(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】岩盤類の掘削部位からの掘削物を資材として採取することにより資材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
E21C 37/00 20060101AFI20220422BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
E21C37/00 Z
E21D9/00 C
(21)【出願番号】P 2017164492
(22)【出願日】2017-08-29
【審査請求日】2020-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】甲村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】下河内 隆文
(72)【発明者】
【氏名】小西 優貴夫
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-024003(JP,A)
【文献】特開平07-167596(JP,A)
【文献】特開平10-205272(JP,A)
【文献】特開昭60-003387(JP,A)
【文献】特開平07-167597(JP,A)
【文献】特開平11-093559(JP,A)
【文献】特開2009-228977(JP,A)
【文献】特開2014-001912(JP,A)
【文献】特開平02-136492(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0019383(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0010385(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21C 37/00
E21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
等方性で硬質な性状を有する岩盤類の中
で掘削孔を掘進させて、当該掘削孔の掘進する方向に現れる掘削面より掘削物である岩盤類の一部を資材として切り取って採取することにより資材を製造する方法であって、
前記掘削面より、掘進方向へ延びる相互に同程度の開口面積を有する2個一組の細孔を、前記掘進方向と直交する方向へ延びる第1仮想線上に位置させて穿設する穿孔工程と、
前記一組の細孔のうちの一つを、その孔内に加圧手段を適用することで加圧用孔とするとともに、残りの細孔を空孔として、前記加圧手段を発動させる加圧工程と
を含み、
前記一組の細孔は、Lを一組の細孔のうちの加圧用孔の中心から空孔の孔縁までの距離とするとともに、Dを加圧用孔の直径とするときに、次の数式1を満たす程度に相互に接近しているものとし、
[数式1] L≦1.5D
前記加圧により、加圧用孔から空孔へ向かって、前記第1仮想線に沿った亀裂を生じさせるとともに、当該亀裂が空孔を超えて加圧用孔と反対方向に開裂するように設け、
前記掘削孔の先端側の掘削面
の一部から当該掘削孔の掘削方向へ延びる延長孔
を掘削させるとともに、掘削面の残りの部分より掘削方向にある岩盤部分である掘削部位において、前記延長孔と岩盤類の第1仮想線との間の部分を資材として採取することが可能としており、
前記一組の細孔を一つの起裂ラインとして、前記第1仮想線から、一定の長さの複数の起裂ラインが起裂ライン同士の間に一定の間隔を存して掘進方向に延びるように設け、起裂ライン同士の間隔が各起裂ラインの加圧用孔及び空孔の間隔より大であることを特徴とする、
岩盤類の掘削部位からの掘削物を資材として採取することにより資材を製造する方法。
【請求項2】
前記空孔の有効容積が加圧用孔の実容積よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の岩盤類の掘削部位からの掘削物を資材として採取することにより資材を製造する方法。
【請求項3】
前記加圧手段を爆薬とし、その爆薬量を、加圧用孔から空孔へ亀裂を生ずるが、掘削部位を破砕させない程度に調整したことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の岩盤類の掘削部位からの掘削物を資材として採取することにより資材を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤類の掘削部位からの掘削物を資材として採取することにより資材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に岩盤にトンネルを掘削するときには、掘削予定箇所のうちで自由面として唯一外側に現れる切羽面全体に、掘進方向へ延びる複数の爆薬充填孔を設け、発破をかけることにより掘削作業を行う。
これ以外の掘削方法として次のものも知られている。
(1)岩盤等の掘削方法として、岩盤の表面の一部に所定の間隔で掘進方向へ延びる複数の孔を格子点様に穿設し、穿設した複数の孔の一部に膨張性破砕剤を注入充填した後に、当該充填剤を膨張させて、膨張剤充填孔の周囲に亀裂を生じさせ、岩盤のうち亀裂を生じさせた部分を溝状又は柱状に芯抜きし、この芯抜き部分に隣接する岩盤部分に対して同様の手順を繰り返して岩盤を所定の形状に掘削する方法(特許文献1)。
