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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】ナノ水素化マグネシウムの原位調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 6/04 20060101AFI20220422BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20220422BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20220422BHJP
   B01J 23/22 20060101ALI20220422BHJP
   B01J 23/20 20060101ALI20220422BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
C01B6/04
C01B3/00 B
B01J21/06 M
B01J23/22 M
B01J23/20 M
B01J23/755 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020569962
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 CN2020079105
(87)【国際公開番号】W WO2020207188
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】201910286493.2
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ ヨンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ザン シン
(72)【発明者】
【氏名】パン ホングー
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ミンシア
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101117211(CN,A)
【文献】特開2012-038697(JP,A)
【文献】米国特許第09828245(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第106865497(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 6/04
C01B 3/00
B01J 21/06
B01J 23/22
B01J 23/20
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の手順からなることを特徴とするナノ水素化マグネシウムの原位(in-situ synthesis)調製方法であって、
(1)不活性環境の保護で、塩化マグネシウムと水素化リチウムを有機溶剤に入れ、攪拌しながら混合物の有機懸濁液を得る;
(2)不活性環境の保護で、全ての有機懸濁液に対して超音波処理を行って混合物の化学反応を促進し、反応が終わった後にろ過して固体反応産物を得る;
(3)不活性環境の保護で、有機溶剤で固体反応産物に対して洗浄、遠心と乾燥を行い、残留した有機物を除去した後にナノ水素化マグネシウムを得る、ナノ水素化マグネシウムの原位調製方法。
【請求項2】
手順(1)の中で塩化マグネシウムと水素化リチウムを有機溶剤に入れる前にそれぞれに対してボール研磨を行い、ボール研磨後の塩化マグネシウムと水素化リチウムを得ること、
前述のボール研磨の回転速度は100~400回転/で、回転時間を3~12時間とすることを特徴とする請求項1に記載のナノ水素化マグネシウムの原位調製方法。
【請求項3】
手順(1)の中で前述の塩化マグネシウムが無水塩化マグネシウムで、塩化マグネシウムと水素化リチウムのモル比が1:2であることを特徴とする請求項1に記載のナノ水素化マグネシウムの原位調製方法。
【請求項4】
手順(1)に記載される有機溶剤が超乾燥テトラヒドロフラン、超乾燥シクロヘキサン又は超乾燥エーテルであることを特徴とする請求項1に記載のナノ水素化マグネシウムの原位調製方法。
【請求項5】
手順(1)の代わりに手順(A)によることを特徴とする請求項1に記載のナノ水素化マグネシウムの原位調製方法であって、
手順(A):塩化マグネシウム、水素化リチウムと遷移金属塩化物を合わせて有機溶剤に入れ、攪拌しながら有機懸濁液を得た後、手順(2)と(3)を経て触媒が混ざったナノ水素化マグネシウムを得る;
前記遷移金属塩化物は無結晶水の塩化物で、具体は四塩化チタン、三塩化チタン、四塩化ジルコニウム、三塩化バナジウム、五塩化ニオビウム、二塩化ニッケル又は二塩化コバルトであり、
前述の遷移金属塩化物と塩化マグネシウムとのモル比が0.01~0.05:1で、水素化リチウムと遷移金属塩化物中の塩素イオンとのモル比が1:1である、ナノ水素化マグネシウムの原位調製方法。
【請求項6】
手順(2)の中で、前述の超音波処理の出力が100~600Wで、一回の超音波処理の時間が0.5~1時間で、処理の間隔が10~30分で、累計の超音波処理時間が3~24時間であることを特徴とする請求項1に記載のナノ水素化マグネシウムの原位調製方法。
【請求項7】
手順(2)の中で、超音波ロッドを前述の有機懸濁液の中に挿して超音波処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のナノ水素化マグネシウムの原位調製方法。
【請求項8】
