IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-荷重変換器 図1
  • 特許-荷重変換器 図2
  • 特許-荷重変換器 図3
  • 特許-荷重変換器 図4
  • 特許-荷重変換器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】荷重変換器
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/26 20060101AFI20220421BHJP
   G01G 23/02 20060101ALI20220421BHJP
   G01L 1/22 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
G01L1/26 B
G01G23/02 A
G01L1/22 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021174532
(22)【出願日】2021-10-26
(62)【分割の表示】P 2017156800の分割
【原出願日】2017-08-15
(65)【公開番号】P2022009500
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓磨
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-061262(JP,A)
【文献】実開昭57-101940(JP,U)
【文献】実開平05-078429(JP,U)
【文献】特開2015-021846(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068761(WO,A1)
【文献】米国特許第04467661(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/22
G01L 1/26
G01G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック体と、
該ブロック体に取り付けられたひずみゲージとを備え、
前記ブロック体は、支持部材に固定される固定部と、前記固定部に対向し、外部から荷重を受ける可動部と、前記固定部と前記可動部との間に延び、互いに対向する一対のビーム部と、前記一対のビーム部の間に設けられ前記可動部の変位を規制するストッパ部とを有しており、
前記一対のビーム部は夫々、前記固定部側に設けられた固定部側起歪部と、前記可動部側に設けられた可動部側起歪部とを有しており、
前記ストッパ部は、前記固定部から前記可動部側に向かって延びるストッパ突出部と、
該ストッパ突出部に対して一対のビーム部側において夫々当接可能に形成された一対のストッパ当接部とを有しており、
前記一対のストッパ当接部は、前記一対のビーム部の前記固定部側起歪部と前記可動部側起歪部との間に設けられていて、
前記ストッパ部は、前記可動部側において前記ストッパ突出部を収容するストッパ収容部を有しており、該ストッパ収容部が前記一対のストッパ当接部を有していて、
前記ストッパ収容部には、前記ストッパ突出部の前記可動部側に空間が形成されていて、
前記可動部には、前記可動部を貫通しているボルト孔が形成されていて、
前記空間には、ボルトが前記ボルト孔に螺合された際に、前記ボルトの先端が入り込むことを特徴とする荷重変換器。
【請求項2】
前記一対のストッパ当接部は、前記ストッパ突出部の先端部分に当接可能であることを特徴とする請求項1記載の荷重変換器。
【請求項3】
前記ストッパ突出部は、前記一対のストッパ当接部に隙間を介して夫々対向する一対のストッパ突出部当接部を有していることを特徴とする請求項1または2記載の荷重変換器。
【請求項4】
前記固定部及び前記可動部は、円盤状のフランジであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の荷重変換器。
【請求項5】
