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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】ワニスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 61/06 20060101AFI20220422BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20220422BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220422BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20220422BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20220422BHJP
   C09D 161/06 20060101ALI20220422BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20220422BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20220422BHJP
   C09J 161/06 20060101ALI20220422BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20220422BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20220422BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
C08L61/06
C08L79/08 Z
C08L63/00
C08G59/40
C09D179/08 Z
C09D161/06
C09D163/00
C09J179/08 Z
C09J161/06
C09J163/00
C09K3/10 L
C09K3/10 Z
H05K1/03 610N
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018153425
(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公開番号】P2020026509
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501044367
【氏名又は名称】株式会社プリンテック
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100116241
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 一郎
(72)【発明者】
【氏名】菊地 重信
(72)【発明者】
【氏名】秋本 真也
(72)【発明者】
【氏名】川崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】川口 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】牧野 繁男
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-044208(JP,A)
【文献】特開平01-266124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08G,C09D,C09J,H05K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)により表される(A)ポリマレイミド化合物と、
【化1】
(前記式(1)において、n1は0以上10以下の整数であり、X1はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基、下記式(2)で表される基、「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子または単結合であり、R1はそれぞれ独立に炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、aはそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、bはそれぞれ独立に0以上3以下の整数である。)
【化2】
(前記式(2)において、Yは芳香環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、n2は1~3の整数である。)
(B)フェノール樹脂とを含む樹脂混合物を溶融して得られた樹脂組成物を、沸点が120℃以下かつ誘電率が10~30の溶剤に溶解させたワニスであって、
前記樹脂混合物に含まれる前記式(1)により表される(A)ポリマレイミド化合物の繰り返し単位の数n1の平均値が0.01以上5以下であるワニス。
【請求項2】
前記(B)フェノール樹脂が、分子中に少なくとも二つ以上のOH基および少なくとも一つのナフタレン骨格を有する化合物を含有する請求項1に記載のワニス
