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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】フェナントリジン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 221/12 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
C07D221/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018096615
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019199457
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (発行者) 日本化学会 (刊行物名)日本化学会第98春季年会(2018)講演予稿集DVD (発行日) 平成30年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】392000888
【氏名又は名称】株式会社合同資源
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】東郷 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】岸 篤司
(72)【発明者】
【氏名】宮本 充彦
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-511666(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111423(WO,A1)
【文献】特開2002-338516(JP,A)
【文献】Chen, Yan-Fu; Hsieh, Jen-Chieh,Synthesis of Polysubstituted Phenanthridines via Ligand-Free Copper-Catalyzed Annulation,Organic Letters,2014年,16(17),4642-4645
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 221/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式(1)に基づいてイミン化合物と、ヨウ素、一塩化ヨウ素、N-ヨードコハク酸イミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントインの何れかからなるヨウ素化剤とを混合することにより、フェナントリジン化合物を製造することを特徴とするフェナントリジン化合物の製造方法。
【化1】
・・・・・・・・・・(1)
ここで、Rは、脂肪族基又は芳香族基、R~Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、フェノキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、これらが互いに結合して、芳香族又は非芳香族の環を形成してもよい。
【請求項2】
以下の化学式(2)に基づいて、ニトリル化合物と、RMとヨウ素、一塩化ヨウ素、N-ヨードコハク酸イミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントインの何れかからなるヨウ素化剤とを混合することにより、フェナントリジン化合物を製造することを特徴とするフェナントリジン化合物の製造方法。
【化2】
・・・・・・・・・・(2)
ここで、RMは有機金属化合物として示される化合物である。Rは、脂肪族基又は芳香族基、R~Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、フェノキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、これらが互いに結合して、芳香族又は非芳香族の環を形成してもよい。Mはリチウム、MgX、ZnX(Xは、ハロゲン原子)である。
【請求項3】
以下の化学式(2)に基づいて、ニトリル化合物と、RLiとヨウ素、一塩化ヨウ素、N-ヨードコハク酸イミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントインの何れかからなるヨウ素化剤とを混合することにより、フェナントリジン化合物を製造することを特徴とする請求項2記載のフェナントリジン化合物の製造方法。
【化2】
・・・・・・・・・・(2)
ここで、Rは、脂肪族基又は芳香族基、R~Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、フェノキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、これらが互いに結合して、芳香族又は非芳香族の環を形成してもよい。
【請求項4】
以下の化学式(2)に基づいて、ニトリル化合物と、RMgXとヨウ素、一塩化ヨウ素、N-ヨードコハク酸イミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントインの何れかからなるヨウ素化剤とを混合することにより、フェナントリジン化合物を製造することを特徴とする請求項2記載のフェナントリジン化合物の製造方法。
【化2】
・・・・・・・・・・(2)
ここで、Rは、脂肪族基又は芳香族基、R~Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、フェノキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、これらが互いに結合して、芳香族又は非芳香族の環を形成してもよい。Xはハロゲン原子である。
【請求項5】
中間生成物として、以下の化学式(3)に基づいたイミン化合物を生成し、当該イミン化合物と、ヨウ素化剤とを混合することにより、フェナントリジン化合物を製造すること
を特徴とする請求項2記載のフェナントリジン化合物の製造方法。
【化3】
・・・・・・・・・・(3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェナントリジン化合物の製造方法に関し、特に日本国内において量産可能な資源であるヨウ素を積極的に活用することで、製造容易性を向上させ、ひいては製造コストを低減させる上で好適なフェナントリジン化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェナントリジン化合物は、天然由来の有機化合物であり、抗腫瘍特性等を始めとした生物学的に活性なアルカロイドからなる。フェナントリジン化合物は、窒素を含有し、6員環が3個からなる複素環化合物として構成される。フェナントリジンは、高い分極率、高い電子親和力を示すことから、インターカレーションを通じてDNAに強い親和性を示すことは、従来からよく知られている。
【0003】
このため、フェナントリジン化合物の製造方法の研究は従来から進められており、中でも良く知られているフェナントリジン化合物の製造方法は、例えば以下の化学式(4)によるものがある。
【0004】
【化4】
・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
この化学式(4)による方法は、2-イソシアノビアリールに対してラジカルを媒介させて環化させていく。中心にラジカル活性させたイミノ炭素により他の芳香族を攻撃させることにより、3個の6員環を形成させるものである(非特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Zhang, B.; Muck-Lichtenfeld, C.; Daniliuc, C. G.; Studer, A. Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 10792-10795.