前記ストッパ突出部は、該ストッパ突出部の延びる方向において前記ストッパ突出部当接部よりも前記固定部側の位置に、前記ストッパ突出部当接部よりもくびれているくびれ部を有していることを特徴とする請求項3記載の荷重変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重変換器に関し、特に、荷重を電気信号に変換するための荷重変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、秤などの計量装置において、ロバーバル機構を有するロバーバル型のロードセルを用いた計量装置が広く知られている。このような計量装置は、荷重を電気信号に変換するための荷重変換器を有しており、荷重変換器は、ロバーバル型の起歪体として用いられる金属製のブロック体を有している。このブロック体は、中空の対称形状を有している(例えば、特許文献1参照。)。また、ロバーバル型のロードセルは、上述のような計量装置のみならず、ワイヤソー工法に用いられるワイヤソーにおいて、ワイヤの張力を検出するためにも用いられている。ワイヤソー工法とは、モノの切断工法の一種であり、鉄筋コンクリート等の複雑な形状物や水中構造物、狭い場所、高所等、対象物やその状態に制限なく、無振動且つ低騒音で粉塵も少なく、現場条件に合わせた機械配置が可能で自由な方向で切断することができる工法である。また、ワイヤソー工法は、半導体インゴットや半導体ウエハーの加工にも用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-083024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、このようなワイヤソー工法の加工対象は、半導体インゴットや半導体ウエハーのような小さなものにまで広がっており、ワイヤソー工法に用いるワイヤソーも小型化されてきている。このため、ワイヤソーに用いられるロバーバル型の荷重変換器も小型化が要求されている。
【0005】
ロバーバル型の荷重変換器の小型化に伴いブロック体は肉薄となり、ブロック体の強度が懸念されており、特に、ブロック体の固定の際のボルト止め等によりブロック体に加わる荷重によってブロック体が破損するおそれがあった。このように、従来からワイヤソー工法に用いられるロバーバル型の荷重変換器のブロック体に対しては、破損の発生を防止することができる構造が求められていた。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化した場合でも、過荷重による破損を防止することができる荷重変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る荷重変換器は、ブロック体と、該ブロック体に取り付けられたひずみゲージとを備え、前記ブロック体は、支持部材に固定される固定部と、前記固定部に対向し、外部から荷重を受ける可動部と、前記固定部と前記可動部との間に延び、互いに対向する一対のビーム部と、前記一対のビーム部の間に設けられ前記可動部の変位を規制するストッパ部とを有しており、前記一対のビーム部は夫々、前記固定部側に設けられた固定部側起歪部と、前記可動部側に設けられた可動部側起歪部とを有しており、前記ストッパ部は、前記固定部から前記可動部側に向かって延びるストッパ突出部と、該ストッパ突出部に対して一対のビーム部側において夫々当接可能に形成された一対のストッパ当接部とを有しており、前記一対のストッパ当接部は、前記一対のビーム部の前記固定部側起歪部と前記可動部側起歪部との間に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る荷重変換器において、前記ストッパ部は、前記可動部側において前記ストッパ突出部を収容するストッパ収容部を有しており、該ストッパ収容部が前記一対のストッパ当接部を有している。
【0009】
本発明の一態様に係る荷重変換器において、前記ストッパ収容部には、前記ストッパ突出部の前記可動部側に空間が形成されている。
【0010】
本発明の一態様に係る荷重変換器において、前記一対のストッパ当接部は、前記ストッパ突出部の先端部分に当接可能である。
【0011】
本発明の一態様に係る荷重変換器において、前記ストッパ突出部は、前記一対のストッパ当接部に隙間を介して夫々対向する一対のストッパ突出部当接部を有している。
【0012】
本発明の一態様に係る荷重変換器において、前記固定部及び前記可動部は、円盤状のフランジである。
【0013】
本発明の一態様に係る荷重変換器において、前記ストッパ突出部は、該ストッパ突出部の延びる方向において前記ストッパ突出部当接部よりも前記固定部側の位置に、前記ストッパ突出部当接部よりもくびれているくびれ部を有している。
【0014】
