(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】抄紙機のフレーム開放装置
(51)【国際特許分類】
D21F 7/00 20060101AFI20220422BHJP
D21F 7/02 20060101ALI20220422BHJP
D21F 3/00 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
D21F7/00 A
D21F7/02
D21F3/00
(21)【出願番号】P 2021187405
(22)【出願日】2021-11-17
【審査請求日】2021-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145884
【氏名又は名称】株式会社小林製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】仁科 朋裕
(72)【発明者】
【氏名】瀧 亮介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大地
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-182996(JP,A)
【文献】実開平05-035897(JP,U)
【文献】特表平06-500604(JP,A)
【文献】特開平01-148893(JP,A)
【文献】特開平06-173187(JP,A)
【文献】実開昭62-036099(JP,U)
【文献】実開昭63-149998(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00-1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00-9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機における上下のフレームの間に設けられた可動ピースをそれらの上下のフレームの間から移動させ、それらの上下のフレームの間に開放スペースを形成し、抄紙機に用いられる無端周回状の用具を該開放スペースからそれらの上下のフレームの内外に着脱可能にする抄紙機のフレーム開放装置において、
該上フレームを持ち上げた状態下で該可動ピースを該開放スペースに対して挿入するとともに、引き出し可能にするアクチュエータを有し、
該アクチュエータは、
該可動ピースを該下フレームの上面に沿ってスライドさせ該開放スペースに対して挿入するとともに、引き出し可能にし、
該開放スペースから引き出した該可動ピースを該開放スペースに臨む用具着脱作業領域外に移動可能
にし、
該可動ピースは、該開放スペース内の挿入完了位置に設定されるとき、該上フレームと該下フレームのそれぞれに設けた上下の連結部のそれぞれと連結し、それらの上下のフレームと該可動ピースの3者を一体結合する連結手段を備えるものとされ、
それらの上下の連結部のそれぞれは、それらの上下のフレームのそれぞれに設けた各支点に、該可動ピースの移動方向に沿ってスイング自在に設けられ、該可動ピースが該アクチュエータによって該開放スペース内の挿入完了位置に進入されるとき、該可動ピースの該開放スペースへの進入方向の手前の待受位置にて該可動ピースの進入を待ち受けることにより、該可動ピースが備える連結手段に接してスイングされつつ該連結手段に係合し、それらの上下のフレームと該可動ピースの3者を一体結合することを特徴とする抄紙機のフレーム開放装置。
【請求項2】
前記上連結部は、前記連結手段に係合する係合ローラーを該上フレームに設けた前記支点に対する下端側に備え、前記可動ピースの進入を待ち受けるとき、該係合ローラーの重みにより当該上連結部を鉛直状態にして前記待受位置に位置付けられ、
前記下連結部は、該連結手段に係合する係合ローラーを前記下フレームに設けた前記支点に対する上端側に備えるとともに、該下連結部に備えた該係合ローラーに対して該下フレームに設けた該支点を挟んで反対側となる下端側にウエイトを備え、該可動ピースの進入を待ち受けるとき、該ウエイトの重みにより当該下連結部を鉛直状態にして前記待受位置に位置付けられる請求項1に記載の抄紙機のフレーム開放装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記下フレームに対して相対移動することのない支軸まわりで原位置と最大旋回位置との間を旋回する旋回アームを有し、
該旋回アームは、前記可動ピースが移動する面に沿って旋回可能にされ、該可動ピースに枢支されて該可動ピースが移動する面に直交する回動軸が備えるスライド孔に該旋回アームの先端ロッド部をスライド可能に嵌合され、
該旋回アームが原位置と一定の中間旋回位置との間を旋回するとき、該旋回アームは該可動ピースを前記開放スペース内の挿入完了位置と前記開放スペース外の引き出し完了位置との間で直線移動させ、
該旋回アームが上記中間旋回位置と最大旋回位置との間を旋回するとき、該旋回アームは該可動ピースを前記引き出し完了位置と前記用具着脱作業領域外の逃げ位置との間で旋回移動させる請求項1
又は2に記載の抄紙機のフレーム開放装置。
【請求項4】
前記旋回アームは、前記可動ピースが前記引き出し完了位置と前記逃げ位置との間にあるとき、該可動ピースに設けた係合部と係合し、該旋回アームに対する該可動ピースの自由な相対移動を阻止する相対移動阻止手段を備える請求項
3に記載の抄紙機のフレーム開放装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記可動ピースに連結される第1シリンダ装置と、前記下フレームに支持される第2シリンダ装置とを有し、
該第1シリンダ装置は2つの第1と第2の中間リンクを介して下フレームに支持されて、それらの第1と第2の中間リンク及び下フレームとともに平行四辺形リンクを形成し、該第2シリンダ装置は該第2中間リンクに連結されて該平行四辺形リンクを支持し、
該第1シリンダ装置は、該平行四辺形リンク及び該第2シリンダ装置に支持され、該可動ピースを前記開放スペース内の挿入完了位置と前記開放スペース外の引き出し完了位置との間で直線移動させるように伸縮動作し、