【請求項3】
前記樹脂混合物が、さらに(C)エポキシ樹脂を含んでいる、請求項1に記載のワニス
【請求項4】
前記(C)エポキシ樹脂が、分子中に二つ以上のグリシジル基を有する、請求項3に記載のワニス
【請求項5】
前記樹脂混合物100質量部における、式(3)により表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量が0~10質量部である、請求項4に記載のワニス
【化3】
(前記式(3)中、mは0~10の整数を表す。)
【請求項6】
式(1)により表される(A)ポリマレイミド化合物と、
【化4】
(前記式(1)において、n1は0以上10以下の整数であり、X1が「-CH2-」で表される基であり、 1 はそれぞれ独立に炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、a=0、b=0である。)
(B)フェノール樹脂と、
(C)分子中に二つ以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、からなり、前記樹脂混合物に含まれる前記式(1)により表される(A)ポリマレイミド化合物の繰り返し単位の数n1の平均値が0.01以上5以下である樹脂混合物を溶融して得られた樹脂組成物を、沸点が120℃以下かつ誘電率が10~30の溶剤に溶解させたワニスであって
前記樹脂混合物中における前記(B)フェノール樹脂の含有量が、前記(A)ポリマレイミド化合物100質量部に対して、5~100質量部であり、
前記樹脂混合物中における前記(C)エポキシ樹脂の含有量が、前記(A)ポリマレイミド化合物100質量部に対して、10~300質量部であるワニス
【請求項7】
プリント配線基板用である請求項1に記載のワニス
【請求項8】
請求項1に記載のワニスを含有する接着剤。
【請求項9】
請求項1に記載のワニスを含有する封止剤。
【請求項10】
請求項1に記載のワニスを含有する塗料。
【請求項11】
請求項1に記載のワニスを用いて製造された積層板。
【請求項12】
請求項1に記載のワニスを用いて製造されたプリント配線基板。
【請求項13】
請求項1に記載のワニスを硬化させてなる成形品。
【請求項14】
請求項1に記載の樹脂混合物を溶融混合し、溶融して得られた樹脂組成物を沸点が120℃以下かつ誘電率が10~30の溶剤に溶解させたワニスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子・電気部品において、高耐熱性が要求される積層板、プリント配線基板、接着剤、封止剤、塗料および成形品等として用いられる、メチルエチルケトン等の低沸点溶剤への溶解性が良い樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子材料分野における耐熱樹脂として、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている。これら熱硬化性樹脂は、その用途ならび特性によって使い分けられている。この中でも特にポリイミド樹脂は、耐熱性及び耐湿熱性(吸湿後の耐熱性)に優れていることから、高い耐熱性を要する用途に広く使用されている。また、エポキシ樹脂や芳香族ジアミン等の他の樹脂とポリイミド樹脂との組み合わせによって性能が改良された変性ポリイミド樹脂も使用されている。
【0003】
近年、半導体基板分野では、基板上へ半導体チップを直接実装する実装方法が普及してきている。このため、半導体に使用される材料には、実装工程における高温処理等に耐えられる高い耐熱性が要求される。エポキシ樹脂は半導体材料として汎用的に使用されており、耐熱性向上の要求に対応するための検討がなされ、耐熱性に優れた樹脂が提案されている。
【0004】
例えば、高耐熱性が要求される半導体基板用として、マレイミドと特定のフェノール樹脂、特定のエポキシ樹脂、特定の化合物とを反応させた変性ポリイミド樹脂組成物が提案されている(特許文献1および2)。しかし、これら変性ポリイミド樹脂組成物は、汎用的な低沸点溶剤(低沸点有機溶剤)への溶解性が悪く、また、溶剤に溶解したワニスの安定性が悪く、保存中に樹脂成分が析出する問題がある。
低沸点溶剤であるメチルエチルケトンに可溶な樹脂組成物として、ポリマレイミド化合物、フェノール樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および他のエポキシ樹脂を溶融させた変性ポリイミド樹脂組成物が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-315705号公報
【文献】特開2003- 73459号公報
【文献】特開2017-101152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載の変性ポリイミド樹脂組成物は、メチルエチルケトンへの溶解性が溶融温度に大きく影響される。このため、メチルエチルケトンへの溶解性が良好な変性ポリイミド樹脂組成物を得るためには、溶融時の温度制御を厳密に制御する必要があり、生産性が悪いという問題があった。更に、メチルエチルケトンへの溶解性を向上させる為に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を必須成分として用いることから、樹脂組成物の硬化物の耐熱性が低下する問題も含まれていた。
