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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】鋼管矢板の継手構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/08 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
E02D5/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018002486
(22)【出願日】2018-01-11
(65)【公開番号】P2019120099
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】中島 浩世
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 和雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖二
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-355932(JP,A)
【文献】特開2002-105949(JP,A)
【文献】実開昭55-136834(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う第1鋼管矢板の第1継手鋼管と、第2鋼管矢板の第2継手鋼管とが、それぞれに形成された軸線方向に延びるスリットを介して嵌め合わされて、
前記第1継手鋼管のうちの前記第2継手鋼管の内部に挿入された第1挿入板部と、前記第2継手鋼管のうちの前記第1継手鋼管の内部に挿入された第2挿入板部と、が間隔をあけて対向配置される鋼管矢板の継手構造において、
前記第1挿入板部、および前記第2挿入板部の少なくとも一方には、対向する挿入板部側に前記スリットの幅よりも大きく突出する突出部が設けられ、
前記突出部は、前記第1挿入板部と前記第2挿入板部とが対向する方向、および前記第1継手鋼管および前記第2継手鋼管の軸線方向の両方に交差する方向に間隔をあけて複数設けられ、
前記第1挿入板部および前記第2挿入板部のうちの前記突出部が設けられる少なくとも一方には、切り込み部が形成され、
前記突出部は、前記切り込み部に挿通されて、前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管に外側から溶接され、
前記突出部のうちの前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管の外側に配置される部分は、前記突出部を前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管に外側から溶接するための溶接代のみであることを特徴とする鋼管矢板の継手構造。
【請求項2】
前記突出部は、前記突出部が設けられる前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管の内側突出長が外側突出長よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の鋼管矢板の継手構造。
【請求項3】
隣り合う前記突出部の間隔には、前記第1挿入板部と前記第2挿入板部との間の空間を洗浄するための洗浄ノズルを配置可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管矢板の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管矢板の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管矢板井筒基礎では、隣り合う鋼管矢板それぞれの継手鋼管どうしが接合されている(例えば、特許文献1参照)。
2つの継手鋼管は、それぞれに形成された軸線方向に延びるスリットを介して嵌め合わされ、それぞれの内部にモルタルが注入されている。
一方の継手鋼管のうちの他方の継手鋼管の内部に挿入された第1挿入板部と、他方の継手鋼管のうちの一方の継手鋼管の内部に挿入された第2挿入板部とは、間隔をあけて対向している。
【0003】