該第2シリンダ装置は該平行四辺形リンクを作動させ、該平行四辺形リンク及び該第1シリンダ装置を介して該可動ピースを前記引き出し完了位置と前記用具着脱作業領域外の逃げ位置との間で旋回移動させるように伸縮動作する請求項1
又は2に記載の抄紙機のフレーム開放装置。
【請求項6】
前記第1シリンダ装置は、前記可動ピースが前記引き出し完了位置と前記逃げ位置との間にあるとき、該可動ピースに設けた係合部と係合し、該第1シリンダ装置に対する該可動ピースの自由な相対移動を阻止する相対移動阻止手段を備える請求項
5に記載の抄紙機のフレーム開放装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機のワイヤパート又はプレスパートにおいて用いられるワイヤ、フェルト等の無端周回状の用具を入れ替えするための抄紙機のフレーム開放装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の抄紙機のフレーム開放装置は、特許文献1に記載の如く、抄紙機における上下のフレームの間に設けられた可動ピース(ブロック)をそれらの上下のフレームの間から移動させ、それらの上下のフレームの間に開放スペースを形成し、抄紙機に用いられる無端周回状の用具を該開放スペースからそれらの上下のフレームの内外に着脱可能にしている。
【0003】
特許文献1に記載の抄紙機のフレーム開放装置は、油圧ジャッキにより上フレームを持ち上げた後、該油圧ジャッキの更なるジャッキアップによって可動ピースを下フレームの上面から持ち上げて上下のフレーム間に浮かせる。この状態で、該可動ピースを90度回転させ、該可動ピースを上下のフレーム間から外方に移動させてそれらのフレーム間に開放スペースを形成した後、油圧ジャッキによって該可動ピースを該開放スペースに臨む用具着脱作業領域の外に下降させる。用具は上記用具着脱作業領域から上記開放スペースを経由して上下のフレームの内外に出し入れされ、その入れ替えがなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の抄紙機のフレーム開放装置は、上フレームを持ち上げた後、可動ピースを油圧ジャッキにより上下のフレームの間から用具替えの邪魔にならない用具着脱作業領域の外に移動させるものであり、省力化できる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の抄紙機のフレーム開放装置では、可動ピースを上記の上下のフレームの間で90度回転させて外方に移動させるに先立ち、該可動ピースを下フレームの上面から持ち上げて上下のフレームの間に浮かす必要がある。従って、該可動ピースを上下のフレームの間から移動させ、それらの上下のフレームの間に開放スペースを形成するのに必要とされる工程に複雑を伴なう。
【0007】
本発明の課題は、抄紙機のフレーム開放装置において、簡易かつ迅速に、可動ピースを上下のフレームの間から移動させ、それらの上下のフレームの間に開放スペースを形成可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、抄紙機における上下のフレームの間に設けられた可動ピースをそれらの上下のフレームの間から移動させ、それらの上下のフレームの間に開放スペースを形成し、抄紙機に用いられる無端周回状の用具を該開放スペースからそれらの上下のフレームの内外に着脱可能にする抄紙機のフレーム開放装置において、該上フレームを持ち上げた状態下で該可動ピースを該開放スペースに対して挿入するとともに、引き出し可能にするアクチュエータを有し、該アクチュエータは、該可動ピースを該下フレームの上面に沿ってスライドさせ該開放スペースに対して挿入するとともに、引き出し可能にし、該開放スペースから引き出した該可動ピースを該開放スペースに臨む用具着脱作業領域外に移動可能にし、該可動ピースは、該開放スペース内の挿入完了位置に設定されるとき、該上フレームと該下フレームのそれぞれに設けた上下の連結部のそれぞれと連結し、それらの上下のフレームと該可動ピースの3者を一体結合する連結手段を備えるものとされ、それらの上下の連結部のそれぞれは、それらの上下のフレームのそれぞれに設けた各支点に、該可動ピースの移動方向に沿ってスイング自在に設けられ、該可動ピースが該アクチュエータによって該開放スペース内の挿入完了位置に進入されるとき、該可動ピースの該開放スペースへの進入方向の手前の待受位置にて該可動ピースの進入を待ち受けることにより、該可動ピースが備える連結手段に接してスイングされつつ該連結手段に係合し、それらの上下のフレームと該可動ピースの3者を一体結合するようにしたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記上連結部は、前記連結手段に係合する係合ローラーを該上フレームに設けた前記支点に対する下端側に備え、前記可動ピースの進入を待ち受けるとき、該係合ローラーの重みにより当該上連結部を鉛直状態にして前記待受位置に位置付けられ、前記下連結部は、該連結手段に係合する係合ローラーを前記下フレームに設けた前記支点に対する上端側に備えるとともに、該下連結部に備えた該係合ローラーに対して該下フレームに設けた該支点を挟んで反対側となる下端側にウエイトを備え、該可動ピースの進入を待ち受けるとき、該ウエイトの重みにより当該下連結部を鉛直状態にして前記待受位置に位置付けられるようにしたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において更に、前記アクチュエータは、前記下フレームに対して相対移動することのない支軸まわりで原位置と最大旋回位置との間を旋回する旋回アームを有し、該旋回アームは、前記可動ピースが移動する面に沿って旋回可能にされ、該可動ピースに枢支されて該可動ピースが移動する面に直交する回動軸が備えるスライド孔に該旋回アームの先端ロッド部をスライド可能に嵌合され、該旋回アームが原位置と一定の中間旋回位置との間を