(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】食品冷凍装置および食品冷凍方法
(51)【国際特許分類】
F25D 13/06 20060101AFI20220422BHJP
F25D 17/06 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
F25D13/06
F25D17/06 301
(21)【出願番号】P 2017115511
(22)【出願日】2017-06-12
【審査請求日】2020-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】509159492
【氏名又は名称】米田工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】米田 稔
【審査官】飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-351724(JP,A)
【文献】特開平11-014249(JP,A)
【文献】特開2001-120243(JP,A)
【文献】米国特許第04949555(US,A)
【文献】国際公開第2006/046317(WO,A1)
【文献】特開平08-005214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00-31/00
F24F 1/00-13/32
A23L 3/36- 3/54
B65D 1/00-90/66
B65G 1/00-69/34
B65H 5/02, 5/06, 5/22,29/12-29/24,29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍庫と、前記冷凍庫に冷気を供給する冷却器と、
前記冷却器で冷却された冷気が前記冷凍庫内の上側から前記冷凍庫内の下側まで前記冷凍庫内を上下方向に巡回するように、吸引または送風するように冷凍庫内または冷凍庫外に配設された送風ファンと、
無限軌道に沿って搬送帯が回動し、前記無限軌道の一部が前記冷凍庫内を通過するよう配設された搬送系と、
前記搬送系の上面側に配設された噴射スリットアレイであって、前記搬送系の上面に向けて開口した噴射スリットが多数並べられ、前記送風ファンから上側から直接受けた前記冷気
の気流を、前記噴射スリットを通過させて前記搬送系の搬送帯の上面に向けて整流された冷気流として噴射する噴射スリットアレイと、
前記搬送系の下面側に配設された噴射ノズルユニットアレイであって、各噴射ノズルユニットが中空
箱体と
、前記中空箱体の上面に設けられた噴射ノズル
と、前記送風ファンから冷気の気流を前記中空箱体に導く経路を備え、前記噴射ノズルが前記搬送系の搬送帯の下面に向けて開口しており、前記冷凍庫内の上側から前記送風ファン
から前記経路を介して前記中空箱体が受け取った冷気流を前記噴射ノズルから前記搬送系の前記搬送帯の下面に向けて整流された冷気流として噴射する噴射ノズルユニットアレイと、
前記噴射ノズルユニットアレイの各前記噴射ノズルユニットの間隙である冷気流回収スリットを備え、前記噴射スリットアレイから前記搬送系の上面へ噴射された前記冷気流と、前記噴射ノズルユニットアレイから前記搬送系の下面へ噴射された前記冷気流とをともに前記冷気流回収スリットを介して下方に通過させる冷気流回収スリットアレイを備え、
前記送風ファンにより吸引または送風された前記冷気流を、前記冷凍庫内の上側から、前記搬送帯の前記上面および前記下面の両面ともに整流された前記冷気流を噴射しつつも、
前記冷気流回収スリットを介して前記搬送帯の下側へ通し抜いて、前記冷凍庫内の下側まで前記冷凍庫内を上下方向に巡回するように吸引または送風することを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
前記噴射スリットアレイにおける前記噴射スリットの配列のピッチが、前記噴射ノズルユニットアレイにおける前記噴射ノズルユニットの配列のピッチと略等しいものであることを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記噴射スリットアレイにおける前記噴射スリットの配列のピッチが、前記噴射ノズルユニットアレイにおける前記冷気流回収スリットの配列のピッチと略等しいものであることを特徴とする請求項1または2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記噴射スリットアレイにおける前記噴射スリットの配列位置が、前記噴射ノズルユニットアレイにおける前記冷気流回収スリットの配列位置と対向し合う関係であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記噴射スリットアレイにおける前記噴射スリットの配列位置が、前記噴射ノズルユニットアレイにおける前記噴射ノズルユニットの配列位置と対向し合う関係であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記搬送系の搬送帯がメッシュ状または格子状の開口を備え、前記冷気流が前記搬送帯を上下に通過し得るよう構成されたものであることを特徴とする請求項4に記載の冷凍装置。
【請求項7】
前記搬送系の搬送帯がスチールベルトであり、上方から前記搬送系の上面の表面に到達した前記冷気流が前記搬送帯の表面から前記搬送帯の側面側に迂回して下方に導かれるよう構成されたものであることを特徴とする請求項5に記載の冷凍装置。
【請求項8】
前記送風ファンが、前記搬送系の搬送方向と略平行に配設されており、
前記送風ファンで送風された前記冷気流を前記噴射スリットアレイに対向するように風向を曲げる円弧板状または楕円弧板状の風向調整体を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項9】
前記噴射スリットアレイの高さを調整する高さ調整機構を備え、前記スリットと前記搬送系の上面との距離を調整可能とした請求項1から8のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項10】
前記噴射スリットアレイにおいて、各々の前記噴射スリットを形成する噴射スリット体が、上面が凸に形成され側面が垂直壁面を持つ山型のテーパー体であり、隣接し合う前記山型のテーパー体の前記垂直壁面の間隙によって前記噴射スリットが形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項11】
前記噴射ノズルユニットアレイにおいて、各々の前記噴射ノズルユニットが、上面に前記噴射ノズルとなる溝と側面が垂直壁面を備えた溝付きの前記
中空箱体であり、隣接し合う前記
