(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】消防ポンプ車
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20220422BHJP
A62C 27/00 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
B60K11/04 Z
A62C27/00 501
(21)【出願番号】P 2018059153
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】西風 裕之
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0238704(US,A1)
【文献】実開平2-87929(JP,U)
【文献】特開2012-92735(JP,A)
【文献】特開平9-250341(JP,A)
【文献】特開2012-149633(JP,A)
【文献】実開昭55-108250(JP,U)
【文献】米国特許第4811804(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00- 15/10
A62C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を有するキャビンと、荷台とからなり、
過給機を設けたエンジンと、
前記エンジンを冷却するラジエ-タと、
前記過給機で圧縮された空気を冷却する空冷式インタークーラーと、
前記エンジンの後方に配置されるトランスミッションと
を有し、
前記トランスミッションと前記荷台側の後輪車軸との間にスプリットシャフトPTOを取り付け、
前記スプリットシャフトPTOに接続した水ポンプドライブシャフトによって水ポンプを駆動する消防ポンプ車であって、
前記空冷式インタークーラーに水を噴霧する噴霧ノズルを設け、
前記噴霧ノズルには、前記水ポンプから前記水が供給され
、
前記エンジンの吸気口を、前記キャビンの外周縁の下方に配置した
ことを特徴とする消防ポンプ車。
【請求項2】
運転席を有するキャビンと、荷台とからなり、
過給機を設けたエンジンと、
前記エンジンを冷却するラジエ-タと、
前記過給機で圧縮された空気を冷却する空冷式インタークーラーと、
前記エンジンの後方に配置されるトランスミッションと
を有し、
前記トランスミッションと前記荷台側の後輪車軸との間にスプリットシャフトPTOを取り付け、
前記スプリットシャフトPTOに接続した水ポンプドライブシャフトによって水ポンプを駆動する消防ポンプ車であって、
前記空冷式インタークーラーに水を噴霧する噴霧ノズルを設け、
前記噴霧ノズルには、前記水ポンプから前記水が供給され、
前記スプリットシャフトPTOと前記水ポンプドライブシャフトとの間に、ギヤケースを配置することで、前記水ポンプドライブシャフトを前記スプリットシャフトPTOより高い位置とした
ことを特徴とす
る消防ポンプ車。
【請求項3】
前記吸気口を、前記キャビンの側面とした
ことを特徴とする請求項
1に記載の消防ポンプ車。
【請求項4】
前記ラジエ-タ
に直列に配列されたサブラジエ-タを設け、
前記ラジエ-タ及び前記サブラジエ-タで冷却された冷却水を前記エンジンに供給し、
前記サブラジエ-タは、前記水ポンプから供給される前記水によって冷却される
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の消防ポンプ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に消火作業を支援する消防ポンプ車に関する。
【背景技術】
【0002】
2017年度から施行されている免許制度では、普通免許では車両総重量が3.5トン未満に限られるため、普通免許で運転できる消防ポンプ車が求められている。
一方、消防ポンプ車は、認定に必要な規格放水性能や高圧放水性能を備えなければならず、水ポンプやエンジンには所定の能力が要求される。
このような状況の中で、PTO機能を備えていないベース車両は、車両停止時にエンジンを長時間高回転駆動することを想定していないため、後付でPTOを付加して水ポンプを駆動する場合には、エンジンの冷却性能が十分に発揮されない。
ところで、特許文献1には、熱交換器の冷却性能を向上させるために、貯水タンクに溜めた雨水をラジエ-タやインタークーラーに噴霧することが記載され、特許文献2には、電動ファンの電力消費及び騒音を低減させるために、ラジエ-タに水を噴霧することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-92735号公報
【文献】特開2013-142300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2は、いずれも車両本来の走行状態や停車状態を想定したものであり、エンジン駆動を、車両走行とは異なる用途に用いる場合を想定したものではない。また、いずれの特許文献も、冷却水の温度を検出することで水噴霧を行うとともに、電動ファンと併用している。
