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特許7061727電磁放射を用いて測定対象物を測定する方法及びTHz測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-20
(45)【発行日】2022-04-28
(54)【発明の名称】電磁放射を用いて測定対象物を測定する方法及びTHz測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20220421BHJP
   G01N 21/3581 20140101ALI20220421BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
G01N21/3581
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021506040
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 DE2019100366
(87)【国際公開番号】W WO2019201396
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】102018109250.4
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520404492
【氏名又は名称】イノエックス ゲーエムベーハー イノヴァツィオーネン ウント アウスリュストゥンゲン フュア ディー エクストルジオーンステヒニク
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】クローゼ ラルフ
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0060673(US,A1)
【文献】特開2002-306418(JP,A)
【文献】特開2009-075071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0212060(US,A1)
【文献】特開平08-320254(JP,A)
【文献】特開2004-069571(JP,A)
【文献】特開2007-333379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0015354(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0216202(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102175662(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/06
G01N 21/3581
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物(3)をテラヘルツ測定するための方法であって、少なくとも以下のステップ、
-前測定(I)の局面において、第1の周波数範囲(fb1)で第1の帯域幅(b1)を有する、THz測定装置(2)のTHzトランシーバー(8)の第1のTHz送信ビーム(112)が、前記測定対象物(3)に向かって光軸(A)に沿って放出され、前記測定対象物(3)の境界面(3a)で反射されたTHz放射線(14)が検出され(St3)
-前記測定対象物(3)が検出されたかどうかを決定し(St4)、
-前記測定対象物(3)が検出された場合、境界面(3a)から前記THz測定装置(2)又は前記THzトランシーバー(8)までの現在距離(d)を決定し(St5)、
-前記決定された現在距離(d)を限界距離(d_tres)と比較し(St6)、及び
-前記限界距離(d_tres)を超えていない場合(St8)、次に主測定(II)を開始し又は前記主測定(II)の開始を表示し、
-前記主測定(II)の局面において主測定帯域幅(b2)を有する主測定THz送信ビーム(212)が、第2の送信ビーム(212)、前記測定対象物(3)に向かって光軸(A)に沿って放出され、反射したTHz放射線(14)が検出され(St9)、ここで、前記主測定送信ビーム(212)の前記主測定帯域幅(b2)は前記第1の帯域幅(b1)より大きく、
