(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20220422BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
H01L21/306 J
H01L21/304 642A
H01L21/304 648K
(21)【出願番号】P 2018051930
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2020-10-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592073938
【氏名又は名称】株式会社ケミカルアートテクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 宏章
(72)【発明者】
【氏名】細谷 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】竹本 憲一郎
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203448331(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/3063
H01L 21/308
H01L 21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱した処理液で基板を処理するための基板処理装置であって、
前記処理液を内部に貯留する処理槽と、
前記処理槽の外壁面の平面部に貼付された面状ヒーターと、
前記処理槽および/または前記面状ヒーターに接着によって固定され、前記面状ヒーターの外面を覆う
、板状、マット状またはブランケット状の断熱材と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記断熱材は、前記処理槽の外壁面の稜部との接着によって固定されている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記断熱材は、シーリング材によって前記処理槽および/または前記面状ヒーターに接着されている、
請求項1または2に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ等の基板を加熱した処理液で処理するための基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハのバッチ式洗浄装置では、加熱した薬液を処理槽に貯留し、基板を薬液に浸漬して処理が行われる。処理槽の外壁面には薬液を加熱するための面状ヒーターが貼着されており、例えば熱リン酸による窒化膜のウェットエッチングではリン酸を150℃程度にまで加熱・昇温する。特許文献1には、このような基板処理装置の例が記載されている。
【0003】
このような基板処理装置において、面状ヒーターの外側には、熱が外部に漏れないようにグラスウール等の断熱材が設けられる。一般的には、シート状の断熱材を処理槽の外形に合わせて複数枚組み合わせることで面状ヒーターの外面を隙間なく覆い、断熱材は、その周囲を粘着テープで巻くことで処理槽およびラバーヒーターに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、断熱材を所定の位置にあてがってずれないように支えながらテープを巻き付けることは、手間のかかる面倒な作業であった。また、施工状態によってはテープの剥離等が原因で断熱材が所定の位置からずれる可能性があった。また、断熱材と面状ヒーターの密着度合が処理槽の個体毎にばらついて処理槽壁面の温度分布の傾向が異なることがあり、場合によっては基板処理装置の個体毎に操業条件を調整して変える必要があった。
【0006】
本発明は上記を考慮してなされたものであり、断熱材の固定が容易で、処理装置個体間の断熱効果のばらつきが小さい基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の基板処理装置は、断熱材を接着によって処理槽および/または面状ヒーターに固定する。
【0008】
具体的には、本発明の基板処理装置は、加熱した処理液で基板を処理するための基板処理装置であって、前記処理液を内部に貯留する処理槽と、前記処理槽の外壁面の平面部に貼付された面状ヒーターと、前記処理槽および/または前記面状ヒーターに接着によって固定され、前記面状ヒーターの外面を覆う断熱材とを有する。この構成によって、基板処理装置製造時に断熱材の固定が容易となる。また、断熱材と面状ヒーターの密着度合のばらつきを抑えられる。
【0009】
好ましくは、前記断熱材がシート状の断熱材である。ここでシート状の断熱材とは、板状、マット状、ブランケット状などの面状なものをすべて含み、断熱材が剛性であるか柔軟であるかを問わない。これにより、処理槽の形状、サイズに合わせて断熱材を切断して貼り合せればよいので、処理槽を隙間なく覆うことが容易となる。
【0010】
好ましくは、前記断熱材は、前記処理槽の外壁面の稜部との接着によって固定されている。このように断熱材を面状ヒーターの外表面より温度が低い処理槽の稜部と接着することによって、接着部の熱劣化を抑えることができる。
【0011】
好ましくは、前記断熱材は、シーリング材によって前記処理槽および/または前記面状ヒーターに接着されている。耐熱性および高温環境下での耐久性に優れるからである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の基板処理装置によれば、断熱材を接着によって処理槽および/または面状ヒーターに固定するので、基板処理装置製造時に断熱材を固定する作業が容易となる。また、テープのみの固定に比べて、より確実に断熱材を固定することができる。また、断熱材と面状ヒーターの密着度合にばらつきが生じにくいので、同じ形状およびサイズの処理槽を用いる場合に、基板処理装置個体間の断熱効果のばらつきを抑えられる。結果として、基板処理装置個体間の処理槽壁面の温度分布のばらつきを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の基板処理装置の断面構造図である。