このような継手鋼管は、鋼管矢板井筒基礎の施工中には仮締切り機能を有し、施工後には隣接した鋼管矢板本管どうしのせん断変形を抑制する機能を有している。このような機能を十分に発揮するためには、第1挿入板部と第2挿入板部との間隔を所望の大きさとし、この間隔に確実にモルタルを注入する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-105949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、施工時に2つの継手鋼管が位置ずれしたり、互いに外れたりすると第1挿入板部と第2挿入板部との間隔を所望の大きさとすることができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、接合される継手鋼管が位置ずれしたり、互いに外れたりすることを防止することができ、第1挿入板部と第2挿入板部との間隔を所望の大きさとすることができる鋼管矢板の継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る鋼管矢板の継手構造は、隣り合う第1鋼管矢板の第1継手鋼管と、第2鋼管矢板の第2継手鋼管とが、それぞれに形成された軸線方向に延びるスリットを介して嵌め合わされて、前記第1継手鋼管のうちの前記第2継手鋼管の内部に挿入された第1挿入板部と、前記第2継手鋼管のうちの前記第1継手鋼管の内部に挿入された第2挿入板部と、が間隔をあけて対向配置される鋼管矢板の継手構造において、前記第1挿入板部、および前記第2挿入板部の少なくとも一方には、対向する挿入板部側に前記スリットの幅よりも大きく突出する突出部が設けられ、前記突出部は、前記第1挿入板部と前記第2挿入板部とが対向する方向、および前記第1継手鋼管および前記第2継手鋼管の軸線方向の両方に交差する方向に間隔をあけて複数設けられ、前記第1挿入板部および前記第2挿入板部のうちの前記突出部が設けられる少なくとも一方には、切り込み部が形成され、前記突出部は、前記切り込み部に挿通されて、前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管に外側から溶接され、前記突出部のうちの前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管の外側に配置される部分は、前記突出部を前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管に外側から溶接するための溶接代のみであることを特徴とする。
【0008】
本発明では、第1挿入板部および第2挿入板部の少なくとも一方には、対向する挿入板部側に突出する突出部が設けられていることにより、第1挿入板部と第2挿入板部との間隔を突出部の突出寸法よりも大きくでき、所望の大きさとすることができる。
また、突出部がスリットの幅よりも大きく突出していることにより、突出部がスリットを通過することを防止することができ、突出部が設けられた挿入板部が挿入された継手鋼管から抜け出ることを防止できる。これにより、第1継手鋼管と第2継手鋼管とが互いに外れてしまうことを防止することができる。
また、突出部は、複数設けられていることにより、第1挿入板部と第2挿入板部との間隔を確実に確保することができる。
【0009】
また、本発明に係る鋼管矢板の継手構造では、前記第1挿入板部および前記第2挿入板部のうちの前記突出部が設けられる少なくとも一方には、切り込み部が形成され、前記突出部は、前記切り込み部に挿通されて、前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管に外側から溶接されている。
このような構成とすることにより、突出部を第1継手鋼管または第2継手鋼管に容易に溶接することができる。
【0010】
また、本発明に係る鋼管矢板の継手構造では、前記突出部のうちの前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管の外側に配置される部分は、前記突出部を前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管に外側から溶接するための溶接代のみである。
このような構成とすることにより、前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管から外側に突出する部分を小さくできるため、鋼管矢板の運搬や揚重を容易に行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る鋼管矢板の継手構造では、前記突出部は、前記突出部が設けられる前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管の内側突出長が外側突出長よりも大きい構成としてもよい。
このような構成とすることにより、前記第1継手鋼管または前記第2継手鋼管から外側に突出する部分がないため、鋼管矢板の運搬や揚重を容易に行うことができる。内側突出長とは、第1継手鋼管または第2継手鋼管の内周面から内側に突出する部分の長さを示し、外側突出長とは、第1継手鋼管または第2継手鋼管の外周面から外側に突出する部分の長さを示している。