放出された前記主測定THz送信ビーム(212)と検出された前記反射したTHz放射線(14)を用いて、前記測定対象物(3)の幾何学的特性又は材料特性の測定が実行され(St10)、
-測定結果が出力される(St11)、を有する方法。
【請求項2】
前記測定装置(2)が携帯式であって、グリップ領域(4)によって保持され、操作され、前端領域(5)が前記測定対象物(3)の前にあるように又は上にあるようにそれが位置決めされる(St1,St7)、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記携帯THz測定装置(2)が、前記限界距離(d_tres)を超えないように、ユーザーによって、前記前端領域(5)に形成された接触面により、前記測定対象物(3)の境界面(3a)に対して配置される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記接触面は成形パネル(25)である、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記前測定(I)の局面及び/又は前記主測定(II)の局面が、作動装置(18)を作動させることで開始される(St2)、ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記作動装置(18)はボタン又はスイッチである、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記局面又は前記局面(I,II)の一部が表示装置(16)に示され、及び/又は光学表示装置により、光信号として出力される、ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記主測定(II)の局面において、前記主測定THz送信ビーム(212)を用いて前記測定対象物(3)を測定するとき、幾何学的特性の測定が実行される、ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記測定対象物(3)の境界面(3a,3b)の間の層厚さ(d3)が決定される、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記主測定(II)の局面において、前記主測定THz送信ビーム(212)を用いて前記測定対象物(3)を測定するとき、前記測定対象物(3)の材料分析が実行される、ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記測定対象物(3)の分光分析が実行される、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記測定対象物(3)の空間分解分光分析が実行される、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記限界距離(d_tres)を超えていないことが算出された場合に、前記主測定(II)の局面が自動的に開始される(St9)、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記前測定(I)の局面において、前記THz送信ビーム(112)が、測定対象物の連続的な検出及び現在の測定距離(d)と前記限界距離(d_tres)の比較のために連続的に放出される、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記主測定(II)の局面において、前記前測定(I)の局面における周波数範囲とは異なる周波数範囲が放出される、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記主測定(II)の局面において、前記前測定(I)の局面における強度とは異なる強度が放出される、ことを特徴とする請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
測定対象物(3)を測定するためのTHz測定装置(2)であって、
THz放射線(12)を光軸(A)に沿って放出し、反射したTHz放射線(14)を受けるTHzトランシーバー(8)、
前記THzトランシーバー(8)の測定信号を収集して、前記測定対象物(3)の距離(d)及び測定結果(d3)を決定するコントローラ装置(10)、及び
測定結果を出力する出力装置(16)を有する、THz測定装置(2)において、
前記THz測定装置(8)が携帯式であり、ユーザーが把持して操作するためのグリップ領域(4)を有し、