旋回するとき、該旋回アームは該可動ピースを前記開放スペース内の挿入完了位置と前記開放スペース外の引き出し完了位置との間で直線移動させ、該旋回アームが上記中間旋回位置と最大旋回位置との間を旋回するとき、該旋回アームは該可動ピースを前記引き出し完了位置と前記用具着脱作業領域外の逃げ位置との間で旋回移動させるようにしたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において更に、前記旋回アームは、前記可動ピースが前記引き出し完了位置と前記逃げ位置との間にあるとき、該可動ピースに設けた係合部と係合し、該旋回アームに対する該可動ピースの自由な相対移動を阻止する相対移動阻止手段を備えるようにしたものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において更に、前記アクチュエータは、前記可動ピースに連結される第1シリンダ装置と、前記下フレームに支持される第2シリンダ装置とを有し、該第1シリンダ装置は2つの第1と第2の中間リンクを介して下フレームに支持されて、それらの第1と第2の中間リンク及び下フレームとともに平行四辺形リンクを形成し、該第2シリンダ装置は該第2中間リンクに連結されて該平行四辺形リンクを支持し、該第1シリンダ装置は、該平行四辺形リンク及び該第2シリンダ装置に支持され、該可動ピースを前記開放スペース内の挿入完了位置と前記開放スペース外の引き出し完了位置との間で直線移動させるように伸縮動作し、該第2シリンダ装置は該平行四辺形リンクを作動させ、該平行四辺形リンク及び該第1シリンダ装置を介して該可動ピースを前記引き出し完了位置と前記用具着脱作業領域外の逃げ位置との間で旋回移動させるように伸縮動作するようにしたものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において更に、前記第1シリンダ装置は、前記可動ピースが前記引き出し完了位置と前記逃げ位置との間にあるとき、該可動ピースに設けた係合部と係合し、該第1シリンダ装置に対する該可動ピースの自由な相対移動を阻止する相対移動阻止手段を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1、2)
(a)上下のフレームの間に形成される開放スペースに対する可動ピースの挿入/引き出し操作は、該上フレームを持ち上げた状態下で該可動ピースを下フレームの上面に沿ってスライドさせて行なうものであり、該可動ピースを下フレームの上面から浮かせて行なうものでないから、簡易かつ迅速である。
【0015】
(b)アクチュエータは、可動ピースを開放スペースに対して挿入するとともに、引き出し可能にし、更に、該開放スペースから引き出した可動ピースを用具着脱作業領域の外に移動可能にする。
【0016】
従って、アクチュエータによる可動ピースの開放スペースからの引き出し、引き出された可動ピースの用具着脱作業領域外への移動操作は、連続して行なえるものとなり、簡易かつ迅速である。
【0017】
また、アクチュエータによる可動ピースの用具着脱作業領域外から開放スペースへの挿入操作は、連続して行なえるものとなり、簡易かつ迅速である。
(c)可動ピースは、挿入完了位置に設定されるとき、上フレームと下フレームのそれぞれに設けた上下の連結部のそれぞれと連結し、それらの上下のフレームと該可動ピースの3者を一体結合する連結手段を備える。これにより、上下のフレームの間の開放スペースに可動ピースが挿入されたとき、それらの上下のフレームと可動ピースの3者が一体をなすものとなり、それら3者からなる全体フレームの剛性を向上し、それら上下のフレーム間の引張荷重及び/又は圧縮荷重を簡易かつ確実に担持できる。
【0018】
(請求項3)
(d)アクチュエータが有する旋回アームの原位置から中間旋回位置、更にはこれに続く最大旋回位置への一連の旋回動作により、可動ピースの開放スペース内の挿入完了位置から開放スペース外の引き出し完了位置への直線移動、該引き出し完了位置から用具着脱作業領域外の逃げ位置への旋回移動操作が、簡素な機械的構造により、簡易かつ迅速になされる。
【0019】
また、アクチュエータが有する旋回アームの最大旋回位置から中間旋回位置、更にはこれに続く原位置への一連の旋回動作により、可動ピースの用具着脱作業領域外の逃げ位置から開放スペース外の引き出し完了位置への旋回移動、該引き出し完了位置から開放スペース内の挿入完了位置への直線移動操作が、簡素な機械的構造により、簡易かつ迅速になされる。
【0020】
(請求項4)
(e)旋回アームは、可動ピースが引き出し完了位置と逃げ位置との間にあるとき、該可動ピースに設けた係合部と係合し、該旋回アームに対する該可動ピースの自由な相対移動を阻止する相対移動阻止手段を備える。これにより、可動ピースが回動軸のスライド孔に旋回アームの先端ロッド部をスライド可能に嵌合された状態で、当該旋回アームの旋回によって当該可動ピースを旋回移動させるとき、可動ピースは旋回アームに対して相対移動することなく開放スペース外に引き出された引き出し完了位置から用具着脱作業領域外の逃げ位置への往動、更には当該逃げ位置から当該引き出し完了位置へ再び戻る復動の過程を、旋回アームとともにずれなく一体的に移動する。
【0021】
従って、旋回アームの上記の旋回によって上記の引き出し完了位置に再び戻った可動ピースは、上下のフレームの間の開放スペースに対して当該開放スペースから引き出されたときと同じ相対位置を維持して戻り、その後、当該開放スペースに直ちにスムースに挿入されるものになる。
【0022】
(請求項5)
(f)アクチュエータが有する第1シリンダ装置の伸び状態から縮み状態への伸縮動作、更にはこれに続く第2シリンダ装置の伸び状態から縮み状態への伸縮動作の一連の連続動作により、可動ピースの開放スペース内の挿入完了位置から開放スペース外の引き出し完了位置への直線移動、該引き出し完了位置から用具着脱作業領域外の逃げ位置への旋回移動操作が、簡素な機械的構造により、簡易かつ迅速になされる。
【0023】
