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特許7061999導電性の加熱層を含むカートリッジを有する歯内治療材料を提供するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】導電性の加熱層を含むカートリッジを有する歯内治療材料を提供するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/55 20170101AFI20220422BHJP
【FI】
A61C5/55
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019513892
(86)(22)【出願日】2017-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 US2017050983
(87)【国際公開番号】W WO2018049338
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/393,030
(32)【優先日】2016-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/393,029
(32)【優先日】2016-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519081536
【氏名又は名称】タルサ デンタル プロダクツ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リー,ネイサン
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0079538(US,A1)
【文献】特開2011-213415(JP,A)
【文献】実開昭49-086769(JP,U)
【文献】特表2006-528049(JP,A)
【文献】米国特許第04265618(US,A)
【文献】国際公開第87/00029(WO,A1)
【文献】米国特許第4704088(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/00
H05B 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯内治療材料を収容するように構成されたチャンバー構造と、
前記チャンバー構造に隣接して設けられた導電性の加熱層と、
カートリッジの第1の側面に配置され、前記加熱層と電気的に接触している、第1の電極と、
カートリッジの第2の側面に配置され、前記加熱層と電気的に接触している、第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に配置され、前記加熱層と電気的に接触している第3の電極と、
前記チャンバー構造、前記加熱層および電極を収納する、外側スリーブと
を含み、
前記外側スリーブと前記加熱層との間に空隙が形成されている、
カートリッジであって、
前記加熱層は、
前記第1の電極および前記第3の電極の間に第1の電気抵抗と、
前記第3の電極および前記第2の電極の間に第2の電気抵抗と、
を有し、第1の電気抵抗が第2の電気抵抗と異なる、
カートリッジ。
【請求項2】
チャンバー構造の外表面に形成された電気絶縁層をさらに含み、
前記加熱層が、前記電気絶縁層上に形成されている、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記加熱層上および電極間に形成された断熱層をさらに含み、
前記空隙が、前記断熱層と前記外側スリーブとの間に形成されている、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記外側スリーブが、前記第1の電極と電気的に接触する1つの電極と、前記第2の電極と電気的に接触する別の電極とを含む、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記加熱層が、前記第1の電極および前記第2の電極の間に異なる電気抵抗の少なくとも2つの領域を有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記歯内治療材料が前記チャンバー構造から針へと移動することができる、前記カートリッジの端部から延びている針をさらに備える、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項7】