前記コントローラ装置(10)が、前測定(I)の局面及び主測定(II)の局面のために構成されており、
前記コントローラ装置(10)が、前記前測定(I)の局面において、第1の帯域幅(b1)を有する光軸(A)に沿って第1のTHz送信ビーム(112)として前記THz放射線(12)を放出し、
前記コントローラ装置(10)が、前記主測定(II)の局面において、主測定帯域幅(b2)を有する第2のTHz送信ビーム(212)として主測定THz送信ビーム(212)を前記光軸(A)に沿って放出するように構成されており、
前記主測定帯域幅(b2)は、より高い分解能のために前記第1の帯域幅(b1)より広く、
前記コントローラ装置(10)が、前記前測定(I)において、測定対象物が検出されたかどうかを決定し、前記測定対象物(3)が検出された場合、前記測定対象物(3)の境界面(3a)から前記THz測定装置(2)又は前記THzトランシーバー(8)までの前記距離(d)を決定し、当該距離と限界距離(d_tres)を比較し、当該比較に応じて、前記限界距離(d_tres)を超えなかったときに前記主測定(II)を開始し又は指示し、
前記コントローラ装置(10)が、前記主測定(II)において前記測定対象物の測定特性を決定するように構成されている、ことを特徴とするTHz測定装置。
【請求項18】
前記コントローラ装置(10)が、前記主測定(II)において、前記測定対象物の幾何学的特性及び/又は材料特性を決定するように構成されている、ことを特徴とする請求項17に記載のTHz測定装置。
【請求項19】
前記コントローラ装置(10)が、前記主測定(II)において、2つの境界面(3a,3b)の間の距離としての層厚さ(d3)及び/又は分光分析による材料特性を決定するように構成されている、ことを特徴とする請求項18に記載のTHz測定装置。
【請求項20】
前記局面を光学的若しくは音響的に出力し又は表示するための出力装置(16)を有する、ことを特徴とする請求項17~19のいずれか一項に記載のTHz測定装置。
【請求項21】
前記局面はユーザーによる位置決めを補正するための前記前測定(I)である、ことを特徴とする請求項20に記載のTHz測定装置。
【請求項22】
前記THz測定装置が、前記測定対象物の外面(3a)と接触して配置されるように、輪郭線(25a,25b)を有するその前端領域(5)に成形パネル(25)を有し、前記輪郭線(25a,25b)が前記測定対象物(3)の前記外面(3a)に接触したとき、現在の前記距離(d)が前記限界距離(d_tres)より低い、ことを特徴とする請求項1721のいずれか一項に記載のTHz測定装置。
【請求項23】
前記THz測定装置が、ユーザーが前記距離(d)を操作し調節するために、自律式である又は無線で若しくはフレキシブルなデータ及び電力源(6)を介して固定ユニットに接続している、ことを特徴とする請求項1722のいずれか一項に記載のTHz測定装置。
【請求項24】
前記THz放射線(12)が0.01~10THzの周波数範囲にある、ことを特徴とする請求項1723のいずれか一項に記載のTHz測定装置。
【請求項25】
前記THzトランシーバー(8)が、周波数変調又はパルス放射線を用いて、完全に電子的に設計されており、
前記測定対象物の測定特性又は分光分析のより正確な決定を行うために、広めの前記主測定帯域幅(b2)を使用する主測定(II)において、測定結果の高めの分解能が生成できる、ことを特徴とする請求項17~24のいずれか一項に記載のTHz測定装置。
【請求項26】
前記THzトランシーバー(8)がトランシーバー双極子として設計されている、ことを特徴とする請求項17~25のいずれか一項に記載のTHz測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射を用いて測定対象物を測定する方法と、対応する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
距離及び層厚さを測定するTHz測定装置(テラヘルツ測定装置)は、例えば0.01~10THzの周波数範囲のTHz放射線を放出し、測定対象物から反射されるTHz放射線を検出することができる。これは、境界表面からTHz測定装置までの距離の検出を、例えば実行時間測定として直接に又はFM(周波数変調)の場合周波数偏移として、可能にする。したがって、スペクトル領域はミリメートル波長領域に延びる。
【0003】
