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  • 特許-絵柄の有る床タイル及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】絵柄の有る床タイル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20220422BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20220422BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
E04F15/02 C
E04F15/10 104E
E04F15/10 104A
B32B27/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017120734
(22)【出願日】2017-06-20
(65)【公開番号】P2019007142
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】浅井 孝治
(72)【発明者】
【氏名】沢口 誠
(72)【発明者】
【氏名】山口 典孝
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-070686(JP,A)
【文献】実開平05-012542(JP,U)
【文献】特開平05-317803(JP,A)
【文献】特開2002-187340(JP,A)
【文献】特開2001-132217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
B05D 1/00- 7/26
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絵柄の有る床タイルの製造方法であって、
基材の表側に第1コーティング層が積層された床タイルを準備する工程と、
前記第1コーティング層上に、印刷される絵柄の外形に合わせて穴が切り抜かれたマスキングフィルムを形成する工程と、
前記第1コーティング層が露出している部分に、インクにより絵柄を形成して絵柄層を積層する工程と、
少なくとも前記絵柄層上に、第2コーティング層を積層する工程と、
前記マスキングフィルムを剥離し、前記第1コーティング層を露出させる工程と、
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記マスキングフィルムを形成する工程は、マスキングフィルムを前記第1コーティング層に貼り付けた後、印刷される絵柄の外形に合わせてマスキングフィルムを切り抜く工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記絵柄層を積層する工程は、
露出した前記第1コーティング層上に、第1プライマー層を積層する工程と、
積層された前記第1プライマー層上にインクにより絵柄を形成する工程と、
前記絵柄の上に、第2プライマー層を積層する工程と、を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
基材と、
前記基材の表側に積層された第1コーティング層と、
前記第1コーティング層上に積層され、インクにより形成された絵柄を含む絵柄層と、
前記絵柄の外形に合わせて、前記絵柄層の上に積層された第2コーティング層と、
を備え
前記第1コーティング層において、前記絵柄層及び前記第2コーティング層が積層されていない部分は露出している、絵柄の有る床タイル。
【請求項5】
前記絵柄層は、前記絵柄の外形に合わせて、前記第1コーティング層と前記絵柄との間にプライマーが積層された第1プライマー層と、
前記絵柄の外形に合わせて、前記絵柄と前記第2コーティング層との間にプライマーが積層された第2プライマー層と、を備える、請求項4に記載の絵柄の有る床タイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば絵柄の有る床タイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床面を製造する際、例えば図1(a)に示されるように、床面101が絵柄114の有る床タイル110と絵柄の無い床タイル120とを敷き詰めて製造される場合がある。絵柄の有る床タイルとして、例えば、床材の表面にインクジェット印刷により絵柄が印刷されたものがある(特許文献1参照)。また、特許文献2には、下地層、インク層、コーティング層と多層構造を有するタイルが開示されている。
【0003】
しかしながら、例えば図1(b)に示されるように、UV(Ultraviolet)コーティング(UV塗料、紫外線硬化塗料とも呼ぶ:第1コーティング層112)が塗布された既存の絵柄の無い床タイル120の表面にインクジェット等により絵柄114を印刷した後、再度UVコーティング(第2コーティング層116)を塗布すると、表面の光沢やワックス密着性が変化する場合があった。そのため、図1(a)に示されるように床面101を絵柄の有る床タイル110と絵柄の無い床タイル120を組み合わせて敷設すると、部分的に光沢の様子が変化するなどの不具合が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-180005号公報
