(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】釣竿および釣竿の製造方法
(51)【国際特許分類】
A01K 87/00 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
A01K87/00 630A
(21)【出願番号】P 2018028452
(22)【出願日】2018-02-21
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】500375774
【氏名又は名称】株式会社ゼナック
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【氏名又は名称】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 圭介
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-314139(JP,A)
【文献】特開2010-104263(JP,A)
【文献】特開2001-136869(JP,A)
【文献】特開2000-312547(JP,A)
【文献】特開2000-166426(JP,A)
【文献】特開2000-093559(JP,A)
【文献】特開平11-151056(JP,A)
【文献】特開平06-276897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維が概ね軸方向に指向する中実のソリッド体と、
前記ソリッド体の炭素繊維の弾性率より大きな弾性率を有する炭素繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂からなり、前記ソリッド体の表面に巻装された第1のプリプレグと
、
前記ソリッド体の炭素繊維の弾性率以上、かつ第1のプリプレグの炭素繊維の弾性率より小さい弾性率を有する炭素繊維を合成樹脂に含浸させた繊維強化樹脂からなり、前記第1のプリプレグの表面に巻装された第2のプリプレグとを有することを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記ソリッド体の炭素繊維の弾性率以上の弾性率を有する炭素繊維を合成樹脂に含浸させた繊維強化樹脂からなり、前記第2のプリプレグの表面に巻装された第3のプリプレグを有する
請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記ソリッド体の炭素繊維は、20~30ton/mm2の弾性率を有する請求項1
または請求項2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記第1のプリプレグの炭素繊維は、30~60ton/mm2の弾性率を有する
請求項3に記載の釣竿。
【請求項5】
前記第2のプリプレグの炭素繊維は、20~30ton/mm2 の弾性率を有する
請求項4に記載の釣竿。
【請求項6】
炭素繊維が概ね軸方向に指向する中実のソリッド体に、前記ソリッド体の炭素繊維の弾性率より大きな弾性率を有する炭素繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂からなる第1のプリプレグを巻装
し、前記第1のプリプレグに前記ソリッド体の炭素繊維の弾性率以上、かつ第1のプリプレグの炭素繊維の弾性率より小さい弾性率を有する炭素繊維を合成樹脂に含浸させた繊維強化樹脂からなる第2のプリプレグを巻装する釣竿の製造方法であって、
前記第1のプリプレグの裏面にあらかじめ塗布された熱硬化性樹脂と同じ材質の熱硬化性樹脂を前記ソリッド体の表面に塗布する工程と、
該ソリッド体を15度~25度の温度に保った状態で所定時間放置することにより前記ソリッド体に塗布された熱硬化性樹脂を半硬化状態にする工程と、
前記第1のプリプレグを前記ソリッド体の表面に巻装して、130度~140度の温度で前記第1のプリプレグの裏面の熱硬化性樹脂と前記ソリッド体の表面の熱硬化性樹脂を硬化させることにより互いに接着する工程と、
前記第1のプリプレグに前記第2のプリプレグを巻装する工程とを有することを特徴とする釣竿の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海釣りにおいて主にジギングなどのルアーフィッシングに用いられる釣竿に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海釣りにおいて餌を用いた釣りが主流であったが、最近では、ルアー(疑似餌)を用いた釣り(ルアーフィッシング)が人気を集めている。このルアーフィッシングには、主に青物の魚を狙うジギング、タイを狙うタイラバ、メバルを狙うメバリング、アジを狙うアジング、イカを狙うティップランやスッテなど、様々な釣法が提案されている。
