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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20220422BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
E04B1/94 M
E04B1/30 Z
E04B1/94 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021166036
(22)【出願日】2021-10-08
【審査請求日】2021-10-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519378768
【氏名又は名称】株式会社ホルツストラ一級建築士事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】591219393
【氏名又は名称】株式会社梓設計
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(72)【発明者】
【氏名】稲山 正弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕明
(72)【発明者】
【氏名】林 将利
(72)【発明者】
【氏名】本多 裕作
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-130021(JP,A)
【文献】特開平08-302818(JP,A)
【文献】特開2017-155413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の柱芯材を備えた第1柱部材と、前記第1柱部材の側面に接して設けられ、短期荷重を支持する木製の柱材を有する第2柱部材と、を有する柱と、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の第1梁と、
短期荷重を支持する木製の第2梁と、
を備え
前記第2梁は、前記第2柱部材を貫通して前記第2柱部材に接合される鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造。
【請求項2】
前記第1柱部材は、前記柱芯材と前記第2柱部材の間に、前記柱芯材の外周を取り囲む耐火被覆材を備える請求項1に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造。
【請求項3】
前記第1梁を前記鉄骨造と木造の混構造建築物の床または天井内に備え
前記第2梁を前記鉄骨造と木造の混構造建築物の室内に備える請求項1または2に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造。
【請求項4】
前記第1柱部材は、接合金具を備え、
前記第2柱部材は、前記柱材の内面に接合される鋼板を備え、
前記接合金具と前記鋼板とが接合具を介して接合される請求項1から3のいずれか一項に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造。
【請求項5】
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の柱芯材を備えた第1柱部材と、前記第1柱部材の側面に接して設けられ、短期荷重を支持する木製の柱材を有する第2柱部材と、を有する柱と、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の第1梁と、
短期荷重を支持する木製の第2梁と、
を備え、
前記第1柱部材は、接合金具を備え、
前記第2柱部材は、前記柱材の内面に接合される鋼板を備え、
前記接合金具と前記鋼板とが接合具を介して接合される鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造。
【請求項6】
前記第2梁は、一の前記第2柱部材を挟んでなる合わせ梁であり、且つ他の前記第2柱部材を貫通する通し梁であり、
前記第2梁及び一の前記第2柱部材は、篏合接合、接着剤による接合、及びビス接合のうち少なくも一つにより接合され、ラーメン構造をなす請求項1からのいずれか一項に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造。
【請求項7】
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の柱芯材を備えた第1柱部材と、前記第1柱部材の側面に接して設けられ、短期荷重を支持する木製の柱材を有する第2柱部材と、を有する柱と、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の第1梁と、
短期荷重を支持する木製の第2梁と、