(2)岩盤のうちトンネルを掘削する予定範囲の境界線に沿って一定の間隔で複数の治具挿入用孔を穿設し、これら治具挿入用孔内に液圧破砕具を挿入し、これら液圧破砕具を作動させて、境界線に沿って亀裂を生じさせ、次に境界線内の岩盤部分を発破掘削する方法(特許文献2)。
前記液体破砕具は、治具挿入用孔の内周面に向かって反対方向へ突き出す一対の楔を有し、これら楔の突き出しにより境界線に沿って亀裂が生ずるように形成している。
さらにコンクリート破断方法として、コンクリートの破断箇所に同径の複数の孔が一面に並んでおり、一部の孔に爆薬を充填して圧力受孔とするとともに残りを空孔とし、空孔を除いて隣接する位置にある2つの圧力受孔が1つ以上の空孔を挟むように配置し、前記爆薬を爆発させることにより圧力受孔の内面に圧力を付与することにより、コンクリートを破断するものが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-155589
【文献】特開平5-231088
【文献】特許第6017853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
岩盤を発破で掘削する方法では、掘削箇所から大量の掘削ずり(細かく砕かれた岩石や土砂など)が生ずる。これらのずりの形状は不均一であり、建築用石材に再利用することは困難と考えられる。またずりの粒径の大半は数百mmであり、建築用石材に再利用するには粒径が小さすぎることがわかる。
特許文献1の方法でも、発破に代えて破砕剤を使用しており、破砕剤の膨張により発生する亀裂の方向をコントロールできないので、やはり相当量の破砕ずりを生ずる。
特許文献2の方法では、楔を用いて掘削予定箇所の境界線の方向に亀裂を生じさせるものの、亀裂を生じさせた後に境界線の内側の岩盤部分に発破をかけるので、やはり多量の掘削ずりを生ずる。
岩盤類の性状が等方性で硬質である場合には、岩盤類から適切に切り取ることができれば資源として利用できる可能性があり、これをわざわざ破砕して、ゴミとして処分するのは不経済である。
【0005】
また通常の発破による岩盤掘削の一般例として、
図11に、鉛直上側が1自由面での発破の例を示す。同図中、20は爆薬装填孔である。この爆薬装填孔を中心にして、自由面に向かって同図に点線で示す如く、漏斗状の破壊面Sfを生じる。このような破壊が生じる理由としては、同図に示すように爆薬装填孔から発生した圧縮応力による弾性波が自由面で反射し引張応力となって表層に近い岩盤内に作用し、また、種々の方向に反射することによって引張応力も種々の方向に作用するためと考えられている。岩石のような脆性材料では圧縮強度に比較して引張強度が極端に小さいために岩盤が細粒化するような破壊を生じる。このため、岩石の発破掘削においては、自由面の存在が重要となるとともに、岩盤を細粒化する破壊には大きなエネルギーを要するため、多量の爆薬が必要となる。
別の岩盤掘削の一般例として、トンネルの掘削では、まず、切羽面を自由面とした切羽中央部の芯抜き発破をした後、この芯抜きによって生じた自由面を利用して次第に掘削断面を広げていくといった方法がある。これによれば、自由面を有効に活用し、
図11に示す岩盤掘削の一般例に比べると爆薬量の低減を可能としている。しかしながら、発破の中心点から四方八方に多数の亀裂が発生し、これら亀裂の数に応じたエネルギーを必要とするから、爆薬の量の節減と言う点においてなお改善の余地がある。
また特許文献3の構成では、空孔は内部に何も充填されておらず、その開口部も閉塞されていないため、圧力受孔にガス圧が発生して亀裂が進展して空孔に到達すると、ガス圧は空孔の坑口から容易に抜けてしまう。よって、圧力受孔から発生した亀裂が、これと隣接する空孔までは効率的に進展するが、当該空孔を超えて進展するための条件は開示されていない。特に圧力受孔の間に2つの空孔が存在するときには、空孔同士の間では効率的な亀裂の進展は期待できない。
【0006】
本発明の第1の目的は、岩盤類の掘削部位からの掘削物を資材として活用できる形で採取することで、当該資材を製造する方法を提案することである。
本発明の第2の目的は、岩盤類に掘進方向へ延びる加圧用孔及び空孔を設けることにより、亀裂の方向をコントロールし、掘削部位から適切に岩盤類の一部を切り取り、資材として製造することができる方法を提案することである。
本発明の第3の目的は、前述の各方法を爆薬による発破技術で実現するものであって、爆薬の量を低減できる方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段は、等方性で硬質な性状を有する岩盤類の中で掘削孔を掘進させて、当該掘削孔の掘進する方向に現れる掘削面より掘削物である岩盤類の一部を資材として切り取って採取することにより資材を製造する方法であって、
前記掘削面より、掘進方向へ延びる相互に同程度の開口面積を有する2個一組の細孔を、前記掘進方向と直交する方向へ延びる第1仮想線上に位置させて穿設する穿孔工程と、
前記一組の細孔のうちの一つを、その孔内に加圧手段を適用することで加圧用孔とするとともに、残りの細孔を空孔として、前記加圧手段を発動させる加圧工程と