手順(3)に記載される有機溶剤が超乾燥テトラヒドロフラン又は超乾燥アセトンで、洗浄の時間が1~2時間で、前述の乾燥が真空又は不活性環境の保護で加熱によって実現されることを特徴とする請求項1に記載のナノ水素化マグネシウムの原位調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素蓄積材料とナノ材料の技術分野に関係し、特にナノ水素化マグネシウムの原位調製方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー危機の加速と地球環境の悪化により、人類によるリサイクルグリーンエネルギー開発の加速を促進した。水素エネルギーがその豊富な蓄積量とクリーンで無汚染の特徴で人々に注目されている。現在、水素経済を制限しているネックはその輸送で、化学的水素蓄積の固体水素蓄積材料が車載による水素蓄積の問題を解決するために一番有効な方法と言われている。
【0003】
MgHは代表的な軽金属水素化物の水素蓄積材料で、その理論上の水素蓄積容量が7.6wt%に達し、且つ逆転性が良好のため、研究者に広く注目されている。但し、MgHの熱力学上の安定性が高く、水素放出の開始温度が高くて300℃に達し、水素放出の速度も遅く、車載による水素蓄積の運用に役立たないため、MgHの水素吸収と放出の温度を低減することがこの分野での研究の重点になっている。
【0004】
現在、MgH水素蓄積材料に対する変性研究は主に、(1)触媒混入、(2)成分変更と(3)ナノ化の三つに集中している。
【0005】
触媒の混入は今の研究の中で一番多く使われる変性手段で、この方法は一定の水素蓄積容量を確保した上でMgHの水素吸収と放出の動力学性能を著しく改善することができる。触媒変性の方法に基づき、研究者はTi-、Zr-、V-、Nb-、Ni-とCo-基の触媒がMgHの酸化/水素化の動力学性能に対して明らかな改善作用があることを発見した。但し、MgHの熱力学性能が安定で、水素放出の開始温度が高く、しかも既存の触媒は主に遷移金属酸化物とハロゲン化物に基づいた触媒であるため、加熱する間にMgHと反応して副産物のMgClとMgO等を発生し、水素蓄積容量のロスが起こりやすい。
【0006】
触媒を添加するより、ナノ化の方法がMgHの熱力学性能と動力学性能を同時に調製して、MgHの水素放出の開始温度を著しく低下させ、水素放出速度を向上させることが可能だが、現在のMgHナノ化技術は殆ど高比率表面材料がMgHナノ粒子を載せることに基づいている。ナノMgHを調製する間に粒子が大きくなったり、一箇所に集まることを防ぐために大量の炭素、有機変性珪素等の媒体材料でナノ産物を分散する必要があるため、材料の水素蓄積容量をかなり低下させ、実際の運用に適用しない。
【0007】
このため、粒子の寸法が小さく、触媒活性が高い金属単体触媒を調製すると共に、媒体が要らないナノMgHの調製技術を開発し、触媒混入とナノ化技術を複合して媒体のないナノ水素化マグネシウム原位触媒技術を開発することは、現在MgH基水素蓄積材料を更に改善するための一番実行可能な方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は触媒混入のナノ水素化マグネシウムの原位調製方法を提供することを目的とし、この方法は[MgCl-2LiH→MgH+2LiCl]の反応に基づき、超音波が液体媒体の中で発生するキャビテーション効果を利用し、極めて小さい範囲で素早くエネルギーを提供して反応を促進し、同時に超音波の分散効果を利用して産物の粒子寸法を制御し、粒子の集まりを防止し、水素化マグネシウムのナノ化調製を効率的に実現することができ、調製する間に適切な触媒前身を投入すると、原位触媒混入が実現でき、調製方法が簡単で、媒体が要らなく、得た触媒混入の水素化マグネシウムの水素蓄積材料は有効水素蓄積容量が高く、水素吸収・放出の温度が低く、速度が早い優位性を持っている。
【0009】
具体の技術案は以下の通りである。
【0010】
以下の手順を含むナノ水素化マグネシウムの調製方法。
(1)不活性環境の保護で、塩化マグネシウムと水素化リチウムを有機溶剤に入れ、攪拌しながら混合物の有機懸濁液を得る;
(2)不活性環境の保護で、前述の有機懸濁液に対して超音波処理を行って混合物の科学反応を促進し、反応が終わった後にろ過して固体反応産物を得る;
(3)不活性環境の保護で、有機溶剤で固体反応産物に対して洗浄、遠心と乾燥を行い、残留した有機物を除去した後にナノ水素化マグネシウムを得る。
【0011】
本発明は超音波が液体媒体で発生するキャビテーション効果でエネルギーを提供し、塩化マグネシウムと水素化リチウムとの間の化学反応を促進し、同時に超音波の破砕作用を利用して産物の粒子寸法を制御し、ナノ粒子の集まりを抑制してナノレベルの水素化マグネシウムを得る。前述の不活性環境とは不活性ガスで行うことをいい、前述の不活性ガスはアルゴンガス等である。
【0012】
本発明の優れるところは超音波処理を利用して原料の反応を加速するとともに産物の粒子径を制御し、操作手順を簡単化し反応のエネルギー消耗を低下する前提でナノ水素化マグネシウムの調製を実現することである。
【0013】
原材料に対して充分な粒子細分化を行って原材料が以降の操作中で有効的に有機溶剤の中に分散できるように、手順1の中で塩化マグネシウムと水素化リチウムを有機溶剤に入れる前にそれぞれに対してボール研磨を行い、ボール研磨後の塩化マグネシウムと水素化リチウムを得ることを優先する。
【0014】
前述のボール研磨の回転速度は100~400回転/時間で、回転時間を3~12時間とする。更に、手順(1)の中で前述の塩化マグネシウムが無水塩化マグネシウムで、塩化マグネシウムと水素化リチウムのモル比が1:2である。この比率で塩化マグネシウムが充分に水素化マグネシウムに変化することができ、且つ水素化リチウムが塩化リチウムへ変化する時に以下の反応式に一致する。
MgCl+2LiH → MgH+2LiCl (1)
【0015】
