(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】付加製造製品の設計のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20220422BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20220422BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20220422BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20220422BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y50/00
G06F30/10
G06F30/23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018007206
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】201721010130
(32)【優先日】2017-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】512070816
【氏名又は名称】タタ・コンサルタンシー・サーヴィシズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プラモド・ラムダス・ザガデ
(72)【発明者】
【氏名】プルショッタム・ゴータム・バサヴァルス
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0009036(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0363481(US,A1)
【文献】特表2009-510646(JP,A)
【文献】Jikai Liu,Guidelines for AM part consolidation,Virtual and Physical prototyping,2016年04月02日,vol.11,No.2,133-141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
G06F 30/00-30/398
G06F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造におけるトポロジー最適化された構造体を得る方法であって、
受信モジュールにおいて、設計対象の構造体を製造するために使用される選択された材料および選択された付加製造法に起因する材料の直交異方特性ならびに少なくとも1つの設計目標に従って
トポロジー最適化すべき所望の構造体を包含する標準形状ジオメトリの有限要素メッシュを受信するステップと、
アプリケーションモジュールにおいて、前記設計対象の構造体の反復型トポロジー最適化を適用するステップであって、
前記反復型トポロジー最適化の各反復は、前記設計対象の構造体が設計および最適化される、1つまたは複数の負荷要件、1つまたは複数の設計制約、および1つまたは複数の境界条件をシミュレートすることにより構成される、ステップと、
評価モジュールにおいて、有限要素解析フレームワークを使用して、前記反復型トポロジー最適化の適用の結果として得られた
前記設計対象の構造体を評価して、前記選択された付加製造法に起因する
前記材料の異方特性に基づく事前定義済み安全率を得るステッ
プと、
変更モジュールにおいて、前記設計対象の構造体の前記反復型トポロジー最適化の2つの連続した反復の間の
前記安全率の1つまたは複数の変更に従って有限要素の状態を繰り返し変更するステップ
であって、有限要素の前記状態が、前記有限要素の除去または追加によって変更され、1つまたは複数の節点変数を有するメッシュ非依存性フィルタが、前記有限要素の有用性の数を決定するために使用され、前記有限要素の除去または追加による前記有限要素の前記状態の変更が、前記有用性の数に基づく、ステップと、
構造体全体が
前記事前定義済み安全率と等しい最小安全率を有する場合に最適設計構造体を得るステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記方法はさらに、各異方特性の情報を用いて、1つまたは複数の造形の向きに対する最適設計構造体を得るように適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の造形の向きは、1つまたは複数の基準に対して評価されるとき、1つの造形の向きを得るようにランク付けされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反復型トポロジー最適化は、双方向性進化的構造最適化(BESO)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
