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特許7061809流動層を備えた太陽光集熱装置及びこれを用いた太陽光集熱方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】流動層を備えた太陽光集熱装置及びこれを用いた太陽光集熱方法
(51)【国際特許分類】
   F24S 20/30 20180101AFI20220422BHJP
   B01J 8/24 20060101ALI20220422BHJP
   B01J 8/26 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
F24S20/30
B01J8/24 311
B01J8/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019519197
(86)(22)【出願日】2018-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2018018005
(87)【国際公開番号】W WO2018212046
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2017097466
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100140394
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 康次
(72)【発明者】
【氏名】松原 幸治
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 篤
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 竜也
(72)【発明者】
【氏名】郷右近 展之
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/038553(WO,A1)
【文献】特開2014-181306(JP,A)
【文献】特開2016-044829(JP,A)
【文献】特許第5986589(JP,B2)
【文献】特開2015-086232(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104482663(CN,A)
【文献】国際公開第2015/048845(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24S 20/30
B01J 8/24
B01J 8/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層と照射部と気体導入部とが設けられた集熱容器を備えた太陽光集熱装置であって、
前記流動層は、前記集熱容器内に設けられた第1・第2開口部と、第1・第2開口部との間に設けられた第1仕切板と、第1仕切板によって仕切られつつ第1・第2開口部に接続された第1・第2流動空間と、第1・第2流動空間内の粒子と、を備え、
前記照射部は、前記集熱容器に設けられた窓を備え、かつ、該窓を通して、集光された太陽光を案内して前記粒子へ照射し、
前記気体導入部は、前記流動層に設けられた第1分散板と、第1分散板を通して気体を第1・第2流動空間に向け導入する第1・第2導入口とを備え、かつ、第1導入口から第1流動空間に導入する気体の線速度を、第2導入口から第2流動空間に導入する気体の線速度より異ならせることで、第1流動空間と第2流動空間との間で前記粒子の内循環流動を発生させ、
前記集熱容器は、前記粒子を導入・排出する粒子導入口及び粒子排出口と、前記流動層に接続された第1・第2ループシール部の少なくとも一方を更に備え、
第1ループシール部は、前記粒子導入口と第1流動空間とを接続して、第1流動空間へ前記粒子を供給し、
第2ループシール部は、第2流動空間と前記粒子排出口とを接続して、第2流動空間内の前記粒子を前記粒子排出口へ供給することを特徴とする太陽光集熱装置。
【請求項2】
前記集熱容器には、第1・第2ループシール部の双方が設けられ、
第1ループシール部は前記流動層の一方の側に設けられ、かつ、
第2ループシール部は前記流動層の他方の側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の太陽光集熱装置。
【請求項3】
前記照射部の前記窓は前記集熱容器の上部に設けられ、かつ、前記気体導入部の第1分散板は前記流動層の下部に設けられることを特徴とする請求項2に記載の太陽光集熱装置。
【請求項4】
第1ループシール部は、下部開口部と、該下部開口部より上方に延びた第2仕切板と、第2仕切板によって仕切られつつ前記下部開口部で互いに接続された第3・第4流動空間と、第4流動空間と前記流動層の第1流動空間とを区分する第1壁と、第4流動空間の上部に設けられ、第1流動空間に接続するシール出口と、を更に備え、