更に、前述の有機溶剤が超乾燥テトラヒドロフラン、超乾燥シクロヘキサン又は超乾燥エーテルである。
【0016】
更に手順(1)の代わりに手順(A)を利用する。
【0017】
手順(A):塩化マグネシウム、水素化リチウムと遷移金属塩化物を合わせて有機溶剤に入れ、攪拌しながら有機懸濁液を得る。その後手順(2)と(3)を経て触媒が混ざったナノ水素化マグネシウムを得る。
【0018】
前述の遷移金属塩化物は無結晶水の塩化物で、具体は四塩化チタン、三塩化チタン、四塩化ジルコニウム、三塩化バナジウム、五塩化ニオビウム、二塩化ニッケル又は二塩化コバルトである。
【0019】
本発明は遷移金属塩化物を触媒の前身、塩化マグネシウムをマグネシウム源、水素化リチウムを水素源及び還元剤、超音波によるキャビテーション効果をエネルギー源とし、粉末を有機溶剤の中に分散させることによって超音波処理を行い、水素化リチウムと塩化マグネシウムの化学反応を促進して水素化マグネシウムと塩化リチウムを生成し、同時に水素化リチウムが遷移金属塩化物を金属単体に還元し、塩化リチウムを生成する。有機溶剤で超音波処理による固体反応産物を洗浄することで、副産物の塩化リチウムを溶解して除去することができ、その後遠心又は抽出ろ過で分離させ、固体粉末材料を得る。更に動態の真空環境で乾燥処理を行い、遷移金属触媒を混合したナノ水素化マグネシウムを得る。
【0020】
更に、遷移金属塩化物の種類によって遷移金属塩化物と塩化マグネシウムとのモル比の適用範囲が少し異なる。その中に、四塩化チタンと三塩化チタンにとって遷移金属塩化物と塩化マグネシウムとのモル比が0.01~0.05:1で、この比率はサンプルに良好な水素吸収・放出の動力学を持たせることができ、且つ水素蓄積容量に対する影響が小さく、この範囲を超えると効果が悪くなるのである。四塩化ジルコニウム、三塩化バナジウム、五塩化ニオビウム、二塩化ニッケルと二塩化コバルトにとって、遷移金属塩化物と塩化マグネシウムとのモル比が0.01~0.1:1である。
【0021】
更に、前述の水素化リチウムと遷移金属塩化物中の塩素イオンとのモル比が1:1で、この比率で金属塩化物が充分に還元され、且つ水素化リチウムを全部塩化リチウムへ転換させることができる。
【0022】
更に、手順(2)の中で、前述の超音波処理の出力が100~600Wで、一回の超音波処理の時間が0.5~1時間で、処理の間隔が10~30分で、累計の超音波処理時間が3~24時間である。超音波処理時間の延長により、原材料の反応程度が徐々に向上し、MgHの量もそれによって増えるが、超音波処理の時間が長すぎるとシステムの温度が明らかに向上され、MgHの粒子が大きくなり、得た産物の水素吸収・放出の動力学が遅くなってしまう。超音波処理時間の延長と同じく、高すぎた出力によってエネルギーが過剰になり、システムの温度が上昇して産物の粒子が大きくなり、産物の性能に良くない。
【0023】
更に優先として、前述の超音波処理の出力が210Wで、一回の超音波処理の時間が0.5時間で、処理の間隔が30分累計の超音波処理時間が6時間である。
【0024】
更に、手順(2)の中で、超音波ロッドを前述の有機懸濁液に挿して超音波処理を行う。使用する超音波設備によって超音波処理に結果が異なる。超音波ロッドを備えた超音波設備で調製すると、効率が高く、反応速度が速いが、超音波洗浄機で調製すると反応に対する加速効果が悪く、反応速度が遅くなる。
【0025】
更に、手順(3)の中で前述の有機溶剤が超乾燥テトラヒドロフラン又は超乾燥アセトンであり、洗浄の時間は1~2時間で、副産物塩化リチウムが充分溶けることを確保できる。前述の乾燥は真空環境(真空度は1×10-3Torr以上)又は不活性環境の保護で加熱して実現され、処理時間は1~2時間とする。
【0026】
手順(3)中の複数回遠心操作は酸素水汚染を防ぐためにサンプルを遠心管に入れて密封する必要がある。遠心の回転速度は5000~10000回転/分で、遠心の時間は5~20分とする。
【0027】
本発明は前述の原位方法で調製したナノ水素化マグネシウムを提供した。
【0028】
既存の技術と比べて、本発明は以下のようなメリットを持っている。
【0029】
(1)本発明は超音波によるキャビテーション効果をエネルギー源として塩化マグネシウムと水素化リチウムとの間の化学反応を促進するとともに、超音波の破砕作用を利用して産物の粒子寸法を制御し、ナノ粒子の集まりを抑制することで、各種の媒体材料を添加して粒子の増大を抑制することによる副作用を防ぎ、ナノレベルの水素化マグネシウムが得られ、産物の高水素蓄積容量を確保できた。
【0030】
(2)本発明の方法は塩化マグネシウム、水素化リチウムと遷移金属塩化物を合わせて有機溶剤の中に入れて超音波処理を行い、水素化マグネシウムのナノ化と触媒混入を同時に実現し、ナノ効果とナノ触媒効果を充分利用して水素化マグネシウムの水素放出温度を大幅に低下させることができる。
【0031】
(3)本発明はLiHを還元剤とし、ナノ水素化マグネシウムと調製する同時に高原子価の金属を充分還元させることができる。このほか、反応の前身MgClがテトラヒドロフラン等の有機溶剤に溶けやすく、LiHの密度が低く通常は溶剤の表面に漂い、塩化リチウムが副産物として複数の有機溶剤に溶ける。上記の物質は反応が終わった後に除去しやすく、最終産物の純度を確保することができる。
【0032】
(4)既存の金属酸化物(TiO、ZrO等)又はハロゲン化物(TiF、TiCl、ZrCl等)と比べて、本発明の方法で調製した触媒は水素化マグネシウム水素蓄積材料と混合した後にMgCl又はMgOのような副産物を発生することがなく、水素蓄積材料が高い容量を保持でき、且つ触媒とナノ水素化マグネシウムが同時に生成され、材料のナノ化と触媒の混入を同時に実現でき、しかも触媒が水素化マグネシウムのナノ粒子の中で均一に分布しているため、触媒の効果が優れている。
【0033】