本発明の一態様に係る荷重変換器において、前記可動部には、ワイヤが取り付けられるワイヤ取付部が設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る荷重変換器によれば、小型化した場合でも、過荷重による破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る荷重変換器の構成を概略的に示す正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る荷重変換器の構成を概略的に示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る荷重変換器におけるストッパ部の部分拡大図である。
図4】ワイヤソーに取り付けられた使用状態における本発明の実施の形態に係る荷重変換器の構成を概略的に示す断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る荷重変換器の変形例におけるストッパ部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る荷重変換器1の構成を概略的に示す正面図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る荷重変換器1の構成を概略的に示す斜視図である。図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態に係る荷重変換器1は、ブロック体2と、このブロック体2に取り付けられたひずみゲージ3とを備えている。ブロック体2は、支持部材に固定される固定部20と、固定部20に対向し、外部からの荷重を受ける可動部30とを有している。また、ブロック体2は、固定部20と可動部30との間に延び、互いに対向する一対のビーム部40,50と、一対のビーム部40,50の間に設けられ可動部30の変位を規制するストッパ部60とを有している。一対のビーム部40,50は夫々、固定部20側に設けられた固定部側起歪部41,51と、可動部30側に設けられた可動部側起歪部42,52とを有している。ストッパ部60は、固定部20から可動部30側に向かって延びるストッパ突出部70と、ストッパ突出部70に対して一対のビーム部40,50側において夫々当接可能に形成された一対のストッパ当接部81,82とを有している。一対のストッパ当接部81,82は、一対のビーム部40,50の固定部側起歪部41,51と可動部側起歪部42,52との間に設けられている。荷重変換器1は、例えば、ワイヤソー工法に用いられるワイヤソーにおいて、ワイヤの張力を検出するために用いられる。以下、説明の便宜上、図1における上方を上側とし、図1における下方を下側とする。また、図1における紙面垂直方向を厚さ方向、図1における左右方向を長さ方向、図1における上下方向を幅方向とする。以下、荷重変換器1の構成について具体的に説明する。
【0019】
ブロック体2において、固定部20は、例えば、円盤状のフランジである。ブロック体2において、可動部30は、例えば、固定部20と同一又は略同一の径を有する円盤状のフランジである。固定部20は、可動部30に対向する側に対向面21を有している。対向面21は、平面又は略平面状の面である。また、可動部30は、固定部20に対向する側に対向面31を有している。対向面31は、対向面21に平行に又は略平行に延びる平面又は略平面状の面である。また、固定部20には、図4を用いて後述するように、荷重変換器1が用いられるワイヤソーの支持部材に荷重変換器1を固定するための複数のボルト孔22が形成されている。また、可動部30には、後述するワイヤソーのワイヤを取り付けるためのワイヤ取付部90を固定するためのボルト孔32が形成されており、ボルト孔32は、可動部30を貫通している。
【0020】
また、ブロック体2において、一対のビーム部の一方である上側ビーム部40及び一対のビーム部の他方である下側ビーム部50は、互いに対称又は略対称の形状を有している。上側ビーム部40は、固定部20と可動部30との間に延びている板状の部分であり、固定部20の対向面21及び可動部30の対向面31に対して直交して又は略直交して延びている。
【0021】