中空箱体の前記垂直壁面の間隙によって前記冷気流回収スリットが形成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送手段としてベルトコンベアを使用し、冷気流を当てることにより食品の急速冷凍を連続的に行うことができる食品冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を急速冷却する装置として冷媒式の冷凍装置が広く用いられている。これらの装置の処理方式にはいわゆるバッチ式冷凍装置と、連続式冷凍装置がある。
バッチ式冷凍装置は、対象食品などを一群にまとめ、一群ごとまとめて冷却室内で冷却処理し、冷却処理が終了すれば取り出し、次の一群の対象食品を冷却するものである。バッチ式冷凍装置としては、冷却方法に応じて様々なタイプがあり、冷気流方式、ブライン方式、液体ガス気化方式などがある。
連続式冷凍装置は、食品をベルトコンベアに載置して連続的に冷凍装置を通過することにより食品の急速冷凍を行うものである。連続式冷凍装置の冷却方式としても冷却方法に応じて様々なタイプがあり、冷気流方式、ブライン方式、液体ガス気化方式などがある。
【0003】
冷却方式は下記のような様々な方式がある。
冷気流方式は、冷媒となる空気を送風または吸引して冷却器内を通過させ、冷気を生成し、その冷気を導く冷却空間を設け、当該冷却空間を通過するようにベルトコンベアの搬送系を設置して循環させるものである。ベルトコンベア上に冷凍対象となる食品を載置し、冷凍対象となる食品を冷却空間の中を通過させ、急速に冷凍する方法である。
【0004】
ブライン方式は、ブライン液(塩化カルシウム溶液、アルコール水溶液など)を貯蔵したタンクの周囲に冷却器を配置してブライン液を所定の低温に維持し、そのブライン液の中に冷却対象物を浸漬させて冷却するものである。連続処理式を採用する場合、ベルトコンベアの搬送系の一部がブライン液の中を通過するように組み上げて搬送系ごとブライン液の中に浸漬させるものがある。冷凍対象となる食品がブライン液の中に浸漬されるので、冷媒が周囲を均等に覆うために冷凍品質は比較的良好であり、熱交換もブライン液との間で行われるため冷凍速度が速く急速冷凍にも適している方法である。
【0005】
液体ガス気化方式は、液化窒素、液化酸素等の低温液体ガスを冷却対象食品に対して直接噴霧し、その液体ガスが蒸発する際に生じる蒸発潜熱と顕熱を利用して冷凍対象食品を急速冷凍する方法である。
【0006】
図14は、従来技術におけるバッチ式冷凍装置で冷気流方式を採用した装置の構成例を示す図である。
図14に示すように、バッチ式冷凍装置10は、冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する冷却器11と、密閉構造の冷却室12からなる。冷却室12は、被冷却物を出し入れする扉14を備え、扉14に面して複数段の陳列棚16が間隔を開けて上下方向に多段に設けられている。冷却器11の冷凍サイクルで冷却された冷気流が冷却室12に対して導かれ、陳列棚16に載置された被冷却物fを冷却しつつ、冷却室12から回収され、冷却器11に取り込まれる。冷却室12の隔壁は断熱パネル13で構成された密閉かつ断熱構造を有している。
【0007】
冷却室12の庫内には送風ファン17が設けられ、整流器(図示せず)も設けられている。冷却室12内は、送風ファン17によって矢印a方向に流れる空気流が形成される。冷却された冷気流が整流器18で整流されて陳列棚16上に置かれた被冷却物fに向かって流れ、被冷却物fを凍結する。なお、陳列棚16には隙間が形成され、当該隙間を通って冷気流が下方に抜けるようになっている。
被冷却物fの凍結処理が終わると、扉14を開け、次の被冷却物fと入れ替えられる。このように一群ごとに冷却処理を一括にまとめて行うのでバッチ処理式と呼ばれている。
【0008】
図15は、従来技術における連続式冷凍装置で冷気流方式を採用した装置の構成例を示す図である。
図15に示すように、連続式冷凍装置20の構成要素としては、隔壁が断熱パネルで形成されて断熱性と密閉性を有する冷却室21と、冷却室21に貫通配置されているベルトコンベア22の搬送系と、冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する冷却器23と、冷却室21の内部でベルトコンベア22の搬送面に対向し、冷気が通過する中空のケーシングである冷気流吹出部24が設けられている。冷気流吹出部24には、ベルトコンベア22の搬送面に向けて開口した多数のスリットノズル26aが配置されている。なお、スリットノズル26aの開口は、ベルトコンベア22の移動方向と直角に配置されており、ベルトコンベア22の移動方向に対して所定間隔で並列に配置されている。冷却室21の庫内の上方に送風ファン25が設けられている。
【0009】
連続式冷凍装置20は、コンベア22の一端が冷却室21外にあり、そのコンベア22の一端にて被冷却物を載置し、コンベア22の搬送系が冷却室21内に導かれており、被冷却物がコンベア22とともに搬入されてゆく。冷却室21内において、コンベア22の搬送面に向けて冷気流が吹き付けられ、この冷気流で被冷却物が冷却されてゆく。凍結した被冷却物はコンベア22に載置したまま冷却室21外に搬送される。コンベアの他端は冷却室21外に設けられており、被冷却物の取り出し作業が行われる。バッチ式のように棚ごと取り出すという取り出し作業が省略できる。このように、被冷却物の搬入・搬出が連続的に行うことができ、連続式冷凍装置と呼ばれる。連続式冷凍装置は全体としての処理時間を短縮できる利点がある。
【0010】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したように、冷却方式には様々な方式があり、それぞれメリットがある。
本発明では、冷却方式として冷気流方式を採用する。
本発明では他の冷却方式は下記の課題があるため採用しない。
まず、ブライン方式は、ブライン液を使用するため、冷却対象物がパッケージに収められたものを冷却して冷凍する場合に適していると言える。しかし、冷却対象物が剥き出しのものには不向きであり、塩化カルシウムやアルコールなどのブライン液が食品の中に浸透してしまう。そこで、冷却対象物がパッケージに封入されていないものは、ブライン方式を採用できない。
【0012】
次に、液体ガス気化方式は、液化窒素、液化酸素等の低温液体ガスを冷却対象食品に対して直接噴霧するので、液体ガスが付着する表面を急速冷凍する場合には適した方式と言える。しかし、液体ガスが付着するのは冷却対象物の表面のみであり、冷却対象物の内部には液体ガスが浸透しないため、内部の冷凍には不向きである。そのため、厚みがある食材などの冷凍には適した方式とは言えない。また、液体ガスが気化した後、回収して再び液化するという冷凍サイクルが組みにくく、液体ガスを消費してしまうため、コストが増加しやすいという問題もある。