(5)本発明の方法で調製したナノ水素化マグネシウムは粒子寸法が5nm以内に維持し、水素蓄積容量が高く、水素吸収・放出温度が通常の技術で調製した水素化マグネシウムより大幅に低下されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は実施例1で調製されたナノ水素化マグネシウムのEDSグラフ (a)とXPSグラフ (b)である。
図2図2は実施例1で調製されたナノ水素化マグネシウムのSEM写真である。
図3図3は実施例1で調製されたナノ水素化マグネシウムのTEM写真(a)と高解像度のTEM写真(b, c)である。
図4図4は実施例1で調製されたナノ水素化マグネシウムの温度変化に伴う脱水素質量スペクトル曲線:(a)水素ガス析出曲線と(b) テトラヒドロフラン析出曲線である。
図5図5は実施例1で調製されたナノ水素化マグネシウムサンプルと比較例2、比較例3で調製された水素化マグネシウムの温度変化に伴う脱水素質量スペクトル曲線の比較図である。
図6図6は実施例1で調製されたナノ水素化マグネシウムサンプル(a)と比較例2、比較例3で調製された水素化マグネシウム(b)が各段階に水素を放出したXRD図である。
図7図7は実施例2で調製されたTi触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルのEDSグラフ (a) とTi元素のXPSグラフ (b)である。
図8図8は実施例2で調製されたTi触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルのTEM写真(a)と高改造素のTEM写真(b)である。
図9図9は実施例2で調製されたTi触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルと比較例4、比較例5で調製されたTiCl混入の水素化マグネシウムの温度変化に伴う脱水素質量スペクトル曲線の比較図である。
図10図10は実施例2と比較例6で調製されたTi触媒の添加量が異なる水素化マグネシウムサンプルの温度変化に伴う脱水素質量スペクトル曲線の比較図である。
図11図11は実施例2と比較例6で調製されたTi触媒の添加量が異なる水素化マグネシウムサンプルの脱水素産物のXRD比較図である。
図12図12は実施例3で調製されたV触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルのEDSグラフ(a)とV元素のXPSグラフ(b)である。
図13図13は実施例3で調製されたV触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルと比較例7、比較例8で調製されたVCl 混入の水素化マグネシウムの温度変化に伴う脱水素質量スペクトル曲線の比較図である。
図14図14は実施例4で調製されたZr触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルのEDSグラフ(a)とZr元素のXPSグラフ(b)である。
図15図15は実施例4で調製されたZr触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルと比較例9、比較例10で調製されたZrCl混入の水素化マグネシウムの温度変化に伴う脱水素質量スペクトル曲線の比較図である。
図16図16は実施例5で調製されたNb触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルと比較例11、比較例12で調製されたNbCl混入の水素化マグネシウムの温度変化に伴う脱水素質量スペクトル曲線の比較図である。
図17図17は実施例6で調製されたNi触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルSEM写真(a)、TEM写真(b)と高解像度のTEM写真 (c, d)である。
図18図18は実施例6で調製されたNi触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルと従来の方法で調製されたNiCl混入の水素化マグネシウムの温度変化に伴う脱水素質量スペクトル曲線の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下で具体の実施例に基づき本発明について更に説明し、下記に挙げられたのは本発明の具体実施例のみだが、本発明の保護範囲はこれに限らない。
【0036】
実施例1 ナノ水素化マグネシウムの調製
(1)500mgの無水塩化マグネシウムと500mg水素化リチウムをアルゴンガス環境の手袋箱の中でそれぞれボール研磨タンクを装着し、350回転/分の回転速度で、ボール研磨で3時間破砕する。
【0037】
(2)アルゴンガス環境の手袋箱の中でボール研磨後の無水塩化マグネシウムと水素化リチウム(モル比1:2)を合計600mg取って250mlのフラスコに入れ、その後フラスコの中に150mlの超乾燥テトラヒドロフランを入れ、30min攪拌して塩化マグネシウムが充分溶けるまで待つ。
【0038】
(3)超音波ロッドをフラスコに挿し、超音波ロッドの末端がフラスコ内の混合物の中心部にあるように保持し、210Wの出力で超音波処理を行い、処理する間にサンプルの温度が高すぎないように、連続で30分後に30分停止し、累計6時間処理後に超音波産物を得る。
【0039】
(4)遠心の方法(8000回転/分)で、手順(3)における超音波産物中の固体粉末を分離させ、100mlのフラスコに入れ、50mlの超乾燥テトラヒドロフランを注入し、2時間攪拌した後に洗浄し、副産物塩化リチウムをテトラヒドロフラン中に充分溶解させる。
【0040】