【文献】特開2009-226933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、例えば絵柄の無い床タイルと組み合わせて敷設した場合でも光沢の様子が変化しない、絵柄の有る床タイルの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の1つの形態によれば、絵柄の有る床タイルの製造方法であって、基材の表側に第1コーティング層が積層された床タイルを準備する工程と、前記第1コーティング層上に、印刷される絵柄の外形に合わせて穴が切り抜かれたマスキングフィルムを形成する工程と、前記第1コーティング層が露出している部分に、インクにより絵柄を形成して絵柄層を積層する工程と、少なくとも前記絵柄層上に、第2コーティング層を積層する工程と、前記マスキングフィルムを剥離し、前記第1コーティング層を露出させる工程と、を含む、製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る絵柄の有る床タイルの製造方法を用いれば、絵柄が印刷されていない部分は、マスキングフィルムにより重ねてコーティング層が積層されず、絵柄の無い床タイルと同じコーティング層の状態となる。そのため、本発明に係る製造方法により製造した絵柄の有るタイルと絵柄の無い床タイルとを組み合わせて敷設すれば、光沢の様子が変化することがなく、違和感の無い床面を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は従来の絵柄の有る床タイルと絵柄の無い床タイルとを組み合わせて敷設された床面を示す平面図であり、(b)は(a)のB1-B1線に沿った、従来の絵柄の有る床タイルの断面図である。
図2】(a)は開示する絵柄の有る床タイルと絵柄の無い床タイルとを組あせて敷設された床面を示す平面図であり、(b)は(a)のB2-B2線に沿った断面図である。
図3】(a)~(f)は絵柄の有る床タイルを製造する工程を示すフロー図である。
図4】絵柄の有る床タイルの別例を示す断面図である。
図5】(a)~(h)は絵柄の有る床タイルの別例を製造する工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。また、以下の実施の形態において同一又は類似の要素には共通の参照符号を付けて示し、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。
【0010】
図2(a)は本実施形態の床面1の一部を示す平面図であり、絵柄の有る床タイル10と絵柄の無い床タイル20とが組み合わせて敷設されている。図2(b)は、図2(a)のB2-B2線に沿った断面図であり、絵柄の有る床タイル10の構成を示す図である。図2(b)に示されるように、絵柄の有る床タイル10は、基材11と、基材11の表側に積層された第1コーティング層12とを有する。第1コーティング層12は、例えばUVコーティング(UV塗料)を基材11の表側に塗工することで形成される。絵柄の有る床タイル10は、さらに第1コーティング層12上に、例えばインクジェット方式により印刷された絵柄14を含む絵柄層17が積層されている。そして、絵柄層17上に、絵柄14の外形又は輪郭に合わせた、第2コーティング層16が積層されている。第2コーティング層16は、第1コーティング層12と同じ材質のUVコーティングであってよく、また別のコーティング材料であってもよい。図1に示される従来の絵柄の有る床タイル110と比較すると、絵柄層17が積層されていない第1コーティング層12の部分19には第2コーティング層16が積層されていない。
【0011】
次に、図3(a)~(f)を用いて、図2(b)に示される、絵柄の有る床タイル10の製造方法を説明する。
【0012】
先ず、図3(a)に示されるように、基材11と、基材11の表面にUVコーティング等の第1コーティング層12が積層された、絵柄の無い床タイル20を用意する。絵柄の無い床タイル20の基材11は無地であるものが好ましいが、大理石柄又は雲目柄が印刷されたものであってもよい(ステップ1)。
【0013】
次に、図3(b)に示されるように、絵柄の無い床タイル20の表側の面、即ち、第1コーティング層12上にマスキングフィルム18を貼り付ける(ステップ2)。マスキングフィルム18は、ステンシル材であってもよい。次に、ルーターカッティング機を用いて、印刷により形成される絵柄の外形又は輪郭に合わせて、マスキングフィルム18を切り抜く。図3(c)に示されるように、切り抜いたマスキングフィルム18を剥離して、絵柄の外形又は輪郭に合わせた穴21を形成し、絵柄を印刷する部分の第1コーティング層12を露出させる(ステップ3)。なお、ステップ3では、予め絵柄の外形がカットされた(穴21が形成された)マスキングフィルム18を、絵柄の無い床タイル20の第1コーティング層12に貼り付けてもよい。
【0014】
次に、図3(d)に示されるように露出した第1コーティング層12に、インクジェットプリンターにより印刷用カラーインクで絵柄14を印刷して、絵柄14を含む絵柄層17を積層する(ステップ4)。
【0015】
次に、図3(e)に示されるように、UVコーターを用いて、マスキングフィルム18及び絵柄層17の上面にUVコーティングを塗工し、第2コーティング層16を積層する(ステップ5)。
【0016】
次に、UVコーティングが硬化したのち、図3(f)に示されるように、マスキングフィルム18を剥離して、第2コーティング層16の一部を剥がし、絵柄以外の部分19の第1コーティング層12を露出させる(ステップ6)。このような工程により、本実施形態の絵柄の有る床タイル10を製造する。
【0017】
図1(b)に示されるように、絵柄の有る従来の床タイル110は、絵柄を印刷した後、UVコーティング(第2コーティング層116)が、絵柄が印刷されていない部分も含めて表面全体に施されていたため、UVコーティングが二重に施されていた。そのため、絵柄の無い床タイルと組み合わせて敷設すると、光沢の違いがあり違和感のある床面となる場合があった。本実施形態の製造方法で製造した絵柄の有る床タイル10では、絵柄の外形より外側にあるUVコーティング(第1コーティング層12)は、絵柄の無い床タイル20と同一であることから、隣接して敷設しても光沢が異なることはない。そのため、違和感の無い床面1を製造することができる。
【0018】
