(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】シートディスペンサー及びシートディスペンサー用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
A47K 10/42 20060101AFI20220422BHJP
B65D 83/08 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
A47K10/42 B
B65D83/08 G
(21)【出願番号】P 2018068194
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 勝志
(72)【発明者】
【氏名】篠原 忍
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-034803(JP,A)
【文献】特開2009-007016(JP,A)
【文献】特開2004-105512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/42
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシートが折り畳まれてポップアップ式に引き出せるように積層されたシート積層体を収容する本体部を有し、
前記本体部が、上下方向の下方に設けられた底面と、前後方向の前方に設けられて前記底面に連続する正面と、前記前後方向の後方に設けられて前記正面と対向しかつ前記底面に連続する背面とを有し、
前記シート積層体の積層方向が、前記前後方向であるシートディスペンサーであって、
前記正面の前記底面寄りに設けられて前記シートが取り出される取出部と、
前記底面に設けられて前記底面の少なくとも一部が前記前後方向に傾斜してなる傾斜部とを有
し、
前記傾斜部が、前記正面から前記背面に向かって下降する傾斜面を有し、
前記傾斜部は、前記傾斜面の傾斜角度を変える角度可変部を有する、シートディスペンサー。
【請求項2】
複数枚のシートが折り畳まれてポップアップ式に引き出せるように積層されたシート積層体を収容する本体部を有し、
前記本体部が、上下方向の下方に設けられた底面と、前後方向の前方に設けられて前記底面に連続する正面と、前記前後方向の後方に設けられて前記正面と対向しかつ前記底面に連続する背面とを有し、
前記シート積層体の積層方向が、前記前後方向であるシートディスペンサーであって、
前記正面の前記底面寄りに設けられて前記シートが取り出される取出部と、
前記底面に設けられて前記底面の少なくとも一部が前記前後方向に傾斜してなる傾斜部とを有し、
前記傾斜部が、前記背面から前記正面に向かって下降する傾斜面を有し、
前記傾斜部は、前記傾斜面の傾斜角度を変える角度可変部を有する、シートディスペンサー。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のシートディスペンサーに着脱可能に取り付けられて、前記傾斜部を構成する、シートディスペンサー用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートディスペンサー及びシートディスペンサー用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシートディスペンサーは、ペーパータオル等のシートが収容され、室内の壁等に設置されて使用される。このようなシートディスペンサーには、複数枚のシートがポップアップ式に引き出されるようにディスペンサーの背面から正面に向かって積層された状態で、ディスペンサーの正面に設けられた取出口からシートが引き出されるものがある。また、ディスペンサーに収容されるペーパータオルには、厚くて硬い1枚の紙で構成されたシングルタイプと薄くて柔らかい2枚の紙が重ねられたダブルタイプがある。
【0003】
例えば、特開平11-76097号公報(特許文献1)には、ハウジングケース部材と、ペーパータオル等を収納する載置部とを備え、載置部にペーパータオルを折り目を上下にして立て掛けるように載置するペーパータオルディスペンサーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシートディスペンサーでは、シートが引き出される途中で、数枚のシートがまとめて引き出されたり、シートがディスペンサー内に落ち込むことがある。例えば、ディスペンサー内でシートの残量が少なくなると、シートが正面側または背面側に倒れるが、シートがシングルタイプの場合は、シート積層体が正面側に倒れると引き出されるシートがたるんでディスペンサー内に落ち込む傾向がある(
