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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】バルブ部材及び蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
F02M25/08 E
F02M25/08 311G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018206580
(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公開番号】P2020070775
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】特許業務法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄一郎
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-292038(JP,A)
【文献】特開昭62-137474(JP,A)
【文献】実開昭57-102765(JP,U)
【文献】特開2015-083859(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035657(WO,A1)
【文献】実開昭60-179654(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F16K 1/36 - 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量制御弁(1)が有する弁座(28)に接近または離間する方向である移動方向に移動可能であり、流体の流れを遮断する、または前記流体を通過させるように駆動され、底壁部(40,70,90)にゴムシール部材(50,80)が一体に形成される有底のバルブ部材であって、
底面(45)から前記弁座側に突出する環状の凸部(41,71,72,73,91)を有する前記底壁部と、
前記底面に当接する平板状部(51,81)、前記平板状部において前記凸部と対応した位置に前記弁座側に突出して形成され閉弁時に前記弁座に当接する環状のリップ部(52,82)、を有する前記ゴムシール部材と、
を備え、
前記リップ部の突出先端は、当該バルブ部材の軸方向の断面が円弧状部(53,83)を形成し、
前記凸部の突出先端は、当該バルブ部材の軸方向の断面が前記リップ部の前記円弧状部の曲率半径より大きい曲率半径の円弧状部(42,74,92)を形成するバルブ部材。
【請求項2】
前記凸部は、前記凸部の前記突出先端の内側に連続する内側傾斜部(43)と、前記凸部の前記突出先端の外側に連続する外側傾斜部(44)と、を有し、
前記内側傾斜部と前記底面とのなす角度と、前記外側傾斜部と前記底面とのなす角度とは同じである請求項1に記載のバルブ部材。
【請求項3】
前記凸部の前記突出先端は、前記平板状部内に収まる突出高さに形成されている請求項1または請求項2に記載のバルブ部材。
【請求項4】
前記凸部(71,72,73)は、複数形成されている請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のバルブ部材。
【請求項5】
前記リップ部(82)の外縁には、前記閉弁時に前記リップ部の前記突出先端が前記弁座に押し付けられる方向に撓むように前記リップ部の外側から圧力を受ける受圧凹部(86)が形成されている請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載のバルブ部材。
【請求項6】
燃料タンク(11)と、
前記燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタ(12)と、
前記燃料タンクと前記キャニスタとをつなぐべーパ通路(16)に設けられ、請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の前記バルブ部材を有し、燃料タンク側流路(26)からキャニスタ側流路(27)へ蒸発燃料が通過しないように前記燃料タンク側流路と前記キャニスタ側流路とを遮断する、または蒸発燃料が通過するように前記燃料タンク側流路と前記キャニスタ側流路とを連通させる前記流量制御弁と、