付加製造におけるトポロジー最適化された構造体を得るためのシステムであって、
1つまたは複数のコンピュータ可読命令を有するメモリと、
前記メモリと通信可能に結合した少なくとも1つのプロセッサであって、前記メモリに記憶された1つまたは複数の命令を実行する少なくとも1つのプロセッサと、
設計対象の構造体を製造するために使用される選択された材料および選択された付加製造法に起因する材料の直交異方特性ならびに少なくとも1つの設計目標に従って
トポロジー最適化すべき所望の構造体を包含する標準形状ジオメトリの有限要素メッシュを受信するように構成された受信モジュールと、
前記設計対象の構造体の反復型トポロジー最適化を適用するように構成されたアプリケーションモジュールであって、
前記反復型トポロジー最適化の各反復は、前記設計対象の構造体が設計および最適化される、1つまたは複数の負荷要件、1つまたは複数の設計制約、および1つまたは複数の境界条件をシミュレートすることにより構成される、アプリケーションモジュールと、
有限要素解析フレームワークを使用して、前記反復型トポロジー最適化の適用の結果として得られた
前記設計対象の構造体を評価して、前記選択された付加製造法に起因する
前記材料の異方特性に基づく事前定義済み安全率を得るように構成された評価モジュー
ルと、
前記設計対象の構造体の前記反復型トポロジー最適化の2つの連続した反復の間の
前記安全率の1つまたは複数の変更に従って有限要素の状態を繰り返し変更するように構成された変更モジュール
であって、有限要素の前記状態が、前記有限要素の除去または追加によって変更され、1つまたは複数の節点変数を有するメッシュ非依存性フィルタが、前記有限要素の有用性の数を決定するために使用され、前記有限要素の除去または追加による前記有限要素の前記状態の変更が、前記有用性の数に基づく、変更モジュールと、
を備え、前記システムは、構造体全体が
前記事前定義済み安全率と等しい最小安全率を有する場合に最適設計構造体を得る、システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの設計目標は
、前記設計対象の構造体の前記有限要素の各々の
ための事前定義された質量および応力を提供することを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記反復型トポロジー最適化は、双方向性進化的構造最適化(BESO)を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
システム上のプロセッサによって実行されると、付加製造におけるトポロジー最適化された構造体を得るための方法を
前記プロセッサに実行させる1つまたは複数の命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
受信モジュールにおいて、設計対象の構造体を製造するために使用される選択された材料および選択された付加製造法に起因する材料の直交異方特性ならびに少なくとも1つの設計目標に従って
トポロジー最適化すべき所望の構造体を包含する標準形状ジオメトリの有限要素メッシュを受信するステップと、
アプリケーションモジュールにおいて、前記設計対象の構造体の反復型トポロジー最適化を適用するステップであって、
前記反復型トポロジー最適化の各反復は、前記設計対象の構造体が設計および最適化される、1つまたは複数の負荷要件、1つまたは複数の設計制約、および1つまたは複数の境界条件をシミュレートすることにより構成される、ステップと、
評価モジュールにおいて、有限要素解析フレームワークを使用して、前記反復型トポロジー最適化の適用の結果として得られた
前記設計対象の構造体を評価して、前記選択された付加製造法に起因する
前記材料の異方特性に基づく事前定義済み安全率を得るステッ
プと、
変更モジュールにおいて、前記設計対象の構造体の前記反復型トポロジー最適化の2つの連続した反復の間の
前記安全率の1つまたは複数の変更に従って有限要素の状態を繰り返し変更するステップ
であって、有限要素の前記状態が、前記有限要素の除去または追加によって変更され、1つまたは複数の節点変数を有するメッシュ非依存性フィルタが、前記有限要素の有用性の数を決定するために使用され、前記有限要素の除去または追加による前記有限要素の前記状態の変更が、前記有用性の数に基づく、ステップと、
構造体全体が
前記事前定義済み安全率と等しい最小安全率を有する場合に最適設計構造体を得るステップと、