請求項に記載のカートリッジと、
前記カートリッジが取り付けられているハンドルアセンブリであって、前記ハンドルアセンブリは、前記カートリッジの一部に作用してチャンバー構造内に含まれる歯内治療材料をカートリッジから針を通して吐出するように構成されているプランジャを含む、ハンドルアセンブリと、
を含む、歯内治療適用装置。
【請求項8】
前記チャンバー構造内に収容される歯内治療材料をさらに備える、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記歯内治療材料がガッタパーチャである、請求項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
ハンドルアセンブリと、
歯内治療材料を収容するためのカートリッジであって、ハンドルアセンブリに取り付けられている、カートリッジと
を備える歯内治療材料適用装置であって、
前記カートリッジが、
歯内治療材料を収容するように構成されたチャンバー構造と、
前記チャンバー構造に隣接して設けられた導電性の加熱層と、
カートリッジの第1の側面に配置され、前記加熱層と電気的に接触している、第1の電極と、
カートリッジの第2の側面に配置され、前記加熱層と電気的に接触している、第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間にカートリッジの長さに沿って配置されている、第3の電極と、
前記チャンバー構造、前記加熱層および電極を収納する、外側スリーブと
を含み、
前記カートリッジ内の前記外側スリーブと前記加熱層との間に空隙が設けられており、
当該装置は、電極間に電流が印加されると、前記第1の電極と前記第3の電極との間の加熱層が、前記第3の電極と前記第2の電極との間の加熱層よりも多くの熱が発生するように構成されている、歯内治療材料適用装置。
【請求項11】
前記カートリッジ内の前記加熱層上で、前記第1の電極、前記第2の電極および前記第3の電極間に設けられた断熱層をさらに備え、
前記空隙は、前記断熱層と前記外側スリーブとの間に設けられている、請求項10に記載の歯内治療材料適用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、両出願ともに2016年9月11日に出願された米国特許仮出願第62/393,029号および米国特許仮出願第62/393,030号の優先権を主張するものであり、これらの仮出願のすべての公開が参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、根管処置のような歯科処置に使用するための歯内治療材料を提供するための装置に関する。特に、本発明は、歯内治療材料を収容するカートリッジ内に抵抗加熱要素を有する歯内治療材料適用装置に関する。
【背景技術】
【0003】
歯根管治療は、歯髄腔および根管内の感染した歯髄組織を取り除くために行われる歯内療法の一種である。感染した歯髄が除去された後、空いている空間は歯内治療材料で満たされる。根管治療の最終的な目的は、歯根系内部の感染を排除し、根管の端部の小さな開口部(当技術分野では根尖と呼ばれる)を三次元的に堅固に密閉または閉塞することである。したがって、歯根管治療は一般的に、成形、浄化、および閉塞(すなわち充填および封止)の3つの工程を含む。根尖または根管の三次元的に完全な閉鎖に失敗すると、微小漏洩につながり、将来の根管系内への細菌の定着、再感染、および歯の喪失の可能性につながる。実際、微小漏洩は歯の不全の最も一般的な原因である。
【0004】
浄化され成形された根管腔の充填は慣例的に低熱歯内療法用化合物、最も頻繁には歯科用ガッタパーチャが用いられてきた。従来、根管処置工程は、根管を塞ぐために準備された根管内に根管充填材および/または密封ポイントもしくはコーンを配置することを含み、理想的には微小漏出を排除する方法であった。しかしながら、従来の充填ポイントおよびその適用方法は、根管根尖の良好な密封をもたらすのにあまり適していない。
【0005】