そこで、本発明は、パッケージに封入されていない剥き出しの食材や厚みのある食材などにも対応できる冷気流方式を採用する。冷気流方式の冷凍装置は、冷媒となる空気を送風または吸引して冷凍庫に循環させるので、食材が剥き出しでも良く、また、冷凍サイクルが組みやすいのでコストも比較的手ごろである。
【0013】
次に、冷気流方式を採用した冷凍装置として、バッチ処理式の冷凍装置と連続処理式の冷凍装置があるが、本発明では、連続処理式の冷凍装置とする。
バッチ式冷凍装置では一括して冷却対象物を冷却できるという簡便さはあるが、冷却対象物を棚ごとに並べる作業、棚ごと冷凍庫に搬入する作業、冷却時間を待つ待ち作業、冷却対象物を棚ごと搬出する作業、冷却対象物を棚から取り出す作業があり、それらを経ないと冷却対象物が冷凍できないため、バッチ式冷凍装置は全体として処理時間がかかるという問題点がある。
そこで、本発明の冷凍装置は、連続処理式の冷凍装置とする。
【0014】
従来技術における
図15に示した連続式の冷気流方式を採用した装置には解決すべき課題がある。
第1の問題は、送風ファンが必須構成として設けられるが、モーターは熱源となり、冷凍庫内の温度上昇を招き、冷却効率を低下する原因となっていた。
第2の問題は、連続処理式の搬送系にわたって導入される冷気流の均質化の問題である。連続処理式の搬送系は、設計仕様にもよるが、長さが数メートルから十数メートルにわたることがある。その間、食材などが冷気流に接触するが、冷凍品質を向上させるためにはその冷気流が均質に導かれる必要がある。冷気流の温度や風速がまばらであれば冷却中の食材の冷却にムラが生じて冷凍結果においてバラツキが生じるおそれがある。
冷気流は、冷却器で生成された冷気が送風ファンを介して庫内を循環し、その過程で搬送系を流れる食材などの冷却対象物に接触する。そのため、主に送風ファンによる冷気流の速度が如何に均質化されて冷却対象物に導かれるかが問題となる。送風ファンは比較的大型のものが2~4個程度しか配置できないため、強力に生じた送風が如何に拡散して均質化するかが問われるが、
図15に示すような従来のものは、送風が直接冷却対象物に当たるため、均質化されていないという問題がある。
【0015】
第3の問題は、下方からの冷却品質の向上である。食材などの冷却対象物が搬送系を搬送されてゆく間、上方からの冷気流だけでは食材などの冷却対象物の下方の冷却が遅れ、上下の冷凍品質にバラツキがでるおそれがある。そこで、下方からも冷却する必要がある。
【0016】
第4の問題は、冷気流の整流の課題である。送風ファンを介して食材などの冷却対象物の上方に当てられる冷気流に対して、食材などの冷却対象物に対して下方から当たる冷気流を導いた場合、搬送系のあちこちで上方からの冷気流と下方からの冷気流が入り乱れて乱流が発生するおそれがある。マクロでの冷気流の流れを一方通行にし、マクロでの冷気流の整流を行う必要がある。
【0017】
上記問題点に鑑み、本発明は、送風ファンの構成要素で熱源となるモーターの配置を工夫して、冷凍負荷を低減することを目的とする。また、送風ファンを介して送風される冷気流を、速度を落とさずに食材などの冷却対象物に対して導くとともに、バラツキが生じないように風速を均質化して冷却対象物に当てることができる整流構造を提供することを目的とする。さらに、本発明は、冷気流を下方からも冷却対象物に対して導き、冷却対象物を上下両方から冷却することができる構造を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上方から当たる冷気流と下方から当たる冷気流をマクロでは一方に流れるように整流し、庫内で乱流が生じないようにする構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の冷凍装置は、冷凍庫と、前記冷凍庫に冷気を供給する冷却器と、前記冷却器で冷却された冷気を冷凍庫内に吸引または送風するように配設された送風ファンを備え、前記送風ファンのモーターを前記冷凍庫の庫外に設け、前記モーターから前記送風ファンの回転軸まで軸受で接続したことを特徴とする冷凍装置である。
上記構成により、熱源となるモーターを庫外に設けるため、冷凍負荷の低減を図ることができる。
【0019】
上記利点を利用し、連続処理式の冷凍庫とするために、上記構成に加え、無限軌道に沿って搬送帯が回動し、無限軌道の一部が前記冷凍庫内を通過するよう配設された搬送系と、前記搬送系の上面に向けて開口した噴射スリットが多数並べられ、前記送風ファンから前記搬送系の上面に導かれた送風を受け、前記噴射スリットを介して前記搬送系の上面に向けて整流された冷気流を噴射する噴射スリットアレイと、前記搬送系の下面に向けて開口した噴射ノズルユニットと各々の前記噴射ノズルユニットの間隙から冷気流を下方に導く冷気流回収スリットが多数設けられた構成をもち、前記送風ファンから前記噴射ノズルユニットに導かれた冷気流を前記搬送帯の下面に向けて冷気流を噴射するとともに、マクロな冷気流の流れとして前記冷気流回収スリットを介して前記冷気流を下方に導く噴射ノズルユニットアレイを備え、前記噴射スリットアレイから下方に噴き出した冷気流が前記搬送系の搬送帯の上面に導かれ、前記噴射ノズルユニットアレイから上方に噴き出した冷気流が前記搬送系の搬送帯の下面に導かれるとともに、冷凍処理に供された前記冷気流を前記冷気流回収スリットから前記冷却器へ循環させることを特徴とする冷凍装置である。
上記構成により、冷凍対象物に対して上方と下方の両方から冷気流を当てて冷凍することができ冷凍速度が向上するとともに、搬送系付近に集まる冷気流を整流して冷気流回収スリットを介して冷気流を下方に導く構造であるのでマクロな冷気流の流れを整流でき、上方からの冷気流と下方からの冷気流との衝突によって過度な乱流を招くことが無くなる結果、冷凍ムラなどが無くなり冷凍品質が向上する。
【0020】
なお、上記構成の噴射ノズルユニットアレイにおいて、噴射ノズルユニットと冷気流回収スリットが交互に並べられた構成とすることが好ましい。
上記構成により、噴射ノズルユニットと交互に配設され、適切な間隔で多数形成されている冷気流回収スリットを介して冷気流が下方に引き込まれるため、搬送系付近に集まる冷気流がスムーズに下方に導かれ、マクロな流れを整流しやすくなる。
なお、搬送系の搬送帯については冷気流を通過できないものでも良く、通過できるものでも良い。
例えば、搬送系の搬送帯として冷気流が通過できないスチールベルトを採用できる。スチールベルトの場合、上方から搬送帯に到達した冷気流が搬送帯の表面から側面方向に迂回して下方に通過し、下方の冷気流回収スリットへ導かれる。また、例えば、搬送系の搬送帯として冷気流が通過できる金属メッシュベルトまたは金属網ベルトを採用できる。この場合、冷気流が搬送帯を上下に通過し得るので、冷気流がそのまま搬送帯を上下に通過するので、より一層、冷気流の乱流発生を抑えることができる。
【0021】
次に、噴射スリットアレイにおける噴射スリットの配列のピッチと、噴射ノズルユニットアレイにおける噴射ノズルユニットの配列のピッチとの関係の工夫について説明する。