を含み、
前記一組の細孔は、Lを一組の細孔のうちの加圧用孔の中心から空孔の孔縁までの距離とするとともに、Dを加圧用孔の直径とするときに、次の数式1を満たす程度に相互に接近しているものとし、
[数式1] L≦1.5D
前記加圧により、加圧用孔から空孔へ向かって、前記第1仮想線に沿った亀裂を生じさせるとともに、当該亀裂が空孔を超えて加圧用孔と反対方向に開裂するように設け、
前記掘削孔の先端側の掘削面の一部から当該掘削孔の掘削方向へ延びる延長孔を掘削させるとともに、掘削面の残りの部分より掘削方向にある岩盤部分である掘削部位において、前記延長孔と岩盤類の第1仮想線との間の部分を資材として採取することが可能としており、
前記一組の細孔を一つの起裂ラインとして、前記第1仮想線から、一定の長さの複数の起裂ラインが起裂ライン同士の間に一定の間隔を存して掘進方向に延びるように設け、起裂ライン同士の間隔が各起裂ラインの加圧用孔及び空孔の間隔より大である。
【0008】
本手段では、
図1に示す如く、岩盤類2の中を掘進する方向に現れる掘削面6より、当該方向へ延びる
相互に同程度の開口面積を有する2個一組の細孔hを、穿設する。これら細孔hは、前記掘進方向と直交する方向へ延びる第1仮想線I1上に位置させている。
一組の細孔hのうちの一つは、孔内に加圧手段を適用させた加圧用孔20とされており、残りは空孔22としている。そして加圧用孔20の中心点から空孔22の孔縁までの距離Lが加圧用孔の直径Dの1.5倍以下とすることにより、加圧用孔20内に圧力を導入したときに加圧用孔20から空孔22の方向(第1仮想線I1の方向)へ亀裂Cが延びるように亀裂の方向を制御するようにしている。
亀裂Cを制御する原理は、
図7(A)および(B)に示す如く、加圧用孔20に導入されるある圧力のうち掘削面6上で第1仮想線I1に直交する方向の分力によって、前記加圧用孔20と空孔22との間の岩盤部分が裂けることであり、その結果として空孔22より加圧用孔20と反対方向にも裂ける。そのためには少なくとも岩盤類2の性状が等方性であり、かつ硬質であることが好適である。
さらに亀裂Cの方向を制御するためには、前記加圧用孔20内に圧力を導入する前に第1仮想線I1の平行な方向に予め自由端面12を形成しておくと良い。それにより第1仮想線I1と直交する方向の分力が亀裂Cを形成する手段としてより有効に働くからである。
上記の原理は、図示例のように加圧用孔20と空孔22とが一直線上で交互に表れる配置において、
好適な一実施例として、前記自由端面12を設けるために有効な手順として、前記穿孔工程の記載は次のように書き換えても良い。
“前記掘削面と接する掘削部位のうち前記掘削面の一部から掘進方向へ連なる部分を掘削
除去し、前記掘削部位の残余部分が破砕物を除去したあとに生ずる延長孔と接する自由端面を有するようにした破砕工程と、
前記延長孔の縁部から掘削部位の残余部分と周囲の岩盤類とを分離する切欠きを切り込む切込み工程と、
前記掘削面の残りの部分より、掘進方向へ延びる
相互に同程度の開口面積を有する2個一組の細孔を、前記自由端面と並んで掘進方向と直交する方向へ延びる第1仮想線上に位置させて穿設する穿孔工程と”
なお、切り込み工程に関しては省略してもよい。文章上では便宜的に破砕工程→穿孔工程の順序で記載しているが、実際の手順としては、穿孔工程→破砕工程としても構わない。
また本手段では、図3に示すように、一組の細孔からなる起裂ラインを複数本設けることを提案している。なお、「起裂ライン」とは、亀裂の起点となるラインという意味である。
【0009】
「岩盤類」とは、岩盤或いはコンクリート構造物を言うものとする。
この岩盤類を掘削する作業は、トンネルなどの地下構造物を形成するために行うものであってもよい。また本発明は、岩盤斜面のベンチ掘削等にも好適に適用できる。
「資材」とは、石材、或いはコンクリート材を含む。形状としては、角材が好適であるが、板材も除外しない。
「加圧手段」とは、爆薬による発破技術及び静圧破砕剤を含む。
「加圧用孔」とは、爆薬装填孔や静圧破砕剤充填孔を言う。
「掘削面」とは、掘削途中の段階では切羽面を言うが、掘削開始前の段階での掘削予定面を含むものとする。
「掘削物」は、従来工法の“ずり”に対応するが、従来のもののように不定形ではない。
「一組の細孔」とは、爆薬充填孔を“●”で、また空孔を“○”で表すものとすると、一対の細孔(●○)の他に、中央を爆薬充填孔とする3つの細孔(○●○)も含む。
【0010】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
前記空孔の有効容積が加圧用孔の実容積よりも小さい。
【0011】
本手段では、空孔は有効容積を減じた構造としている。これにより、亀裂が加圧用孔から空孔へ達したときの圧力の低下の度合いを小さくして、当該空孔を超えて加圧用孔の反対側へ亀裂が進展することを容易とする。
「有効容積」とは、爆薬や静的破砕剤の作用による圧力上昇に寄与する容積をいい、穿設した孔内に砂、礫、掘削ずり等の充填材を充填して減容措置を講じた場合には、実容積から充填材の容積を減じたものを、前記措置を講じない場合には実容積そのものをいう。