根管腔に歯科用根管充填材を適用するための一般的な方法は、加熱ガッタパーチャ法である。この技術の一部は、ガッタパーチャ材料を予熱して軟化させ、次いで軟化させたガッタパーチャ材料を細い針を通して根管腔に注入することである。現在、加熱ガッタパーチャ法を行うための様々な種類の適用装置がある。このような適用装置の1つは従来のグルーガンと類似している。この種の装置は、ガン形状の塗布装置の一部である加熱バレルを備える。使用者は、一本の円筒形の棒状のガッタパーチャを加熱チャンバーに入れ、細い針をバレルの前部に取り付ける。ガンバレル内の加熱要素を作動させてガッタパーチャ材料を軟化させた後、歯科医は引き金を引いてピストンロッドを加熱されたガンバレル内に押し込み、軟化したガッタパーチャ材料を細い針を通して患者の準備された根管内に押し込む。しかし、ガッタパーチャロッドは加熱チャンバーに直接挿入され、吐出される前に軟化されるので、チャンバー内に高い粘着性の残留物を残す。適用装置を次の使用のために準備するために残留物を化学薬品で洗浄しなければならない。しかし、洗浄用化学物質由来の蒸気は、例えば妊婦にとって有害となり得る。さらに、患者間のクロスコンタミネーションは危険である。
【0006】
グルーガンタイプの装置に関連する問題のいくつかに対処するために他のタイプの適用装置が設計されてきた。例えば、ある種の装置は、使い捨ての金属カートリッジに入れられたガッタパーチャロッドを使用する。この種のカートリッジは一般的に約2.8~3.0mmの直径と、約18mmの長さを有する。カートリッジの一方の端部は細い針に接続され、カートリッジの他方の端部は端部を密封するための小さなナイロンボールまたはペレットを有する。第1のタイプの適用装置における機械的なトリガ構造の代わりに、第2のタイプの適用装置は、針を通ってガッタパーチャ材料を押し出すためのピストンを前方に動かすためのマイクロモータを有する。ガッタパーチャ材料を含むカートリッジは使い捨てであるため、この種の装置は清浄化がより容易である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の両方の種類の装置における加熱要素は、加熱パッドおよび/または加熱コイルが加熱バレルの本体に配置された、共通の設計を共有する。この加熱要素の設計は、in vivo臨床用途において問題となり得る。例えば、加熱バレルの本体上に加熱コイルを配置すると、バレルはかさばる。そのため、患者の口の後ろ側の臼歯部に到達するためにデバイスを使用するのが困難な場合がある。他の問題は、歯内治療材料と装置の加熱チャンバー内に設けられた加熱要素との間に空隙があり得るため、加熱機構が効率的ではないことがあり得る。これに関して、ガッタパーチャ歯内治療材料は、一般に、装置から容易に流れるように十分に柔らかくなるために、約90℃~約125℃に加熱される必要がある。しかし、使用者はしばしば、十分な熱を加熱要素からガッタパーチャを収容するカートリッジに伝達させるために、装置をさらにより高い温度に加熱するように設定しなければならない。そして、より高い作動温度は問題を引き起こす可能性がある。例えば、熱い装置を使用するときに患者を火傷させる危険性が高まる。したがって、患者を保護するために熱保護スリーブがしばしば装置本体の周りに使用され、その結果スリーブは装置をさらに大きくし、操作するのを困難にする。さらに、適用装置内の加熱要素はより高い温度で熱を供給することができなければならないことを考えると、加熱機構はより多くの空間を占め、これはさらに装置の全体的なサイズを増大させる。別の問題は、歯内治療材料と加熱チャンバーとの間の空気の空間が常に一定ではないことを考えると、加熱要素から歯内治療材料への熱伝達が一定ではないことである。過度の熱伝達の場合、歯内治療材料は過加熱されて液化し、使用者が装置を使用する準備が整う前に歯内治療材料が流れ落ち、場合によっては針から流れ出ることがある。
【0008】
したがって、従来の装置の欠点を克服する温かい歯内治療材料適用装置の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様によれば、本発明は、歯内治療材料を収容するように構成されたチャンバー構造を含むカートリッジを提供する。導電性の加熱層がチャンバー構造に隣接して設けられる。カートリッジはまた、カートリッジの第1の側面に配置された第1の電極を含み、第1の電極は加熱層と電気的に接触しており、第2の電極はカートリッジの第2の側面に配置されている。外側スリーブはチャンバー構造、加熱層、および電極を、外側スリーブと加熱層との間にエアギャップが設けられるように格納する(した)。
【0010】
他の態様によれば、本発明は、歯内治療材料を収容するように構成されたチャンバー構造、およびチャンバー構造に隣接して設けられた導電性の加熱層を含むカートリッジを提供する。カートリッジはまた、カートリッジの第1の側面に配置され、加熱層と電気的に接触する第1の電極と、カートリッジの第2の側面に配置され、加熱層と電気的に接触する第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間にカートリッジの長さに沿うように配置される第3の電極とを含む。外側スリーブは、チャンバー構造、加熱層、および電極を格納する。