例えば、噴射スリットアレイにおける噴射スリットの配列のピッチが、噴射ノズルユニットアレイにおける噴射ノズルユニットの配列のピッチと略等しいものとすることができる。
上記構成により、上方から搬送系付近に噴射される冷気流の並びと、下方から搬送系付近に噴射される冷気流の並びが略等しくなり、冷凍対象物に対して上下均質に冷気流を当てることができる。
【0022】
また、噴射スリットアレイにおける噴射スリットの配列のピッチが、噴射ノズルユニットアレイにおける冷気流回収スリットの配列のピッチと略等しいものとすることができる。
上記構成により、上方の噴射スリットから噴射する冷気流の配列ピッチと、冷気流を下方に導く冷気流回収スリットの配列ピッチが対応し合っているので、冷気流が整流されやすくなり、回収がスムーズになる。
【0023】
次に、噴射スリットアレイにおける噴射スリットの配列位置と、噴射ノズルユニットアレイにおける噴射ノズルユニットの配列位置の関係の工夫について説明する。
特に、搬送系の搬送帯が金属メッシュベルトや金属網ベルトの場合には、それらの配列位置は冷気流の整流に与え得るので、工夫することが好ましい。
例えば、噴射スリットアレイにおける噴射スリットの配列位置が噴射ノズルユニットアレイにおける噴射ノズルユニットの配列位置と対向し合う関係とすることができる。
上記構成により、上方から搬送系付近に噴射される冷気流の流れと、下方から搬送系付近に噴射される冷気流の流れが対向し合い、冷凍対象物に対して上下均質に冷気流を当てることができる。
【0024】
また、噴射スリットアレイにおける噴射スリットの配列位置が噴射ノズルユニットアレイにおける前記冷気流回収スリットの配列位置と対向し合う関係とすることもできる。
上記構成により、上方の噴射スリットから噴射する冷気流の配列位置と、冷気流を下方に導く冷気流回収スリットの配列位置が対応し合っているので、冷気流の回収がスムーズに整流しやすくなる。
【0025】
次に、送風ファンの送風方向と搬送系の搬送方向などについて説明する。
上記構成において、送風ファンが搬送系の搬送方向と略平行に配設されている構成とし、送風ファンで送風された冷気流を噴射スリットアレイに対向するように風向を折り曲げる風向調整体を追加した構成とすることが好ましい。
上記構成により、送風ファンが搬送系の搬送方向と略平行に配設されれば、装置全体の高さを小さく小型化することができる。この構成の場合は、送風ファンで送風された冷気流が搬送系と略平行に流れるので搬送系表面に届きにくいため、風向を折り曲げる風向調整体を追加し、冷気流の流れを搬送系に略平行なものから搬送系に対向するような風向とする。なお、風向調整体は冷気流の勢いが均等になるように風向を変える構造であることが好ましい。例えば、同心円状の円柱体を軸方向に沿って切断し、外周が1/4の円弧となる柱体とし、その軸が送風ファンの送風方向と直交するように配置したものがある。つまり、当該風向調整体を用いれば、送風ファンから送風された冷気流が風向調整体に対して搬送系と平行に入り、冷気流が風向調整体の円弧の壁面に沿って下方に向けてカーブしてゆき、搬送系に対向するように噴射される。
【0026】
次に、上記構成において、噴射スリットアレイの高さを調整する高さ調整機構を備えた構成とすることが好ましい。スリットと搬送系の上面との距離が調整可能となり、冷凍速度などを調整しやすくなる。
【0027】
次に、噴射スリットアレイの構造について述べる。噴射スリットアレイの構造例としては、各々のスリットを形成するスリット体が、上面が凸に形成され側面が垂直壁面を持つ山型のテーパー体であり、その隣接し合う山型のテーパー体の垂直壁面の間隙によってスリットが形成される構造がある。
【0028】
上記構成により、スリットが深さのある立体的なものとなり、下方に導かれる冷気流の噴射方向が制御しやすく整流しやすくなる。また、山型のテーパー体を独立した構造とすれば、メンテナンスなどで搬送系に対してアクセスしたい場合、噴射スリットアレイ全体を除去する必要はなく、該当箇所の山型のテーパー体を取り外すのみで該当箇所の搬送系の表面にアクセスすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明にかかる冷凍装置によれば、冷凍対象物に対して上方と下方の両方から冷気流を当てて冷凍することができ冷凍速度が向上するとともに、搬送系付近に集まる冷気流を整流して冷気流回収スリットを介して冷気流を下方に導く構造であるのでマクロな冷気流の流れを整流でき、上方からの冷気流と下方からの冷気流との衝突によって過度な乱流を招くことが無くなる結果、冷凍ムラなどが無くなり冷凍品質が向上する。
また、本発明にかかる冷凍装置によれば、噴射ノズルユニットと交互に配設され、適切な間隔で多数形成されている冷気流回収スリットを介して冷気流が下方に引き込まれるため、搬送系付近に集まる冷気流がスムーズに下方に導かれ、マクロな流れを整流しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施例1にかかる冷凍装置100の構成例を簡単に示した図である。
【
図3】メッシュコンベアで構成された搬送帯141を簡単に示した図である。
【
図4】噴射スリットアレイ150を構成する噴射スリット151および噴射スリット体152の断面を示す図である。
【
図5】噴射スリットアレイ150の高さを調整する様子を示す図である。
【
図6】噴射ノズルユニットアレイ160の構造を断面で示した図である。
【
図7】冷凍庫110内のマクロな冷気流の流れを分かりやすく示した図である。
【
図8】噴射スリット151の配列のピッチとノズルユニット161の配列のピッチの関係を説明する図である(その1)。
【
図9】噴射スリット151の配列のピッチとノズルユニット161の配列のピッチの関係を説明する図である(その2)。
【
図10】実施例2の第1の構成例である冷凍装置100aを示す図である。
【
図11】実施例2の第2の構成例である冷凍装置100bを示す図である。
【
図12】実施例3の搬送系140cの搬送帯141cが上下方向に通気性がない場合における搬送帯141c付近における冷気流の流れを示す図である。
【
図13】実施例3の搬送系140cの搬送帯141cが上下方向に通気性がない場合における冷気流の流れをマクロで示した図である。
【
図14】従来技術におけるバッチ式冷凍装置で冷気流方式を採用した装置の構成例を示す図である。
【
図15】従来技術における連続式冷凍装置で冷気流方式を採用した装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の冷凍装置の実施例を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