すなわち、空孔の有効容積を減ずるとして、空孔の実容積を小さくする(孔の径を小さくしたり、孔の長さを短くする)ということも出来るが、充填材を投入してもよい。
好適な一実施例として、前記充填材を、空孔の杭口側を閉塞する閉塞材(コンクリートなど)とすると、前述の圧力低下を更に低減することができる。
【0012】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ
前記加圧手段を爆薬とし、その爆薬量を、加圧用孔から空孔へ亀裂を生ずるが、掘削部位を破砕させない程度に調整している。
【0013】
本手段では、加圧手段を爆薬とすることを提案している。爆薬量は、加圧用孔の孔縁と空孔の孔縁との距離をl、両孔の間での岩盤類の単位長当たりの結合力をf、加圧用孔20内に作用し、第1仮想線と直交する方向に加圧用孔を引き裂くように作用する爆薬の力をFとすると、f×l<Fという条件を満たす範囲で調整すればよい。
本手段では、
図7(A)及び(B)に示すように爆薬孔内部を発破により岩盤が加圧された際に、爆薬装填孔の周囲に存在する岩盤が、孔の接線方向に引張応力が作用するというメカニズムを利用している。これにより、亀裂を発生させたい方向(所望の方向)に空孔を設けることにより、空孔方向に応力を集中させ、空孔方向のある一方向のみに単一の亀裂を発生させる。従来技術の欄で述べた岩盤を細粒化させる一般的な発破では、前述の通り大きなエネルギーを必要とするため多量の爆薬が必要となるが、本手段では単一の亀裂を生じさせるだけなので、爆薬の量は少量で良いことが効果である。
【発明の効果】
【0016】
第1の手段に係る発明によれば、岩盤類の掘削面において掘進方向に延びかつ相互に接近する相互に同程度の開口面積を有する2個一組の細孔を設け、当該一組の細孔の一つを加圧用孔とし、残りを空孔として、加圧用孔の内部を加圧することにより、当該加圧用孔から空孔へ向かって亀裂の向きを制御するとともに当該亀裂が空孔を超えて加圧用孔と反対側へ開裂するようにしたから、当該亀裂を利用して岩盤類から資材を切取り、資源として用いることができる。
また第1の手段に係る発明によれば、前記一組の細孔を一つの起裂ラインとして、前記第1仮想線から、一定の長さの複数の起裂ラインが起裂ライン同士の間に一定の間隔を存して掘進方向に延びるように設けたから、第1仮想線の方向の広い範囲に亘って資材を切り取ることができる。
第2の手段に係る発明によれば、前記空孔の有効容積が加圧用孔の実容積よりも小さいから、前記加圧用孔から空孔へ亀裂が発生したときの高圧ガスの圧力低下を抑制し、亀裂が空孔を超えて反対側へ延びることを促進できる。
第3の手段に係る発明によれば、爆薬による発破技術を用いて、加圧用孔から空孔へ向かって単一の亀裂を生じさせるだけなので、爆薬の量は少量で良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る岩盤類の掘削部位からの掘削物を資材として採取することにより資材を製造する方法の概念を説明するための説明図である。
【
図2】
図1の掘削部位の説明図であり、同図(A)は当該部位を説明する図の掘進方向から見た正面面、同図(B)は、当該部位に亀裂が入った状態での説明図である。
【
図3】
図2の掘削部位を上方から見た断面図である。
【
図4】後述の
図5とともに、前述の資材を製造する方法の手順の説明図であり、 [1F]は、切羽面から上部延長孔を穿設する段階を掘進方向から見た図、[1S]は同じ段階を側方から見た図であり、 [2F]は、前記上部延長孔の先端部から後述する[3F]と同様に複数の一対の細孔を下方へ穿設する段階を掘進方向から見た図、[2S]は同じ段階を側方から見た図であり、 [3F]は、第1仮想線より掘進方向へ延びる一対の細孔を穿設する段階を同方向から見た図、[3S]は同じ段階を側方から見た図である。
【
図5】[4F]は第1仮想線より掘進方向へ延びる一対の細孔を穿設する段階を同方向から見た図、[4S]は同じ段階を側方から見た図であり、 [5F]は、前記一対の細孔の一方に爆薬を充填した段階を掘進方向から見た図、[5S]は同じ段階を側方から見た図であり、 [6F]は、前記爆薬を爆破させた段階を掘進方向から見た図、[6S]は同じ段階を側方から見た図である。
【
図6】本発明のうち掘削部位から資材を採取する手順の変形例を示す図であり、 同図(A)は、資材として切り取る箇所の境界線(第1の境界線)上に加圧用孔及び空孔を、また掘削予定箇所の境界線(第2の境界線)上及び第1の境界線及び第2の境界線の間に補助加圧用孔をそれぞれ形成した段階を、 同図(B)は、第1境界線上の加圧用孔に圧力を導入し、亀裂を生じさせる段階を、 同図(C)は、前記補助加圧用孔に圧力を導入して、第1の境界線及び第2の境界線の間の岩盤部分を破砕させ、資材を回収する段階を、それぞれ示している。
【
図7】本発明方法のうち加圧用孔に圧力を導入して亀裂を生じさせるメカニズムの説明図であり、 同図(A)は、加圧用孔及び空孔から亀裂が生ずる範囲を2点鎖線で示す図であり、 同図(B)は、加圧用孔及び空孔の間で応力集中を生じる点S1を示す図であり、 同図(C)は、加圧用孔及び空孔が繋がって楕円孔となったときに楕円孔の両側で応力集中を生ずるS2)を示す図である。
【