また、アクチュエータが有する第2シリンダ装置の縮み状態から伸び状態への伸縮動作、更にはこれに続く第1シリンダ装置の縮み状態から伸び状態への伸縮動作の一連の連続動作により、可動ピースの用具着脱作業領域外の逃げ位置から開放スペース外の引き出し完了位置への旋回移動、該引き出し完了位置から開放スペース内の挿入完了位置への直線移動操作が、簡素な機械的構造により、簡易かつ迅速になされる。
【0024】
(請求項6)
(g)第1シリンダ装置は、可動ピースが引き出し完了位置と逃げ位置との間にあるとき、該可動ピースに設けた係合部と係合し、該第1シリンダ装置に対する該可動ピースの自由な相対移動を阻止する相対移動阻止手段を備える。これにより、可動ピースは、第2シリンダ装置の伸縮動作によりなされる、開放スペース外に引き出された引き出し完了位置から用具着脱作業領域外の逃げ位置への往動、更には当該逃げ位置から当該引き出し完了位置へ再び戻る復動の過程を、第1シリンダ装置とともにずれなく一体的に移動する。
【0025】
従って、第2シリンダ装置の上述の伸縮動作によって、第1シリンダ装置とともに上記の引き出し完了位置に再び戻った可動ピースは、上下のフレームの間の開放スペースに対して当該開放スペースから引き出されたときと同じ相対位置を維持して戻り、その後、当該開放スペースに直ちにスムースに挿入されるものになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は抄紙機の要部を示し、(A)は可動ピースを挿入した状態を示す側面図、(B)は可動ピースを引き出した状態を示す側面図である。
【
図2】
図2は抄紙機の要部を示し、(A)は可動ピースを挿入した状態を示す正面図、(B)は可動ピースを引き出した状態を示す正面図である。
【
図3】
図3はカンチレバーの押圧装置を示す要部断面図である。
【
図4】
図4はアクチュエータを示す模式斜視図である。
【
図5】
図5はアクチュエータを示し、可動ピースを挿入した状態を示す模式正面図である。
【
図6】
図6はアクチュエータを示し、可動ピースを用具着脱領域の外に移動した状態を示す模式正面図である。
【
図7】
図7はアクチュエータを示す模式斜視図である。
【
図8】
図8はアクチュエータを示し、可動ピースを挿入した状態を示す模式正面図である。
【
図9】
図9はアクチュエータを示し、可動ピースを引き出した状態を示す模式正面図である。
【
図10】
図10はアクチュエータを示し、可動ピースを用具着脱領域の外に移動した状態を示す模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1、
図2は、抄紙機1のワイヤパート(又はプレスパート)2の要部を模式的に示したものであり、床面上に設置された駆動側フレーム3と操作側フレーム4に支持される架台5に多数のロール等からなる用具搬送部2Aを設け、この用具搬送部2Aの周囲にワイヤ(又はフェルト)等の無端周回状の用具Wを張り設けている。
【0029】
尚、本明細書では、抄紙機1のプレスパート2において周回するワイヤWの用具搬送部2A上での進み方向を前方、その反対方向を後方とする。また、抄紙機1のワイヤパート2におけるワイヤWの周回方向に直交する該ワイヤWの板幅方向を左右方向とする。
【0030】
抄紙機1は、操作側フレーム4を上下のフレーム11、12と、それらの上下のフレーム11、12の間から一時的に撤去可能にされる可動ピース13とを有して構成されるものとされている。可動ピース13は、上下のフレーム11、12とともに操作側フレーム4を構成するとき、上フレーム11の下面11Fと下フレーム12の上面12Fとの間に隙間なく挿入される直方体状ブロックをなすものとされている。
【0031】
抄紙機1は、新旧の用具Wの張り替え時に、操作側フレーム4の上下のフレーム11、12の間に設けられた可動ピース13をそれらの上下フレーム11、12の間から移動させ、それらの上下のフレーム11、12の間に開放スペースAを形成し、無端周回状の用具Wを該開放スペースAからそれらの上下のフレーム11、12の内外に着脱し、ひいては当該用具Wを用具搬送部2Aの周囲で入れ替え可能とする。
【0032】
尚、抄紙機1は、駆動側フレーム3及び操作側フレーム4の上フレーム11に貫通状に横架連結されるカンチレバー6を設け、駆動側フレーム3から駆動側に張り出されるカンチレバー6の端部の周辺に立設された固定フレーム7に設けた押圧装置8により該カンチレバー6の張出側端部を押し下げ可能にしている。押圧装置8は、
図3に示す如く、モータ8Aの回転力を減速機8B等を介して固定フレーム7に設けられている固定ナット7Aに螺合している送りねじ8Cを回転させ、送りねじ8Cの先端押圧部8Dによりカンチレバー6の張出側端部の上面に設けてある被押圧部6Aに押下げ力を付与する。これにより、カンチレバー6は駆動側フレーム3を支点として操作側端部を持ち上げられ、このカンチレバー6の操作側端部に連結されている操作側フレーム4の上フレーム11を人手によることなく簡易に持ち上げ、上フレーム11と可動ピース13との間に隙間を形成し、可動ピース13を上下のフレーム11、12の間から前述の如くに移動可能にするものである。
【0033】
以下、上下のフレーム11、12の間から可動ピース13を簡易かつ迅速に移動させるフレーム開放装置100について詳述する。
【0034】
フレーム開放装置100は、
図4乃至
図6に示す如く、押圧装置8がカンチレバー6を介して上フレーム11を持ち上げた状態下で、可動ピース13を上フレーム11と下フレーム12の間の開放スペースAに対して左右方向に沿う操作側から挿入するとともに、引き出し可能にするアクチュエータ20を有する。
【0035】
アクチュエータ20は、可動ピース13を下フレーム12の上面12F(開放スペースAの下部形成面)に沿って水平方向にスライドさせ、該開放スペースAに対して挿入するとともに(
図5に実線で示した可動ピース13)、引き出し可能にする(
図6に鎖線で示した可動ピース13)。
【0036】
また、アクチュエータ20は、開放スペースAから引き出した可動ピース13を、該開放スペースAに水平方向の外方から臨む用具着脱作業領域Bの外(本実施形態では用具着脱作業領域Bの下方)に移動可能とする(