を備える蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ部材及び蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンクの蒸発燃料(以下、ベーパとも言う)を回収し内燃機関の吸気系に供給可能な蒸発燃料処理装置が知られている。こうした蒸発燃料処理装置は、燃料タンクと、キャニスタと、燃料タンクとキャニスタとをつなぐベーパ通路に設けられる流量制御弁等を有している。流量制御弁は、車両の駐車中はベーパ通路を閉じ、給油中はベーパ通路を開ける等の動作をする。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の流量制御弁では、弁体のシート取着面上に、ゴムバルブシートが一体に成形されている。ゴムバルブシートは、平板状部と、平板状部の外周部より弁座側に向かって突出する環状シート部とを有している。一方、弁体のシート取着面には、環状シート部の形状に対して略相似形状をなす環状凸部が形成されている。環状シート部の突出先端と、環状凸部の突出先端は、ともにR形状をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-292038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の流量制御弁では、シール性向上のためにゴムバルブシート側の環状シート部のRを小さくした場合に、仮に、シート取着面側の環状凸部のRも小さいと、バルブ内部の応力が高くなり、環状凸部が環状シート部を突き破ってしまい使用中に破損する虞があるという問題が生じていた。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、耐久性を向上させることができるバルブ部材及び蒸発燃料処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバルブ部材は、流量制御弁(1)が有する弁座(28)に接近または離間する方向である移動方向に移動可能であり、流体の流れを遮断する、または流体を通過させるように駆動され、通過するように駆動され、底壁部(40,70,90)にゴムシール部材(50,80)が一体に形成される有底のバルブ部材である。
【0008】
底壁部は、底面(45)から弁座側に突出する環状の凸部(41,71,72,73,91)を有する。ゴムシール部材は、底壁部に当接する平板状部(51,81)、平板状部において凸部と対応した位置に弁座側に突出して形成され閉弁時に弁座に当接する環状のリップ部(52,82)、を有する。リップ部の突出先端は、バルブ部材の軸方向の断面が円弧状部(53,83)を形成する。凸部の突出先端は、バルブ部材の軸方向の断面がリップ部の円弧状部の曲率半径より大きい曲率半径の円弧状部(42,74,92)を形成する。
【0009】
本発明の構成によれば、底壁部に形成される凸部と、ゴムシール部材に形成されるリップ部とが位置対応しており、凸部の突出先端は、リップ部の突出先端の円弧状部の曲率半径R1より大きい曲率半径R2の円弧状部を形成する。すなわち、リップ部の突出先端に対して、凸部の突出先端の方が、尖り具合が緩やかになっている。
【0010】
通常、底壁部を含むバルブ部材の本体部は樹脂や金属材料で形成されており、ゴムシール部材より硬い。このため、閉弁時に、底壁部とゴムシール部材との間に生じる内部応力が大きいと、凸部がリップ部を突き破ってしまう虞がある。本構成では、リップ部の位置に対応する凸部の突出先端の形状を緩いR形状または平面とすることで、底壁部とゴムシール部材との間に生じる内部応力を小さくでき、凸部がリップ部を突き破って破損するといったことを回避でき、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】蒸発燃料処理装置の構成の概略を示す図である。
図2】第1実施形態による流量制御弁を模式的に示す断面図である。
図3】第1実施形態によるバルブ部材の底壁部周辺を拡大して示す断面図である。
図4】第2実施形態によるバルブ部材の底壁部周辺を拡大して示す断面図である。
図5】第3実施形態によるバルブ部材の底壁部周辺を拡大して示す断面図である。
図6】第4実施形態によるバルブ部材の底壁部周辺を拡大して示す断面図である。
図7】第5実施形態によるバルブ部材の底壁部周辺を拡大して示す断面図である。
図8】その他の実施形態によるバルブ部材の底壁部周辺を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図4に示す平面部62を有する第2実施形態と、他の実施形態のうち図8に示す平面部95,96,97を有する実施形態は、本発明の参考実施形態にあたる。
〈第1実施形態〉
[構成]
第1実施形態の構成について、図1図3を参照しつつ説明する。図1に示すように、蒸発燃料処理装置101は、流量制御弁1、燃料タンク11、キャニスタ12、パージ弁13、及びECU14などを備えている。
【0013】
燃料タンク11は、車両に搭載され、内燃機関18に供給される燃料を貯留する。キャニスタ12は、燃料タンク11内で発生する蒸発燃料を回収する不図示の吸着材を有する。キャニスタ12は、大気通路15を介して取り入れた空気を、ベーパ通路16を通ってキャニスタ12の吸着材に吸着された蒸発燃料と共に、パージ通路17を介して内燃機関18の吸気通路19へと送るパージ処理を行う。ベーパ通路16は、燃料タンク11とキャニスタ12をつなぐ通路であり、このベーパ通路16に流量制御弁1が設けられている。また、パージ通路17にはパージ弁13が設けられている。パージ弁13の開度に応じて、キャニスタ12から吸気通路19にパージされる蒸発燃料の量が調整される。