図9参照)。また、シートがダブルタイプの場合は、シートが正面側に倒れると、引き出されるシートが取出口付近でシート積層体によって押さえ付けられて、数枚のシートがまとめて引き出される傾向がある(
図10参照)。このように、従来のシートディスペンサーは、シートの取出し性に問題がある。
【0006】
本発明の目的は、シートの取出し性に優れるシートディスペンサー及びシートディスペンサー用アタッチメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の態様は、複数枚のシートが折り畳まれてポップアップ式に引き出せるように積層されたシート積層体を収容する本体部を有し、前記本体部が、上下方向の下方に設けられた底面と、前後方向の前方に設けられて前記底面に連続する正面と、前記前後方向の後方に設けられて前記正面と対向しかつ前記底面に連続する背面とを有し、前記シート積層体の積層方向が、前記前後方向であるシートディスペンサーであって、前記正面の前記底面寄りに設けられて前記シートが取り出されると、前記底面に設けられて前記底面の少なくとも一部が前記前後方向に傾斜してなる傾斜部とを有する、シートディスペンサーを提供する。
【0008】
ここで「正面の底面寄り」とは、正面の上下方向の中央より下方側を示す。また、「底面の少なくとも一部が前後方向に傾斜する傾斜部」とは、本体部の底面の一部または全部が、本体部の正面から背面に向かって傾斜する傾斜部であることを示す。なお、傾斜部には、傾斜部の表面が本体部の正面から背面に向かって下降するように傾斜する場合と、背面から正面に向かって下降するように傾斜する場合とが含まれる。
【0009】
第1の態様では、シートが本体部の前後方向に積層されるようにシート積層体がシートディスペンサーに収容された状態で、このような傾斜部が、本体部の底面の少なくとも一部を構成してシートディスペンサーの前後方向に傾斜するように設けられている。このような構成により、シートの取出し性に優れるシートディスペンサーを提供することができる。
【0010】
具体的には、硬めのシートに対しては、本体部の正面から背面に向かって下降するように表面が傾斜する傾斜部を採用することで、ディスペンサー内でシートの残量が少なくなっても、シート積層体が正面側に倒れ、シート積層体は傾斜部によって支えられる。これにより、シートが硬めの場合でも、ディスペンサー内にシートが落ち込むことを抑制することができる。
【0011】
また、柔らかめのシートに対しては、本体部の背面から正面に向かって下降するように表面が傾斜する傾斜部を採用することで、ディスペンサー内でシートの残量が少なくなっても、シート積層体は背面側に倒れるため、引き出されるシートが取出部付近でシート積層体によって押さえ付けられることはない。これにより、シートが柔らかめの場合でも、数枚のシートがまとめて引き出されることを抑制することができる。
【0012】
このように、第1の態様によれば、ディスペンサー内にシートが落ち込むことを抑制することができ、また、数枚のシートがまとめて引き出されることを抑制することができるため、シートの取出し性に優れるシートディスペンサーを提供することができる。また、このようなシートの取出し性に優れるシートディスペンサーを、シートの形態や種類に応じて提供することができる。
【0013】
本発明に係る第2の態様は、前記傾斜部が、前記正面から前記背面に向かって下降する傾斜面を有する、シートディスペンサーを提供する。このような構成により、第2の態様では、本体部の正面から背面に向かって下降するように傾斜部の表面を傾斜させることができる。そのため、このような傾斜部を有するシートディスペンサーは、ディスペンサー内でシートの残量が少なくなると、ディスペンサー内にシートが落ち込み易い傾向がある硬めのシートに適用することができる。
【0014】
本発明に係る第3の態様は、前記傾斜部が、前記背面から前記正面に向かって下降する傾斜面を有する、シートディスペンサーを提供する。このような構成により、第3の態様では、本体部の背面から正面に向かって下降するように傾斜部の表面を傾斜させることができる。そのため、このような傾斜部を有するシートディスペンサーは、ディスペンサー内でシートの残量が少なくなると、数枚のシートがまとめて引き出される傾向がある柔らかめのシートに適用することができる。
【0015】
