ハニカム構造体20のセル23の延びる方向における長さが75~250mmであることが好ましい。このように構成することによって、圧力損失を増大させずに、優れた浄化性能を実現することができる。
【0050】
第1SCR触媒としては、NOxの浄化に対して触媒活性をもつものであれば、特に制限はない。例えば、金属置換されたゼオライトを挙げることができる。ゼオライトを金属置換する金属としては、銅(Cu)、鉄(Fe)を挙げることができる。ゼオライトとしては、ベータゼオライトを好適例として挙げることができる。また、第1SCR触媒が、バナジウム、及びチタニアのうちの少なくとも1種を主たる成分として含有する触媒であってもよい。「主たる成分」とは、触媒全体の50質量%以上である成分をいう。触媒被毒が起こりにくい第1SCR触媒としては、バナジウムを主たる成分とする触媒、銅置換ゼオライト等を挙げることができる。
【0051】
(1-2)酸化触媒コンバータ:
図1に示す排ガス浄化装置100の酸化触媒コンバータ2は、図示は省略するが、酸化触媒が担持されたDOC構造体を備えていてもよい。DOC構造は、多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造体と、このハニカム構造体の隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内部に担持された酸化触媒と、を有するものを挙げることができる。このようなハニカム構造体は、多孔質の隔壁が、ハニカム構造体の第一端面から第二端面まで延びる複数のセルを取り囲むように配設されている。
【0052】
酸化触媒としては、CO、HCの浄化に対して触媒活性をもつものであれば、特に制限はない。例えば、白金、セリア、パラジウム、ロジウム、銀、等を挙げることができる。
【0053】
酸化触媒の担持量としては、80~150g/Lであることが好ましく、90~150g/Lであることが更に好ましく、100~150g/Lであることが特に好ましい。酸化触媒コンバータ2には、第1SCR触媒コンバータ1で消費しきれなかった還元剤が流れ込むことがある。このため、上記のような酸化触媒の担持量とすることで、CO、HCの浄化効率を落とすことなく、還元剤についても良好に処理することができる。
【0054】
酸化触媒の担持量(g/L)は、酸化触媒コンバータ2に対して、第1SCR触媒の細孔担持量(g/L)の測定方法における「工程A」~「工程E」と同様の工程によって求めることができる。「酸化触媒の担持量(g/L)」は、DOC構造体の隔壁の表面及び細孔の内部に担持された酸化触媒の、当該DOC構造体の単位体積当たりの質量のことである。
【0055】
DOC構造体の隔壁の気孔率は、20~50%であることが好ましく、25~45%であることがより好ましく、30~40%であることが更に好ましい。隔壁の気孔率が、20%より小さいと、DOC構造体の熱容量が大きくなり、DOC構造体に担持された酸化触媒のCO、HC浄化効率が悪くなることがある。また、圧力損失が高くなることがある。隔壁の気孔率が、50%より大きいと、DOC構造体の機械強度が低くなることがある。なお、DOC構造体の隔壁の気孔率は、隔壁に酸化触媒が担持されていない状態における、DOC構造体の隔壁の気孔率である。
【0056】
DOC構造体の隔壁の気孔率は、第1SCR触媒コンバータ1に用いられるハニカム構造体20(図2参照)の隔壁24(図2参照)の気孔率を測定する方法と同様の方法によって測定することができる。
【0057】
DOC構造体の隔壁の平均細孔径は、2.0~6.0μmであることが好ましく、2.5~5.5μmであることがより好ましく、3.0~5.0μmであることが更に好ましく、3.5~4.5μmであることが特に好ましい。このように構成することにより、隔壁のそれぞれの細孔に均一に酸化触媒を担持することができる。
【0058】
DOC構造体の隔壁の平均細孔径は、第1SCR触媒コンバータ1に用いられるハニカム構造体20(図2参照)の隔壁24(図2参照)の平均細孔径を測定する方法と同様の方法によって測定することができる。
【0059】
DOC構造体は、隔壁によって区画形成されるセルのセル密度が、31~78個/cmであることが好ましく、47~78個/cmであることが更に好ましい。セル密度が31個/cmより少ないと、圧力損失が増大することがある。セル密度が78個/cmより多いと、排ガスに含まれる粒子状物質がセルに詰まることがある。セル密度は、DOC構造体のセルの延びる方向に直交する断面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。
【0060】
DOC構造体は、隔壁の厚さが、0.076~0.254mmであることが好ましく、0.089~0.2286mmであることが更に好ましく、0.102~0.203mmであることが特に好ましい。隔壁の厚さが、0.076mm未満であると、DOC構造体の機械強度が低くなることがある。隔壁の厚さが、0.254mmを超えると、圧力損失が増大したり、DOC構造体の熱容量が大きくなったりすることがある。隔壁の厚さは、DOC構造体のセルの延びる方向に直交する断面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。
【0061】
DOC構造体は、複数のセルの最外周を囲繞するように配設された外周壁を有していてもよい。外周壁は、DOC構造体と一体的に形成されたものであっても、セラミック材料をDOC構造体の最外周に塗工して形成されたものであってもよい。また、外周壁の厚さに特に制限はない。内燃機関の低温始動時に、DOC構造体を速く昇温するためには、1.5~6.0mmであることが好ましく、1.5~4.5mmであることがより好ましく、1.5~3.0mmであることが特に好ましい。
【0062】
DOC構造体の開口率は、50~90%であることが好ましく、55~90%であることが更に好ましく、60~90%であることが特に好ましい。DOC構造体の開口率は、DOC構造体の一方の端面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。また、DOC構造体に外周壁が形成されている場合には、開口率を求める際の端面の総面積に、外周壁の厚さを含めることとする。また、DOC構造体に既に酸化触媒が担持されている場合には、研削等により、隔壁の表面に担持された酸化触媒を除去した上で測定を行うことが好ましい。
【0063】
DOC構造体は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁と外周壁との材質は異なっていても同じであってもよい。隔壁及び外周壁の材質としては、第1SCR触媒コンバータ1に用いられるハニカム構造体20(図2参照)における、隔壁24(図2参照)の材料の好適例として挙げたものと同様の材料を挙げることができる。