前記粒子導入口が第3流動空間の上部に接続されることで、新たな粒子が前記集熱容器の外部から第1ループシール部へ導入され、第3・第4流動空間及び前記シール出口を通して、前記流動層の第1流動空間へ案内されることを特徴とする請求項3に記載の太陽光集熱装置。
【請求項5】
第2ループシール部は、上部開口部と、該上部開口部より下方に延びた第3仕切板と、第3仕切板によって仕切られつつ前記上部開口部で互いに接続された第5・第6流動空間と、第5流動空間と前記流動層の第2流動空間とを区分する第2壁と、を更に備え、第5流動空間の下部に設けられ、第2流動空間に接続するシール入口と、を更に備え、
前記粒子排出口が第6流動空間の下部に接続されることで、前記流動層において内循環された前記粒子が前記シール入口から第2ループシール部内へ導入され、第5・第6流動空間を介して前記粒子排出口から前記集熱容器外部へ排出されることを特徴とする請求項3又は4に記載の太陽光集熱装置。
【請求項6】
前記気体導入部は、
第1ループシール部の下部に設けられた第2分散板と、
第2分散板を通して気体を第3・第4流動空間に向け導入する第3・第4導入口と、
を更に備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の太陽光集熱装置。
【請求項7】
前記気体導入部は、
第2ループシール部の下部に設けられた第3分散板と、
第3分散板を通して気体を第5流動空間に向け導入する第5導入口と、
を更に備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の太陽光集熱装置。
【請求項8】
前記太陽光集熱装置には、第1・第2搬送路と、蓄熱容器と、が更に設けられ、かつ、
第1搬送路は、前記粒子排出口と前記蓄熱容器とを連通して前記粒子を前記集熱容器から前記蓄熱容器へ搬送可能であり、
第2搬送路は、前記蓄熱容器と前記粒子導入口とを連通して前記粒子を前記蓄熱容器から前記集熱容器へ搬送可能であることを特徴とする請求項2~7のいずれかに記載の太陽光集熱装置。
【請求項9】
前記粒子として、石英砂、鉄酸化物、及び、炭化珪素の群のうち少なくとも1種類が選択されることを特徴とする請求項2~8のいずれかに記載の太陽光集熱装置。
【請求項10】
前記粒子として、金属酸化物粒子が選択され、かつ、
前記気体導入部から供給される前記気体として前記粒子を還元可能なガスが選択され、
前記集熱容器を水熱分解法の熱還元反応器として利用することを特徴とする請求項2~8のいずれかに記載の太陽光集熱装置。
【請求項11】
前記粒子として、石炭コークス粒子及び流動媒体粒子が選択され、かつ、
前記気体導入部から供給される前記気体として水蒸気が選択され
前記集熱容器を、石炭コークス粒子をガス化させるための反応器として利用することを特徴とする請求項2~8のいずれかに記載の太陽光集熱装置。
【請求項12】
請求項2~11のいずれかに記載の太陽光集熱装置を用いた太陽光集熱方法であって、
前記流動層及び第1・第2ループシール部に前記粒子を予め充填し、
前記気体導入部から第1分散板を介して、第1・第2流動空間に気体を導入し、
第1グループシール部に接続された前記粒子導入口から前記粒子を新たに導入し、
第2グループシール部に接続された前記粒子排出口から前記粒子を排出し、
第1・第2流動空間へ導入される気体の線速度を異なるように設定して、第1流動空間と第2流動空間との間で前記粒子の内循環流動を発生させることを特徴とする太陽光集熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つのループシールで挟まれた二塔式流動層に関し、より具体的には、太陽蓄熱、太陽熱燃料化、バイオマスガス化などの各種化学反応に利用可能な流動層を備えた太陽光集熱装置及びこれを用いた太陽光集熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集光型太陽集熱を利用したエネルギー貯蔵技術に関する研究が活発化している。この手法は、熱機関が不要でカルノー効率の制約を受けないため、安価でしかも高効率な自然エネルギー貯蔵に応用可能な新技術として注目を集めている。
【0003】
本発明者らは、これまでに、内部で内循環を発生可能な流動層を備えた水熱分解装置や太陽蓄熱装置を提案している(特許文献1,2を参照)。
【0004】
特許文献1では、図7に示すように、水熱分解装置100内に二塔式流動層103を設け、各塔101,102間で金属酸化物粒子Pを内循環させることで、一方の塔101を熱還元反応器として、他方の塔102を水熱分解(酸化)反応器として使用するものである。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、上記2つの反応(還元と酸化)の全てを一つの二塔式流動層103内で発生させるシステムであり、2つの反応を完全に分離できないため、各反応における更なる高効率化を目指すことが困難であった。
【0006】
また、特許文献1に開示の流動層103を太陽蓄熱装置の集熱容器として使用する場合、集光された太陽光Sを装置100上部の窓104から照射することで、流動層103内の粒子Pを直接加熱し、顕熱を層状となった粒子Pに行き渡らせることができるが、加熱された粒子Pを取り出して図示しない別の容器に蓄えるため、太陽蓄熱プロセスがバッチ式となり、蓄熱の効率が下がる原因となっていた。