以下、本発明に係る冷凍装置の構成例を、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施例1にかかる冷凍装置100の構成例を簡単に示した図である。
冷凍装置100は、冷凍庫110と、冷却器120と、送風ファン130と、搬送系140と、噴射スリットアレイ150と、噴射ノズルユニットアレイ160、冷気流回収路170、風向調整体180を備えた構成となっている。風向調整体180はオプションであり、後述するように送風ファン130の配設位置および配設方向が搬送系140に対向するものでなければ送風方向を調整するために設ける。送風ファン130の配設位置および配設方向が搬送系140に対向するものであれば風向調整体180は設けなくとも良い。
また、冷気流回収路170は、噴射ノズルユニットアレイ160の冷気流回収スリット162を通過して回収された冷気流が冷却器120に回収されるルートであれば良く、その形状や配設については適宜省略して記載されている。
また、冷凍装置として設けられる他の構成要素、例えば、搬送系140の下方には霜や水滴などを受けるパンなどについては、ここでは記載を省略している。
以下、各構成要素を説明する。
【0033】
冷凍庫110は、断熱性の高い箱体であり、密閉性が重視された設計となっている。冷凍庫110内に対して搬送系130が貫通するように配設されており、搬送系130の搬入口と、搬送系130の搬出口が設けられ、外部から冷凍対象食品を搬入したり搬出したりできる構造となっている。また、メンテナンス時などに使用するドアを側面に設けておくことも可能である。
この例では、冷凍庫110内に、冷却器120、送風ファン130、搬送系140(端部は庫外に位置する)、噴射スリットアレイ150、噴射ノズルユニットアレイ160、冷気流回収路170、風向調整体180が取り付けられている。
【0034】
冷却器120は、冷気を生成する装置であれば特に限定されない。業務用の冷凍庫に使用する場合は要求される仕様の冷却能力が必要である。例えば、-20度~-40度程度の冷気を生成する能力が必要となる。
冷却器120は、詳しい構造の図示は省略するが、筐体、複数の熱交換金属フィン、冷媒配管を備えた構成となっている。
図1では冷却器120全体を簡素に描いている。
なお、冷却器120の構成は、上記構成以外の構成については特に限定されず、一般の冷却機構が備えている構成を備えることができる。冷媒の流れも図示は省略しており、また、冷凍庫外に置かれる圧縮機や、冷却器と圧縮器との間の冷媒移動のパイプなどの図示も省略している。
【0035】
冷却器120の配設位置については限定されないが、本発明では搬送系140で搬送される冷凍対象物に均等に冷気を上方向および下方向から噴きつけるため、例えば、冷却器120の配設位置を噴射スリットアレイ150や噴射ノズルユニットアレイ160よりも外側付近に位置するように取り付けることが好ましい。
なお、冷却器120を天井付近ではなく、側壁面や後壁面に設ける構成も可能である。
【0036】
冷却器120の筐体は、冷却器120の外形となる枠体であるが、内部の熱交換フィンで生成した冷気を外部に引き出すため、この構成例では、通気性が確保されている。通気性に影響しない面は霜が付きにくいように断熱材などで覆う構成であっても良い。
熱交換金属フィンは、所定間隔で複数枚配列されており、冷媒配管が貫通しており、熱交換を行う部材である。素材としては熱伝導性の良い金属であり、例えば、アルミニウム合金などが用いられる。板状になっているのは熱交換効率を高めるべく表面積を大きくするためである。
冷媒配管は、各熱交換金属フィンを貫通する配管であり、内部に冷媒が循環する。冷媒を用いた冷却の原理は一般に知られた原理であるのでここでの説明は省略する。
【0037】
上記構成の冷却器120が稼動することにより、熱交換金属フィン同士の間の空間に対流してきた冷却室内の空気と熱交換金属フィンとの間で熱交換が生じ、また、熱交換金属フィンと冷媒配管との間で熱交換が生じて、冷却器120内部を上下方向に通過する空気が冷却されることとなる。
【0038】
他の構成についての説明を続ける。
送風ファン130は、冷却器120から冷気を引き出すように送風するものである。
送風ファン130の配置としては様々なものがある。
例えば、送風ファン130の送風方向と搬送系140の搬送方向を略平行とする配置がある。つまり、送風ファン130の送風方向を水平とし、後述する風向調整体180により下方に曲げ、下方にある搬送系140の搬送帯に向けて噴き付けるパターンである。この送風ファン130の送風方向と搬送系140の搬送方向を略平行とする配置においても複数のパターンがあり、例えば、冷却器120を奥側(外側)に取り付け、送風ファン130を中央側に取り付け、背面側にある冷却器120から引き出した冷気を中央側に噴き込む配置がある。また、例えば、噴射スリットアレイ150や噴射ノズルユニットアレイ160がある冷凍空間に向けて冷却器120の冷気を噴き出すようにその背面側に送風ファン130を取り付けて送風する配置もある。さらに、
図1の配置は前者の配置であり、送風ファン130によって背面側にある冷却器120から引き出した冷気を中央側に噴き込む配置となっている。
【0039】
送風ファン130は、羽、回転軸、軸受、モーターなどの諸要素があるが、ここでは図示を省略している。
図1の例では、すべての要素が冷凍庫110内に取り付けられている。送風ファン130の数や取り付け高さなどは、送風ファン130から送風された空気流が、冷却器120から冷気を引き出しやすく、かつ要求される冷却能力に合致した送風能力となるよう設計することが好ましい。
送風ファン130の他の配置例として、例えば、送風ファン130の送風方向と搬送系140の搬送方向を略直行する配置がある。つまり、送風ファン130の送風方向を下向きとし、下方にある搬送系140の搬送帯に向けて噴き付けるパターンである。モーター134を冷凍庫110の庫外に出すこともできる。この送風ファン130の送風方向と搬送系140の搬送方向を略直行する配置については、実施例2において
図10、
図11を参照しつつ詳しく後述するのでここでの説明は省略する。
【0040】
風向調整体180は、必須の部材ではないが、送風ファン130の送風方向が噴射スリットアレイ150や搬送系140の表面に対向する方向でない場合、送風ファン130からの風向を、噴射スリットアレイ150や搬送系140の表面に対向する方向に曲げるものである。
図1の構成例では、風向調整体180を適用した例となっている。
図1の構成例では、送風ファン130の送風方向は略水平方向になっている。また、搬送系140の搬送方向も略水平方向となっており、噴射スリットアレイ150の配設方向も略水平となっており、相互に平行になっている。このように配設することで装置全体の高さを抑える構造となっている。このままでは送風ファン130に送風された冷気流は噴射スリットアレイ150や搬送系140の表面に届きにくい。そこで、風向調整体180によって送風ファン130の送風方向を曲げる。