【0011】
さらに別の態様によれば、本発明は、ハンドルアセンブリと、歯内治療材料を収容するように構成されたカートリッジとを含み、カートリッジがハンドルアセンブリに取り付けられている歯内治療材料適用装置を提供する。カートリッジは、歯内治療材料を収容するように構成されたチャンバー構造と、チャンバー構造に隣接して設けられた導電性の加熱層と、カートリッジの第1の側面に配置された加熱層と電気的に接触する第1の電極と、カートリッジの第2の側面に配置された加熱層と電気的に接触する第2の電極、第1の電極と第2の電極の間にカートリッジの長さに沿うように配置される第3の電極と、チャンバー構造、加熱層、電極を収納する外側スリーブとを含む。適用装置は、電極間に電流が印加されると、第3の電極と第2の電極との間の加熱層よりも第1の電極と第3の電極との間の加熱層により多くの熱が発生するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る歯内治療材料適用装置を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るカートリッジの部品を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る図1の線3-3によるカートリッジの断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る図1の線4-4によるカートリッジの断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るカートリッジの部品を示す図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態に係るカートリッジを示す図である。
図7図6に示すカートリッジの部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、歯内治療材料を加熱するための抵抗加熱要素を有する歯内治療材料適用装置に関する。本明細書では、装置は、歯内治療材料、特にガッタパーチャと併せて使用される装置として記載される。しかしながら、これらの記載は単なる例示として理解されるべきである。実際、当業者にとっては容易に明らかであるが、本明細書に記載の適用装置は、非歯内治療材料を含む他の材料を適用するために使用することができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る、カートリッジ100およびハンドルアセンブリ200を含む歯内治療材料適用装置10の図である。ハンドルアセンブリ200は、ハンドル204に取り付けられたバレル202を含む。バレル202は、プッシュロッド205を受け入れる大きさの中空の内部チャンバーを有する。プッシュロッド205は、トリガ206をハンドル204に向かって握ることによって前方に動かす(すなわちハンドル204から離れる)ことができる。後述するように、プッシュロッド205の前方への移動により、プッシュロッド205のプランジャ端部208がカートリッジ100から歯内治療材料を押し出す。
【0015】
当業者にとっては明らかであるが、図1に示す特定のハンドルアセンブリ200とは異なるハンドルアセンブリを、本明細書に記載の発明と共に使用することができる。これに関して、ハンドルアセンブリに必要とされる唯一の機能は、本明細書に記載されるようにカートリッジから歯内治療材料を吐出することを容易にすることである。示した実施形態の代替形態では、使用者によって生成された力を使用するのではなく、ハンドルアセンブリは、プッシュロッドを動かしてそれによって歯内治療材料をカートリッジから押し出すモータを含む。このようなモータはステッパ式モータであってもよく、ステッパモータは、モータの電源が入れられるとプッシュロッドを動かすためにプッシュロッドに設けられた溝と噛み合うギア歯を含む。このようなステッパモータの一例は圧電モータであり、圧電モータは、本明細書に記載のように歯内治療材料をカートリッジから押し出すのに使用するための電力を出力することができる小型でエネルギー効率の高いアセンブリである。モータを用いる実施形態においては、モータは、ハンドルアセンブリ内に設けられたバッテリによって電力供給されることができ、またはハンドルアセンブリは、圧電モータに電力を供給するために配線を備えることができる。本明細書に記載されているようなカートリッジと共に使用することができるハンドルアセンブリのさらに別の例が、米国特許出願公開第2015/0079538号(A1)に記載されており、この文献の開示全体が本明細書組み込まれる。