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、2017年3月22日にインドで出願されたインド国出願(名称: A system and method for design of additively manufactured products)第201721010130号の優先権を主張する。
【0002】
本明細書における実施形態は概して、付加製造におけるトポロジー最適化された構造体を得るためのシステムおよび方法に関し、特に、付加製造により誘発される異方特性を有する構造体の最適な形状および造形の向き(build orientation)を決定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
今日において、付加製造は、複雑な形状を有する部品を製造するための技術として、急速に台頭している技術である。それは、三次元構造体を構築するために、材料の多層堆積を使用する。理想的には、付加製造技術を使用して製造可能な部品の形状に制限はない。それは、要求される機能を実現する最小重量を目標としかつ必要最小限の材料で、任意の複雑な形状の製品を設計する設計者に大きな自由を与える。しかし、金属を利用する場合、積層構造は、様々な方向に沿って異なる機械的特性を有する材料において異方性を招く。積層方向および横方向に沿った降伏強度のような機械的特性の違いは重要である。設計者は、設計対象の構造体の安全性を評価しながら、設計規範として最弱方向における強度を考慮しなければならないというような制約を課せられる。一方で、熱処理は多くの場合、これらの部品に対して必須であり、特性を均一にするために使用される。部品は、より高い温度に加熱され、その部分における微構造変化を導くようにしばらくの間保持され、次いで、制御された環境において冷却される。熱処理の結果、微構造変化が起こる。それは、部分における特性の不均一性を減少させるが、大抵の場合は強度の犠牲において異方性を十分に緩和できない。異方特性に対処することはさらに、部分を製造する間の最適な造形の向きを設計段階で決定する必要がある。付加製造の間に部分がどのように向くべきかに関する指針が存在することは、部分の次元の基づき、かつ構造設計および機械仕様をサポートする。
【0004】
従来では、設計の最適化は、コンピュータシステムを用いて実行され、一般にサイジング、形状、およびトポロジーに分割される。トポロジー最適化の適用は、付加製造を使用して製造される部品のように最小製造制約を有するそのような部品を設計するのに最適の技術である。構造部分を設計するのに使用されるトポロジー最適化は、付加製造を通して製造された後に有する可能性がある異方特性を考慮すべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態を理解する基礎を提供するために、本開示の幾つかの実施形態の簡潔な概要を以下に示す。本概要は、実施形態の広範な概観ではなく、実施形態の主要/重要な要素を認識する、または実施形態の範囲を詳述することを意図しない。その目的は単に、以下に示す詳細な説明の前置きとして簡潔な形式で幾つかの実施形態を示すことである。
【0006】
以上を考慮して、本明細書における実施形態は、付加製造法によって製造されるトポロジー最適化された構造体を得るためのシステムおよび方法を提供する。
【0007】
一態様において、付加製造法による製造のためにトポロジー最適化された構造体を得るシステムは、プロセッサ、およびプロセッサと通信可能に結合したメモリを備え、メモリはプロセッサによって読み出し可能な命令を含み、受信モジュールは、設計された構造体を製造するために使用される選択された材料および選択された付加製造法に起因する材料の直交異方特性ならびに少なくとも1つの設計目標に従って最適化すべき所望の構造体を包含する標準形状ジオメトリの有限要素メッシュを受信するように構成され、アプリケーションモジュールは、設計対象の構造体の反復型トポロジー最適化を適用するように構成され、トポロジー最適化の各反復は、設計対象の構造体が設計および最適化される、1つまたは複数の負荷要件、1つまたは複数の設計制約、および1つまたは複数の境界条件をシミュレートすることにより構成され、評価モジュールは、有限要素解析フレームワークを使用して、反復型トポロジー最適化の適用の結果として得られた設計対象の構造体を評価して、選択された付加製造法に起因する材料の異方特性に基づく事前定義済み安全率を得るように構成され、事前定義済み安全率の条件が、評価済み安全率と比較してごく僅かな差として定義され、変更モジュールは、設計対象の構造体の反復型トポロジー最適化の2つの連続した反復の間の安全率の1つまたは複数の変更に従って有限要素の状態を繰り返し変更するように構成され、システムは、構造体全体が事前定義済み安全率と等しい最小安全率を有する場合に最適設計構造体を得る。