図1の例では両側から中央に向けて略水平に送風されている冷気流を風向調整体180により下方に噴き出すように曲げて下方にある噴射スリットアレイ150に対向する風向としている。
風向調整体180を利用する構成により、冷却器120および送風ファン130の配設方向を搬送系140の搬送方向と略平行とすることができ、装置全体の高さを小さく小型化することができる。
【0041】
なお、風向調整体180は冷気流の勢いが均等になるように風向を変える構造であることが好ましい。
図2は風向調整体180の構造例を示す図である。ここでは、
図2に示すように、同心円状の円柱体を軸方向に沿って切断し、外周が1/4の円弧となる柱体の構造となっている。配設方向はその軸が送風ファンの送風方向と直交するように配置している。
図2(b)は送風ファン130から送風された冷気流の流れを示す図である。
図2(b)に示すように、つまり、送風ファン130から送風された冷気流は当初略水平方向に噴き出しているが、当該風向調整体180に当たることにより冷気流が風向調整体の円弧の壁面に沿って下方に向けてカーブしてゆき、噴射スリットアレイ150に対向するように噴射される。
【0042】
なお、風向調整体180の内部には複数のカーブのガイドが設けられていることが好ましい。
図2に示すように、風向調整体180は送風ファン130からの送風を受け、送風を曲げて行くが、物理的には送風は直進しようとするのでその風向をカーブさせるにはガイドが多数ある方が冷気流全体として均等にカーブしやすい。そこで、複数のカーブのガイドを設けておき、細かいセクターごとに風向を曲げて行く工夫が可能である。この例では風向調整体180の内部には2枚のカーブのガイドが設けられた例となっている。風向調整体180にカーブをつけて曲げる際、外周側の速度が速くかつ遠心力で風が外周側へ集まりやすいので、外周側の気圧が若干高くなる傾向がある。そこで、内部にカーブのガイドを設けて外周側と内周側の気圧差を緩和する。
【0043】
ここで、風向調整体180の内部のカーブのガイドの配設間隔を調整することもできる。例えば、複数枚あるカーブのガイドのうち、外周に近い側のカーブのガイドの入口幅を狭くし、内周に近い側のカーブのガイドの入口幅を広くすれば、全体として、外周側と内周側の気圧差や速度差が緩和されやすくなる。
図2の例では、ガイドの高さはほぼ同じになっている。
【0044】
次に、搬送系140について説明する。
搬送系140は無限軌道を描く搬送帯141と、搬送帯141を無限軌道に沿って駆動させる駆動機構142を備えたものである。いわゆるコンベアと呼ばれる機構で良い。
搬送帯141には通気性が確保されたものと通気性がないものがある。本発明の搬送帯141はどちらのタイプでも適用できるが、この実施例1では通気性が確保された搬送帯141として説明する。なお、通気性がない搬送帯141c(スチールベルト)については実施例3で後述することとし、ここでは説明を省略する。
【0045】
実施例1にかかる通気性が確保された搬送帯141としては、メッシュ状または格子状の開口を備えたもの、つまり、金属製メッシュベルトやネットベルト(金網ベルト)と呼ばれるものがあり、冷気流が開口を通じて搬送帯を上下に通過し得るものである。
図3はメッシュコンベアで構成された搬送帯141を簡単に示した図である。
搬送帯141は、無限軌道に沿って滑らかに移動できるものであれば良いが、機械的構造強度も大きなものが好ましい。ここでは、冷気流が上下方向に通過できるよう、搬送帯に網目または格子などの開口が設けられているものが好ましい。冷気流が開口を介して上下に通過し得るものとなっている。素材としては、金属製のメッシュベルト、ネットベルトなどで良いが、他の素材や形状のものでも、耐冷性と、冷気が通過する開口が設けられているものであれば採用できる。
【0046】
搬送帯141の無限軌道は、その一部が冷凍庫110内を通過するよう配設され、両端部がそれぞれ冷凍庫外に引き出された軌道となっている。
図1に示すように、搬送系140の冷凍対象物の投入口143が冷凍庫110の庫外にあり、前段で用意された冷凍対象物が所定の間隔でコンベア上に載置されてゆく。搬送帯141の無限軌道は冷凍庫110内を通過するが、その過程において、噴射スリットアレイ150から下方に噴き出した冷気流が搬送系140の搬送帯141の上面に導かれ、噴射ノズルユニットアレイ160から上方に噴き出した冷気流が搬送系140の搬送帯141の下面に導かれ、上下から冷凍処理が促進される。搬送帯141の無限軌道は冷凍庫110の庫外へ引き出され、所定の間隔でコンベア上に載置されている冷凍対象物が取り出され、次段の処理に供される。
【0047】
次に、噴射スリットアレイ150について説明する。
噴射スリットアレイ150は、搬送系140の上面に対して対向するよう配設され、多数の噴射スリット151を備えたユニットである。各々の噴射スリット151は搬送系130の上面に向けて開口する形で多数並べられている。
噴射スリットアレイ150は、送風ファン130から導かれた冷気流の送風を受け、噴射スリット151を介して搬送系140の上面に向けて整流された冷気流を噴射する。
【0048】
図4は噴射スリットアレイ150を構成する噴射スリット151および噴射スリット体152の断面を示す図である。なお、スリット体152を支持するフレームについては図示を省略しているが、噴射スリット151の形成が邪魔されない形で噴射スリット体152が支持フレームにより支持されている。
図4に示すように、噴射スリットアレイ150の構造例としては、各々の噴射スリット151を形成するスリット体152が多数並べられた構造となっている。
【0049】
スリット体152は、その上面が凸に形成され側面が垂直壁面を持つ山型のテーパー体となっており、その隣接し合う山型のテーパー体同士の垂直壁面の間隙が噴射スリット152となっている。
図4に示した構造例では、噴射スリット151の構造が深さのある立体的なものとなり、下方に導かれる冷気流の噴射方向が制御しやすく整流しやすくなっている。もし深さがあまりない平面的なスリットであれば、冷気流がスリットを斜め方向に通過してしまうとスリットで噴射された冷気流が多様な方向に分散して乱流が発生するが、噴射スリット151の構造が深さのある立体的なものであれば、冷気流が噴射スリット151を通過することにより垂直方向に流れて整流されたのちに噴射されるため、冷気流が垂直方向に噴射されて整流されやすくなることが分かる。
【0050】
次に、
図4(b)に示すように、この例では噴射スリット体152は一つ一つが独立している構造となっている。噴射スリットアレイ150のベースフレームに対して噴射スリット体152を一つ一つ独立した形で搭載して組み立てられている。このように山型のテーパー体である噴射スリット体152を独立した構造とすれば、メンテナンスなどで搬送系に対してアクセスしたい場合、噴射スリットアレイ150全体を除去する必要はなく、該当箇所の噴射スリット151を個別に取り外すのみで該当箇所の搬送系140の表面にアクセスすることができる。