(5)遠心の方法(8000回転/分)で、手順(4)で得た固体粉末を分離させ、再びテトラヒドロフランで洗浄した後に遠心で固体粉末を得、動態の真空(真空度は1×10-3Torr)環境で2時間保持して乾燥させ、残留したテトラヒドロフランを除去した後にナノ水素化マグネシウムサンプルを得ることができ、その後サンプルを手袋箱の中に保管する。
【0041】
上記の手順で調製したサンプルはナノ水素化マグネシウムサンプル(nano-MgH)で、図1aから見ると、サンプルの中にはマグネシウムのみが含まれ、微弱な酸素信号と炭素信号が空気中の炭素酸素汚染又は微量の有機溶剤の残留からのものであることはサンプルがマグネシウムからなることを表明することが分かる。図1bから見ると、得たサンプル中のマグネシウム元素の2pスピン軌道ピークが50.2eVにあり、サンプル中のマグネシウム元素が全て水素化マグネシウムの形で存在することを表明することが分かる。
【0042】
図2から見るとサンプルが大量の水素化マグネシウムナノ粒子が積重ねて構成され、粒子が殆ど近似球状であることが分かる。
【0043】
図3から見ると水素化マグネシウムナノ粒子が基本5nmに維持しており、高解像度の透過写真によって水素化マグネシウム粒子の結晶表面距離0.225nmが(200)結晶表面グループと定めることができる。
【0044】
上記の分析によると、本方法でナノ水素化マグネシウムを調製できることが分かる。サンプルを2℃/minで室温から400℃まで加熱し、質量分析計でサンプルが過熱される間の脱水素曲線(図4)を分析し、図から見ると、ナノ水素化マグネシウムが加熱される間に水素ガスのみ放出し、テトラヒドロフランガスの放出が殆どないことがら、有機溶剤が動態真空の中で完全に除去されたことを表明することが分かる。水素放出曲線から見ると、サンプルの水素放出開始温度が100℃以下で、最初の水素放出ピーク温度が190℃で、従来の方法で調製された水素化マグネシウムサンプルより水素の放出温度が低いことが分かる。
【0045】
比較例1 反応促進システムがない状態での水素化マグネシウムの調製
(1)500mgの無水塩化マグネシウムと500mgの水素化リチウムをアルゴンガス環境の手袋箱の中でそれぞれボール研磨タンクを装着し、350回転/分の回転速度で、ボール研磨で3時間破砕する。
【0046】
(2)アルゴンガス環境の手袋箱の中でボール研磨後の無水塩化マグネシウムと水素化リチウム(モル比1:2)を合計600mg取って250mlのフラスコに入れ、その後フラスコの中に150mlの超乾燥テトラヒドロフランを入れ、12h攪拌する。
【0047】
(3)遠心(8000回転/分)の方法で手順(3)における超音波産物中の固体物質を分離させる。
【0048】
上記の実験結果によると、遠心では固体材料を集計することができないことから、MgClとLiHとの間の反応に高いエネルギーがあり、規定外のエネルギー(超音波)の状況で、MgClとLiHが常温常圧で反応する時の動力学が遅すぎるため、超音波が本発明の中で粒子が集まって大きくなるのを抑えるとともに、MgClとLiHとの間の化学反応を加速する役割も果たしている。
【0049】
比較例2
アルゴンガスで充填された手袋箱の中で無水の塩化マグネシウムと水素化リチウム(モル比1:2)合計1.2gをボール研磨タンクに入れてボール研磨を行い、ボール研磨はアルゴンガスの環境で行われ、回転速度は500回転/分、ボール材料の比率が120:1、ボール研磨の時間が24時間。ボール研磨後のサンプルを不活性ガスの環境でテトラヒドロフランの中に入れて二回洗浄して副産物塩化リチウムを除去し、その後遠心により固体粉末を取得し、動態真空の条件下(真空度1×10-3Torr)で残留したテトラヒドロフランを除去した後にボール研磨法で調製されたMgHサンプルが得られ、その後サンプルを2℃/minの昇温速度で400℃まで加熱し、質量分析計でサンプルが加熱される間の水素放出状況を記録する。
【0050】
図5から見ると、超音波補助方法で調製されたナノ水素化マグネシウムはボール研磨法で調製された水素化マグネシウムより開始温度が180℃低く、最初の水素放出ピーク温度が130℃低下し、水素放出性能が明らかに改善されたことが分かる。
【0051】
図6aから見ると、調製された水素化マグネシウムは粒子の寸法が小さく、MgHの回折ピークの強度が低く、ピークの幅が大きいため、水素を放出する間にMgの回折ピークが徐々に現れ、且つ温度の上昇によって強くなり、水素放出産物が水素を吸収した後にMgのピークが消えたことが分かる。比較例2の中で従来の方法で調製されたMgHの水素放出過程と比べて、超音波で調製されたナノ水素化マグネシウムの分解で得た金属マグネシウムは粒子の寸法が小さく、表面原子が占める比率が高く、結晶格子の順序度が悪く、回折ピークが広いため、従来の方法で調製されたMgH放の水素放出産物の結晶性が良く、ピーク形が鋭利であることが分かる。
【0052】
比較例3
アルゴンガスで充填された手袋箱の中で、1gのマグネシウム粉をステンレスの管式密封反応機に入れ、反応機中に20大気圧の高純度アルゴンガスを充填し、その後反応機を550℃と350℃まで加熱し、それぞれ4時間保温し、反応機内のマグネシウム粉を充分水素化マグネシウムへ水素化し、その後反応機内の水素化マグネシウムをボール研磨タンクに移し、ボール研磨タンクに50大気圧の高純度水素ガスを充填して、回転速度を500回転/分、ボール材料比率を120:1で24時間ボール研磨を行い、水素化マグネシウムサンプルを得た後にサンプルを2℃/minの昇温速度で400℃まで加熱し、質量分析計でサンプルが加熱される間の水素放出状況を記録する。
【0053】
図5から見ると、超音波補助方法で調製されたナノ水素化マグネシウムは加熱-ボール研磨で調製された水素化マグネシウムより開始温度が125℃低下し、最初の水素放出のピーク温度が90℃低下し水素放出性能が明らかに改善されたことが分かる。図6bから見ると、本実施例のMgHが水素放出する間に得たMgと超音波で調製されたナノ水素化マグネシウムの分解で得た金属マグネシウムと結晶格子が明らかに違うことが分かる。