絵柄の有る床タイル10の別例について説明する。図4は、絵柄の有る床タイル10の別例である絵柄の有る床タイル10aの断面図である。絵柄の有る床タイル10aは、絵柄が印刷された絵柄層17aの構成が異なっている。図2の絵柄の有る床タイル10は、インクジェット方式で第1コーティング層12の上に直接、絵柄が印刷されていたが、絵柄の有る床タイル10aでは、絵柄を印刷する範囲に、プライマーを塗工して第1プライマー層13が積層されている。また、さらに、絵柄を印刷した後に、絵柄が印刷された部分にプライマーが塗工され第2プライマー層15が積層されている。そして、第2コーティング層16は、第2プライマー層15の上に積層されている。基材11及び第1コーティング層12の構成は図2(b)に示される絵柄の有る床タイル10と同じである。第1プライマー層13及び第2プライマー層は、例えば透明のプライマーインクを10ミクロンドットで、インクジェットプリンターにより印刷される。プライマーはウレタン系のプライマーであってもよく、第1プライマー層13と第2プライマー層15は同じ成分の層を設けるのが望ましい。
【0019】
絵柄の無い床タイル20にインクジェット印刷により絵柄を施す場合、床タイルの表面とインクとの密着性が悪いとインクの脱落が起き、使用中に絵柄が消えてしまうという課題があった。絵柄を印刷する部分に予めプライマーインクを印刷することで、絵柄の耐久性が良くなり、例えば床タイルから絵柄の脱落が防止されるようになる。
【0020】
次に、図5(a)~(f)を用いて、図4に示される、絵柄の有る床タイル10aの製造方法を説明する。
【0021】
図5(a)~図5(c)に示されるステップ1~3は、図3(a)~図3(c)に示されるステップ1~3と同様のため説明を省略する。
【0022】
図5(d)では、絵柄を印刷するために第1コーティング層12を露出させた部分に、プライマーインクをインクジェットにより印刷して、第1プライマー層13を積層する(ステップ4)。
【0023】
次に図5(e)に示されるように第1プライマー層13上に、インクジェットプリンターにより印刷用カラーインクで絵柄14を印刷する(ステップ5)。
【0024】
次に、図5(f)に示されるように絵柄14に、プライマーインクをインクジェットにより印刷して第2プライマー層15を積層し、絵柄層17aを製造する(ステップ6)。
【0025】
次に、図5(g)に示されるように、UVコーターを用いて、マスキングフィルム18及び絵柄層17aの上面にUVコーティングを塗工し、第2コーティング層16を積層する(ステップ7)。
【0026】
次に、UVコーティングが硬化したのち、図5(h)に示されるように、マスキングフィルム18を剥離して、絵柄以外の部分19の第1コーティング層12を露出させる(ステップ8)。このような工程により、本実施形態の絵柄の有る床タイル10aを製造する。
【0027】
発明者らは、本実施形態の絵柄の有る床タイル10aの製造方法により、絵柄の有る床タイル10aを製造し、従来と同様にマスキングフィルムを用いずに絵柄を印刷して製造したものと比較実験を行った。比較実験に用いた、実施例1~3及び比較例1、2を以下に示す。
【0028】
(実施例1)
既存の絵柄の無い床タイル20として、田島ルーフィング(株)製の塩ビタイル「マティル(登録商標)MBE101」を用意した。
【0029】
マスキングフィルムとして、厚さ10ミクロンで片面に粘着面を有するPET製マスキングフィルムを塩ビタイルに貼り、ルーターカッティング機を用い、絵柄部分の繰り抜きを行った。
【0030】
OKI製インクジェットプリンターKX5を用い、第1プライマー層として透明プライマーインクを印字し、印刷用カラーインクで絵柄を印字し、第2プライマー層に、第1プライマー層と同一の透明インクを印刷した。その後、印刷面にUVコーターで、既存の絵柄の無い床タイルに塗工されているものと同質のUV塗料を塗工し、UV硬化させた後、マスキングフィルムを剥がし、絵柄の有る床タイルを完成させた。
【0031】
(実施例2)
既存の絵柄の無い床タイル20として、田島ルーフィング(株)製のコンポジションビニルタイル「ニューソフトン」(登録商標)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で製造された。
【0032】
(実施例3)
既存の絵柄の無い床タイル20とは異なる光沢度を有するUVコーティング剤を用いた以外は全て実施例1と同一の条件でタイルを完成させた。
【0033】
実施例1と同一の絵柄の無い床タイル20を用意し、マスキングフィルムを用いずに印刷、UVコーティングを施し、比較例1を作成した。
【0034】
実施例1と同じ手順で、第1プライマー層であるプライマーインクを塗布する工程を省略し、比較例2の塩化ビニル床タイルを製造した。
【0035】
実施例1~3と比較例1及び2との貼り合わせた時の外観(光沢差、違和感)、汚れ性、柄の耐久性を評価した結果を表1に示す。
【表1】
外観評価
○:光沢差無く、違和感が無い。
△:若干の光沢差が有る。
×:明らかに光沢差が有り、違和感が有る。
絵柄耐久性(インク密着)評価
○:実歩行試験により絵柄(インク)の脱落が見られない。
×:実歩行試験により絵柄(インク)の脱落が見られる。
【0036】
比較実験の結果により、本実施形態の製造方法により製造した、絵柄の有る床タイルを用いれば、絵柄の脱落を防止することができ、且つ、絵柄の無い床タイルと組み合わせて敷設しても光沢差が無く違和感の無い床面を製造することできることが分かる。
【0037】
以上、本出願を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。
【符号の説明】
【0038】
1 床面
10、10a 絵柄の有る床タイル
20 絵柄の無い床タイル
11 基材
12 第1コーティング層
13 第1プライマー層
14 絵柄
15 第2プライマー層
16 第2コーティング層
17、17a 絵柄層
18 マスキングフィルム
図1
図2
図3
図4
図5