【0012】
また、本発明に係る鋼管矢板の継手構造では、隣り合う前記突出部の間隔には、前記第1挿入板部と前記第2挿入板部との間の空間を洗浄するための洗浄ノズルを配置可能に構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、第1挿入板部と第2挿入板部との間の空間の洗浄を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接合される継手鋼管が位置ずれしたり、互いに外れたりすることを防止することができ、第1挿入板部と第2挿入板部との間隔を所望の大きさとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態による鋼管矢板の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の第2実施形態による鋼管矢板の一例を示す斜視図で、鋼管矢板本管の一部を省略した図ある。
図3】本発明の第1実施形態による隣り合う鋼管矢板の連結部を説明する図である。
図4】本発明の第2実施形態による隣り合う鋼管矢板の連結部を説明する図である。
図5】本発明の第3実施形態による隣り合う鋼管矢板の連結部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態による鋼管矢板1の継手構造について、図1乃至図3に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態による鋼管矢板1は、鋼管矢板本管2と、鋼管矢板本管2の外周面に鋼管矢板本管2の軸線方向に沿って接合された2つの継手鋼管3,4と、を有している。
【0016】
鋼管矢板本管2は、円筒状に形成されている。
2つの継手鋼管3,4のうちの一方を第1継手鋼管3とし、他方を第2継手鋼管4とする。第1継手鋼管3は、軸線方向全体にわたって延びる1つのスリット3aを有する円筒状に形成されている。第2継手鋼管4は、軸線方向全体にわたって延びる1つのスリット4aを有する円筒状に形成されている。
第1継手鋼管3および第2継手鋼管4は、径寸法および軸線方向の寸法が略同じ値となり、鋼管矢板本管2と軸線方向の寸法が略同じで、鋼管矢板本管2よりも小径となるように設定されている。
【0017】
第1継手鋼管3は、鋼管矢板本管2に対して鋼管矢板本管2の軸線方向に直交する一の径方向の一方側に接合されている。第2継手鋼管4は、鋼管矢板本管2に対して一の径方向の他方側に接合されている。
鋼管矢板本管2、第1継手鋼管3および第2継手鋼管4それぞれの中心軸は、一の径方向に延びる直線上に配置されている。以下では、一の径方向に平行な方向を連結方向Xとし、それぞれの軸線方向から見て鋼管矢板本管2、第1継手鋼管3および第2継手鋼管4それぞれの中心軸が配置される直線を連結軸線7とする。
また、鋼管矢板本管2、第1継手鋼管3および第2継手鋼管4の軸線方向および連結方向Xに直交する方向を奥行き方向Yとする。
【0018】
第1継手鋼管3は、連結方向Xの他方側の縁部が鋼管矢板本管2の連結方向Xの一方側の縁部と接合されている。第1継手鋼管3のスリット3aは、第1継手鋼管3における奥行き方向Yの一方側かつ連結方向Xの一方側に形成されている。
第1継手鋼管3の周方向のうち、第1継手鋼管3における鋼管矢板本管2との接合部3bから奥行き方向Yの一方側かつ連結方向Xの一方側に向かう側を一方側とし、その反対側を他方側とする。第1継手鋼管3における鋼管矢板本管2との接合部3bからスリット3aまで周方向の一方側に延びる部分を第1円弧板部31とし、周方向の他方側に延びる部分を第2円弧板部32とする。第1円弧板部31は、第2円弧板部32よりも周方向に短く形成されている。
【0019】
第2円弧板部32には、周方向の他方側寄り(スリット3a寄り)の部分に、内側に向かって突出する突出部材5(突出部)が設けられている。突出部材5は、第2円弧板部32の軸線方向に間隔をあけた複数の位置において、周方向に間隔をあけて2つずつ複数設けられている。
軸線方向の同じ位置において周方向に並んだ2つの突出部材5,5は、連結軸線7を挟んで配置されている。本実施形態では、軸線方向の同じ位置において周方向に並んだ2つの突出部材5,5は、それぞれの連結軸線7からの距離が略同じ寸法に設定されている。
【0020】
突出部材5は、それぞれ連結方向Xの他方側に向かって突出している。軸線方向の同じ位置において周方向に並んだ2つの突出部材5,5は、その先端部が連結方向Xの略同じ位置に配置されている。
