IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中南大学の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】モリブデンのクリーンな冶金方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 34/34 20060101AFI20220422BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20220422BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20220422BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20220422BHJP
   C22B 3/16 20060101ALI20220422BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20220422BHJP
   C22B 3/38 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
C22B34/34
C22B1/02
C22B3/08
C22B3/44 101Z
C22B3/16
C22B3/26
C22B3/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020545100
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2019084445
(87)【国際公開番号】W WO2019210810
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】201810414821.8
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518309666
【氏名又は名称】中南大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼中▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】李永立
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105838908(CN,A)
【文献】国際公開第2018/036361(WO,A1)
【文献】米国特許第04278644(US,A)
【文献】山岸功ら,次世代燃料リサイクルのための高レベル廃液調整技術開発-(2)モリブデン抽出分離技術開発,日本原子力学会「2010年秋の大会」,日本,日本原子力学会,2010年09月03日,P.109
【文献】田中幹也ら,マンガン団塊塩酸浸出液からのFeおよびMoの分離について,研究・業績発表講演会講演要旨集,日本,社団法人日本鉱業会,1985年04月02日,p.368-369
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデナイトにカルシウムを添加して焙焼して得られた石灰化モリブデンカルサインを硫酸で浸出して、モリブデン含有硫酸浸出液を得るステップ1)と、
P204、P507又はCyanex272のうちの一種又は複数種であるカチオン抽出剤を用いて、ステップ1)で得られた浸出液におけるモリブデンを抽出して、モリブデニルカチオンを担持した有機相とラフィネートを得るステップ2)と、
過酸化水素水溶液を逆抽出剤として、モリブデニルカチオンを担持した有機相と混合して、モリブデン逆抽出液を得るステップ3)と、
前記モリブデン逆抽出液を加熱することによりその中のペルオキシモリブデン酸を解離させて、モリブデン酸沈殿物を形成し、更にか焼して、三酸化モリブデン製品を得るステップ4)と、
を含む、ことを特徴とするモリブデンのクリーンな冶金方法。
【請求項2】
ステップ1)において、75~96℃の常圧条件で、硫酸で浸出することを特徴とする請求項1に記載のモリブデンのクリーンな冶金方法。
【請求項3】
ステップ1)において、85~95℃の常圧条件で、硫酸で浸出し、浸出時間は2h~6hであることを特徴とする請求項2に記載のモリブデンのクリーンな冶金方法。