【0014】
ここで、例えば車両の駐車中では、流量制御弁1は、閉弁状態が維持されるため、燃料タンク11の蒸発燃料がキャニスタ12内に流入することはない。また、例えばタンクキャップが開けられ、燃料タンク11への給油が開始され、給油が終了するまでの間は、流量制御弁1は、開弁状態が維持される。このため、給油の際に、燃料タンク11内の蒸発燃料がベーパ通路16を通ってキャニスタ12内の吸着材に吸着される。このように、流量制御弁1は、燃料タンク11とキャニスタ12とを連通させるかどうかを制御するものである。ECU14は、流量制御弁1やパージ弁13と電気的に接続しており、各弁1,13の開閉動作を制御する。
【0015】
次に、流量制御弁1の構成について、図2を参照しつつ説明する。図2中の矢印付きの曲線は、蒸発燃料の移動経路の一例を示している。なお、図2は、切断面の後ろに見える線について省略した切断端面図である。図2において、後述するバルブ部材22が開状態へ、または閉状態へと移動する「移動方向」を符号Fとして図示している。流量制御弁1は、ハウジング21、バルブ部材22、スプリング23、モータ24、モータシャフト25等を備えている。ハウジング21は、略円筒状の形状をなし、燃料タンク側流路26からキャニスタ側流路27へと蒸発燃料が流れる流路を有している。ハウジング21において、燃料タンク側流路口の縁部から、バルブ部材22の移動方向と直交する方向に延びる平面は、弁座28という。
【0016】
バルブ部材22は、キャニスタ側流路27へ蒸発燃料が通過しないように燃料タンク側流路26とキャニスタ側流路27とを遮断する、またはキャニスタ側流路27へ蒸発燃料が通過するように燃料タンク側流路26とキャニスタ側流路27とを連通させるための部材である。
【0017】
バルブ部材22は、有底の小径円筒部材31と、有底の大径円筒部材32とを有している。小径円筒部材31と大径円筒部材32とは、中心軸を共通の中心軸としている。小径円筒部材31は、大径円筒部材32に対してモータ側に位置しており、一体に設けられている。小径円筒部材31の底部と、大径円筒部材32の底部との間には、スプリング23が設けられている。なお、図2は、バルブ部材22が弁座28に対して最も離間している開状態を示している。
【0018】
小径円筒部材31の内周には、ねじ溝33が形成されている。小径円筒部材31内には、モータシャフト25が挿入されており、モータシャフト25の外周に形成されたねじ部と小径円筒部材31のねじ溝33とがねじ結合している。
【0019】
ハウジング21の底壁部34には、モータシャフト25の挿入孔30を形成する円筒状の回転防止凸部35が、ハウジング21内部側へ突出して形成されている。回転防止凸部35のバルブ部材22側からは、小径円筒部材31の一部が挿入されている。回転防止凸部35の内周面と小径円筒部材31の外周面との間には所定の隙間が形成される。回転防止凸部35のモータ側からは、モータシャフト25が挿入されている。すなわち、モータシャフト25は、ハウジング21を貫通して設けられている。モータシャフト25は、モータ24の回転力をバルブ部材22に動力伝達可能にモータ24とバルブ部材22とを連結する。
【0020】
モータ24は、ハウジング21の底壁部34に接した状態で、ハウジング21の外側に設けられている。モータ駆動により、モータシャフト25が特定の方向に回転することで、バルブ部材22が弁座28に接近する閉方向、または弁座28から離間する開方向に動く。このようなバルブ部材22の往復移動によって、バルブ部材22の後述するゴムシール部材50が、弁座28に当接または離間するようになっている。
【0021】
回転防止凸部35内には、円環状をなすシール部材用受部36が、径内方向へ突出して形成されている。ゴム製のOリング39は、モータ24とシール部材用受部36との間に設けられており、ハウジング21から蒸発燃料が漏れないようにモータシャフト25の貫通部位をシールする。
【0022】
次に、バルブ部材22の底壁部周辺の構成について、図3を参照しつつ説明する。図3は、図2において二点鎖線で囲んだ部分に対応し、バルブ部材22の底壁部周辺を拡大して示す図である。
【0023】
図3に示すように、大径円筒部材32は、底壁部40と、ゴムシール部材50とを有している。底壁部40を含む大径円筒部材32の本体は、例えば金属や樹脂などで形成されている。底壁部40は、弁座28側に突出する円環状の凸部41を有している。凸部41は、円弧状部42と、内側傾斜部43と、外側傾斜部44とを有している。移動方向と平行をなしバルブ部材22の中心軸を含む平面における断面(以下、単に「移動方向断面」という)で見たとき、円弧状部42は、頂点Pを含む凸部41の突出先端に形成されており、曲率半径R2の円弧形状をなしている。
【0024】