【0054】
実施例2 Ti触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルの調製
(1)無水塩化マグネシウム(500mg)と水素化リチウム(500mg)をアルゴンガス環境の手袋箱の中でそれぞれボール研磨タンクに入れて350回転/分の回転速度で、ボール研磨で3時間破砕する。
【0055】
(2)アルゴンガス環境の手袋箱の中でボール研磨後の無水塩化マグネシウムと水素化リチウム(モル比1:2)合計600mg及び四塩化チタン(TiCl)(16.4 μL)を取って250mlのフラスコに入れ、その後フラスコの中に100mlの超乾燥シクロヘキサンを注入して30min撹拌する。本実施例の配合率、Ti触媒と塩化マグネシウムのモル比は0.03:1である。
【0056】
(3)超音波ロッドをフラスコに挿し、超音波ロッドの末端がフラスコ内の混合物の中心部にあるように保持し、210Wの出力で超音波処理を行い、超音波処理する間にサンプルの温度が高過ぎないようにするため、連続で30分処理後に30分停止させ、累計6時間処理後に超音波産物を得る。
【0057】
(4)遠心の方法(8000回転/分)で、手順(3)における超音波産物中の固体粉末を分離させ、その後100mlのフラスコに入れて50mlの超乾燥テトラヒドロフランを注入し、磁力で2時間撹拌した後に洗浄し、副産物塩化リチウムを充分テトラヒドロフランの中に溶解させる。
【0058】
(5)遠心の方法(8000回転/分)で、手順(4)で得られた固体粉末を分離させ、再びテトラヒドロフランで洗浄した後に遠心で固体粉末を取得し、動態真空(真空度が1×10-3Torr)状態で2時間保持して残留したテトラヒドロフランを除去した後にTi触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルが得られ、nano-MgH-0.03Tiと名付けた後にサンプルを手袋箱の中で保管する。
【0059】
図7aから見ると、サンプルの中にはマグネシウムとチタンのみが含まれ、微弱な酸素信号と炭素信号が空気中の炭素酸素汚染又は微量の有機溶剤の残量からのものであることから、サンプルの主要成分が水素化マグネシウムで、少量のチタンを触媒としたことを表明することが分かる;図7bから見ると、得たサンプル中のチタンのTi2p3/2-2P1/2二重スピン軌道のピークがそれぞれ453.9eVと459.3eVにあることから、本方法を利用してTiClが完全にTi単体に還元されたことを表明することが分かる。これによると、超音波がMgHの合成反応を起こすとともに、LiHがTiClに対する還元反応も起こすことができる。
【0060】
図8から見ると、水素化マグネシウムのナノ粒子が基本5nmに維持しており、高解像度の透過写真によって水素化マグネシウム粒子の結晶表面距離0.225nmが(200)結晶表面グループであると定められることが分かる。
【0061】
上記の分析によると、本方法を利用してTi触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルを調製できることが分かる。サンプルを2℃/minで室温から400℃まで加熱し、質量分析計でサンプルが加熱される間の脱水素曲線(図9)を分析し、図から見ると、サンプルの水素放出開始温度が40℃で、最初の水素放出ピーク温度が115℃で、通常の方法で調製された水素化マグネシウムサンプルより水素放出の温度が低いことが分かる。
【0062】
このほか、Ti触媒と塩化マグネシウムのモル比が0.01:1と0.05:1で調製したTi触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルに対して、質量分析計でサンプルが加熱される間の脱水素曲線を分析し、サンプルの水素放出開始温度が35℃(0.01:1)と50℃(0.05:1)で、最初の水素放出ピーク温度が90℃(0.01:1)と125℃(0.05:1)である(図9)。
【0063】
比較例4
アルゴンガスで充填された手袋箱の中で無水の塩化マグネシウムと水素化リチウム(モル比1:2合計1.2g)及び四塩化チタン(32.5μL)をボール研磨タンクに入れて高出力のボール研磨機中でボール研磨を行い、ボール研磨はアルゴンガスの環境で行われ、回転速度は500回転/分、ボール材料の比率が120:1、ボール研磨の時間が24時間である。ボール研磨後のサンプルを不活性ガスの環境でテトラヒドロフランの中に入れて二回洗浄して副産物塩化リチウムを除去し、その後遠心により固体粉末を取得し、動態真空の条件下(真空度1×10-3Torr)で残留したテトラヒドロフランを除去した後にチタン触媒混入のMgH2サンプルが得られ、本比較例で調製されたサンプルの中でチタン触媒と塩化マグネシウムのモル比が0.03:1で、その後サンプルを2℃/minの昇温速度で400℃まで加熱し、質量分析計でサンプルが加熱される間の水素放出状況を記録する。
【0064】
図9から見ると、超音波補助方法で調製されたTi触媒混入のナノ水素化マグネシウムはボール研磨で調製された水素化マグネシウムより開始温度が140℃低下し、最初の水素放出のピーク温度が143℃低下し水素放出性能がボール研磨で調製されたサンプルより明らかに優れていることが分かる。
【0065】
比較例5
アルゴンガスで充填された手袋箱の中で、1gのマグネシウム粉をステンレスの管式密封反応機に入れ、反応機中に20大気圧の高純度アルゴンガスを充填し、その後反応機を550℃と350℃まで加熱し、それぞれ4時間保温し、反応機内のマグネシウム粉を充分水素化マグネシウムへ水素化し、その後反応機内の水素化マグネシウムをボール研磨タンクに移して32.5μLの四塩化チタンを入れた後にボール研磨タンクに50大気圧の高純度水素ガスを充填して、回転速度を500回転/分、ボール材料比率を120:1で24時間ボール研磨を行い、チタン触媒混入の水素化マグネシウムサンプルを得る。本比較例で調製されたサンプルの中で、チタン触媒とMgHのモル比が0.03:1で、その後サンプルを2℃/minの昇温速度で400℃まで加熱し、質量分析計でサンプルが加熱される間の水素放出状況を記録する。