【0008】
別の態様において、付加製造におけるトポロジー最適化された構造体を得る方法は、設計対象の構造体を製造するために使用される選択された材料および選択された付加製造法に起因する材料の直交異方特性ならびに少なくとも1つの設計目標に従って最適化すべき所望の構造体を包含する標準形状ジオメトリの有限要素メッシュを受信するステップであって、設計対象の構造体の反復型トポロジー最適化を適用するステップであって、トポロジー最適化の各反復は、設計対象の構造体が設計および最適化される、1つまたは複数の負荷要件、1つまたは複数の設計制約、および1つまたは複数の境界条件をシミュレートすることにより構成される、ステップと、有限要素解析フレームワークを使用して、反復型トポロジー最適化の適用の結果として得られた設計対象の構造体を評価して、選択された付加製造法に起因する材料の異方特性に基づく事前定義済み安全率を得るステップであって、事前定義済み安全率の条件が、評価済み安全率と比較してごく僅かな差として定義される、ステップと、設計対象の構造体の反復型トポロジー最適化の2つの連続した反復の間の安全率の1つまたは複数の変更に従って有限要素の状態を繰り返し変更するステップと、構造体全体が事前定義済み安全率と等しい最小安全率を有する場合に最適設計構造体を得るステップとを含む。
【0009】
ブロック図が本願発明の主題の原理を具現化する例示的なシステムの概念図を表すことを当業者によって認識されるべきである。同様に、フローチャート、フロー図、状態遷移図、疑似コード等が、コンピュータ可読媒体内に実質的に表され、コンピュータ装置またはプロセッサにより実行され、そのようなコンピュータ装置またはプロセッサが明示されるかどうかが表される様々なプロセスを表すことが認識される。
【0010】
本明細書における実施形態は、以下の図面を参照しながら詳細な説明からより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態による、付加製造におけるトポロジー最適化された構造体を得るためのシステムを示す図である。
【
図2】本開示の実施形態による、付加製造におけるトポロジー最適化された構造体を得るための方法を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態による、方向の特性に関してBESOを通して得られた最適構造体および主要結果変数の例を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態による、造形の向きの変化に対する制御アームの最適構造体および主要結果変数の例を示す図である。
【
図5】本開示の実施形態による、造形の向きの変化に対するブラケットの三次元最適構造体および主要結果変数の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書における実施形態、様々な特徴、およびそれらの利点の詳細は、添付の図面に例示されかつ以下の説明に記載される非限定的な実施形態を参照してより十分に説明される。本明細書で用いられる実施例は、本明細書における実施形態が実施される方法の理解を促進し、さらに当業者が本明細書における実施形態を実施するのを可能にすることを意図しているのに過ぎない。従って、実施例は、本明細書における実施形態の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0013】
図1を参照すると、付加製造におけるトポロジー最適化された構造体を得るためのシステム100が例示される。システム100は、プロセッサ102、プロセッサ102と通信可能に結合されたメモリ104、受信モジュール106、アプリケーションモジュール108、評価モジュール110、および変更モジュール112を備える。
【0014】
好適な実施形態において、メモリ104は、プロセッサ102により可読な命令を含む。
【0015】
好適な実施形態において、受信モジュール106は、設計対象の構造体を製造するために使用される選択された材料および選択された付加製造法に起因する材料の直交異方特性ならびに少なくとも1つの設計目標に従って最適化すべき所望の構造体を包含する標準形状ジオメトリの有限要素メッシュを受信するように構成される。
【0016】