そこで、本発明は、樹脂組成物の低沸点溶剤への溶解性に対する溶融温度の影響が小さく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有することなく、広い溶融温度の範囲において溶解性が良好な、生産性に優れる高耐熱性の樹脂組成物の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]式(1)により表される(A)ポリマレイミド化合物と、
【化1】
(前記式(1)において、n1は0以上10以下の整数であり、X1はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基、下記式(2)で表される基、「-SO2-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子または単結合であり、R1はそれぞれ独立に炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、aはそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、bはそれぞれ独立に0以上3以下の整数である。)
【化2】
(前記式(2)において、Yは芳香環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、n2は1~3の整数である。)
(B)フェノール樹脂とを含む樹脂混合物を溶融して得られた樹脂組成物を、沸点が120℃以下かつ誘電率が10~30の溶剤に溶解させたワニスであって、前記樹脂混合物に含まれる前記式(1)により表される(A)ポリマレイミド化合物の繰り返し単位の数n1の平均値が0.01以上5以下であるワニス
【0008】
[2]前記(B)フェノール樹脂が、分子中に少なくとも二つ以上のOH基および少なくとも一つのナフタレン骨格を有する化合物を含有する[1]に記載のワニス
[3]前記樹脂混合物が、さらに(C)エポキシ樹脂を含んでいる[1]に記載のワニス
[4]前記(C)エポキシ樹脂が、分子中に二つ以上のグリシジル基を有する[3]に記載のワニス
[5]前記樹脂混合物100質量部中における、式(3)により表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量が0~10質量部である[4]に記載のワニス
【化3】
(前記式(3)中、mは0~10の整数を表す。)
【0009】
[6]式(1)により表される(A)ポリマレイミド化合物と、
【化4】
(前記式(1)において、n1は0以上10以下の整数であり、X1が「-CH2-」で表される基であり、 1 はそれぞれ独立に炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、a=0、b=0である。)
(B)フェノール樹脂と、(C)分子中に二つ以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、からなり、前記樹脂混合物に含まれる前記式(1)により表される(A)ポリマレイミド化合物の繰り返し単位の数n1の平均値が0.01以上5以下である樹脂混合物を溶融して得られた樹脂組成物を、沸点が120℃以下かつ誘電率が10~30の溶剤に溶解させたワニスであって、前記樹脂混合物中における前記(B)フェノール樹脂の含有量が、前記(A)ポリマレイミド化合物100質量部に対して、5~100質量部であり、前記樹脂混合物中における前記(C)エポキシ樹脂の含有量が、前記(A)ポリマレイミド化合物100質量部に対して、10~300質量部であるワニス
【0010】
[7]プリント配線基板用である[1]に記載のワニス
【0011】
[1]に記載のワニスを含有する接着剤、封止剤および塗料。
[1]に記載のワニスを用いて製造された積層板およびプリント配線基板。
[1]に記載のワニスを硬化させてなる成形品。
【0012】
[1]に記載の樹脂混合物を溶融混合し、溶融して得られた樹脂組成物を沸点が120℃以下かつ誘電率が10~30の溶剤に溶解させたワニスの製造方法
【発明の効果】
【0013】
式(1)により表される繰り返し単位の数n1の平均値が0.01以上5以下である(A)ポリマレイミド化合物と、(B)フェノール樹脂とを含む樹脂混合物を用いることにより、溶融温度によらず低沸点溶剤への溶解性の良い樹脂組成物となる。したがって、溶融混合において許容される溶融温度の範囲が広く生産性の良好な、低沸点溶剤への溶解性が良い樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、式(1)により表される(A)ポリマレイミド化合物と(B)フェノール樹脂とを含む樹脂混合物を溶融して得られた樹脂組成物であって、前記樹脂混合物に含まれる前記式(1)により表される(A)ポリマレイミド化合物の繰り返し単位の数nの平均値が0.01以上5以下である。
【化5】