また、上側ビーム部40の固定部側起歪部としての上固定部側起歪部41及び上側ビーム部40の可動部側起歪部としての上可動部側起歪部42は、図2に示すように、厚さ方向において互いに平行に又は略平行に延びており、固定部20の対向面21及び可動部30の対向面31に沿って延びている。上固定部側起歪部41及び上可動部側起歪部42は、図1に示すように、上側ビーム部40の、下側ビーム部50に対向する側の面(内側面43)が外側(上側)に凹んで形成されている。上固定部側起歪部41及び上可動部側起歪部42は、例えば、図1に示すように、内側面43において外側に円弧状に凹む面によって形成されている薄肉の部分である。
【0022】
下側ビーム部50は、固定部20と可動部30との間において、上側ビーム部40に対向して延びている板状の部分であり、固定部20の対向面21及び可動部30の対向面31に対して直交して又は略直交して延びている。また、下側ビーム部50の固定部側起歪部としての下固定部側起歪部51及び下側ビーム部50の可動部側起歪部としての下可動部側起歪部52は、図2に示すように、厚さ方向において互いに平行に又は略平行に延びており、固定部20の対向面21及び可動部30の対向面31に沿って延びている。下固定部側起歪部51及び下可動部側起歪部52は、図1に示すように、下側ビーム部50の、上側ビーム部40に対向する側の面(内側面53)が外側(下側)に凹んで形成されている。下固定部側起歪部51及び下可動部側起歪部52は、例えば、図1に示すように、内側面53において外側に円弧状に凹む面によって形成されている薄肉の部分である。
【0023】
ストッパ部60は、上側ビーム部40と下側ビーム部50との間に形成されており、つまり、ストッパ突出部70と一対のストッパ当接部81,82とは、上側ビーム部40と下側ビーム部50との間に形成されている。
【0024】
ストッパ突出部70は、上側ビーム部40及び下側ビーム部50に沿って固定部20の対向面21から延びており、図2に示すように、上側ビーム部40及び下側ビーム部50と同じ又は略同じ厚さ(図1において紙面垂直方向の寸法)を有している。ストッパ突出部70は、上側ビーム部40及び下側ビーム部50と同じ厚さでなくてもよい。
【0025】
ストッパ突出部70は、具体的には、固定部20の対向面21から可動部30側に突出しているストッパ基部71と、ストッパ基部71から可動部30側に突出しているストッパ先端部72とを有している。ストッパ先端部72の幅は、図1及び図2に示すように、ストッパ基部71の幅よりも小さくなっている。幅は、上側ビーム部40と下側ビーム部50との間隔方向(図1において上下方向)の寸法である。
【0026】
ストッパ先端部72の先端(先端72a)から固定部20側に長さ方向に所定の長さに亘る部分であるストッパ突出部70の先端部分73には、幅方向において一対の互いに背向するストッパ突出部当接部74,75が形成されている。また、ストッパ先端部72には、くびれ部76が形成されている。くびれ部76は、ストッパ突出部70の延びる方向(長さ方向)において一対のストッパ突出部当接部74,75よりも固定部20側に位置し、一対のストッパ突出部当接部74,75よりもくびれている、つまり、幅方向の寸法が小さく形成されている部分である。具体的には、図1に示すように、くびれ部76は、ストッパ先端部72において、先端部分73に続いて形成されており、ストッパ基部71に接続している。なお、先端部分73において、ストッパ突出部当接部74,75は、くびれ部76と離間していてもよく、また、ストッパ突出部当接部74,75は、先端72aから離間していてもよい。
【0027】
ストッパ突出部当接部74は、一対のストッパ当接部の一方である上側ストッパ当接部81に下側から対向しており、ストッパ突出部当接部75は、一対のストッパ当接部の他方である下側ストッパ当接部82に上側から対向している。上側ストッパ当接部81及び下側ストッパ当接部82は、ストッパ突出部70に沿って可動部30の対向面31から延びており、図2に示すように、上側ビーム部40及び下側ビーム部50と同じ又は略同じ厚さを有している。上側ストッパ当接部81及び下側ストッパ当接部82は、ストッパ突出部70と同じ厚さでなくてもよい。
【0028】