【0064】
DOC構造体は、全ての隔壁が一体的に構成された、所謂、一体型のハニカム構造体であってもよいし、複数のセグメント構造のハニカム構造部が接合された、セグメント構造のハニカム構造体であってもよい。
【0065】
DOC構造体において、セルの形状については、特に制限はない。セルの形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形、その他不定形等を挙げることができる。
【0066】
DOC構造体の形状については、特に制限はない。例えば、円柱状、端面が楕円形の柱状、端面が長円形の柱状、端面が四角形、五角形、六角形等の多角形の角柱状等を挙げることができる。DOC構造体の端面の形状が四角形である場合には、正方形、長方形、台形等を挙げることができる。また、DOC構造体の端面の形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形の角部に丸みを持たせた形状であってもよい。
【0067】
DOC構造体の大きさについては、特に制限はない。DOC構造体のセルの延びる方向における長さが75~250mmであることが好ましい。このように構成することによって、圧力損失を増大させずに、優れた浄化性能を実現することができる。
【0068】
(1-3)フィルタ部:
図1に示す排ガス浄化装置100のフィルタ部3は、図示は省略するが、排ガス中の粒子状物質を捕捉する柱状のハニカムフィルタを備えていてもよい。ハニカムフィルタとしては、例えば、第一端面から第二端面まで延びる排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造を呈するフィルタを挙げることができる。
【0069】
ハニカムフィルタは、上述したハニカム構造を呈するフィルタにおいて、セルの開口部を目封止する目封止部を更に備えたものであることが好ましい。目封止部は、例えば、所定のセルの第一端面側の開口部、及び所定のセル以外の残余のセルの第二端面側の開口部に配設することができる。例えば、このようなハニカムフィルタとして、第一端面側において目封止部が配設されている所定のセルと、第二端面側において目封止部が配設されている残余のセルと、が千鳥状に配置されているハニカムフィルタを好適例として挙げることができる。目封止部の材質は、ハニカムフィルタの隔壁と同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0070】
ハニカムフィルタは、隔壁の気孔率が、35~70%であることが好ましく、38~67%であることがより好ましく、40~65%であることが更に好ましい。隔壁の気孔率が、35%より小さいと、圧力損失が高くなることがある。隔壁の気孔率が、70%より大きいと、ハニカムフィルタの機械強度が低くなることがある。なお、隔壁の気孔率は、水銀圧入法により測った値である。
【0071】
ハニカムフィルタの隔壁の平均細孔径は、5~30μmであることが好ましく、7~28μmであることがより好ましく、9~26μmであることが更に好ましく、10~25μmであることが特に好ましい。このように構成することにより、排ガス中の粒子状物質を好適に捕捉することができる。なお、隔壁の平均細孔径は、水銀圧入法により測った値である。
【0072】
ハニカムフィルタは、隔壁によって区画形成されるセルのセル密度が、16~62個/cmであることが好ましく、31~62個/cmであることが更に好ましい。セル密度が16個/cmより少ないと、圧力損失が増大することがある。セル密度が62個/cmより多いと、排ガスに含まれる粒子状物質がセルに詰まることがある。セル密度は、ハニカムフィルタのセルの延びる方向に直交する断面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。
【0073】
ハニカムフィルタは、隔壁の厚さが、0.152~0.432mmであることが好ましく、0.152~0.406mmであることが更に好ましく、0.152~0.381mmであることが特に好ましい。隔壁の厚さが、0.152mm未満であると、ハニカムフィルタの機械強度が低くなることがある。隔壁の厚さが、0.406mmを超えると、圧力損失が増大することがある。隔壁の厚さは、ハニカムフィルタのセルの延びる方向に直交する断面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。
【0074】
ハニカムフィルタは、複数のセルの最外周を囲繞するように配設された外周壁を有していてもよい。外周壁は、ハニカムフィルタを構成する隔壁と一体的に形成されたものであっても、セラミック材料をハニカムフィルタの最外周に塗工して形成されたものであってもよい。外周壁の厚さに特に制限はない。例えば、1.5~6.0mm、1.5~4.5mm、1.5~3.0mmとすることができる。
【0075】
ハニカムフィルタの開口率は、50~90%であることが好ましく、55~90%であることが更に好ましく、60~90%であることが特に好ましい。ハニカムフィルタの開口率は、ハニカムフィルタの一方の端面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。また、ハニカムフィルタに外周壁が形成されている場合には、開口率を求める際の端面の総面積に、外周壁の厚さを含めることとする。
【0076】
ハニカムフィルタは、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁と外周壁との材質は異なっていても同じであってもよい。隔壁及び外周壁の材質としては、第1SCR触媒コンバータ1に用いられるハニカム構造体20(図2参照)における、隔壁24(図2参照)の材料の好適例として挙げたものと同様の材料を挙げることができる。
【0077】
ハニカムフィルタは、全ての隔壁が一体的に構成された、所謂、一体型のハニカム構造体よって構成されたものであってよく、複数のセグメント構造のハニカム構造部が接合された、セグメント構造のハニカムフィルタであってもよい。
【0078】
ハニカムフィルタにおいて、セルの形状については、特に制限はない。セルの形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形、その他不定形等を挙げることができる。
【0079】
ハニカムフィルタの形状については、特に制限はない。例えば、円柱状、端面が楕円形の柱状、端面が長円形の柱状、端面が四角形、五角形、六角形等の多角形の角柱状等を挙げることができる。ハニカムフィルタの端面の形状が四角形である場合には、正方形、長方形、台形等を挙げることができる。また、ハニカムフィルタの端面の形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形の角部に丸みを持たせた形状であってもよい。