【0051】
次に、噴射スリットアレイ150の高さを調整する高さ調整機構について説明する。
図5は、噴射スリットアレイ150の高さを調整する様子を示す図である。この構成例では、噴射スリットアレイ150はユニット全体の高さが調整可能となっている。なお、高さ調整機構の細かい機構の図示は省略するが、レバーの回転に従動して噴射スリットアレイ150のベースフレームごと高さを調整できれば、各々の噴射スリット151の高さが共通して操作可能となる。
噴射スリットアレイ150の高さが調整できれば、噴射スリット151と搬送系140の上面との距離が調整可能となり、冷気流を当てる速度などを変化させることができ、冷凍速度などを調整しやすくなる。
【0052】
次に、噴射ノズルユニットアレイ160を説明する。
図6は、噴射ノズルユニットアレイ160の構造を断面で示した図である。
図6に示すように、噴射ノズルユニットアレイ160は、多数の噴射ノズルユニット161が所定ピッチ間隔を開けて略平行に配設された構造となっている。各々の噴射ノズルユニット161は、搬送系140の下面に向けて開口するように配設されている。また、各々の噴射ノズルユニット161同士の間隙は、冷気流を下方に導く冷気流回収スリット162となっている。つまり、噴射ノズルユニットアレイ160は、噴射ノズルユニット161と冷気流回収スリット162が交互に設けられた構造となっている。
【0053】
噴射ノズルユニット161は、一つ一つが中空の箱体となっており、上面に溝状のノズルが設けられた構造となっている。噴射ノズルユニット161の内部には、冷却器120で生成された冷気が図示しない経路で導かれて送風されている。例えば、図面の紙面奥方向から手前方向に向かって送風ファン130により送風されている。そのため、噴射ノズルユニット161に送り込まれた冷気流は、出口が上面に設けられた溝状の噴射ノズルのみとなり当該噴射ノズルから冷気流が噴射され、対向する搬送系140の下面に噴き付けられる。
【0054】
冷気流回収スリット162は、噴射ノズルユニット161に隣接して設けられたスリットであり、冷気流を下方に導くものである。噴射ノズルユニット161から噴射された冷気流は搬送系140を流れる冷凍対象物に噴き付けた後、そのまま下方に移動して最寄りの冷気流回収スリット162から下方へ引き込まれる構造となっている。
【0055】
ここで、冷気流回収スリット162の幅は噴射ノズルユニット161の噴射溝よりも太くなっており、冷気流の回収能力が大きくなるように調整され、噴射ノズルユニット161からの噴射冷気流と噴射スリット151からの噴射冷気流の合計に相当する冷気流が下方に通過するものとなっている。冷気流回収スリット162の能力により、冷凍庫110内は、マクロな冷気流の流れとして上方から下方へ流れるようになっており、冷気流回収スリット162を介して全体として冷凍庫110内が整流されている。
【0056】
図7は、冷凍庫110内のマクロな冷気流の流れを分かりやすく示した図である。
図7に示すように、噴射スリットアレイ150から下方に噴き出した冷気流が搬送系140の搬送帯141の上面に導かれ、噴射ノズルユニットアレイ160から上方に噴き出した冷気流が搬送系140の搬送帯141の下面に導かれるとともに、それら冷凍処理に供された冷気流が冷気流回収スリット162から下方へ回収され、冷気回収路170により冷却器120へ循環している。
図1では冷気回収路170の図示は一部であり、噴射ノズルユニットアレイ160の冷気流回収スリット162の下方のみに付番があるが、冷気回収路170としては、冷気流回収スリット162の下方から図示しないルートで冷却器120に循環しているまでの構造を持っている。
冷気流回収スリット162を介して冷凍庫110のマクロな冷気流の流れを整流でき、上方からの冷気流と下方からの冷気流との衝突によって過度な乱流を招くことが無くなる結果、冷凍ムラなどが無くなり冷凍品質が向上する。
【0057】
ここで、噴射ノズルユニット161と冷気流回収スリット162が交互に並べられている点、それらの配列ピッチと噴射スリットとの配列ピッチとの関係について述べる。
ノズルユニットアレイ160において、ノズルユニット161と冷気流回収スリット162が交互に並べられている。適切な間隔で冷気流回収スリット162が多数形成されており、冷気流が下方に引き込まれるため、搬送系140付近に集まる冷気流がスムーズに下方に導かれ、マクロな流れを整流しやすくなる。
【0058】
図8および
図9は、噴射スリットアレイ150における噴射スリット151の配列のピッチと、ノズルユニットアレイ160におけるノズルユニット161の配列のピッチの関係を説明する図である。
図8の配列の例は、噴射スリットアレイ150における噴射スリット151の配列のピッチと、ノズルユニットアレイ160におけるノズルユニット161の配列のピッチが略等しいものとなっている。さらに、噴射スリットアレイ150における噴射スリット151の配列位置が、ノズルユニットアレイ160におけるノズルユニット161の配列位置と対向する位置に設けられている。この配列例であれば、上方から搬送系140付近に噴射される冷気流の並びと、下方から搬送系140付近に噴射される冷気流の並びが略等しくなり、冷凍対象物に対して上下均質に冷気流を当てることができる。
【0059】
図9の配列の例では、噴射スリットアレイ150における噴射スリット151の配列のピッチと、ノズルユニットアレイ160における冷気流回収スリット162の配列のピッチと略等しいものであり、さらに、噴射スリットアレイ150における噴射スリット151の配列位置が、ノズルユニットアレイ160における冷気流回収スリット162の配列位置と対向する位置に設けられている。この配列例であれば、上方の噴射スリットアレイ150から噴射する冷気流が、そのまま冷気流回収スリット162に対応しているので、冷気流が整流されやすくなり、回収がスムーズになる。
【0060】
本発明では、噴射スリットアレイ150における噴射スリット151の配列のピッチと、ノズルユニットアレイ160におけるノズルユニット161の配列のピッチが異なる設計も可能である。例えば、噴射スリットアレイ150における噴射スリット151の配列のピッチが狭く密に形成されており、ノズルユニットアレイ160におけるノズルユニット161の配列のピッチが広く疎に形成されている組み合わせもあり得る。冷凍対象物の形状や内容物に応じて、上方の冷凍速度を下方の冷凍速度よりも高くする必要がある場合などに対応しやすい。例えば、ピザなどは上部に具材やチーズが載せられており下部はピザ生地のみという上下構造が異なるものは、上下で冷凍速度を調整した方が良い場合などがある。
【0061】