突出部材5は、平板状の鋼板で、第2円弧板部32に形成された切り込み部321に挿し込まれ、第1継手鋼管3の外側から第2円弧板部32に溶接されている。本実施形態では、突出部材5は、第2円弧板部32の内側に突出するように設けられていて、第2円弧板部32の外側には、溶接代51のみが設けられている。突出部材5は、第2円弧板部32から内側に突出する部分の長さ(内側突出長l)が、第2円弧板部32から外側に突出する部分の長さ(外側突出長l)よりも長くなるように設けられている。
第1円弧板部31には、突出部材5のような部材が設けられていない。
【0021】
第2継手鋼管4は、連結方向Xの一方側の縁部が鋼管矢板本管2の連結方向Xの他方側の縁部と接合されている。第2継手鋼管4のスリット4aは、第2継手鋼管4における奥行き方向Yの他方側かつ連結方向Xの他方側に形成されている。
第2継手鋼管4の周方向のうち、第2継手鋼管4における鋼管矢板本管2との接合部4bから奥行き方向Yの他方側かつ連結方向Xの他方側に向かう側を一方側とし、その反対側を他方側とする。第1継手鋼管3における鋼管矢板本管2との接合部4bからスリット4aまで周方向の一方側に延びる部分を第3円弧板部41とし、周方向の他方側に延びる部分を第4円弧板部42とする。第3円弧板部41は、第4円弧板部42よりも周方向に短く形成されている。
第2継手鋼管4には、突出部材5のような部材が設けられていない。
【0022】
このような鋼管矢板1は、軸線方向が鉛直方向となる向きで地盤打ち込まれ、複数の鋼管矢板1がそれぞれの連結軸線7を連続させるようにすることで、鋼管矢板井筒基礎11を構築するよう構成されている。
図3に示すように、連結方向Xに隣り合う鋼管矢板1のうちの一方側の鋼管矢板1を第1鋼管矢板12とし、他方側の鋼管矢板1を第2鋼管矢板13とする。第1鋼管矢板12が第2鋼管矢板13の連結方向Xの一方側に配置されているものとする。
第1鋼管矢板12と第2鋼管矢板13との接合部(鋼管矢板1の継手構造)14は、第1鋼管矢板12の第2継手鋼管4と第2鋼管矢板13の第1継手鋼管3とが接合されている。
以下の第1鋼管矢板12と第2鋼管矢板13との接合部14の説明では、「第2鋼管矢板13の第1継手鋼管3」を、「第1継手鋼管3」と表記し、「第1鋼管矢板12の第2継手鋼管4」を「第2継手鋼管4」と表記する。
【0023】
第1継手鋼管3と第2継手鋼管4とは、第1継手鋼管3の第2円弧板部32が第2継手鋼管4の内部にスリット4aを介して配置され、第2継手鋼管4の第4円弧板部42が第1継手鋼管3の内部にスリット3aを介して配置され、第1継手鋼管3と第2継手鋼管4とがかみ合うように配置されている。
第1継手鋼管3の第2円弧板部32のうちの第2継手鋼管4の内部に配置された部分を第1挿入板部33とし、第2継手鋼管4の第4円弧板部42のうちの第1継手鋼管3の内部に配置された部分を第2挿入板部43とする。
第1継手鋼管3の突出部材5は、第1挿入板部33に設けられており、第2継手鋼管4の内部に配置されている。
【0024】
第1鋼管矢板12と第2鋼管矢板13との接合部14には、第1挿入板部33と第2挿入板部43とに挟まれた第1継手空間141と、第1継手鋼管3の内部における第1継手空間141以外の領域となる第2継手空間142と、第2継手鋼管4の内部における第1継手空間141以外の領域となる第3継手空間143と、が形成されている。第1継手空間141の連結方向Xの一方側に第2継手空間142が配置され、第1継手空間141の連結方向Xの他方側に第3継手空間143が配置されている。
本実施形態では、突出部材5は、第1挿入板部33に設けられ、第2挿入板部43に向かって突出している。これにより、第1挿入板部33と第2挿入板部43とは、近接しても突出部材5が第2挿入板部43と当接して突出部材5の寸法以上に近接しないため、間の第1継手空間141を所望の大きさとすることができる。
第1継手空間141、第2継手空間142、および第3継手空間143には、それぞれモルタル6が注入される。なお、図3では、第1継手空間141、第2継手空間142、および第3継手空間143にモルタル6が充填される前の接合部14を示している。
【0025】
鋼管矢板1の施工時で、第1継手空間141、第2継手空間142、および第3継手空間143にモルタル6を注入する前には、第1継手鋼管3および第2継手鋼管4の内部を上方から挿入した洗浄ノズル15で洗浄を行っている。洗浄の際には、第1継手空間141、第2継手空間142、および第3継手空間143それぞれに挿入した洗浄ノズル15で洗浄を行っている。本実施形態では、第1継手空間141には、軸線方向の同じ位置において周方向に並んだ2つの突出部材5,5が配置されているが、これらの2つの突出部材5の間隔は、洗浄ノズル15を配置可能な間隔に設定されている。
【0026】