【0080】
ハニカムフィルタの大きさについては、特に制限はない。ハニカムフィルタのセルの延びる方向における長さが100~300mmであることが好ましい。このように構成することによって、圧力損失を増大させずに、優れた浄化性能を実現することができる。
【0081】
(1-4)第2SCR触媒コンバータ:
図1に示す排ガス浄化装置100の第2SCR触媒コンバータ4は、図示は省略するが、第2SCR触媒が担持された柱状の第2SCRハニカム構造体を備えていてもよい。第2SCRハニカム構造体は、多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造体と、このハニカム構造体の隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内部に担持された第2SCR触媒と、を有するものを挙げることができる。このようなハニカム構造体は、多孔質の隔壁が、ハニカム構造体の第一端面から第二端面まで延びる複数のセルを取り囲むように配設されている。以下、第2SCRハニカム構造体に用いられるハニカム構造体を、「第2ハニカム構造体」ということがある。第2ハニカム構造体の隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内部に、第2SCR触媒が担持されたものが、第2SCRハニカム構造体である。
【0082】
第2ハニカム構造体の隔壁の気孔率は、30~65%であることが好ましく、32~65%であることがより好ましく、35~65%であることが更に好ましい。隔壁の気孔率が、30%より小さいと、第2ハニカム構造体の熱容量が大きくなり、第2ハニカム構造体に担持された第2SCR触媒のNOx浄化効率が悪くなることがある。また、圧力損失が高くなることがある。隔壁の気孔率が、65%より大きいと、第2ハニカム構造体の機械強度が低くなることがある。第2ハニカム構造体の気孔率は、第2SCR触媒が担持されていない状態における気孔率である。
【0083】
第2ハニカム構造体の隔壁の気孔率は、第1SCR触媒コンバータ1に用いられるハニカム構造体20(図2参照)の隔壁24(図2参照)の気孔率を測定する方法と同様の方法によって測定することができる。
【0084】
第2ハニカム構造体の隔壁の平均細孔径は、10~40μmであることが好ましく、15~30μmであることがより好ましく、20~25μmであることが更に好ましい。このように構成することにより、隔壁のそれぞれの細孔に均一に第2SCR触媒を担持することができる。
【0085】
第2ハニカム構造体の隔壁の平均細孔径は、第1SCR触媒コンバータ1に用いられるハニカム構造体20(図2参照)の隔壁24(図2参照)の平均細孔径を測定する方法と同様の方法によって測定することができる。
【0086】
第2ハニカム構造体は、隔壁によって区画形成されるセルのセル密度が、39~54個/cmである。セル密度が31個/cmより少ないと、圧力損失が増大することがある。セル密度が78個/cmより多いと、排ガスに含まれる粒子状物質がセルに詰まることがある。セル密度は、第2ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。
【0087】
第2ハニカム構造体は、隔壁の厚さが、0.076~0.254mmであることが好ましく、0.102~0.229mmであることが更に好ましく、0.127~0.203mmであることが特に好ましい。隔壁の厚さが、0.076mm未満であると、第2ハニカム構造体の機械強度が低くなることがある。隔壁の厚さが、0.254mmを超えると、圧力損失が増大することがある。隔壁の厚さは、第2ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。
【0088】
第2ハニカム構造体は、複数のセルの最外周を囲繞するように配設された外周壁を有していてもよい。外周壁は、第2ハニカム構造体と一体的に形成されたものであっても、セラミック材料を第2ハニカム構造体の最外周に塗工して形成されたものであってもよい。また、外周壁の厚さに特に制限はない。内燃機関の低温始動時に、第2SCRハニカム構造体を速く昇温するためには、1.5~6.0mmであることが好ましく、1.5~4.5mmであることがより好ましく、1.5~3.0mmであることが特に好ましい。
【0089】
第2ハニカム構造体の開口率は、50~90%であることが好ましく、55~90%であることが更に好ましく、60~90%であることが特に好ましい。第2ハニカム構造体の開口率は、第2ハニカム構造体の一方の端面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。また、第2ハニカム構造体に外周壁が形成されている場合には、開口率を求める際の端面の総面積に、外周壁の厚さを含めることとする。また、第2ハニカム構造体に既に第2SCR触媒が担持されている場合には、研削等により、隔壁の表面に担持された第2SCR触媒を除去した上で測定を行うことが好ましい。
【0090】
第2ハニカム構造体は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁と外周壁との材質は異なっていても同じであってもよい。隔壁及び外周壁の材質としては、第1SCR触媒コンバータ1に用いられるハニカム構造体20(図2参照)における、隔壁24(図2参照)の材料の好適例として挙げたものと同様の材料を挙げることができる。
【0091】
第2ハニカム構造体は、全ての隔壁が一体的に構成された、所謂、一体型のハニカム構造体としてもよく、複数のセグメント構造のハニカム構造部が接合された、セグメント構造のハニカム構造体としてもよい。
【0092】
第2ハニカム構造体において、セルの形状については、特に制限はない。セルの形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形、その他不定形等を挙げることができる。
【0093】
第2ハニカム構造体の形状については、特に制限はない。例えば、円柱状、端面が楕円形の柱状、端面が長円形の柱状、端面が四角形、五角形、六角形等の多角形の角柱状等を挙げることができる。第2ハニカム構造体の端面の形状が四角形である場合には、正方形、長方形、台形等を挙げることができる。また、第2ハニカム構造体の端面の形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形の角部に丸みを持たせた形状であってもよい。
【0094】