これは、例えば、層厚さの凸凹を非接触で検出するために、押し出しに直接従うプラスチック管の測定を可能にする。これによって、THz放射線は境界表面から部分的に反射される、と言うのも例えばプラスチックなどの測定対象物の材料は周囲空気と比べて高めの屈折率を示すからである。
【0004】
THz測定装置の分解能(解像度)は、それらの物理的測定原理及び変調(調節)に依存する。例えば短期レーザーとそれにより励起される送信アンテナ及び受信アンテナを使用する光学測定装置が、層厚さの広帯域測定と高分解能を可能にする。したがって、しかしながら、それらは複雑な装置を必要とし、高価である。完全に電子的なTHz測定装置は一般に、THz放射線を送受信するトランシーバー双極子を有する。しばしば、それらはFM(周波数変調)で操作され又はパルス放射線として操作される。これによって、小さめの距離を検出するための高めの分解能がしばしば、使用される周波数範囲の広帯域幅を必要とする。このような広帯域幅はしかしながら、所定の周波数範囲におけるデータ通信や検査が行われる他のプロセスに干渉し得る。よって、例えば外部ハウジングを用いた遮蔽(スクリーン)又は外側カプセル化が証明できない場合、一般に、外部遮蔽を用いない無指向性の自由放出放射線を用いたオープン検査は、所定の周波数範囲、例えばISM(工業、科学、医療)用途に制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、測定対象物をTHz測定する方法及び測定対象物を確実に測定することができるTHz測定装置を創出する、特に殆ど努力なしに例えば管状の又は円筒状の測定対象物の層厚さ測定を得るという目的を基礎とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項に従うTHz測定方法及びTHz測定装置によって達成される。好ましい更なる発展形態は従属請求項に記載される。
【0007】
本発明に従うTHz測定装置は、特に、本発明に従うTHz測定方法を実行するように意図している。本発明に従う方法は、特に、本発明に従うTHz測定装置を使用して実行され得る。
【0008】
これによって、前測定(pre-measurement)と主測定(main measurement)の局面が提供される。前測定(予測定)は、測定対象物を検出して、THz測定装置から又はそのTHzトランシーバーから測定対象物の距離を決定する機能を有する。前測定では、特に、測定対象物の又はその外側境界表面の決定距離が限界距離より小さいかどうかが決定される。
【0009】
したがって、前測定の局面は、特に以下のステップを有する。
-測定対象物が検出されたかどうかを決定すること、
-測定対象物が検出された場合、境界表面からTHz測定装置又はTHzトランシーバーまでの現在距離を決定すること、
-決定された現在距離を限界距離と比較すること、及び
-限界距離を超えていない(下回っている)とき、主測定を次に開始すること又は主測定の開始を表示すること。
【0010】
測定対象物が検出され、さらに限界距離を超えていないと決定/算出されたとき、次に、主測定が直接開始されるか、又はユーザーが主測定を開始することができるようにそれがユーザーに示される。
【0011】
次いで、主測定では、主測定帯域幅を有する主測定THz送信ビームを用いて測定が実行される。次いで、主測定では、例えば層厚さ、例えばプラスチック管の壁厚が高精度に決定される。しかしながら、壁厚測定に加えて又は代えて、幾何学的特性の他の測定や分光学的検査若しくは分析も実行することができる。
【0012】
好ましい実施形態によれば、前測定では、先ず、小さめの第1の帯域幅を有する第1のTHz送信ビームが出力される。次いで、主測定では、第2の帯域幅を表す主測定帯域幅を有する第2のTHz送信ビームを表す主測定THz送信ビームを用いた測定が実行される。当該第2の帯域幅又は主測定帯域幅はそれぞれ第1の帯域幅より大きい。
【0013】
前測定の局面では、THz測定装置は、場合によっては測定対象物からまだ離れており、それで放出されたTHz放射線は測定対象物を妨害して通り過ぎ、場合によっては周囲に悪影響を与えうる。したがって、本発明は、前測定のこの局面では帯域幅を制限する、と言うのも測定対象物の検出のために、距離の概略の決定のみ必要とされ、基本的に、限界距離を超えていないという推定で十分だからである。
【0014】