を備え、
前記第2梁は、一の前記第2柱部材を挟んでなる合わせ梁であり、且つ他の前記第2柱部材を貫通する通し梁であり、
前記第2梁及び一の前記第2柱部材は、篏合接合、接着剤による接合、及びビス接合のうち少なくも一つにより接合され、ラーメン構造をなす鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造。
【請求項8】
前記合わせ梁内に耐力壁を備える請求項6または7に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造。
【請求項9】
前記第2梁は、前記第2柱部材を貫通する通し梁であり、
直交する二方向の複数の前記第2梁は、1本ずつ交互に段違いで前記第2柱部材に接合される請求項1からのいずれか一項に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造。
【請求項10】
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の柱芯材を備えた第1柱部材と、前記第1柱部材の側面に接して設けられ、短期荷重を支持する木製の柱材を有する第2柱部材と、を有する柱と、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の第1梁と、
短期荷重を支持する木製の第2梁と、
を備え、
前記第2梁は、前記第2柱部材を貫通する通し梁であり、
直交する二方向の複数の前記第2梁は、1本ずつ交互に段違いで前記第2柱部材に接合される鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する関心の高まりに伴い、これまで鉄骨造や鉄筋コンクリート造で建設されてきた中高層ビルを木造で建設したいという要望が増えている。4階建以上の建築物は、建築基準法により耐火建築物としなければならないと規定されているため、主要構造部を耐火構造にすることが求められる。
【0003】
これに関して、特許文献1に記載の発明では、軸力を支持する木質の芯材と、芯材の側面に長手方向に沿って設けられ、軸力を支持可能な鋼製支持部材と、を有する耐力木造柱が開示される。
また、特許文献2及び特許文献3に記載の発明では、荷重を支持する木製の芯材と、芯材の外周を取り囲む燃え止まり層と、燃え止まり層の外周を取り囲む木製の燃え代層と、を備えた柱及び梁を有する柱梁接合構造が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-122323号公報
【文献】特許5808590号公報
【文献】特許5925427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、木造建築物の柱や梁の表面において木材が見えるように構成したいという要望があるが、特許文献1に記載の発明では、柱と梁の表面には鋼製支持部材が見える構成であった。また、特許文献2及び特許文献3に記載の発明では、柱と梁の表面には燃え代層である木材が見えているものの、当該構成と鉄骨造や鉄筋コンクリート造で建設した柱や梁の表面に木材を貼る構成とで見た目が同様になるという不満があり、主要構造部である木製の柱や梁の表面が見えるように構成することが求められている。
また、中大規模木造建築物や木造高層建築物の場合、過大な長期荷重を支持するために主要構造部である木製の柱及び梁に大断面の木材が使用され、また当該主要構造部の接合において特殊な接合金物が使用されることが多く、工事費用が増大となるという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、荷重を支持する主要構造部である木製の柱及び梁を表面に見せることができ、工事費用の増大を抑止することができる鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造は、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の柱芯材を備えた第1柱部材と、前記第1柱部材の側面に接して設けられ、短期荷重を支持する木製の柱材を有する第2柱部材と、を有する柱と、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の第1梁と、
短期荷重を支持する木製の第2梁と、
を備え
前記第2梁は、前記第2柱部材を貫通して前記第2柱部材に接合される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造において、
前記第1柱部材は、前記柱芯材と前記第2柱部材の間に、前記柱芯材の外周を取り囲む耐火被覆材を備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造において、
前記第1梁を前記鉄骨造と木造の混構造建築物の床または天井内に備え