図8】本発明のうち加圧用孔への圧力適用により生ずる引張り応力を計算するための図面であり、 同図(A)は、加圧用孔と当該加圧用孔を囲みかつ空孔に接する仮想円との間の環状の岩盤部分を描いた図であり、 同図(B)は、前記環状の岩盤部分の内周に圧力を計算する位置を表す点S3を示す図である。
【
図9】爆薬充填孔(加圧用孔)の中心から空孔表面までの距離を横軸に、応力比を縦軸にそれぞれとって両者の関係を表す図である。
【
図10】本発明の方法に用いられる空孔の有効容積を加圧用孔の実容積より小さくする構成の説明図であり、同図(A)は、加圧用孔の径を空孔の径より大きくする態様を、同図(B)は、加圧用孔の径と空孔の径とを同径とするとともに、空孔内に充填材を導入する態様を、同図(C)は、加圧用孔の径を空孔の径より大きくするとともに空孔内に充填材を充填する態様を、同図(D)は加圧用孔の径を空孔の径より小さくするとともに空孔内に充填材を充填する態様を、それぞれ示している。
【
図11】従来の発破技術による岩盤掘削の様子の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1から
図9は、本発明の実施形態に係る岩盤類の掘削部位からの掘削物を資材として採取することにより資材を製造する方法の説明図である。
説明の便宜上、本方法発明が適用された掘削孔4の構造を説明する。
図1において、符号2は、岩盤類を示している。
岩盤類は、等方性で硬質の性状を有するものとする。等方性であることにより、
図7(B)に示す如く、後述の加圧用孔から空孔へ亀裂を出現させようとする設計者の意図通りに亀裂の向きを制御できるからであり、また硬質で、かつ、圧縮強度に比較して引張強度が小さい脆性材料であることにより、
図2(B)に示す如く、その空孔の位置を超えて亀裂を生じさせることができるからである。
具体的には、亀裂が発達していない再資源化が可能な岩盤(例えば花崗岩などの硬岩)、或いは、コンクリート構造物が該当する。本実施形態では岩盤を対象として説明するものとする。
前記岩盤2には、トンネル用の掘削孔4が形成されている。図示の掘削孔4の輪郭線Bは、
図1に示す如く円形から下端部を切り取った欠円形状としている。その掘削孔の先端の掘削面6の上側の一部(図示例では弓状部分)からは、当該掘削孔4を掘進方向へ延長する延長孔10を掘進方向へ穿設されており、掘削面6の残りの部分より掘進方向にある岩盤部分(以下、掘削部位という)8の上面を自由端面12としている(
図4[1S]参照)。自由端面12を確保することにより掘削部位8に亀裂を生じさせ易くするためである。自由端面12の先端からは、下向きに削孔(一対の細孔)14を穿設する(
図4[2S]参照)。
この自由端面12と平行に掘削面6上に水平な第1仮想線I1を設定し、この第1仮想線I1から掘進方向へ延びる一対の細孔hを穿設している。これら細孔の一方は、内部に爆薬或いは静的破砕剤を挿入した加圧用孔20とし、残りは空孔22として用いる。これら加圧用孔20及び空孔22の組み合わせは、亀裂の起点となる起裂ラインを形成する。図示例では、第1仮想線I1から、相互に等間隔で隔てて複数の起裂ラインが延びている。
また前記掘削面6の残りの部分には、第1仮想線I1と直交する第2仮想線I2を設定し、この第2仮想線I2から前記掘進方向へ延びる一対の加圧用孔20及び空孔22が形成されている。
前記一組の細孔は、Lは一組の細孔のうちの加圧用孔の中心から空孔の孔縁までの距離とするとともに、Dを加圧用孔の直径とするときに、次の数式1を満たす程度に相互に接近しているものとする。
[数式1] L≦1.5D
これにより、加圧用孔から空孔へ向かって、前記第1仮想線に沿った亀裂を生じるように、亀裂の方向をコントロールすることができる。従って、岩盤の第1仮想線I1と延長孔10との間の部分を資源である石板として回収することが容易である。
図示例では、加圧用孔20と空孔22とを同径に描いているが、その構造は任意であり、好適な一例として、空孔22を加圧用孔20より小径としている。これにより、岩盤から削り取る容積を小さくすることができ、省エネルギーに資する。
好適な一実施例として、加圧用孔である爆薬充填孔の径を、100mm程度とすることができる。
図3に示す通り、一対の細孔間の距離に比べて、対をなさない細孔同士の間の距離は大である。換言すれば、一つの加圧用孔20の中心から隣りの空孔の孔縁の一端側(当該加圧用孔に向かい合う側の一端)までの距離Lに比べて、当該空孔の孔縁の他端側から、反対側の加圧用孔20の中心までの距離Kは大である。このような配置とすることにより、亀裂が空孔を乗り越えて進展するための条件式(数式1)を活かして、遠方まで亀裂が延びるようにさせることができる。
【0019】
本実施形態では、前記空孔22内に砂、礫、掘削ずり等の充填材Fを充填することにより、空孔22の有効容積を加圧用孔20の実容積に比べて小さくしている。前記加圧用孔20内で爆薬を爆発させると、加圧用孔20から空孔22へ亀裂が到達するとともに空孔内へ高圧ガスが流れ込むが、このとき空孔の内容積が大きいと、ガス圧が低下して、亀裂が空孔22を超えて反対側へ進展することを妨げるおそれがある。これを防止するために、予め空孔22内に充填材を装填して空孔22の有効容積を加圧用孔20の容積より小さくするのである。