【0007】
また、本発明者らは、特許文献2において、特許文献1とは異なる構造の流動層を備えた太陽蓄熱装置を開示しており、特に、大規模な集熱・蓄熱を行うために特許文献2の実施例3(及びこれに対応する図面4も参照)では、集熱容器と蓄熱容器とを分離し、これらの容器間で蓄熱粒子を循環させる技術を開示している。
【0008】
しかしながら、特許文献2の実施例3に係る装置では、集熱容器内において、流動層による粒子の内循環流動を起こして粒子の集熱効果を確認することができるが、蓄熱粒子をこの集熱容器から蓄熱容器へと接続する搬送路内に粒子を逐次供給することは、実際上困難であった。すなわち、集熱容器にて内循環を行う粒子の一部を分離して、蓄熱容器へと接続する搬送路内に実際に供給されるよう粒子の流れを作り出す方法(集熱容器-蓄熱容器-集熱容器の間で蓄熱粒子を適切に外循環させること)は、未だ良く解明されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5986589号公報
【文献】国際公開第WO2014/038553号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、粒子の内循環流動及び外循環流動を効率よく実現可能な太陽集熱式流動層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の末、二塔式流動層にループシール構造を上手く組み合わせることにより、上述の課題を効果的に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、例えば、以下の構成・特徴を備えるものである。
【0013】
(態様1)
流動層と照射部と気体導入部とが設けられた集熱容器を備えた太陽光集熱装置であって、
前記流動層は、前記集熱容器内に設けられた第1・第2開口部と、第1・第2開口部との間に設けられた第1仕切板と、第1仕切板によって仕切られつつ第1・第2開口部に接続された第1・第2流動空間と、第1・第2流動空間内の粒子と、を備え、
前記照射部は、前記集熱容器に設けられた窓を備え、かつ、該窓を通して、集光された太陽光を案内して前記粒子へ照射し、
前記気体導入部は、前記流動層に設けられた第1分散板と、第1分散板を通して気体を第1・第2流動空間に向け導入する第1・第2導入口とを備え、かつ、第1導入口から第1流動空間に導入する気体の線速度を、第2導入口から第2流動空間に導入する気体の線速度より異ならせることで、第1流動空間と第2流動空間との間で前記粒子の内循環流動を発生させ、
前記集熱容器は、前記粒子を導入・排出する粒子導入口及び粒子排出口と、前記流動層に接続された第1・第2ループシール部の少なくとも一方を更に備え、
第1ループシール部は、前記粒子導入口と第1流動空間とを接続して、第1流動空間へ前記粒子を供給し、
第2ループシール部は、第2流動空間と前記粒子排出口とを接続して、第2流動空間内の前記粒子を前記粒子排出口へ供給することを特徴とする太陽光集熱装置。
(態様2)
前記集熱容器には、第1・第2ループシール部の双方が設けられ、
第1ループシール部は前記流動層の一方の側に設けられ、かつ、
第2ループシール部は前記流動層の他方の側に設けられていることを特徴とする態様1に記載の太陽光集熱装置。
(態様3)
前記照射部の前記窓は前記集熱容器の上部に設けられ、かつ、前記気体導入部の第1分散板は前記流動層の下部に設けられることを特徴とする態様2に記載の太陽光集熱装置。
(態様4)
第1ループシール部は、下部開口部と、該下部開口部より上方に延びた第2仕切板と、第2仕切板によって仕切られつつ前記下部開口部で互いに接続された第3・第4流動空間と、第4流動空間と前記流動層の第1流動空間とを区分する第1壁と、第4流動空間の上部に設けられ、第1流動空間に接続するシール出口と、を更に備え、
前記粒子導入口が第3流動空間の上部に接続されることで、新たな粒子が前記集熱容器の外部から第1ループシール部へ導入され、第3・第4流動空間及び前記シール出口を通して、前記流動層の第1流動空間へ案内されることを特徴とする態様3に記載の太陽光集熱装置。
(態様5)
第2ループシール部は、上部開口部と、該上部開口部より下方に延びた第3仕切板と、第3仕切板によって仕切られつつ前記上部開口部で互いに接続された第5・第6流動空間と、第5流動空間と前記流動層の第2流動空間とを区分する第2壁と、を更に備え、第5流動空間の下部に設けられ、第2流動空間に接続するシール入口と、を更に備え、
前記粒子排出口が第6流動空間の下部に接続されることで、前記流動層において内循環された前記粒子が前記シール入口から第2ループシール部内へ導入され、第5・第6流動空間を介して前記粒子排出口から前記集熱容器外部へ排出されることを特徴とする態様3又は4に記載の太陽光集熱装置。
(態様6)
前記気体導入部は、
第1ループシール部の下部に設けられた第2分散板と、
第2分散板を通して気体を第3・第4流動空間に向け導入する第3・第4導入口と、