【0003】
これらルアーフィッシングの中でも、ハマチ、ブリ、カツオを中心とした大物の青物等の魚を狙うジギングは、ライン(釣糸)の先に主に金属でできたジグと呼ばれるルアーを付けて、釣竿を上下にしゃくることによりジグをアジやイワシなどの小魚に見せかけて魚に喰わせる釣法である。そして、このジギングの中においても、ジグのフォールが重要となるスローピッチ、狭いヒットレンジの中でのショートピッチ、ロングジグでスタンダードなワンピッチなど、魚に喰わせるための様々なジグアクションが知られている。
【0004】
このジグアクションは、上述のように釣竿を上下にしゃくることにより行われるものであるが、ジグを海中で瞬発的に跳ね上げさせることが極めて重要であることから、釣竿は高弾性である必要がある。つまり、釣竿を高弾性にすると、釣竿の穂先の反発力がより大きなものとなり、その結果、釣竿をしゃくった際の力がラインを通じてジグに直接伝わりやすくなり、それだけジグが釣竿の動作に追随し易くなるため、釣竿の動作次第でジグを海中で自由自在に操作することができるのである。
【0005】
そして、このような高弾性の釣竿は、各釣具メーカーから種々提案されており、最近では高弾性を実現するために炭素繊維からなる中実のソリッド体を用いた釣竿が種々提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、高弾性の釣竿は、反発力が大きいというメリットを有する反面、破断強度が低くなって折れやすいというデメリットを有していた。つまり、高弾性の釣竿は反発力が大きく、様々なジグアクションを実現することができるが、破断強度が低く折れやすくなる。逆に破断強度を高めて折れにくい釣竿にしようとすると、反発力の低い柔らかい釣竿、もしくはただ硬いだけの棒のような釣竿になってしまうものであった。
【0008】
このため、従来のジギングでは、ルアーの操作性を重視して高弾性釣竿を使用する場合がほとんであるが、大物の青物等の魚がジグに喰いついて掛かった際、釣竿が折れることを防止するために釣竿をラインに平行になるように下方に傾けながら魚とファイトするスタイルにせざる得なかった。通常の釣法では、魚がかかった際には釣竿を上方に立てて、曲がり込んだ釣竿の復元力を利用しながら魚とファイトするスタイルであるが、このように釣竿を下方に傾けながらファイトするスタイルであると、ラインに過度な負荷がかかるためラインが切れやすくなるという問題があった。もとより、ラインを太くすれば切れにくくなるが、海釣りにおいてラインを太くすると、潮の流れに影響を受けやすくなったり、釣竿の動作をジグに伝えにくくなったりして、釣果に影響することから好ましくない。そして、何よりも、特にハマチ、ブリ、カツオなどの大物の青物等の魚は重量も大きい上に縦横無尽に速い速度で動き回るため、釣竿の力を使用せずにそれらの魚を釣り上げることはアングラー(釣り人)の体力を極めて消耗させるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、高弾性であって反発力を大きくすることができるとともに、破断強度を高めることができる釣竿を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、炭素繊維が概ね軸方向に指向する中実のソリッド体と、前記ソリッド体の炭素繊維の弾性率より大きな弾性率を有する炭素繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂からなり、前記ソリッド体の表面に巻装された第1のプリプレグとを有することを特徴とする。また、前記ソリッド体の炭素繊維は、20~30ton/mm2の弾性率を有する、あるいは、前記第1のプリプレグの炭素繊維は、30~60ton/mm2の弾性率を有するのが好ましい。
【0011】
これによれば、高弾性であって反発力を大きくすることができ、ジグの操作性を高めることが可能となる。また、破断強度を強くして折れにくくすることができ、魚が掛かった際、釣竿を上方を立てた状態でも魚の動きに追従してしなやかに曲がり込むことが可能となる。
【0012】