第2ハニカム構造体の大きさについては、特に制限はない。第2ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さが75~250mmであることが好ましい。このように構成することによって、圧力損失を増大させずに、優れた浄化性能を実現することができる。
【0095】
第2SCRハニカム構造体において、第2ハニカム構造体の隔壁の表面及び細孔の内部に担持された第2SCR触媒の担持量は、150~500g/Lであることが好ましい。上記担持量とは、第2ハニカム構造体の隔壁の表面及び細孔の内部に担持された第2SCR触媒の、当該第2ハニカム構造体の単位体積当たりの質量のことである。以下、第2ハニカム構造体の隔壁の表面及び細孔の内部に担持された第2SCR触媒の担持量を、「第2SCR触媒の総担持量」ということがある。第2SCR触媒の総担持量は、150~450g/Lであることが好ましく、150~400g/Lであることが更に好ましく、150~350g/Lであることが特に好ましい。第2SCR触媒の総担持量が、150g/Lより少ないとNOx浄化効率が低下することがあり、500g/Lより多いと隔壁の細孔が閉塞し圧力損失が増大することがある。
【0096】
第2SCR触媒の総担持量(g/L)は、第1SCR触媒の総担持量(g/L)を測定する方法と同様の方法によって求めることができる。
【0097】
第2SCR触媒としては、金属置換されたゼオライトを挙げることができる。ゼオライトを金属置換する金属としては、銅(Cu)、鉄(Fe)を挙げることができる。ゼオライトとしては、ベータゼオライトを好適例として挙げることができる。また、第2SCR触媒が、バナジウム、及びチタニアのうちの少なくとも1種を主たる成分として含有する触媒であってもよい。「主たる成分」とは、触媒全体の50質量%以上である成分をいう。触媒被毒が起こりにくい第2SCR触媒としては、バナジウムを主たる成分とする触媒、銅置換ゼオライト等が挙げられる。
【0098】
第1SCR触媒として、バナジウムを主たる成分として含有する触媒を用いる場合には、第2SCR触媒として、銅置換されたゼオライトを用いることが好ましい。このように構成すると、第1SCR触媒については、触媒被毒に対して高い耐性を有しつつ、第2SCR触媒については、高い触媒活性を発現させることができる。
【0099】
(2)排ガス浄化装置の製造方法:
次に、本発明の排ガス浄化装置を製造する方法について説明する。本発明の排ガス浄化装置の製造方法としては、第1SCR触媒コンバータ作製工程、酸化触媒コンバータ作製工程、フィルタ部作製工程、第2SCR触媒コンバータ作製工程、筐体作製工程、筐体への収容工程を備えたものを挙げることができる。
【0100】
(2-1)第1SCR触媒コンバータ作製工程:
まず、第1SCR触媒コンバータ用のハニカム構造体を作製し、次に、ハニカム構造体に第1SCR触媒を担持することによって、第1SCR触媒コンバータを作製する。ハニカム構造体の作製方法は、成形工程、焼成工程、第1SCR触媒担持工程を備えたものを挙げることができる。
【0101】
(2-1-1)成形工程:
成形工程は、成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形して、ハニカム成形体を得る工程である。ハニカム成形体は、第一端面から第二端面まで延びるセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁の最外周を囲繞するように形成された外周壁を有するものである。成形工程においては、まず、成形原料を混練して坏土とする。次に、得られた坏土を押出成形して、隔壁と外周壁とが一体的に成形されたハニカム成形体を得る。
【0102】
成形原料は、セラミック原料に分散媒及び添加剤を加えたものであることが好ましい。添加剤としては、有機バインダ、造孔材、界面活性剤等を挙げることができる。分散媒としては、水等を挙げることができる。
【0103】
セラミック原料は、コージェライト、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素-コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でも、コージェライトが好ましい。
【0104】
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。有機バインダの含有量は、セラミック原料100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましい。
【0105】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に制限はなく、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、1~8質量部であることが好ましい。
【0106】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組合せて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましい。
【0107】
分散媒の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、30~150質量部であることが好ましい。
【0108】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。押出成形は、ハニカム成形体の断面形状に対応したスリットが形成された押出成形用の口金を用いて行うことができる。
【0109】
(2-1-2)焼成工程:
焼成工程は、ハニカム成形体を焼成して、ハニカム構造体を得る工程である。ハニカム成形体を焼成する前に、得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥してもよい。乾燥温度は、例えば、30~150℃が好ましい。また、乾燥時間は、例えば、1分~2時間が好ましい。
【0110】
ハニカム成形体を焼成する際の焼成温度は、ハニカム成形体の材質よって適宜決定することができる。例えば、ハニカム成形体の材質がコージェライトの場合、焼成温度は、1380~1450℃が好ましく、1400~1440℃が更に好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として3~10時間程度とすることが好ましい。
【0111】
(2-1-3)第1SCR触媒担持工程:
第1SCR触媒担持工程は、得られたハニカム構造体に第1SCR触媒を担持する工程である。まず、ハニカム構造体を第一端面側から、所定の第1SCR触媒を含むスラリーに浸漬させ、第二端面側からスラリーを吸引する。第1SCR触媒の粘度や、第1SCR触媒の粒径、また、スラリーを吸引する吸引力を調節することによって、隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内部に第1SCR触媒を担持することができ、更に担持する第1SCR触媒の量を調節することもできる。また、スラリーへの浸漬とスラリーの吸引を複数回行うことによっても、第1SCR触媒の量を調節することができる。
【0112】
(2-2)酸化触媒コンバータ作製工程:
まず、DOC構造体を作製し、次に、DOC構造体に酸化触媒を担持することによって酸化触媒コンバータを作製する。DOC構造体の作製方法は、成形工程、焼成工程、酸化触媒担持工程を備えたものを挙げることができる。
【0113】
(2-2-1)成形工程:
成形工程は、成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形して、DOC成形体を得る工程である。この成形工程は、押出成形に使用する成形原料が異なることがあること以外は、上述した第1SCR触媒コンバータ作製工程における成形工程と同様にして行うことができる。DOC構造体の作製に使用する成形原料は、従来公知の酸化触媒担持用のハニカム構造体の作製に用いられる材料と同様の材料を用いることができる。
【0114】
(2-2-2)焼成工程:
焼成工程は、DOC成形体を焼成して、DOC構造体を得る工程である。DOC成形体を焼成する前に、得られたDOC成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥してもよい。
【0115】
(2-2-3)酸化触媒担持工程:
酸化触媒担持工程は、得られたDOC構造体に酸化触媒を担持する工程である。酸化触媒担持工程は、触媒種が異なること以外は、上述した第1SCR触媒担持工程と同様にして行うことができる。
【0116】
(2-3)フィルタ部作製工程:
まず、ハニカムフィルタを作製し、フィルタ部を作製する。ハニカムフィルタの作製方法は、成形工程、焼成工程を備えたものを挙げることができる。
【0117】
(2-3-1)成形工程:
成形工程は、成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形して、ハニカム成形体を得る工程である。この成形工程は、押出成形に使用する成形原料が異なることがあること以外は、上述した第1SCR触媒コンバータ作製工程における成形工程と同様にして行うことができる。ハニカムフィルタの作製に使用する成形原料は、従来公知のフィルタ用のハニカム構造体の作製に用いられる材料と同様の材料を用いることができる。
【0118】
(2-3-2)焼成工程:
焼成工程は、ハニカム成形体を焼成して、ハニカムフィルタを得る工程である。ハニカム成形体を焼成する前に、得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥してもよい。なお、ハニカムフィルタの作製においては、ハニカム成形体又は焼成したハニカム成形体について、隔壁によって区画形成された複数のセルの開口端部を、目封止部によって交互に目封止することが好ましい。
【0119】
(2-4)第2SCR触媒コンバータ作製工程:
まず、第2SCR触媒コンバータに使用するための第2ハニカム構造体を作製し、次に、第2ハニカム構造体に第2SCR触媒を担持することによって、第2SCRハニカム構造体を作製する。このようにして作製した第2SCRハニカム構造体を、第2SCR触媒コンバータとして用いることができる。第2ハニカム構造体の作製方法は、成形工程、焼成工程、第2SCR触媒担持工程を備えたものを挙げることができる。
【0120】
(2-4-1)成形工程:
成形工程は、成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形して、第2ハニカム成形体を得る工程である。この成形工程は、押出成形に使用する成形原料が異なることがあること以外は、上述した第1SCR触媒コンバータ作製工程における成形工程と同様にして行うことができる。第2ハニカム構造体の成形原料は、従来公知のSCR触媒担持用のハニカム構造体の作製に用いられる材料と同様の材料を用いることができる。
【0121】
(2-4-2)焼成工程:
焼成工程は、第2ハニカム成形体を焼成して、第2ハニカム構造体を得る工程である。第2ハニカム成形体を焼成する前に、得られた第2ハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥してもよい。
【0122】
(2-4-3)第2SCR触媒担持工程:
第2SCR触媒担持工程は、得られた第2ハニカム構造体に第2SCR触媒を担持する工程である。第2SCR触媒担持工程は、触媒種が異なること以外は、上述した第1SCR触媒担持工程と同様にして行うことができる。
【0123】
(2-5)筐体作製工程:
筐体作製工程は、第1SCR触媒コンバータ、酸化触媒コンバータ、フィルタ部、及び第2SCR触媒コンバータを収容可能な筐体を作製する工程である。筐体の材質、製造方法は特に限定されない。例えば、筐体は、パイプ状のステンレス材料を用意し、第1SCR触媒コンバータ、酸化触媒コンバータ、フィルタ部、及び第2SCR触媒コンバータを収容する収容部を4つ作製し、別のパイプでそれぞれの収容部を接続することによって作製することができる。
【0124】
(2-6)筐体への収容工程:
筐体への収容工程は、筐体の内部に第1SCR触媒コンバータ、酸化触媒コンバータ、フィルタ部、及び第2SCR触媒コンバータを圧入する工程である。筐体と、第1SCR触媒コンバータ、酸化触媒コンバータ、フィルタ部、及び第2SCR触媒コンバータとの間には、把持材として、それぞれセラミックマット等を用いてもよい。
【0125】
以上のようにして、本発明の排ガス浄化装置を簡便に製造することができる。なお、本発明の排ガス浄化装置を製造する方法については、本発明の排ガス浄化装置の構成を満たすものを製造可能な方法であれば、これまでに説明した製造方法に限定されることはない。
【実施例
【0126】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0127】
(実施例1)
実施例1においては、表1の「排ガス浄化装置の構成」の欄に示すような排ガス浄化装置を作製した。「排ガス浄化装置の構成」の欄において、「SCR(b)-DOC-DPF-SCR(a)-ASC」は、排ガス浄化装置を構成する構成要素を示している。SCR(b)は、第1SCR触媒コンバータを示す。DOCは、酸化触媒コンバータを示す。DPFは、ハニカムフィルタを示す。SCR(a)は、第2SCR触媒コンバータを示す。ASCは、アンモニアスリップ触媒を示す。以下、実施例1の排ガス浄化装置の作製方法について、更に詳細に説明する。