を更に備えることを特徴とする態様4又は5に記載の太陽光集熱装置。
(態様7)
前記気体導入部は、
第2ループシール部の下部に設けられた第3分散板と、
第3分散板を通して気体を第5流動空間に向け導入する第5導入口と、
を更に備えることを特徴とする態様5又は6に記載の太陽光集熱装置。
(態様8)
前記太陽光集熱装置には、第1・第2搬送路と、蓄熱容器と、が更に設けられ、かつ、
第1搬送路は、前記粒子排出口と前記蓄熱容器とを連通して前記粒子を前記集熱容器から前記蓄熱容器へ搬送可能であり、
第2搬送路は、前記蓄熱容器と前記粒子導入口とを連通して前記粒子を前記蓄熱容器から前記集熱容器へ搬送可能であることを特徴とする態様2~7のいずれかに記載の太陽光集熱装置。
(態様9)
前記粒子として、石英砂、鉄酸化物、及び、炭化珪素の群のうち少なくとも1種類が選択されることを特徴とする態様2~8のいずれかに記載の太陽光集熱装置。
(態様10)
前記粒子として、金属酸化物粒子が選択され、かつ、
前記気体導入部から供給される前記気体として前記粒子を還元可能なガスが選択され、
前記集熱容器を水熱分解法の熱還元反応器として利用することを特徴とする態様2~8のいずれかに記載の太陽光集熱装置。
(態様11)
前記粒子として、石炭コークス粒子及び流動媒体粒子が選択され、かつ、
前記気体導入部から供給される前記気体として水蒸気が選択され
前記集熱容器を、石炭コークス粒子をガス化させるための反応器として利用することを特徴とする態様2~8のいずれかに記載の太陽光集熱装置。
(態様12)
態様2~11のいずれかに記載の太陽光集熱装置を用いた太陽光集熱方法であって、
前記流動層及び第1・第2ループシール部に前記粒子を予め充填し、
前記気体導入部から第1分散板を介して、第1・第2流動空間に気体を導入し、
第1グループシール部に接続された前記粒子導入口から前記粒子を新たに導入し、
第2グループシール部に接続された前記粒子排出口から前記粒子を排出し、
第1・第2流動空間へ導入される気体の線速度を異なるように設定して、第1流動空間と第2流動空間との間で前記粒子の内循環流動を発生させることを特徴とする太陽光集熱方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の太陽光集熱装置及び太陽光集熱方法は、上述したように、その集熱容器内において、流動層に第1・第2ループシール部の少なくとも一方を接続した構成(好ましくは、流動層を両側から第1・第2ループシール部によって挟持した構成)を採用する。これにより、照射部直下の流動層において蓄熱用粒子の組織的な内循環流動を確実に発生させながら、集熱容器の外部から集熱容器への粒子の導入やその後の排出(粒子の外循環流動)も同時に発生させることが可能となる。
【0015】
しかも、本発明の好適な態様の第1・第2ループシール部を採用すれば、各シール部にて逆流防止や所望方向への流動促進が図られるために、粒子導入口~第1ループシール部~流動層~第2ループシール部~粒子排出口へと蓄熱用粒子を確実に流動させることが可能となる。
【0016】
本発明の太陽光集熱装置は、太陽蓄熱、太陽熱燃料化、石炭コークスガス化、バイオマスガス化、水熱分解法の熱還元反応等の様々な用途に利用できる。これだけでなく、本発明の装置は、装置内外でそれぞれ、粒子の内循環と外循環とを上手に発生させて、粒子に所望の流れを作り出せるため、従来のバッチ式とは異なり、連続的な蓄熱等の反応(高効率な連続稼働)を起こすことができる。
【0017】
言い換えれば、本発明は、装置の大型化に対応し、かつ、高効率な太陽光集熱を可能とするものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1の太陽光集熱装置の概略を説明した図である。
図2】実施例1の集熱容器の斜視図(a)及び実施例2の分離型反応システム(b)を示した図である。
図3】実施例4の可視化流路及び該流路を用いた可視化実験装置を示した図である。
図4】様々な試験条件での可視化結果を纏めたフローマップを示した図である。
図5】実施例4のある条件での粒子Pの内循環(反時計回り)を示すスケッチ(a)と、別の条件にて粒子Pの内循環(時計回り)を示す可視化画像である。
図6】実施例4において、測定開始直後(t=0[s])からt=5[s]までの間の一定時間毎の粒子Pの流動状況を示す可視化画像である。
図7】従来の太陽光集熱装置の概略を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な実施態様に何等限定されるものではない。なお、各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
【実施例1】
【0020】
(太陽光集熱装置の概略)
図1は、実施例1に係る太陽光集熱装置1の概略を説明した図である。本実施例の太陽光集熱装置1は、流動層3と照射部4と気体導入部5と(さらに好ましくは、気体排出部10と)が設けられた集熱容器2を備える。なお、図面に示した装置構成は一例であり、各構成要素の構成や配置は図示の例に限定されない。例えば、照射部4や気体導入部5は図示のように流動層3の真上や真下に配置させた構成に限らず、例えば、流動層3の斜め上方や斜め下方に配置させる等、種々の変形例が想定できる。すなわち、これらの変形例によっても本発明の目的を達成し、その作用効果を得ることができる。
