(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】ポックスウイルス内における導入遺伝子の安定性を向上させるための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20220422BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20220422BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220422BHJP
C12N 15/863 20060101ALI20220422BHJP
A61K 39/275 20060101ALI20220422BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N7/01 ZNA
C12N5/10
C12N15/863 Z
A61K39/275
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2019516437
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2017074693
(87)【国際公開番号】W WO2018060368
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-08-13
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509296443
【氏名又は名称】バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】カッラ・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ラウントリー・ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ディルマイアー・ウルリーケ
【審査官】玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-510755(JP,A)
【文献】特表2005-526520(JP,A)
【文献】"ACCESSION: ADZ58978 (DEFINITION: Novel CEA(6)-1,2 expression vector-related mCEA DNA sequence SeqID8)", NCBI Sequence Revision History [online], 2005.4.21, uploaded, NCBI, [retrieved on 2021.4.15], retrieved from the Internet
【文献】"ACCESSION: FB574355 (DEFINITION: Sequence 28 from Patent EP1864691)", NCBI Sequence Revision History [online], 2007.12.12, uploaded, NCBI, [retrieved on 2021.4.15], retrieved from the Internet
【文献】"ACCESSION: AAI72490 (DEFINITION: H6-promoter human CEAmod/42K-promoted B7.1 insertion casette)", NCBI Sequence Revision History [online], 2002.5.16, uploaded, NCBI, [retrieved on 2021.4.15], retrieved from the Internet
【文献】"ACCESSION: AAQ21171 (DEFINITION: Clone encodiing Intercellular Adhesion Molecule-1)", NCBI Sequence Revision History [online], 2003.5.25, uploaded, NCBI, [retrieved on 2021.4.15], retrieved from the Internet
【文献】"ACCESSION: AAQ03654 (DEFINITION: Insert from phase lambda HT16 encoding integrated membrane form of LFA-3)", NCBI Sequence Revision History [online], 2007.6.11, uploaded, NCBI, [retrieved on 2021.4.15], retrieved from the Internet
【文献】"ACCESSION: ADZ58978 (DEFINITION: Novel CEA(6)-1,2 expression vector-related mCEA DNA sequence SeqID8)", NCBI Seqence Revision History [online], 2005.4.21, uploaded, NCBI, [retrived on 2021.4.15], retrived from the Internet
【文献】"ACCESSION: FB574355 (DEFINITION: Sequence 28 from Patent EP1864691)", NCBI Seqence Revision History [online], 2007.12.12, uploaded, NCBI, [retrived on 2021.4.15], retrived from the Internet
【文献】"ACCESSION: AAI72490 (DEFINITION: H6-promoter human CEAmod/42K-promoted B7.1 insertion casette)", NCBI Seqence Revision History [online], 2002.5.16, uploaded, NCBI, [retrived on 2021.4.15], retrived from the Internet
【文献】"ACCESSION: AAQ21171 (DEFINITION: Clone encodiing Intercellular Adhesion Molecule-1)", NCBI Seqence Revision History [online], 2003.5.25, uploaded, NCBI, [retrived on 2021.4.15], retrived from the Internet
【文献】"ACCESSION: AAQ03654 (DEFINITION: Insert from phase lambda HT16 encoding integrated membrane form of LFA-3)", NCBI Seqence Revision History [online], 2007.6.11, uploaded, NCBI, [retrived on 2021.4.15], retrived from the Internet
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続継代中に安定な組換えポックスウイルスであって、前記組換えポックスウイルスは、3つの可変N末端反復(VNTR)ドメインを有するMUC1ペプチドをコードする第1の核酸を含み、
前記第1の核酸の配列は、配列番号2、3または5に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、前記組換えポックスウイルスは連続継代中に安定であり、ここで前記の「連続継代中に安定」は前記組換えポックスウイルスの遺伝子組換えヌクレオチド配列が、組換えポックスウイルスの連続継代中に物質的に変化しない状態を少なくとも継代3または継代4となるまで維持することを意味する、前記組換えポックスウイルス。
【請求項2】
PANVACと比較して
向上した連続継代中の安定性を
有する、請求項1に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項3】
前記第1の核酸
の配列は、配列番号2
、3または5に対して少なくとも
96%、97%または98%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1から請求項2のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項4】
前記第1の核酸
の配列は配列番号2
、3または5を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項5】
癌胎児性抗原(CEA)をコードする第2の核酸を更に含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項6】
前記第2の核酸は配列番号13を含む、請求項5に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項7】
前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含み、前記少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域は、a)3以上の連続反復したGまたはCヌクレオチド及び/またはb)3以上の連続反復したTヌクレオチドと定義される、請求項5に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域は、a)3以上の連続反復したGヌクレオチド及び/またはb)3以上の連続反復したCヌクレオチドと更に定義される、請求項7に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項9】
前記反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、請求項7から請求項8のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項10】
前記反復
ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、請求項7から請求項8のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項11】
前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも2、3、4、5または10の前記反復ヌクレオチド領域に少なくとも1つの置換を含む、請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項12】
前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15及び/または少なくとも19の反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む、請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項13】
前記第2の核酸は、前記第2の核酸の19領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む、請求項7から請求項12のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項14】
前記第2の核酸は配列番号14を含む、請求項7から請求項12のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項15】
前記組換えポックスウイルスはオルソポックスウイルス及びアビポックスウイルスから選択される、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項16】
前記オルソポックスウイルスはワクシニアウイルスである、請求項15に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項17】
前記ワクシニアウイルスは改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)である、請求項16に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項18】
前記MVAはMVA-BN、またはニワトリ胚線維芽細胞(CEF)内において増殖複製可能だが、ヒト角化細胞株HaCat、ヒト骨骨肉腫細胞株143B、ヒト胎児腎臓細胞株293及びヒト子宮頸部腺癌細胞株HeLaにおいては増殖複製不可能であり、MVA-BNと比較してゲノムの1つ以上の部位に差異を示すMVA-BNの誘導体である、請求項17に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項19】
前記組換えポックスウイルスは、少なくとも継代3及び/または継代4中に安定である、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項20】
前記アビポックスウイルスは鶏痘ウイルスである、請求項15に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項21】
前記組換えポックスウイルスは、少なくとも継代4中に安定である、請求項20に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項22】
前記第1の核酸は、YLAPPAHGV(配列番号24)、YLDTRPAPV(配列番号25)、YLAIVYLIAL(配列番号26)、YLIALAVCQV(配列番号27)、YLSYTNPAV(配列番号28)、SLFRSPYEK(配列番号29)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるペプチド断片をコードするヌクレオチド配列を更に含む、請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項23】
前記ポックスウイルスは、1以上の共刺激分子をコードする核酸を更に含む、請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項24】
前記1以上の共刺激分子は、B7-1、ICAM-1、LFA-3及びこれらの組み合わせから選択される、請求項23に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項25】
前記B7-1
の核酸は、配列番号15、16または17に対して少なくとも90%または95%の同一性を有する、請求項24に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項26】
前記B7-1
の核酸は配列番号15、16または17を含む、請求項24から請求項25のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項27】
前記B7-1
の核酸は配列番号17を含む、請求項24から請求項26のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項28】
前記B7-1
の核酸は配列番号15を含む、請求項24から請求項26のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項29】
前記ICAM-1
の核酸は、配列番号18、19または20に対して少なくとも90%または95%の同一性を有する、請求項24に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項30】
前記ICAM-1
の核酸は配列番号18、19または20を含む、請求項24及び請求項29のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項31】
前記ICAM-1
の核酸は配列番号18を含む、請求項24及び請求項29から請求項30のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項32】
前記ICAM-1
の核酸は配列番号20を含む、請求項24及び請求項29から請求項30のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項33】
前記LFA-3
の核酸は、配列番号21、22または23に対して少なくとも90%または95%の同一性を有する、請求項24に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項34】
前記LFA-3
の核酸は配列番号21、22または23を含む、請求項33に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項35】
前記LFA-3
の核酸は配列番号21を含む、請求項33から請求項34のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項36】
前記LFA-3
の核酸は配列番号23を含む、請求項33から請求項34のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
【請求項37】
請求項1から請求項36のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルスを含む、免疫原性組成物。
【請求項38】
請求項1から請求項36のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルスを含む、宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾ムチン1細胞表面結合(MUC1)導入遺伝子、ヒト癌胎児性抗原(CEA)導入遺伝子、及び/または、1以上の共刺激分子を含む、組換えポックスウイルス及びその組成物に関する。少なくとも1つの態様では、修飾MUC1、CEA及び/または共刺激分子の導入遺伝子は、組換えポックスウイルスの連続継代中におけるポックスウイルスの安定性を向上させる。追加の態様では、本発明は、ワクチン及び医薬品組成物に使用するための組換えポックスウイルス及びその組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えポックスウイルスは、感染性微生物に対して、またより最近では、腫瘍に対する免疫療法用ワクチンに利用されている(Mastrangelo et al.J Clin Invest.2000;105(8):1031-1034)。これらポックスウイルス群のうちの2種である、アビポックスウイルス及びオルソポックスウイルスは腫瘍との闘いに有効であることが示されており、潜在的ながん治療薬に関係している(同文献)。