また、逆に、例えば、噴射スリットアレイ150における噴射スリット151の配列のピッチが広く疎に形成されており、ノズルユニットアレイ160におけるノズルユニット161の配列のピッチが狭く密に形成されている組み合わせもあり得る。例えば、出汁入りの調理済みうどんなどは下部が出汁で満たされている冷凍対象物では下部が凍結しにくいため上下で冷凍速度を調整した方が良い場合などがある。
【実施例2】
【0062】
実施例2として、送風ファンのモーターを冷凍庫の庫外に設け、モーターから送風ファンの羽まで軸受で接続する構成とした構成例を説明する。
実施例2として2つの構成例を示す。
図10は、実施例2の第1の構成例である冷凍装置100aを示す図である。
図10に示す構成例では、送風ファン130aの送風方向が垂直方向であり、搬送系140の搬送方向に沿って複数台の送風ファン130aが並べられている。冷却器110aも上下方向に取り付けられているが、
図10の構成例では冷却器110aは、搬送系140の搬送方向の始端側と終端側に1台ずつ配設されている。マクロに見れば、冷却器120aの開口が送風ファン130aの背面側に通じており、送風ファン130aの送風によって冷却器120aの開口から冷気が引き込まれる配置となっている。なお、冷却器120aの開口から冷気が引き込まれて送風ファン130aに至る方向が搬送系140の搬送方向と略平行となっている。
【0063】
なお、
図10における冷凍庫110、搬送系140、噴射スリットアレイ150、噴射ノズルユニットアレイ160は、実施例1と同様で良く、ここでの詳しい説明は省略する。
送風ファン130aは、羽131a、回転軸132a、軸受133a、モーター134aなどの諸要素があるが、ここでは簡単に示している。
図10の例では、モーター134aが冷凍庫110の庫外に取り付けられている。
上記構成により、熱源となるモーターを庫外に設けるため、冷凍負荷の低減を図ることができる。
【0064】
送風ファン130aの送風方向が噴射スリットアレイ150に対向する方向であるので、冷気流の流れは噴射スリットアレイ150に向けられており、風向調整体180は不要である。
【0065】
次に、
図11は、実施例2の第2の構成例である冷凍装置100bを示す図である。
図11に示す構成例では、送風ファン130bの送風方向が垂直方向であり、搬送系140の搬送方向に沿って複数台の送風ファン130bが並べられている。冷却器110bも上下方向に取り付けられているが、
図11の構成例では冷却器110bも、送風ファン130bと同様、搬送系140の搬送方向に沿って複数台の冷却器110bが並べられている。なお、
図11では分かりやすいように、冷却器110bが送風ファン130bの背面側に並べられているように図示しているが、冷却器110bが送風ファン130bの手前側に並べられている構成や、冷却器110bが送風ファン130bの手前側にも背面側にも両方並べられている構成も可能である。マクロに見れば、冷却器120bの開口が送風ファン130bの背面側に通じており、送風ファン130bの送風によって冷却器120bの開口から冷気が引き込まれる配置となっている。なお、冷却器120bの開口から冷気が引き込まれて送風ファン130bに至る方向が搬送系140の搬送方向と略直交するものとなっている。
【0066】
なお、
図11において冷凍庫110、搬送系140、噴射スリットアレイ150、噴射ノズルユニットアレイ160は、実施例1と同様で良く、ここでの詳しい説明は省略する。
【0067】
送風ファン130bは、羽131b、回転軸132b、軸受133b、モーター134bなどの諸要素があるが、ここでは簡単に示している。
図11の例では、モーター134bが冷凍庫110の庫外に取り付けられている。
上記構成により、熱源となるモーターを庫外に設けるため、庫内の温度を低く維持しやすく、冷凍に要するランニングコストを低減することができる。
【0068】
送風ファン130bの送風方向が噴射スリットアレイ150に対向する方向であるので、冷気流の流れは噴射スリットアレイ150に向けられており、風向調整体180は不要である。
【実施例3】
【0069】
実施例3として、搬送系の搬送帯をスチールベルトなど上下方向に通気性がない場合の構成例を説明する。
図12は、搬送系140cの搬送帯141cがスチールベルトであり、上下方向に通気性がない場合の搬送帯141c付近における冷気流の流れを示す図である。
【0070】
実施例1および実施例2に示したように、噴射スリット151から下方に向けて噴射された冷気流は、搬送系140cの搬送帯141cの上面に対向するように噴き付けられるが、スチールベルトの場合、上下方向に通気性がないため、
図12に示すように、上方から搬送系140cの搬送帯141cの上面に到達した冷気流は搬送帯141cの上面から搬送帯141cの側面側に迂回して下方に導かれる。ここで、搬送系140cの搬送帯141cの側面には冷気流が迂回できるような間隙が十分に確保されていることが好ましい。
【0071】
また、実施例1および実施例2に示したように、噴射ノズル161から上方に向けて噴射された冷気流は、搬送系140cの搬送帯141cの下面に対向するように噴き付けられるが、スチールベルトの場合、上下方向に通気性がないため、
図12に示すように、下方から搬送系140cの搬送帯141cの下面に到達した冷気流は搬送帯141cの下面で跳ね返り下方に導かれる。
【0072】
図13は、搬送系140cの搬送帯141cがスチールベルトである場合における冷気流の流れをマクロで示した図である。噴射スリット151から搬送系140cの搬送帯141cの上面に向けて噴射された冷気流は、搬送帯141cの上面から搬送帯141cの側面側に迂回して下方に流れる。また、噴射ノズル161から搬送系140cの搬送帯141cの下面に向けて噴射された冷気流は、搬送帯141cにおいて跳ね返され下方に流れる。これらの冷気流はそれぞれ噴射ノズルユニット160の冷気流回収スリット162から回収される。
搬送系140cの搬送帯141cがスチールベルトである以外は、上記実施例1および実施例2と同様である。
【0073】
以上説明した本発明の冷凍装置100は、様々な装置に組み込むことができる。それらの用途は限定されず、冷蔵庫、冷凍庫または保冷庫など、冷凍装置を備えるものであれば適用することができる。
【0074】
以上、本発明の冷凍装置の構成例における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の冷凍装置は、業務用途、家庭用途を問わず広く冷凍装置が必要とされる各種の冷蔵庫、冷凍庫または保冷庫の装置類に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
100 冷凍装置
110 冷凍庫
120 冷却器
130 送風ファン
140 搬送系
150 噴射スリットアレイ
160 噴射ノズルユニットアレイ
170 冷気流回収路
180 風向対流調整体