【0021】
図2(a)は、集熱容器2の斜視図を示した図である。集熱容器2は、後述の窓41が中央に設けられた天板21と、前後方向の側板22,22と、左右方向の側板23,23と、土台となる伸長部24とを備え、これらによって集熱容器2の外形が構成される。なお、集熱容器2の下側は、上述の気体導入部5が接続されることで、集熱容器2の内部空間(つまり、後述する流動層3や第1・第2ループシール部8,9)が区画される。なお、側板23,23は、集光された太陽光Sを効率的に照射する照射部4を形成するよう徐々に下方に向かって幅狭になる照射部用側板23aが設けられてもよい。
【0022】
(流動層の構造)
ここで、流動層3は、二塔式流動層と呼ばれるもので、以下の構造を有する。すなわち、流動層3は、集熱容器2内の上下に設けられた第1・第2開口部31,32と、第1・第2開口部31,32との間に設けられた第1仕切板33と、第1仕切板33によって左右に仕切られつつ第1・第2開口部31,32によって互いに接続された第1・第2流動空間34,35と、第1・第2流動空間34,35内に充填された蓄熱用粒子Pと、を備える。蓄熱用粒子P(以下、単に「粒子」とも呼ぶ。)としては、SiOを主成分としかつ融点が1750℃と高い石英砂、マグネタイト(Fe)などの鉄酸化物、輻射吸収率が高い炭化珪素(SiC)などからなる粒子が好適に用いられる。
【0023】
(照射部の構造)
照射部4は、集熱容器2の上部に設けられた窓41を備え、かつ、該窓41を通して、集光された太陽光Sを案内して粒子Pへ照射する。窓41は、太陽光Sの透過に適した石英製の窓が好ましい。なお、太陽光Sを窓41に至るまで集光させる方法及び手段は、従来技術を採用することができる。例えば、図示しない地上反射鏡(ヘリオスタッド)及びタワー反射鏡で構成されたビームダウン型集光システム(図示せず)により、太陽光Sの集光を実現できる。
【0024】
(窓の冷却)
また、照射部4の窓41や窓41の周囲部分は、集光された太陽光Sにより極めて高温に加熱されるため、図1及び図2(a)に示すように、窓41付近に冷却流路42を敷設し、この冷却流路42に冷媒を流して窓41や窓41の周囲部分を冷却することが望ましい。例えば、入口管42aと出口管42bとを備えた冷却流路42を窓41の外縁を取り囲むように敷設するようにしてもよい。
【0025】
(気体導入部の構造)
気体導入部5は、流動層3の下部に設けられた第1分散板51aと、第1分散板51aを通して気体G(Ga,Gb)を第1・第2流動空間34,35に向け導入する第1・第2導入口52a,52bとを備える。第1分散板51aは多孔質(例えば、孔径10~100μm)の物体で構成されており、これを第1・第2導入口52a,52bと流動層3との間に組み込むことにより、粒子Pが気体導入部5に入り込むことを防ぎつつ、整流化された気体Gを流動層3に供給することが可能となる。後述の第2・第3分散板51b,51cも、第1分散板51aの上記構成と同様の構成を有し、同様の効果を発揮する。
【0026】
(供給気体間での速度差の付与)
ここで、第1導入口52aから第1流動空間34に導入する気体Gaの線速度LVaは、第2導入口52bから第2流動空間35に導入する気体Gbの線速度LVbと異なるように設定されている。
【0027】
(気体の線速度)
なお、線速度LVa,LVbは、気体Ga,Gbの流量を、各流量に対応する第1・第2導入口52a,52bの断面積で除した値であり、単位時間あたりに第1分散板51a(の単位断面積)を通過する各気体Ga,Gbの速度を意味する。後述する気体Gc,Gd,Geの線速度LVc,LVd,LVeについても、同様の方法で定義・導出される。
【0028】
このように供給気体Ga,Gbの間で速度差を付与することにより、第1・第2開口部31,32で接続された第1流動空間34と第2流動空間35との間で粒子Pの組織的な内循環流動を発生させることができる。
【0029】
また、気体Ga,Gbの線速度LVa,LVbを適宜調整することで、所望の回転方向(時計回り又は反時計回り)の内循環流動を起こすことができる。例えば、気体Gaの線速度LVa(図4ではV)が気体Gbの線速度LVb(図4ではV)より大きく設定した場合(つまり、LVa-Lvb>0)には、時計回りに内循環を起こすことができる。一方、気体Gaの線速度LVa(図4ではV)が気体Gbの線速度LVb(図4ではV)より小さく設定した場合(つまり、LVa-Lvb<0)には、反時計回りに内循環を起こすことができる。なお、所望の内循環を発生させる各線速度の条件については、図4に示すフローマップも参照されたい。
【0030】
なお、上述の線速度LVa,LVbの調整は、例えば、第1・第2導入口52a,52bに夫々、接続された図示しない空気圧縮機、バルブや流量計等の機器によって、各気体Ga,Gbの流量を調整することによって実行可能である。