【0003】
1つの例示的なアビポックスウイルス種である鶏痘は、鶏痘ウイルスが哺乳動物細胞に侵入してタンパク質を発現させるが複製不全となることから、ヒトに投与するための安全な媒体であることが示されている(Skinner et al.Expert Rev Vaccines.2005 Feb;4(1):63-76)。加えて、鶏痘ウイルスの発現用媒体としての使用については、がん、マラリア、結核及びAIDSに対するワクチンに関する多数の臨床試験で評価されている(同文献)。
【0004】
最もよく知られたオルソポックスウイルスであるワクシニアは全世界的な天然痘の根絶に利用されており、ベクター及び/またはワクチンとしての有用性が示されている。組換えワクシニアベクターは、p97、HER-2/neu、p53及びETAなどいくつかの腫瘍関連遺伝子を含む幅広い挿入遺伝子を発現するように遺伝子操作されている(Paoletti,et al.,1993)。
【0005】
感染症及びがんに対する免疫療法用ワクチンとして有用であることが判明している1種のポックスウイルス株は改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスである。MVAは、ニワトリ胚線維芽細胞ワクシニアアンカラ株ウイルス(CVA)を516回連続継代することにより作製された(概説は、Mayr,A.,et al.Infection 3,6-14(1975)を参照のこと)。これら長期的な継代の結果、得られたMVAウイルスのゲノムはそのゲノム配列の約31キロベースを欠失しており、そのため、トリ細胞における複製には極めて制限された宿主細胞であると記載された(Meyer,H.et al.,J.Gen.Virol.72,1031-1038(1991))。様々な動物モデルにおいて、得られたMVAが極めて弱毒性であることが示された(Mayr,A.& Danner,K.,Dev.Biol.Stand.41:225-34(1978))。
【0006】
より安全な製品、例えば、ワクチンまたは医薬品などを開発するための、高い安全性プロファイルを有するMVAの株が記載されている。国際PCT公開WO2002042480を参照されたい(例えば、米国特許番号6,761,893及び6,913,752も参照されたい)(それら全ては参照により本明細書に組み込まれる)。そのような変異体は、非ヒト細胞内及び細胞株、特にニワトリ胚線維芽細胞(CEF)内において増殖複製可能であるが、ヒト細胞株(特にHeLa、HaCat及び143B細胞株を含む)内では複製不能である。そのような株はまた、インビボ、例えば、極度の免疫不全状態であり複製ウイルスに感染しやすいトランスジェニックマウスモデルAGR 129など特定のマウス株内において増殖複製不能である。米国特許番号6,761,893を参照されたい。「MVA-BN」と呼ばれるそのようなMVA変異体及びその誘導体(組換え体を含む)が記載されている。国際PCT公開WO2002042480を参照されたい(例えば、米国特許番号6,761,893及び6,913,752も参照されたい)。がん免疫療法用ワクチンの開発では、組換えポックスウイルスにより発現される際に、腫瘍抗原MUC1が様々ながんに対する患者の免疫応答を誘導及び増強することが示されている。例えば、Mehebtash et al.Clin Cancer Res.2011 Nov 15;17(22):7164-73を参照されたい。
【0007】
MUC1(MUC-1、ムチン1、細胞表面結合)(CD227としても周知)は、肺、胃、腸、眼及びいくつかのその他器官の上皮細胞、ならびに、造血細胞及び活性化T細胞など一部の少数の非上皮細胞の頂端面を裏打ちする糖タンパク質である。健常上皮におけるその主な機能は、潤滑及び、化学物質及び微生物物質に対する物理的障壁を提供することである(Hollingsworth MA,Swanson BJ(January 2004).“Mucins in cancer:protection and control of the cell surface”.Nature Reviews Cancer 4(1):45-60)。
【0008】
MUC1は膜貫通ドメインにより頂端面に固定される(Hattrup CL,Gendler,SJ(2008).“Structure and Function of the Cell Surface(Tethered)Mucins”.Annu.Rev.Physiol.70:431-457)。MUC1の細胞外ドメインは、通常は大量にグリコシル化された20アミノ酸の可変数タンデム反復(VNTR)ドメインを含む(様々な個体において反復数は20~120の範囲で変動する)(Brayman M,Thathiah A,Carson DD(January 2004).”MUC1:a multifunctional cell surface component of reproductive tissue epithelia”.Reprod Biol Endocrinol 2:4)。
【0009】
多くのヒト癌(卵巣癌、乳癌、膵臓癌、結腸直腸癌及び前立腺癌など)及び血液悪性腫瘍(多発性骨髄腫及びいくつかのB細胞性非ホジキンリンパ腫)がMUC1を異常に過剰発現していることが示されている(Pecher et al.Anticancer Res.2001 Jul-Aug.21:2591-2596)。正常組織におけるその集中発現とは対照的に、MUC1は腫瘍細胞の全面にわたり均一に分布している(Correa et al.Immunology.Jan 2003;108(1):32-41)。その上、MUC1は通常、腫瘍内において過少グリコシル化され、タンパク質コアの新規及び潜在的に抗原性のエピトープを免疫系に曝露する(Reis et al.Int J Cancer.1998 Aug 21;79(4):402-10)。
【0010】
ヒトがんとのMUC1の関連を考慮し、従来技術では、タンパク質の免疫原性を高めるためにMUC1の修飾を試みている。例えば、Hamblin et al.によるUS2006/0147458では、天然MUC1と比較して低い相同性を有するのに加えて7XVNTRセグメントを有するMUC1配列を設計するために「コドン利用率」を利用した。Hamblin et al.によるUS2006/0147458では、免疫原性を高めるためにHSP-70-MUC1融合タンパク質を作製した。Finn et al.に付与された米国特許番号5,744,144では、2つの20アミノ酸タンデム反復を付加することによりMUC1タンパク質を修飾した。
【0011】
ヒト癌胎児性抗原(CEA)は、結腸腫瘍、直腸腫瘍、胃腫瘍及び膵臓腫瘍の大部分(1)、乳癌の約50%(2)、及び肺癌の70%(3)で発現する180kDの糖タンパク質である。CEAはまた胎児消化管組織内で発現しており、比較的程度は低いが正常結腸上皮で発現している。いくつかの研究が患者内における抗CEA抗体の存在を報告している(4~7)一方で、他の研究では報告されていない(8~10)ために、CEAの免疫原性は不明瞭である。CEAは、1965年に、ヒト消化管の腺癌内におけるがん特異的胎児性抗原として最初に記載された(Gold,P.and Freeman,S.O.(1965)Exp.Med.121:439-462)。それ以来、CEAは、ヒト消化管のほぼ全ての固形がんにおいて過剰に産生される細胞表面抗原として特徴づけられている。ヒトCEAタンパク質の遺伝子がクローニングされている(Oikawa et al(1987)Biochim.Biophys.Res.142:511-518、欧州出願番号EP0346710)。
【0012】
がん治療薬を改良することに対する、かなりのアンメットメディカルニーズが存在している。MUC1抗原及びCEA抗原のがんに対する免疫応答を誘導する効果を考慮すると、がん患者に抗原を効果的に導入できる改良されたワクチンに対するニーズが存在している。
【0013】
加えて、規制認可を求めることにおける困難を成功裏に克服することができるがん治療薬を提供するというニーズが上昇している。特に、大規模製造、不純物などに関わる問題は、治療薬の規制認可を得てそれら治療薬を患者に対する利益とする上で大きなハードルとなり得る。少なくとも1つの態様では、本発明の様々な実施形態の開発で、大規模製造、不純物に関わる困難及びその他の問題が成功裏に克服されている。
【発明の概要】
【0014】
本発明では、1つ以上の反復ヌクレオチド領域内のMUC1、CEA及び/またはTRICOMコード核酸における様々な置換が、組換えポックスウイルス内におけるMUC1導入遺伝子、CEA導入遺伝子及び/またはTRICOM導入遺伝子の安定性を向上させることが明らかとなった。
【0015】
それゆえ、一実施形態において、本発明は連続継代中に安定な組換えポックスウイルスに関する。組換えポックスウイルスは、少なくとも2つの可変N末端反復(VNTR)ドメインを有するMUC1ペプチドをコードする第1の核酸を含み、a)少なくとも2つのVNTRドメインの配置がシャッフルされ、b)少なくとも2つのVNTRドメインがコドン最適化され、組換えポックスウイルスは連続継代中に安定である。
【0016】
1つ以上の好ましい実施形態では、組換えポックスウイルスは、配列番号2(336 MUC)に対して少なくとも95%相同、配列番号3(373 MUC)に対して少なくとも95%相同、配列番号4(399/400 MUC1)に対して少なくとも95%相同、または、配列番号5(420 MUC1)に対して少なくとも95%相同な、第1の核酸を含む。より好ましい実施形態では、組換えポックスウイルスは、配列番号2(336 MUC1)に対して少なくとも95%相同な核酸を含む。別のより好ましい実施形態では、組換えポックスウイルスは、配列番号3(373 MUC)に対して少なくとも95%相同な核酸を含む。
【0017】
更に別の好ましい実施形態では、組換えポックスウイルスは、配列番号13または14(CEA)に対して少なくとも99%相同な核酸を更に含む。好ましい実施形態では、組換えポックスウイルスは配列番号13または14を含む。
【0018】
組換えポックスウイルスは任意の種類のポックスウイルスであり得ることが企図される。ある特定の実施形態では、ポックスウイルスはオルソポックスウイルスまたはアビポックスウイルスである。好ましい実施形態では、オルソポックスウイルスはワクシニアウイルス、MVAウイルス、MVA-BN及びMVA-BNの誘導体から選択される。その他のより好ましい実施形態では、オルソポックスウイルスはMVA、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である。その他の好ましい実施形態では、アビポックスウイルスは鶏痘ウイルスである。
【0019】
その他の実施形態では、本発明の組換えポックスウイルスは、本明細書に記載のMUC1核酸及び/またはCEA核酸に加え、TRICOM(TRIad of COstimulatory Molecules(三つ組み共刺激分子))をコードする1以上の核酸を含む。
【0020】
ある特定の実施形態では、本発明の組換えポックスウイルス及び/または核酸を異種プライムブースト投与レジメンに使用することができる。好ましい実施形態では、レジメンは、a)1回または複数回の初回投与量のMVAウイルス(MVAウイルスは、本開示のMUC1核酸、CEA核酸及び/またはTRICOM核酸のうちの1以上を含む)、及びb)本開示のMUC1核酸、CEA核酸及び/またはTRICOM核酸のうちの1以上を含む1回または複数回のブースト投与量の鶏痘ウイルス、を含む。
【0021】
本明細書に記載の組換えポックスウイルス、核酸、方法、ワクチン及び組成物は、キットとして具体化できることが企図される。それゆえ、好ましい実施形態では、本発明は、組換えオルソポックスウイルス、限定するわけではないが例えば、MVA、本開示のMUC1核酸、CEA核酸及び/またはTRICOM核酸のうちの1以上を含む組換えオルソポックスウイルス;及び組換えアビポックスウイルス、限定するわけではないが例えば、本開示のMUC1核酸、CEA核酸及び/またはTRICOM核酸のうちの1以上を含む鶏痘を含む、組成物、ワクチン、キット、またはその使用に関する。
【0022】
他の実施形態では、本発明は、本開示の1以上の導入遺伝子をコードする、連続継代中に安定な組換えポックスウイルスを作製するための1つ以上の方法に関する。
【0023】
一実施形態では、MUC1導入遺伝子を有する、連続継代中に安定な組換えポックスウイルスを作製するための方法が存在し、その方法は、a)本開示の核酸または発現カセットのいずれか1つを提供すること、及びb)核酸または発現カセットを組換えポックスウイルス内に挿入すること、を含む。
【0024】
別の実施形態では、a)少なくとも2つの可変N末端反復(VNTR)ドメインを有するMUC1ペプチドをコードする第1の核酸配列を提供すること(少なくとも2つのVNTRドメインの配置がシャッフルされ、少なくとも2つのVNTRドメインがコドン最適化される)、及びb)CEAペプチドをコードする第2の核酸を提供すること(第2の核酸は、第2の核酸の少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含み、少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域は、a)3以上の連続反復したGまたはCヌクレオチド及び/またはb)3以上の連続反復したTヌクレオチドと定義される)、を含む、連続継代中に安定な組換えポックスウイルスを作製するための方法が存在し、組換えポックスウイルスは連続継代中に安定である。
【0025】
本発明の追加の目的及び利点については続く説明において部分的に記載されており、その説明により部分的に明らかとなる、または、本発明を実施することにより知ることができる。本発明の目的及び利点は、特に添付の特許請求の範囲が示す要素及び組み合わせにより、理解及び達成されるであろう。
【0026】
本明細書に組み込まれ本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の1つ以上の実施形態を示すものであり、その記載と共に、本発明の原理の説明に役割を果たす。
【0027】
図面に示す全てのペアワイズアライメントは、http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/において利用可能なClustal Omega配列アライメントツールを使用して実施した。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】PANVAC(MUC1及びCEA)の導入遺伝子の不安定性を示すPCR解析を示す図である。示しているのは、MUC1及びCEAをTBC-FPVゲノムに統合するために使用した部位(IGR61/62)のPCRアンプリコンの結果である。強調表示しているのは、想定PCR断片及び潜在的なwt断片のピークである。より小さなサイズのいくつかの欠失断片を検出することができ、34℃または37℃のいずれかにおける反復継代中に富化される。PANVA-Fの継代0~7における結果を示す。
【
図2A】A及びBは、本発明の様々な実施形態によるMUC1のアミノ酸配列及びVNTRドメイン反復のシャッフルを示す図である。AはPANVAC内に存在するMUC1アミノ酸(配列番号6)である。示しているのは、PANVAC MUC1内に存在する6つのVNTRである。BはmBN336、mBN373及びmBN420内に存在するMUC1アミノ酸(配列番号30)である。示しているのは、mBN336、mBN373及びmBN420 MUC1内に存在する3つのVNTRである。下線を付したアミノ酸は、WO2013/103658のアゴニストエピトープを形成するように修飾されたアミノ酸を表している。
【
図2B】A及びBは、本発明の様々な実施形態によるMUC1のアミノ酸配列及びVNTRドメイン反復のシャッフルを示す図である。AはPANVAC内に存在するMUC1アミノ酸(配列番号6)である。示しているのは、PANVAC MUC1内に存在する6つのVNTRである。BはmBN336、mBN373及びmBN420内に存在するMUC1アミノ酸(配列番号30)である。示しているのは、mBN336、mBN373及びmBN420 MUC1内に存在する3つのVNTRである。下線を付したアミノ酸は、WO2013/103658のアゴニストエピトープを形成するように修飾されたアミノ酸を表している。
【
図3】A~Cは、本発明の様々な実施形態によるMUC1 VNTRドメイン反復のペアワイズアライメント及び例示的なコドン最適化を示す図である。AはPANVAC VNTR #2(配列番号7)とmBN336、mBN373、mBN420 VNTR #1(配列番号8)のアライメントであり、BはPANVAC VNTR #1(配列番号9)とmBN336、mBN373、mBN420 VNTR #2(配列番号10)のアライメントであり、CはPANVAC VNTR #3(配列番号11)とmBN336、mBN373、mBN420 VNTR #3(配列番号12)のアライメントである。下線を付したヌクレオチドは、WO2013/103658のアゴニストエピトープを形成するように修飾されたヌクレオチド領域を表している。
【
図4A】本発明による組換えポックスウイルスベース構築物に使用した、PANVACと比較したMUC1コード配列のペアワイズアライメントを示す図である。MUC1 PANVAC(配列番号1)対MUC1 mBN336(配列番号2)のペアワイズアライメントである。1つ以上の置換を含む例示的な反復領域には下線を付している。
【
図4B】本発明による組換えポックスウイルスベース構築物に使用した、PANVACと比較したMUC1コード配列のペアワイズアライメントを示す図である。MUC1 PANVAC(配列番号1)対MUC1 mBN373(配列番号3)のペアワイズアライメントである。1つ以上の置換を含む例示的な反復領域には下線を付している。
【
図4C】本発明による組換えポックスウイルスベース構築物に使用した、PANVACと比較したMUC1コード配列のペアワイズアライメントを示す図である。MUC1 PANVAC(配列番号1)対MUC1 mBN420(配列番号5)のペアワイズアライメントである。1つ以上の置換を含む例示的な反復領域には下線を付している。
【
図5】本発明による組換えポックスウイルスベース構築物に使用した、PANVACのCEA(配列番号13)と比較したmBN373及びmBN420のCEAコード配列(配列番号14)のペアワイズアライメントを示す図である。1つ以上の置換を含む例示的な反復領域には下線を付している。
【
図6】本発明による組換えポックスウイルスベース構築物に使用した、PANVACのB7-1(配列番号16)と比較した、PANVACと比較した、mBN373及びmBN420のB7-1コード配列(配列番号15)のペアワイズアライメントを示す図である。例示的な反復領域は示した置換(アライメントの非