本発明に係る第4の態様は、前記傾斜部が、前記傾斜面の傾斜角度を変える角度可変部を有する、シートディスペンサーを提供する。このような構成により、第4の態様では、傾斜面の傾斜角度を変えることができるため、傾斜部の表面(傾斜面)を、正面から背面に向かって下降する傾斜面にしたり、背面から前記正面に向かって下降する傾斜面にしたりすることができる。これにより、第4の態様では、1つのシートディスペンサーで、形態や種類が異なるシートを使用することができる。
【0016】
本発明に係る第5の態様は、第1~第4の態様のシートディスペンサーに着脱可能に取り付けられて、前記傾斜部を構成する、シートディスペンサー用アタッチメントを提供する。第5の態様では、このような傾斜部を構成するシートディスペンサー用アタッチメントを、従来の底面が平らなシートディスペンサーに取り付けることで、従来のシートディスペンサーにおいても、シートの形態や種類に応じて、シートの取出し性に優れるシートディスペンサーを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、シートの取出しが容易なシートディスペンサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るシートディスペンサーを示す図である。
【
図2】本実施形態(第1実施形態)に係るシートディスペンサーを側面から視た断面図である。
【
図3】本実施形態(第1実施形態)に係るシートディスペンサーの傾斜部を示す図である。
【
図4】本実施形態(第2実施形態)に係るシートディスペンサーを側面から視た断面図である。
【
図5】本実施形態(第2実施形態)に係るシートディスペンサーの傾斜部を示す図である。
【
図6】本実施形態(第1実施形態)に係るシートディスペンサーの使用状態を示す図である。
【
図7】本実施形態(第2実施形態)に係るシートディスペンサーの使用状態を示す図である。
【
図8】本実施形態(第3実施形態)に係るシートディスペンサーを側面から視た断面図である。
【
図9】従来のシートディスペンサー(シートが硬めの場合)を示す図である。
【
図10】従来のシートディスペンサー(シートが柔らかめの場合)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、理解を容易にするため、各図における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。また、以下に示す説明では、各図において共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0020】
本明細書では、シートディスペンサーの上下方向(高さ方向)の一方を上または上方といい、他方を下または下方という場合がある。また、3軸方向(X方向、Y方向、Z方向)の3次元直交座標系を用いる。なお、X方向は、後述するシートディスペンサーの側面が対向する方向(
図1の左右方向)であり、Y方向は、X方向と水平に直交する方向(正面と背面とが対向する方向または前後方向)であり、Z方向は、X方向とY方向とのいずれにも直交する方向(天面と底面とが対向する方向または上下方向)である。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るシートディスペンサーを示す図である。
図2は、本実施形態(第1実施形態)に係るシートディスペンサーを側面から視た断面図である。
図3は、本実施形態(第1実施形態)に係るシートディスペンサーの傾斜部を示す図である。
【0022】
本発明の実施形態に係るシートディスペンサー100は、
図1、
図2に示すように、複数枚のシートSTが積層されたシート積層体SLを収容する本体部10を有する。本体部10は、天面11、底面12、正面13、背面14、側面15および側面16を有する直方体形状の箱体である。
【0023】
天面11は、上下方向(Z方向)の上方に設けられている。底面12は、上下方向(Z方向)の下方に設けられて天面11と上下方向(Z方向)に対向する。正面13は、前後方向(Y方向)の前方に設けられて底面12に連続する。背面14は、前後方向(Y方向)の後方に設けられて正面13と前後方向(Y方向)に対向し、かつ底面12に連続する。そして、側面15および側面16は、上下方向(Z方向)と直交しかつ前後方向(Y方向)とも直交する左右方向(X方向)に対向して、天面11、底面12、正面13、および背面14とともに本体部10内にシート積層体SLを収容する空間を形成する。
【0024】