【0031】
(気体排出部の構造)
なお、気体導入部5から流動層3へ送り込まれた気体Gは、気体排出部10より集熱容器2の外部へ排出される。なお、実施例2を説明する図2(b)に示すように、気体導入部5から流動層3へ導入された気体G(図示では、窒素N)が、流動層3内で化学反応を起こし、気体排出部10から排出される際には質・組成の異なる気体(図示では、酸素0)となる場合があることを留意されたい。
【0032】
(粒子導入口及び粒子排出口並びにループシール部の配設)
また、集熱容器2は、粒子Pを導入・排出する粒子導入口6及び粒子排出口7と、流動層3に接続された第1・第2ループシール部8,9の少なくとも一方を更に備えることに留意されたい。ここで、後述する粒子Pの内循環及び外循環の促進の観点からは、図示の例のように、第1・第2ループシール部8,9の双方が流動層3の左右(両側)に設置されていることが好ましい。
【0033】
ここで、第1ループシール部8は、粒子導入口6と流動層3(の第1流動空間34)とを接続して、第1流動空間34へ逐次、粒子Pを供給する。一方、第2ループシール部9は、流動層3(の第2流動空間35)と粒子排出口7とを接続して、流動層3から粒子排出口7へと粒子Pを供給する。なお、図示の例のように、逐次(連続的に)粒子Pを供給してもよいし、断続的(例えば、周期的又は不定期)に粒子Pを供給してもよい。
【0034】
(内循環及び外循環が同時に発生する多重循環)
以上のように構成された第1・第2ループシール部8,9を採用した太陽光集熱装置1は、照射部4直下の流動層3において粒子Pの組織的な内循環流動を確実に発生させつつ、集熱容器2の外部から内部への粒子Pの導入及び集熱容器2の内部から外部への粒子Pの排出(粒子の外循環流動)も同時に発生させること(多重循環)が可能となる。なお、第1・第2ループシール部8,9の好適な形態を以下に例示する。
【0035】
(第1ループシール部の好適な形態)
第1ループシール部8は、下部開口部81と、下部開口部81より上方に延びた第2仕切板82と、第2仕切板82によって左右に仕切られつつ下部開口部81で互いに接続された第3・第4流動空間83,84と、第4流動空間84と流動層3の第1流動空間34とを区分する第1壁85と、第4流動空間84の上部に設けられ、第1流動空間34と接続するシール出口86と、を更に備えることが好ましい。
【0036】
(第1ループシール部での粒子Pの流動)
そして、粒子導入口6が第3流動空間83の上部に接続されることで、新たな粒子Pが逐次、集熱容器2の外部から第1ループシール部8へ導入され、第3・第4流動空間83,84及びシール出口86を通して、流動層3の第1流動空間34へ順次、案内されるようになる。
【0037】
(第2ループシール部の好適な形態)
第2ループシール部9は、上部開口部91と、上部開口部91より下方に延びた第3仕切板92と、第3仕切板92によって左右に仕切られつつ上部開口部91によって互いに接続された第5・第6流動空間93,94と、第5流動空間93と流動層3の第2流動空間35とを区分する第2壁95と、第5流動空間93の下部に設けられ、流動層3の第2流動空間35に接続するシール入口96と、を更に備えることが好ましい。
【0038】
(第2ループシール部での粒子Pの流動)
そして、粒子排出口7が第6流動空間94の下部に接続されることで、流動層3において内循環された粒子Pが逐次、シール入口96から第2ループシール部9内へ導入され、第5・第6流動空間93,94を介して粒子排出口7から集熱容器2外部へ排出されるようになる。
【0039】
以上のように好適な形態の第1・第2ループシール部8,9を採用すれば、夫々の部分8,9にて粒子Pの逆流防止や所望方向への流動促進が図られるために、粒子導入口6~第1ループシール部8~流動層3~第2ループシール部9~粒子排出口7への望ましい方向で粒子Pを確実に流動させることが可能となる。
【0040】
(気体導入部の好適な形態)
次に、気体導入部5の好適な形態についても例示する。好適な気体導入部5は、第1ループシール部8の下部に設けられた第2分散板51bと、第2分散板51bを通して気体G(Gc,Gd)を第3・第4流動空間83,84に向け導入する第3・第4導入口52c,52dと、を更に備える。
【0041】
そして、第3・第4導入口52c,52dから第3・第4流動空間83,84に導入する気体Gc,Gdの線速度LVc,LVdが、流動層3内に供給される気体Ga,Gbの線速度Lva,LVbのいずれかと異なるように設定されることが好ましい。さらに好ましくは、線速度LVc,LVdが、線速度Lva,LVbのうち比較的大きい線速度より小さく設定される。これにより、第1ループシール部8から流動層3へ向かう粒子Pの流動を促進させつつ、流動層3から第1ループシール部8への粒子Pの逆流を確実に防止することができる。
【0042】
第2ループシール部9においても、第1ループシール部8と同様の好適な構造を採用することができる。具体的には、気体導入部5は、第2ループシール部9の下部に設けられた第3分散板51cと、第3分散板51cを通して気体Geを第5流動空間93に向け導入する第5導入口52eと、を更に備えることが好ましい。