内側傾斜部43は、円弧状部42の径内側に連続して形成されている。外側傾斜部44は、円弧状部42の径外側に連続して形成されている。各傾斜部43,44は、平坦面をなしている。内側傾斜部43と底面45とのなす角度と、外側傾斜部44と底面45とのなす角度は同じである。各傾斜部43,44と底面45とのなす角度を「傾斜角度θ1」とすると、傾斜角度θ1は、概ね30度~60度程度である。移動方向断面で見たとき、凸部41は、移動方向に平行であり頂点Pを通る直線Lに対して左右対称となっている。本実施形態では、円弧状部42の径方向幅は、内側傾斜部43及び外側傾斜部44の径方向幅の約2倍である。
【0025】
ゴムシール部材50は、底壁部40と一体に溶着されている。ゴムシール部材50は、断面円形状をなす平板状部51と、円環状のリップ部52とを有している。リップ部52は、平板状部51の外周寄り位置から弁座28側に突出して形成されており、閉弁時に弁座28に当接して流路をシールする。リップ部52は、底壁部40の凸部41と移動方向において対応した位置に形成されている。凸部41とリップ部52の径方向幅W1は、ほぼ同じである。
【0026】
リップ部52は、移動方向断面で見たとき略三角形状をなしており、円弧状部53と、内側傾斜部54と、外側傾斜部55とを有している。円弧状部53は、移動方向断面で見たとき曲率半径R1の円弧形状をなし、頂点P2を含むリップ部52の突出先端に形成されている。内側傾斜部54は、円弧状部53の径内側に連続して形成されている。外側傾斜部55は、円弧状部53の径外側に連続して形成されている。移動方向断面で見たとき、リップ部52は、移動方向に平行であり頂点P2を通る直線Lに対して左右対称となっている。なお、リップ部52の頂点P2と、凸部41の頂点P1とは共に直線L上にある。
【0027】
凸部41の円弧状部42の曲率半径R2は、リップ部52の円弧状部53の曲率半径R1より大きい。すなわち、リップ部52の突出先端に対して、凸部41の突出先端の方が、尖り具合が緩やかになっている。また、凸部41の突出高さH1は、ゴムシール部材50の平板状部51の厚みTより小さく、凸部41は、平板状部51内に収まっている。凸部41の円弧状部42の径方向幅W2は、リップ部52の円弧状部53の径方向幅W3よりも大きい。リップ部52の突出高さH2は、凸部41の突出高さH1より大きい。
【0028】
[作用効果]
閉弁時にバルブ部材22が弁座28に近づく方向に移動すると、ゴムシール部材50のリップ部52が弁座28に当接する。さらにバルブ部材22が弁座28側に移動することで、リップ部52の円弧状部53と凸部41の円弧状部42との間に位置するゴムシール部材50が潰れて流路がシールされる。上記第1実施形態では、凸部41の円弧状部42の曲率半径R2は、リップ部52の円弧状部53の曲率半径R1より大きい。このため、閉弁時に、底壁部40とゴムシール部材50との間に生じる内部応力を小さくでき、凸部41がリップ部52を突き破って破損するといったことを回避でき、耐久性を向上させることができる。
【0029】
例えば、シール性向上のためにリップ部52の突出先端をより小さく尖らせた場合、すなわち、リップ部52の円弧状部53の曲率半径を小さくした場合に、底壁部40の凸部41の曲率半径が小さいと、バルブ内部の応力が高くなり、凸部41がリップ部52を突き破ってしまい破損する虞があった。上記第1実施形態では、こうした問題を抑制することができる。
【0030】
さらに、上記第1実施形態では、凸部41は、その突出高さH1がゴムシール部材50の平板状部51の厚みTを越えないように、平板状部51内に収まっている。さらに、リップ部52の突出高さH2は、凸部41の突出高さH1よりも大きい。よって、凸部41の頂点P1とリップ部52の頂点P2との距離である潰し代Mを多く確保でき、リップ部52が潰れたときに径方向へも拡がりやすくなるため、シール代が増え、シール性を向上させることができる。つまり、上記第1実施形態の流量制御弁1のバルブ部材22では、シール性及び耐久性を向上させることができる。
【0031】
〈第2実施形態〉
次に、第2実施形態のバルブ部材について、図4を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、第1実施形態と実質同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。第2実施形態では、第1実施形態のバルブ部材に対し、底壁部の凸部の形状が異なる。
【0032】
図4に示すように、底壁部60に形成される円環状の凸部61は、平面部62と、内側傾斜部63と、外側傾斜部64とを有している。すなわち、凸部61の突出先端は、第1実施形態のようにR形状ではなく、平滑な平面を形成している。平面部62は、バルブ部材22の移動方向に対して垂直をなしている。なお、凸部61の突出高さH1は第1実施形態と同様である。平面部62の径方向の中心P3は、凸部61の突出先端の中心である。各傾斜部63,64の傾斜角度θ2は、概ね60度程度である。凸部61は、移動方向断面でみたとき、移動方向に平行であり凸部61の突出先端の中心P3を通る線Lに対して対称形状である。
【0033】
第2実施形態によれば、底壁部60の凸部61の突出先端を平面部62として形成することで、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0034】