*領域)により示されている。
【
図7】本発明による組換えポックスウイルスベース構築物に使用した、PANVAC(配列番号19)と比較した、PANVACと比較した、mBN373及びmBN420のICAM-1コード配列(配列番号18)のペアワイズアライメントを示す図である。例示的な反復領域は示した置換(アライメントの非
*領域)により示されている。
【
図8】本発明による組換えポックスウイルスベース構築物に使用した、PANVAC(配列番号22)と比較した、PANVACと比較した、mBN373及びmBN420のLFA-3コード配列(配列番号21)のペアワイズアライメントを示す図である。例示的な反復領域は示した置換(アライメントの非
*領域)により示されている。
【
図9】A及びBは、mBN336内におけるMUC1導入遺伝子の安定性を解析する実験を示す図である。Aは治験薬(CTM)/GMP原料の作製中及びそれ以降における継代を代表する7継代にわたるCEAの安定性に関するPCR結果である。BはCTM/GMP原料の作製中及びそれ以降における継代を代表する7継代にわたるMUC1の安定性に関するPCR結果である。CはCTM/GMP原料の作製中及びそれ以降における継代を代表する7継代にわたるTRICOMの安定性に関するPCR結果である。MVA-mBN336Bの作製に使用した組換えプラスミドを陽性対照として使用し、MVA-BN(登録商標)を陰性対照(空のベクター骨格)として使用し、またH
2OをPCR反応の対照として使用した。
【
図10】A及びBは、mBN336の継代5、6及び7の解析を示す図である。Aはシークエンシングによる解析のために送付した継代7試料のPCR増幅である。個々のPCR増幅を、それぞれ個々の導入遺伝子、CEA、MUC1及びTRICOMに対して実施した。Bはフレームシフトをもたらす検出された点変異を含有する遺伝子座を示すMUC1ヌクレオチド配列の電気泳動図(継代5に開始)である。
【
図11】A及びBは、mBN373内におけるMUC1導入遺伝子の安定性を解析する実験を示す図である。Aはそれぞれの継代における挿入導入遺伝子のPCR解析である。FPV-mBN373Bの作製に使用した組換えプラスミドを陽性対照として使用し、FPV(株TBC-FPV)を陰性対照として使用した。Bは挿入導入遺伝子及びそれぞれの挿入隣接領域を包含する5566bp(PCR1)及び5264bp(PCR2)の想定バンドサイズが得られた継代7におけるFPV-mBN373BのPCR解析である。配列解析により、CTM/GMP原料の作製中及びそれ以降における継代を代表する7継代後における組換え体の遺伝的安定性が確認された。
【
図12】mBN420内におけるMUC1導入遺伝子、CEA導入遺伝子及びTRICOM導入遺伝子の安定性を解析するPCR解析を示す図である。示しているのは、5つの導入遺伝子全てをMVA-BNゲノムに統合するために使用した部位(IGR88/89)のPCRアンプリコンの結果である。強調表示しているのは、想定PCR断片及び潜在的なwt断片のピークである。より小さなサイズのいくつかの欠失断片を検出することができ、30℃における反復継代中に富化される。mBN420の継代0~7における結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上記の発明の概要と以下の発明を実施するための形態の両方は例示及び説明のために過ぎず、請求項に記載の本発明を限定するものではないということを理解すべきである。
【0030】
PANVACは、それぞれが導入遺伝子MUC1、CEA及びTRICOMを発現するワクシニア(PANVAC-V)及び鶏痘(PANVAC-F)の組換えポックスウイルスを使用した異種プライムブースト戦略を採用している。PANVACはがんの治療に有効であることが示されており、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌及び膀胱癌を含む様々ながんの臨床試験が現在行われている。MVA-CV301は、臨床試験実施中の別の異種ワクチン混合物である(例えば、Gulley et al.,Clin Cancer Res 2008;vol.14:10,Tsang et al.Clin Cancer Res 2005;vol.11を参照のこと)。MVA-CV301は、それぞれが導入遺伝子MUC1、CEA及びTRICOMを発現するMVA及び鶏痘を使用した異種プライムブースト戦略を採用している。
【0031】
PANVAC及びMVA-CV301はがんの治療に有効ではあるが、PANVAC組換えポックスウイルスの導入遺伝子の安定性は、連続継代中及びウイルス産生中により低下することになる。表1及び表2に示すが、PANVAC-V及びPANVAC-Fの連続継代後において、MUC1及びCEAを発現するウイルスのパーセンテージは徐々に低下している。
【0032】
【0033】
【0034】
少なくとも1つの態様では、MUC1及び/またはCEAの発現低下は、MUC1導入遺伝子及び/またはCEA導入遺伝子が少なくとも部分的に低下した結果であると考えられる。
図1は、PANVACのMUC及びCEA遺伝子組換え配列の低下を示している。
図1において、組換えPANVAC-F産物は4445bpであると想定された。しかしながら、図示されているように、実験は、MUC1及びCEAの断片化配列であることが確認された複数のより小さなサイズの断片の存在を示した(データは省略)。MUC1導入遺伝子及び従来の組換えポックスウイルスにおける発現の低下及び不安定性は、CV301組換えポックスウイルスの産生及び純度を妨げる。
【0035】
本発明の様々な核酸及び組換えポックスウイルスの作製に先立って、導入遺伝子を安定化させるために、本発明者らは、PANVACの組換えワクシニアウイルス、組換えMVAウイルス及び組換え鶏痘ウイルス、ならびにMVA-CV301をカスタマイズ及び/または修飾する複数の試みを実施した。表3及び表4に示すが、導入遺伝子及び/または組換えワクシニアウイルス、組換えMVAウイルス及び組換え鶏痘ウイルスに対する修飾は、(i)導入遺伝子を挿入する遺伝子間領域(IGR)を変えるまたは修飾すること、(ii)1つ以上の導入遺伝子のコドンを最適化すること、(iii)導入遺伝子プロモーターを変更すること、及び、(iv)MUC1導入遺伝子内のVNTR領域の数及び配置を改変すること、を含んでいた。表に記載されているように、構築物の多くは、導入遺伝子発現の低下をもたらす機能低下変異または断片欠失のいずれかにより、安定的な作製に失敗した。
【0036】
【0037】
【0038】
これら複数の試みの後、MVA-mBN336を構築した。本明細書に記載しているが、MVA-mBN336は、修飾MUC1導入遺伝子、CEA導入遺伝子及び修飾TRICOM導入遺伝子を含むMVA-CV301組換えポックスウイルスである。
図9及び
図10に示すように、MVA-mBN336は、PANVAC(
図1及び表1を参照のこと)と比較して導入遺伝子の安定性を示した。
図10に示すように、MVA-mBN336は、継代4中において、導入遺伝子MUC1、CEA及びTRICOMの全てにおける安定性を示した。継代5に開始して、解析原料の小さな集団内にフレームシフト変異が検出された。継代4中に示された安定性は、PANVACに伴う安定性問題を克服するMVA-mBN336の能力、及び、MUC1を含む安定ポックスウイルスを作製するためのその他の試みを示している。MVAベースワクチンの製造及びより大規模な製造が通常、継代3または継代4のMVAから得られるので、MVA-mBN336の安定性は更なる利点である。このように、MVA-mBN336が継代4中に安定であることから、大規模製造を開始することが可能となり、安定性に関する大きな規制の困難を克服することが可能となる。
【0039】
不安定性の問題に対処して是正するために、本発明の核酸を合成し、MUC1導入遺伝子、CEA導入遺伝子及びTRICOM導入遺伝子をコードする1以上の核酸を提供した。本開示によって示すように、本発明のMUC1核酸、CEA核酸及びTRICOM核酸は、組換えポックスウイルスの連続継代中における、組換えポックスウイルス及びそれら核酸内に含まれる導入遺伝子の遺伝的安定性を向上させることにつながる。
【0040】
それゆえ、様々な実施形態では、本発明は、MUC1抗原、CEA抗原及び/またはTRICOM抗原をコードする1以上の新規核酸を有する組換えポックスウイルスを提供する。本明細書でより詳細に提供するように、少なくとも1つの態様では、組換えポックスウイルスの一部に組み込まれる場合、1以上の修飾MUC1、CEA及び/またはTRICOMコード核酸配列は、組換えポックスウイルス内における導入遺伝子の安定性及び存在を向上させる。
【0041】
定義
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。それゆえ、例えば、「a nucleic acid(核酸)」への言及は核酸のうちの1以上を含み、また「the method(方法)」への言及は、本明細書に記載の方法に変更または置き換え可能な当業者に周知の同等のステップ及び方法への言及を含む。
【0042】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の要素における全ての要素それぞれを意味するものと理解されたい。本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物を、当業者は理解し、または、通常の実験を行うだけで確認することが可能であろう。そのような等価物が本発明に包含されることが企図される。
【0043】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲の全体にわたり、文脈上特に必要としない限り、「含む(comprise)」という用語ならびに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、記載した完全体もしくはステップ、または完全体の群を包含するが、いかなる他の完全体もしくはステップまたは完全体もしくはステップの群をも除外しないことを意味するものと理解されたい。本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(containing)」または「含む(including)」という用語で、あるいは本明細書で使用する場合に時として、「有する」という用語で置き換えることができる。上記の用語(含む(comprising)、含む(containing)、含む(including)、有する)のうちのいずれも、本発明の態様または実施形態の文脈において本明細書で使用する際にはいつも、あまり好ましくはないが、「からなる」という用語で置き換えることができる。本明細書で使用する場合、「からなる」は、クレーム要素に明記されていない任意の要素、工程または成分を除外する。本明細書で使用する場合、「から本質的になる」は、クレームの基本的な特徴及び新規特徴に対して実質的な影響を及ぼさない材料またはステップを除外しない。
【0044】
本明細書で使用する場合、複数の列挙要素間にある接続詞的な「及び/または」という用語は、個々の選択肢と組み合わせた選択肢の両方を包含するものと理解される。例えば、2つの要素が「及び/または」で等位接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素を伴わずに第1の要素を適用することを意味する。第2の選択肢は、第1の要素を伴わずに第2の要素を適用することを意味する。第3の選択肢は、第1の要素及び第2の要素を共に適用することを意味する。これら選択肢のうちのいずれか1つがその意味の中に含まれると理解され、したがって本明細書で使用する場合、「及び/または」という用語の要件が満たされる。2つ以上の選択肢の同時適用もその意味の中に含まれ、したがって「及び/または」という用語の要件が満たされる。
【0045】
本明細書に記載の「変異」は、本明細書において、核酸に対する修飾、例えば、欠失、付加、挿入及び/または置換などのいずれかと定義される。
【0046】
本明細書で使用する場合、「共刺激分子」とは、それらのリガンドに結合する際に、T細胞が活性となることができるように第2のシグナルを伝達する分子のことである。T細胞上の最もよく知られた共刺激分子はCD28であり、B7-1(B7.1またはCD80とも呼ばれる)またはB7-2(CD86としても周知)のいずれかに結合する。追加の共刺激分子はB7-3である。T細胞活性化のための第2のシグナルも提供する補助分子は、細胞内接着分子(ICAM-1及びICAM-2)、白血球機能関連抗原(LFA-1、LFA-2及びLFA-3)を含む。インテグリン及び腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーメンバーも共刺激分子として機能し得る。
【0047】
組換えポックスウイルス、MUC1、CEA、TRICOM及びその他の導入遺伝子と関連して本明細書で使用する場合、組換えポックスウイルスの「遺伝的安定性」、「安定性」、「発現の安定性」、「連続継代中に安定」、「連続継代中の安定性」または「連続継代中における発現の安定性」とは、組換えポックスウイルスの遺伝子組換えヌクレオチド配列が、組換えポックスウイルスの連続継代中に物質的にインタクト及び/または物質的に変化しない状態を少なくとも継代3または継代4となるまで維持することを意味するものと理解される。少なくとも継代3または継代4中における安定性を有する組換えポックスウイルスは、大規模製造により作製される最終作製物として特に重要であり、ポックスウイルスの作製は通常、継代3または継代4である。「物質的にインタクト及び/または物質的に変化しない」とは、継代の数が増加するにつれて導入遺伝子発現の一定の低下を引き起こす単一変異または断片変異(例えば、置換、欠失などを含む)が存在しないことを意味する。例えば、表1及び表2に示すように、PANVACにおける様々な導入遺伝子の発現レベルは継代の数が増加するにつれて低下した。本出願の実施例2~実施例4に記載のアッセイを含むがこれらに限定されない、遺伝的安定性または導入遺伝子の安定性を解析できる周知の様々な方法が当技術分野において存在する。安定性を測定するための当該技術分野において周知の追加の方法としては、PCR、FACS、FACSによる導入遺伝子共発現の測定などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0048】
本明細書で使用する場合、「宿主細胞」とは、外来分子、ウイルスまたは微生物の開発及び/または産生を目的として、外来分子、ウイルスまたは微生物を導入された細胞のことである。本明細書に記載の1つの非限定例では、細胞培養に好適な細胞、例えば、CEF細胞を、ポックスウイルスに感染させてもよく、またはその他の代替実施形態では、外来遺伝子または異種遺伝子を含むプラスミドベクターに感染させてもよい。それゆえ、好適な細胞培養物は、ポックスウイルス及び/または外来遺伝子もしくは異種遺伝子の宿主として機能する。
【0049】
本明細書に記載の核酸配列に関する「パーセント(%)配列相同性またはパーセント(%)配列同一性」は、必要に応じ、最大パーセント配列同一性を得るために配列をアラインしてギャップを導入した後における、参照配列(すなわち、そこから候補配列が由来する核酸配列)内のヌクレオチドと同一な候補配列内のヌクレオチドのパーセンテージと定義される(いかなる保存的置換も配列同一性の一部としては考慮しない)。当業者に周知の様々な方法で、例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、パーセントヌクレオチド配列同一性またはパーセントヌクレオチド配列相同性を測定することを目的としたアライメントを実施することができる。当業者は、比較する配列の全長にわたる最大アライメントを得るのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0050】
例えば、核酸配列用の適切なアライメントは、Smith and Waterman,(1981),Advances in Applied Mathematics 2:482-489の局所相同性アルゴリズムにより提供されている。Dayhoff,Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff ed.,5 suppl.3:353-358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USAが開発してGribskov(1986),Nucl.Acids Res.14(6):6745-6763が正規化したスコアリングマトリックスを使用することにより、このアルゴリズムをアミノ酸配列に適用することができる。配列のパーセント同一性を測定するためのこのアルゴリズムの例示的な実施は、「BestFit」ユーティリティアプリケーションにおいてGenetics Computer Group(Madison,Wis.)により提供されている。この方法のデフォルトパラメータについては、the Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual,Version 8(1995)(Genetics Computer Group,Madison,Wis.から入手可能)に記載されている。本発明の文脈におけるパーセント同一性を確認するための好ましい方法は、University of Edinburghが著作権を有し、John F.Collins及びShane S.Sturrokが開発しIntelliGenetics,Inc.(Mountain View,Calif)が販売するプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。このパッケージスイートから、スコアリングテーブルにデフォルトパラメータ(例えば、12のギャップ開始ペナルティ、1のギャップ伸長ペナルティ、及び6のギャップ)を使用するSmith-Watermanアルゴリズムを採用してもよい。「整合」値から作製したデータは「配列同一性」を表している。配列間におけるパーセント同一性またはパーセント類似性を算出するためのその他の好適なプログラムは通常、当該技術分野において周知であり、例えば、別のアライメントプログラムは、デフォルトパラメータで使用されるBLASTである。例えば、以下のデフォルトパラメータ:genetic code=standard;filter=none;strand=both;cutoff=60;expect=10;Matrix=BLOSUM62;Descriptions=50 sequences;sort by=HIGH SCORE;Databases=non-redundant,GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIRを使用して、BLASTN及びBLASTPを使用してもよい。これらプログラムの詳細については、以下のインターネットアドレスhttp://blast.ncbi.nlm.nih.gov/において見出すことができる。