前記第2梁を前記鉄骨造と木造の混構造建築物の室内に備える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造において、
前記第1柱部材は、接合金具を備え、
前記第2柱部材は、前記柱材の内面に接合される鋼板を備え、
前記接合金具と前記鋼板とが接合具を介して接合される。
請求項5に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造は、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の柱芯材を備えた第1柱部材と、前記第1柱部材の側面に接して設けられ、短期荷重を支持する木製の柱材を有する第2柱部材と、を有する柱と、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の第1梁と、
短期荷重を支持する木製の第2梁と、
を備え、
前記第1柱部材は、接合金具を備え、
前記第2柱部材は、前記柱材の内面に接合される鋼板を備え、
前記接合金具と前記鋼板とが接合具を介して接合される。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造において、
前記第2梁は、一の前記第2柱部材を挟んでなる合わせ梁であり、且つ他の前記第2柱部材を貫通する通し梁であり、
前記第2梁及び一の前記第2柱部材は、篏合接合、接着剤による接合、及びビス接合のうち少なくも一つにより接合され、ラーメン構造をなす。
請求項7に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造は、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の柱芯材を備えた第1柱部材と、前記第1柱部材の側面に接して設けられ、短期荷重を支持する木製の柱材を有する第2柱部材と、を有する柱と、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の第1梁と、
短期荷重を支持する木製の第2梁と、
を備え、
前記第2梁は、一の前記第2柱部材を挟んでなる合わせ梁であり、且つ他の前記第2柱部材を貫通する通し梁であり、
前記第2梁及び一の前記第2柱部材は、篏合接合、接着剤による接合、及びビス接合のうち少なくも一つにより接合され、ラーメン構造をなす。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項6または7に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造において、
前記合わせ梁内に耐力壁を備える。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造において、
前記第2梁は、前記第2柱部材を貫通する通し梁であり、
直交する二方向の複数の前記第2梁は、1本ずつ交互に段違いで前記第2柱部材に接合される。
請求項10に記載の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造は、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の柱芯材を備えた第1柱部材と、前記第1柱部材の側面に接して設けられ、短期荷重を支持する木製の柱材を有する第2柱部材と、を有する柱と、
少なくとも長期荷重を支持する鋼製の第1梁と、
短期荷重を支持する木製の第2梁と、
を備え、
前記第2梁は、前記第2柱部材を貫通する通し梁であり、
直交する二方向の複数の前記第2梁は、1本ずつ交互に段違いで前記第2柱部材に接合される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、荷重を支持する主要構造部である木製の柱及び梁を表面に見せることができ、工事費用の増大を抑止することができる鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造の一実施形態の部分斜視図である。
図2】鋼製梁を省略した鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造を上から見た図である。
図3A】第1柱部材(耐火被覆材は省略されている)及び鋼製梁の部分斜視図である。
図3B】第1柱部材及び鋼製梁の部分斜視図である
図3C】ガセットプレートの例を示す図である。
図4A】鋼板をビスを介して木板に接合する例を示す分解斜視図である。
図4B】木板の例を示す図である。
図5】第1柱部材に木板を接合する例を示す分解斜視図である。
図6A】変形例1の複数の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造を連続して設ける例を示す図である。
図6B】変形例1の木製梁の継手部分の断面図である。