(前記式(1)において、nは0以上10以下の整数であり、Xはそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基、下記式(2)で表される基、「-SO-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子または単結合であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、aはそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、bはそれぞれ独立に0以上3以下の整数である。)
【化6】

(前記式(2)において、Yは芳香環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、nは1~3の整数である。)
本発明において、(A)ポリマレイミド化合物と(B)フェノール樹脂とを溶融混合する以前のものを「樹脂混合物」といい、溶融混合した後のものを「樹脂組成物」という。
【0015】
(A)ポリマレイミド化合物
樹脂混合物は、式(1)においてカッコで囲まれた繰り返し単位(構造部位)を有するポリマレイミド化合物を、繰り返し単位の数nの平均値が0.01以上5以下となる割合で含有している。すなわち、樹脂混合物に含有される式(1)で表されるポリマレイミド化合物は、nの平均値が0.01以上5以下のポリマレイミド化合物である。このため、樹脂混合物を溶融する溶融温度によらず、低沸点溶剤への溶解性が良好な樹脂組成物となる。本発明において、「nの平均値が0.01以上5以下のポリマレイミド化合物」とは、一種または二種以上からなるポリマレイミド化合物を意味する。
【0016】
樹脂混合物100質量部中における式(1)で表されるポリマレイミド化合物の含有量は、20~80質量部が好ましく、25~75質量部がより好ましい。なお、本発明において、数値範囲「A~B」は「A以上B以下」を意義する。
【0017】
式(1)で表されるポリマレイミド化合物は、繰り返し単位の数nの平均値が0.01以上5以下の範囲内となるよう、一種の化合物または二種以上の化合物の混合物として用いられる。
【0018】
式(1)で示されるポリマレイミド化合物は、Xが-CH-であり、aが0であり、bが0であるポリマレイミド化合物が好ましい。このような市販のポリマレイミド化合物としては、たとえば、BMI-2000、BMI-2300(製品名、大和化成工業(株)製、フェニレンマレイミド)が挙げられる。
【0019】
(B)フェノール樹脂
本発明で用いられるフェノール樹脂(B)としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、ビフェニルアラルキル型ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等の多価フェノール化合物が挙げられる。特に、分子中に少なくとも二つ以上のOH基および少なくとも一つのナフタレン骨格を有する化合物が好ましく、その例として、下記一般式(4)で表されるフェノール化合物からなるものを挙げることができる。
【0020】
【化7】

(式中、Ar、Arは、それぞれ下記一般式(5)で示されるフェニレン基または下記一般式(6)で示されるナフタレン基であり、Arが複数ある場合、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。Xは直接結合、炭素数1~4のアルキレン、芳香環を含む炭素数8~15のアルキレン、O、SまたはSOのいずれかを示す。oは0以上の整数である。但しoが0の場合は、Arは少なくとも1個のヒドロキシ基(水酸基)を有するものであり、Ar、ArおよびXのいずれか一つはナフタレン基である。)
アルキレン基としてはメチレン等が挙げられ、芳香環を含む炭素数8~15のアルキレンとしてはフェニレン、ナフタレン、ビフェニレン構造を含むもの等が挙げられる。
【0021】
【化8】
【化9】

(式(5)および(6)において、Rは、それぞれ独立に炭化水素基または水酸基であり、cは、それぞれ独立に0~3の整数である。)
【0022】
式(5)におけるアルキレン基としてはメチレン等が挙げられ、芳香環を含む炭素数8~15のアルキレンとしてはフェニレン、ナフタレン、ビフェニレン構造を含むもの等が挙げられる。
【0023】
このようなフェノール樹脂としては、1-ナフトール、2-ナフトール、1,4ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレンなどのヒドロキシナフタレン類、これらのヒドロキシナフタレン類とフェノール、クレゾール、レゾルシノール等のフェノール類との混合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、グリオキザール、アルカンジアール等のアルデヒド類との反応生成物であるノボラック樹脂、及び上記ヒドロキシナフタレン類とアラルキルアルコール誘導体またはアラルキルハライド誘導体との反応性生物であるアラルキル樹脂等が挙げられる。また上記のアラルキルアルコール誘導体としては、p-キシリレングリコール、p-キシリレングリコールジメチルエーテル類等が、アラルキルハイドライド誘導体としてはp-キシリレンジクロライド等が好ましい。
【0024】