【0051】
「プライムブーストワクチン接種」または「プライムブーストレジメン」という用語は、特定の抗原を標的とするワクチンの第1のプライム注射の後に間隔をあけた同一ワクチンの1回または複数回のブースト注射を使用した、ワクチン接種戦略またはワクチン接種レジメンのことを意味する。プライムブーストワクチン接種は同種または異種であってもよい。同種プライムブーストワクチン接種では、プライム注射と1回または複数回のブースト注射の両方用に同一の抗原及びベクターを含むワクチンを使用する。異種プライムブーストワクチン接種では、プライム注射と1回または複数回のブースト注射の両方用に同一の抗原を含むが、プライム注射及び1回または複数回のブースト注射用に異なるベクターを含む、ワクチンを使用する。例えば、同種プライムブーストワクチン接種では、プライム注射用に1以上の抗原を発現する核酸を含む組換えポックスウイルス、及び、1回または複数回のブースト注射用に1以上の抗原を発現する同一の組換えポックスウイルスを使用してもよい。それに対し異種プライムブーストワクチン接種では、プライム注射用に1以上の抗原を発現する核酸を含む組換えポックスウイルス、及び、1回または複数回のブースト注射用に1以上の抗原を発現する異なる組換えポックスウイルスを使用してもよい。
【0052】
「組換え体」という用語は、自然には発生しないか、または、天然に認められない配置で別のポリヌクレオチドに結合するかのいずれかである、半合成または合成由来のポリヌクレオチドのことを意味する。
【0053】
本明細書で使用する場合、「連続継代」は、細胞継代を使用した組換えウイルスの作製に関する。単なる例ではあるが、初期継代において宿主細胞をウイルスまたは組換えウイルスに感染させる。初期継代においてウイルスを複製して作製する。宿主細胞の感染及び培養後、宿主細胞からウイルスを採取して細胞/ウイルス懸濁液内に回収する。通常、この手順は続く細胞継代において複数回繰り返され、それぞれの継代ではより多くの組換えウイルスを作製及び複製する。
【0054】
本明細書で使用する場合、「導入遺伝子」または「異種」遺伝子は、野生型ポックスウイルスゲノム(例えば、ワクシニア、鶏痘またはMVA)には存在しない核酸またはアミノ酸配列と理解される。組換えポックスウイルスが宿主細胞へと投与された後に、対応する異種遺伝子産物、すなわち、「異種抗原」及び/または「異種タンパク質」として発現されるように、「導入遺伝子」または「異種遺伝子」(ワクシニアウイルスなどのポックスウイルス内に存在する場合)がポックスウイルスゲノム内に組み込まれることを、当業者は理解している。発現は通常、ポックスウイルス感染細胞内における発現を可能とする調節因子と異種遺伝子を機能的に連結させることにより達成される。調節因子が天然または合成のポックスウイルスプロモーターを含んでいることが好ましい。
【0055】
「TRICOM」、Triad of COstimlatory Molecules(三つ組み共刺激分子)(TRICOMとしても周知)としては、B7-1(B7.1またはCD80としても周知)、細胞内接着分子-1(ICAM-1、CD54としても周知)及びリンパ球機能関連抗原-3(LFA-3、CD58としても周知)を含み、一般的には、抗原特異的免疫応答を亢進させるために特定の抗原を発現する組換えウイルスベクター(例えば、ポックスウイルスベクター)内に含まれる。TRICOMの個々の構成要素は、同一または異なるプロモーターの制御下にあってもよく、また特定の抗原を含む同一ベクター上または別々のベクター上に提供されてもよい。例示的なベクターについては、例えば、Hodge et al.,“A Triad of Costimulatory Molecules Synergize to Amplify T-Cell Activation,”Cancer Res.59:5800-5807(1999)及び米国特許番号7,211,432B2に開示されている(それらの両方は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0056】
「ベクター」とは、異種ポリヌクレオチドを含み得るDNAプラスミドもしくはRNAプラスミドまたはウイルスのことを意味する。異種ポリヌクレオチドは、予防または治療を目的とした目的の配列を含んでいてもよく、任意選択的に、発現カセットの形態であってもよい。本明細書で使用する場合、ベクターは、最終的な標的細胞または標的対象内において複製可能である必要はない。この用語はクローニングベクター及びウイルスベクターを含む。
【0057】
新規MUC1核酸配列
本発明の開発において、本発明者らは、組換えポックスウイルス、特に、オルソポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、MVA、MVA-BN)及びアビポックスウイルス(例えば、鶏痘ウイルス)の継代過程にわたり、MUC1、CEA及び/またはTRICOMをコードする核酸における1つ以上の領域が変異(例えば、欠失、置換など)し、それにより組換えポックスウイルス及びそこに含まれる導入遺伝子に不安定性がもたらされることを明らかにした。
【0058】
VNTR領域の修飾
上記のとおり、VNTR領域は、20アミノ酸の可変数タンデム反復(VNTR)ドメイン(異なる個体において反復数は20~120の範囲で変動する)を含むMUC1の細胞外ドメインである。Brayman et al.を参照されたい。VNTRドメインのアミノ酸配列が通常同一である(例えば、
図2Aを参照のこと)一方で、VNTRのヌクレオチド配列は互いに異なり得る。
図2Aに示すように、PANVACの一部であるMUC1が6つのVNTRを有するように合成された。
【0059】
一態様では、本発明の開発過程にわたり、MUC1 VNTR領域をコードする核酸に対する1つ以上の修飾が、組換えポックスウイルス内におけるMUC1導入遺伝子の安定性を向上させたことが明らかとなった。より詳細には、本発明者らは、VNTRをコードする核酸をシャッフルすることにより、PANVAC MUC1と比較してMUC1導入遺伝子の安定性が更に向上することを明らかにした。本明細書で使用する場合、VNTRを「シャッフルする」は、VNTRドメイン反復をコードする核酸の順番を再編成することと定義される。
図2A及び
図2Bの記載は、VNTRのシャッフルの非限定例である。
図2Aにおいて、PANVAC VNTRドメインの順番はVNTR#1~6で示されている。
図2Bを見ると、mBN336、mBN373、mBN420のVNTR#1をコードする核酸は、PANVACのVNTR#をコードする核酸に対応している。mBN336、mBN373、mBN420のVNTR#2は、PANVACのVNTR#1に対応している。その結果、mBN336、mBN373、mBN420のMUC1を合成する上で、PANVAC VNTR#1及び#2の順番はシャッフルされた。
【0060】
本発明により、
図2A及び
図2Bに示すVNTRドメインはMUC1 VNTRドメインの単なる代表例であり、VNTRドメインの数及びVNTRがシャッフルされる配置の数は様々であり得るということが理解される。
【0061】
VNTRのシャッフルに加えて、VNTRドメインのコドンを最適化することにより、MUC1導入遺伝子の安定性が更に向上することが明らかとなった。本明細書で使用する場合、「コドンを最適化する」は、反復ヌクレオチド配列の相同性によりVNTRのヌクレオチド配列に対する変異及び/または欠失の可能性を最小限とするために、VNTRの1つ以上のヌクレオチドを置換することと定義される。
【0062】
図3A~
図3Bのアライメントに示す、更に具体的な実施形態では、本発明の核酸のうちの1以上はVNTRドメイン内に様々な置換を含む。
図3Aに示すように、mBN373及びmBN420(以下、mBN373/420)のVNTR1は、WO2013/103658に記載のアゴニストエピトープをコードする1つ以上のヌクレオチド配列(下線で示す領域)に加えて、説明したコドン最適化置換を含む。
図3B及び
図3Cに示すように、mBN373/420修飾のVNTR2及び3は、説明したコドン最適化置換を含む。
【0063】
本発明により、
図3A~
図3Cに示すVNTRドメインに対する説明したコドン最適化修飾はMUC1 VNTRドメインコドン最適化の単なる代表例であるということが理解される。単なる例ではあるが、本発明では、VNTRドメイン内の特定の修飾位置において代替ヌクレオチドを置換してもよいことが企図される。VNTRドメイン内の特定の修飾位置は、修飾がサイレント修飾となるように様々であり得ることが更に企図される。本明細書で使用する場合、サイレント修飾とは、修飾がMUC1抗原のアミノ酸配列に影響を及ぼさないことを意味する。
【0064】
それゆえ、一実施形態では、本発明のMUC1核酸は、1)シャッフルされて2)コドン最適化された1つ以上のVNTRドメイン領域を含む。
【0065】
MUC1の非VNTR領域に対する修飾
本発明の別の態様では、VNTRドメインの外側の領域に対して1以上の修飾を行った。本発明の開発過程にわたる更に特定の態様では、MUC1 VNTR領域の外側(非VNTR領域)のそれらヌクレオチド領域内における1つ以上の修飾が、MUC1導入遺伝子の安定性を向上させたことが明らかとなった。それら領域(下線を付したヌクレオチド)の代表的なサンプルを以下に示す。VNTR領域は灰色で網掛けしている。
【0066】
【0067】
ウイルスの連続継代中に安定な組換えポックスウイルスを作製するために、本発明の1つ以上の核酸を合成した。より詳細には、
図2A~
図2Cに記載しているが、示すとおり、PANVAC MUC1(配列番号1)のVNTR領域の外側の下線領域のうちの1つまたは複数に対して1つ以上の置換を行った。
【0068】
それにより、本発明の一実施形態では、MUC1核酸のVNTR領域の外側の反復ヌクレオチド領域のうちの少なくとも1つに置換を含む新規MUC1核酸が存在する。少なくとも1つの態様では、反復領域のうちの1つ以上は、(i)3以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)3以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTまたはCヌクレオチドと定義される。更に特定の態様では、反復ヌクレオチド領域のうちの1つ以上は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTまたはCヌクレオチドと更に定義される。あるその他の更に特定の態様では、連続反復したヌクレオチドは、(i)連続したGヌクレオチド、(ii)連続したCヌクレオチド及び/または(iii)連続したTヌクレオチドと定義される。
【0069】
図2A~
図2Cに示すように、新規MUC1核酸は、MUC1核酸のVNTR領域の外側の少なくとも2、3、4または5つの反復ヌクレオチド領域内に置換を含み得る。更なる態様では、新規MUC1核酸は、VNTR領域の外側の少なくとも10、15、20または25の反復ヌクレオチド領域内に置換を含み得る。
【0070】
なおも追加の態様では、新規MUC1核酸は、組換えポックスウイルスの連続継代中により変異する傾向のあるVNTR領域の外側の領域内に少なくとも1つの置換を含み得る。例示的な態様では、新規MUC1核酸は、表5に示すPANVAC MUC1(配列番号1)のヌクレオチド領域及び/またはこれらの組み合わせから選択されるVNTR領域の外側のMUC1ヌクレオチド反復領域のうちの1つまたは複数内に少なくとも1つの置換を含み得る。
【0071】
【0072】
より好ましくは、新規MUC1核酸は、表6に示すPANVAC MUC1(配列番号1)のヌクレオチド領域及び/またはこれらの組み合わせから選択されるVNTR領域の外側のそれらMUC1ヌクレオチド反復領域内に少なくとも1つの置換を含み得る。
【0073】
【0074】
本発明により、表5及び表6に列挙したヌクレオチド位置は、MUC1の非VNTR領域内に存在するMUC1核酸反復領域の単なる代表例であるということが理解される。それゆえ、本明細書に記載の反復領域は配列番号1内における特定の位置(例えば、240~253)を有しているが、その特定の領域は別のMUC1核酸内における別のヌクレオチド位置に対応していてもよい。
【0075】
追加の実施形態では、VNTRの外側の反復領域に対する修飾及び/またはVNTR領域内の修飾はサイレント修飾であり、修飾がMUC1抗原のアミノ酸配列に影響を及ぼさないことを意味する。少なくとも1つの態様では、1つ以上の反復領域を修飾することによりMUC1導入遺伝子の安定性を向上させることは、ある特定のヌクレオチド及び/または反復領域のみがMUC1のアミノ酸配列に影響を及ぼさずに修飾され得るという点で困難であった。
【0076】
前述したことを考慮して、1つ以上の実施形態では、本発明は、1)VNTRドメイン反復にa)シャッフル及びb)コドン最適化から選択される1つ以上の修飾、及び2)VNTRの外側の反復領域に1つ以上の修飾を含む、1以上のMUC1核酸を含む。
【0077】
別の態様では、本発明のMUC1核酸は、対象内におけるMUC1導入遺伝子の免疫原性を高めるように構成された1つ以上の修飾を含み得る。1つの非限定例では、MUC1核酸は、WO2013/103658に記載のアゴニストエピトープ(それらは参照により本明細書に組み込まれる)のうちの1つまたは複数を含むように修飾され得る。
【0078】
【0079】
好ましい実施形態では、MUC1核酸は、配列番号2(336 MUC)、配列番号3(373 MUC)、配列番号4(399/400 MUC1)または配列番号5(420 MUC1)に対して少なくとも95%相同なヌクレオチド配列を含む。なおも追加の好ましい実施形態では、MUC1核酸は、配列番号2(336 MUC)、配列番号3(373 MUC)、配列番号4(399/400 MUC1)または配列番号5(420 MUC1)に対して少なくとも96%、97%または98%相同なヌクレオチド配列を含む。より好ましい実施形態では、MUC1核酸は、配列番号2(336 MUC)、配列番号3(373 MUC)、配列番号4(399/400 MUC1)または配列番号5(420 MUC1)から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0080】
なおもその他の好ましい実施形態では、MUC1核酸は、配列番号31、配列番号32、配列番号33または配列番号34に対して少なくとも95%相同なヌクレオチド配列を含む。なおも追加の好ましい実施形態では、MUC1核酸は、配列番号31、配列番号32、配列番号33または配列番号34に対して少なくとも96%、97%または98%相同なヌクレオチド配列を含む。より好ましい実施形態では、MUC1核酸は、配列番号31、配列番号32、配列番号33または配列番号34から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0081】
新規CEA核酸配列
本発明の別の態様では、CEA核酸の反復領域内における1つ以上の修飾が、CEA導入遺伝子の安定性を向上させることが明らかとなった。それら領域の代表的なサンプルを、
図5のペアワイズアライメントで示す。それら例示的な反復領域は示した置換(アライメントの非
*領域)により示されている。
【0082】
少なくとも1つの態様では、置換は組換えポックスウイルスの安定性を更に向上させた。このことは、
図9及び
図10に示すmBN336の安定性データにより少なくとも部分的に示されている。上記のとおり、mBN336はMUC1、CEA及びTRICOMを含む。mBN336が修飾MUC1核酸を含む一方で、mBN336はCEAに対する任意の追加の修飾を含まず、TRICOM共刺激分子に対する中間段階の修飾のみを含む。その結果、本明細書で開示するMUC1に対する修飾が組換えポックスウイルスの安定性を向上させた一方で、継代5に開始する不安定性は維持された。一旦修飾CEAがmBN373内の鶏痘ウイルスの一部に含まれると、継代5の後から継代7において導入遺伝子及び鶏痘ウイルスの安定性が示された(例えば、
図11を参照のこと)。
【0083】
それゆえ、様々な実施形態では、本発明は、CEA核酸の少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含むCEAペプチドをコードする核酸(CEA核酸)を含み、少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域は、a)3以上の連続反復したGまたはCヌクレオチド及び/またはb)3以上の連続反復したTヌクレオチドと定義される.追加の実施形態では、反復ヌクレオチド領域は、a)3以上の連続反復したGヌクレオチド及び/またはb)3以上の連続反復したCヌクレオチドと更に定義される。
【0084】
好ましい実施形態では、CEA核酸の反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと定義される。追加の好ましい実施形態では、反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される。
【0085】
1つ以上の実施形態では、CEA核酸は、第2の核酸の少なくとも2、3、4、5または10の反復ヌクレオチド領域に少なくとも1つの置換を含む。好ましい実施形態では、CEA核酸は、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15及び/または少なくとも19の反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む。より好ましい実施形態では、CEA核酸は、第2の核酸の19領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む。
【0086】
より好ましい実施形態では、CEA核酸は配列番号14(mBN373/420 CEA)を含む。
【0087】
新規TRICOM核酸配列
本発明の別の態様では、TRICOM共刺激分子をコードする1以上の核酸に対して1超の修飾を行った。更に特定の態様では、本発明の開発過程にわたり、TRICOM核酸の反復領域内における1つ以上の修飾が、TRICOM導入遺伝子の安定性を向上させることが明らかとなった。それら領域の代表的なサンプルを、
図6~
図8のペアワイズアライメントで示す。それら例示的な反復領域は示した置換(アライメントの非
*領域)により示されている。
【0088】
少なくとも1つの態様では、1つ以上の置換は、組換えポックスウイルスの安定性を更に向上させた。このことは、
図9及び