限界距離を超えていないことが決定される場合、THz測定装置により放出されたTHz放射線は、測定対象物を妨害して通り過ぎることができず、周囲領域に直接的な悪影響を生じない。むしろ、高い確実性で、THz放射線は測定対象物に照射され、ここで反射され及び/又は散乱され、又はそこで吸収される。ゆえに、主測定の局面では、高めの分解能、特に層厚さのより正確な決定を可能にする広めの第2の帯域幅を選択することが可能である。
【0015】
完全に電子的な測定装置の場合、前測定の局面では、例えば1GHzの帯域幅が選択されてもよい。主測定の局面では、例えば20,30又は40GHzの、でも例えば1000GHzのもっと高い又はそれ以上の、高めの帯域幅が選択されてもよい。
【0016】
THz放射線の周波数は、測定装置及び方法の両方で、特に、0.01~10THzの周波数範囲にあってもよい。
【0017】
したがって、THz放射線の波長領域はテラヘルツ放射線、マイクロ波放射又はレーダー放射線とも呼ばれる。
【0018】
したがって、本発明によれば、例えば外部遮蔽のない高帯域幅を用いた測定さえ可能である。これによって、一例を挙げると、帯域幅を広げることが可能であり、よって、前測定の局面で周波数範囲又は狭帯域ISM領域が選択されてもよく、次に主測定では第1測定の周波数の周囲の広めの周波数範囲が選択されてもよい。さらに、しかしながら、主測定では、他の周波数範囲、例えば他の広帯域周波数範囲が選択されてもよい。これに加えて又はその代わりに、主測定の局面における出力又は強度を増加することも可能である。
【0019】
本発明によれば、特に、前測定の局面においてユーザーが自由に操縦して位置決めすることができる携帯式の測定装置が利用されてもよい。ユーザーが、測定装置を、例えば測定対象物の境界面と垂直に及び限界距離内で正しく位置決めするとすぐに、これはコントローラ装置によって検出され、表示され又は主測定が直ぐに実行される。
【0020】
よって、この好ましい実施形態によれば、測定対象物をテラヘルツ測定する方法は、少なくとも以下のステップ、
-前測定(I)の局面、当該局面では第1の周波数範囲で第1の帯域幅を有する、THz測定装置のTHzトランシーバーの第1のTHz送信ビームが、前記測定対象物に向かって光軸に沿って放出され、前記測定対象物の境界面で反射されたTHz放射線が検出され(St3)、
-前記測定対象物が検出されたかどうかを決定し(St4)、
-前記測定対象物が検出された場合、境界面からTHz測定装置又はTHzトランシーバーまでの現在距離を決定し(St5)、
-前記決定された現在距離を限界距離と比較し(St6)、及び
-前記限界距離を超えていない場合(St8)、次に主測定(II)を開始し又は前記主測定(II)の開始を表示し、
-前記主測定(II)の局面、当該局面において第2の帯域幅を有する第2のTHz送信ビームが、前記測定対象物に向かって光軸(A)に沿って照射され、反射したTHz放射線が検出され(St9)、
放出された前記第2のTHz送信ビームと検出された前記反射したTHz放射線を用いて、前記測定対象物の幾何学的特性又は材料特性の測定が実行され(St10)、
-測定結果が出力される(St11)、を有する。
【0021】
好ましい実施形態によれば、測定装置は以下の特徴を有する。
測定対象物を測定するためのTHz測定装置であって、
THz放射線を光軸に沿って放出し、反射したTHz放射線を受けるTHzトランシーバー、
前記THzトランシーバーの測定信号を収集して、前記測定対象物の距離及び測定結果を決定するコントローラ装置、及び
測定結果を出力する出力装置を有する、THz測定装置において、
前記THz測定装置が携帯式(携帯可能)であり、ユーザーが把持して操作するためのグリップ領域を有し、
前記コントローラ装置が、前測定の局面において、第1の帯域幅を有する光軸に沿って第1のTHz送信ビームとして前記THz放射線を放出し、及び主測定(II)の局面において、より高い分解能のために前記第1の帯域幅より広い第2の帯域幅を有する第2のTHz送信ビームとして放出するよう構成されており、
前記コントローラ装置が、前記前測定(I)において、測定対象物が検出されたかどうかを決定し、前記測定対象物が検出された場合、前記測定対象物の境界面から前記THz測定装置又は前記THzトランシーバーまでの前記距離を決定し、当該距離と限界距離を比較し、当該比較に応じて、前記限界距離を超えていないときに前記主測定を開始し又は指示し、
前記コントローラ装置が、前記主測定において前記測定対象物の測定特性を決定するように構成されている。