【文献】Wang, Q.; Dong, X.; Xiao, T.; Zhou, L. Org. Lett. 2013, 15, 4846-4849.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した非特許文献1、2の開示技術によれば、2-イソシアノビアリールを準備する必要があるところ、原料コストが上がってしまう場合があった。その点、イミン化合物は比較的安価に入手することができる。またヨウ素は、日本国内において量産可能な資源であることから安価に入手することができ、しかも化学的に取扱容易性に優れている。このため、イミン化合物とヨウ素を使用することでフェナントリジン化合物をより安価に製造できる可能性がある。
【0007】
しかしながら、イミン化合物とヨウ素を使用することでフェナントリジン化合物を製造する方法について、実験的にその有効性は立証されていなかった。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、フェナントリジン化合物の製造方法において、特に日本国内において量産可能な資源であるヨウ素を積極的に活用することで、製造容易性を向上させ、ひいては製造コストを低減させる上で好適なフェナントリジン化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係るフェナントリジン化合物の製造方法は、以下の化学式(1)に基づいてイミン化合物と、ヨウ素、一塩化ヨウ素、N-ヨードコハク酸イミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントインの何れかからなるヨウ素化剤とを混合することにより、フェナントリジン化合物を製造することを特徴とするフェナントリジン化合物の製造方法。
【化1】
・・・・・・・・・・(1)
ここで、Rは、脂肪族基又は芳香族基、R~Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、フェノキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、これらが互いに結合して、芳香族又は非芳香族の環を形成してもよい。
【0010】
請求項2に係るフェナントリジン化合物の製造方法は、以下の化学式(2)に基づいて、ニトリル化合物と、RMとヨウ素、一塩化ヨウ素、N-ヨードコハク酸イミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントインの何れかからなるヨウ素化剤とを混合することにより、フェナントリジン化合物を製造することを特徴とするフェナントリジン化合物の製造方法。
【化2】
・・・・・・・・・・(2)
ここで、RMは有機金属化合物として示される化合物である。Rは、脂肪族基又は芳香族基、R~Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、フェノキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、これらが互いに結合して、芳香族又は非芳香族の環を形成してもよい。Mはリチウム、MgX、ZnX(Xは、ハロゲン原子)である。
【0011】
請求項3に係るフェナントリジン化合物の製造方法は、請求項2記載の発明において、以下の化学式(2)に基づいて、ニトリル化合物と、RLiとヨウ素、一塩化ヨウ素、N-ヨードコハク酸イミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントインの何れかからなるヨウ素化剤とを混合することにより、フェナントリジン化合物を製造することを特徴とする。
【化2】
・・・・・・・・・・(2)
ここで、Rは、脂肪族基又は芳香族基、R~Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、フェノキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、これらが互いに結合して、芳香族又は非芳香族の環を形成してもよい。
【0012】
請求項4に係るフェナントリジン化合物の製造方法は、請求項2記載の発明において、以下の化学式(2)に基づいて、ニトリル化合物と、RMgXとヨウ素、一塩化ヨウ素、N-ヨードコハク酸イミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントインの何れかからなるヨウ素化剤とを混合することにより、フェナントリジン化合物を製造することを特徴とする。
【化2】
・・・・・・・・・・(2)
ここで、Rは、脂肪族基又は芳香族基、R~Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、フェノキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、これらが互いに結合して、芳香族又は非芳香族の環を形成してもよい。Xはハロゲン原子である。