好適な実施形態において、アプリケーションモジュール108は、設計対象の構造体の反復型トポロジー最適化を適用するように構成され、トポロジー最適化の各反復は、設計対象の構造体が設計および最適化される、1つまたは複数の負荷要件、1つまたは複数の設計制約、および1つまたは複数の境界条件をシミュレートすることにより構成される。アプリケーションモジュール108において、反復トポロジー最適化は、双方向性進化的構造最適化(BESO: Bidirectional Evolutionary Structural Optimization)プロセスにより行われる。上記開示はBESOプロセスに限定されず、他のトポロジー最適化により行うこともできることに留意されたい。
【0017】
好適な実施形態において、最初の指向特性は、保守的な設計である関心領域に割り当てられる。安全率の概念は、構造解析に使用されているものである。安全率は、要素の感受性の数を決定するのに使用される。次にそれは所与の領域に対する節点の感受性の数に変換される。時折、トポロジー最適化は、メッシュサイズの影響を受ける。ここで、節点変数を使用するメッシュ非依存性フィルタは、要素の有用性を決定するために使用される。これら有用性の数は、ベースとしてさらに要素の追加または除去に対して使用される。
【0018】
さらに、付加製造における従来からのプロセスの構造体の出力部分は、ヤング率において異方性を有することが観察される。従って、異方性は、各方向における線形変形挙動に影響を与え得る。これは、付加製造の出力部分における降伏強度の異方性を用いて説明される必要がある。安全率ベースの基準は、材料の除去/追加および終了基準を定義するのに使用される。2次元横方向等方性材料に対して、安全率(FOS)は、Tsi-Hill基準を使用して決定される。
【0019】
【0020】
さらに、安全率が事前定義された最小安全率に等しいかまたはそれより大きい場合、要素の除去および追加のアクティビティが活性化される。それらの要素は、それらの剛性を非常に低い値に単に減少させることによって、ソフトキル(soft kill)される。
【0021】
好適な実施形態において、評価モジュール110は、有限要素解析フレームワークを使用して、前記反復型トポロジー最適化の適用の結果として得られた設計対象の構造体を評価して、選択された付加製造法に起因する材料の異方特性に基づく最小の事前定義済み安全率を得るように構成され、事前定義済み安全率の条件が、評価済み安全率と比較してごく僅かな差として定義される。1つまたは複数の反復の後、事前定義された基準が満たされると、そのプロセスは終了し、最適化された構造体が保存される。
【0022】
トポロジー最適化の処理は、様々な付加製造の積層方向の結果であり得る材料特性のセットを用いて反復可能であることが認識される。最良の積層方向を選択するための事前定義された基準は、構造体の重量、失敗基準等に基づく。さらに、1つまたは複数の造形の向きのそれぞれが1つまたは複数の基準、例えば限定はしないが、体積、重量、またはたわみ等の最小に対して評価されるとき、最適な造形の向きを選ぶために1つまたは複数の造形の向きがランク付けされる。
【0023】
図2を参照すると、付加製造におけるトポロジー最適化された構造体を得るための方法200が例示される。
【0024】
ステップ202で、その処理は、設計対象の構造体を製造するために使用される選択された材料および選択された付加製造法に起因する材料の直交異方特性ならびに少なくとも1つの設計目標に従って最適化すべき所望の構造体を包含する標準形状ジオメトリの有限要素メッシュを受信する。
【0025】
ステップ204で、アプリケーションモジュールは、設計対象の構造体(designing structure)の反復型トポロジー最適化を適用し、トポロジー最適化の各反復は、トポロジー最適化の各反復は、設計対象の構造体が設計および最適化される、1つまたは複数の負荷要件、1つまたは複数の設計制約、および1つまたは複数の境界条件をシミュレートすることにより構成される。
【0026】
ステップ206で、評価モジュールは、有限要素解析フレームワークを使用して、反復型トポロジー最適化の適用から結果として得られた設計対象の構造体を評価して、選択された付加製造法に起因する材料の異方特性に基づいて事前定義済み安全率を得る。ここで、事前定義済み安全率の条件が、評価済み安全率と比較してごく僅かな差として定義される。
【0027】
ステップ208で、その処理は、設計対象の構造体の反復型トポロジー最適化の2つの連続した反復の間の安全率の1つまたは複数の変更に従って有限要素の状態を繰り返し変更する。
【0028】
最後のステップ210および212で、その処理は、各異方特性の情報を用いて、1つまたは複数の造形の向きに対する最適設計構造体を得る。構造体全体が事前定義済み安全率と等しい最小安全率を有する場合、最適設計構造体が選択される。さらに、1つまたは複数の造形の向きの各々が、1つまたは複数の基準(例えば、体積、重量、たわみ等の最小)に対して評価されると、最適な造形の向きを選択するために1つまたは複数の造形の向きがランク付けされる。