【0016】
カートリッジ100は、その一端がハンドルアセンブリ200のバレル202に取り付けられる外側スリーブ102を含む(図1では、カートリッジ100はバレル202から取り外されて示されている)。これに関して、カートリッジ100の端部は、バレル202の端部に設けられたねじ構造体を受けるねじ山など、ハンドルアセンブリ200に接続するための機械的構造体を含むことができる。あるいは、スリーブ102は、バレル202の端部の外側を覆って密接に嵌合するような、またはその逆になるような大きさとすることができる。当業者であれば、カートリッジ100をハンドルアセンブリ200のバレル202に取り付けることができる多くの代替方法を認識するであろう。
【0017】
図2図3、および図4は、カートリッジ100の図である。カートリッジ100は、その一部がスリーブ102内に配置されている歯内治療材料ユニット106を含む。以下に詳細に説明するように、歯内治療材料ユニット106は、チャンバー構造110から延びる針108を通して吐出される歯内治療材料を保持するためのチャンバー構造110を含む。チャンバー構造110を含む歯内治療材料ユニット106の一部は、スリーブ102の端部から延びる針108とともに、スリーブ102内に配置される。針108は、ねじ継手、溶接、接着、または他の適切な取り付け手段によってチャンバー構造110に取り付けることができる。シーリング構造112(時にボールシールと呼ばれる)はチャンバー構造110内に移動可能に設けられている。これにより、歯内治療材料は、針108およびシーリング構造112との間のチャンバー構造110内に封止される。適用装置10が使用されるとき、ハンドルアセンブリ200のプランジャ208は、シーリング構造112をカートリッジ100の端部にある針108に向かって押し、シーリング構造112はそれによって歯内治療材料を、針108を通してカートリッジ100から押し出す。
【0018】
本発明の実施形態では、チャンバー構造110はステンレス鋼などの金属材料から形成することができる。以下に説明するように、歯内治療材料ユニット106を構成するために、チャンバー構造110の外側に追加の材料層が設けられる。
【0019】
図3および図4に示すように、電気絶縁層114がチャンバー構造110の外表面に塗工される。本発明の特定の実施形態では、電気絶縁層はエポキシ(ポリエポキシド)などの材料とすることができる。電気絶縁層114は、堆積、コーティング、シルクスクリーン印刷、スプレーブラッシングなどによってチャンバー構造110に塗工することができる。他の実施形態では、電気絶縁層は、絶縁電気テープなどの異なる形態とすることができる。
【0020】
導電層116は、電気絶縁層114の上に塗工される。以下に説明するように、適用装置10の作動中に、導電層114に電流が印加されると、導電層116内に抵抗熱が発生し、その熱によって隣接するチャンバー構造110に収容されている歯内治療材料が加熱される。電気絶縁層114と同様に、導電層116は、堆積、コーティング、シルクスクリーン印刷、スプレーブラッシングなどを用いて塗工することができる。導電層116は多くの異なる形態を取り得る。特定の実施形態では、導電層116は、銅粒子、カーボンチューブ、および/または銀粒子を含む塗料で、電気絶縁層114上に塗工された材料とすることができる。特定の実施形態では、導電性塗料は、600nm~30μmの範囲の大きさを有する銅粒子と、100nm~50μmの範囲の大きさを有するカーボンチューブとを含有する。これに関して、導電層116中の金属導電性要素の割合は、歯内治療材料を軟化させるのに必要な温度を生み出すのに望ましい発熱抵抗値に基づく。例えば、歯内治療材料がガッタパーチャである本発明の実施形態では、最適作業温度範囲は約70℃~約200℃である。ガッタパーチャをこれらの温度に加熱するために、導電層116の最適な抵抗値は、約0.2オーム~約2.0オームの間である。
【0021】
一対の電極118および120は、導電層116に電流を供給するために用いられ、電極118および120は導電層116と電気的に接触するように設けられ、歯内治療材料ユニット106の両側面に設けられている。電極118および120はまた、後述するように、スリーブ102内に設けられた対応する電極122および124と電気的に接触している。電極118および120は、例えば、銅リングであり得る。
【0022】