また、本体部10の正面13には、取出部20が設けられている。取出部20は、正面13の底面12寄りに設けられおり、シートSTをシートディスペンサー100(本体部10)内からシートSTを取り出すことができる。ここで、正面13の底面12寄りは、正面13の上下方向(Z方向)の中央より下方側を示す(
図1、
図2参照)。このような正面13の底面12寄りに近傍に取出部20を設けることにより、シートの取出し性の低下を防ぐことができる。
【0025】
なお、取出部20の寸法は、取り出されるシートSTの寸法に応じて、任意に定めることができる。例えば、左右方向(X方向)におけるシートSTの幅寸法に対して、取出部20の長さは、好ましくは約-8~25mmであり、より好ましくは約-5~10mmである。また、取出部20を正面13の底面12寄りに設ける観点から、底面12からの距離は、任意であるが、例えば、取出部20と底面12との間隔が、好ましくは約40~60mm、より好ましくは約45~55mmである。
【0026】
取出部20の形態は、特に限定されないが、例えば、
図1に示すように正面13を貫通する略矩形状の開口で構成することができる。また、取出部20の周縁部は、
図1、
図2に示すように、正面13から本体部10の外側に向かって突出する形状にしてもよい。取出部20の周縁部をこのような形状にすることにより、シートSTが引き出される方向にガイドされるため、シートSTの取出しが容易になる。
【0027】
なお、シートディスペンサー100の形状は、直方体形状に限定されず、例えば、立方体形状でもよい。また、シートディスペンサー100の材質は、特に限定されず、例えば、ABS、ポリスチレン、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂、段ボール等の紙、ステンレス等の金属を用いることができる。
【0028】
また、シートディスペンサー100の形態は、特に限定されないが、本体部10の天面11を蓋体にして天面11から本体部10内にシート積層体SLを収納するもの、本体部10の正面13、背面14、側面15及び/または側面16が開放する扉を設けて該扉から本体部10内にシート積層体SLを収納するもの等が挙げられる。また、シートディスペンサー100の設置態様は、特に限定されないが、例えば、背面14を介して壁に掛けるもの、底面12を介して台の上に置くもの等が挙げられる。
【0029】
シートディスペンサー100に収容されるシートSTは、
図2に示すように、複数枚のシートSTが積層されたシート積層体SLで構成されている。シート積層体SLは、シート積層体SLの積層方向が前後方向(Y方向)になるように、シートディスペンサー100の本体部10に収容される。すなわち、シート積層体SLがシートディスペンサー100の本体部10に収容された状態で、複数枚のシートSTは、シートディスペンサー100の前後方向(Y方向)に積層された状態で配置される。
【0030】
シート積層体SLは、複数枚のシートSTが折り畳まれてポップアップ式に(1枚または1組ずつ)引き出せるように積層されている。なお、ポップアップ式とは、シートが1枚ずつまたは1組ずつ取り出されることを意味する。シートST(シート積層体SL)の形態は、折り畳まれてポップアップ式に引き出せるように積層されたものであれば、特に限定されないが、1組のシートが相互に折り重ねられて積層されたシート積層体が好ましく、中でもシートを1枚引き出すと次のシートの一部が引き出される形態のシート積層体がより好ましい。
【0031】
シートST(シート積層体SL)の用途は、特に限定されず、ペーパータオル、ワイパー(ウエス)、ティシューペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー等に用いることができる。また、産業用、家庭用に限定されない。
【0032】
シートSTの材質は、特に限定されないが、例えば、紙、不織布または布等のシートを用いることができ、好ましくは紙シートである。なお、シートSTが紙シートの場合、原紙の原料がパルプを主材とする紙が用いられる。パルプ組成は、ウエスにおける公知の組成を用いることができる。例えば、パルプの配合割合を50質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%とすることができる。
【0033】