また、上側ストッパ当接部81は、上固定部側起歪部41と上可動部側起歪部42との間に設けられるとともに、下側ストッパ当接部82は、下固定部側起歪部51と下可動部側起歪部52との間に設けられている。ストッパ部60は、図1及び図2に示すように、幅方向においてストッパ突出部70の先端部分73を収容するストッパ収容部80を有している。ストッパ収容部80は、上側ストッパ当接部81及び下側ストッパ当接部82を有しており、可動部30側に空間を形成してストッパ突出部70の先端部分73を収容可能になっている。具体的には、ストッパ収容部80においてストッパ先端部72の先端72aの可動部30側には、空間83が形成されている。空間83は、ストッパ収容部80の厚さ方向に延びている。また、空間83は、幅方向において、上側ストッパ当接部81を超えて上側に延びており、また、下側ストッパ当接部82を超えて下側に延びている。空間83は、後述するワイヤ取付部90を固定するためのボルト孔32に連通しており、ワイヤ取付部90を固定するための固定ボルト92がボルト孔32に螺合された際に、固定ボルト92の先端92aが空間83内に入り込むことができるようになっている。つまり、空間83は、固定ボルト92の逃げ空間を形成している。図1に示すように、空間83の可動部30側の縁部である可動部側縁部83aは、長さ方向において、可動部側起歪部42,52の可動部30側の端部(端部42a,52a)よりも固定部20側に位置している、又は同一平面上に位置していることが好ましい。なお、空間83は、固定ボルト92の逃げ空間を形成できるように幅方向に延びていればよく、上側ストッパ当接部81及び下側ストッパ当接部82を超えて外側(上側及び下側)に延びていなくてもよい。ただし、空間83が上側ストッパ当接部81及び下側ストッパ当接部82を超えて外側に延びている方が、後述するワイヤカットに対して好ましい。
【0029】
ストッパ突出部70のストッパ突出部当接部74,75及びストッパ当接部81,82は、より具体的には、長さ方向において、長さ方向中央面Aと可動部側起歪部42,52との間に設けられている。長さ方向中央面Aは、固定部側起歪部41,51と可動部側起歪部42,52との間の長さ方向における中央の部分において長さ方向に直交する面である。また、ストッパ突出部当接部74,75の幅方向における中央は、ブロック体2の幅方向における中央と一致又は略一致していることが好ましく、上側ストッパ当接部81と下側ストッパ当接部82の間の幅方向における中央は、ブロック体2の幅方向における中央と一致又は略一致していることが好ましい。また、ストッパ収容部80の、上側ビーム部40側の側部(外側面85)から上側ストッパ当接部81までの幅方向における間隔(幅W1)と、ストッパ収容部80の下側ビーム部50側の側部(外側面86)から下側ストッパ当接部82までの幅方向における間隔(幅W2)とが、同じ又は略同じであることが好ましく、ストッパ突出部70の先端部分73の幅方向における寸法(幅W3)、幅W1、及び幅W2が、同じ又は略同じであることがより好ましい。
【0030】
図3は、本発明の実施の形態に係る荷重変換器1におけるストッパ部60の部分拡大図である。図3に示すように、ストッパ突出部70の先端部分73における上側のストッパ突出部当接部74は、上側ストッパ当接部81に隙間cを介して対向しており、ストッパ突出部70の先端部分73における下側のストッパ突出部当接部75は、下側ストッパ当接部82に隙間cを介して対向している。隙間cの大きさは、荷重による可動部30の変位によって、起歪部41,42,51,52が破損しないような大きさに設定されている。隙間cの大きさは、例えば、計測可能な最大荷重(定格荷重)の150%の荷重が加わったときの可動部30の上方又は下方への変位量に相当する大きさに設定されている。
【0031】
ブロック体2は、アルミニウムや鉄等の金属材料から一体に形成されている。つまり、固定部20、可動部30、ビーム部40,50、ストッパ部60は、同一の材料から一体に形成されたブロック体2の各部分である。図1に示すように、ビーム部40,50とストッパ突出部70とは、固定部20側において、一体となっていてもよく、また、ビーム部40,50とストッパ収容部80とは、可動部30側において、一体となっていてもよい。この場合、図1に示すように、上側ビーム部40の内側面43と、ストッパ基部71及びくびれ部76の外側(上側)の面(外側面77)と、ストッパ収容部80の外側(上側)の面(外側面85)は、厚さ方向に延びる空間6を形成している。また、図1に示すように、下側ビーム部50の内側面53と、ストッパ基部71及びくびれ部76の外側(下側)の面(外側面78)と、ストッパ収容部80の外側(下側)の面(外側面86)は、厚さ方向に延びる空間7を形成している。
【0032】
また、各起歪部41,42,51,52には、外側からひずみゲージ3が取り付けられており、上側ビーム部40及びひずみゲージ3は、外側(上側)から樹脂製のカバーである樹脂カバー4によって覆われており、また、下側ビーム部50及びひずみゲージ3も同様に、外側(下側)から樹脂製のカバーである樹脂カバー5によって覆われている。