図6に実線で示した可動ピース13)。
【0037】
アクチュエータ20は、具体的には、下フレーム12を前後両側から挟み、下フレーム12に対して相対移動することのない支軸21Jまわりで原位置と最大旋回位置との間を旋回する(旋回角度は例えば126度)前後一対の旋回アーム21を有する。アクチュエータ20の旋回アーム21が原位置にあるとき、可動ピース13は開放スペースA内の挿入完了位置P1に設定され、アクチュエータ20の旋回アーム21が原位置から例えば36度旋回した中間旋回位置にあるとき、可動ピース13は開放スペースA外の引き出し完了位置P2に設定され、アクチュエータ20の旋回アーム21が中間旋回位置から例えば90度旋回したが最大旋回位置にあるとき、可動ピース13は用具着脱作業領域B外の逃げ位置P3に設定される。
【0038】
ここで、アクチュエータ20は、可動ピース13が上述の如くに移動する面(
図5、
図6の紙面)に沿って旋回可能にされ、該可動ピース13に枢支されて該可動ピース13が移動する面に直交する前後方向に延在されている回動軸22が、その軸直角方向に穿設されて備えるスライド孔22Kに、該旋回アーム21の先端ロッド部23をスライド可能に嵌合されている。
【0039】
より詳細には、アクチュエータ20は、下フレーム12の下部から操作側に張り出された駆動箱30の内部にモータ31、減速機32等を設け、駆動箱30から前後方向に突き出した減速機32の両側出力軸を前後一対をなす旋回アーム21のための各支軸21Jとする。各旋回アーム21は基端側の太径部21Aの基端部が上述の各支軸21Jに挿着固定され、先端側に細径の先端ロッド部23を設けている。
【0040】
更に、アクチュエータ20は、可動ピース13の側面視でその中央部を前後方向に貫通する状態で枢支された回動軸22を有し、該可動ピース13の前後両側面から外方に突き出た回動軸22の両端部における軸直角方向に穿設した各スライド孔22Kに、各旋回アーム21の先端ロッド部23をスライド可能に嵌合するものとしている。そして、可動ピース13に枢支された回動軸22が先端ロッド部23に沿ってスライド自在になるときに、該可動ピース13の該先端ロッド部23に沿う自由なスライドストローク端を規制するためのストッパ部24、25を、各旋回アーム21の先端ロッド部23における太径部21Aへの付根部と最先端部のそれぞれに固定して備える。
【0041】
アクチュエータ20を用いたフレーム開放装置100の動作は以下の如くになる。
(1)旋回アーム21が原位置と一定の中間旋回位置との間を、例えば36度の旋回角度範囲だけ旋回するとき、旋回アーム21は可動ピース13の全体を開放スペースA内に完全に挿入させた挿入完了位置P1と、開放スペースA外に完全に引き出した引き出し完了位置P2との間で直線移動させる。
【0042】
可動ピース13は、旋回する旋回アーム21の先端ロッド部23から旋回力を付与され、上フレーム11の下面11Fと下フレーム12の上面12Fに挟まれて水平方向にガイドされ、上述の如くに直線移動する。
【0043】
(2)旋回アーム21が中間旋回位置と最大旋回位置との間を、例えば90度の旋回角度だけ旋回するとき、旋回アーム21は可動ピース13を上記引き出し完了位置P2と、用具着脱作業領域Bの下方の逃げ位置P3との間で旋回移動させる。
【0044】
可動ピース13は、旋回する旋回アーム21の先端ロッド部23からの旋回力を付与されるとともに、重力を受けて旋回アーム21におけるストッパ部24に着座されつつ、上述の如くに旋回移動する。
【0045】
旋回アーム21は、可動ピース13が前述の如くに引き出し完了位置P2と逃げ位置P3との間にあるとき、
図5、
図6に示す如く、可動ピース13の前後両側面のそれぞれにおける左側(操作側)下部コーナー部に設けた各凹み状係合部13R(凹み状係合部13Rは例えば四角溝状をなし、開放スペースAの挿入完了位置P1に位置付けられた可動ピース13において、該可動ピース13の左方かつ下方に向けて開かれた2辺をもつ四角溝状をなす)の
図6に示した最奥隅部と相互に噛み合う如くに係合し、該旋回アーム21に対する該可動ピース13の自由な相対移動を阻止するストッパピン状の相対移動阻止手段21Rを備える。相対移動阻止手段21Rは本実施形態では前述のストッパ部24に備えられる。即ち、相対移動阻止手段21R(ストッパピン)は可動ピース13が引き出し完了位置P2と逃げ位置P3との間を移動する過程(引き出し完了位置P2から逃げ位置P3に向かう、90度までの旋回角度範囲、より好適には重力の作用を受ける90度未満の旋回角度範囲)で、可動ピース13に作用する振動等により、該可動ピース13が回動軸22まわりで回転することなく、かつ該可動ピース13が旋回アーム21の先端ロッド部23に沿って前述のストッパ部24から
図6に示したF方向に離隔することなく、該ストッパ部24への着座状態を維持するものとなる。
【0046】
尚、可動ピース13に設ける上述の凹み状係合部13Rは、四角溝状に限らず、
図6に示した如くの曲線溝状をなすものでも良い。この凹み状係合部13Rは、旋回アーム21が原位置から中間旋回位置までの旋回角度θ(
図6)を旋回するときの、相対移動阻止手段21R(ストッパピン)の
図6の紙面上における移動軌跡(x,y)に対応する曲線溝状をなし、この相対移動阻止手段21Rを入口開口から最奥部まで招き入れる。そして、可動ピース13が前述の如くに引き出し完了位置P2と逃げ位置P3との間にあるとき、相対移動阻止手段21Rは凹み状係合部13Rの曲線溝の最奥部と相互に噛み合う如くに係合し、該旋回アーム21に対する該可動ピース13の自由な相対移動を阻止する。
【0047】
上述(1)、(2)により、可動ピース13が開放スペースA内の挿入完了位置P1から引き出し完了位置P2を経て、用具着脱作業領域Bの下方の逃げ位置P3に位置付けられたとき、新旧のワイヤWが用具着脱作業領域Bから開放スペースAを通って上下のフレーム11、12の内外に着脱され、ワイヤパート2における用具搬送部2Aの周囲に入れ替えされる。