また、シートST(紙シート)におけるパルプ組成は、例えば、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプとを適宜の比率で使用することができる。特に、針葉樹パルプを広葉樹パルプと比較してより多い組成のパルプ組成であることが好ましい。針葉樹パルプと広葉樹パルプの比は、50:50~80:20であるのが好ましい。なお、シートST(紙シート)のパルプ組成に含まれるパルプには、古紙パルプを用いても良い。
【0034】
シートST(紙シート)の坪量は、特に限定されないが、プライ数に応じて、紙の場合は15~80g/m2、不織布の場合は20~100g/m2のものが望ましい。なお、坪量は、JIS P 8124の規定に準拠して測定される。
【0035】
また、紙シートの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、JIS P 8111(1998)の環境下で測定された紙厚を採用することができる。例えば、シートSTを構成する紙シートの紙厚は、1プライあたり、好ましくは50~500μmであり、より好ましくは60~330μm程度である。
【0036】
なお、紙厚の測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて2プライの状態で測定する。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、該ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせる。次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしたときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーは載せるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。
【0037】
また、シートSTを構成する紙シートには、エンボス加工が施されていても良い。このようなエンボス加工は、公知のピンエンボス付与方法により、図示しないピンを紙シートに刺して、紙シートの一方の面上にピンエンボスを形成するものである。
【0038】
シートSTのプライ数は、特に限定されないが、1プライ以上にすることができ、好ましくは2プライ(2枚重ね)である。なお、2プライ(2枚重ね)以上のシートSTにエンボス加工を行う場合は、紙シートを2プライ(2枚重ね)にした状態で上述のピンエンボスを付与することができる。
【0039】
本実施形態では、
図2に示すように、底面12に傾斜部30が設けられている。傾斜部30は、底面12の少なくとも一部を構成し、傾斜部30の表面がシートディスペンサー100の前後方向(Y方向)に傾斜している。
【0040】
ここで、底面12の少なくとも一部とは、底面12の一部または全部を示す。また、前後方向(Y方向)に傾斜する傾斜部30には、傾斜部30の表面が本体部10の正面13から背面14に向かって下降するように傾斜する場合と、背面から正面13に向かって下降するように傾斜する場合とが含まれる。
【0041】
傾斜部30のうち、表面が本体部10の正面13から背面14に向かって下降するように傾斜する傾斜部30の形状は、特に限定されないが、例えば、
図2に示すように本実施形態(第1実施形態)のシートディスペンサー100に設けられた形状を有する(
図2、
図3参照)。
【0042】
具体的には、本実施形態(第1実施形態)のシートディスペンサー100では、
図3に示すように、傾斜部30が、傾斜面31と支持部32とを有する。傾斜面31は、正面13から背面14に向かって下降する形状を有する。すなわち、傾斜面31は、
図2に示すように、背面14から正面13に向かって右肩上がりに傾斜している。また、支持部32は、傾斜面31を正面13側で支持するように上下方向(Z方向)に延びる形状を有する。
【0043】
図4は、本実施形態(第2実施形態)に係るシートディスペンサーを側面から視た断面図である。
図5は、本実施形態(第2実施形態)に係るシートディスペンサーの傾斜部を示す図である。傾斜部30のうち、表面が本体部10の背面14から正面13に向かって下降するように傾斜する傾斜部30の形状は、特に限定されないが、例えば、本実施形態(第2実施形態)のシートディスペンサー100に設けられた形状を有する(
図4、
図5参照)。
【0044】
具体的には、本実施形態(第2実施形態)のシートディスペンサー100では、
図4、
図5に示すように、傾斜部30は、傾斜面31と支持部32とを有する。本実施形態(第2実施形態)では、傾斜面31は、背面14から正面13に向かって下降する形状を有する。すなわち、傾斜面31は、