【0033】
図4は、ワイヤソーに取り付けられた使用状態における本発明の実施の形態に係る荷重変換器の構成を概略的に示す断面図である。荷重変換器1は、固定部20の対向面21と背向する背向面23が荷重変換器1を固定するための支持部材100に接触した状態において固定部20の複数のボルト孔22にボルト101が螺合されることで、支持部材100に固定されている。また、荷重変換器1において、可動部30のボルト孔32に固定ボルト92が螺合されて、ワイヤ91が巻き付けられたワイヤ取付部90が可動部30に固定されている。
【0034】
荷重変換器1は、ワイヤ取付部90に固定されたワイヤ91に幅方向の荷重Fが加わることで、ワイヤ91から荷重Fを受け、撓みを生じて幅方向に可動する。このように、荷重変換器1は、固定部20が固定端、可動部30が自由端となっており、支持部材100により片持ちで支持されている。
【0035】
荷重変換器1は、ロバーバル型の起歪体として作用し、荷重変換器1が受ける荷重によって起歪部41,42,51,52が変形し、この荷重がひずみゲージ3を介して電気的に検出される。具体的には、荷重変換器1は、ワイヤ91から荷重Fを受けると、可動部30が変位し、上固定部側起歪部41、上可動部側起歪部42、下固定部側起歪部51及び下可動部側起歪部52に応力が発生し、ひずみが生じる。ひずみゲージ3は、上固定部側起歪部41、上可動部側起歪部42、下固定部側起歪部51及び下可動部側起歪部52のひずみによる抵抗の変化を検知する。そして、ブリッジ回路等の計測回路(図示せず)は、各ひずみゲージ3の抵抗の変化を演算処理することで、ワイヤ91に加えられた荷重を算出することができる。
【0036】
一方で、例えば、ワイヤ91が巻き付けられたワイヤ取付部90を固定ボルト92により可動部30に取り付ける際に、起歪部41,42,51,52の破損を引き起こす程可動部30を変位させる過荷重が加えられる場合であっても、上側ストッパ当接部81がストッパ突出部当接部74に当接する、又は下側ストッパ当接部82がストッパ突出部当接部75に当接する。これにより、起歪部41,42,51,52の破損を引き起こす程の可動部30の上方又は下方への変位が阻止され、荷重変換器1の破損を防止することができる。このとき、上側ストッパ当接部81を上固定部側起歪部41と上可動部側起歪部42との間に設けるとともに、下側ストッパ当接部82を下固定部側起歪部51と下可動部側起歪部52との間に設けることで、各ひずみゲージ3の検出値の感度を低下させることなく、荷重変換器1の破損を防止することができる。
【0037】
また、上述のように、固定ボルト92の可動部30(対向面31)を超えた先端92aはストッパ収容部80の空間83内に入り込み、空間83は、固定ボルト92の先端92aの逃げ部を形成している。これにより、可動部30に荷重が加えられて可動部30が変位した場合でも、固定ボルト92の先端92aが、ブロック体2の部分と干渉することはなく、上固定部側起歪部41、上可動部側起歪部42、下固定部側起歪部51及び下可動部側起歪部52の変形に干渉することを防止することができる。このため、ひずみゲージ3の検出値を正確なものにすることができる。
【0038】
また、ブロック体2における上側ビーム部40、下側ビーム部50、ストッパ部60は、空間6,7を形成することにより形成でき、また、ストッパ部60において、ストッパ突出部70のストッパ先端部72と、ストッパ収容部80とは、空間83を形成した後に、ワイヤカットによってストッパ当接部81,82及びストッパ突出部当接部74,75を形成することにより形成することができる。このように、ブロック体2の各部分の製造は容易であり、加工コストを低減することができる。特に、ワイヤカットにより形成する部分を少なくすることができ、加工コストをより低減することができる。くびれ部76を形成した後にワイヤカットをすると、よりワイヤカット工程を短くできる。
【0039】