図7】変形例2の連続して設けられた複数の耐火構造が耐力壁を備える例を示す図である。
図8】変形例3の鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造(以下、耐火構造100)の実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、模式的に図示されたものである。
【0017】
図1は、本発明に係る耐火構造100の一実施形態の部分斜視図である。
図1に示すように、耐火構造100は、柱1と、第1梁である鋼製梁2A、2B(以下、鋼製梁2と表記する)と、第2梁である木製梁3A、3B(以下、木製梁3と表記する)を備える。
【0018】
図2に、鋼製梁2を省略した耐火構造100を上から見た図を示す。図1に示すZ軸上方向を当該上方向とする。
柱1は、第1柱部材10と、板状材41、42、43、44を有する第2柱部材40とを備える。
【0019】
図3Aは、第1柱部材10(後述する耐火被覆材12は省略されている)及び鋼製梁2の部分斜視図であり、図3Bは、第1柱部材10及び鋼製梁2の部分斜視図である。
第1柱部材10は、鋼製の柱芯材11と、耐火被覆材12と、複数のガセットプレート13を備える。
【0020】
柱芯材11は、四角柱状である。
また、柱芯材11は、長期荷重及び短期荷重を支持する主要構造部の一部として構成される。
ここで、長期荷重とは、建築物自体の重量からなる固定荷重や、人や家具等の重量からなる積載荷重等を含み、長期間にわたって常時作用する荷重である。
短期荷重とは、地震荷重や風荷重等を含み、作用時間が一時的である荷重である。
耐火被覆材12は、柱芯材11の外周のガセットプレート13が溶接されている箇所以外の部分において、柱芯材11の外周を取り囲むように設けられており、例えば石膏ボードが用いられる。
接合金具であるガセットプレート13は、柱芯材11の四面において、柱芯材11の側面に垂直な方向に突出するように溶接されており、第2柱部材40を第1柱部材10に接合するために用いられる。
また、ガセットプレート13には、図3Cに示すように、後述する高力ボルト51(接合具)を挿入するための孔部13bが複数設けられている。
【0021】
図2に示すように、板状材41、42、43、44は、第1柱部材10の四面に接するように設けられている。
板状材42は、柱材である木板421及び木板422を備える。
木板421及び木板422は、短期荷重を支持する主要構造部の一部として構成される。
木板421と、木板422には、例えばカラマツ集成材が用いられる。
また、板状材42は、さらに鋼板423と、鋼板424を備える。
【0022】
図4Aに鋼板423をビス52を介して木板421に接合する例を示す分解斜視図を示す。
木板421は、Z方向に長尺な略矩形状をなし、木製梁3を挿入するための切欠き421aと、高力ボルト51を挿入するための開口部421bが複数設けられている。
鋼板423は、Z方向の長さが木板421と略同一長さでY方向の長さが木板421よりも略半分短い略矩形状をなし、木板421を第1柱部材10に接合するために用いられる。鋼板423は、図4Aに示すように、ビス52を介して木板421に接合されている。つまり、鋼板423は、木板421の内面に接合されている。
また鋼板423には、木製梁3を挿入するための切欠き423aと、高力ボルト51を挿入するための孔部423bが複数設けられている。
【0023】
木板421には、図4Bに示すように、鋼板423が接合される面と反対側の板面に木製梁3と嵌合するための篏合部421cが設けられている。
【0024】
また、木板422は木板421と同様の構成であり、鋼板424は鋼板423と同様の構成である。つまり、木板422は、切欠き部422a、開口部422b及び篏合部422cを備え、鋼板424は、切欠き部424a及び孔部424bを備える。そして、木板422と鋼板424は、木板421と鋼板423と同様にビス52を介して接合されている。
また、板状材41、43、44は、板状材42と同様の構成である。
つまり、板状材41は、柱材である木板411及び木板412と、鋼板413と、鋼板414を備える。そして、木板411と鋼板413はビス52を介して接合されている。木板412と鋼板414はビス52を介して接合されている。
また、板状材43は、柱材である木板431及び木板432と、鋼板433と、鋼板434を備える。そして、木板431と鋼板433はビス52を介して接合されている。木板432と鋼板434はビス52を介して接合されている。
また、板状材44は、柱材である木板441及び木板442と、鋼板443と、鋼板444を備える。そして、木板441と鋼板443はビス52を介して接合されている。木板442と鋼板444はビス52を介して接合されている。
【0025】
図5に第1柱部材10に木板421、422を接合する際の分解斜視図を示す。