電極118および120の間の導電層116上には断熱層126が設けられている。電気絶縁層114および導電層116と同様に、断熱層126は様々な異なる形態とすることができ、様々な技法を用いて適用することができる。本発明の特定の実施形態では、断熱層126は、TEFLON(登録商標)(すなわち、ポリテトラフルオロエチレン)であり、TEFLON(登録商標)は、デラウェア州ウィルミントンのChemours社によって製造された断熱材料である。
【0023】
上述したように、歯内治療材料ユニット106はスリーブ102内に設けられ、針108はスリーブ102の端部から延びている。スリーブ102は、例えばプラスチック材料から形成することができる。プラスチック材料の例としては、ZYTEL(登録商標)HTN92G45DH2が挙げられ、これはデラウェア州ウィリントンのE.I.du Pont de Nemours and Companyによって製造されたガラスフィラービーズを有するポリアミド樹脂である。図4に示すように、スリーブ102の内面は断熱層124から離間している。したがって、空隙128は、歯内治療材料ユニット106のほぼ全てとスリーブ102との間に形成される。空隙128は、チャンバー構造106内に含まれる歯内治療材料が導電層116内の抵抗加熱によって加熱されたときにスリーブ102が著しく加熱されるのを防ぐための非常に効果的な断熱材として機能する。これは、適用装置10を用いて歯内治療材料を適用するときに外側スリーブ102が患者の口と接触することがあり、スリーブ102が熱すぎるとスリーブ102によって火傷させる可能性があるため、好都合である。
【0024】
本発明に係るカートリッジ内の加熱要素として一体化された導電層を用いること、および絶縁層とエアギャップを一体化してさらに絶縁性を高めることにより、歯内治療材料カートリッジのサイズは、従来の加熱された歯内治療材料カートリッジと比較して有意に小さくすることができる。例えば、本明細書に記載されているようなカートリッジ構成では、カートリッジは、約10mm以下の直径を有し得るが、従来の加熱された歯内治療材料カートリッジは、約20mmを超える直径を有していた。上述したように、適用装置のカートリッジ部分はしばしば患者の口の中で操作しなければならないので、この差は重要である。
【0025】
また上述したように、図4に示すように、歯内治療材料ユニット106に設けられた電極118および120は、スリーブ102の内面に設けられた電極122および124に電気的に接触している。そして電極122および124は、ハンドルアセンブリ200のバレル202に隣接するスリーブ102の端部に設けられたさらなる電極(図示せず)への電気的接続を備えている。スリーブ102がプラスチックから形成される場合、電極および他の電気的接続は、スリーブ102を形成するために使用される射出成形プロセスに埋め込まれてもよい。このように、ハンドルアセンブリ202内の電源(例えば、バッテリー)は、電極118、120、126および128を介して導電層116内に抵抗加熱のための電流を供給することができる。この点に関して、カートリッジ100およびハンドルアセンブリ200の間の電気的接続は、上述した米国特許出願公開第2015/0079538号(A1)に記載されているカートリッジとハンドルアセンブリとの間の電気的接続と同様であり得る。さらに、例えばハンドルアセンブリ200内の制御ユニットのように、適切なスイッチおよび/または制御電子機器が、カートリッジ100とハンドルアセンブリ200との組み合わせに備えられてもよい。当業者であれば、本明細書に記載されるように適用装置10を使用して動作目的を達成するためにこのような調節を容易に実施することができるであろう。さらに、当業者であれば、カートリッジ100内の導電層116に電力を供給するための多数の代替案を理解するであろう。例えば、ハンドルアセンブリ200内に電源を提供する代わりに、歯内治療材料適用装置10は、外部電源に接続するための配線を備えることができる。
【0026】
カートリッジ100内の歯内治療材料の加熱温度を制御するために、制御ユニットは、カートリッジ100から受信された信号に基づいてカートリッジ100に供給されるべき電力を決定するように構成することができる。例えば、ハンドルアセンブリ200に設けられた制御ユニットは、特定のカートリッジの抵抗値に基づいて作動温度を調整することができ、制御ユニットは、特定量の電力がカートリッジに供給されたときのフィードバックに基づいて抵抗値を決定することができる。さらに、制御ユニットはまた、特定のカートリッジの歯内治療材料の粘度等級に基づいてカートリッジ100の加熱を制御することができ、例えば、特定のカートリッジは、カートリッジがハンドルアセンブリ200に取り付けられたときに制御ユニットが検出する信号送信装置を含むことができる。