【0066】
図9から見ると、超音波補助方法で調製されたTi触媒混入のナノ水素化マグネシウムは加熱-ボール研磨で調製されたTi触媒混入の水素化マグネシウムより開始温度が120℃低下し、最初の水素放出のピーク温度が110℃低下し水素放出性能が明らかに改善されたことが分かる。
【0067】
比較例6
実施例3の中で説明された同じ方法で、超音波補助でTi触媒混入のナノ水素化マグネシウムを調製し、その中のTiClの使用量を増やし、Ti触媒と塩化マグネシウムのモル比が0.1 : 1である。
【0068】
図10から見ると、本比較例の中でTiClの使用量を増やした後に、性能が明らかに悪くなり、主要の水素放出ピークが高温エリアへずれ、低温エリアでは微弱な水素放出しかなく、これは過剰の触媒を添加すると超音波がMgClとLiHの反応を促進することに不利な影響があり、 [MgCl+2LiH→MgH+2LiCl]反応のエネルギーを低下させ、余ったエネルギーが産物の結晶を促進し、MgH粒子の寸法が大きくなったことを表明することが分かる。図11から見ると、過剰の触媒を添加した後に、サンプルの水素放出の産物Mgに比較例2(従来の方法)中のサンプルの水素放出産物に似たピーク形状が現れたことが分かる。
【0069】
実施例3 V触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルの調製
実施例2の調製方法と同じで、違う点は使用する遷移金属触媒が三塩素化バナジウムVClであること。表1の中に関係する原料配合率及び重要プロセスを記載し、当該サンプルをnano-MgH-0.03Vと名付けた。
【0070】
【表1】
【0071】
図12aから見ると、サンプルの中にはマグネシウムとバナジウムのみが含まれ、微弱な酸素信号と炭素信号が空気中の炭素酸素汚染又は微量の有機溶剤の残量からのものであることから、サンプルの主要成分が水素化マグネシウムで、少量のバナジウムを触媒としたことを表明することが分かる;図12bから見ると、得たサンプル中のチタンのV2p3/2-Vp1/2二重スピン軌道のピークがそれぞれ512.5eVと519.7eVにあることから、本方法を利用してVClが完全にV単体に還元されたことを表明することが分かる。
【0072】
質量分析計でサンプルの脱水素曲線(2℃/min)(図13)を分析し、本実施例のサンプルの水素放出性能パラメータを表4の中に纏めた。このサンプルが通常の方法で調製された水素化マグネシウムサンプルより水素放出の温度が低い。
【0073】
比較例7
比較例4に使用される方法と同じで、違う点は使用する遷移金属塩化物が三塩化バナジウムであること。表2は本比較例に使用されるボール研磨プロセスと原料配合率を示したものである。
【0074】
【表2】
【0075】
本比較例で調製されたサンプルの中で、V触媒とMgHのモル比が0.03:1で、図13は実施例3のサンプルと本比較例のサンプルの水素放出曲線の比較図を示したもので、関係の水素放出性能のパラメータが表4に纏められている。
【0076】
比較例8
比較例5に使用される方法と同じで、違う点は使用する遷移金属塩化物が三塩化バナジウムであること。表3は本比較例の混合触媒と水素化マグネシウムに使用されるボール研磨プロセスと原料配合率を示したものである。
【0077】
【表3】
【0078】
本比較例で調製されたサンプルの中で、V触媒とMgHのモル比が0.03:1で、図13は実施例3のサンプルと本比較例のサンプルの水素放出曲線の比較図を示したもので、サンプルの水素放出性能のパラメータが表4に纏められている。
【0079】
【表4】
【0080】
表4に纏められたサンプルの性能比較から見ると、超音波補助法で調製されたサンプルが従来の方法で調製されたサンプルよりも更に優れた水素放出の動力学性能を持っていることが分かる。
【0081】
実施例4 Zr触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルの調製
比較例2に使用される方法と同じで、違う点は使用する遷移金属触媒が四塩化ジルコニウムZrClであること。表4には関係の原料配合率と重要プロセスを記載し、当該サンプルをnano-MgH-0.03Zrと名付けた。
【0082】
【表5】
【0083】
図14aはサンプルのパワースペクトルデータ(EDS)を示したもので、図から見ると、サンプルの中にはマグネシウムとジルコニウムのみが含まれ、微弱な酸素信号と炭素信号が空気中の炭素酸素汚染又は微量の有機溶剤の残量からのものであることから、サンプルの主要成分が水素化マグネシウムで、少量のジルコニウムを触媒としたことを表明することが分かる。図14はサンプル中のチタン元素のX線光電子パワースペクトル分析グラフ(XPSグラフ)を示したもので、図から見ると、得たサンプル中のジルコニウムのZr3d5/2-3d3/2二重スピン軌道がそれぞれ177.6eVと181.1eVにあることから、本方法を利用してZrClが完全にZr単体に還元されたことが分かる。
【0084】
上記の分析によると、本方法を利用してZr触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルを調製できることが分かる。質量分析計でサンプルの脱水素曲線(2℃/min)(図15)を分析し、サンプルの水素放出性能のパラメータを表8に纏めた。このサンプルは通常の方法で調製された水素化マグネシウムサンプルより水素放出の温度が低いことが分かる