【0048】
ワイヤWの上述の入れ替え後、上述(1)、(2)により、可動ピース13が用具着脱作業領域Bの下方の逃げ位置P3から引き出し完了位置P2を経て、開放スペースA内の挿入完了位置P1に位置付けられたとき、抄紙機1はワイヤパート2におけるワイヤWが張り設けられた用具搬送部2A等が設けられた架台5を駆動側フレーム3及び操作側フレーム4(上下のフレーム11、12、及び可動ピース13)に支持されて通常操業されるものとなる。
【0049】
ここで、フレーム開放装置100が可動ピース13を前述の如くに挿入完了位置P1に設定したとき、上下のフレーム11、12と可動ピース13の3者を一体結合する連結手段40について説明する。
【0050】
連結手段40は、
図5、
図6に示す如く、可動ピース13の前後両側面のそれぞれにおける右側端部から外方に開口する両係合凹部40Kにて構成される。可動ピース13が引き出し完了位置P2の側から上下のフレーム11、12の間に挿入されて挿入完了位置P1に進入するとき、上フレーム11の前後両側面の下部に設けた支点41Sにスイング可能に支持されたリンク状の両上連結部41の下端に備えた係合ローラー41Rと、下フレーム12の前後両側面の上部に設けた支点42Sにスイング自在に支持されたリンク状の両下連結部42の上端に備えた係合ローラー42Rのそれぞれが、可動ピース13の進入を待ち受けた後、係合凹部40Kの駆動側に向けて拡開している上下の拡開面40a、40bに転接してそれらの連結部41、42を駆動側にスイングさせつつ該係合凹部40Kに係入する。可動ピース13が挿入完了位置P1に位置付けられたとき、
図5に示す如く、上フレーム11側の上連結部41の係合ローラー41R及び下連結部42の係合ローラー42Rが、可動ピース13の各係合凹部40Kにおける上下の拡開面40a、40bの奥側面に係合し、上下のフレーム11、12と可動ピース13の3者を一体結合する。
【0051】
連結手段40の連結部41、41は、可動ピース13の進入を待ち受けるとき、
図6に示す如く係合ローラー41Rの重みにより当該連結部41を鉛直状態にして該係合ローラー41Rを可動ピース13の係合凹部40Kに当該可動ピース13の進入方向の手前の待受位置にて相対するものとするとともに、当該連結部42において支点42Sを挟む係合ローラー42Rの反対側に備えたウエイト42Wの重みにより当該連結部42を鉛直状態にして該係合ローラー42Rを可動ピース13の係合凹部40Kに当該可動ピース13の進入方向の手前の待受位置に相対するものとしている。
【0052】
尚、可動ピース13が用具着脱作業領域Bの下方の逃げ位置P3に位置付けられ、新旧のワイヤWが用具着脱作業領域Bから開放スペースAを通って上下のフレーム11、12の内外に着脱されるとき、ワイヤWは上述の上下のリンク状連結部41、42を
図6に示したr方向に押し動かして開放スペースAを通過する。ワイヤWの通過後、それらのリンク状連結部41、42はそれぞれ係合ローラー41R、ウエイト42Wの重みによって上述の待受位置に復帰する。
【0053】
従って、フレーム開放装置100によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)上下のフレーム11、12の間に形成される開放スペースAに対する可動ピース13の挿入/引き出し操作は、該可動ピース13を下フレーム12の上面に沿ってスライドさせて行なうものであり、該可動ピース13を下フレーム12の上面から浮かせて行なうものでないから、簡易かつ迅速である。
【0054】
(b)アクチュエータ20は、可動ピース13を開放スペースAに対して挿入するとともに、引き出し可能にし、更に、該開放スペースAから引き出した可動ピース13を用具着脱作業領域Bの外に移動可能にする。
【0055】
従って、アクチュエータ20による可動ピース13の開放スペースAからの引き出し、引き出された可動ピース13の用具着脱作業領域B外への移動操作は、連続して行なえるものとなり、簡易かつ迅速である。
【0056】
また、アクチュエータ20による可動ピース13の用具着脱作業領域B外から開放スペースAへの挿入操作は、連続して行なえるものとなり、簡易かつ迅速である。
【0057】
(c)アクチュエータ20が有する旋回アーム21の原位置から中間旋回位置、更にはこれに続く最大旋回位置への一連の旋回動作により、可動ピース13の開放スペースA内の挿入完了位置から開放スペースA外の引き出し完了位置P2への直線移動、該引き出し完了位置P2から用具着脱作業領域B外の逃げ位置P3への旋回移動操作が、簡素な機械的構造により、簡易かつ迅速になされる。
【0058】
また、アクチュエータ20が有する旋回アーム21の最大旋回位置から中間旋回位置、更にはこれに続く原位置への一連の旋回動作により、可動ピース13の用具着脱作業領域B外の逃げ位置P3から開放スペースA外の引き出し完了位置P2への旋回移動、該引き出し完了位置P2から開放スペースA内の挿入完了位置P1への直線移動操作が、簡素な機械的構造により、簡易かつ迅速になされる。
【0059】
(d)旋回アーム21は、可動ピース13が引き出し完了位置P2と逃げ位置P3との間にあるとき、該可動ピース13に設けた係合部13Rと係合し、該旋回アーム21に対する該可動ピース13の自由な相対移動を阻止する相対移動阻止手段21Rを備える。これにより、可動ピース13が回動軸22のスライド孔22Kに旋回アーム21の先端ロッド部23をスライド可能に嵌合された状態で、当該旋回アーム21の旋回によって当該可動ピース13を旋回移動させるとき、可動ピース13は旋回アーム21に対して相対移動することなく開放スペースA外に引き出された引き出し完了位置P2から用具着脱作業領域B外の逃げ位置P3への往動、更には当該逃げ位置P3から当該引き出し完了位置P2へ再び戻る復動の過程を、旋回アーム21とともにずれなく一体的に移動する。
【0060】
従って、旋回アーム21の上記の旋回によって上記の引き出し完了位置P2に再び戻った可動ピース13は、上下のフレーム11、12の間の開放スペースAに対して当該開放スペースAから引き出されたときと同じ相対位置を維持して戻り、その後、当該開放スペースAに直ちにスムースに挿入されるものになる。