【0022】
しかしながら、この実施形態に代えて、低めの帯域幅を用いた測定を有する前測定を利用して、前測定が別なセンサーによって、例えば
レーザー;例えば三角測量によって距離を決定する距離センサー装置、それとも
超音波送信信号を出力することで及び超音波反射信号を受信することで距離を決定する超音波センサー、
それとも、例えば少し突出していて、測定対象物との接触時にボタンとして凹む接触センサー、
によって実行されてもよい。
【0023】
さらに、前測定の局面が、以下の局面にさらに分割されてもよい。
-サーチ局面、測定対象物が検出されるまで;したがって、サーチ局面では、例えば反射したTHz放射線はまだ検出されない、と言うのも距離が大きすぎるから又は境界面が放出されるTHz放射線と垂直でないからである。
-検出局面、当該局面では測定対象物が検出されるが、限界距離にはまだ到達しない及び/又は光軸の角度が境界面と十分垂直になっていない。
【0024】
前測定の局面では、測定が連続的に実行されてもよい。主測定の局面では、測定、例えば距離測定又は層厚さ測定が、例えば時々のみ実行されてもよい。
【0025】
局面及び/又は結果は、ユーザーに連続的に、例えば光学表示装置に又は音響によっても示されてもよい。したがって、ユーザーは、例えば測定装置をそのグリップ領域で掴み、それを測定対象物に向け、アクチュエータ装置を押すことで前測定の局面を開始することができる。これによって、彼は例えばサーチ局面の表示を先ず受けてもよく、それにより測定装置がまだ正しく保持されていない又は正確に位置決めされていない又は遠すぎることを知る。したがって、検出局面が表示されたとき、ユーザーは、測定局面が表示され及び/又は既に行われるまで、測定装置をより正確に又はより近くに位置決めする。
【0026】
よって、ユーザーは、例えば携帯測定装置の場合に、測定対象物に沿って適切な接触面を走行し、連続的に測定を実行してもよい。彼が時々、携帯測定装置を不正確に保持した場合又は例えば恐らく彼が丸い表面に沿って走行しながら表面輪郭に正確に追従しないために測定装置を傾けることで表面を離れた場合、これが、例えば前測定の局面のための赤色インジケーターによってユーザーに迅速に示される。次に、ユーザーは測定装置をより正確に再位置決めし、主測定を継続してもよい。
【0027】
これによって、携帯測定装置は特に、その前端領域に、好ましくはデフレクタ(deflector)に接触輪郭を有してもよい。したがって、デフレクタは、一つの例を挙げると、不穏なテラヘルツ放射線をTHzトランシーバーから遠ざけ、もう一つには、輪郭線により測定対象物への正確な位置決めを助長する。これによって、例えば、所定の直径を有するプラスチック管などの所定の曲率を有する測定対象物への適切な位置決めを可能とする輪郭線のペアがあってもよい。したがって、成形パネルの前部における複数組の輪郭線が接触を正しく確立するために機能してもよい。ユーザーが携帯測定装置を傾けるとすぐに、それが前測定の局面としてユーザーに表示される、と言うのも反射したTHzビームが戻らない又は距離が大きくなりすぎるからである。
【0028】
したがって、携帯測定装置を用いても、ユーザーによる簡単な取り扱いと正確な測定、特に高精度の層厚さ測定が、苦労せずに可能である。
【0029】
数個の実施形態を用いて添付の図面によって本発明をさらに例示する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】前測定の局面における携帯THz測定装置を有する測定装置の斜視図である。
図2】主測定の局面における携帯THz測定装置を有する測定装置を示す図である。
図3】測定装置の概略ブロック図である。
図4】1つの実施形態に従うTHz測定方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び2の実施形態に従い、THz測定装置が、測定対象物3(例えば、プラスチック管)を測定するための携帯THz測定装置2を常に有する。携帯THz測定装置2は、様々なバリエーションで例として図1及び2に描かれている。
【0032】
携帯THz測定装置2は、ユーザーが掴んで操作するためのグリップ領域4と、好ましくは成形パネル25を有する接触領域である前端領域5を有する。図1によれば、携帯THz測定装置2は、例えば屈曲していてもよく、又は図2の実施形態によれば、細長く又は棒状に設計されてもよい。さらに、図2の実施形態に従う携帯THz測定装置2は、固定ユニットへのデータ接続無しに完全に携帯可能(持ち運び可能)であり、又は図1によれば、データ・電源ライン6を介して固定ユニットに接続されてもよい。さらに、例えば図2に示すような携帯ユニットはデータを固定ユニットに無線で送られてもよい。