図10に示すmBN336の安定性データにより少なくとも部分的に示されている。上記のとおり、mBN336は修飾MUC1を含む。しかしながら、mBN336はCEAに対する任意の追加の修飾を含まず、TRICOM共刺激分子に対する中間段階の修飾のみを含む。その結果、本明細書で開示するMUC1に対する修飾がmBN336の安定性を向上させた一方で、継代5の後における不安定性は維持された。一旦修飾導入遺伝子が鶏痘ウイルスの一部に含まれると、継代5の後から継代7において導入遺伝子及びポックスウイルスの安定性が示された(例えば、
図11を参照のこと)。
【0089】
一実施形態では、新規TRICOM共刺激分子は、配列番号15または17(B7-1)に対して少なくとも80%相同なヌクレオチド配列、配列番号18または20(ICAM-1)に対して少なくとも80%相同なヌクレオチド配列、及び配列番号21または23(LFA-3)に対して少なくとも80%相同なヌクレオチド配列、を含む。なおも追加の好ましい実施形態では、TRICOM核酸は、配列番号15または17(B7-1)、配列番号18または20(ICAM-1)、及び/または配列番号21または23(LFA-3)に対して少なくとも85%、90%または95%相同なヌクレオチド配列を含む。なおもより好ましい実施形態では、TRICOM核酸は、配列番号17(B7-1)、配列番号20(ICAM-1)及び/または配列番号23(LFA-3)に対して少なくとも85%、90%または95%相同なヌクレオチド配列を含む。
【0090】
別の実施形態では、TRICOM共刺激分子は、配列番号15または17(B7-1)、配列番号18または20(ICAM-1)、及び/または配列番号21または23(LFA-3)を含む。
【0091】
更に別の実施形態では、TRICOM共刺激分子は、配列番号17(B7-1)、配列番号20(ICAM-1)及び/または配列番号23(LFA-3)を含む。
【0092】
1つの好ましい実施形態では、新規TRICOM共刺激分子は、配列番号15(B7-1)に対して少なくとも80%相同なヌクレオチド配列、配列番号18(ICAM-1)に対して少なくとも80%相同なヌクレオチド配列、及び配列番号21(LFA-3)に対して少なくとも80%相同なヌクレオチド配列、を含む。なおも追加の好ましい実施形態では、TRICOM核酸は、配列番号15(B7-1)、配列番号18(ICAM-1)及び/または配列番号21(LFA-3)に対して少なくとも85%、90%または95%相同なヌクレオチド配列を含む。
【0093】
別の好ましい実施形態では、新規TRICOM共刺激分子は、配列番号17(B7-1)に対して少なくとも80%、90%または95%相同なヌクレオチド配列、配列番号20(ICAM-1)に対して少なくとも80%、90%または95%相同なヌクレオチド配列、及び配列番号23(LFA-3)に対して少なくとも80%、90%または95%相同なヌクレオチド配列、を含む。
【0094】
別の実施形態では、TRICOM共刺激分子は、配列番号15(B7-1)、配列番号18(ICAM-1)及び/または配列番号21(LFA-3)を含む。
【0095】
別の実施形態では、TRICOM共刺激分子は、配列番号17(B7-1)、配列番号20(ICAM-1)及び/または配列番号23(LFA-3)を含む。
【0096】
本開示は、本明細書で提供する新規核酸配列に対して相補的な核酸配列を組み入れることを企図する。
【0097】
組換えポックスウイルス
1つ以上の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のMUC1核酸のうちの1以上を含む組換えポックスウイルスを含む。より好ましい実施形態では、組換えポックスウイルスは、本明細書に記載のMUC1核酸配列及びCEA核酸配列を含む。
【0098】
好ましい実施形態では、MUC1核酸は、配列番号2、配列番号3(373 MUC)、配列番号5(420 MUC1)または配列番号4(399/400 MUC1)に対して少なくとも95%相同なヌクレオチド配列、及び配列番号13または14を含むCEA核酸配列を含む。
【0099】
なおも追加の実施形態では、本開示の組換えポックスウイルスは1以上の共刺激分子、限定するわけではないが例えば、本明細書に記載の共刺激分子を含む。1つの好ましい実施形態では、共刺激分子はTRICOM(B7-1、ICAM-1及びLFA-3)を含む。より好ましい実施形態では、B7-1共刺激分子は、配列番号15、配列番号16及び配列番号17を含む核酸配列から選択される。より好ましい実施形態では、ICAM-1共刺激分子は、配列番号18、配列番号19及び配列番号20を含む核酸配列から選択される。より好ましい実施形態では、LFA-3共刺激分子は、配列番号21、配列番号22及び配列番号23を含む核酸配列から選択される。より好ましい実施形態では、B7-1、ICAM-1及びLFA-3は、それぞれ、配列番号15、配列番号18及び配列番号21を含む核酸配列から選択される。別のより好ましい実施形態では、B7-1、ICAM-1及びLFA-3は、それぞれ、配列番号17、配列番号20及び配列番号23を含む核酸配列から選択される。
【0100】
本開示の様々な実施形態では、組換えポックスウイルスは、オルソポックスウイルス、限定するわけではないが例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルス、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体であることが好ましい。
【0101】
ワクシニアウイルス株の例は、Temple of Heaven株、Copenhagen株、Paris株、Budapest株、Dairen株、Gam株、MRIVP株、Per株、Tashkent株、TBK株、Tom株、Bern株、Patwadangar株、BIEM株、B-15株、Lister株、EM-63株、New York City Board of Health株、Elstree株、Ikeda株及びWR株である。好ましいワクシニアウイルス(VV)株はWyeth(DRYVAX)株(米国特許7,410,644)である。
【0102】
別の好ましいVV株は改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)(Sutter,G.et al.[1994],Vaccine 12:1032-40)である。本発明の実施に有用でありブダペスト条約の要件に従い寄託されているMVAウイルス株の例は、1994年1月27日、European Collection of Animal Cell Cultures(ECACC),Vaccine Research and Production Laboratory,Public Health Laboratory Service,Centre for Applied Microbiology and Research,Porton Down,Salisbury,Wiltshire SP4 0JG,United Kingdomに寄託番号ECACC 94012707で寄託された株MVA 572、2000年12月7日、ECACC 00120707で寄託されたMVA 575株、2000年8月30日、European Collection of Cell Cultures(ECACC)に番号V00083008で寄託されたMVA-BN株であり、MVA-BNの誘導体は追加の例示的な株である。
【0103】
MVA-BNの「誘導体」とは、本明細書に記載のMVA-BNと本質的に同一の複製特性を示すが、それらゲノムの1つ以上の部位に差異を示すウイルスのことを意味する。MVA-BN、ならびにその誘導体は、複製不能であり、インビボ及びインビトロにおいて増殖複製不全であることを意味する。インビトロにおいてより具体的には、MVA-BNまたはその誘導体は、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)内において増殖複製可能だが、ヒト角化細胞株HaCat内(Boukamp et al(1988),J.Cell Biol.106:761-771)、ヒト骨骨肉腫細胞株143B(ECACC寄託番号91112502)、ヒト胎児腎臓細胞株293(ECACC寄託番号85120602)及びヒト子宮頸部腺癌細胞株HeLa(ATCC寄託番号CCL-2)においては増殖複製不可能であると記載されている。加えて、MVA-BNまたはその誘導体は、Hela細胞及びHaCat細胞株内のMVA-575と比較して、少なくとも2倍より少ない、より好ましくは3倍より少ない、ウイルス増殖比率を有している。MVA-BN及びその誘導体のこれら特性に対する検査及びアッセイについては、WO02/42480(米国特許出願番号2003/0206926)及びWO03/048184(米国特許出願番号2006/0159699)に記載されている。
【0104】
これまでの段落に記載の、インビトロのヒト細胞株内における「増殖複製不可能」または「増殖複製不能」については、例えば、WO02/42480(上に記載した所望の特性を有するMVAを得るための方法についても教示している)に記載されている。この用語は、WO02/42480または米国特許番号6,761,893に記載のアッセイを使用した、感染後4日のインビトロにおいて1未満のウイルス増殖比率を有するウイルスに適用される。
【0105】
「増殖複製不全」という用語は、これまでの段落に記載の感染後4日のインビトロのヒト細胞株内において1未満のウイルス増殖比率を有するウイルスを指す。WO02/42480または米国特許番号6,761,893に記載のアッセイは、ウイルス増殖比率の決定に適用可能である。
【0106】
これまでの段落に記載のインビトロのヒト細胞株内におけるウイルスの増幅または複製は通常、感染細胞から作製されたウイルス(出力)の、細胞を感染させるために元々使用された量(入力)に対する比率で表され、「増殖比率」と呼ばれる。「1」の増殖比率は、感染細胞から作製されたウイルスの量が細胞を感染させるために最初に使用された量と同一である増殖状態のことを定義し、感染細胞がウイルス感染及びウイルス増殖を許容することを意味する。それに対し1未満の増殖比率、すなわち、入力レベルと比較した出力の低下は、増殖複製が欠如すること、したがってウイルスが弱毒化していることを示す。
【0107】
別の実施形態では、本明細書で開示するMUC1核酸及び/またはその他の核酸を含む組換えポックスウイルスはアビポックスウイルス、限定するわけではないが例えば、鶏痘ウイルスである。
【0108】
「アビポックスウイルス」という用語は、任意のアビポックスウイルス、例えば、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、ジュンコ痘ウイルス、マイナ痘ウイルス、鳩痘ウイルス、オウム痘ウイルス、ウズラ痘ウイルス、クジャク痘ウイルス、ペンギン痘ウイルス、スズメ痘ウイルス、ムクドリ痘ウイルス及び七面鳥痘ウイルスなどのことを意味する。好ましいアビポックスウイルスはカナリア痘ウイルス及び鶏痘ウイルスである。
【0109】
鶏痘ウイルスの例は、FP-1株、FP-5株、TROVAC株(米国特許番号5,766,598)、POXVAC-TC株(米国特許7,410,644)、TBC-FPV株(Therion Biologics-FPV)であり、FP-1株は、1日齢のニワトリにワクチンとして使用するために改変されたデュベット(Duvette)株である。この株は、O DCEP 25/CEP67/2309 October 1980と呼ばれInstitute Merieux,Inc.から市販されている鶏痘ウイルスワクチン株である。FP-5は、American Scientific Laboratories(Division of Schering Corp.)Madison,Wis.,United States Veterinary License No.165,serial No.30321から入手可能な市販のニワトリ胚由来鶏痘ウイルスワクチン株である。
【0110】
特定の好ましい実施形態では、組換えオルソポックスウイルス、例えば、配列番号5(420 MUC1)、配列番号4(399/400 MUC1)、配列番号3(373 MUC1)または配列番号2(336 MUC1)から選択されるMUC1核酸配列を含むワクシニア、MVA、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体などが存在する。ある特定のより好ましい実施形態では、組換えオルソポックスウイルスは、配列番号2(420 MUC1)から選択されるMUC1核酸配列、配列番号13または14から選択されるCEA核酸、及びTRICOMを含む、MVAウイルスである。最も好ましい実施形態では、配列番号2(336 MUC1)を含むMUC1核酸配列、配列番号13を含むCEA核酸、及びTRICOMを含む、組換えMVAが存在する。別の最も好ましい実施形態では、TRICOMは、配列番号17(B7-1)、配列番号20(ICAM-1)及び配列番号23(LFA-3)を含む1つ以上の核酸を含む。
【0111】
ある特定の他の好ましい実施形態では、組換えアビポックスウイルス、例えば、配列番号3(373 MUC1)を含むMUC1核酸配列を含む鶏痘ウイルスなどが存在する。ある特定のより好ましい実施形態では、組換えアビポックスウイルスは、配列番号3(373)を含むMUC1核酸、配列番号13または14から選択されるCEA核酸、及びTRICOMを含む、鶏痘ウイルスである。最も好ましい実施形態では、配列番号3(373 MUC1)を含むMUC1核酸配列、配列番号14を含むCEA核酸、及びTRICOMを含む、組換え鶏痘ウイルスが存在する。別の最も好ましい実施形態では、TRICOMは、配列番号15(B7-1)、配列番号18(ICAM-1)及び配列番号21(LFA-3)を含む1つ以上の核酸を含む。
【0112】
発現カセット/制御配列
様々な態様では、本明細書に記載の1つ以上の核酸は、1つ以上の核酸が発現制御配列と機能的に連結している1つ以上の発現カセット内に組み入れられる。「機能的に連結する」とは、記載した構成要素同士がそれらの意図した様式で機能するような関係にあることを意味し、例えば、プロモーターが発現される核酸を転写するなどである。コード配列と機能的に連結している発現制御配列は、コード配列の発現が発現制御配列と適合する条件下で達成されるように結合している。発現制御配列としては、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質コードオープンリーディングフレームの先頭にある開始コドン、イントロン用のスプライシングシグナル、及びインフレーム終止コドンが挙げられるがこれらに限定されない。好適なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、RSVプロモーター、レトロウイルスLTR、アデノウイルス主要後期プロモーター、ヒトCMV前初期Iプロモーター、ならびに、以下のワクシニアウイルスまたはMVA由来プロモーター及びFPV由来プロモーター、30Kプロモーター、I3プロモーター、PrSプロモーター、PrS5Eプロモーター、Pr7.5K、Pr13.5長プロモーター、40Kプロモーター、MVA-40Kプロモーター、FPV 40Kプロモーター、30kプロモーター、PrSynIImプロモーター及びPrLE1プロモーターを含むがこれらに限定されない様々なポックスウイルスプロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。追加のプロモーターについては、WO2010/060632、WO2010/102822、WO2013/189611及びWO2014/063832に更に記載されている(それらは全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0113】
追加の発現制御配列としては、リーダー配列、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、及び所望の宿主系内における所望の組換えタンパク質(例えば、MUC1、CEA及び/またはTRICOM)をコードする核酸配列の適切な転写及びそれに続く翻訳に必要な任意のその他の配列が挙げられるがこれらに限定されない。ポックスウイルスベクターはまた、所望の宿主系内における核酸配列を含有する発現ベクターの導入及びそれに続く複製に必要な追加の要素を含有していてもよい。そのようなベクターは従来の方法(Ausubel et al.,(1987)in“Current Protocols in Molecular Biology,”John Wiley and Sons,New York,N.Y.)を使用して容易に構築され、市販品として入手可能であることを、当業者は更に理解するであろう。
【0114】
ある特定の実施形態では、本開示の組換えオルソポックスウイルス及び/または組換えアビポックスウイルスは、1つ以上のサイトカイン、例えば、IL-2、IL-6、IL-12、RANTES、GM-CSF、TNF-αまたはIFN-γなど、1つ以上の増殖因子、例えば、GM-CSFまたはG-CSFなど、1つ以上の共刺激分子、例えば、ICAM-1、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2など、またはその他のB7関連分子を含み、1つ以上の分子、例えば、OX-40Lもしくは41 BBLなどまたはこれら分子の組み合わせを生物学的アジュバントとして使用することができる(例えば、Salgaller et al.,1998,J.Surg.Oncol.68(2):122-38;Lotze et al.,2000,Cancer J.Sci.Am.6(Suppl 1):S61-6;Cao et al.,1998,Stem Cells 16(Suppl 1):251-60;Kuiper et al.,2000,Adv.Exp.Med.Biol.465:381-90を参照のこと)。これらの分子を宿主へと全身的に(または局所的に)投与することができる。いくつかの例では、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、B7-1、B7-2、OX-40L、41 BBL及びICAM-1を投与する。
【0115】
導入遺伝子を含む組換えポックスウイルスの作製