【0128】
(第1SCR触媒コンバータ作製工程)
第1SCR触媒コンバータとして、第1SCR触媒を担持したハニカム構造体を1つ作製した。具体的には、まず、以下の方法により、第1SCR触媒コンバータ用のハニカム構造体を1つ作製した。コージェライト化原料100質量部に、造孔材を5質量部、分散媒を85質量部、有機バインダを8質量部、分散剤を85質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、およびシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては平均粒子径50~200μmの吸水性樹脂を使用し、有機バインダとしてはメチルセルロースを使用し、分散剤としては水を使用した。
【0129】
次に、所定の押出成形用口金を用いて坏土を押出成形し、セル形状が四角形で、全体形状が円柱形のハニカム成形体を得た。
【0130】
次に、ハニカム成形体を、マイクロ波及び熱風を用いて乾燥させた。乾燥条件としては、乾燥温度を30~150℃、乾燥時間を1時間とした。
【0131】
次に、乾燥させたハニカム成形体を、1400~1440℃で、80時間、焼成してハニカム構造体を得た。
【0132】
次に、得られたハニカム構造体に第1SCR触媒を担持させ、第1SCR触媒コンバータとした。第1SCR触媒としては、バナジウムを用いた。第1SCR触媒の担持は、まず、ハニカム構造体を第一端面側から、バナジウムを含むスラリーに浸漬させ、第二端面側からスラリーを吸引し、吸引力を調節することによって隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内部にバナジウムを担持した。用いたバナジウムの平均粒子径は、0.5μmであった。平均粒子径の値はレーザー回折法により測定した値である。以下、この第1SCR触媒コンバータを、「SCR(b)」ということがある。
【0133】
ハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する方向における断面形状が円形の、円柱状であった。また、ハニカム構造体の当該断面の直径が267mmであり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さが152mmであった。
【0134】
ハニカム構造体のセル密度は、47個/cmであり、隔壁の厚さは、0.165mmであった。ハニカム構造体のセル密度及び隔壁の厚さを、表1の「SCR(b);第1SCR触媒コンバータ」における、「セル密度(個/cm)」及び「隔壁の厚さ(mm)」の欄に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
ハニカム構造体の隔壁の気孔率は、50%であった。隔壁の気孔率は、以下の方法で測定した。まず、測定対象のハニカム構造体を、エポキシ樹脂に埋設し、試験片となるハニカム構造体の隔壁の細孔をエポキシ樹脂で埋める。得られた試験片について、セルの延びる方向と直交する方向における断面を、走査型電子顕微鏡にて観察し、SEM画像を取得した。次に、得られたSEM画像について、EDSによる元素分析を行い、EDSマッピングを作製した。そして、EDSマッピングから、隔壁、隔壁の細孔内に担持された第1SCR触媒、及び細孔の空隙部分をそれぞれ区別し、画像解析ソフトを用いて、隔壁の面積、隔壁の細孔内に担持された第1SCR触媒の面積、及び画像解析範囲の面積を求めた。そして、「画像解析範囲の面積」から、「隔壁の面積」を減算した値を、「細孔の面積」とした。隔壁の気孔率は、「画像解析範囲の面積」に対する「細孔の面積」の百分率として求めた。なお、SEM画像の取得、及びEDSによる元素分析については、日立ハイテクノロジー社製の走査型電子顕微鏡「型番:S3200-N」を用いた。画像解析ソフトは、Media Cybernetics社製の「Image-Pro Plus 6.2J(商品名)」を用いた。結果を表1に示す。
【0137】
ハニカム構造体の第1SCR触媒の細孔担持量は、62g/Lであった。第1SCR触媒の細孔担持量は、上述した第1SCR触媒の細孔担持量(g/L)の測定方法における「工程A」~「工程F」と同様の工程によって求めた。
【0138】
また、ハニカム構造体の第1SCR触媒の総担持量は、200g/Lであった。上述した第1SCR触媒の細孔担持量(g/L)の測定方法における「工程A」~「工程E」と同様の工程によって求めた。
【0139】
(酸化触媒コンバータ作製工程)
酸化触媒コンバータとして、酸化触媒を担持したDOC構造体を作製した。具体的には、まず、セラミック原料100質量部に、造孔材を1質量部、分散媒を50質量部、有機バインダを10質量部、分散剤を50質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。セラミック原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては平均粒子径50~200μmの吸水性樹脂を使用し、有機バインダとしてはメチルセルロースを使用し、分散剤としては水を使用した。
【0140】
次に、所定の押出成形用口金を用いて坏土を押出成形し、セル形状が四角形で、全体形状が円柱形のハニカム成形体を得た。
【0141】
次に、ハニカム成形体を、マイクロ波及び熱風を用いて乾燥させた。乾燥条件としては、乾燥温度を30~150℃、乾燥時間を1時間とした。
【0142】
次に、乾燥させたハニカム成形体を、1400~1440℃で、80時間、焼成してハニカム焼成体を得た。
【0143】
得られたDOC構造体は、セルの延びる方向に直交する方向における断面形状が円形の、円柱状であった。また、DOC構造体の当該断面の直径が129mmであり、DOC構造体のセルの延びる方向における長さが76.2mmであった。
【0144】
次に、得られたDOC構造体に酸化触媒を担持させ、酸化触媒コンバータとした。酸化触媒としては、アルミナ、白金、パラジウムを用いた。アルミナは、白金、パラジウムを担持させるための高比表面積材料である。酸化触媒の担持は、まず、DOC構造体を、その第一端面側から、白金、パラジウムを担持させたアルミナの粒子を含むスラリーに浸漬させた。その後、DOC構造体の第二端面側からスラリーを吸引し、吸引力を調節することによって、DOC構造体の隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内部にスラリーを担持した。用いたスラリーに含まれるアルミナの粒子の平均粒子径は、2μmであった。平均粒子径の値はレーザー回折法により測定した値である。以下、この酸化触媒コンバータを、「DOC」ということがある。
【0145】