充填材Fは、図示例のように、空孔22の坑口寄りの部分(坑口部という)に充填させると、作業が簡単であるが、必ずしもこれに限るものではなく、空孔内の適所(例えば奥部)へ充填させればよい。
また充填材を空孔22の坑口部に充填させることにより、前記亀裂が空孔22に達したときに前記坑口から高圧ガスが抜けにくくなり、さらに亀裂が空孔22を超えて進展し易くなる。充填材を空孔の坑口部内に充填させる構造には、坑口部内をコンクリートなどの閉塞材で閉塞させる構造が含まれるものとする。これにより、空孔の坑口部から高圧ガスが一層逃げにくくなり、より効率的に亀裂を進展させることができるとともに、より少ない爆薬量でより遠方まで亀裂を進展させることができる。
また、加圧用孔20の直径に対して空孔の直径を小さくすることで、加圧用孔に対して空孔の有効体積を小さくしてもよい。この場合には発破による動的なガス圧が作用する場合や静的破砕剤で静的な荷重が作用する場合のいずれにおいても、空孔の削孔時間の削減ができるため、作業効率が向上するという効果がある。
【0020】
以下、本発明方法の手順を説明する。
(1)岩盤2に形成された掘削孔4の先端の掘削面6の上部から、その掘進方向へ延びる延長孔10を掘削する(
図4[1F]及び[1S]参照)。これにより、掘削部位8の上面が自由端面12となる。
延長孔10の掘削方法は、従来既知の方法で行えばよい。
(2)前記自由端面12の先端部から下向きに一対の細孔14を穿設する(
図4[2F]及び[2S]参照)。これにより、後述の石材Pを掘削孔4の奥方向の岩盤部分から切り離すためである。一対の細孔14の深さは石材Pの厚みと同程度とすればよい。
(3)前記掘削面6上に前記自由端面12と平行に設定された第1仮想線I1から掘進方向へ延びる一対の細孔hを穿設する(
図4[3F]及び[3S]参照)。細孔hの長さは、少なくとも自由端面12の掘進方向の長さと同程度とする。
(4)前記掘削面6上に第1仮想線I1と直交する方向に設定された第2仮想線I2から掘進方向へ延びる一対の細孔hを穿設する(
図5[4F]及び[4S]参照)。それら細孔hの長さは前記(3)の細孔の長さと同じとする。
(5)前記各一対の細孔の一方の内部に爆薬Eを充填する(
図5[5F]及び[5S]参照)。そしてこの爆薬を外部から爆発させることができるようにセットし、当該細孔は加圧用孔20として機能するようにする。
爆薬は、資源として回収する石材を傷つけないように最小限とするものとし、かつ、できるだけ加圧時間を長くすることが望ましい。また、爆薬の装填量は、亀裂が発生しやすい自由面付近で少なくし、亀裂が発生しにくい孔の奥側で多くするなど、爆薬量を調整しても実施できる。例えば、爆薬装填孔を深さ方向に3等分して区域を設け、該爆薬装填孔の奥側に向かって、各区域に充填する爆薬を徐々に多くして奥側の区域を所要の装填量することでも好適に実施できる。このため、より爆薬量の節減が可能であると共に、効果的な加圧作用を得ることができる。
また前記一対の細孔の他方には、その内部を一部(
図3の例では孔内の奥部)に砂、礫、掘削ずりなどの充填材Fを装填して、加圧用孔より有効容積を減じた空孔とする。装填の順序としては、爆薬の充填の前、後、同時のいずれでも構わない。
(6)前記爆薬を爆発させる(
図5[6F]及び[6S]参照)。これにより三辺を切断された岩盤部分を石材Pとして回収することができる。
前述の手順が終了したら、石材を切り取った後に残る掘削部位8に対して(1)~(6)の手順を繰り返す。掘削孔4の床面に至るまで掘削部位8を全部切り取ったら、新たな掘削面(切羽面)の上部に対して、前述の延長孔10を掘進方向に再び掘削し、そして本発明の手順を繰り返す。
切り取られた石材に細孔の跡が残っていたら、必要により、石材の表面に研磨などを行っても良い。こうした作業を少なくするために、細孔の孔径はできるだけ小さくすることが好適である。
この図示例の方法では、適用対象の掘削部位を、角材又は板材として切り分けるので、掘削物のうちの大部分を資材として回収することができ、経済的である。
【0021】
図6は、本発明方法の変形例を示している。本例は、回収する石材Pの周囲に確実に亀裂を発生させることを目的としている。以下、火薬を装填した加圧用孔20を爆薬装填孔20と呼ぶことがある。
まず
図6(A)に示すように、石材Pとして切り取るべき領域の下面側の爆薬装填孔20内に装填する火薬の量から、下側の亀裂の長さL2を予め計算しておき、そして亀裂発生長さの内側に当該領域の側面側の爆薬装填孔20及び空孔22を設置させる。
そして、石材Pの下面および奥面で第1段階の発破を行い、次に石材Pの側面で第2段階の発破を行う。こうすると、
図6(B)に示す如く、石材Pの側面側の亀裂が石材Pの下面側の亀裂に連結して、確実に当該石材Pを岩盤2から分離することが可能となる。
掘削部位のうち回収する石材P以外の部分については、第3段階の発破を行う。発破の条件としては、石材Pの側面、下面、奥面でのそれに比べて爆薬装填孔20の直径が大きくかつ爆薬量が多くする。爆薬装填孔20の配置は、図示例では、掘削孔4の境界B上、及び、当該境界と石材Pの下面及び側面である。なお、回収する石材Pの周囲には、第3段階の発破の際にはすでに亀裂Cが存在する。このため、第3段階の発破により周囲の岩盤が細粒化するエネルギーの大半は、すでに存在する回収する石材周囲の亀裂で反射するため、回収する石材に特に損傷は与えない。