【0029】
一例において、提案方法は、3つの代表的な実施例を用いて説明される。
a) 鉛直荷重を支持するブラケット構造の二次元設計
b) 制御レバーアームの設計
c) ブラケット構造の三次元設計。各事例に対して、材料の異方特性は以下のように仮定される。
【0030】
【0031】
図3は、提案方法の適用後の結果を示す一例である。それは、様々な積層方向の仮定に対してもたらされる最適構造体を示している。例えば0°の積層方向を考えると、それは積層方向と一致する垂直方向に対応し、それに応じて特性が仮定される。構造体の造形に関して異方特性および安全率ベースの基準を用いるトポロジー最適化アルゴリズムが、最適構造体をもたらす。次いで、積層方向が変更されて22.5°回転したと仮定する。そして、適切な数学的変換を使用して材料異方性パラメータが計算され、対応する最適構造体が得られる。このような処理が9個の代表方向に対して繰り返され、対応する最適構造体が図面に示される。各事例において、負荷が加わった後に見られる構造体の最終的な体積およびたわみといった主要パラメータが棒グラフで示される。設計者は、様々な最終的な形状ならびに体積およびたわみの対応する値を検査した後に、可能な限り最良の構造体を決定し、適切な積層方向を選択することができる。
【0032】
制御アーム設計の別の事例に対して同様のアプローチが繰り返され、ここで、2つ以上の負荷点が考慮される。そのようなシナリオの下、積層方向を変化させた場合の最適の構造体および対応する主要パラメータが、
図4に示される。
【0033】
図5を参照すると、造形の向きの変化に対するブラケットの三次元最適構造体および主要結果変数の例が例示される。ここで、提案方法は、三次元構造体の最適化のためにも同様に使用することができる。この場合、積層方向の変化は、全3方向について考慮され、対応する結果が報告される。
【0034】
本開示の記載は、当業者が実施形態を実施および利用するのを可能にするように発明の主題を説明している。実施形態における発明の主題の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されるとともに、当業者による他の変更を含み得る。そのような他の変更は、特許請求の範囲の記載と違わない類似の要素を有する場合、または特許請求の範囲とごく僅かな違いを有する等価な要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図される。
【0035】
付加製造におけるトポロジー最適化された構造体を得るためのシステムおよび方法において、標準形状ジオメトリの有限要素メッシュは、製造のために使用される選択された材料および選択された付加製造法に起因する材料の直交異方特性および設計目標を用いて最適化すべき所望の構造体を包含する。反復型トポロジー最適化が実行され、そのプロセスは、負荷要件、設計制約、および境界条件のシミュレーションを含む。性能評価プロセスは、有限要素解析フレームワークを使用して、材料の異方特性に基づく2つの連続した反復の間の安全率を得る。そのプロセスは、最小安全率および設計の最適な造形の向きを得ることができる。
【0036】
本明細書における開示の実施形態は、付加製造を行う間に設計構造体の部分に誘発される異方性の未解決課題に対処する。異方性は、設計構造体の金属部分においてよく見られる。積層方向に沿った降伏強度のような機械的特性の違いは重要である。それは、そのような設計としてより重い部品が他の方向において過度に設計されることを招く恐れがある。一方で、そのような部品に対して等方特性を有するように熱処理が提案および使用されることが多い。しかし、熱処理は、特性の均一化を導く微構造変化を作り出すが、これは材料の全体的強度の減少を招く。
【0037】
保護の範囲は、そのようなプログラムに拡大され、それに加えてさらにメッセージを有するコンピュータ可読媒体に拡大されることが理解される。そのようなコンピュータ可読記憶媒体は、プログラムがサーバ、携帯装置、または適切なプログラム可能装置上で実行するときに、方法の1つまたは複数のステップを実施するためのプログラムコード手段を含む。ハードウェア装置は、例えばサーバもしくはパーソナルコンピュータ等のような一種のコンピュータ、またはその組み合わせを含む、プログラムにより動作可能な一種の装置であってよい。その装置は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはハードウェア手段およびソフトウェア手段の組み合わせ(例えば、ASICおよびFPGA、または少なくとも1つのミクロプロセッサおよびソフトウェアモジュールが配置された少なくとも1つのメモリ)のようなハードウェア手段を含んでもよい。従って、手段はハードウェア手段およびソフトウェア手段の両方を含むことができる。本明細書に開示される方法の実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェアにおいて実装可能である。装置はさらにソフトウェア手段を含んでもよい。代替として、実施形態は、例えば複数のCPUを使用して、多様なハードウェア装置上で実装可能である。