これら化合物の中では1-ナフトール、2-ナフトールおよびそのアラルキル樹脂が特に好ましい。これら化合物は一種または二種以上組み合わせて用いることができる。樹脂混合物中の(A)ポリマレイミド化合物100質量部に対する(B)フェノール樹脂の含有量は、5~100質量部が好ましく、10~60質量部がより好ましい。
【0025】
(C)エポキシ樹脂
本発明の樹脂組成物は、樹脂混合物中にエポキシ樹脂をさらに含有していても良い。樹脂混合物100質量部中のエポキシ樹脂の含有量は、10~80質量部が好ましく、20~70質量部がより好ましい。また、樹脂混合物中におけるエポキシ樹脂の含有量は、(A)ポリマレイミド化合物100質量部に対して、10~300質量部が好ましく、20~280質量部がより好ましく、30~250質量部がさらに好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する化合物であればよいが、樹脂組成物の硬化物の耐熱性を良好にする観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン環を含むエポキシ樹脂、式(7)により表されるエポキシ基を三つ有する化合物等が好ましい。式(7)により表される市販のエポキシ樹脂としては、VG3101L(製品名、(株)プリンテック製、高耐熱3官能エポキシ樹脂)が挙げられる。
【化10】
【0027】
上記以外のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニロール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらエポキシ樹脂は、一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
下記の式(3)で示されるビスフェノールA型エポキシ樹脂には、メチルエチルケトン等の低沸点溶剤に対する樹脂組成物の溶解性を向上させる効果がある。しかし、樹脂混合物中におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量が多くなると、樹脂組成物の硬化物の耐熱性が低下する傾向にある。本実施形態の樹脂組成物は、式(1)における繰り返し単位の数nの平均値が0.01以上5以下である(A)ポリマレイミド化合物を用いることにより、メチルエチルケトンへの溶解性が良好になる。このため、樹脂混合物中におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量を低くすることができる。したがって、例えば、樹脂混合物100質量部中のビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量が0~10質量部であっても、メチルエチルケトンへの溶解性の良好な樹脂組成物が得られる。
【化11】
【0029】
樹脂組成物の硬化物の耐熱性を良好にする観点から、樹脂混合物はビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有しないことが好ましい。ここで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有しないとは、実質的に含有しないことすなわち樹脂混合物の性質に影響を及ぼす量のビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有しないことをいう。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリマレイミド化合物と、(B)フェノール樹脂と、(C)分子中に二つ以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、からなる樹脂混合物を溶融して得られた樹脂組成物として実施することができる。この場合、樹脂混合物中における(B)フェノール樹脂の含有量は、(A)ポリマレイミド化合物100質量部に対して、5~100質量部であり、10~70質量部が好ましく、25~45質量部がより好ましい。樹脂混合物中における前記エポキシ樹脂の含有量は、(A)ポリマレイミド化合物100質量部に対して、10~300質量部であり、20~280質量部が好ましく、30~250質量部がより好ましい。
【0031】
本発明に係る樹脂組成物および溶融混合前の樹脂混合物は、上記(A)(B)および(C)以外の成分を含有しても良い。
【0032】
本発明の樹脂組成物を用いて、硬化させて成形品とする基材を得るため、有機または無機の充填剤を用いることができる。充填剤の例として、シリカ、珪藻土、アルミナ、塩化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化アンチモン、フェライト類などの酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維などの硫酸塩;ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、ゾノトライト)、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルンなどのケイ酸塩;窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化珪素などの窒化物;カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末などの炭素類;その他各種金属粉、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミボレート、硫化モリブデン、炭化珪素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、セラミック粉などを挙げることができる。