【0043】
そして、第5導入口52eから第5流動空間93に導入する気体Geの線速度Lveが、流動層3内に供給される気体Ga,Gbの線速度Lva,LVbのいずれかと異なるように設定されることが好ましい。さらに好ましくは、線速度LVeが、線速度Lva,LVbのうち比較的大きい線速度より小さく設定される。これにより、流動層3から第2ループシール部9へ向かう粒子Pの流動を促進させつつ、第2ループシール部9から流動層3への粒子Pの逆流を確実に防止することができる。
【0044】
(集熱容器外側の好適な構成)
また、太陽光集熱装置1には、第1・第2搬送路11,12と、蓄熱容器13と、が更に設けられることが好ましい。ここで、第1搬送路11は、粒子排出口7と蓄熱容器13とを連通して粒子Pを集熱容器2から蓄熱容器13へ搬送可能である。一方、第2搬送路12は、蓄熱容器13と粒子導入口6とを連通して粒子Pを蓄熱容器13から集熱容器2へ搬送可能であることを特徴とする。なお、蓄熱容器13には、粒子Pから熱の授受を行う熱交換器14が設けられてもよい。熱交換器14には、気体を導入する入口管15と、熱交換器14から熱を受け取った気体が排出される出口管16とが設けられてもよい。
【0045】
上記のような好適な構成部材を集熱容器2の外側に付加することにより、本発明の太陽光集熱装置1は大型化及び連続運転化に対応し、かつ、高効率な太陽光集熱が可能となる。
【実施例2】
【0046】
(水熱分解装置の熱還元反応器への応用)
なお、本発明の集熱容器2を、以下のように水熱分解装置2ds用の熱還元反応器2a(図2(b)を参照)として利用してもよい。この実施例の場合、粒子Pとして、酸化セリウム又は酸化セリウムを担持したジルコニア、或いは、フェライト又はフェライトを担持したジルコニアなどの金属酸化物粒子が選択されることが好ましい。なお、金属酸化物の粒径は、100~750μmの程度が好ましい。また、気体導入部5から供給される気体Gとして、粒子Pを還元可能なガス(例えば、窒素又はアルゴンなどの低酸素分圧ガス)が選択されることが好ましい。
【0047】
なお、特許文献1に示すような従来技術では二塔式流動層の一方の塔を熱還元反応器として、他方の塔を水熱分解(酸化)反応器として使用するものであった。これに対して、実施例2では、二塔式の流動層3を含んだ集熱容器2全体を熱還元反応器2aとして利用することができ、酸化反応器2b(図2(b)を参照)を集熱容器2から分離して、その外側に設ければよい。これにより、実施例2の装置1は分離型反応システム2dsとなり、連続的で高効率な反応を発生・継続させることができるようになる。
【実施例3】
【0048】
(石炭コークス粒子をガス化させるための反応器への応用)
また、本発明の集熱容器2を、以下のように、石炭コークス粒子をガス化させるための反応器(図示せず)として利用してもよい。この実施例3の場合、粒子Pとして、石炭コークス粒子と流動媒体粒子(例えば、石英砂)とが選択されることが好ましい。流動媒体粒子の粒径は、300μm以下がさらに好ましい。、流動層3内では、石炭コークス粒子と流動媒体粒子(例えば、石英砂)との体積比を、2:8~8:2程度に設定することが好ましい。また、気体導入部5から供給される気体Gとして、水蒸気が選択される。
【0049】
(様々な用途への応用可能性)
以上の実施例2,3に示すように、本発明の太陽光集熱装置1は、太陽蓄熱、太陽熱燃料化、石炭コークスガス化、バイオマスガス化、水熱分解法の熱還元反応等の様々な用途に利用できることが理解できよう。さらに、本発明の装置1は、上述したように、粒子Pの内循環と外循環とを上手に組み合わせて発生できる(粒子Pの多重循環が可能である)ため、従来のバッチ式とは異なり、連続的な蓄熱等の反応(高効率な連続稼働)を起こすことができる。
【実施例4】
【0050】
(粒子の可視化実験装置)
本発明者らは、粒子Pの流動挙動を明らかにすべく、可視化実験装置を製作した。なお、可視化実験装置では、太陽光Sの集熱や照射を考慮に入れないモデル(cold model、図3(a)及び(b)参照)とした。集熱容器2を模擬した可視化流路はアクリル樹脂製の透明素材で作成され、この流路内に粒子Pを供給した。粒子Pとして、流路内の粒子Pの流動状況を可視化し易くするため、青と白の2色の発泡性ポリスチレン製ビーズ(粒子Pの直径は約0.7mm~1.4mm、比重は1.04)を使用した。
【0051】
(可視化流路の寸法)
また、可視化流路(集熱容器2)の全幅は約300mm(第1~第5流動空間34,35,83,84,93の各幅50mm)であり、奥行きは30mmである(図3(a)を参照)。すなわち、このコールドモデルでは、夫々の流動空間の断面積は同一となるため、各流動空間を通過する流量の比率と、線速度の比率とは比例するようになる。
【0052】
(気体Gの流量(線速度)の調節)
粒子Pは、フィーダーによって、17g/minの流量で第1ループシール部8の上方から供給した。気体導入部5における第1~第5流動空間34,35,83,84,93への気体G(Ga~Ge)として空気を使用し、各気体Ga~Geの流量を、Gc=Gd=Ge=20 NL/min(一定量)とし、GaとGbについては、0~80 NL/minの間で夫々の流量を変化させた。