次に、上述した第1実施形態による鋼管矢板1の継手構造の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した第1実施形態による鋼管矢板1の継手構造では、第1挿入板部33には、突出部材5が設けられていることにより、第1挿入板部33と第2挿入板部43との間隔を突出部材5の突出寸法よりも大きくでき、所望の大きさとすることができる。
また、突出部材5が第2継手鋼管4のスリット4aの幅よりも大きく突出していることにより、突出部材5が第2継手鋼管4のスリット4aを通過することを防止することができ、突出部材5が設けられた第1挿入板部33が第2継手鋼管4から抜け出ることを防止できる。これにより、第1継手鋼管3と第2継手鋼管4とが互いに外れてしまうことを防止することができる。
また、第1挿入板部33に2つの突出部材5が設けられていることにより、第1挿入板部33と第2挿入板部43との間隔を確実に確保することができる。
【0027】
また、突出部材5は、第2円弧板部32に形成された切り込み部321に挿通されて、第1継手鋼管3に第1継手鋼管3の外側から溶接されている。これにより、突出部材5を第1継手鋼管3に容易に溶接することができる。
また、突出部材5は、第2円弧板部32の内側に突出するように設けられていて、第2円弧板部32の外側には、溶接代51のみが設けられている。これにより、突出部材5の第1継手鋼管3の外側に設けられる部分を小さくすることができるため、鋼管矢板1の運搬や揚重を容易に行うことができる。
【0028】
また、軸線方向の同じ位置に配置された2つの突出部材5の間隔には、第1挿入板部33と第2挿入板部43との間の第1継手空間141を洗浄するための洗浄ノズル15を配置可能に構成されている。これにより、第1継手空間141の洗浄を容易に行うことができる。
【0029】
(他の実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0030】
(第2実施形態)
図4に示すように、第2実施形態による鋼管矢板の継手構造では、鋼管矢板1Bの第1継手鋼管3Bおよび第2継手鋼管4Bに、それぞれの軸線方向に間隔をあけた複数の位置において、1つずつ突出部材5Bが設けられている。
第1継手鋼管3に取り付けられた突出部材5Bを第1突出部材55Bとし、第2継手鋼管4に取り付けられた突出部材5Bを第2突出部材56Bとする。
【0031】
第1突出部材55Bは、平板状の鋼板で、第2円弧板部32に形成された切り込み部321に挿し込まれ、第1継手鋼管3Bの外側から第2円弧板部32に溶接されている。第1突出部材55Bは、第2円弧板部32の内側に突出するように設けられていて、第2円弧板部32の外側には、溶接代51のみが設けられている。第2実施形態においても、突出部材5Bは、第2円弧板部32から内側に突出する部分の長さ(内側突出長l)が第2円弧板部32から外側に突出する部分の長さ(外側突出長l)よりも長くなるように設けられている。
第1突出部材55Bは、第2円弧板部32の周方向の中間部に設けられている。第1突出部材55Bは、第2継手鋼管4Bの内部に挿入される第1挿入板部33の周方向の一方側の端部近傍(スリット3aと離間する側の端部近傍)となる位置に設けられていて、第1挿入板部33が第2継手鋼管4Bの内部に挿入されると、第2継手鋼管4Bのスリット4aの近傍に配置される。
【0032】
第1突出部材55Bは、第2円弧板部32から連結方向Xの他方側に向かって漸次奥行き方向Yの一方側に向かう斜め方向に突出している。第1突出部材55Bは、第2継手鋼管4Bのスリット4a幅よりも大きく形成され、第1継手鋼管3Bの第1挿入板部33が第2継手鋼管4Bの内部に挿入された際に、第1挿入板部33が第2継手鋼管4Bから外れないよう設定されている。
【0033】
第2突出部材56Bは、平板状の鋼板で、第4円弧板部42に形成された切り込み部421に挿し込まれ、第2継手鋼管4Bの外側から第4円弧板部42に溶接されている。第2突出部材56Bは、第4円弧板部42の内側に突出するように設けられていて、第4円弧板部42の外側には、溶接代51のみが設けられている。
第2突出部材56Bは、第4円弧板部42の周方向の中間部に設けられている。第2突出部材56Bは、第1継手鋼管3Bの内部に挿入される第2挿入板部43の周方向の一方側の端部近傍(スリット4aと離間する側の端部近傍)となる位置に設けられていて、第2挿入板部43が第1継手鋼管3Bの内部に挿入されると、第1継手鋼管3Bのスリット3aの近傍に配置される。
【0034】
第2突出部材56Bは、第1円弧板部31から連結方向Xの他方側に向かって漸次奥行き方向Yの一方側に向かう斜め方向に突出している。第2突出部材56Bは、第1継手鋼管3Bのスリット3a幅よりも大きく形成され、第2継手鋼管4Bの第2挿入板部43が第1継手鋼管3Bの内部に挿入された際に、第2挿入板部43が第1継手鋼管3Bから外れないよう設定されている。