【請求項4】
ステップ1)において、前記硫酸の濃度は2~4mol/Lであり、浸出液固比(L/Kg)は3:1~10:1であることを特徴とする請求項1に記載のモリブデンのクリーンな冶金方法。
【請求項5】
ステップ2)において、前記カチオン抽出剤を灯油溶液として添加し、灯油溶液における前記カチオン抽出剤の体積分率は10%~50%であることを特徴とする請求項1に記載のモリブデンのクリーンな冶金方法。
【請求項6】
ステップ2)で得られたラフィネートについて、浸出過程で消費された硫酸を補給した後、ステップ1)へ循環して用い、複数回循環することでレニウムの濃縮と回収を行うことを特徴とする請求項1に記載のモリブデンのクリーンな冶金方法。
【請求項7】
ステップ2)において、抽出相比O/A=2:1~1:3であり、多段向流抽出が用いられ、抽出段数が3~5段であることを特徴とする請求項1に記載のモリブデンのクリーンな冶金方法。
【請求項8】
ステップ3)において、過酸化水素水の質量濃度は10%~20%であり、逆抽出相比O/A=3:1~5:1であることを特徴とする請求項1に記載のモリブデンのクリーンな冶金方法。
【請求項9】
ステップ3)において、多段向流逆抽出が用いられ、逆抽出段数が2~5段であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のモリブデンのクリーンな冶金方法。
【請求項10】
ステップ4)において、モリブデン含有過酸化水素水溶液の温度を90~100℃まで上昇させて、その中のペルオキシ結合を解離させることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のモリブデンのクリーンな冶金方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄金属製錬の技術分野に属し、具体的には、モリブデンのクリーンな冶金方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデンは重要な戦略的レアメタルである。自然界において20種類以上のモリブデンの鉱化形式があるが、そのうち最も主なのはモリブデナイト(MoS)であり、99%以上を占めている。モリブデナイトはモリブデン冶金の主な原料であるだけでなく、戦略的金属であるレニウムの主な供給源の一つでもある。
【発明の概要】
【0003】
現在、モリブデナイトの酸化焙焼-アンモニア浸出プロセスは国内外で広く用いられ、モリブデンの経典的な冶金プロセスである。この経典的なプロセスは主に以下の問題がある。(1)三酸化モリブデンは高温で昇華、揮発しやすく、また、二硫化モリブデンの酸化は強い発熱反応に属するため、モリブデナイトの酸化焙焼過程において大量の空気を導入することで炉内温度を調節する必要があり、完全に焙焼しにくいだけでなく、大量の低濃度の二酸化硫黄煙道ガスも生成する。(2)モリブデンカルサインをアンモニアで溶解してモリブデン酸アンモニウム溶液を生成し、精製した後にモリブデン酸アンモニウムを生成し、更にか焼して三酸化モリブデンにする必要がある。この過程でアンモニアを用いるため、必然的にアンモニア性窒素廃水と廃ガスの生成を引き起こす;(3)モリブデナイトにおけるレニウムは主にReSとして存在し、酸化焙焼過程においてReに酸化され、煙道ガスとともに揮発し、最後に溶離液から回収される。その結果、レニウムの回収率は約50%に過ぎず、回収率は非常に低い。
【0004】
モリブデナイトの焙焼過程において石灰を添加すると、硫黄を固定することができるだけでなく、モリブデンの揮発を回避することもでき、レニウムの回収にも寄与する。しかし、残念なことに、モリブデンは結合してより安定したモリブデン酸カルシウムを生成したので、アンモニア水で浸出することができなくなった。当業者は、まず硫酸浸出‐アニオン抽出を行い、次にアンモニア水と反応させ、逆抽出によりモリブデン酸アンモニウム溶液を得る方法を採用する。このようにして、後半のアンモニア性窒素フローは依然として存在している。
【0005】