当該技術分野において周知の通常の方法を用いて本明細書で提供する組換えポックスウイルスを作製することができる。組換えポックスウイルスを得るための方法または外来コード配列をポックスウイルスゲノム内に挿入するための方法は当業者に周知である。例えば、標準的な分子生物学的手法、例えば、DNAのクローニング、DNA及びRNAの単離、ウェスタンブロット解析、RT-PCR、ならびにPCR増幅手法などの方法については、Molecular Cloning,A laboratory Manual(2nd Ed.)[J.Samb rook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載されており、ウイルスの取り扱い法及び処理法については、Virology Methods Manual[B.W.J.Mahy et al.(eds.),Academic Press(1996)]に記載されている。同様に、MVAの取り扱い、処理及び遺伝子操作のための技術及びノウハウについては、Molecular Virology:A Practical Approach [A.J.Davison & R.M.Elliott(Eds.),The Practical Approach Series,IRL Press at Oxford University Press,Oxford,UK(1993)(例えば、Chapter 9:Expression of genes by Vaccinia virus vectorsを参照のこと)]及びCurrent Protocols in Molecular Biology[John Wiley & Son,Inc.(1998)(例えば、Chapter 16,Section IV:Expression of proteins in mammalian cells using vaccinia viral vectorを参照のこと)]に記載されている。
【0116】
本明細書で開示する様々な組換えポックスウイルスを作製するために、異なる方法を適用してもよい。ウイルスに挿入するDNA配列を、ポックスウイルスのDNAのセクションに相同なDNAを挿入したE.coliプラスミド構築物内に配置してもよい。別に、挿入するDNA配列をプロモーターにライゲートしてもよい。プロモーター-遺伝子連結部を、非必須遺伝子座を含有するポックスウイルスDNAの領域に隣接するDNA配列に相同なDNAがプロモーター-遺伝子連結部の両隣に隣接するように、プラスミド構築物内に配置してもよい。得られたプラスミド構築物を、E.coli菌内で増殖させることにより増幅してから単離してもよい。挿入するDNA遺伝子配列を含有する単離プラスミドを細胞培養物、例えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)に形質移入し、同時にその培養物をポックスウイルスに感染させてもよい。プラスミド内の相同ポックスウイルスDNA間の組換え及びウイルスゲノム間の組換えのそれぞれにより、外来DNA配列の存在により改変されたポックスウイルスを作製することが可能となる。
【0117】
好ましい実施形態では、細胞培養物として好適な細胞、例えば、CEF細胞をポックスウイルスに感染させてもよい。それに続いて、本開示で提供するMUC1核酸、CEA核酸及び/またはTRICOM核酸のうちの1以上などの外来遺伝子(単数または複数)または異種遺伝子(単数または複数)を含む第1のプラスミドを、好ましくは、ポックスウイルス発現制御エレメントの転写制御下で、感染細胞に形質移入してもよい。上で説明したように、プラスミドはまた、外来配列の挿入をポックスウイルスゲノムの選択部位に誘導可能な配列を含む。任意選択的に、プラスミドベクターはまた、ポックスウイルスプロモーターと機能的に連結したマーカー遺伝子及び/または選択遺伝子を含むカセットを含有する。好適なマーカー遺伝子または選択遺伝子は、例えば、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ネオマイシン-ホスホリボシルトランスフェラーゼまたはその他のマーカーをコードする遺伝子である。選択カセットまたはマーカーカセットを使用することにより、作製した組換えポックスウイルスの同定及び単離が簡略化される。しかしながら、組換えポックスウイルスはまた、PCR技術により同定することが可能である。その後、更なる細胞を上で得た組換えポックスウイルスに感染させて、第2の外来遺伝子(単数または複数)または異種遺伝子(単数または複数)を含む第2のベクターを形質移入してもよい。この遺伝子がポックスウイルスゲノムの異なる挿入部位に導入されるような場合、第2のベクターはまた、第2の外来遺伝子(単数または複数)のポックスウイルスゲノムへの統合を誘導するポックスウイルス相同配列において異なっている。相同組換えが生じた後に、2種以上の外来遺伝子または異種遺伝子を含む組換えウイルスを単離してもよい。追加の外来遺伝子を組換えウイルスに導入するために、上のステップで感染用に単離した組換えウイルスを使用することにより、また形質移入用の更なる外来遺伝子(単数または複数)を含む更なるベクターを使用することにより、感染及び形質移入のステップを繰り返してもよい。
【0118】
代替的に、上に記載した感染及び形質移入のステップは入れ替え可能であり、すなわち、外来遺伝子を含むプラスミドを好適な細胞に最初に形質移入してからポックスウイルスに感染させてもよい。更なる代替法として、それぞれの外来遺伝子を異なるウイルスに導入して、得られた組換えウイルスの全てで細胞を共感染させてから、全ての外来遺伝子を含む組換え体でスクリーニングすることも可能である。第3の代替法は、インビトロでのDNAゲノムと外来配列のライゲーション、及びヘルパーウイルスを使用した組換えワクシニアウイルスDNAゲノムの再構成である。第4の代替法は、E.coliまたは別の菌種を用いた、細菌人工染色体(BAC)としてクローニングしたポックスウイルスゲノムと、ワクシニアウイルスゲノム内における所望の導入部位に隣接する配列に相同なDNA配列に隣接する直鎖状外来配列の間の相同組換えである。
【0119】
本開示の1つ以上の核酸をポックスウイルスの任意の好適な部位に挿入してもよい。好ましい態様では、本発明に使用するポックスウイルスはMVA及び/または鶏痘ウイルスを含む。MVA及び鶏痘ウイルスの好適な部位は、MVA及び鶏痘ゲノムの非必須部位である。
【0120】
MVAについて、MVAゲノムの非必須部位は、MVAゲノムの遺伝子間領域または既知の欠失部位1~6であってもよい。代替的にまたは追加的に、組換えMVAの非必須部位は、ウイルスの増殖に非必須であるMVAゲノムのコード領域であってもよい。しかしながら、少なくとも1つの細胞培養系、例えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF細胞)などの中で増幅及び増殖可能な組換え体を得ることが可能である限り、本発明の核酸(例えば、MUC1、CEA及びTRICOM)及び本明細書に記載の任意の付随するプロモーターがウイルスゲノム内の任意の場所に挿入され得ることが本発明の範囲内であるため、挿入部位はMVAゲノム内におけるこれらの好ましい挿入部位に限定されない。
【0121】
本発明の核酸は、MVA及び/または鶏痘ウイルスの1つ以上の遺伝子間領域(IGR)に挿入し得ることが好ましい。「遺伝子間領域」という用語は、MVA及び/または鶏痘ウイルスの2つの隣接したオープンリーディングフレーム(ORF)間、好ましくは、MVA及び/または鶏痘ウイルスゲノムの2つの必須ORF間に位置するウイルスゲノムのそれら部位を指すことが好ましい。MVAについて、ある特定の実施形態では、IGRは、IGR 07/08、IGR 44/45、IGR 64/65、IGR 88/89、IGR 136/137、及びIGR 148/149から選択される。鶏痘ウイルスについて、IGRはBamH1から選択される。
【0122】
MVAウイルスについて、追加的にまたは代替的に、ヌクレオチド配列は、既知の欠失部位、すなわち、MVAゲノムの欠失部位I、II、III、IV、VまたはVIのうちの1つまたは複数に挿入されてもよい。「既知の欠失部位」という用語は、そこからMVAが誘導される親ウイルスのゲノム、特に、例えば、Meisinger-Henschel et al.(2007),Journal of General Virology 88:3249-3259に記載の親漿尿膜ワクシニアウイルスアンカラ(CVA)のゲノムに対して、20継代516を特徴としたCEF細胞における連続継代中に欠失したMVAゲノムの部位のことを意味する。
【0123】
ワクチン
ある特定の実施形態では、本開示の組換えポックスウイルスは、ワクチンの一部として製剤化することができる。ワクチンを調製するために、ポックスウイルスを生理学的に許容される形態に変換してもよい。ある特定の実施形態では、そのような調製は、天然痘に対するワクチン接種に使用されるポックスウイルスワクチンの調製に関する知見(例えば、Stickl,H.et al.,Dtsch.med.Wschr.99,2386-2392(1974)に記載されている)に基づいている。
【0124】
例示的な調製は以下のとおりである。10mM トリス、140mM NaCl、pH7.4中、5×108 TCID50/mlの力価で配合した精製ウイルスを-80℃で保管する。ワクチン注射を調製するために、例えば、アンプル、好ましくはガラスアンプル内で、2%ペプトン及び1%ヒトアルブミンの存在下、102~108粒子のウイルスをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で凍結乾燥させてもよい。代替的に、製剤中のウイルスを段階的に凍結乾燥させることによりワクチン注射を調製してもよい。ある特定の実施形態では、製剤は、追加の添加剤、例えば、マンニトール、デキストラン、糖、グリシン、ラクトース、ポリビニルピロリドンなど、または、インビボ投与に好適な酸化防止剤または不活性ガス、安定化剤または組換えタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)を含むがこれらに限定されないその他の添加剤などを含有する。それから、アンプルを密封して適切な温度、例えば、4℃から室温の間で数ヶ月間保管してもよい。しかしながら、必要性のない限り、-20℃未満の温度でアンプルを保管することが好ましい。
【0125】
ワクチン接種または治療を伴う様々な実施形態では、0.1~0.5mlの水溶液、好ましくは、生理食塩水またはトリス緩衝液中に凍結乾燥物を溶解させて、全身的にまたは局所的に、すなわち、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮膚内、または当業者に周知の任意のその他投与経路のいずれかで投与する。投与方法、投与量及び投与回数の最適化は、当業者の技能及び知識の範囲内である。
【0126】
ある特定の実施形態では、弱毒ワクシニアウイルス株は、免疫不全動物、例えば、SIVに感染させたサル(血中CD4<400/μl)、または免疫不全ヒトにおける免疫応答を誘導するのに有用である。「免疫不全」という用語は、不完全な免疫応答のみを示すまたは病原体に対する防御能の低い個体の免疫系の状態を記述する。
【0127】
キット、組成物、及び使用方法
様々な実施形態の1つでは、本発明は、本明細書に記載の核酸を含む組換えポックスウイルスを含むキット及び/または組成物を包含する。組成物は医薬組成物または免疫原性組成物であることが好ましい。
【0128】
一実施形態では、それぞれの組換えポックスウイルスが本開示のMUC1核酸、CEA核酸及び/またはTRICOM核酸を含む、2種以上の組換えポックスウイルスの混合物を含むキット及び/または組成物が存在する。混合物は、a)オルソポックスウイルス、例えば、本開示のMUC1核酸、CEA核酸及び/またはTRICOM核酸を含むワクシニア、MVA、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体など、及びb)アビポックスウイルス、例えば、本開示のMUC1核酸、CEA核酸及び/またはTRICOM核酸を含む鶏痘などを含む。オルソポックスウイルスと鶏痘ウイルスの混合物は同種または異種プライムブーストレジメンで投与できることが企図される。
【0129】
別の実施形態では、2種以上の組換えポックスウイルスの混合物を含むキット及び/または組成物は、a)本開示のMUC1核酸、CEA核酸及び/またはTRICOM核酸を含むMVAウイルス、及びb)アビポックスウイルス、例えば、本開示のMUC1核酸、CEA核酸及び/またはTRICOM核酸を含む鶏痘などを含む。MVAウイルスと鶏痘ウイルスの混合物は同種または異種プライムブーストレジメンで投与できることが企図される。
【0130】
追加の実施形態では、1つ以上の組換えポックスウイルスのそれぞれは、本開示の共刺激分子のうちの1つ以上を更に含む。好ましい実施形態では、1つ以上の共刺激分子は、本開示のTRICOM分子のうちの1つ以上である。
【0131】
キット及び/または組成物は、組換えポックスウイルスの投与のための取扱説明書と共に、本開示の組換えポックスウイルスの1つ以上の容器またはバイアル瓶を含み得ることが企図される。
【0132】
本明細書で提供するキット及び/または組成物は通常、1つ以上の薬学的に許容される及び/または承認された担体、添加剤、抗生物質、防腐剤、補助物質、希釈剤及び/または安定化剤を含んでいてもよい。そのような補助物質は、水、生理食塩水、グリセロール、エタノール、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などであってもよい。好適な担体は通常、大きく徐々に代謝される分子、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体などである。
【0133】
組成物(例えば、医薬組成物及び/または免疫原性組成物)を調製するために、本明細書で提供する組換えポックスウイルスを生理学的に許容される形態に変換してもよい。このことは、H.Stickl et al.,Dtsch.med.Wschr.99:2386-2392(1974)に記載されている、天然痘に対するワクチン接種に使用するポックスウイルスワクチンの調製における知見に基づいて実施可能である。
【0134】
例えば、約10mMのトリス、140mMのNaCl、pH7.4中、5×108 TCID50/mlの力価で配合した精製ウイルスを-80℃で保管してもよい。ワクチン注射を調製するために、例えば、アンプル、好ましくはガラスアンプル内で、2%ペプトン及び1%ヒトアルブミンの存在下、102~108または102~109粒子のウイルスを100mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で凍結乾燥させてもよい。代替的に、製剤中のウイルスを段階的に凍結乾燥させることによりワクチン注射を作製してもよい。この製剤は、追加の添加剤、例えば、マンニトール、デキストラン、糖、グリシン、ラクトース、ポリビニルピロリドンなど、または、インビボ投与に好適なその他の助剤、例えば、酸化防止剤または不活性ガス、安定化剤または組換えタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)などを含有していてもよい。凍結乾燥に適した標準的なウイルス含有製剤は、10mMのトリス緩衝液、140mMのNaCl、18.9g/lのデキストラン(分子量36,000~40,000)、45g/lのスクロース、0.108g/lのL-グルタミン酸一カリウム塩一水和物、pH7.4を含む。それから、ガラスアンプルを密封して4℃から室温の間で数ヶ月間保管してもよい。しかしながら、必要性のない限り、-20℃以下の温度でアンプルを保管することが好ましい。
【0135】
ワクチン接種または治療において、水溶液(例えば、0.1~0.5ml)、好ましくは、注射用蒸留水、生理食塩水またはトリス緩衝液中に凍結乾燥物を溶解させて、全身的にまたは局所的に、すなわち、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、鼻腔内、または当業者に周知の任意のその他投与経路のいずれかで投与してもよい。投与方法、投与量及び投与回数については、当業者が周知の方法を用いて最適化してもよい。
【0136】
様々なその他の実施形態では、組換えポックスウイルスの連続継代中における組換えポックスウイルス及び/またはその中の導入遺伝子の安定性を生む及び/または向上させることに関係する1つ以上の方法が存在する。更に特定の実施形態では、組換えポックスウイルスは少なくとも3または4継代中に安定である。
【0137】
複数の継代中に安定な組換えポックスウイルスを有することは多くの理由から特に重要であり、それらのいくつかの理由としては、組換えウイルスの大規模製造及び薬剤としてのその使用、ならびに多数の継代中におけるワクチン安定性の政府方針が挙げられる。本発明の組換えポックスウイルスについて、少なくとも3または4継代中に安定な組換えポックスウイルスを作製することは、PANVAC-V及びPANVAC-Fが継代1あたりで不安定性及び/または導入遺伝子生存能の低下を示し始めた(例えば、表1及び表2、ならびに
図1A及び
図1Bを参照のこと)ことから重要である。
【0138】
一実施形態では、組換えポックスウイルスの連続継代中に安定なMUC1導入遺伝子を有するポックスウイルスを作製するための方法が存在し、その方法は、a)本開示の核酸または発現カセットのいずれか1つを提供すること、及びb)核酸または発現カセットを組換えポックスウイルス内に挿入すること、を含み、組換えポックスウイルスは連続継代中に安定である。
【0139】
本開示による例示的な方法
1.別の実施形態では、組換えポックスウイルスの連続継代中に安定な前記組換えポックスウイルスを作製するための方法が存在し、前記方法は、
a)少なくとも2つの可変N末端反復(VNTR)ドメインを有するMUC1ペプチドをコードする第1の核酸を提供することを含み、a)前記少なくとも2つのVNTRドメインの配置はシャッフルされ、b)前記少なくとも2つのVNTRドメインはコドン最適化され、前記組換えポックスウイルスは前記組換えポックスウイルスの連続継代中に安定である、前記方法。
【0140】
2.別の実施形態では、組換えポックスウイルスの連続継代中に安定な安定性組換えポックスウイルスを作製するための方法が存在し、前記方法は、MUC1タンパク質をコードする第1の核酸を提供することであって、前記MUC1タンパク質は少なくとも2つのVNTRドメインを含む、前記提供することと、前記少なくとも2つのVNTRドメイン反復の順番をシャッフルまたは再編成することと、前記少なくとも2つのVNTRドメイン反復のコドンを最適化することと、前記第1の核酸配列を前記ポックスウイルス内に挿入して、組換えポックスウイルスの連続継代中に安定な前記組換えポックスウイルスを作製することと、を含む。
【0141】
3.前記第1の核酸は、配列番号2に対して少なくとも95%相同である、配列番号4に対して少なくとも95%相同である、配列番号3に対して少なくとも95%相同である、または、配列番号5に対して少なくとも95%相同である、1及び2のいずれか1項に記載の方法。
【0142】
4.前記核酸は配列番号2に対して少なくとも95%相同である、1から3のいずれか1項に記載の方法。
【0143】
5.前記核酸は配列番号3に対して少なくとも95%相同である、1から4のいずれか1項に記載の方法。