また、前記ソリッド体の炭素繊維の弾性率以上の弾性率を有する炭素繊維を合成樹脂に含浸させた繊維強化樹脂からなり、前記第2のプリプレグの表面に巻装された第3のプリプレグを有するのが好ましく、前記第2のプリプレグの炭素繊維は、20~30ton/mm2 の弾性率を有するのがより好ましい。これによれば、釣竿のねじれ剛性ならびに破断強度をより高めることができる。
【0013】
また、前記ソリッド体の炭素繊維の弾性率以上の弾性率を有する炭素繊維を合成樹脂に含浸させた繊維強化樹脂からなり、前記第2のプリプレグの表面に巻装された第3のプリプレグを有するのが好ましい。これによれば、釣竿を補強することができる。
【0014】
また、本発明に係る釣竿の製造方法は、炭素繊維が概ね軸方向に指向する中実のソリッド体に、前記ソリッド体の炭素繊維の弾性率より大きな弾性率を有する炭素繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂からなる第1のプリプレグを巻装する釣竿の製造方法であって、前記第1のプリプレグの裏面にあらかじめ塗布された熱硬化性樹脂と同じ材質の熱硬化性樹脂を前記ソリッド体の表面に塗布する工程と、該ソリッド体を15度~25度の温度に保った状態で所定時間放置することにより前記ソリッド体に塗布された熱硬化性樹脂を半硬化状態にする工程と、前記第1のプリプレグを前記ソリッド体の表面に巻装して、130度~140度の温度で前記第1のプリプレグの裏面の熱硬化性樹脂と前記ソリッド体の表面の熱硬化性樹脂を硬化させることにより互いに接着する工程とを有することを特徴とする。これによれば、第1のプリプレグをソリッド体の表面に巻装する作業が容易でありながら、ソリッド体と第1のプリプレグの層間剥離が生じることを防止することができ、本来の反発力や破断強度を保った釣竿を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高弾性であって反発力を大きくすることができ、ジグの操作性を高めることが可能となる。また、破断強度を強くして折れにくくすることができ、魚が掛かった際、釣竿を上方を立てた状態でも魚の動きに追従してしなやかに曲がり込むことが可能となる。このため、アングラーはジグを自由自在に操作することにより魚をより誘って喰わせることができるともに、魚が掛かったあとは釣竿を上方に立てながら釣竿の曲がり込むときの復元力を利用しながらファイトすることができる。このようにジグの操作性と魚とのファイトを両立させることによって、長時間の釣行や数釣り、大物の青物等の魚とのファイトにおいて、アングラーの負担を体力的にも精神的にも軽減することができ、ひいては、ジギングなどのルアーフィッシングにおける全く新しい釣り方を可能にし、釣りの新ジャンルを提案することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】釣竿の竿本体部を構成するソリッド体、第1のプリプレグ、第2のプリプレグ、並びに第3のプリプレグの展開状態を示す図である。
【
図4】釣竿のソリッド体に熱硬化性樹脂を塗布する(a)前の状態と(b)後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る釣竿の実施形態について
図1~
図4を参照しつつ説明する。
【0018】
本釣竿は、ハンドル部1と、該ハンドル部1の前側に配置される竿本体部2とからなり、ハンドル部1に対して竿本体部2を軸方向に差し込むことにより連結される。
【0019】
前記ハンドル部1は、前側に配置された前側グリップ部10と、後側に配置された後側グリップ部11と、前側グリップ部10と後側グリップ部11を連結する連結部12とからなる。これにより、アングラーは、前側グリップ部10を片手または両手で把持するとともに、後側グリップ部11を主に脇下等の胴体に当接させることによって釣竿全体を支承する。
【0020】
前記前側グリップ部10は、中央部にリール固定部10aが設けられるとともに、リール固定部10aの前側にネジ部10bが設けられており、リール固定部10aに図略のリールを当接させた状態でネジ部10bを後側にねじ込んでいくことによりリールを固定する。また、リール固定部10aの後側にはトリガー部10cが設けられており、アングラーが前側グリップを把持したときにトリガー部10cを指の間に配置することで釣竿を安定して把持することができる。
【0021】
なお、本実施形態では、ハンドル部1に対して竿本体部2を連結するものとしたが、ハンドル部1と竿本体部2があらかじめ一体に構成されていてもよい。