【0033】
充填剤の形状としては球形または燐片が好ましく、これらを単独で用いても二種以上を併用してもよい。また必要に応じて分子中に二個以上の異なる反応基(一つは無機材料と化学反応する反応基で、もう一つは有機材料と化学反応する反応基)をもつシランカップリング剤を併用することもできる。
【0034】
有機または無機の充填剤を用いる場合、その含有量は、樹脂組成物100質量部に対して5.0~250質量部が好ましい。
【0035】
(D)硬化促進剤
本発明に係る樹脂組成物を用いる際に、硬化促進剤を添加使用してもよい。硬化促進剤を添加する時期としては、樹脂組成物が溶剤に溶解したワニスとして用いる際、プリプレグ化の際、または基材、積層板を製造する際などが挙げられる。
【0036】
硬化促進剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタイミダゾール等のイミダゾール類;トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン等のアミン類;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩類;1,8-ジアザービシクロ(5,4,0)ウンデセン-7及びその誘導体;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オレイン酸錫、ナフテン酸マンガン、テフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等の有機金属塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は単独で用いても二種以上を併用してもよく、また必要に応じて有機過酸化物やアゾ化合物等を併用することもできる。
【0037】
これら硬化促進剤の含有量は、ワニスまたはプリプレグの所望するゲル化時間が得られるように配合するのが望ましいが、一般に樹脂組成物に含有される樹脂成分の合計100質量部に対し、0.01~5.00質量部の範囲で用いられる。
【0038】
(溶融混合工程)
樹脂組成物は、上述した式(1)により表される(A)ポリマレイミド化合物と(B)フェノール樹脂とを含有する樹脂混合物を加熱して、溶融状態で混合する溶融混合工程によって製造される。溶融混合工程には、通常の混合手段を用いることができる。混合手段としては、ニーダー、二軸混練機などが好ましい。溶融混合時の温度は樹脂混合物が溶融する温度以上400℃以下とすればよいが、130℃以上230℃以下がより好ましく、150℃以上210℃以下がさらに好ましい。なお、上述したとおり、式(1)における繰り返し単位の数nの平均値が0.01以上5以下である(A)ポリマレイミド化合物を用いているから、溶融混合工程における広い溶融温度範囲において、低沸点溶剤に対する溶解性の良好な樹脂組成物が得られる。溶融混合工程は通常0.1~10分間程度行われる。
【0039】
溶融混合工程の後、自然冷却もしくは強制冷却によって冷却して本発明の樹脂組成物を得る。
冷却方法としては公知の方法から適宜選択して行うことができる。例えば、5~100℃の環境下で自然冷却する方法や、-20~80℃の冷媒を用いて強制冷却する方法を採用することができる。また、溶融混合後恒温装置内で30~300℃の環境下に置いてから冷却する方法を採用してもよい。
【0040】
冷却後、得られた樹脂組成物を、粉砕してドライ状態(乾燥)で保存し、固体状の樹脂組成物として後の工程に使用することができる。
【0041】
溶融混合工程において、樹脂混合物に含まれる(A)ポリマレイミド化合物の少なくとも一部が、(B)フェノール樹脂および/または(C)エポキシ樹脂と反応することにより変性して、低沸点溶剤に対する溶解性が良好な樹脂組成物を得ることができる。
【0042】
樹脂組成物には、必要に応じて難燃剤を添加することができる。難燃剤としてはブロム化エポキシ樹脂のようなブロム化合物および縮合燐酸エステルのようなリン化合物等の有機難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、スズ化合物およびアンチモン化合物等の無機難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は単独で用いても二種以上を併用しても良い。
【0043】
難燃剤の含有量は、樹脂組成物の耐熱性、耐湿熱性を損なわずに十分な難燃性(例えばUL94規格におけるV-0条件合格)を持つために必要な量であることが望ましい。有機難燃剤の場合、一般的には、樹脂組成物中における有機難燃剤を含めた樹脂成分の合計100質量部に対して1~20質量部の範囲で、無機難燃剤の場合、樹脂成分の合計100質量部に対して10~300質量部の範囲で用いられることが好ましい。
【0044】