図4、
図5に示すように、背面14から正面13に向かって右肩下がりに傾斜している。また、支持部32は、傾斜面31を背面14側で支持するように上下方向(Z方向)に延びる形状を有する。
【0045】
図6は、本実施形態(第1実施形態)に係るシートディスペンサーの使用状態を示す図である。
図7は、本実施形態(第2実施形態)に係るシートディスペンサーの使用状態を示す図である。ここでは、本実施形態による効果について
図6、
図7を参照しながら、説明する。
【0046】
本実施形態では、上述のように、シートSTが本体部10の前後方向(Y方向)に積層されるようにシート積層体SLがシートディスペンサー100に収容されている。そして、傾斜部30が、本体部10の底面12の少なくとも一部を構成してシートディスペンサー100の前後方向(Y方向)に傾斜するように設けられている。このような構成により、シートSTの取出し性に優れるシートディスペンサー100を提供することができる。
【0047】
例えば、硬めのシートSTに対しては、本体部10の正面13から背面14に向かって下降するように表面が傾斜する傾斜部30を採用することができる。この場合は、ディスペンサー内でシートSTの残量が少なくなっても、シート積層体SLが正面13側に倒れ、シート積層体SLは傾斜部30によって支えられる。これにより、本実施形態のシートディスペンサー100では、シートSTが硬めの場合でも、ディスペンサー内にシートSTが落ち込むことを抑制することができる。
【0048】
具体的には、第1実施形態において、本体部10の正面13から背面14に向かって下降するように傾斜部30の表面を傾斜させることができる。これにより、第1実施形態に係るシートディスペンサー100は、ディスペンサー内でシートSTの残量が少なくなったときにディスペンサー内にシートSTが落ち込み易い傾向がある硬めのシートSTに適用することができる。
【0049】
また、柔らかめのシートSTに対しては、本体部10の背面から正面13に向かって下降するように表面が傾斜する傾斜部30を採用することができる。この場合は、ディスペンサー内でシートSTの残量が少なくなっても、シート積層体SLは背面側に倒れるため、引き出されるシートSTが取出部20付近でシート積層体SLによって押さえ付けられることはない。これにより、本実施形態のシートディスペンサー100では、シートSTが柔らかめの場合でも、数枚のシートSTがまとめて引き出されることを抑制することができる。
【0050】
具体的には、第2実施形態において、本体部10の背面から正面13に向かって下降するように傾斜部30の表面を傾斜させることができる。これにより、第2実施形態に係るシートディスペンサー100は、ディスペンサー内でシートSTの残量が少なくなったときに数枚のシートSTがまとめて引き出される傾向がある柔らかめのシートSTに適用することができる。
【0051】
このように、本実施形態では、ディスペンサー内にシートSTが落ち込むことを抑制することができる。また、本実施形態では、数枚のシートSTがまとめて引き出されることを抑制することができるため、シートSTの取出し性に優れるシートディスペンサー100を提供することができる。したがって、シートSTの取出し性に優れるシートディスペンサー100を、シートSTの形態や種類に応じて提供することができる。
【0052】
なお、傾斜部30の傾斜角度は、特に限定されないが、例えば、水平面に対して好ましくは5~30°、より好ましくは10~25°、さらに好ましくは16~18°である。傾斜部30の傾斜角度をこのような範囲にすることにより、シートSTの取出し性を向上させることができる。
【0053】
図8は、本実施形態(第3実施形態)に係るシートディスペンサーを側面から視た断面図である。なお、
図8では、理解を容易にするため、シートST(シート積層体SL)の図示を省略している。第3実施形態のシートディスペンサー100では、傾斜部30が角度可変部40を有する。角度可変部40は、
図8に示すように、傾斜面31の傾斜角度を変えることができるように構成されている。
【0054】
具体的には、角度可変部40は、前後方向(Y方向)における傾斜部30(傾斜面31)の中央に、傾斜部30が回動可能に取り付けられている。なお、角度可変部40の形態は、特に限定されないが、例えば、角度を手動で変更するものでも、自動で変更するものでもよい。なお、角度可変部40には、変更後の傾斜面31の角度が固定されるように、例えば、ラチェット、ダイヤル等の機構を設けるのが好ましい。
【0055】