【0144】
6.前記核酸は配列番号2を含む、1から5のいずれか1項に記載の方法。
【0145】
7.前記核酸は配列番号5を含む、1から6のいずれか1項に記載の方法。
【0146】
8.1から7のいずれか1項に記載の方法であって、前記方法は、CEAペプチドをコードする第2の核酸の反復ヌクレオチド領域内における少なくとも1つのヌクレオチドを置換することであって、前記反復ヌクレオチド領域は、(i)3以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)3以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTまたはCヌクレオチドと定義される、前記置換することと、前記第2の核酸を前記組換えポックスウイルス内に挿入することと、を更に含む、前記方法。
【0147】
9.前記第2の核酸の前記反復領域は、(i)3以上の連続したGヌクレオチド、(ii)3以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、8に記載の方法。
【0148】
10.前記第2の核酸の前記反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTまたはCヌクレオチドと更に定義される、8及び9のいずれか1項に記載の方法。
【0149】
11.1から10の方法の一態様では、前記CEAヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTまたはCヌクレオチドと更に定義される。
【0150】
12.1から11の方法の一態様では、前記CEA反復領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される。
【0151】
13.1から12の方法の一態様では、前記置換は、前記CEA核酸の少なくとも2、3、4、5または10の反復ヌクレオチド領域にある。
【0152】
14.1から13に記載の方法の一態様では、前記CEA核酸は配列番号14を含む。
【0153】
15.1から14の方法の一態様では、前記方法は、B7-1、ICAM-1及び/またはLFA-3、CEAから選択される共刺激分子をコードする核酸の反復ヌクレオチド領域内における少なくとも1つのヌクレオチドを置換することであって、前記反復ヌクレオチド領域は、(i)3以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)3以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTまたはCヌクレオチドと定義される、前記置換することと、共刺激分子をコードする前記核酸を前記組換えポックスウイルス内に挿入することと、を更に含む。
【0154】
16.1から15の方法の一態様では、前記共刺激分子反復領域は、(i)3以上の連続したGヌクレオチド、(ii)3以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される。
【0155】
17.1から16の方法の一態様では、前記共刺激分子反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4の以上連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTまたはCヌクレオチドと更に定義される。
【0156】
18.1から17の方法の一態様では、前記共刺激分子反復領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される。
【0157】
19.1から18に記載の方法の一態様では、前記置換は、前記共刺激分子核酸の少なくとも2、3、4、5または10の反復ヌクレオチド領域にある。
【0158】
20.1から19の方法の一態様では、前記共刺激分子をコードする前記核酸はB7-1(配列番号15~17)、ICAM-1(配列番号18~20)及びLFA-3(配列番号21~23)から選択される。
【0159】
21.1から20の方法の一態様では、前記共刺激分子をコードする前記核酸は、B7-1(配列番号15)、ICAM-1(配列番号18)及びLFA-3(配列番号21)のうちの少なくとも1つに対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である。
【0160】
22.1から21の方法の一態様では、前記共刺激分子をコードする前記核酸は、B7-1(配列番号17)、ICAM-1(配列番号20)及びLFA-3(配列番号23)のうちの少なくとも1つに対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である。
【0161】
23.1から22の方法の一態様では、前記共刺激分子をコードする前記核酸は、B7-1(配列番号17)、ICAM-1(配列番号20)及びLFA-3(配列番号23)のうちの少なくとも1つを含む。
【0162】
24.1から23の方法の一態様では、前記共刺激分子をコードする前記核酸は、B7-1(配列番号15)、ICAM-1(配列番号18)及びLFA-3(配列番号21)を含む。
【0163】
25.1から24に記載の方法の一態様では、前記MUC1をコードする前記第1の核酸は配列番号31、32、33及び34から選択される。
【0164】
26.本開示により提供されるように、1から26に記載の方法の組換えポックスウイルスは、オルソポックスウイルスまたはアビポックスウイルスから選択することができる。好ましい実施形態では、オルソポックスウイルスはワクシニアウイルス、MVA、MVA-BN及びMVA-BNの誘導体から選択される。より好ましい実施形態では、オルソポックスウイルスは、MVA、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体のいずれかである。なおも別のより好ましい実施形態では、アビポックスウイルスは鶏痘ウイルスである。
【0165】
他の実施形態では、ポックスウイルスの連続継代中に安定な組換えポックスウイルスを作製するための方法における、本開示のa)核酸、b)発現カセット、c)組成物、d)宿主細胞またはe)ベクターの使用が存在する。
【0166】
なおもその他の実施形態では、薬剤、好ましくはワクチンの調製における、本開示のa)組換えポックスウイルス、b)核酸、c)発現カセット、d)組成物、d)宿主細胞またはe)ベクターの使用が存在する。
【0167】
なおも更なる実施形態では、薬剤、好ましくはワクチンとして使用するための、本開示の組換えポックスウイルス、b)核酸、b)発現カセット、c)組成物、d)宿主細胞またはe)ベクターが存在する。
【0168】
更に追加の実施形態では、コード配列を標的細胞に導入するための方法に使用するための、本開示の組換えポックスウイルス、b)核酸、b)発現カセット、c)組成物、d)宿主細胞またはe)ベクターが存在する。
【実施例】
【0169】
以下の実施例は本発明を説明するものではあるが、当然、決してクレームの範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0170】
実施例1:組換えポックスウイルスの構築
CEF培養物の同時の感染及び形質移入により、指定のMUC1核酸配列及びCEA核酸配列をそれらのプロモーターと共に挿入してから、ウイルスゲノムと組換えプラスミドpBN146の間で相同組換えさせることにより、MUC1(例えば、mBN399、mBN400、mBN336、mBN373及びmBN420)をコードするポックスウイルスの作製を実施した。挿入を有するウイルスを単離して特徴づけしてから、ウイルスストックを作製した。
【0171】
mBN398及びmBN400を構築するために、ワクシニアウイルスのIGR88/89にも存在する相同配列を含有するMVA組換えプラスミドを使用した。MUC1ヌクレオチド配列及びCEAヌクレオチド配列をワクシニアウイルス配列のIGR 88/89間に挿入して、ワクシニアウイルスゲノム内への組換えを可能とした。それゆえ、ポックスウイルスプロモーターの下流にMUC1ヌクレオチド配列及びCEAヌクレオチド配列を含有するプラスミドを構築した。mBN398及びmBN400用に配列番号1(MUC1)及び配列番号13(CEA)を使用した。mBN398内におけるMUC1及びCEA用のプロモーターはそれぞれ、PrSプロモーター(MUC1)及び40k-MVA1プロモーター(CEA)であった。mBN400内におけるMUC1及びCEA用のプロモーターはそれぞれ、Pr13.5長プロモーター(MUC1)及びPrS5Eプロモーター(CEA)であった。TRICOMの共刺激分子をmBN398及びmBN400の一部として組み込んだ。これらの配列はB7-1、ICAM-1及びLFA-3を含み、それぞれ、配列番号16、19及び21を含んでいた。
【0172】
mBN336を構築するために、MVA(IGR88/89(MUC1)、IGR44/45(CEA)、IGR148/149(TRICOM)にも存在する挿入配列である3種類の導入遺伝子pBN374(TRICOM)、pBN515(CEA、配列番号13)、pBN525(MUC1、配列番号2)用に、3種類の組換えプラスミドを使用した。MUC1ヌクレオチド配列及びCEAヌクレオチド配列をMVAウイルス配列間に挿入して、MVAウイルスゲノム内への組換えを可能とした。それゆえ、ポックスウイルスプロモーターの下流にMUC1ヌクレオチド配列及びCEAヌクレオチド配列を含有するプラスミドを構築した。mBN336用に配列番号2(MUC1)及び配列番号13(CEA)を使用した。プロモーターはPrSプロモーター(MUC1)及び40kプロモーター(CEA)であった。TRICOMの共刺激分子をmBN336の一部として組み込んだ。これらの配列はB7-1、ICAM-1及びLFA-3を含み、それぞれ、配列番号17、20及び23を含んでいた。pBN632は、MVA(IGR 88/89内)にも存在する配列を含有している。MUC1ヌクレオチド配列及びCEAヌクレオチド配列をMVAウイルス配列間に挿入して、MVAウイルスゲノム内への組換えを可能とした。それゆえ、ポックスウイルスプロモーターの下流にMUC1ヌクレオチド配列及びCEAヌクレオチド配列を含有するプラスミドを構築した。mBN420用に配列番号5(MUC1)及び配列番号14(CEA)を使用した。MUC1及びCEA用のプロモーターはそれぞれ、Pr13.5プロモーター(米国特許公開2015/0299267を参照のこと)(MUC1)及び40k MVA1プロモーター(CEA)であった。TRICOMの共刺激分子をmBN420の一部として組み込み、IGR 88/89内に導入した。これらの配列はB7-1、ICAM-1及びLFA-3を含み、それぞれ、配列番号15、18及び21を含んでいた。
【0173】
mBN373を構築するための組換えプラスミドpBN563は、鶏痘ウイルスにも存在する配列を含有している。MUC1ヌクレオチド配列及びCEAヌクレオチド配列を鶏痘ウイルス配列のBamH1領域間に挿入して、鶏痘ウイルスゲノム内への組換えを可能とした。それゆえ、ポックスウイルスプロモーターの下流にMUC1ヌクレオチド配列及びCEAヌクレオチド配列を含有するプラスミドを構築した。mBN373用に配列番号3(MUC1)及び配列番号14(CEA)を使用した。MUC1及びCEA用のプロモーターはそれぞれ、40K FPV-1 PrSプロモーター(MUC1)及び40k-MVA1プロモーター(CEA)であった。TRICOMの共刺激分子をmBN373の一部として組み込んだ。これらの配列はB7-1、ICAM-1及びLFA-3を含み、それぞれ、配列番号15、18及び21を含んでいた。
【0174】
上記の組換えプラスミドはまた、合成ワクシニアウイルスプロモーター(Ps)、薬剤耐性遺伝子GPT、内部リボソーム導入部位(IRES)、ならびに、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)、及び、単量体赤色蛍光タンパク質と結合した薬剤耐性遺伝子グアニン-キサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)を含む選択カセットを含有していた。全ての選択遺伝子(GFP、NPTII及びmRFP1)は単一のバイシストロン性転写産物がコードしていた。
【0175】
mBN399/400用のワクシニアウイルスで、mBN336、mBN420用のMVA-BNで、または、mBN373用のFPVで、CEF培養物を接種し、更にプラスミドDNAをそれぞれのCEF培養物に形質移入した。次いで、これら細胞培養物に由来する試料を、選択薬剤を含有する培地内のCEF培養物に接種し、プラーク精製によりEGFP発現ウイルスクローンを単離した。選択薬剤及び発現EGFPの存在下で増殖させたウイルスストックを、以下、mBN399、mBN400(ワクシニアウイルス)、mBN336、mBN420(MVAウイルス)及びmBN373(鶏痘)のうちの1つと称した。組換えウイルスの作製及びウイルスストックの作製には、1(1)~5(5)回のプラーク精製を含む5~12回の連続継代を要した。
【0176】
選択薬剤の不在下、CEF細胞培養物を用いて組換えポックスウイルスを継代した。選択薬剤が存在しないことにより、挿入配列に由来する選択遺伝子、gpt及びEGFP、ならびに関連プロモーター(選択カセット)をコードする領域が失われた。選択カセットの喪失をもたらす組換えは、F1 I4L領域及びこの領域のサブセクションであるF1反復(F1 rpt)(それぞれの構築物のプラスミド内における選択カセットに隣接している)が関与している。本明細書に記載の構築物における説明した遺伝子間領域内に挿入されたMUC1配列及びCEA配列だけを残しつつ、選択カセットの喪失をもたらす組換えに関与するようにこれらの複製配列を組み込んだ。
【0177】
選択カセットを欠くプラーク精製ウイルスを作製した。そのような作製には、5(5)回のプラーク精製を含む15(15)回の継代を要した。
【0178】
mBN336、mBN420及びmBN373ストック内におけるMUC1配列及びCEA配列の存在ならびに親MVA-BNウイルスの不存在をPCR解析で確認し、ネステッドPCRを使用して選択カセット(gpt及びEGFP遺伝子/NPTII及びmRFP1)の不存在を確認した。
【0179】
インビトロでMVA-BN-MUC1-CEA-TRICOMを播種した細胞内におけるMUC1タンパク質及びCEAタンパク質の発現が示された。
【0180】
実施例2:MVA-mBN336継代1~7のPCR解析
7継代の培養によりMVA-mBN336Bの遺伝的安定性を評価した。MVA-mBN336B(ヒトムチン1(MUC-1)及びヒト癌胎児性抗原(CEA)をこのワクチン候補の標的抗原とする)は、5種類のヒト導入遺伝子、ならびに、強力で直接的な免疫応答を誘導するための補助としてのヒト免疫共刺激分子(TRIad of COstimulatory Molecules(三つ組み共刺激分子)またはTRICOMと呼ばれる)をコードする3種類の遺伝子、白血球機能関連抗原-3(LFA-3)、細胞内接着分子1(ICAM-1)及びB7-1、をコードする。MVA-BN(登録商標)の3つの遺伝子間領域(IGR)、CEA遺伝子を含有するIGR 44/45、hMUC1遺伝子を含有するIGR 88/89及びTRICOM遺伝子を含有するIGR 148/149に、導入遺伝子を挿入した。ポックスウイルスプロモーター、40k-MVA1、30k、I3L及びPrSで導入遺伝子発現を駆動した。
【0181】
初代ニワトリ胚線維芽(CEF)細胞を調製して、VP-SFM培地を入れたローラーボトル(RB)内に播種(7×107個の細胞)してから、4日間37℃で培養した。VP-SFM培地を100mlのRPMI培地に交換し、約.3~00.1のMOI(1×108個の細胞/RBの細胞数を指す)で細胞を感染させてから、3日間30℃で培養した。培養後、-20℃で少なくとも16時間RBを凍結させることによりウイルス試料を回収してから、RBを解凍して細胞ウイルス懸濁液を回収した。細胞懸濁液の正確な体積を測定し、ウイルス試料を超音波処理し、それに続きアリコートしてから80℃で保管した。この手順を6回繰り返して7継代とした。
【0182】
30℃の培養後、それぞれの継代に対して挿入導入遺伝子のPCR解析を実施した。
図9Aは、7継代にわたるCEAの安定性に関するPCR結果を示している。
図9Bは、7継代にわたるMUC1の安定性に関するPCR結果を示している。
図9Cは、7継代にわたるTRICOMの安定性に関するPCR結果を示している。MVA-mBN336Bの作製に使用した組換えプラスミドを陽性対照として使用し、MVA-BN(登録商標)を陰性対照(空のベクター骨格)として使用し、またH
2OをPCR反応の対照として使用した。
【0183】
図10A及び
図10Bは継代7試料の解析を示している。
図10Aはシークエンシングによる解析のために送付した継代7試料のPCR増幅である。それぞれ個々の導入遺伝子、CEA、MUC1及びTRICOMに対して、個々のPCR増幅を実施した。Bはフレームシフトをもたらす検出された点変異を含有する遺伝子座を示すMUC1ヌクレオチド配列の電気泳動図である。フレームシフトをもたらす検出された点変異を含有する遺伝子座を示すMUC1ヌクレオチド配列のPCR増幅及び電気泳動図で、継代5に初めて点変異が検出された。継代5に初めて検出された点変異は、継代5、6及び7に生じる変異を解析する電気泳動図である。
【0184】
図9及び
図10に示すように、mBN336内におけるMUC1、CEA及びTRICOM混合物は、PANVAC-V及びPANVAC-F内におけるMUC1導入遺伝子、CEA導入遺伝子及びTRICOM導入遺伝子と比較して向上及び上昇した安定性を示した(例えば、
図1ならびに表1及び表2を
図3及び
図4と比較のこと)。継代5に開始して、解析原料の小さな集団内にフレームシフト変異が検出された。
【0185】
継代4中に示された安定性は、PANVACに関連する安定性問題を克服するMVA-mBN336の機能、及び、MUC1を含む安定ポックスウイルスを作製するためのその他の試みを示している。MVAベースワクチンの製造及びより大規模な製造が通常、継代3または継代4のMVAから得られるために、MVA-mBN336の安定性は更なる利点である。このように、MVA-mBN336が継代4中に安定であることから、大規模製造を開始することが可能となり、安定性に関する大きな規制困難を克服することが可能となる。
【0186】
実施例3:FPV-mBN373の向上した安定性
FPV-mBN373Bの遺伝的安定性を7継代にわたり評価した。治験薬の作製に使用する大規模製造中に利用したローラーボトル(RB)内で培養を行った。それぞれの継代について、ウイルス力価をフローサイトメトリーアッセイで、また導入遺伝子インサートの正確なサイズをPCRで解析した。加えて、導入遺伝子のシークエンシングにより最終継代(P7)を解析した。