〈第3実施形態〉
次に、第3実施形態のバルブ部材について、図5を参照して説明する。第3実施形態では、第1実施形態のバルブ部材に対し、底壁部の凸部の形状が異なる。図5に示すように、底壁部70には、円環状をなす複数(本実施形態では3つ)の凸部71,72,73が径外方向から順に形成されている。
【0035】
各凸部71,72,73の形状は同一であるため、最も径外側(図5に示す右側)に位置する凸部71の構成を例に説明する。凸部71は、円弧状部74と、内側傾斜部75と、外側傾斜部76とを有している。各傾斜部75,76の傾斜角度θ3は、概ね80度程度である。
【0036】
第3実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏し、さらに、凸部71,72,73を複数設けることで、ゴムシール部材50との接触面積が増え、接着力および密着力を増やすことができる。
【0037】
〈第4実施形態〉
次に、第4実施形態のバルブ部材について、図6を参照して説明する。第4実施形態では、第1実施形態のバルブ部材に対し、ゴムシール部材のリップ部の形状が異なる。図6に示すように、第4実施形態のゴムシール部材80に形成されるリップ部82は、円弧状部83と、内側傾斜部84と、外側傾斜部85と、受圧凹部86と、を有している。受圧凹部86は、リップ部82の外縁であって外側傾斜部85に連続して形成されている。
【0038】
図6は、リップ部82が弁座28に当接した閉弁時を示している。閉弁時には、リップ部82の外側が内側より高い圧力になり、矢印A2に示す方向に受圧凹部86が圧力を受け、リップ部82の突出先端である円弧状部83が弁座に押し付けられる方向にリップ部82全体が撓む。
【0039】
以上により、第4実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏し、さらに、リップ部82によるシール力を向上させることができる。
【0040】
〈第5実施形態〉
次に、第5実施形態のバルブ部材について、図7を参照して説明する。第5実施形態では、第1実施形態のバルブ部材に対し、ゴムシール部材のリップ部の形状が異なる。図7に示すように、第5実施形態の凸部91は、円弧状部92と、内側傾斜部93と、外側傾斜部94と、を有している。内側傾斜部93の傾斜角度θ4は、外側傾斜部94の傾斜角度θ5よりも大きい。すなわち、第5実施形態では、内側傾斜部93と外側傾斜部94の傾斜角度θ4,θ5が異なっており、底壁部90の凸部91の形状が、移動方向の断面において非対称となっている。その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0041】
なお、本実施形態において、第2実施形態のように、凸部61の突出先端を平面部62として構成しても良い。
【0042】
〈他の実施形態〉
上記各実施形態において、凸部41,61,71,72,73,91とリップ部52,82とは、移動方向において多少ずれていても良く、幅W1が完全に一致していなくても良い。凸部とリップ部とが移動方向において少なくとも重なる位置関係にあれば、凸部とリップ部とは「対応した位置」にあるものと解釈する。
【0043】
上記各実施形態において、凸部41,61,71,72,73,91の突出高さH1は、ゴムシール部材50の平板状部51内に収まるものとしたが、平板状部51の厚さTを超えても良い。
【0044】
上記各実施形態において、各傾斜部は平坦面としたが、なだらかな曲面としても良い。また、各傾斜部の傾斜角度についても適宜変更可能である。
【0045】
上記第3実施形態では、凸部71,72,73は、突出先端が円弧状部74を形成するものとしたが、図8に示すように、凸部77,78,79の突出先端が平面部95,96,97を形成するものとして構成しても良い。また、凸部が複数形成される場合、その数は3つに限らず、2つまたは4つ以上の複数としても良い。
【0046】
上記各実施形態のバルブ部材22は、小径円筒部材31と、大径円筒部材32とを有しているものとしたが、この構成に限られず、1つの円筒部材で構成しても良い。また、バルブ部材22は、軸方向に垂直な断面が円形状でなくても良い。例えば、中心軸を有する正多角形でも良い。
【0047】
上記各実施形態のバルブ部材22は、蒸発燃料処理装置101においてキャニスタ12と燃料タンク11とをつなぐベーパ通路16に設けられる流量制御弁1に適用されるものとしたが、その他の流量制御弁として実施しても良いし、流体も蒸発燃料に限られない。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 ・・・流量制御弁
28 ・・・弁座
40 ・・・底壁部
41 ・・・凸部
42 ・・・凸部の円弧状部
45 ・・・底面
50 ・・・ゴムシール部材
51 ・・・平板状部
52 ・・・リップ部
53 ・・・リップ部の円弧状部
22 ・・・バルブ部材
101 ・・蒸発燃料処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8