酸化触媒の総担持量は、150g/Lであった。酸化触媒の総担持量は、酸化触媒コンバータに対して、第1SCR触媒の細孔担持量(g/L)の測定方法における「工程A」~「工程E」と同様の工程によって求めた。
【0146】
(フィルタ部作製工程)
フィルタ部として、ハニカムフィルタを作製した。まず、以下の方法で坏土を調製した。コージェライト化原料100質量部に対して、造孔材としてグラファイトを10~20質量部、及び発泡樹脂を5~25質量部を添加し、造孔材として鉄粉を5~15質量部を追加した。更に、メチルセルロース類、及び界面活性剤をそれぞれ適当量添加した後、水を加えて混練することにより杯土を調製した。コージェライト化原料は、その化学組成が、SiO42~56質量%、Al0~45質量%、及びMgO12~16質量%となるように以下の原料を所定の割合で調合することによって作製した。コージェライト化原料としては、タルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、及びシリカのうちから複数を組み合わせて使用した。造孔材として鉄粉は、隔壁に平均径100~500μm程度のピンホールを開けるためのものである。
【0147】
調製した杯土を真空脱気した後、押出成形することによりハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を乾燥後、最高温度1400~1430℃の温度範囲で焼成することにより、ハニカム焼成体を得た。得られたハニカム焼成体について、複数のセルの開口端部を、目封止部によって交互に目封止し、ハニカムフィルタを作製した。
【0148】
得られたハニカムフィルタは、ハニカムフィルタのセルの延びる方向に直交する方向における断面形状が、円形の円柱状であった。また、ハニカムフィルタのセルの延びる方向に直交する方向における断面の直径が229mmであり、ハニカムフィルタのセルの延びる方向における長さが203mmであった。以下、このハニカムフィルタを、「DPF」ということがある。
【0149】
ハニカムフィルタの気孔率は、50%であった。ハニカムフィルタの気孔率は、水銀圧入法により測定した。
【0150】
(第2SCR触媒コンバータ作製工程)
第2SCR触媒コンバータに使用するための第2ハニカム構造体を2つ作製し、次に、それぞれの第2ハニカム構造体に第2SCR触媒を担持することによって、第2SCRハニカム構造体を2つ作製した。この第2SCRハニカム構造体を、第2SCR触媒コンバータとした。第2ハニカム構造体は、下記のようにして全く同じ手順で作製した。具体的には、まず、コージェライト化原料100質量部に、造孔材を5質量部、分散媒を85質量部、有機バインダを8質量部、分散剤を85質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、およびシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては平均粒子径50~200μmの吸水性樹脂を使用し、有機バインダとしてはメチルセルロースを使用し、分散剤としては水を使用した。
【0151】
次に、所定の押出成形用口金を用いて坏土を押出成形し、セル形状が四角形で、全体形状が円柱形のハニカム成形体を得た。次に、得られたハニカム成形体を、第1SCR触媒コンバータ用のハニカム構造体を作製する方法と同様の方法で、乾燥し、焼成して、第2ハニカム構造体を得た。
【0152】
第2ハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する方向における断面形状が円形の、円柱状であった。また、第2ハニカム構造体の当該断面の直径が267mmであり、第2ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さが152mmであった。
【0153】
第2ハニカム構造体のセル密度は、47個/cmであり、隔壁の厚さは0.132mmであった。第2ハニカム構造体のセル密度及び隔壁の厚さを、表2の「SCR(a);第2SCR触媒コンバータ」における、「セル密度(個/cm)」及び「隔壁の厚さ(mm)」の欄に示す。
【0154】
次に、得られた第2ハニカム構造体に第2SCR触媒を担持させ、第2SCRハニカム構造体を作製し、この第2SCRハニカム構造体を、第2SCR触媒コンバータとした。第2SCR触媒としては、銅置換ゼオライトを用いた。第2SCR触媒の担持は、まず、第2ハニカム構造体を第一端面側から、銅置換ゼオライトを含むスラリーに浸漬させ、第二端面側からスラリーを吸引した。そして、この吸引力を調節することによって、隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内部に、銅置換ゼオライトを担持した。以下、この第2SCRハニカム構造体を、「SCR(a)」ということがある。
【0155】
第2SCRハニカム構造体における第2SCR触媒の総担持量は、150g/Lであった。なお、第2SCR触媒の総担持量は、第1SCR触媒の総担持量を測定する方法と同様の方法によって測定した。結果を、表2の「触媒総担持量」の欄に示す。表2の「触媒種」における「銅ゼオライト」とは、上述した「銅置換ゼオライト」のことを意味する。
【0156】
【表2】
【0157】
(筐体作製工程)
筐体は、以下の方法で作製した。まず、直径280mmのパイプ状のステンレス材料を用意した。次に、このパイプ状のステンレス材料を用いて、SCR(b)、DOC、DPF、及びSCR(a)を収容する収容部を4つ作製した。次に、別の直径35mmのパイプ状のステンレス材料を用いて、上述した4つの収容部を、上述した順番で直列に接続した。このようにして作製したものを、本実施例における筐体とした。なお、SCR(b)を収容する収容部は、SCR(b)を1つ収容可能な大きさとし、SCR(a)を収容する収容部は、SCR(a)を2つ収容可能な大きさとした。以下、「SCR(b)」、「DOC」、「DPF」、及び「SCR(a)」のそれぞれを総称して、「浄化部材」ということがある。
【0158】
(筐体への収容工程)
筐体内への各浄化部材の収容は、上流側から、「SCR(b)を1つ」、「DOC」、「DPF」、「SCR(a)を2つ」という順番となるように行った。筐体内に各浄化部材を収容する際には、筐体と各浄化部材との間に、把持材としてのセラミックマットをそれぞれ配設し、このセラミックマットと共に各浄化部材を筐体内に圧入した。また、本実施例においては、SCR(a)を収容した筐体の更に下流側に、アンモニアスリップ触媒を取り付けた。表1において、アンモニアスリップ触媒を、ASCと示す。なお、SCR(a)は筐体内に2つ収容されているが、2つのSCR(a)は、筐体内にて連続して直列に配置されている。このようにして作製された排ガス浄化装置を、実施例1の排ガス浄化装置とした。