第3の発破より石材Pの周囲は細かく破砕されており、その中から
図6(C)に示す吊り上げ装置などの把持手段Gを用いて石材Pを吊り上げ、ダンプトラックの荷台に積み上げることが好適である。前記石材Pは、1m角程度の場合2.7tという大きな重量を有するため、石材を挟み込んで吊り上げるという作業が必要となる。
回収する複数の石材が隣接していると、吊り込みのための機械を挿入するための空間が確保できないことから作業が困難となる。これを解決するために、回収する複数の石材間に発破により細粒化させる部分を設けた。この部分を掘削することにより吊り込みのための機械を挿入できる空間を容易に確保できるようにした。
【0022】
図7は、本発明方法により亀裂を生ずる方向を制御する原理の説明図である。
この原理は、加圧用孔20に圧力が導入され、加圧用孔周囲の岩盤部分が加圧された際に、当該岩盤部分には孔の接線方向に引張応力が作用するというメカニズムを利用している。
図7(A)に示すように、加圧用孔20から亀裂を発生させたい方向(所望の方向)に空孔22を設置することにより、
図7(B)に示すように、この空孔の方向にある点S1に応力を集中させ、これにより空孔方向のある一方向のみに単一の亀裂を発生させる。
従来技術の欄で述べた岩盤を細粒化させる一般的な発破では、前述の通り大きなエネルギーを必要とするため多量の爆薬が必要となるが、本手段では単一の亀裂を生じさせるだけなので、亀裂を出現させるのに要するエネルギーの量は少なく、発破の技術を用いるときには、爆薬の量は少量で良いことになる。
前記亀裂が空孔方向に発生して空孔22に到達すると、加圧用孔20と空孔22とは連結して
図7(C)に実線で示すように見かけ上楕円孔23となる。この場合、楕円孔の長径方向に位置する2点S2に応力集中を生じる。
図2(A)に示す加圧用孔20の中心から空孔22の表面までの距離が1.5Dの場合には、
図7(C)に示した2か所の応力集中点S2間の距離は、その2倍の3Dとなり、引張応力は約3倍の応力集中を生じるため、亀裂は同一方向にさらに進展することとなる。
図示例では、加圧用孔20と空孔22の直径は同じとして図示した。これは同一の掘削機械を用いて孔を削孔することの利点を考慮したためであるが、空孔22の直径は加圧用孔20の直径に比較して小さくても、応力集中を生じる効果に大きな差はない。よって、空孔は加圧用孔に比較して小さな直径とし、2台の削孔機械を用いて施工することで直径の小さな空孔の削孔時間を短縮して工期を短くするということも可能である。
【0023】
次に前記の原理を裏付ける理論的な考察を行う。発破技術を利用した場合を例にとって説明するが、静圧破砕技術を用いる場合も考え方は同じである。
本発明は、好ましくは1m程度の石材として回収するために、まず、亀裂の発生方向を制御するための発明である。無限岩盤中に単一の爆薬装填孔20を掘削し、孔内奥行方向に均一に爆薬を装填した場合、孔周辺岩盤の応力分布は近似的に平面ひずみ問題として取り扱うことができ、孔周辺岩盤に発生する引張応力は(1)式で求めることができる。
[数式1] σ
θ=p・(R
2/r
2)
ここで、σ
θ:引張応力(正の値)、p:内圧=爆薬の爆轟圧力(ガス圧)、R:加圧用孔の穿孔半径(一般的な値として5cmとする)、r:爆薬装填孔中心からの距離である。爆薬装填孔20の表面では接線方向に均一に爆轟圧力が作用することになる。
岩盤は圧縮強度に比較して引張強度が小さい脆性材料であるため、(1)式に示す引張応力が岩盤2の引張強度を超えることにより引張破壊を生じる。
この場合、引張応力は爆薬装填孔表面では均一に作用するため、理論的には亀裂は爆薬装填孔を中心に放射状に複数発生することになる。
実際には、亀裂の発生方向は岩盤内にマイクロクラックのような弱面が存在することで強度が小さい部分から発生することとなり、亀裂の発生方向を制御することは不可能である。本発明では、亀裂を発生させたい方向に空孔を設置することにより、空孔方向へ単一の亀裂を発生させる。
図8(A)に示す内外圧を受ける厚肉円筒で発生する引張応力は、(2)式によって求めることができる。
[数式2]
σ
θ=(p
1r
1
2-p
2r
2
2)/(r
2
2-r
1
2)-r
2
2r
1
2(p
2-p
1)/r
2(r
2
2-r
1
2)
ここで、r
1:厚肉円筒の内半径、r
2:厚肉円筒の外半径、p
1:内圧、p
2:外圧、r:中心からの距離である。
爆薬装填孔20と空孔22の間の岩盤に生じる応力は(2)式で外圧p
2=0、外半径r
2=爆薬装填孔中心から空孔表面までの距離とした場合として近似することができる。
なお、爆薬装填孔20と空孔22の直径は、同一機械で削孔するため直径は同じである。
爆薬装填孔20表面の空孔方向の応力を、爆薬装填孔20と空孔22表面までの距離を変化させて(2)式によって求めた結果を
図9に示す。
図の縦軸は(1)式によって求められる空孔がない場合の応力との比を、横軸はr
2を爆薬装填孔の直径で除した値を示した。
爆薬装填孔20と空孔22表面までの距離が小さいほど発生する応力は大きくなり、空孔22の効果が得られる。