木板422の開口部422b、鋼板424の孔部424b、ガセットプレート13の孔部13b、鋼板423の孔部423b、木板421の開口部421bに順に高力ボルト51を挿入し、高力ボルト51によって、鋼板423、ガセットプレート13、及び鋼板424を接合する。
同様に、高力ボルト51によって、鋼板413、ガセットプレート13、及び鋼板414を接合する。
同様に、高力ボルト51によって、鋼板433、ガセットプレート13、及び鋼板434を接合する。
同様に、高力ボルト51によって、鋼板443、ガセットプレート13、及び鋼板444を接合する。
【0026】
図1に示すように、木板411に設けられる切欠き部411a及び木板412に設けられる切欠き部412aは、木板421に設けられる切欠き部421aの位置及び木板422に設けられる切欠き部422aの位置よりも低い位置に設けられる。
同様に、木板431に設けられる切欠き部431a及び木板432に設けられる切欠き部432aは、木板441に設けられる切欠き部441aの位置及び木板442に設けられる切欠き部442aの位置よりも低い位置に設けられる。
【0027】
木製梁3は、例えばカラマツ集成材が用いられ、短期荷重を支持する主要構造部の一部として構成される。
また、木製梁3Aは、図1に示すように、梁31A、32Aを備える。
また、木製梁3Bは、図1に示すように、梁31B、32Bを備える。
【0028】
図1図2に示すように、梁32Bは、木板412の切欠き部412a、鋼板414の切欠き部414a、鋼板413の切欠き部413a、及び木板411の切欠き部411aに順に挿入され、板状材41を貫通する。そして、梁32Bの板面の木板421に接する部分を篏合部421cに嵌合させる。梁32Bと篏合部421cが篏合する部分には、接着剤を塗布し、梁32Bをビス52を介して木板421に接合する。また、梁32Bの板面の木板442に接する部分を篏合部442cに嵌合させる。梁32Bと篏合部442cが篏合する部分には、接着剤を塗布し、梁32Bをビス52を介して木板442に接合する。
同様に、梁31Bは、木板431の切欠き部431a、鋼板433の切欠き部433a、鋼板434の切欠き部434a、及び木板432の切欠き部432aに順に挿入され、板状材43を貫通する。そして、梁31Bの板面の木板422に接する部分を篏合部422cに嵌合させる。梁31Bと篏合部422cが篏合する部分には、接着剤を塗布し、梁31Bをビス52を介して木板422に接合する。また、梁31Bの板面の木板441に接する部分を篏合部441cに嵌合させる。梁31Bと篏合部441cが篏合する部分には、接着剤を塗布し、梁31Bをビス52を介して木板441に接合する。
【0029】
また、梁31Aは、木板421の切欠き部421a及び鋼板423の切欠き部423a、鋼板424の切欠き部424a、及び木板422の切欠き部422aに順に挿入され、板状材42を貫通する。そして、梁31Aの板面の木板412に接する部分を篏合部412cに嵌合させる。梁31Aと篏合部412cが篏合する部分には、接着剤を塗布し、梁31Aをビス52を介して木板412に接合する。また、梁31Aの板面の木板431に接する部分を篏合部431cに嵌合させる。梁31Aと篏合部431cが篏合する部分には、接着剤を塗布し、梁31Aをビス52を介して木板431に接合する。
また、梁32Aは、木板442の切欠き部442a及び鋼板444の切欠き部444a、鋼板443の切欠き部443a、及び木板441の切欠き部441aに順に挿入され、板状材44を貫通する。そして、梁32Aの板面の木板411に接する部分を篏合部411cに嵌合させる。梁32Aと篏合部411cが篏合する部分には、接着剤を塗布し、梁32Aをビス52を介して木板411に接合する。また、梁32Aの板面の木板432に接する部分を篏合部432cに嵌合させる。梁32Aと篏合部432cが篏合する部分には、接着剤を塗布し、梁32Aをビス52を介して木板432に接合する。
【0030】
図1、2に示すように、梁31Bと梁32Bで板状材42及び板状材44を挟むように、梁31Aと梁32Aで板状材41及び板状材43を挟むように構成されている。つまり、木製梁3(第2梁)は、一の第2柱部材40を挟んでなる合わせ梁であり、且つ他の第2柱部材40を貫通する通し梁である。
【0031】
また、上記のように板状材41、42、43、44と、梁31A、32A、31B、32Bは、接合部を合わせ梁式モーメント抵抗接合部となるように接合されるラーメン構造である。当該ラーメン構造の接合部において、篏合接合及びビス接合を用いることにより耐力を確保することができる。また、接着剤による接合を用いることで初期剛性を高めることができる。
【0032】
また、高力ボルト51を挿入した後の開口部411b、412b、421b、422b、431b、432b、441b、442bには、当該開口部と略同形状の木栓が嵌められる。これにより、板状材41、42、43、44の表面において木材のみを見せることができる。