【0061】
(e)可動ピース13は、挿入完了位置P1に設定されるとき、上フレーム11と下フレーム12のそれぞれに設けた上下の連結部41、42のそれぞれと連結し、それらの上下のフレーム11、12と該可動ピース13の3者を一体結合する連結手段40を備える。これにより、上下のフレーム11、12の間の開放スペースAに可動ピース13が挿入されたとき、それらの上下のフレーム11、12と可動ピース13の3者が一体をなすものとなり、それら3者からなる全体フレーム(操作側フレーム4)の剛性を向上し、それら上下のフレーム11、12間の引張荷重及び/又は圧縮荷重を簡易かつ確実に担持できる。
【0062】
以下、前述したフレーム開放装置100におけるアクチュエータ20をアクチュエータ50に変更した実施形態について説明する。尚、本実施形態では、可動ピース13をブロック状とすることなく、直方体の箱状とし、少なくとも右側面、前後両側面及び上面の4面を備え、左側(操作側)及び下側を開放した箱状とした。
【0063】
アクチュエータ50は、
図7乃至
図10に示す如く、可動ピース13に連結される第1シリンダ装置51と、下フレーム12に支持される第2シリンダ装置52とを有する。第1シリンダ装置51はピストンロッド先端に設けた取付部51Aを可動ピース13の右側面(駆動側面)に固定的にピン結合している。第2シリンダ装置52はシリンダ両側部に設けた取付部52Aを下フレーム12の下部に設けた取付ブラケット12Bにトラニオン支持している。
【0064】
第1シリンダ装置51は、前後両側部で2つの第1と第2の中間リンク61、62を介して下フレーム12に支持されて、それらの第1と第2の中間リンク61、62及び下フレーム12とともに前後両側で一対をなす平行四辺形リンク60を形成する。このとき、第1シリンダ装置51はシリンダ両側部にピン結合される両側連結リンク51Lを備え、下フレーム12は両側連結リンク12Lを固定的に備えることで、第1シリンダ装置51の連結リンク51L、第1と第2の中間リンク61、62、下フレーム12の連結リンク12Lの4者によって上述の平行四辺形リンク60を形成するものとしている。
【0065】
第2シリンダ装置52は、ピストンロッド先端を前後両側部で平行四辺形リンク60の第2中間リンク62の延長部62Kに連結され、上述の平行四辺形リンク60を支持する。第2シリンダ装置52の伸縮動作により、平行四辺形リンク60の姿勢を変形できる。
【0066】
アクチュエータ50を用いたフレーム開放装置100の動作は以下の如くになる。
(1)第1シリンダ装置51は、平行四辺形リンク60及び第2シリンダ装置52に支持される(又は平行四辺形リンク60及び第2シリンダ装置52を介して下フレーム12に支持される)。従って、フレーム開放装置100は、第1シリンダ装置51の伸縮動作により、上下のフレーム11、12の間の開放スペースA内に位置付けられる挿入完了位置P1(
図8)と、開放スペースA外の引き出し完了位置P2(
図9)との間で可動ピース13を直線移動させる。
【0067】
(2)フレーム開放装置100は、第2シリンダ装置52の伸縮動作により、平行四辺形リンク60を変形させるように作動させ、平行四辺形リンク60及び第1シリンダ装置51を介して、可動ピース13を上記の引き出し完了位置P2と、用具着脱作業領域Bの外(下方)の逃げ位置P3(
図10)の間で旋回移動させる。
【0068】
尚、第1シリンダ装置51は、可動ピース13が前述の如くに引き出し完了位置P2と逃げ位置P3との間にあるとき、
図9、
図10に示す如く、可動ピース13の前後両側面のそれぞれに設けた係合部13P、13Qと係合し、第1シリンダ装置51に対する可動ピース13の自由な相対移動を阻止する相対移動阻止手段70を有する。
【0069】
相対移動阻止手段70は、
図7に示す如く、第1シリンダ装置51の両側部に連結されている両側連結リンク51Lに設けた上下のローラー71P、71Qを、可動ピース13の前後両側内面のそれぞれにおける上下2カ所に設けられて左右水平方向に延在する上下の溝状係合部13P、13Qに係合されて構成される。本実施形態において、上下のローラー71P、71Qは、第1シリンダ装置51の連結リンク51Lと第1と第2の中間リンク61、62との連結ピンと同軸的に設けられている。
【0070】
相対移動阻止手段70は、可動ピース13が引き出し完了位置P2と逃げ位置P3の間にあるとき、第1シリンダ装置51の収縮状態にあるピストンロッドにより可動ピース13を該第1シリンダ装置51寄りに引き付け保持する状態で、上下のローラー71P、71Qを上下の溝状係合部13P、13Qに係合させることで、第1シリンダ装置51に対する可動ピース13の自由な相対移動を阻止する。相対移動阻止手段70は、可動ピース13が引き出し完了位置P2と逃げ位置P3との間を移動する過程で、可動ピース13に作用する振動等により、該可動ピース13が該第1シリンダ装置51から相対移動することを阻止する。
【0071】
上述(1)、(2)により、可動ピース13が開放スペースA内の挿入完了位置P1から引き出し完了位置P2を経て、用具着脱作業領域Bの下方の逃げ位置P3に位置付けられたとき、新旧のワイヤWが用具着脱作業領域Bから開放スペースAを通って上下のフレーム11、12の内外に着脱され、ワイヤパート2における用具搬送部2Aの周囲に入れ替えされる。
【0072】
ワイヤWの上述の入れ替え後、上述(1)、(2)により、可動ピース13が用具着脱作業領域Bの下方の逃げ位置P3から引き出し完了位置P2を経て、開放スペースA内の挿入完了位置P1に位置付けられたとき、抄紙機1はワイヤパート2におけるワイヤWが張り設けられた用具搬送部2A等が設けられた架台5を駆動側フレーム3及び操作側フレーム4(上下のフレーム11、12、及び可動ピース13)に支持されて通常操業されるものとなる。
【0073】
尚、フレーム開放装置100は、
図8乃至