【0035】
本実施形態では、第1突出部材55Bと第2突出部材56Bとは、略同じ形状に形成され、第1突出部材55Bが第2円弧板部32に対して取り付けられる位置や角度と、第2突出部材56Bが第1円弧板部31に対して取り付けられる位置や角度とが、略同じとなるように設定されている。このため、第1継手鋼管3Bと第2継手鋼管4Bとは、鋼管矢板本管2の中心軸を中心に対称となる形状に形成されている。
【0036】
連結方向Xに隣り合う鋼管矢板1B,1Bの接合部14Bでは、第1突出部材55Bが第2継手鋼管4Bのスリット4aの近傍に配置され、第2突出部材56Bが第1継手鋼管3Bのスリット3aの近傍に配置されている。
隣接して打設された鋼管矢板1B,1Bの第1継手鋼管3Bと第2継手鋼管4Bとが接合されると、上下方向(軸線方向)から見て、第1突出部材55Bと第2突出部材56Bとは、奥行き方向Yに間隔をあけて平行に配置されている。上下方向から見た際の第1突出部材55Bと第2突出部材56Bとの間隔は、第1挿入板部33と第2挿入板部43との間の第1継手空間141を洗浄するための洗浄ノズル15を配置可能な寸法に設定されている。
【0037】
第2実施形態による鋼管矢板の継手構造では、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、第2実施形態による鋼管矢板の継手構造では、第1継手鋼管3Bと第2継手鋼管4Bとは、鋼管矢板本管2の中心軸を中心に対称となる形状に形成されている。これにより、鋼管矢板1Bは、鋼管矢板井筒基礎11を構築する際に打設された向きによって、配列方向の一方側の継手鋼管が第1継手鋼管3Bとなり、他方側の継手鋼管が第2継手鋼管4Bとなる。このため、鋼管矢板1Bを打設する際に第1継手鋼管3Bおよび第2継手鋼管4Bが配列方向のどちらに配置されるかを確認する必要がなく、鋼管矢板井筒基礎11の構築を容易に行うことができる。
【0038】
(第3実施形態)
図4に示すように、第3実施形態による鋼管矢板の継手構造では第2実施形態による鋼管矢板の継手構造と同様に、鋼管矢板1Cの第1継手鋼管3Cおよび第2継手鋼管4Cに、それぞれの軸線方向に間隔をあけた複数の位置において、1つずつ突出部材5Cが設けられている。
第1継手鋼管3Cに取り付けられた突出部材5Cを第1突出部材55Cとし、第2継手鋼管4Cに取り付けられた突出部材5Cを第2突出部材56Cとする。
【0039】
第1突出部材55Cは、平板状の鋼板で、第2円弧板部32に形成された切り込み部321に挿し込まれ、第1継手鋼管3Cの外側から第2円弧板部32に溶接されている。第1突出部材55Cは、第2円弧板部32の内側に突出するように設けられていて、第2円弧板部32の外側には、溶接代51のみが設けられている。第3施形態においても、突出部材5Cは、第2円弧板部32から内側に突出する部分の長さ(内側突出長l)が第2円弧板部32から外側に突出する部分の長さ(外側突出長l)よりも長くなるように設けられている。
第1突出部材55Cは、第2円弧板部32の周方向の他方側の端部近傍(スリット3aと近接する側の端部近傍)となる位置に設けられている。
第1突出部材55Cは、第2円弧板部32から連結方向Xの他方側に向かって漸次奥行き方向Yの他方側に向かう斜め方向に突出している。第1突出部材55Cは、第2継手鋼管4Cのスリット4a幅よりも大きく形成され、第1継手鋼管3Cの第1挿入板部33が第2継手鋼管4Cの内部に挿入された際に、第1挿入板部33が第2継手鋼管4Cから外れないよう設定されている。
【0040】
第2突出部材56Cは、平板状の鋼板で、第4円弧板部42に形成された切り込み部421に挿し込まれ、第2継手鋼管Cの外側から第4円弧板部42に溶接されている。第2突出部材56Cは、第4円弧板部42の内側に突出するように設けられていて、第4円弧板部42の外側には、溶接代51のみが設けられている。
第2突出部材56Cは、第4円弧板部42の周方向の一方側の端部近傍(スリット4aと近接する側の端部近傍)となる位置に設けられている。
第2突出部材56Cは、第1円弧板部31から連結方向Xの他方側に向かって漸次奥行き方向Yの他方側に向かう斜め方向に突出している。第2突出部材56Cは、第1継手鋼管3Cのスリット3a幅よりも大きく形成され、第2継手鋼管4Cの第2挿入板部43が第1継手鋼管3Cの内部に挿入された際に、第2挿入板部43が第1継手鋼管3Cから外れないよう設定されている。
【0041】