第3実施形態では、このように傾斜面31の傾斜角度を変えることができる。そのため、傾斜部30の表面(傾斜面31)を、正面13から背面14に向かって下降する傾斜面31にしたり、背面14から正面13に向かって下降する傾斜面31にしたりすることができる。
【0056】
これにより、シートSTが硬めの場合は、傾斜部30の表面(傾斜面31)が正面13から背面14に向かって下降するように傾斜部30の角度を調整すればよい。また、シートSTが柔らかめの場合は、傾斜部30の表面(傾斜面31)が背面14から正面13に向かって下降するように傾斜面31の角度を調整すればよい。すなわち、第3実施形態によれば、1つのシートディスペンサー100だけで、シートSTの硬さに応じたシートSTを使用することができる。
【0057】
また、本実施形態では、傾斜部30をシートディスペンサー用アタッチメントとして提供してもよい(
図3、
図5参照)。シートディスペンサー用アタッチメントは、上述のシートディスペンサー100に着脱可能に取り付けられる。そして、シートディスペンサー用アタッチメントは、上述の傾斜部30を構成することができる。
【0058】
シートディスペンサー用アタッチメントの形態は、特に限定されないが、例えば、
図3に示すように、傾斜部30(傾斜面31および支持部32)を構成する傾斜片で構成することができる。なお、
図5に示す傾斜部30(第2実施形態における傾斜部30)は、
図3に示すシートディスペンサー用アタッチメント(第1実施形態における傾斜部30)の傾斜の向き反対にしただけである。すなわち、シートディスペンサー用アタッチメントが1つあれば、シートディスペンサー100の底面12に設けられる傾斜面31を、正面13から背面14に向かって下降する傾斜面31にしたり、背面14から正面13に向かって下降する傾斜面31にしたりすることができる。
【0059】
このような傾斜部30を構成するシートディスペンサー用アタッチメントは、従来の底面12が平らなシートディスペンサー100に取り付けることができる。また、このような従来のシートディスペンサー100に上述のシートディスペンサー用アタッチメントを着脱可能に取り付けることで、従来のシートディスペンサーをシートSTの形態や種類に応じて、シートSTの取出し性に優れるものにすることができる。
【0060】
このように、本実施形態に係るシートディスペンサー用アタッチメントを用いることにより、上述した本実施形態のシートディスペンサー100のような専用品を用いなくても、シートSTの取出し性に優れるシートディスペンサー100を提供することができる。そのため、本実施形態に係るシートディスペンサー用アタッチメントは、シートディスペンサー100の汎用性を高めることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明について、さらに実施例を用いて具体的に説明する。実施例、比較例の評価は、以下の試験により行った。
【0062】
[シートディスペンサー(試験体)]
試験体として、シートディスペンサー100を用意した。シートディスペンサー100の寸法は、左右方向(X方向)の長さを約238mm、前後方向(Y方向)の長さを約90mm、上下方向(Z方向)の高さを約140mmとした。また、取出部20の寸法は、左右方向(X方向)の長さを約197mm、上下方向(Z方向)の幅が約20mmとした。さらに、取出部20と天面11との間隔は、約90mmとし、取出部20と底面12との間隔は、約50mmとした。
【0063】
[シート積層体]
シートディスペンサー100に1個のシート積層体SLを収容した。シート積層体SLは、200枚のシートST(シートSTがダブルタイプの場合は200組)が交互に折り畳まれてポップアップ式に(1枚または1組ずつ)引き出せるように積層されたシート積層体を用いた。また、シート積層体SLは、シート積層体SL(複数枚のシートST)の積層方向がシートディスペンサー100の前後方向(Y方向)になるようにシートディスペンサー100の本体部10に収容した。またシート積層体SLを構成するシートSTには、シングルタイプ(硬め)のペーパータオルとダブルタイプ(柔らかめ)のペーパータオルを用いた。シングルタイプのペーパータオルには、ペーパータオル(商品名「エコドライ」、大王製紙株式会社製、1プライ、寸法:縦約230mm、横220mm、坪量33g/m2、紙厚181μm、クラーク剛度縦10.3、横12.3)を用いた。ダブルタイプのペーパータオルには、ペーパータオル(商品名「スマートタイプダブル」、大王製紙株式会社製、2プライ、寸法:縦約230mm、横210mm、坪量16g/m2(1プライあたりの坪量)、紙厚139μm(2プライの紙厚)、クラーク剛度縦2.27、横1.72)を用いた。なお、坪量はJIS P8124に準拠し、紙厚はJIS P81218に準拠し、クラーク剛度はJIS P8143に準拠している。ここで、クラーク剛度は、数値が高いほどペーパータオルが硬めであることを示す。