【0033】
鋼製梁2A、2Bは、図1に示すように、本実施形態では鉄骨のH形鋼である。なお、鋼製梁2の形状はこれに限らない。四角柱状であってもよい。
また、鋼製梁2は、長期荷重及び短期荷重を支持する主要構造部の一部として構成される。
鋼製梁2A、2Bは、直交するように接合され、鋼製梁2A、2Bが交差する位置の底面において、柱芯材11と接合されている。
【0034】
上記のように構成された耐火構造100において、鋼製梁2は上階と下階を区画する床及び天井内に設けられ、耐火構造100の鋼製梁2より下部が室内に露出されるため、室内においては木製梁3、木板411、412、421、422、431、432、441、442、及び開口部に嵌められた木栓のみを表面に見せることができる。
【0035】
<変形例1>
図6Aに、複数の耐火構造100を連続して設ける例を示す。図6Bに、図6Aに示すX軸及びY軸が成す面に平行な面における梁31Bの断面図を示す。
図6Bに示すように、耐火構造100aが備える梁31Baの端部には、切欠き部31Baaが設けられている。同様に、耐火構造100bが備える梁31Bbの端部には、切欠き部31Babが設けられている。
図6A図6Bに示すように、耐火構造100aと耐火構造100bを連続して設ける場合、梁31Bの継手部分において切欠き部31Baaと切欠き部31Babを嵌合させ、ビス52で固定する。
同様に、耐火構造100aが備える梁32Baと、耐火構造100bが備える梁32Bbを接合する。
また、梁31A、32Aの継手部分においても、上記梁31B、32Bと同様に接合することができる。
上記構成によって、耐火構造100を連続して設ける場合においても、室内においては木製梁3、木板411、412、421、422、431、432、441、442、及び木栓のみを表面に見せることができる。
【0036】
<変形例2>
図7に、連続して設けられた複数の耐火構造100が耐力壁6を備える例を示す。
図7に示す例においては、耐火構造100aの板状材43a、耐火構造100bの板状材41b、及び接合された梁31B、32Bにより構成される枠内に、耐力壁6が設けられる。
上記構成において、耐力壁6の上部は、梁31Bと梁32Bの間の空間に設けられている。つまり、梁31Bと梁32Bによる合わせ梁内に耐力壁6を備える。
また、耐力壁6の左右端(図7に示すY軸方向が左右方向)は、板状材43aまたは板状材41bにビス等を介して接合されている。なお、接合具はビスに限らない。
なお、耐力壁6は、梁31Aと梁32Aによる合わせ梁内に備えられてもよい。
耐火構造100に耐力壁6を備えることにより、耐力壁6に短期荷重を支持させることができ、その短期荷重分を柱芯材11が支持する短期荷重から差し引くことができるため、柱芯材11をより小断面の部材とすることができる。
【0037】
<変形例3>
図8に、変形例3の耐火構造100の部分斜視図を示す。
図8に示すように、本変形例の耐火構造100において、梁31Aは梁311A、312A、313Aを備える。また、梁32Aは梁321A、322A、323Aを備える。また、梁31Bは梁311B、312B、313Bを備える。また、梁32Bは梁321B、322B、323Bを備える。
図8に示す例においては、上方向(Z軸上方向)から、梁321A、311B、322A、312B、323A、313Bの順に第2柱部材40を貫通し、上記実施形態と同様に接合されている。
なお、上方向から梁311B、321A、312B、322A、313B、323Aの順に第2柱部材40を貫通し、上記実施形態と同様に接合されてもよい。
上記構成は、梁31A、32Bにおいても同様である。
つまり、直交する二方向の複数の木製梁3(第2梁)は、1本ずつ交互に段違いで第2柱部材40に接合される。
本変形例の構成により、木製梁3(第2梁)の意匠性をより高めることができる。
【0038】
以上、上記実施形態の耐火構造100は、少なくとも長期荷重を支持する鋼製の柱芯材11を備えた第1柱部材10と、第1柱部材10の側面に接して設けられ、短期荷重を支持する木製の柱材(木板411、412、421、422、431、432、441、442)を有する第2柱部材40と、を有する柱1と、少なくとも長期荷重を支持する鋼製の第1梁(鋼製梁2)と、短期荷重を支持する木製の第2梁(木製梁3)と、を備えてなる。
これによって、荷重を支持する主要構造部である木製の柱(木板411、412、421、422、431、432、441、442)及び木製梁3を表面に見せることができる。また、鋼製の柱芯材11を用いることで、中大規模木造建築物や木造高層建築物において、過大な長期荷重を支持するために主要構造部である木製の柱及び梁に大断面の木材を使用し、また当該主要構造部の接合において特殊な接合金物を使用することが不要となるため、工事費用の増大を抑止することができる鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造を提供できる。