本発明に係る樹脂組成物を用いるにあたって、用途に応じて他の添加剤を加えることができる。他の添加剤の例としては、各種シリコーンオイル、熱可塑性樹脂、NBRなどの合成ゴム類、レベリング剤が挙げられる。他の添加剤は、樹脂組成物中における他の添加剤と樹脂成分との合計100質量部中の上記他添加剤の含有量が0.0001~5質量部となる配合量の範囲で用いられることが好ましい。
【0045】
(ワニス)
本発明に係る樹脂組成物のワニスは、上述した製造方法によって得られた樹脂組成物を、沸点が120℃以下かつ誘電率が10~30の溶剤に溶解させたものである。
沸点が120℃以下かつ誘電率が10~30の溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノールなどのアルコール系溶剤などが挙げられる。操作性などを考慮すると、例示した溶剤のうちケトン系溶剤が好ましく用いられる。これらの溶剤は単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、上に例示したもの以外の溶剤を含有していてもよい。
【0046】
ワニス100質量部中の樹脂組成物の含有量は、通常40~80質量部であり、好ましくは50~70質量部である。ワニスは、樹脂組成物を溶剤中に溶解させて得ることができる。加熱下で溶解させる場合、特段長時間を要するものではない。溶剤の沸点にもよるが、溶解させる際の一般的な条件は、温度が50~200℃程度であり、時間が0.1~24時間程度である。
【0047】
プリプレグは、上記ワニスを基材に塗布または含浸し、次いで乾燥して溶剤を除去することにより製造することができる。
基材としてはガラス不織布、ガラスクロス、炭素繊維布、有機繊維布、紙などの従来プリプレグに用いられる公知の基材を使用することができる。
【0048】
上記ワニスを上記基材に塗布または含浸した後、乾燥工程を経てプリプレグを製造するが、塗布方法、含浸方法、乾燥方法は特に限定するものではなく、従来公知の方法を採用することができる。乾燥条件については、使用する溶剤の沸点により適宜決められるが、あまり高温は好ましくない。プリプレグ中に残存する溶剤の量が3質量%以下となるように乾燥させることが望ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物はプリント配線基板用に好適であり、また樹脂組成物を硬化させてなる成形品として本発明を実施することができる。成形品としては、樹脂組成物のみを硬化させてなる硬化物や、他の原料と複合した複合材、積層体等が挙げられる。
【0050】
複合材および積層体は、プリプレグ1枚を熱プレスなどで加圧下に加熱し硬化させるか、プリプレグ複数枚を積層して加圧下に加熱して一体化させることによって得ることができる。複合材を製造する時の加熱加圧条件は特に限定されるものではないが、加熱温度が100~300℃、好ましくは150~250℃であり、圧力が10~100kg/cmであり、加熱加圧時間が10~300分程度である。
【0051】
積層材の片面または両面に、金属箔または金属板を積層一体化させて多層プリント配線板用などに使用可能な積層体とすることができる。このような積層体は、1枚のプリプレグの片面もしくは両面に金属箔もしくは金属板を積層し熱プレスするか、または複数枚積層されたプリプレグの最外層となる片面または両面に金属箔または金属板を積層し熱プレスすることにより、プリプレグを加熱硬化させ一体化させることにより製造することができる。
【0052】
金属箔または金属板としては、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス等が使用できる。例えば、金属箔として銅を用いた積層板が銅張積層板(Copper Clad Laminate、CCL)である。加熱硬化させる際の条件は、複合材を製造する際の条件と同様の条件が好ましい。また、内層コア材を用いて多層プリント配線板用積層板としてもよい。
【0053】
本発明は、上述した樹脂組成物を含有する接着剤、封止剤および塗料として実施することもできる。
【実施例
【0054】
以下、実施例を示して本発明を説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。実施例および比較例において用いた試験方法および原料は以下のとおりである。
【0055】
1.試験方法
(1)溶剤溶解性
測定試料(樹脂組成物)60質量部とメチルエチルケトン(溶剤)40質量部とを室温条件下で混合し、超音波振動を加えて1時間溶解させた後における溶解状態を、以下の基準を用いて目視により評価した。
〇:室温で透明の液体
×:室温で混濁状態の液体または半液体状態
【0056】
(2)ゲルタイム
ゲルタイム測定機SG-70にて測定した。
【0057】
(3)ガラス転移点(Tg)
樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物を所定の大きさにカット(切り出)して、ガラス転移点測定のサンプルとした。以下の条件にてサンプルのガラス転移温度(℃)を測定した。
測定機器 :リガク社製 Thermo plus TMA8310
サンプル寸法 :幅(縦)5mm×長さ(横)5mm×高さ4mm
雰囲気 :N
測定温度 :30~350℃
昇温速度 :10℃/min.