【0064】
[引き出し性]
シートディスペンサー100の正面13の取出部20からシートSTを引き出したときの取出しやすさ(引き出し性)を評価した。引き出し性は、各実施例・比較例につき、シングルタイプのペーパータオルは200枚を、ダブルタイプのペーパータオルは200組を、乾いた手で1枚(1組)ずつ引き出した。評価基準は、以下のとおりである。
○:片手でストレスなく取り出せた
△:片手で取り出しづらい
×:取り出せない
【0065】
[保持性]
シートディスペンサー100内に収容されたペーパータオル(シートST)を最後まで1組ずつ取り出せるかを確認、評価した。保持性の確認、評価は、乾いた手で1組ずつ引き出した。評価基準は、以下のとおりである。評価は、○が良好であり、△および×は不良とした。
〇:最後にまとまって出てこない、または、1~3組まとまって出てきた
△:最後に4~8組まとまって出てきた
×:最後に9組以上まとまって出てきた、または、途中で3組以上まとまって出てきた。
【0066】
[実施例1]
試験体として、本体部10の底面12にシートディスペンサー用アタッチメント(傾斜部30)を配置したシートディスペンサー100を用いた(
図1~
図3参照)。傾斜部30は、正面13から背面14に向かって下降するように傾斜面31が傾斜するように配置した。傾斜部30(傾斜面31)の傾斜角度は、約17°とした。また、支持部32の上下方向(Z方向)の高さを約25mmとした。傾斜面31シート積層体SLとしてシングルタイプのペーパータオルをシートディスペンサー100の本体部10に収容した。この試験体について、引出し性および保持性を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例2]
シートディスペンサー用アタッチメントとして、背面14から正面13に向かって下降するように傾斜面31が傾斜する傾斜部30を配置し、シート積層体SLとしてダブルタイプのペーパータオルを収容した以外は、実施例1と同様に試験体を用意し(
図1、
図4、
図5参照)、評価した。結果を表1に示す。
【0068】
[比較例1]
従来の底面12が平らなシートディスペンサー100を用い、シートディスペンサー用アタッチメント(傾斜部30)を配置しなかった以外は、実施例1と同様に、試験体を用意し、評価した(
図9参照)。結果を表1に示す。
【0069】
[比較例2]
従来の底面12が平らなシートディスペンサー100を用い、シートディスペンサー用アタッチメント(傾斜部30)を配置しなかった以外は、実施例2と同様に、試験体を用意し、評価した(
図10参照)。結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
表1より、本体部10の底面12にシートディスペンサー用アタッチメント(傾斜部30)を配置したシートディスペンサー100は、本体部10に収容されるシート積層体SL(ペーパータオル)がシングルタイプ(硬め)の場合、およびダブルタイプ(柔らかめ)の場合のいずれも、引出し性、保持性がともに〇(良好)であった(実施例1、2)。
【0072】
一方、本体部10の底面12にシートディスペンサー用アタッチメント(傾斜部30)を配置しなかったシートディスペンサー100は、本体部10に収容されるシート積層体SL(ペーパータオル)がシングルタイプ(硬め)の場合は、引出し性が×(不良)であり、ダブルタイプ(柔らか目)の場合は、保持性が×(不良)であった(比較例1、2)。
【0073】
これらの結果から、シートディスペンサーの本体部の底面に、底面の一部が前後方向に傾斜してなる傾斜部を設けることにより、シートの取出し性に優れるシートディスペンサーが得られることが判った。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 シートディスペンサー
ST シート
SL シート積層体
10 本体部
11 天面
12 底面
13 正面
14 背面
15 側面
16 側面
20 取出部
30 傾斜部(シートディスペンサー用アタッチメント)
31 傾斜面
32 支持部
40 角度可変部