【0038】
本明細書における実施形態は、ハードウェア要素およびソフトウェア要素を備えることができる。ソフトウェアで実装される実施形態は、限定はしないが、ファームウェア、常駐ソフトウェア、ミクロコード等を含む。本明細書に開示される様々なモジュールによって実行される機能は、他のモジュールまたは他のモジュールの組み合わせにおいて実装可能である。その説明を目的として、コンピュータ利用可能媒体またはコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスによる使用される、またはそれらに接続するためのプログラムを具備、記憶、通信、伝搬、または転送することができる装置であってもよい。
【0039】
媒体は、電子式、磁気式、光学式、電磁気学式、赤外線式、または半導体式のシステム(もしくは装置、もしくはデバイス)、または伝搬形式の媒体であることが可能である。コンピュータ可読媒体の例は、半導体またはソリッドステートメモリ、磁気テープ、取り出し可能なコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、固定磁気ディスク、および光ディスクを含む。現在の光ディスクの例は、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、コンパクトディスク-リード/ライト(CD-R/W)およびDVDを含む。
【0040】
プログラムコードを記憶および/または実行するのに適したデータ処理システムは、システムバスを通じて直接的または間接的にメモリエレメントに結合された少なくとも1つのプロセッサを含み得る。メモリエレメントは、プログラムコードの実際の実行の間に使用されるローカルメモリと、バルク記憶装置と、実行中にバルク記憶装置からコードを読み出す必要がある回数を減らすために、少なくとも幾つかのプログラムコードの一時的記憶装置を提供するキャッシュメモリとを含むことができる。
【0041】
入力/出力(I/O)装置(限定はしないが、キーボード、ディスプレイ、ポインティングデバイス等を含む)は、システムに直接結合が可能である、または介在するI/Oコントローラを通じて結合可能である。ネットワークアダプタがさらにシステムに結合され、データ処理システムが、介在する私的ネットワークまたは公共ネットワークを通じて、他のデータ処理システム、リモートプリンタ、または記憶装置に結合されるようにする。モデム、ケーブルモデム、およびイーサネット(登録商標)カードは、現在利用可能なネットワークアダプタの種類の一部に過ぎない。
【0042】
実施形態を実行する代表的なハードウェア環境は、本明細書における実施形態による情報処理/コンピュータシステムのハードウェア構成を含んでもよい。ここで、システムは、少なくとも1つのプロセッサまたは中央処理装置(CPU)を備える。CPUはシステムバスを介して、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、および入力/出力(I/O)アダプタのような様々な装置に相互接続される。I/Oアダプタは、ディスクユニットおよびテープドライブのような周辺装置、またはシステムによって読み出し可能な他のプログラム記憶装置に接続可能である。システムは、プログラム記憶装置上の独創的な命令を読み出し、本明細書における実施形態の方法を実行するこれらの命令に従って動作することができる。
【0043】
システムは、ユーザ入力を集めるためにキーボード、マウス、スピーカ、マイクロフォン、および/またはタッチスクリーン装置(図示せず)のような他のユーザインターフェース装置をバスに接続するユーザインターフェースアダプタをさらに含む。さらに、通信アダプタは、バスをデータ処理ネットワークに接続し、ディスプレイアダプタはバスを、例えばモニタ、プリンタ、または送信機のような出力装置として具現化されるディスプレイ装置に接続する。
【0044】
様々な実施形態を参照しながら以上の説明を示した。本願に関係する当業者は、開示された構成および動作方法の代替および変更が原理、趣旨、および範囲から有意に逸脱することなく実行可能であることを認識する。
【符号の説明】
【0045】
100 システム
102 プロセッサ
104 メモリ
106 受信モジュール
108 アプリケーションモジュール
110 評価モジュール
112 変更モジュール