特許文献1及び特許文献2に開示の技術を、PTOによる駆動に適用する場合には、限られた時間しか利用することができない。
【0005】
本発明は、水ポンプの長時間駆動を可能にすることができる消防ポンプ車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の消防ポンプ車は、運転席を有するキャビン1と、荷台2とからなり、過給機を設けたエンジン3と、前記エンジン3を冷却するラジエ-タ4と、前記過給機で圧縮された空気を冷却する空冷式インタークーラー5と、前記エンジン3の後方に配置されるトランスミッション6とを有し、前記トランスミッション6と前記荷台2側の後輪車軸7との間にスプリットシャフトPTO10を取り付け、前記スプリットシャフトPTO10に接続した水ポンプドライブシャフト30によって水ポンプ40を駆動する消防ポンプ車であって、前記空冷式インタークーラー5に水を噴霧する噴霧ノズル50を設け、前記噴霧ノズル50には、前記水ポンプ40から前記水が供給され、前記エンジン3の吸気口80を、前記キャビン1の外周縁の下方に配置したことを特徴とする。
請求項2記載の本発明の消防ポンプ車は、運転席を有するキャビン1と、荷台2とからなり、過給機を設けたエンジン3と、前記エンジン3を冷却するラジエ-タ4と、前記過給機で圧縮された空気を冷却する空冷式インタークーラー5と、前記エンジン3の後方に配置されるトランスミッション6とを有し、前記トランスミッション6と前記荷台2側の後輪車軸7との間にスプリットシャフトPTO10を取り付け、前記スプリットシャフトPTO10に接続した水ポンプドライブシャフト30によって水ポンプ40を駆動する消防ポンプ車であって、前記空冷式インタークーラー5に水を噴霧する噴霧ノズル50を設け、前記噴霧ノズル50には、前記水ポンプ40から前記水が供給され、前記スプリットシャフトPTO10と前記水ポンプドライブシャフト30との間に、ギヤケース20を配置することで、前記水ポンプドライブシャフト30を前記スプリットシャフトPTO10より高い位置としたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の消防ポンプ車において、前記吸気口80を、前記キャビン1の側面としたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の消防ポンプ車において、前記ラジエ-タ4に直列に配列されたサブラジエ-タ60を設け、前記ラジエ-タ4及び前記サブラジエ-タ60で冷却された冷却水を前記エンジンに供給し、前記サブラジエ-タ60は、前記水ポンプ40から供給される前記水によって冷却されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の消防ポンプ車によれば、水ポンプ駆動時には、水ポンプの水を空冷式インタークーラーに供給することができるため、水ポンプの長時間駆動を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による消防ポンプ車の主要構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による消防ポンプ車は、空冷式インタークーラーに水を噴霧する噴霧ノズルを設け、噴霧ノズルには、水ポンプから水が供給されるものである。本実施の形態によれば、水ポンプ駆動時には、水ポンプの水を空冷式インタークーラーに供給することができるため、水ポンプの長時間駆動を可能にすることができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による消防ポンプ車において、エンジンの吸気口を、キャビンの外周縁の下方に配置したものである。本実施の形態によれば、エンジンやトランスミッションからの放熱の影響が少ない、加熱されていない空気をエンジンに供給することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による消防ポンプ車において、吸気口を、キャビンの側面としたものである。本実施の形態によれば、車両停止時に加熱されていない空気をエンジンに供給できるとともに、走行時の吸気量にも影響を与えない。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3の実施の形態による消防ポンプ車において、ラジエ-タを冷却するサブラジエ-タを設け、サブラジエ-タは、水ポンプから供給される水によって冷却されるものである。本実施の形態によれば、水ポンプ駆動時には、水ポンプの水をサブラジエ-タに供給することができるため、水ポンプの長時間駆動を可能にすることができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4の実施の形態による消防ポンプ車において、スプリットシャフトPTOと水ポンプドライブシャフトとの間に、ギヤケースを配置することで、水ポンプドライブシャフトをスプリットシャフトPTOより高い位置としたものである。本実施の形態によれば、水ポンプの設置位置を高くでき、水ポンプの搭載を容易にすることができる。