【0013】
請求項5に係るフェナントリジン化合物の製造方法は、請求項2記載の発明において、中間生成物として、以下の化学式(3)に基づいたイミン化合物を生成し、当該イミン化合物と、ヨウ素化剤とを混合することにより、フェナントリジン化合物を製造することを特徴とする。
【化3】
・・・・・・・・・・(3)
【発明の効果】
【0014】
上述した構成からなる本発明によれば、特に日本国内において量産可能な資源であるヨウ素を積極的に活用することで、製造容易性を向上させ、ひいては製造コストを低減させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るフェナントリジン化合物の製造方法について詳細に説明する。
【0016】
本発明を適用したフェナントリジン化合物の製造方法は、溶媒中で、以下の化学式(1)に基づいてイミン化合物と、ヨウ素化剤とを混合する。
【0017】
【化1】
・・・・・・・・・・(1)
ここで、R1は、脂肪族基又は芳香族基である。
【0018】
脂肪族基は、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基を示す。脂肪族が置換されている場合には、置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1又は複数である。
【0019】
また脂肪族基において、置換してもよい基としてはハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基等が挙げられる。
【0020】
芳香族基は、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、ビナフチル基、アズレニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フラレニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、ベンゾチアゾリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
【0021】
この芳香族基は置換されていてもよく、この場合の置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1又は複数である。
【0022】
また、芳香族基について、置換してもよい基としてはハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基などが挙げられる。
【0023】
2~R9は、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐状の炭素数1~12のアルコキシ基、フェノキシ基、シアノ基又はニトロ基であり、これらが互いに結合して、芳香族又は非芳香族の環を形成してもよい。
【0024】
2~R9において、置換されていてもよい芳香族基の詳細は上述と同様である。
【0025】
ヨウ素化剤は、ヨウ素、一塩化ヨウ素、N-ヨードコハク酸イミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン等である。
【0026】
溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に限定されない。この溶媒の例としては、炭化水素類(n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン等)等である。溶媒は、1種又は2種以上を適宜混合して用いてもよい。
【0027】
本発明を適用したフェナントリジン化合物の製造方法における合成条件としては、ヨウ素化剤を、イミン化合物に対しモル比約1~約5当量で混合する。反応温度は、溶媒の沸点以下の温度とされていることが望ましく、好適には20℃~100℃である。反応時間は、15分~24時間程度とされていることが望ましい。
【0028】
このようなフェナントリジン化合物の製造方法の反応機構について説明する。反応機構は、化学式(5)に基づいて進行する。
【0029】
【化5】
・・・・・・・・・・(5)
【0030】
反応は化学式(5)に示すように、まず最初にニトリル化合物(a)とR1Mとの反応によりイミノ化合物(b)を生成する。
次に、このイミノ化合物(b)とヨウ素化剤との反応により、イミノ窒素原子が近接した芳香族炭素と結合し環を形成し、フェナントリジン化合物(e)が生成されることとなる。この環化反応は、ヨウ素化剤がイミノ窒素に作用し、イミノラジカル中間体(c)を形成することにより進行していると推定される。
【0031】
以下の一般式(2)に基づいて、ニトリル化合物と、R1Mとヨウ素化剤とを混合することにより、フェナントリジン化合物を製造するようにしてもよい。
【0032】
【化2】
・・・・・・・・・・(2)
【0033】