【0033】
図3の概略ブロック図によれば、携帯THz測定装置2は、トランシーバー装置8、すなわちトランシーバー双極子を有し、又は好ましくは完全に電子的に、すなわちトランシーバー双極子として設計され、電子コントローラユニット10により制御されるトランシーバー8を有する。トランシーバー装置8は、特に0.01~10THz、すなわち10GHz~10THzの周波数範囲で、特にパルスTHz放射線として又はFM(周波数変調)で、電磁ビーム12(以下では、THz送信ビームと呼ぶ)を、光軸Aに沿って放射線円錐12aにおいて出力する。それが測定対象物3の外面3a及び内面3bに直角に当たると、THz放射線14は、トランシーバー装置8に向かって光軸Aに沿って戻って反射され、そこで検出される。こうして、トランシーバー装置8から境界面3aまで及び戻るまでのTHz放射線の所要時間が検出でき、これが、直接又はFM(周波数変調)の場合には周波数領域で(フーリエ変換を用いて)対応的に決定でき、変換され得る。よって、トランシーバー装置8のTHz測定から、電子制御装置10は、境界面3aからトランシーバー装置8までの距離dを決定することができる。
【0034】
前測定Iでは、THzトランシーバー8は、光軸Aに沿って第1のTHz送信ビーム112を放出する。それは、例えば1GHzの帯域幅b1を有する狭い周波数帯fb1で設計されている。この前測定Iでは、特に、サーチ局面において、測定において測定対象物3又は測定対象物3の基本的に直交する境界面3aが測定によって検出できるかどうかがまず決定され、次いで、検出局面Ibにて、現在の測定距離dが限界距離d_tresより低いかどうか決定される。d<d_tresの場合、次の主測定IIのための容認し得る距離が存在することが決定され、主測定IIが直接開始されるか、主測定が次に実行されてもよいことを示す指示信号が出力される。
【0035】
主測定IIでは、THz送信ビーム212は、例えば20,30又は40又は1000GHzもの帯域幅b2を有する第2の広い周波数帯fb2で放出される、と言うのも放出されるTHz送信ビームは測定対象物3に当たり、それにより測定対象物3の材料によって、特に反射及び場合により吸収によって減衰され又は弱められるからである。次に、主測定では、例えば層厚さd3が、測定対象物3の外面3aと内面3bの間の距離として決定される。更なる層厚さが対応する方法で、特に多層管の場合に決定されてもよい。さらに又はそれに代えて、他の幾何学的距離又は構造が測定されてもよい。さらに又はそれに代えて、例えば測定対象物3の吸収特性が例えば空間分解能で検査される分光計測が実行されてもよい。
【0036】
電子コントローラユニット10は、有利には出力信号S2を出力装置16に出力してもよく、出力装置16は、例えば異なる局面Ia、Ib、II又は状態をそれぞれ示す光学又は音響表示装置であってもよい。これは、例えば3つの異なるインジケーターフィールドに又は異なる表示を用いて共通のインジケーターフィールドに示される。
【0037】
さらに、好ましくは、結果が評価され、目標値と比較され、それにより例えば低すぎる層厚さが決定されたか又は一般に測定結果が出力装置16に表示されるかどうかについて携帯測定装置2又はその出力装置16に定性的な表示がなされる。分光学的検査の場合、例えば特定の物質、例えば特定の化合物が検出されたかどうかが表示されてもよい。
【0038】
限界距離d_tresが、特に前端領域5の成形パネル25の長さに調節されてもよい。したがって、成形パネル25は、例えば2つの接触輪郭線25a,25bを有してもよく、それらは正しく位置決めされると、測定対象物3の表面3aに接触する。前測定Iの局面で、十分な測定信号が決定されたとき、すなわち、測定信号の振幅が閾値を超え、ゆえに垂直な測定位置が達成され、さらに決定された距離dが限界距離d_tresを超えないとき、正しい接触位置が、接触センサーなどを用いずに、すなわち距離測定自体によって決定され、それで主測定IIの局面が次に開始される。
【0039】
前測定Iの局面では、特に、測定が、通常範囲内又はこのようなTHz距離測定のために割り当てられた測定帯域内、特にISM(工業、科学、医療)帯域内で実行できる。その際、測定は、例えば24GHz~24,25GHz又は122~123GHz又は244~126GHzで遮蔽も減衰も無く容認される。