本発明では爆薬装填孔20と空孔22表面までの距離が、爆薬装填孔20の直径の1.5倍以内とすることとした。この場合、空孔が存在することにより応力が25%以上増加するため、確実に空孔方向に亀裂の方向が制御できると判断した。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
実施例1として、亀裂の進展長さを制御する方法について説明する。
通常の発破の場合、最初に爆発させる雷管を設置した親ダイナマイト(親ダイ)24は、不発により孔内へダイナマイトが残ることを避ける理由から、爆薬装填孔の最深部に配置される場合が多い。
本発明では、通常の発破のように岩盤を細粒径化する必要はなく、制御させたい方向へ亀裂を発生させるのみで良いので、爆薬量は通常の発破に比較して大きく低減できる。本発明では、事前に試験発破を行い爆薬装填孔および空孔の直径を小さくして爆薬量を低減する。これにより,爆薬量低減によるコストダウンが実現できる。
本発明では爆薬装填孔および空孔の深さ(奥行)により、亀裂の発生長さを制御する。ダイナマイトの燃焼速度Vbは種類によって異なるが5000~7500m/sであり、親ダイを爆薬装填孔の最深部に設置した場合の燃焼時間t(s)は次の(3)式で求めることができる。
[数式3] t=L1/Vb
ここで、L1:爆薬装填孔および空孔の奥行長さ(m)、Vb:ダイナマイトの燃焼速度(m/s)である。
一方、次の(4)式に示すように亀裂の発生長さL2(m)は(3)式の燃焼時間中に発生する爆轟圧(ガス圧)の作用時間tに、岩盤の弾性波伝播速度(Vp(m/s))(=応力の伝達速度)を掛け合わせたものと近似できる。
[数式4] L2=Vp×t
(4)式に(3)式を代入すると、
[数式5] L2=Vp×L1/Vb
よって、あらかじめPS検層等によって岩盤の弾性波伝播速度Vpを求めておけば、亀裂の発生長さL2を爆薬装填孔および空孔の奥行深さL1によって制御することが可能となる。本発明では1m角程度の立方体の石材を岩盤から切り出すことを想定しているが、そのために必要となる亀裂の発生長さを(5)式によって制御できる。
[実施例2]
本実施例は(5)式におけるL1が一定の条件で、燃焼速度が小さく安価な爆薬を使用することで、燃焼速度が大きく高価な爆薬を使用するよりも亀裂の発生長さL2を大きくすることを可能とした発明である。
発破により岩盤を細粒化する場合に比べて、石材を回収するための亀裂を発生させる場合には、爆薬の量は大きく低減できる。これにより、発破後ガスが悪く一般的にはトンネルでの使用に適さない安価なANFO(アンモニアが発生する爆薬、燃焼速度2500~3000m/s)の使用が可能となる場合も考えられる。
この場合、高価で燃焼速度が大きいダイナマイトを使用するよりも、安価で燃焼速度が小さいANFOを使用した方が亀裂の発生長さL2は大きくなり、経済的であるだけではなく作業効率が上がることで工期の短縮も実現できる。
また、爆薬装填孔および空孔の直径が小さくなるため孔の削孔時間が短縮されることもコストダウンや工期短縮に寄与する。
[実施例3]
本実施例は、本発明の方法に用いられる空孔の有効容積を加圧用孔の実容積より小さくする構成に関するものであり、
図10に4つの具体的な態様が占められている。
図10(A)は、加圧用孔の径を空孔の径より大きくする態様を示している。この構成の場合には、穿孔の径が異なる2種類の穿孔治具を用意してそれぞれ穿孔作業をすればよい。
図10(B)は、加圧用孔20の径と空孔22の径とを同径とするとともに、空孔22の坑口部を充填材で閉塞する態様を示している。これにより、破砕時の破壊力が
図10(A)の場合に比べて向上する。
図10(C)は、加圧用孔20の径を空孔22の径より大きくするとともに、空孔22の坑口部を充填材で閉塞している態様を示している。破砕時の破壊力は、
図10(A)の場合と同等又はそれ以上となる。
図10(D)は加圧用孔20の径を空孔22の径より小さくするとともに空孔22の坑口部から
図10(C)、(D)よりも深い位置まで充填材を充填して閉塞する態様を示している。この場合の破壊力は
図10(A)の場合とほぼ同等である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
トンネル掘削で発生する掘削ずりを建築用石材(壁材、床材等)として再資源化し、利用することで、建築工事のコスト低減が期待できる。
【0026】
なお、上述の説明は、本発明の好ましい実施態様に過ぎず、本発明の技術的意義に反しない他の実施形態が本発明の技術的範囲に含まれると解釈するべきである。
【符号の説明】
【0027】
2…岩盤類(岩盤) 4…掘削孔 6…掘削面(切羽面) 8…掘削部位
10…延長孔
12…自由端面 14…削孔(一対の細孔)
20…加圧用孔 21…補助加圧用孔 22…空孔
20c…(加圧用孔)中心 22p…(空孔)孔縁 23…楕円孔
24…親ダイ
B…境界線 C…亀裂(亀裂ライン) h…細孔 F…充填材
G…把持手段(吊りこみ装置)
I1…第1仮想線 I2…第2仮想線
L…加圧用孔中心から空孔孔縁までの距離 L1…細孔の長さ L2…亀裂の長さ
P…資材(石材) S1、S2、S3…応力集中点 Sf…破壊面