ここで、R1及びR2~R9、ヨウ素化剤の詳細は、上述と同様であるため、以下での説明を省略する。また混合するR1Mは、R1Li、R1MgX(Xは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子)、R1ZnX(Xは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子)などである。R1Liの例としては、アルキルリチウム(メチルリチウム、n-ブチルリチウム等)やアリールリチウム(フェニルリチウム、4-フルオロフェニルリチウム、4-クロロフェニルリチウム、1-ナフチルリチウム等)などがある。R1MgXの例としては、アルキルマグネシウムクロライド(メチルマグネシウムクロライド、n-ブチルマグネシウムクロライド等)、アリールマグネシウムクロライド(フェニルマグネシウムクロライド、4-フルオロフェニルマグネシウムクロライド、4-クロロフェニルマグネシウムクロライド、1-ナフチルマグネシウムクロライド等)、アルキルマグネシウムブロマイド(メチルマグネシウムブロマイド、n-ブチルマグネシウムブロマイド等)、アリールマグネシウムブロマイド(フェニルマグネシウムブロマイド、4-フルオロフェニルマグネシウムブロマイド、4-クロロフェニルマグネシウムブロマイド、1-ナフチルマグネシウムブロマイド等)、アルキルマグネシウムヨージド(メチルマグネシウムヨージド、n-ブチルマグネシウムヨージド等)、アリールマグネシウムヨージド(フェニルマグネシウムヨージド、4-フルオロフェニルマグネシウムヨージド、4-クロロフェニルマグネシウムヨージド、1-ナフチルマグネシウムヨージド等)である。R1ZnXの例としては、アルキル亜鉛クロライド(メチル亜鉛クロライド、n-ブチル亜鉛クロライド等)、アリール亜鉛クロライド(フェニル亜鉛クロライド、4-フルオロフェニル亜鉛クロライド、4-クロロフェニル亜鉛クロライド、1-ナフチル亜鉛クロライド等)、アルキル亜鉛ブロマイド(メチル亜鉛ブロマイド、n-ブチル亜鉛ブロマイド等)、アリール亜鉛ブロマイド(フェニル亜鉛ブロマイド、4-フルオロフェニル亜鉛ブロマイド、4-クロロフェニル亜鉛ブロマイド、1-ナフチル亜鉛ブロマイド等)、アルキル亜鉛ヨージド(メチル亜鉛ヨージド、n-ブチル亜鉛ヨージド等)、アリール亜鉛ヨージド(フェニル亜鉛ヨージド、4-フルオロフェニル亜鉛ヨージド、4-クロロフェニル亜鉛ヨージド、1-ナフチル亜鉛ヨージド等)である。ニトリル化合物にR1Mを混合した後、水を加えることにより以下の化学式(6)に基づいてイミン化合物が中間生成物として生成される。このイミン化合物に対してヨウ素化剤を反応させると化学式(1)と同様にフェナントリジン化合物が生成される。
【0034】
【化6】
・・・・・・・・・(6)
【0035】
ちなみに、この中間生成物としてイミン化合物が生成されることは必須ではなく、途中段階で瞬間的にイミン化合物が仮に生成されているとしても、ニトリル化合物から直接フェナントリジン化合物が生成されるものであってもよい。
【0036】
また、本発明に用いるイミン化合物は、上記のニトリル化合物にR1Mとの反応によるものに限定されることなく、例えば、対応するアミン化合物の酸化反応(化学式7)、ケトン化合物とアミン化合物の反応(化学式8)等によっても製造することができる。得られたイミン化合物は単離することなく、ヨウ素化剤と反応させることにより、フェナントリジン化合物を製造してもよい。
【0037】
【化7】
・・・・・・・・・・(7)
【化8】
・・・・・・・・・・(8)
【実施例
【0038】
実施例1では、アルゴンガス雰囲気下、100 mLの2口フラスコに芳香族イミン(1.0 mmol)、テトラヒドロフラン(4.0 mL)を加え、ヨウ素化剤としてヨウ素(3.0 mmol)、塩基として炭酸カリウム(3.0 mmol)を加え、60 ℃で5.5時間撹拌した。反応終了後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、酢酸エチル(10 mL×3回)で分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)にて精製を行い、3-メチル-6-フェニルフェナントリジン(収率88%)を白色固体として得た。
【0039】
【化9】
【0040】
アルゴンガス雰囲気下、100 mLの2口フラスコに芳香族イミン(1.0 mmol)、テトラヒドロフラン(4.0 mL)を加え、ヨウ素化剤として1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン(DIH)、もしくはN-ヨードこはく酸イミド(NIS)を加え、60 ℃で1時間撹拌した。反応終了後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、酢酸エチル(10 mL×3回) で分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)にて精製を行い、主生成物として3-メチル-6-フェニルフェナントリジン、副生成物として8-メチル-6-フェニルフェナントリジンを得た。それぞれの収率は以下の表の通りである。