図10に示す如く、前述したアクチュエータ20を用いたフレーム開放装置100におけると同様に、前述した連結手段40を有し、可動ピース13が上フレーム11と下フレーム12の間の挿入完了位置P1に設定されるとき、上フレーム11と下フレーム12のそれぞれに設けた上下の連結部41、42のそれぞれと連結し、それらの上下のフレーム11、12と可動ピース13の3者を一体結合可能にしている。
【0074】
従って、フレーム開放装置100によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)上下のフレーム11、12の間に形成される開放スペースAに対する可動ピース13の挿入/引き出し操作は、該上フレーム11を持ち上げた状態下で該可動ピース13を下フレーム12の上面に沿ってスライドさせて行なうものであり、該可動ピース13を下フレーム12の上面から浮かせて行なうものでないから、簡易かつ迅速である。
【0075】
(b)アクチュエータ50は、可動ピース13を開放スペースAに対して挿入するとともに、引き出し可能にし、更に、該開放スペースAから引き出した可動ピース13を用具着脱作業領域Bの外に移動可能にする。
【0076】
従って、アクチュエータ50による可動ピース13の開放スペースAからの引き出し、引き出された可動ピース13の用具着脱作業領域B外への移動操作は、連続して行なえるものとなり、簡易かつ迅速である。
【0077】
また、アクチュエータ50による可動ピース13の用具着脱作業領域B外から開放スペースAへの挿入操作は、連続して行なえるものとなり、簡易かつ迅速である。
【0078】
(c)アクチュエータ50が有する第1シリンダ装置51の伸び状態から縮み状態への伸縮動作、更にはこれに続く第2シリンダ装置52の伸び状態から縮み状態への伸縮動作の一連の連続動作により、可動ピース13の開放スペースA内の挿入完了位置P1から開放スペースA外の引き出し完了位置P2への直線移動、該引き出し完了位置P2から用具着脱作業領域B外の逃げ位置P3への旋回移動操作が、簡素な機械的構造により、簡易かつ迅速になされる。
【0079】
また、アクチュエータ50が有する第2シリンダ装置52の縮み状態から伸び状態への伸縮動作、更にはこれに続く第1シリンダ装置51の縮み状態から伸び状態への伸縮動作の一連の連続動作により、可動ピース13の用具着脱作業領域B外の逃げ位置P3から開放スペースA外の引き出し完了位置P2への旋回移動、該引き出し完了位置P2から開放スペースA内の挿入完了位置P1への直線移動操作が、簡素な機械的構造により、簡易かつ迅速になされる。
【0080】
(d)第1シリンダ装置51は、可動ピース13が引き出し完了位置P2と逃げ位置P3との間にあるとき、該可動ピース13に設けた溝状係合部13P、13Qと係合し、該第1シリンダ装置51に対する該可動ピース13の自由な相対移動を阻止する相対移動阻止手段70(上下のローラー71P、71Q)を備える。これにより、可動ピース13は、第2シリンダ装置52の伸縮動作によりなされる、開放スペースA外に引き出された引き出し完了位置P2から用具着脱作業領域B外の逃げ位置P3への往動、更には当該逃げ位置P3から当該引き出し完了位置P2へ再び戻る復動の過程を、第1シリンダ装置51とともにずれなく一体的に移動する。
【0081】
従って、第2シリンダ装置52の上述の伸縮動作によって、第1シリンダ装置51とともに上記の引き出し完了位置P2に再び戻った可動ピース13は、上下のフレーム11、12の間の開放スペースAに対して当該開放スペースAから引き出されたときと同じ相対位置を維持して戻り、その後、当該開放スペースAに直ちにスムースに挿入されるものになる。
【0082】
(e)可動ピース13は、挿入完了位置P1に設定されるとき、上フレーム11と下フレーム12のそれぞれに設けた上下の連結部41、42のそれぞれと連結し、それらの上下のフレーム11、12と該可動ピース13の3者を一体結合する連結手段40を備える。これにより、上下のフレーム11、12の間の開放スペースAに可動ピース13が挿入されたとき、それらの上下のフレーム11、12と可動ピース13の3者が一体をなすものとなり、それら3者からなる全体フレームの剛性を向上し、それら上下のフレーム11、12間の引張荷重及び/又は圧縮荷重を簡易かつ確実に担持できる。
【0083】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、抄紙機のフレーム開放装置において、簡易かつ迅速に、可動ピースを上下のフレームの間から移動させ、それらの上下のフレームの間に開放スペースを形成可能にする。
【符号の説明】
【0085】
1 抄紙機
11 上フレーム
12 下フレーム
12L 連結リンク
13 可動ピース
13P、13Q 係合部
13R 凹み状係合部
20 アクチュエータ
21 旋回アーム
21J 支軸
21R 相対移動阻止手段
22 回動軸
22K スライド孔
23 先端ロッド部
40 連結手段
41 上連結部
42 下連結部
50 アクチュエータ
51 第1シリンダ装置
51L 連結リンク
52 第2シリンダ装置
60 平行四辺形リンク
61 第1中間リンク
62 第2中間リンク
70 相対移動阻止手段
71P 上ローラー
71Q 下ローラー
100 フレーム開放装置
A 開放スペース
B 用具着脱作業領域
P1 挿入完了位置
P2 引き出し完了位置
P3 逃げ位置
【要約】
【課題】 抄紙機のフレーム開放装置において、簡易かつ迅速に、可動ピースを上下のフレームの間から移動させ、それらの上下のフレームの間に開放スペースを形成可能にすること。
【解決手段】 抄紙機1のフレーム開放装置100において、上フレーム11を持ち上げた状態下で可動ピース13を開放スペースAに対して挿入するとともに、引き出し可能にするアクチュエータ20を有し、アクチュエータ20は、可動ピース13を下フレーム12の上面に沿ってスライドさせ開放スペースAに対して挿入するとともに、引き出し可能にし、開放スペースAから引き出した可動ピース13を開放スペースAに臨む用具着脱作業領域B外に移動可能にするもの。
【選択図】
図6