モリブデナイトはチタンでライニングされたオートクレーブにおいて完全湿式法により酸化して浸出することもでき、モリブデンとレニウムの回収率が高いという利点がある。しかし、モリブデナイトの酸化は強い発熱反応に属し、反応過程において密閉釜の温度は180℃~220℃と高くなり、更に、釜内の圧力は40気圧に近く、反応時間は6時間と長くなっている。酸化加圧蒸解プロセスは設備と操作に対して非常に高い要求があり、チタンでライニングされたオートクレーブは、高速気流、高温、高酸素圧の条件で釜内で燃え、爆発して事故を起こしやすい。
【0006】
また、モリブデナイトは常圧条件で塩素ガス、高濃度の硝酸などの強酸化剤で分解可能であるが、環境保護、輸送、コストなどの点で問題があり、これらの問題を解決しなければならない。
【0007】
つまり、従来のモリブデン冶金プロセスは、二酸化硫黄による汚染があり、アンモニア性窒素廃水が排出され、プロセスフローが複雑であり、関連元素であるレニウムの回収率が低いなどの問題があり、これらの問題を解決しなければならない。これらの問題を解決するために、理論上の革新によりクリーンで効率的なモリブデン冶金の新しいプロセスを開発しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、モリブデンのクリーンな冶金方法を提供することである。このモリブデンのクリーンな冶金方法によれば、従来のモリブデナイトの製錬過程における環境汚染の問題、特にアンモニア性窒素廃水の生成の問題を解決できるとともに、浸出液の循環により関連元素であるレニウムの濃縮を実現でき、回収に寄与する。
【0009】
本発明の目的を達成するための技術方案は以下のとおりである。
【0010】
以下を含む、モリブデンのクリーンな冶金方法:
【0011】
モリブデナイトにカルシウムを添加して焙焼して得られた石灰化モリブデンカルサインを無機酸で浸出して、モリブデン含有無機酸浸出液を得るステップ1)
【0012】
P507、P204又はCyanex272のうちの一種又は複数種であるカチオン抽出剤を用いて、ステップ1)で得られた浸出液におけるモリブデンを抽出して、モリブデニルカチオン(MoO 2+)を担持した有機相とラフィネートを得るステップ2)
【0013】
過酸化水素水溶液を逆抽出剤として、モリブデニルカチオンを担持した有機相と混合して、モリブデン逆抽出液を得るステップ3)
【0014】
前記モリブデン逆抽出液を加熱することによりその中のペルオキシモリブデン酸を解離させて、モリブデン酸沈殿物を形成し、更にか焼して、三酸化モリブデン製品を得るステップ4)。
【0015】
ここで、ステップ1)において、75~96℃の常圧条件で、無機酸で浸出し、前記無機酸は硫酸、硝酸、塩酸のうちの一種又は複数種である。
【0016】
ここで、ステップ1)において、85~95℃の常圧条件で、無機酸で浸出し、浸出時間は2h~6hである。
【0017】
好ましくは、ステップ1)において、前記無機酸の濃度は2~4mol/Lであり、浸出液固比(L/Kg)は3:1~10:1である。
【0018】
ここで、ステップ2)において、前記カチオン抽出剤を灯油溶液として添加し、灯油溶液における前記カチオン抽出剤の体積分率は10%~50%である。
【0019】
ここで、ステップ2)で得られたラフィネートについて、浸出過程で消費された無機酸を補給した後、ステップ1)へ循環して用い、複数回循環することでレニウムの濃縮と回収を行う。
【0020】
レニウムは、航空エンジンの点でかけがえのない戦略的金属であり、国防建設にとって非常に重要であり、モリブデナイトは、常に微量のレニウム元素と関連付けられ、レニウムの主な供給源の一つである。石灰化焙焼過程により、ReSはレニウム酸カルシウムに変換され、無機酸による浸出過程でモリブデンとともに浸出される。強酸性条件で、モリブデンはモリブデニルカチオン(MoO 2+)として存在し、レニウムはレニウム酸アニオン(ReO )として存在し、カチオン抽出過程においてモリブデンは抽出されるが、レニウムは依然としてラフィネートに残り、抽出液の循環再利用につれて、レニウムは徐々に濃縮され、アニオン抽出又はイオン交換の方法により回収される。
【0021】
ここで、ステップ2)において、抽出相比O/A=2:1~1:3であり、多段向流抽出が用いられ、抽出段数が3~5段である。
【0022】
ここで、ステップ3)において、過酸化水素水の質量濃度は10%~20%であり、逆抽出相比O/A=3:1~5:1である。
【0023】
好ましくは、ステップ3)において、多段向流逆抽出が用いられ、逆抽出段数が2~5段である。
【0024】