【実施例】
【0014】
以下本発明の一実施例による消防ポンプ車を説明する。
図1は、本実施例による消防ポンプ車の主要構成図であり、
図1(a)は同消防ポンプ車の主要上面構成図、
図1(b)は同消防ポンプ車の主要側面構成図、
図1(c)は冷却水系統図である。
【0015】
本実施例による消防ポンプ車は、運転席を有するキャビン1と、荷台2とからなり、過給機(図示省略)を設けたエンジン3と、エンジン3を冷却するラジエ-タ4と、過給機で圧縮された空気を冷却する空冷式インタークーラー5と、エンジン3の後方に配置されるトランスミッション6とを有している。
【0016】
消防ポンプ車は、トランスミッション6と荷台2側の後輪車軸7との間にスプリットシャフトPTO10を取り付けている。
スプリットシャフトPTO10には、ギヤケース20を介して、水ポンプドライブシャフト30を接続し、水ポンプ40は、水ポンプドライブシャフト30によって駆動する。
ギヤケース20は、スプリットシャフトPTO10と水ポンプドライブシャフト30との間に配置し、水ポンプドライブシャフト30をスプリットシャフトPTO10より高い位置としている。水ポンプドライブシャフト30をスプリットシャフトPTO10より高い位置とすることで、水ポンプ40の設置位置を高くでき、水ポンプ40の搭載を容易にすることができる。
なお、
図1(b)に示すように、スプリットシャフトPTO10には、PTO用オイルポンプ11と、PTO用オイルクーラー12とが設けられ、スプリットシャフトPTO10を冷却する。ギヤケース20には、ギヤケース用オイルポンプ21と、ギヤケース用オイルクーラー22とが設けられ、ギヤケース20を冷却する。
【0017】
空冷式インタークーラー5には、水を噴霧する噴霧ノズル50を設けている。噴霧ノズル50には、水ポンプ40から水が供給される。
消防ポンプ車は、ラジエ-タ4を冷却するサブラジエ-タ60を設けている。サブラジエ-タ60は、水ポンプ40から供給される水によって冷却される。
【0018】
図1(c)に示すように、水ポンプ40には、水ポンプ40の駆動時に、水ポンプ40によって吐出される水を、噴霧ノズル50及びサブラジエ-タ60に供給する水供給管70を設けている。
水供給管70から供給される水は、噴霧ノズル50から噴霧され、またサブラジエ-タ60を冷却後に放水される。
サブラジエ-タ60は、ラジエ-タ4に直列に配列され、ラジエ-タ4及びサブラジエ-タ60で冷却された冷却水がエンジン3に供給される。
【0019】
本実施例によれば、水ポンプ40の駆動時には、水ポンプ40の水を空冷式インタークーラー5に供給することができるため、水ポンプ40の長時間駆動を可能にすることができる。
また、水ポンプ40の駆動時には、水ポンプ40の水をサブラジエ-タ60に供給することができるため、水ポンプ40の長時間駆動を可能にすることができる。
【0020】
エンジン3の吸気口80は、キャビン1の外周縁の下方で、キャビン1の側面に配置している。エンジン3の吸気口80をキャビン1の外周縁の下方とすることで、エンジン3やトランスミッション6からの放熱の影響が少ない、加熱されていない空気をエンジン3に供給することができ、更にエンジン3の吸気口80をキャビン1の側面とすることで、車両停止時に加熱されていない空気をエンジン3に供給できるとともに、走行時の吸気量にも影響を与えない。
【0021】
なお、
図1(a)に示すように、燃料タンク90からエンジン3への燃料供給管91には、燃料クーラー92を設けることが好ましい。
また、PTO用オイルクーラー12、ギヤケース用オイルクーラー22、及びラジエ-タ4の少なくともいずれかに噴霧ノズルを設け、空冷式インタークーラー5に設けた噴霧ノズル50と同様に、噴霧ノズルに対して、水ポンプ40の駆動時に、水ポンプ40から水を供給することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、特に消防団で用いられる消防ポンプ車に適している。
【符号の説明】
【0023】
1 キャビン
2 荷台
3 エンジン
4 ラジエ-タ
5 空冷式インタークーラー
6 トランスミッション
7 後輪車軸
10 スプリットシャフトPTO
11 PTO用オイルポンプ
12 PTO用オイルクーラー
20 ギヤケース
21 ギヤケース用オイルポンプ
22 ギヤケース用オイルクーラー
30 水ポンプドライブシャフト
40 水ポンプ
50 噴霧ノズル
60 サブラジエ-タ
70 水供給管
80 吸気口
90 燃料タンク
91 燃料供給管
92 燃料クーラー