【
図2】実施形態の基板処理装置の処理槽を示す図である。
【
図3】実施形態の基板処理装置の処理槽にラバーヒーターを貼付した状態を示す図である。
【
図4】実施形態の基板処理装置の処理槽にシーリング材を塗工した状態を示す図である。
【
図5】実施形態の基板処理装置の処理槽およびラバーヒーターを断熱材で覆った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の基板処理装置の一実施形態を
図1~5に基づいて説明する。
【0015】
図1を参照して、本実施形態の基板処理装置10は、処理槽20と、処理槽の外壁面に貼り付けられたラバーヒーター30と、処理槽外壁面のラバーヒーター間に塗工されたシーリング材40と、処理槽およびラバーヒーターの外面を覆う断熱材50と、これらの全体を収容する筐体60とを有する。断熱材はシーリング材によって処理槽に接着されて固定されている。基板処理装置の使用時には、処理液Sが処理槽内に貯留されてラバーヒーターによって加熱され、ウェハWが処理液に浸漬されて処理される。
【0016】
図2には処理槽20が天地を逆にして示されている。処理槽は石英ガラスからなる。処理槽は平面部21が稜部22を介して繋ぎ合わされて形成され、上端(
図2では下端)にフランジ部23を有する。処理槽の底部中央には処理液を排出するための排出口24が設けられており、図示しない配管が接続される。
【0017】
図3を参照して、処理槽20の外壁面の平面部21には、ラバーヒーター30が貼り付けられている。ラバーヒーターはニクロム線等の発熱抵抗体をシリコーンゴム等で被覆した面状ヒーターである。各ラバーヒーターは、破線で囲まれた部分に発熱抵抗体のパターンが埋設されて発熱部31を構成しており、縁から幅10~15mmの縁部32には発熱抵抗体がない。ラバーヒーターの厚さは典型的には約1mmである。各ラバーヒーターの電極部33は、発熱抵抗体に電極リード線34の一端が接続された上から絶縁のためのラバー部材で覆われている。いくつかのラバーヒーターにはヒーター出力の制御のために熱電対等の温度センサが貼り付けられている。温度センサ取付部35は温度センサの上からラバー部材で覆われ、そこから温度センサリード線36が引き出される。
【0018】
図4を参照して、処理槽20の外壁面の稜部22およびラバーヒーターの縁部32の一部にシーリング材40が塗工されている。シーリング材の種類は、処理槽および断熱材50を接着によって接合することができ、所要の耐熱性を有していれば特に限定されず、一般に接着剤として市販されているものを用いることもできる。シーリング材は、好ましくはシリコーン系の弾性シーリング材を用いる。耐熱性および高温環境下での耐久性に優れるからである。シーリング材を塗布後、硬化前に
図5に示すように断熱材50を貼り付けることで、断熱材が処理槽に接着によって固定される。
【0019】
シーリング材40は、ラバーヒーター30の外表面全体に塗工してもよいが、好ましくは少なくともラバーヒーターの貼付されていない処理槽の稜部22に塗工し、より好ましくはラバーヒーターの発熱部31を除いた処理槽の稜部およびラバーヒーターの縁部に塗工する。基板処理装置10で熱リン酸処理を行う場合は、ラバーヒーターの外表面温度が200℃以上に上昇するので、より温度の低い処理槽の稜部に塗工することでシーリング材の経時劣化を抑えられるからである。
【0020】
図5を参照して、断熱材50はシート状のものが複数枚組み合わされて、処理槽20およびラバーヒーターの外面の全体を覆っている。断熱材の各片は、処理槽の平面部21の形状に合わせて、当該平面部より一回り大きく切断されている。
図4に示したようにシーリング材が処理槽の稜部22に塗工された場合は、断熱材の各片は外縁またはその近傍がシーリング材によって処理槽の稜部に接着される。これにより断熱材が剥がれにくく、また断熱材の中央部とラバーヒーターの発熱部31との隙間の、すなわち密着度合のばらつきが抑えられる。電極リード線34や温度センサリード線36は隣り合う断熱材間の隙間から引き出される。なお、ラバーヒーターの電極部33や温度センサ取付部35の形状によっては、断熱材50の当該電極部または温度センサ取付部に当接する部分に凹みを設けたり、切り欠き穴を設けてもよい。また、従来の基板処理装置と同様に、断熱材の上からさらに粘着テープ等を巻き付けてもよい。
【0021】
断熱材50としては、板状、マット状、ブランケット状などの厚さが一様な面状なものを好適に用いることができる。処理槽の形状やサイズに合わせて断熱材を切断して貼り合せることができるので、処理槽の外面を隙間なく覆うことが容易だからである。断熱材の材質は、所要の耐熱性があれば特に限定されず、セラミックス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、グラスウール、ロックウール等を用いることができる。
【0022】
図1に戻って、筐体60は上記処理槽、ラバーヒーター、断熱材を収容し、上端が処理槽20のフランジ部23の下面に接合している。筐体は各種耐熱性樹脂などで形成することができる。
【0023】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0024】
例えば、特許文献1の
図1に示されたようなオーバーフロー槽に対しても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 基板処理装置
20 処理槽
21 処理槽の外壁面の平面部
22 処理槽の外壁面の稜部
23 処理槽のフランジ部
24 排出口
30 ラバーヒーター(面状ヒーター)
31 ラバーヒーターの発熱部
32 ラバーヒーターの縁部
33 電極部
34 電極リード線
35 温度センサ取付部
36 温度センサリード線
40 シーリング材
50 断熱材
60 筐体
S 処理液
W ウェハ(基板)