【0027】
針108、歯内治療チャンバー構造106、およびスリーブ102を有するカートリッジ100は、歯内治療材料がカートリッジ100から吐出された後に使い捨て可能であり得る。したがって、ハンドルアセンブリ200は、上述したように、他のカートリッジと共に使用することができる。ただし、本明細書では針108、チャンバー構造106、およびスリーブ102の組み合わせを「カートリッジ」と呼ぶが、他の実施形態では、これらおよび他の構造の異なる組み合わせをカートリッジとして組み合わせて使用することができ、他の構造は適用装置10で再使用可能であることに留意されたい。例えば、他の実施形態では、チャンバー構造106および針108は使い捨てユニット(すなわち「カートリッジ」)として共に提供され、一方、スリーブ102は適用装置10の再使用可能な部分である。。このような実施形態では、チャンバー構造106および針108は、スリーブ102から容易に取り外し可能にされる。別の実施形態では、針108およびスリーブ102がチャンバー構造106から取り外し可能に作製され、そこでは針108およびスリーブ102は再使用可能部分であり、チャンバー構造106は使い捨て部分(すなわち「カートリッジ」)である。
【0028】
図5は、本発明の他の実施形態に係る歯内治療材料ユニット401を有するカートリッジ400を示す。この歯内治療材料ユニット401は、上述の歯内治療材料ユニット106と同様の構成を有する。例えば、歯内治療材料ユニット401は、歯内治療材料ユニット406が嵌め込まれる外側スリーブ102を有し、歯内治療材料ユニット401は、歯内治療材料チャンバー構造を加熱するための導電性の加熱層を含む。歯内治療材料ユニット401は、3つの電極402、404、および406を含むという点で、上述のユニット106と異なる。電極402および404の2つは針408のより近くに設けられ、他方の電極406は歯内治療材料ユニット401の反対側に設けられる。特定の実施形態では、2つの電極402および404は正極であり、電極406は負極である。3つの電極402、404、および406が設けられた構成では、2つの異なる加熱領域Aおよび加熱領域Bを歯内治療材料ユニット401内に作り出すことができる。そして、電極402および404に供給される電力を調整することによって、2つの加熱領域AおよびBにおいて異なる加熱レベルを達成することができる。特に、加熱領域Bの導電層よりも加熱領域Aの導電層においてより大きな加熱を提供することができる。加熱領域Aにおいてより大きな加熱をすることによって、歯内治療材料が針108に近づくにつれて十分に軟化されることが確実にされる。
【0029】
歯内治療材料が針に隣接するチャンバー構造の端部で確実に軟化するための追加のまたは代替の方法として、本発明の実施形態では、チャンバー構造の壁自体を針に隣接する端部でより厚くすることができる。チャンバー構造のより厚い端部は、より大きなヒートシンクを提供し、それによって、材料が針に近づくにつれて、歯内治療材料により多くの熱を提供する。
【0030】
本発明の他の実施形態では、上述の歯内治療材料ユニット106のように、2つの電極のみを使用して2つの領域の加熱効果が達成される。これらの実施形態では、導電層は、歯内治療材料ユニット106の長さに沿って異なる抵抗値を備えている。この場合、針に近い導電層部分がより発熱する抵抗値を有し、針から遠い導電層部分より発熱する。したがって、歯内治療材料が針に近づくにつれて歯内治療材料が十分に軟化することが確実にされる。ガッタパーチャがカートリッジ内で使用される歯内治療材料である場合、針の近くの導電層の抵抗値は0.2オームであり得る一方、残りの導電層の抵抗値は0.5オームであり得る。当業者は、例えば導電層の異なる部分における金属導電性要素の割合を調整することによって、導電層の一部の抵抗値を調整することができる方法を理解するであろう。さらに、本発明の他の実施形態は、異なる加熱領域を作り出すために、3つの電極および導電層の異なる抵抗値部分との両方を含む。
【0031】