【0041】
【化10】
【表1】
【0042】
アルゴンガス雰囲気下、100 mLの2口フラスコに芳香族イミン(1.0 mmol)、溶媒(4.0 mL)を加え、ヨウ素化剤としてN-ヨードこはく酸イミド(2.1 mmol)を加え、タングステンランプ(200 W)照射下、1時間撹拌した。反応終了後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、酢酸エチル(10 mL×3回) で分液抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)にて精製を行い、3-メチル-6-フェニルフェナントリジンを得た。それぞれの収率は以下の表の通りである。
【0043】
【化11】
【表2】
【0044】
アルゴンガス雰囲気下、100 mLの2口フラスコに芳香族ニトリル (1.0 mmol)、テトラヒドロフラン(4.0 mL)を加え、氷冷下、R1Li(2.0 mmol)を加え15分間撹拌した。水(4.0 mL)、ヨウ素(4.0 mmol)、および炭酸カリウム(3.0 mmol)を加え60 ℃で2時間撹拌した。反応終了後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、酢酸エチル(10 mL×3回)で分液抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)にて精製を行い、フェナントリジン化合物を得た。なお、合成した各化合物の収率は以下の表の通りである。
【0045】
【化12】
【表3】
【0046】
アルゴンガス雰囲気下、100 mLの2口フラスコに芳香族ニトリル (1.0 mmol)、テトラヒドロフラン(4.0 mL)を加え、氷冷下、R1Li(2.0 mmol)を加え15分間撹拌した。水(4.0 mL)、ヨウ素(4.0 mmol)、および炭酸カリウム(3.0 mmol)を加え60 ℃で2時間撹拌した。反応終了後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、酢酸エチル(10 mL×3回)で分液抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)にて精製を行い、フェナントリジン化合物を得た。なお、合成した各化合物の収率は以下の表の通りである。
【0047】
【化13】
【表4】
【0048】
アルゴンガス雰囲気下、100 mLの2口フラスコに芳香族ニトリル (1.0 mmol)、テトラヒドロフラン(4.0 mL)を加え、氷冷下、R1Li(2.0 mmol)を加え15分間撹拌した。水(4.0 mL)、ヨウ素(4.0 mmol)、および炭酸カリウム(3.0 mmol)を加え60 ℃で2時間撹拌した。反応終了後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、酢酸エチル(10 mL×3回)で分液抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)にて精製を行い、フェナントリジン化合物を得た。なお、合成した各化合物の収率は以下の表の通りである。
【0049】
【化14】
【表5】
【0050】
アルゴンガス雰囲気下、100 mLの2口フラスコに芳香族ニトリル (1.0 mmol)、テトラヒドロフラン(4.0 mL)を加え、氷冷下、R1Li(2.0 mmol)を加え15分間撹拌した。水(4.0 mL)、ヨウ素(4.0 mmol)、および炭酸カリウム(3.0 mmol)を加え60 ℃で2時間撹拌した。反応終了後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、酢酸エチル(10 mL×3回)で分液抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)にて精製を行い、フェナントリジン化合物を得た。なお、合成した各化合物の収率は以下の表の通りである。
【0051】
【化15】
【表6】
【0052】
アルゴンガス雰囲気下、100 mLの2口フラスコに芳香族ニトリル (1.0 mmol)、テトラヒドロフラン(4.0 mL)を加え、氷冷下、エチルマグネシウムブロマイド(2.0 mmol)を加え15分間撹拌した。水(4.0 mL)、N-ヨードこはく酸イミド(2.1 mmol)を加え60 ℃で2時間撹拌した。反応終了後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、酢酸エチル(10 mL×3回)で分液抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)にて精製を行い、フェナントリジン化合物を得た。なお、合成した各化合物の収率は以下の表の通りである。
【0053】
【化16】
【表7】