【0053】
(気体Gの流量(線速度)の検討結果)
以上の条件で実験した可視化結果を、図4のようにフローマップとして纏めた。図4中の縦軸のVと横軸のVは、左塔(第1流動空間34)と右塔(第2流動空間35)の各線速度(すなわち、上述のLVa,Lvb)を示す。図4中の符号「●」は、粒子Pの動きが観察されなかった状態を示す。なお、「△」は流動層3の左側(第1流動空間34)のみに気泡の発生が観察された状態を示し、「□」は流動層3の右側(第2流動空間35)のみに気泡の発生が観察された状態を示し、「○」は両側(第1・第2流動空間34,35)にて気泡の発生が観察された状態を示す。また、「▲」は、流動層3内で時計回り方向の粒子Pの循環(及び気泡の発生)が観察された状態を示し、一方、「■」は、流動層3内で反時計回り方向の粒子Pの循環(及び気泡の発生)が観察された状態を示す。
【0054】
なお、図5(a)は、反時計回り方向の循環が観察された粒子Pの流動状況の一例を示す。以上のように、供給空気G(Ga、Gb)の線速度を適宜、変更することで二塔式流動層3での粒子Pの循環方向を変更できることも確認できた。
【0055】
(色分け実験)
次に、第1~第5流動空間34,35,83,84,93を順番に青色の粒子Pと白色粒子Pとに分けて充填し、フィーダーから供給される粒子Pも白色の粒子Pを選択して、粒子Pの可視化を行った。なお、各気体Ga~Geの流量として、Gb=Gc=Gd=Ge=20 NL/minとし、Ga=55 NL/min(Ga>Gb)に設定した。
【0056】
(色分け実験の結果)
図6に測定開始直後(t=0[s])からt=5[s]までの間の一定時間毎の粒子Pの可視化画像を示す。なお、図5(b)はt=4[s]時の粒子Pの可視化画像に粒子Pの流れ方向を示す矢印を追加した図である。この試験条件では、中央部の二塔式流動層3において「時計回り」の粒子Pの内循環を起こしながら、第2ループシール部9へ粒子Pを安定に供給して粒子排出口7から粒子Pを排出することを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の太陽光集熱装置及び太陽光集熱方法は、上述したように、その集熱容器内において、流動層に第1・第2ループシール部の少なくとも一方を接続した構成(好ましくは、流動層を両側から第1・第2ループシール部によって挟持した構成)を採用する。これにより、照射部直下の流動層において粒子の内循環流動を確実に発生させながら、集熱容器の外部からの粒子の導入及び/又は外部への排出(粒子の外循環流動)も同時に発生させることが可能となった。
【0058】
しかも、本発明の好適な態様の第1・第2ループシール部を採用すれば、各シール部にて逆流防止や所望方向への流動促進が図られるために、粒子導入口~流動層~粒子排出口へと粒子を確実に流動させることが可能となる。
【0059】
本発明の太陽光集熱装置は、太陽蓄熱、太陽熱燃料化、石炭コークスガス化、バイオマスガス化、水熱分解法の熱還元反応等の様々な用途に利用できる。これだけでなく、本発明の装置は、粒子の内循環と外循環とを上手に組み合わせた構成であるため、従来のバッチ式とは異なり、連続的な蓄熱等の反応(高効率な連続稼働)を起こすことができる。
【0060】
言い換えれば、本発明は、装置の大型化に対応し、かつ、高効率な太陽光集熱を可能とするものとなる。
【0061】
このように、本発明は、産業上の利用価値及び産業上の利用可能性が非常に高い。
【0062】
1 太陽光集熱装置
2 集熱容器
2a 熱還元反応器
2b 酸化反応器
ds 水熱分解装置(分離型反応システム)
3 流動層
4 照射部
5 気体導入部
6 粒子導入口
7 粒子排出口
8 第1ループシール部
9 第2ループシール部
10 気体排出部
11,12 第1・第2搬送路
13 蓄熱容器
14 熱交換器
15,16 熱交換器の入口管,出口管
21 集熱容器の天板
22 集熱容器の前後方向の側板
23 集熱容器の左右方向の側板
23a 照射部用側板
24 伸長部
31,32 流動層の第1・第2開口部
33 第1仕切板
34,35 流動層の第1・第2流動空間
41 照射部の窓
42 冷却流路
42a,42b 冷却流路の入口管,出口管
51a,51b,51c 気体導入部の第1・第2・第3分散板
52a,52b,52c,52d,52e 第1・第2・第3・第4・第5導入口
81 第1ループシール部の下部開口部
82 第2仕切板
83,84 第1ループシール部の第3・第4流動空間
85 第1壁
86 シール出口
91 第2ループシール部の上部開口部
92 第3仕切板
93,94 第1ループシール部の第5・第6流動空間
95 第2壁
96 シール入口
G(Ga,Gb,Gc,Gd,Ge) 気体導入部より供給する気体
LVa,LVb,LVc,LVd,LVe 気体導入部より供給する気体の線速度
P 蓄熱用粒子
S 集光された太陽光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7