【0022】
前記竿本体部2は、ハンドル部1側の基端部が概ねストレート状に形成され、途中から先端部にかけて次第に径小になるように形成されており、軸方向に沿ってラインガイド2aが所定間隔ごとに設けられている。
【0023】
また、前記竿本体部2は、
図2に示すように、炭素繊維が概ね軸方向Xに指向した中実のソリッド体20から構成されている。このソリッド体20の炭素繊維は、20~30ton/mm2の弾性率を有しており、好ましくは24~26ton/mm2 の弾性率を有するのがよい。このようにソリッド体20を中実にすることにより、中空のものに比べて反発力と破断強度を高めることができる。具体的には、中空のソリッド体20の場合、中空であるがゆえに必然的に反発力と破断強度は低くなる。特にソリッド体20が曲がると断面は円形から楕円形に変形して、大きく曲がると変形に耐えられなくなり折れるものであった。このため、従来の中空のソリッド体は反発力や破断強度を高めるためにより直径が大きなものにする場合が多く(安い価格帯の釣竿はこのタイプである)、釣竿の操作性や重量に問題が生じていた。一方、中実のソリッド体20の場合、ソリッド体20が曲がっても断面が変形せず、また炭素繊維で構成することにより、反発力と破断強度を高めることができる上に、細くかつ軽い釣竿となる。但し、ソリッド体20を中実の炭素繊維で構成しただけでは、大物の青物等の魚を対象としたジギングにおいては反発力や破断強度は十分なものではなかった。
【0024】
そこで、本発明では、
図2に示すように、竿本体部2のソリッド体20の表面にシート状の第1のプリプレグ21が巻装されている。この第1のプリプレグ21は、ソリッド体20の概ね軸方向Xに指向した炭素繊維であって、かつソリッド体20の炭素繊維の弾性率より大きな弾性率を有する炭素繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂からなり、30~60ton/mm2の弾性率を有する。このように第1のプリプレグ21の炭素繊維の弾性率をソリッド体20の炭素繊維の弾性率を大きくすることによって、竿本体部2の反発力と破断強度をより高めることができる。また、第1のプリプレグ21は、巻装前の展開状態において、ソリッド体20と概ね同じ長さであって、ソリッド体20の先端部に向かって次第に細くなる略台形状に形成されており、先端部が径小となるソリッド体20に無理なく巻装することができる。
【0025】
また、竿本体部2の第1のプリプレグ21の表面にシート状の第2のプリプレグ22が巻装されている。この第2のプリプレグ22は、ソリッド体20の軸方向Xに概ね指向した炭素繊維であって、かつソリッド体20の炭素繊維の弾性率以上、かつ第1のプリプレグ21の炭素繊維の弾性率より小さい弾性率を有する炭素繊維を合成樹脂に含浸させた繊維強化樹脂からなり、20~30ton/mm2 の弾性率を有する。このように第2のプリプレグ22の弾性率を、前記ソリッド体20の炭素繊維の弾性率以上、かつ第1のプリプレグ21の炭素繊維の弾性率より小さい弾性率とすることによって、竿本体部2の反発力と破断強度をより一層高めることができる。また、第2のプリプレグ22は、第1のプリプレグ21の長さよりも短い長さであって、巻装前の展開状態において、ソリッド体20の先端部の方向に向かって些か細くなる略台形状に形成されており、ソリッド体20に無理なく巻装することができる。
【0026】
さらに、竿本体部2の第2のプリプレグ22の表面にシート状の第3のプリプレグ23が巻装されている。この第3のプリプレグ23は、ソリッド体20の概ね軸方向Xに指向した炭素繊維であって、かつ前記ソリッド体20の炭素繊維の弾性率以上の弾性率を有する炭素繊維を合成樹脂に含浸させた繊維強化樹脂からなり、20~30ton/mm2 の弾性率を有する。このように第3のプリプレグ23を第2のプリプレグ22の表面に巻装することにより釣竿本体を補強することができる。また、第3のプリプレグ23は、第2のプリプレグ22の長さよりも短い長さであって、巻装前の展開状態において長方形状に形成されるとともに、第2のプリプレグ22よりも先端部側にずれた位置で巻装される。
【0027】