【0039】
また、上記実施形態の耐火構造100は、柱芯材11の外周を取り囲む耐火被覆材12を備える。
これによって、柱1の耐火性をより高めることができる。
【0040】
また、上記実施形態の耐火構造100は、第1梁を鉄骨造と木造の混構造建築物の床または天井内に備える。
これによって、耐火構造100の鋼製梁2より下部が室内に露出されるため、室内においては木製梁3、木板411、412、421、422、431、432、441、442、及び木栓のみを表面に見せることができる。
【0041】
また、上記実施形態の耐火構造100において、第1柱部材10は、接合金具(ガセットプレート13)を備え、第2柱部材40は、柱材の内面に接合される鋼板413、414、423、424、433、434、443、444を備え、接合金具と鋼板413、414、423、424、433、434、443、444とが接合具(高力ボルト51)を介して接合される。
これにより、第2柱部材40を柱1により強固に接合することができる。
【0042】
また、上記実施形態の耐火構造100において、第2梁は、一の第2柱部材40を挟んでなる合わせ梁であり、且つ他の第2柱部材40を貫通する通し梁であり、第2梁及び一の第2柱部材40は、篏合接合、接着剤による接合、及びビス接合のうち少なくも一つにより接合され、ラーメン構造をなす。
これによって、第2梁及び第2柱部材40の接合において、水平荷重によるモーメントに抵抗することができる。
【0043】
また、上記実施形態の耐火構造100おいて、合わせ梁内に耐力壁6を備える。
これによって、耐力壁6に短期荷重を支持させることができ、その短期荷重分を柱芯材11が支持する短期荷重から差し引くことができるため、柱芯材11をより小断面の部材とすることができる。
【0044】
また、上記実施形態の耐火構造100おいて、第2梁は、第2柱部材40を貫通する通し梁であり、直交する二方向の複数の第2梁は、1本ずつ交互に段違いで第2柱部材40に接合される。
これによって、第2梁の意匠性をより高めることができる。
【0045】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造の例であり、これに限定されるものではない。その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
例えば、上記実施形態において、木板411、412、421、422、431、432、441、442、及び木製梁3としてカラマツ集成材を用いるとしたがこれに限らない。他の樹種の集成材を用いてもよいし、木材を用いた製材やLVL(Laminated Veneer Lumber)など他の木質材料を用いてもよい。
【0046】
また、上記実施形態において、耐火被覆材12として石膏ボードを用いるとしたがこれに限らない。難燃材注入合板やモルタル等の他の不燃材料を用いてもよい。
【0047】
また、上記実施形態において、板状材41、42、43、44と、梁31A、32A、31B、32Bは、篏合接合、接着剤による接合及びビス接合によって接合されるとしたがこれに限らない。接合部において十分な耐力が確保できれば、篏合接合、接着剤による接合、及びビス接合のうち少なくも一つにより接合されるとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
100 耐火構造(鉄骨造と木造の混構造建築物)
1 柱
2 鋼製梁(第1梁)
3、3A、3B 木製梁(第2梁)
31A、32A、31B、32B 梁
31Baa、31Bab 切欠き部
10 第1柱部材
11 柱芯材
12 耐火被覆材
13 ガセットプレート
13b 孔部
40 第2柱部材
41、42、43、44 板状材
411、412、421、422、431、432、441、442 木板(柱材)
411a 切欠き部
411b 開口部
411c 篏合部
413、414、423、424、433、434、443、444 鋼板
413a 切欠き部
413b 孔部
51 高力ボルト(接合具)
52 ビス
6 耐力壁
【要約】
【課題】荷重を支持する主要構造部である木製の柱及び梁を表面に見せることができ、工事費用の増大を抑止することができる鉄骨造と木造の混構造建築物の耐火構造を提供する。
【解決手段】耐火構造100は、少なくとも長期荷重を支持する鋼製の柱芯材11を備えた第1柱部材10と、第1柱部材10の側面に接して設けられ、短期荷重を支持する木製の柱材(木板411、412、421、422、431、432、441、442)を有する第2柱部材40と、を有する柱1と、少なくとも長期荷重を支持する鋼製の第1梁(鋼製梁2)と、短期荷重を支持する木製の第2梁(木製梁3)と、を備えてなる。
【選択図】図1
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8