本実施形態においても第2実施形態と同様に、第1突出部材55Cと第2突出部材56Cとは、略同じ形状に形成され、第1突出部材55Cが第2円弧板部32に対して取り付けられる位置や角度と、第2突出部材56Cが第1円弧板部31に対して取り付けられる位置や角度とが、略同じとなるように設定されている。このため、第1継手鋼管3Cと第2継手鋼管4Cとは、鋼管矢板本管2の中心軸を中心に対称となる形状に形成されている。
【0042】
連結方向Xに隣り合う鋼管矢板1C,1Cの接合部14Cでは、第1突出部材55Cが第2継手鋼管4Cのスリット4aと離間する位置で第2突出部材56Cよりも第2継手鋼管4Cの内側となる位置に配置され、第2突出部材56Cが第1継手鋼管3Cのスリット3aと離間する位置で第1突出部材55Cよりも第1継手鋼管3Cの内側となる位置に配置されている。
隣接して打設された鋼管矢板1C,1Cの第1継手鋼管3Cと第2継手鋼管4Cとが接合されると、上下方向(軸線方向)から見て、第1突出部材55Cと第2突出部材56Cとは、奥行き方向Yに間隔をあけて平行に配置されている。上下方向から見た際の第1突出部材55Cと第2突出部材56Cとの間隔は、第1挿入板部33と第2挿入板部43との間の第1継手空間141を洗浄するための洗浄ノズル15を配置可能な寸法に設定されている。
【0043】
第3実施形態による鋼管矢板の継手構造では、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
また、第3実施形態による鋼管矢板の継手構造では、第1突出部材55Cが第2継手鋼管4Cのスリット4aと離間する位置で第2突出部材56Cよりも第2継手鋼管4Cの内側となる位置に配置され、第2突出部材56Cが第1継手鋼管3Cのスリット3aと離間する位置で第1突出部材55Cよりも第1継手鋼管3Cの内側となる位置に配置されている。このため、第1突出部材55Cと第2突出部材56Cとが同じ高さに配置されると、第1継手鋼管3Cと第2継手鋼管4Cとが外れそうになった場合でも、第1突出部材55Cと第2突出部材56Cとが当接することにより、第1継手鋼管3Cと第2継手鋼管4Cとが外れることを防止することができる。
【0044】
以上、本発明による鋼管矢板の継手構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、第1継手鋼管3,3B,3Cや第2継手鋼管4B,4Cに平鋼で形成された突出部材5,5B,5Cが設けられているが、突出部材5,5B,5Cは平鋼以外の鋼板や鋼棒、型材などで形成されていてもよい。
また、突出部材5,5B,5Cは、第1継手鋼管3,3B,3Cと第2継手鋼管4,4B,4Cとの接合部に奥行き方向Yに間隔をあけて2つ設けられているが、奥行き方向Yに間隔をあけて2つ以上設けられていてもよい。また、突出部材5,5B,5Cは、第1継手鋼管3,3B,3Cおよび第2継手鋼管4B,4Cの軸線方向に間隔をあけて複数設けられているが、1つのみ設けられていてもよい。
【0045】
また、上記の実施形態では、突出部材5,5B,5Cは、第2円弧板部32または第4円弧板部42に形成された切り込み部321,421に挿通されて、第1継手鋼管3,3B,3Cや第2継手鋼管4B,4Cに外側から溶接されている。これに対し、突出部材5,5B,5Cの第1継手鋼管3,3B,3Cや第2継手鋼管4B,4Cへの接合は、適宜行われてよい。また、突出部材5,5B,5Cは、第2円弧板部32または第4円弧板部42から突出部材5,5B,5Cが設けられている第1継手鋼管3,3B,3Cまたは第2継手鋼管4B,4Cの内側のみに突出するように設けられていてもよい。
また、上記の実施形態では、突出部材5,5B,5Cの間隔には、第1挿入板部33と第2挿入板部43との間の第1継手空間141を洗浄するための洗浄ノズル15を配置可能に構成されているがこのように構成されていなくてもよい。
【0046】
また、上記の実施形態では、鋼管矢板本管2、第1継手鋼管3,3B,3Cおよび第2継手鋼管4,4B,4Cは、それぞれ軸線方向の寸法が略同じ寸法となっているが、異なる寸法であってもよい。また、第1継手鋼管3,3B,3Cと第2継手鋼管4,4B,4Cとは、径および軸線方向の長さが異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 鋼管矢板
2 鋼管矢板本管
3,3B,3C 第1継手鋼管
3a スリット
4,4B,4C 第2継手鋼管
4a スリット
5,5B,5C 突出部材(突出部)
12 第1鋼管矢板
13 第2鋼管矢板
14 接合部
15 洗浄ノズル
33 第1挿入板部
43 第2挿入板部
51 溶接代
55B,55C 第1突出部材(突出部)
56B,56C 第2突出部材(突出部)
141 第1継手空間
142 第2継手空間
143 第3継手空間
321 切り込み部
421 切り込み部
1,3, 内側突出長
2,4, 外側突出長
図1
図2
図3
図4
図5