本発明のさらに他の実施形態では、歯内治療材料ユニットの本体は主に非金属材料から形成されている。すなわち、上述のカートリッジの歯内治療材料チャンバー構造、熱抵抗層、および導電層部分は、非金属材料から形成される。このような非金属材料は射出成形セラミックまたは射出成形複合材料を含む。非金属歯内治療材料ユニットを有する実施形態では、カーボン、金、銀、クロム、パラジウム、白金、銅、またはモリブデンなどの電気熱伝導性加熱材料を非金属材料に添加することができる。特定の実施形態では、歯内治療材料チャンバー構造の総重量(コーティング層、針、シーリング構造、および歯内治療材料を含まない総重量)の約15%~約50%の重量濃度の二珪化モリブデン(MoSi)が使用される。他の実施形態では、100nm~1μmのカーボンチューブが使用され、カーボンチューブは、歯内治療材料チャンバー構造の総重量の約5%~約30%の重量濃度範囲にある。当業者であれば理解されるように、二珪化モリブデン、カーボンチューブ、または他の熱伝導性加熱要素の濃度は、使用されるべき電力レベルおよび必要とされる作業温度に基づいて選択され得る。非金属製カートリッジ本体を用いる実施形態では、電極を上述の実施形態と同じ方法で適用することができ、さらなる熱抵抗層を前述の実施形態と同じ方法で本体に適用することができる。また、スリーブを非金属歯内治療材料ユニットの上に用いることができる。
【0032】
図6および図7は、本発明のさらなる実施形態に係るカートリッジ500を示す。本実施形態では、外側スリーブ502と、歯内治療材料チャンバー構造、電気絶縁層、および電気導電(加熱)層を有する歯内治療材料ユニット504が、上述の実施形態と同様に形成される。しかしながら、本実施形態では、歯内治療材料ユニット504とスリーブ502との間に絶縁シース508が設けられている。絶縁シース508は、様々な材料、特にプラスチック材料から作製することができる。歯内治療材料ユニット504の外表面には複数のスペーサペグ510が形成され、同様に、絶縁シース508の外表面にも複数のスペーサペグ514が形成されている。したがって、歯内治療材料ユニット504は、絶縁シース508から離間しており、絶縁シース508は、外側スリーブ502から離間している。構造間の空間は断熱エアギャップ516および518となる。エアギャップ516および518と断熱シース508との組み合わせは、歯内治療材料ユニット504が加熱されたときにスリーブ502が著しく加熱されないように高度に効果的な断熱を提供する。上述したように、このことは、適用装置が歯内治療材料を適用するために使用されるときに外側スリーブ502が患者の口と接触する可能性があり、外側スリーブ502が熱くなりすぎると火傷を引き起こす可能性があるため好都合である。電極はまた、上述の実施形態と同様の方法で、スリーブ502内および歯内治療材料ユニット504内に設けることができることに留意されたい。さらに、絶縁シース508は、歯内治療材料ユニット504を固定するための係止リングを含むことができ、例えば、ペグ510のいくつかは、歯内治療材料ユニット504がシース508内に挿入されるときに係止リングにセットされることができ、歯内ユニット504がシース508内で回転すると、ペグ510が係止リングによってロック位置にセットされる。
【0033】
本明細書に記載の発明を用いて、歯内治療材料適用装置は、カートリッジ内の導電層の形態の一体型加熱要素を有する小型のカートリッジを備えることができる。このような一体型加熱要素層は、従来の加熱された歯内治療材料カートリッジと比較してカートリッジのサイズを減少させることを可能にし、これにより装置を患者の口内でより容易に操作できるようになり、適用装置の使用性を向上させる。さらに、一体型加熱層を有するカートリッジ内で発生した熱は、従来の加熱された歯内治療材料カートリッジよりも均質である。適用装置は、異なる加熱特性および異なる歯内治療材料を有するカートリッジに容易に適合可能である。さらにまた、熱は装置内で断熱され、これにより、装置が患者に接触した場合に装置の外表面により火傷を負う危険性が低減される。
【0034】
本発明をある特定の例示的な実施形態において説明してきたが、この開示に照らして当業者には多くの追加の修正および変形が明らかであろう。したがって、本発明は、具体的に記載されたものとは別の方法で実施され得ることを理解されたい。したがって、本発明の例示的な実施形態は、あらゆる点で例示的であり限定的ではないと見なすべきであり、本発明の範囲は上記の説明ではなくむしろ本願によって支持可能な請求項およびその均等物によって決定される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本明細書に記載の装置は、歯内治療に使用される装置など、歯科処置に使用される市販品に使用することができる。したがって、本明細書に記載の装置は明らかに産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7