【0159】
(実施例1~16)
表1及び表2に示すように、SCR(a)及びSCR(b)の隔壁の厚さ、セル密度、気孔率、触媒総担持量、及び細孔担持量をそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に構成された排ガス浄化装置を作製した。以下、実施例~15との記載を、参考例~15と読み替える。
【0160】
(比較例1~6)
表5に示すように、SCR(a)の隔壁の厚さ、セル密度、気孔率、及び触媒総担持量をそれぞれ変更した。また、比較例1~6においては、表4に示すように、SCR(b)を作製せず、筐体へは、DOC、DPF、SCR(a)の順で収容することによって、排ガス浄化装置を作製した。DOC、及びDPFの構成は、実施例1の排ガス浄化装置と同じ構成のものを用いた。
【0161】
(比較例7~11)
表4及び表5に示すように、SCR(a)及びSCR(b)の隔壁の厚さ、セル密度、気孔率、触媒総担持量、及び細孔担持量をそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に構成された排ガス浄化装置を作製した。
【0162】
実施例1~16、及び比較例1~11の排ガス浄化装置について、以下の方法で、「NOx浄化率試験」及び「圧力損失試験」を行った。また、実施例1~16、及び比較例1~11の排ガス浄化装置については、以下の方法で、「触媒剥れの有無」の評価を行った。結果を、表3及び表6に示す。
【0163】
[NOx浄化率試験]
得られた排ガス浄化装置を、WHTC(World Harmonized Transient Cycle)モードに準じて各々試験し、エージング前及びエージング後のNOx浄化率を求めた。測定結果を、表3の「エージング前NOx浄化率(%)」、及び「エージング後NOx浄化率(%)」の欄に示す。なお、NOx浄化率を求める際のガス分析計は、HORIBA社製のMEXA9100EGR(商品名)を用いた。また、試験用ガスが排ガス浄化装置に流入するときの空間速度は、50000(時間-1)とした。なお、エージング処理(Aging treatment)は、排ガス浄化装置が接続されたエンジンにて実施した。エージング処理は、排ガス浄化装置の触媒種がバナジウムの場合は550℃以上、ゼオライトの場合は650℃以上で、100時間行った。また、WHTCモードでの試験用ガスのNOx量の値から、排ガス浄化装置からの排出ガスのNOx量の値を差し引いた値を、試験用ガスのNOx量の値で除算し、100倍した値を、「NOx浄化率」とした。そして、以下の評価基準に基づき、浄化性能の評価を行った。結果を表3及び表6に示す。
評価A:エージング後NOx浄化率が95%以上である場合を良とし、評価Aとする。
評価B:エージング後NOx浄化率が95%未満である場合を不可とし、評価Bとする。
【0164】
[圧力損失試験]
排ガス浄化装置に、圧力損失の測定用ガス(空気)を、25℃、流量5Nm/minで通気して、筐体のガス流入口とガス流出口との圧力をそれぞれ測定し、その圧力差を算出した。算出した圧力差を、排ガス浄化装置の圧力損失とした。そして、以下の評価基準に基づき、圧力損失の評価を行った。圧力損失の評価は、比較例1を基準である100とし、他の実施例及び比較例の圧力損失の値を、比較例1の圧力損失に対する比として、それぞれ求め、比圧力損失として評価した。
評価A:比圧力損失が200未満である場合を良とし、評価Aとする。
評価B:比圧力損失が200以上である場合を不可とし、評価Bとする。
【0165】
[触媒剥れの有無]
上述したNOx浄化率試験及び圧力損失試験を行ったあとに、SCR(a)及びSCR(b)における、第1SCR触媒及び第2SCR触媒の触媒剥れの有無を調べた。具体的には、まず、SCR(a)及びSCR(b)を筐体から取り出し、それぞれをセルの延びる方向と平行な断面で2等分し、断面に現れたセルを目視にて観察した。そして、触媒が剥れた部分があれば、触媒剥れ有とし、触媒が剥れた部分がなければ、触媒剥れ無とした。なお、触媒剥れの有無の評価においては、NOx浄化率試験及び圧力損失試験の前後で、排ガス浄化装置の質量を測定し、試験前後での排ガス浄化装置の質量減少を確認した。このような排ガス浄化装置の質量減少の確認において、排ガス浄化装置の質量の減少率が5%以内の場合であれば、触媒剥れの有無の評価において、「触媒剥がれ無し」と評価することとした。
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】
【0169】
【表6】
【0170】
(総合評価)
NOx浄化率試験、圧力損失試験、及び、触媒剥れの有無の結果から、下記の基準に基づき総合評価を行った。
評価「良」:「NOx浄化率評価がAであり、且つ、圧力損失評価がAであり、且つ、触媒剥れが無である場合を優良であるとし、評価を良とする。」
評価「不可」:「NOx浄化率評価、及び圧力損失評価のいずれかがBである場合、又は、触媒剥れ有の場合を不良であるとし、評価を不可とする。」
【0171】
(結果)
表3に示すように実施例1~16の排ガス浄化装置は、NOx浄化率が高く、エージング後においてもNOx浄化率の低下が少なかった。また、触媒剥れも無く、長時間の使用においても触媒の脱落によるNOx浄化率の低下が少ないと考えられる。
【0172】
比較例1~6の排ガス浄化装置は、第1SCR触媒コンバータを備えていないため、NOx浄化率の結果が特に悪かった。比較例7及び8の排ガス浄化装置は、第1SCR触媒コンバータのハニカム構造体の気孔率が低く、また、第1SCR触媒の細孔担持量も少ないため、NOx浄化率の結果が悪かった。比較例9の排ガス浄化装置は、第1SCR触媒コンバータのハニカム構造体のセル密度が大きすぎるため、圧力損失が増大した。比較例10の排ガス浄化装置は、第1SCR触媒コンバータのハニカム構造体のセル密度が小さすぎるため、1つのセルに掛かる圧力が大きくなり、触媒剥れが生じた。比較例11の排ガス浄化装置は、第1SCR触媒コンバータの触媒総担持量が510g/Lであり、第1SCR触媒によってセルが詰まりやすくなり、圧力損失が増大することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の排ガス浄化装置は、内燃機関から排出される排ガスの浄化装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0174】
1:第1SCR触媒コンバータ、2:酸化触媒コンバータ、3:フィルタ部、4:第2SCR触媒コンバータ、5:筐体、20:ハニカム構造体、21:第一端面、22:第二端面、23:セル、24:隔壁、25:外周壁、100:排ガス浄化装置、G:排ガスの流れ方向。
図1
図2