ここで、ステップ4)において、モリブデン含有過酸化水素水溶液の温度を90~100℃まで上昇させて、その中のペルオキシ結合を解離させる。
【0025】
モリブデンは水溶液において二つの重要なポリ酸としての化学的特徴がある。
【0026】
一方、モリブデンは弱酸性条件で主にMo24 6-、Mo26 4-等のイソポリ酸ポリアニオンとして存在し、溶液のpH<2である時、モリブデンのイソポリ酸ポリアニオンは解離し始め、徐々にモリブデニルカチオン(MoO 2+)へ変換していく。
【0027】
他方、酸性溶液において、モリブデンは、過酸化水素と反応してペルオキシアニオン([Mo11(HO)2-)に変換する傾向がある。
【0028】
本発明者は、モリブデンの上記した二つの特性を利用し、モリブデナイトの石灰化焙焼と組み合わせて、モリブデナイトの石灰化モリブデンカルサインを原料として、従来のモリブデン冶金のアンモニア性窒素フローの旧套を脱して、「カチオン抽出剤によるモリブデニルカチオンの抽出-過酸化水素水を逆抽出剤とするモリブデンの選択的な逆抽出」を理論的基礎とするアンモニア性窒素なしのモリブデンのクリーンな冶金の新しいプロセスという技術的ルートを提出した。
【0029】
本発明の提供するクリーンな冶金プロセス方法は、モリブデンの製錬フローを大幅に簡素化でき、二酸化硫黄による汚染及びアンモニア性窒素廃水の生成の問題を完全に解決でき、フローが短く、クリーンで効率的であるという技術的特徴を有し、工業的に普及しやすい。
【実施例
【0030】
以下に、具体的な実施例により本発明の技術方案を更に説明する。当業者であれば、実施例が本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではないことを知っているべきである。
【0031】
実施例において、特に断らない限り、用いられる技術手段は本発明の属する分野の通常の技術手段である。
【0032】
実施例1
【0033】
(1)モリブデナイトの石灰化モリブデンカルサインを原料として、モリブデンの含有量が13.2%であり、95℃の常圧条件で、4mol/Lの硝酸で浸出し、浸出液固比(L/Kg)が3:1であり、浸出時間が2hであり、モリブデン含有硝酸浸出液を得て、モリブデンの浸出率が99.2%である。
【0034】
(2)10%P507+90%スルホン化灯油を抽出剤として用い、抽出相比O/A=2:1の条件でモリブデンの抽出を行い、抽出方法が5段向流抽出であり、モリブデンの抽出率が95%以上に達することができる。抽出により担持有機相とラフィネートを得て、ここで、担持相にモリブデンの逆抽出を行い、ラフィネートについて、浸出過程で消費された硝酸を補給した後、ステップ(1)へ循環して用いる。
【0035】
(3)質量濃度が10%の過酸化水素水を逆抽出剤として、相比O/A=5:1の条件で、得られた担持有機相に逆抽出を行い、5段向流逆抽出により、モリブデンが完全に逆抽出され、モリブデン含有過酸化水素水逆抽出液を得て、モリブデンの濃度が約103.6g/Lである。
【0036】
(4)モリブデン含有過酸化水素水溶液の温度を90℃まで上昇させて、その中のペルオキシ結合を解離させて、モリブデン酸沈殿物(モリブデンの沈殿率が約93.2%である)を形成し、更にか焼して、三酸化モリブデン製品を得た。結晶化母液に酸化カルシウムを添加することにより、未結晶のモリブデンを回収し、モリブデンの直接収率が87.6%である。
【0037】
実施例2
【0038】
(1)モリブデナイトの石灰化モリブデンカルサインを原料として、モリブデンの含有量が14.5%であり、85℃の常圧条件で、3mol/Lの塩酸で浸出し、浸出液固比(L/Kg)が5:1であり、浸出時間が4hであり、モリブデン含有塩酸浸出液を得て、モリブデンの浸出率が99.5%である。
【0039】
(2)30%Cyanex272+70%スルホン化灯油を抽出剤として用い、抽出相比O/A=1:1の条件でモリブデンの抽出を行い、抽出方法が3段向流抽出であり、モリブデンの抽出率が90.5%以上に達することができる。抽出により担持有機相とラフィネートを得て、ここで、担持相にモリブデンの逆抽出を行い、ラフィネートについて、浸出過程で消費された塩酸を補給した後、ステップ(1)へ循環して用いる。
【0040】