測定モ-ド :圧縮
【0058】
(4)熱重量変化
JIS K7120に準じて、30℃から毎分10℃の速度で昇温し、質量が1%減となる温度(Td(1%))および5%減となる温度(Td(5%))を測定した。
(5)溶液安定性
樹脂組成物をメチルエチルケトンに溶解して得られた溶液を室温において放置し、所定時間経過した後(24時間経過後および7日間経過後)の溶解状態を以下の基準を用いて目視により評価した。
〇:透明の液体
△:濁りがある液体
×:液体に沈殿または不溶解物が認められる
【0059】
2.原料
(A)ポリマレイミド化合物
・BMI-1000(製品名、大和化成工業(株)製、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド)
・BMI-2300(製品名、大和化成工業(株)製、ポリフェニルメタンポリマレイミド):式(1)で示される化合物のnの平均値が0.01以上5以下であり、Xが-CH-で表される基であり、aが0であり、bが0であるポリマレイミド化合物。
【0060】
(B)フェノール樹脂
・SN485(製品名、新日鉄住金化学社製、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型フェノール樹脂)
(C)エポキシ樹脂
・JER1001(製品名、三菱化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
・VG3101L(製品名、(株)プリンテック製、高耐熱3官能エポキシ樹脂)
・NC3000H(製品名、日本化薬(株)製、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂)
(D)ベンゾオキサジン化合物
・BZO:(P-d型)ベンゾオキサジン(四国化成(株)製)
【0061】
(実施例1-6、比較例1)
表1~3に示す組成の原料を、ホットプレート上において、表1~表3に示す温度(150℃~210℃)で90秒間溶融混合して樹脂組成物を製造した。各樹脂組成物の溶剤溶解性および溶液安定性を測定した結果を表1~表3に示す。なお、表1~表3では各成分の含有量を質量部で示した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表1~表3に示す結果から、以下のことが分った。
比較例1から4のように、ポリマレイミド化合物として、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(BMI-1000)とフェノール樹脂(SN485)に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER1001)およびベンソオキサジン化合物(BZO)を加えた樹脂混合物を190℃で溶融混合することにより、溶剤溶解性および溶液安定性の良好な樹脂組成物が得られる。しかし、当該樹脂混合物を溶融混合する際の溶融温度が150℃および170℃では、常温でメチルエチルケトンに溶解する樹脂組成物が得られない。また、溶融温度が210℃ではメチルエチルケトンへの溶解性が低くなるとともに、溶液安定性も悪くなる。溶融温度210℃の場合に溶解性および溶液安定性が悪化したことは、溶融混合時に反応が進みすぎたためと考えられる。
【0066】
すなわち、(A)ポリマレイミド化合物として、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(BMI-1000)を用いると、樹脂組成物の溶剤溶解性および溶液安定性が溶融温度により大きな影響を受ける。このため、室温においてメチルエチルケトンに溶解する樹脂組成物を得るためには、溶融温度を190℃前後に維持する必要がある。このように、樹脂組成物の製造において許容される溶融温度の範囲が狭く厳密な温度管理を要することは、製造効率や生産コストの観点から好ましくない。
【0067】
対して、式(1)中の繰り返し単位の数nの平均値が0.01~5であるポリマレイミド化合物を含む実施例1~17の樹脂組成物は、樹脂混合物を150℃以上210℃以下で溶融することにより、溶剤溶解性および溶液安定性がいずれも良好になる。本発明の樹脂組成物は、常温でメチルエチルケトンに溶解する樹脂組成物を得るために許容される溶融温度の範囲が広い。したがって、樹脂混合物の溶融混合工程の溶融温度を厳密に管理する必要がなく、製造効率や生産コストの観点から好ましい。このため、メチルエチルケトンへの溶解性および溶液安定性が良好な樹脂組成物を容易かつ安定的に製造することができる。さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER1001)を用いることなく、常温でメチルエチルケトンに溶解する樹脂組成物を得ることができた。
【0068】
実施例7および9の樹脂組成物を硬化温度230℃で4時間加熱して硬化させて樹脂硬化物を作製した。各樹脂硬化物について、ゲルタイム(GT)、ガラス転移温度(Tg)および熱重量変化温度(Td(1%)、Td(5%))を測定した結果を表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
表4に示す結果から、実施例7および9の樹脂組成物により、ガラス転移温度(Tg)および熱重量変化温度(Td)が高く、耐熱性の良好な樹脂硬化物が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、低沸点溶剤への溶解性および保存安定性に優れた樹脂組成物であり、当該樹脂組成物は、耐熱性の良好な接着剤、封止剤、塗料、成形品、積層体およびプリント基板の原料として利用できる。