【0040】
したがって、前測定Iの局面では、携帯測定装置2は例えばISM帯域に従い、その後すぐに、主測定IIの局面では、より広い帯域幅が、高めの分解能のために又は例えば層厚さのより正確な検出又は正確な分光学的検査のために設定される。
【0041】
アクチュエータ装置18がTHz測定装置2に、例えばグリップ領域4に、ユーザーが測定を開始するための例えば押しボタン又はスイッチの形態で設置されてもよい。図4は、本発明の実施形態に従う測定方法を例として示す。
【0042】
ステップSt0の開始に続いて、ユーザーはステップSt1でグリップ領域4を掴み、測定装置2を測定対象物3に向かう方向に持って行く。
【0043】
前測定Iの局面を開始するために、ユーザーはステップSt2でアクチュエータ装置18を作動させ、作動信号S1又は開始信号を与え、それで次にステップSt3で、コントローラ装置10は制御信号S2をTHzトランシーバー8に出力し、小さめの帯域幅b1を有する第1のTHz送信ビーム112を用いて最初に前測定I、特にサーチ局面を開始し、THzトランシーバー8は測定信号S3を生成する。
【0044】
コントローラ装置10は、測定信号S3を受信して、以下を決定する。
-ステップSt4で、測定対象物3が既に検出されたかどうか(サーチ局面Ia)-
-ステップSt5で、測定対象物3又はその境界面3aが検出されたかどうか、現在距離d及び
-ステップSt6で、現在距離dが限界距離d_tresより上にあるかどうか(検出局面Ib)
そして、コントローラ装置10は、インジケーター信号S3によって決定される局面を表示装置16に表示する。この結果、例えば測定信号が、測定距離dのための目盛りにも表示されてもよい。
【0045】
したがって、ユーザーは、場合によっては測定装置2を測定対象物3のより近くに位置決めしなければならないこと、又は例えば測定装置2が変な角度にあることを知る。よって、ステップSt7では、ユーザーは、携帯THz測定装置2を測定対象物3に向かって十分近くて正しい位置に、例えば成形パネル25又は輪郭線25a,25bが外面3aに完全に接触するまで、持って行く。
それにより、ステップSt8では、コントローラ装置10は、現在距離dが限界距離d_tresを超えないことを検出し、ステップSt9では、主測定IIが直ぐに開始されるか、又はユーザーに彼が次にアクチュエータ装置18を介して主測定IIを開始してもよいことが示される。
【0046】
主測定IIでは、ステップSt10で、広めの帯域幅を有する第2のTHz送信ビーム212を用いたより正確な検査、例えば層厚さd3若しくは別な幾何学的特性の正確な決定又は例えばステップSt11で実行される正確な分光学的試験が例えば表示装置16にて実行される。
【0047】
さらに、層厚さ又は壁厚の試験に加えて、一般的な構造検査又は幾何学組成の検査、並びに例えば化学物質がそれらの分光吸収特性に基づいて検出される分光学的試験が実行されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 THz測定装置
2 携帯THz測定装置
3 測定対象物、例えばプラスチック管
3a 測定対象物3の外面
3b 測定対象物3の内面
4 グリップ領域
5 前端領域、好ましくは接触領域
8 THzトランシーバー、例えばトランシーバー双極子
10 電子コントローラ装置
12 THz送信ビーム
12a 放出放射線の円錐
112 前測定の第1のTHz送信ビーム
212 主測定の第2のTHz送信ビーム、すなわち主測定送信ビーム
14 反射したTHz放射線
16 出力装置
18 作動装置
25 前端領域5の成形パネル
25a,25b 接触輪郭線
A 光軸
b1 例えば1Ghzの第1の小さめの帯域幅、前測定のより狭い第1の周波数帯
b2 例えば20,30又は40Ghzの第2の大きめの帯域幅、主測定のより広い第2の周波数帯
d 境界面3aからTHzトランシーバー8の距離
d_tres 限界距離
d3 層厚さ
e1 例えばサーチ局面Iaのための第1の表示
e2 例えば検出局面Ibのための第2の表示
I 前測定の局面
Ia 測定対象物3を検出するためのサーチ局面
Ib 検出局面
II 主測定の局面
S1 作動信号
S2 制御信号
S3 測定信号
S4 出力装置16への出力信号
St1~St11 方法のステップ
図1
図2
図3
図4