(3)質量濃度が20%の過酸化水素水溶液を逆抽出剤として、相比O/A=4:1の条件で、得られた担持有機相に逆抽出を行い、2段向流逆抽出により、モリブデンが完全に逆抽出され、モリブデン含有過酸化水素水逆抽出液を得て、モリブデンの濃度が約104.8g/Lである。
【0041】
(4)モリブデン含有過酸化水素水溶液の温度を100℃まで上昇させて、その中のペルオキシ結合を解離させて、モリブデン酸沈殿物(モリブデンの沈殿率が約93.3%である)を形成し、更にか焼して、三酸化モリブデン製品を得た。結晶化母液に酸化カルシウムを添加することにより、未結晶のモリブデンを回収し、モリブデンの直接収率が約84.1%である。
【0042】
実施例3
【0043】
(1)モリブデナイトの石灰化モリブデンカルサインを原料として、モリブデンの含有量が12.5%であり、75℃の常圧条件で、2mol/Lの硫酸で浸出し、浸出液固比(L/Kg)が10:1であり、浸出時間が6hであり、モリブデン含有硫酸浸出液を得て、モリブデンの浸出率が99.6%である。
【0044】
(2)50%P204+50%スルホン化灯油を抽出剤として用い、抽出相比O/A=1:3の条件でモリブデンの抽出を行い、抽出方法が5段向流抽出であり、モリブデンの抽出率が99.1%以上に達することができる。抽出により担持有機相とラフィネートを得て、ここで、担持相にモリブデンの逆抽出を行い、ラフィネートについて、浸出過程で消費された硫酸を補給した後、ステップ(1)へ循環して用いる。
【0045】
(3)質量濃度が15%の過酸化水素水溶液を逆抽出剤として、相比O/A=3:1の条件で、得られた担持有機相に逆抽出を行い、4段向流逆抽出により、モリブデンが完全に逆抽出され、モリブデン含有過酸化水素水逆抽出液を得て、モリブデンの濃度が約111g/Lである。
【0046】
(4)モリブデン含有過酸化水素水溶液の温度を95℃まで上昇させて、その中のペルオキシ結合を解離させて、モリブデン酸沈殿物(モリブデンの沈殿率が約93.7%である)を形成し、更にか焼して、三酸化モリブデン製品を得た。結晶化母液に酸化カルシウムを添加することにより、未結晶のモリブデンを回収し、モリブデンの直接収率が約92.5%である。
【0047】
実施例4
【0048】
(1)モリブデナイトの石灰化モリブデンカルサインを原料として、モリブデンの含有量が12.5%であり、75℃の常圧条件で、実施例3のラフィネートを用い、硫酸をその中の硫酸の濃度が2mol/Lになるまで補給し、循環浸出を行い、浸出液固比(L/Kg)が10:1であり、浸出時間が6hであり、モリブデン含有硫酸浸出液を得て、モリブデンの浸出率が99.2%である。
【0049】
(2)50%P204+50%スルホン化灯油を抽出剤として用い、抽出相比O/A=1:3の条件でモリブデンの抽出を行い、抽出方法が5段向流抽出であり、モリブデンの抽出率が約98.9%である。抽出により担持有機相とラフィネートを得て、ここで、担持相にモリブデンの逆抽出を行い、ラフィネートについて、浸出過程で消費された硫酸を補給した後、ステップ(1)へ循環して用いる。
【0050】
(3)質量濃度が15%の過酸化水素水溶液を逆抽出剤として、相比O/A=3:1の条件で、得られた担持有機相に逆抽出を行い、4段向流逆抽出により、モリブデンが完全に逆抽出され、モリブデン含有過酸化水素水逆抽出液を得て、モリブデンの濃度が約110g/Lである。
【0051】
(4)モリブデン含有過酸化水素水溶液の温度を95℃まで上昇させて、その中のペルオキシ結合を解離させて、モリブデン酸沈殿物(モリブデンの沈殿率が約93.4%である)を形成し、更にか焼して、三酸化モリブデン製品を得た。結晶化母液に酸化カルシウムを添加することにより、未結晶のモリブデンを回収し、モリブデンの直接収率が約91.6%である。
【0052】
実施例4に記載の方法のように複数回循環した後、レニウムの濃度が0.3~0.5g/Lまで濃縮され、その後、アニオン抽出剤又はアニオン交換樹脂によりレニウムの回収を行う。
【0053】
以上の実施例は、本発明の具体的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば、従来技術を基礎として、種々の修正及び変更を行うこともできる。当業者が本発明の設計精神から逸脱しない範囲内で本発明の技術方案に加えた様々な変形と改良は、すべて本発明の特許請求の範囲によって規定される保護範囲内に含まれるべきである。