【0085】
比較例9
比較例4に使用される方法と同じで、違う点は使用する遷移金属塩化物が四塩化ジルコニウムであること。表6は本比較例に使用されるボール研磨プロセスと原料配合比率を示したものである。
【0086】
【表6】
【0087】
図15は実施例4のサンプルと本比較例のサンプルの水素放出曲線の比較図を示したもので、本比較例サンプルの水素放出性能のパラメータを表8に纏められている。
【0088】
比較例10
比較例5に使用される方法と同じで、違う点は使用する遷移金属塩化物が四塩化ジルコニウムであること。表7は本比較例中の混合触媒と水素化マグネシウムに使用されるボール研磨プロセスと原料配合比率を示したものである。
【0089】
【表7】
【0090】
本比較例で調製されたサンプルの中で、Zr触媒とMgHのモル比が0.03:1で、図15は実施例4のサンプルと本比較例のサンプルの水素放出曲線の比較図を示したもので、サンプルの水素放出性能のパラメータが表8に纏められている。
【0091】
【表8】
【0092】
表8に纏められたサンプルの性能比較から見ると、超音波補助法で調製されたサンプルが従来の方法で調製されたサンプルよりも更に優れた水素放出の動力学性能を持っていることが分かる。
【0093】
実施例5 Nb触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルの調製
比較例2に使用される方法と同じで、違う点は使用する遷移金属触媒が四塩化ジルコニウムNbClであること。表9には関係の原料配合率と重要プロセスを記載し、当該サンプルをnano-MgH-0.03Nbと名付けた。
【0094】
【表9】
【0095】
図16はサンプルが加熱される間の脱水素曲線(2℃/min)を示したもので、当該サンプルの水素放出性能のパラメータを表11に纏めた。通常の方法で調製された水素化マグネシウムサンプルより水素放出の温度が低い。
【0096】
比較例11
比較例4に使用される方法と同じで、違う点は使用する遷移金属塩化物が五塩化ニオビウムであること。表10は本比較例に使用されるボール研磨プロセスと原料配合率を示したものである。
【0097】
【表10】
【0098】
本比較例で調製されたサンプルの中で、Nb触媒とMgHのモル比が0.03:1で、図16は実施例5のサンプルと本比較例のサンプルの水素放出曲線の比較図を示したもので、サンプルの水素放出性能のパラメータが表11に纏められている。
【0099】
比較例12
比較例5に使用される方法と同じで、違う点は使用する遷移金属塩化物が五塩化ニオビウムであること。表11は本比較例の混合触媒と水素化マグネシウムに使用されるボール研磨プロセスと原料配合率を示したものである。
【0100】
【表11】
【0101】
本比較例で調製されたサンプルの中で、Nb触媒とMgHのモル比が0.03:1で、図16は実施例5のサンプルと本比較例のサンプルの水素放出曲線の比較図を示したもので、サンプルの水素放出性能のパラメータが表12に纏められている。
【0102】
【表12】
【0103】
表12に纏められたサンプルの性能比較から見ると、超音波補助法で調製されたサンプルが従来の方法で調製されたサンプルよりも更に優れた水素放出の動力学性能を持っていることが分かる。
【0104】
実施例6 Ni触媒混入のナノ水素化マグネシウムサンプルの調製
実施例2に使用される方法と同じで、違う点は使用する遷移金属触媒が四塩化ジルコニウムNiClであること。表13には関係の原料配合率と重要プロセスを記載し、当該サンプルをnano-MgH-0.03Niと名付けた。
【0105】
【表13】
【0106】
図17はnano-MgH-0.03NiサンプルのSEMとTEM写真を示したもので、図から見ると、サンプルがグラフェンに似た層状構造を呈することが分かり、サンプルのTEM写真から見ると、層毎のサンプルの中に大量の重ね合っているナノMgH粒子が含まれ、粒子の寸法が3nm程度に維持し、添加剤の成分を変えることで、産物の外観に一定の変化作用があることが分かる。
【0107】
図18は本実施例のサンプルの水素放出曲線(2℃/min)で、本実施例のサンプルの水素放出性能のパラメータを表16に纏めた。通常の方法で調製された水素化マグネシウムサンプルより水素放出の温度が低い。
【0108】
比較例13
比較例4に使用される方法と同じで、違う点は使用する遷移金属塩化物が二塩化ニッケルであること。表14は本比較例に使用されるボール研磨プロセスと原料配合率を示したものである。
【0109】
【表14】
【0110】
本比較例で調製されたサンプルの中で、Ni触媒とMgHのモル比が0.03:1で、図18は実施例6のサンプルと本比較例のサンプルの水素放出曲線の比較図を示したもので、サンプルの水素放出性能のパラメータが表16に纏められている。
【0111】
比較例14
比較例5に使用される方法と同じで、違う点は使用する遷移金属塩化物が二塩化ニッケルであること。表15は本比較例の混合触媒と水素化マグネシウムに使用されるボール研磨プロセスと原料配合率を示したものである。
【0112】
【表15】
【0113】
本比較例で調製したサンプルの中で、Ni触媒とMgHのモル比が0.03:1で、図18は実施例6のサンプルと本比較例のサンプルの水素放出曲線との比較図を示したもので、本比較例のサンプルの水素放出性能パラメータが表16の中に纏められている。
【0114】
【表16】
【0115】
表12に纏められたサンプル性能比較から見ると、超音波補助法で調製されたサンプルは従来の方法で調製されたサンプルよりもっと優れる水素放出動力学の性能を持っていることが分かる。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17(a)】
図17(b)】
図17(c)】
図17(d)】
図18