而して、高弾性であって反発力を大きくすることができ、ジグの操作性を高めることが可能となる。また、破断強度を強くして折れにくくすることができ、魚が掛かった際、釣竿を上方を立てた状態でも魚の動きに追従してしなやかに曲がり込むことが可能となる。このため、アングラーはジグを自由自在に操作することにより魚を誘って喰わせることができるともに、魚が掛かったあとは釣竿を上方に立てながら釣竿の曲がり込むときの復元力を利用しながらファイトすることができる。このようにジグの操作性と魚とのファイトを両立させることによって、長時間の釣行や数釣り、大物の青物等の魚とのファイトにおいて、アングラーの負担を体力的にも精神的にも軽減することができ、ひいてはジギングなどのルアーフィッシングにおける新たな釣りのスタイルを実現することが可能となる。
【0028】
次に本釣竿の製造方法について説明する。
【0029】
(1)上述の形状および材質のソリッド体20、第1~第3のプリプレグ21、22、23を準備する。
【0030】
(2)第1のプリプレグ21の裏面にあらかじめ塗布された熱硬化性樹脂と同じ材質の熱硬化性樹脂をソリッド体20の表面に塗布する(
図4)。
【0031】
(3)該ソリッド体20を15度~25度の温度に保った状態で所定時間放置することによりソリッド体20に塗布された熱硬化性樹脂を半硬化状態にする。
【0032】
(4)第1のプリプレグ21をソリッド体20の表面に巻装して、130度~140度の温度で第1のプリプレグ21の熱硬化性樹脂とソリッド体20に塗布した熱硬化性樹脂を硬化させることにより互いに接着する。
【0033】
(5)あとは、第1のプリプレグ21の表面に第2のプリプレグ22を巻装したあと、第2のプリプレグ22の表面に第3のプリプレグ23を巻装する。
【0034】
一般に材料メーカから供給される第1のプリプレグ21は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が塗布された状態となっている。このため、従来の釣竿の製造方法では、ソリッド体20の表面に第1のプリプレグ21をそのまま巻装して、130度~140度の温度で第1のプリプレグ21の裏面にあらかじめ塗布された熱硬化性樹脂のみを硬化させることによりソリッド体20の表面に接着していた。
【0035】
しかしながら、第1のプリプレグ21の裏面にあらかじめ塗布された熱硬化性樹脂のみでは接着が不十分な場合があり、第1のプリプレグ21がソリッド体20から層間剥離を起こす可能性があった。特にジギング等では釣竿が大きく曲がることで、ルアー等をキャストし、魚を釣り上げるので、一度の釣りにおいてもかなりの回数の曲がりが生じ、また竿の根本まで曲げ込むといった負荷をかけるため、第1のプリプレグ21がソリッド体20から層間剥離を起こす可能性が高かった。
【0036】
そこで、ソリッド体20と第1のプリプレグ21の接着を強固なものとするため、ソリッド体20の表面にも第1のプリプレグ21の裏面にあらかじめ塗布された熱硬化性樹脂と同じ材質の熱硬化性樹脂を塗布することを考案したが、熱硬化性樹脂を塗布した直後は軟化状態にあって、第1のプリプレグ21を巻装する作業が困難である。
【0037】
このため、本発明では、ソリッド体20を15度~25度の温度に保った状態で所定時間(例えば、24時間)を放置することによりソリッド体20に塗布された熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたあと、第1のプリプレグ21をソリッド体20の表面に巻装する作業を行うこととした。
【0038】
これにより、第1のプリプレグ21をソリッド体20の表面に巻装する作業が容易でありながら、ソリッド体20と第1のプリプレグ21の層間剥離が生じることを防止することができ、本来の反発力や破断強度を保った釣竿を製造することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、第1のプリプレグ21の表面に第2のプリプレグ22および第3のプリプレグ23を巻装するものとしたが、第2のプリプレグ22や第3のプリプレグ23を巻装しなくてもよい。
【0040】
また、ソリッド体20に第1のプリプレグ21を巻装する際、ソリッド体20の表面に第1のプリプレグ21の裏面にあらかじめ塗布された熱硬化性樹脂と同じ材質の熱硬化性樹脂を塗布するものとしたが、ソリッド体20に該熱硬化性樹脂を塗布しなてくもよい。
【0041】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…ハンドル部
10…前側グリップ部
10a…リール固定部
10b…ネジ部
10c…トリガー部
11…後側グリップ部
12…連結部
2…竿本体部
2a…ラインガイド
20…ソリッド体
21…第1のプリプレグ
22…第2のプリプレグ
23…第3のプリプレグ