また、上述のように、ストッパ突出部当接部74,75及びストッパ当接部81,82を長さ方向中央面Aと可動部側起歪部42,52との間に設けることで、可動部30の変位量が多い位置にストッパ当接部81,82及びストッパ突出部当接部74,75を設けることができ、隙間cの幅を広くすることができ、加工精度を向上でき、加工コストを低減し、また加工時間を短縮することができる。また、空間83の可動部側縁部83aを、長さ方向において可動部側起歪部42,52の可動部30側の端部42a,52aよりも固定部20側、又は同一平面上に設けることで、長さ方向の小型化を図ることができる。また、ストッパ突出部70の先端部分73の幅W3と、ストッパ収容部80の、上側ビーム部40側の外側面85から上側ストッパ当接部81までの幅W1と、ストッパ収容部80の下側ビーム部50側の外側面86から下側ストッパ当接部82までの幅W2とが、同じ又は略同じ値を有することで、ストッパ突出部70の先端部分73と、ストッパ当接部81,82の剛性を同等程度に確保することができる。このため、ストッパ部60のいずれかの部分に大きな荷重が掛かることを防止でき、ストッパ部60の耐久性を向上させることができる。
【0040】
このように、本発明に係る荷重変換器1によれば、小型化した場合でも、過荷重による破損を防止することができる。また、本発明に係る荷重変換器によれば、起歪部41,42,51,52の感度を低下させることなく、つまり、ひずみの検出精度を低下させることなく、過荷重による破損を防止することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0042】
また、荷重変換器1として、上側及び下側の隙間cが長さ方向に平行に延びるように、上側ストッパ当接部81及びストッパ突出部当接部74、並びに下側ストッパ当接部82及びストッパ突出部当接部75がそれぞれ平行に形成されている場合を一例に本発明の実施の形態について説明したが、隙間cの形態はこれに限られない。例えば、図5に示すように、各隙間cは、一定の間隔を保ちながら固定部20側から可動部30側に向かって外側(上側又は下側)に斜めに延びていてもよい。つまり、ストッパ先端部72のストッパ突出部当接部74,75が形成されている部分(本実施の形態においては先端部分73)の幅方向における幅が、長さ方向において固定部20側から可動部30側に向かうにつれて大きくなるようにテーパ状に形成されており、同様に、ストッパ当接部81,82がストッパ突出部当接部74,75と夫々平行に形成されて、ストッパ当接部81,82間の幅方向における間隔が、長さ方向において固定部20側から可動部30側に向かうにつれて大きくなるようにテーパ状に形成されていてもよい。これにより、起歪部41,42,51,52の破損を引き起こす程可動部30を変位させる過荷重が加えられる場合であっても、上側ストッパ当接部81がストッパ突出部当接部74に面接触することができ、又は下側ストッパ当接部82がストッパ突出部当接部75に面接触することができ、ストッパ部60への負荷を分散させることができる。また、上側及び下側の各隙間cは、固定部20側から可動部30側に向かう延び方向に亘って、延び方向に直交する方向の間隔が一定ではなくてもよい。例えば、各隙間cは、延び方向において固定部20側から可動部30側に向かうにつれて、間隔が大きくなっていてもよい。この場合、ストッパ当接部81,82の変位は可動部30側に近いほど大きいので、ストッパ突出部当接部74,75とストッパ当接部81,82との間の接触をより確実に面接触にすることができる。
【0043】
さらに、荷重変換器1としてストッパ突出部70が固定部20から可動部30側に向かって延びる部分である場合を一例に本発明の実施の形態について説明したが、可動部30から固定部20側に向かって延びていてもよく、ストッパ部60を複数有していてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…荷重変換器、2…ブロック体、3…ひずみゲージ、4,5…樹脂カバー、6,7…空間、20…固定部、21…対向面、22…ボルト孔、23…背向面、30…可動部、31…対向面、32…ボルト孔、40…上側ビーム部、41…上固定部側起歪部、42…上可動部側起歪部、42a…端部、43…内側面、50…下側ビーム部、51…下固定部側起歪部、52…下可動部側起歪部、52a…端部、53…内側面、60…ストッパ部、70…ストッパ突出部、71…ストッパ基部、72…ストッパ先端部、72a…先端、73…先端部分、74,75…ストッパ突出部当接部、76…くびれ部、77,78…外側面、80…ストッパ収容部、81…上側ストッパ当接部、82…下側ストッパ当接部、83…空間、83a…可動部側縁部、85,86…外側面、90…ワイヤ取付部、91…ワイヤ、92…固定ボルト、92a…先端、100…支持部材、101…ボルト
図1
図2
図3
図4
図5