【0187】
初代ニワトリ胚線維芽(CEF)細胞を調製して、VP-SFM培地を入れたRB内に播種(7×107個の細胞/RB)してから、3日間37℃で培養した。VP-SFM培地を100mlのRPMI培地に交換し、0.1のMOI(1×108個/RBの細胞数を意味する)で細胞を感染させてから、4日間37℃で培養した。培養後、-20℃で少なくとも16時間RBを凍結させることによりウイルス試料を回収してから、RBを解凍して細胞ウイルス懸濁液を回収した。細胞懸濁液の正確な体積を測定し、ウイルス試料を超音波処理し、それに続きアリコートしてから80℃で保管した。ウイルス力価をモニターして所定のMOIでの次の継代の感染を可能とするために、それぞれの継代後の感染性ウイルス力価を測定した。この手順を6回繰り返して7継代とした。
【0188】
図11Aに示すように、37℃の培養後、それぞれの継代に対して挿入導入遺伝子のPCR解析を実施した。FPV-mBN373Bの作製に使用した組換えプラスミドを陽性対照として使用し、FPVを陰性対照(空のベクター骨格)として使用し、またH
2OをPCR反応の対照として使用した。
【0189】
図11Bに示すように、導入遺伝子及びそれぞれの隣接領域の少なくとも600bpを含有するBamHI J部位を増幅させた後に、7回目の継代のシークエンシングを実施した。継代7(37℃)において解析したFPV-mBN373BのPCRアンプリコンにおいて、挿入導入遺伝子及びそれぞれの隣接領域の少なくとも600bpをカバーする5566bp(PCR1)及び5264bp(PCR2)の想定バンドサイズが得られた。この結果は理論配列と比較したアセンブル配列の100%同一性を示し、37℃の7継代におけるFPV-mBN373Bの遺伝的安定性が確認された。
【0190】
少なくとも1つの態様では、mBN373内におけるMUC1導入遺伝子(配列番号3)の得られた安定性は、配列番号3を含むmBN373とmBN336の両方において驚くべきものであった。そのため、配列番号3のMUC1がmBN336(MVAウイルス)の継代5に不安定性を示し始めるが、同一の配列番号3はmBN373(鶏痘ウイルス)の少なくとも継代7まで安定である。
【0191】
実施例4:MVA-mBN420の安定性
MVA-mBN420の遺伝的安定性を7継代にわたり評価した。治験薬の作製に使用する大規模製造中に利用したローラーボトル(RB)内で培養を行った。約0.05~0.1のMOI及び4日間のウイルス培養期間を使用して30℃及び34℃で試験を実施した(これらの条件は、治験薬の作製に使用する通常の大規模製造における代表的なものである)。それぞれの継代について、ウイルス力価をフローサイトメトリーアッセイで、また導入遺伝子インサートの正確なサイズをPCRで解析した。
【0192】
初代ニワトリ胚線維芽(CEF)細胞を調製して、VP-SFM培地を入れたRB内に播種(7×107個の細胞/RB)してから、3日間37℃で培養した。VP-SFM培地を100mlのRPMI培地に交換し、0.05~0.1のMOI(1×108個/RBの細胞数を指す)で細胞を感染させてから、4日間30℃及び34℃で培養した。培養後、-20℃で少なくとも16時間RBを凍結させることによりウイルス試料を回収してから、RBを解凍して細胞ウイルス懸濁液を回収した。ウイルス試料を超音波処理し、それに続きアリコートしてから80℃で保管した。ウイルス力価をモニターして所定のMOIでの次の継代の感染を可能とするために、それぞれの継代後の感染性ウイルス力価を測定した。この手順を6回繰り返して7継代とした。
【0193】
30℃及び4の培養後、それぞれの継代に対して挿入導入遺伝子のPCR解析を実施した。30℃で行った継代の結果を
図12に示す。mBN420の作製に使用した組換えプラスミドを陽性対照として使用し、MVA-BNを陰性対照(空のベクター骨格)として使用し、またH
2OをPCR反応の対照として使用した。
【0194】
図12に示すように、mBN420内におけるMVAの安定性は、mBN336内におけるMVA及びmBN373内における鶏痘ウイルスと比較して低下した。
【0195】
実施例5:MUC1及びCEAをコードする追加の組換えMVAウイルス及び組換え鶏痘ウイルスの向上した安定性
本発明の追加の組換えMVAウイルス及び組換え鶏痘ウイルスの作製は、実施例1に記載のように行う。配列番号31、32、33または34(MUC1)及び配列番号13または14(CEA)を含むMUC1導入遺伝子、CEA導入遺伝子及びTRICOM導入遺伝子をコードする核酸を、実施例1に記載のようにMVA-BNに挿入する。加えて、実施例1に記載のように、TRICOMをMVAに挿入し、配列番号15または17(B7.1)、配列番号18または20(ICAM-1)及び配列番号21または23(LFA-3)を含むTRICOM配列をMVAに挿入する。
【0196】
加えて、配列番号31、32、33または34(MUC1)及び配列番号13または14(CEA)を含むMUC1導入遺伝子及びCEA導入遺伝子をコードする核酸を、実施例1に記載のようにMVA-BNに挿入する。加えて、実施例1に記載のように、TRICOMを鶏痘ウイルスに挿入し、配列番号15または17(B7.1)、配列番号18または20(ICAM-1)及び配列番号21または23(LFA-3)を含むTRICOM配列を鶏痘に挿入する。
【0197】
配列番号31、32、33または34はそれぞれ、配列番号35を含むMUC1ペプチドをコードする。
【0198】
配列番号31、32、33及び34の新規MUC1核酸はそれぞれ、WO2013/103658に記載のアゴニストエピトープを含まない本発明の核酸の変異体をコードする。いくつかの態様では、アゴニストエピトープの置換及び/または除去は、アゴニストエピトープの存在が安定性または不安定性ではなくMUC1の免疫原性を高めるように機能することから、本発明の組換えポックスウイルスの安定性に影響を及ぼさない。
【0199】
実施例1に記載のように、インビトロでMVA-BN-MUC1-CEA-TRICOMを播種した細胞内におけるMUC1タンパク質、CEAタンパク質及びTRICOMタンパク質の発現が示される。
【0200】
MVAウイルス及び/または鶏痘ウイルス内における導入遺伝子の向上した遺伝的安定性を7継代にわたり評価する。治験薬の作製に使用する大規模製造中に利用したローラーボトル(RB)内で培養を行う。約00.05~00.1のMOI及び2、3、4、5、6または7日間のウイルス培養期間を使用して30℃、34℃または37℃(使用するベクター系による)で試験を実施する(これらの条件は、治験薬の作製に使用する通常の大規模製造における代表的なものである)。それぞれの継代について、ウイルス力価をフローサイトメトリーアッセイで、また導入遺伝子インサートの正確なサイズをPCRで解析する。加えて、導入遺伝子のシークエンシングにより最終継代(P7)を解析する。
【0201】
初代ニワトリ胚線維芽(CEF)細胞を調製して、VP-SFM培地を入れたRB内に播種(7×107個の細胞/RB)してから、3日間37℃で培養する。VP-SFM培地を100mlのRPMI培地に交換し、0.005~0.1のMOIで細胞を感染させてから、4日間30℃、34℃または37℃で(使用するベクター系による)培養する。培養後、-20℃で少なくとも16時間RBを凍結させることによりウイルス試料を回収してから、RBを解凍して細胞ウイルス懸濁液を回収する。ウイルス試料を超音波処理し、それに続きアリコートしてから80℃で保管する。ウイルス力価をモニターして所定のMOIでの次の継代の感染を可能とするために、それぞれの継代後の感染性ウイルス力価を測定する。この手順を6回繰り返して7継代とする。
【0202】
30℃、34℃または37℃(ベクター系による)の培養後、それぞれの継代に対して挿入導入遺伝子のPCR解析を実施する。それぞれの対応するポックスウイルス(例えば、MVA-BNウイルスまたは鶏痘ウイルス)の作製に使用した組換えプラスミドを陽性対照として使用し、MVA-BNウイルスまたは鶏痘ウイルスを陰性対照(空のベクター骨格)として使用し、またH2OをPCR反応の対照として使用する。
【0203】
導入遺伝子及びそれぞれの隣接領域の少なくとも600bpを含有するIGR部位を増幅させた後に、7回目の継代のシークエンシングを実施する。それぞれの構築物のPCRアンプリコンを継代7で解析する。MVAウイルス及び/または鶏痘ウイルスが導入遺伝子間で安定であることを確認するために、MUC1核酸、CEA核酸及び/またはTRICOM核酸のシークエンシング結果を実施する。
【0204】
本明細書に記載の方法または組成物の正確な詳細が本発明に記載の趣旨を逸脱することなく変化または変更可能であることは明らかであろう。本発明者らは、以下のクレームの範囲及び趣旨に含まれる全てのそのような変更及び変化を請求する。
なお、本願は特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.連続継代中に安定な前記組換えポックスウイルスであって、前記組換えポックスウイルスは、少なくとも2つの可変N末端反復(VNTR)ドメインを有するMUC1ペプチドをコードする第1の核酸を含み、a)前記少なくとも2つのVNTRドメインの配置がシャッフルされ、b)前記少なくとも2つのVNTRドメインはコドン最適化され、前記組換えポックスウイルスは連続継代中に安定である、前記組換えポックスウイルス。
2.前記第1の核酸は少なくとも3つのVNTRドメインを含む、上記1に記載の組換えポックスウイルス。
3.前記少なくとも2つのVNTRドメインの順番は、配列番号6と比較してシャッフルされている、上記1から上記2のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
4.a)及びb)の存在は、PANVACと比較して連続継代中の安定性を向上させる、上記1から上記3のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
5.前記第1の核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも95%、96%、97%または98%の同一性を有する核酸配列を含む、上記1から上記4のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
6.前記第1の核酸配列は配列番号2を含む、上記1から上記5のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
7.癌胎児性抗原(CEA)をコードする第2の核酸を更に含む、上記1から上記6のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
8.前記第2の核酸は配列番号13を含む、上記7に記載の組換えポックスウイルス。
9.前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含み、前記少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域は、a)3以上の連続反復したGまたはCヌクレオチド及び/またはb)3以上の連続反復したTヌクレオチドと定義される、上記7に記載の組換えポックスウイルス。
10.前記少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域は、a)3以上の連続反復したGヌクレオチド及び/またはb)3以上の連続反復したCヌクレオチドと更に定義される、上記9に記載の組換えポックスウイルス。
11.前記反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記9から上記10のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
12.前記反復領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記9から上記10のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
13.前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも2、3、4、5または10の前記反復ヌクレオチド領域に少なくとも1つの置換を含む、上記9から上記12のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
14.前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15及び/または少なくとも19の反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む、上記9から上記13のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
15.前記第2の核酸は、前記第2の核酸の19領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む、上記9から上記14のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
16.前記第2の核酸は配列番号14を含む、上記9から上記14のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
17.前記組換えポックスウイルスはオルソポックスウイルス及びアビポックスウイルスから選択される、上記1から上記16のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
18.前記オルソポックスウイルスはワクシニアウイルスである、上記17に記載の組換えポックスウイルス。
19.前記ワクシニアウイルスは改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)である、上記18に記載の組換えポックスウイルス。
20.前記MVAはMVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である、上記19に記載の組換えポックスウイルス。
21.前記組換えポックスウイルスは、少なくとも継代3及び/または継代4中に安定である、上記1から上記20のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
22.前記アビポックスウイルスは鶏痘ウイルスである、上記17に記載の組換えポックスウイルス。
23.前記組換えポックスウイルスは、少なくとも継代4中に、好ましくは少なくとも継代7中に安定である、上記22に記載の組換えポックスウイルス。
24.前記第1の核酸は、YLAPPAHGV(配列番号25)、YLDTRPAPV(配列番号26)、YLAIVYLIAL(配列番号27)、YLIALAVCQV(配列番号28)、YLSYTNPAV(配列番号29)、SLFRSPYEK(配列番号30)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるペプチド断片をコードするヌクレオチド配列を更に含む、上記1から上記23のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
25.前記ポックスウイルスは、1以上の共刺激分子をコードする核酸を更に含む、上記1から上記24のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
26.前記1以上の共刺激分子は、B7-1、ICAM-1、LFA-3及びこれらの組み合わせから選択される、上記25に記載の組換えポックスウイルス。
27.前記B7-1核酸は、配列番号15、16または17に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記26に記載の組換えポックスウイルス。
28.前記B7-1核酸は配列番号15、16または17を含む、上記26から上記27のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
29.前記B7-1核酸は配列番号17を含む、上記26から上記28のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
30.前記B7-1核酸は配列番号15を含む、上記26から上記28のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
31.前記ICAM-1核酸は、配列番号18、19または20に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記26に記載の組換えポックスウイルス。
32.前記ICAM-1核酸は配列番号18、19または20を含む、上記26及び上記31のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
33.前記ICAM-1核酸は配列番号18を含む、上記26及び上記31から上記32のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
34.前記ICAM-1核酸は配列番号20を含む、上記26及び上記31から上記32のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
35.前記LFA-3核酸は、配列番号21、22または23に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記26に記載の組換えポックスウイルス。
36.前記LFA-3核酸は配列番号21、22または23を含む、上記35に記載の組換えポックスウイルス。
37.前記LFA-3核酸は配列番号21を含む、上記35から上記36のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
38.前記LFA-3核酸は配列番号23を含む、上記35から上記36のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス。
39.連続継代中に安定な組換えポックスウイルスを作製するための方法であって、前記方法は、
少なくとも2つの可変N末端反復(VNTR)ドメインを有するMUC1タンパク質をコードする第1の核酸を提供することを含み、a)前記少なくとも2つのVNTRドメインの配置はシャッフルされ、b)前記少なくとも2つのVNTRドメインはコドン最適化され、前記組換えポックスウイルスは連続継代中に安定である、前記方法。
40.前記第1の核酸は少なくとも3つのVNTRドメインを含む、上記39に記載の方法。
41.少なくとも2つのVNTRドメインの順番は、配列番号6と比較してシャッフルされている、上記39から上記40のいずれか1項に記載の方法。
42.a)及びb)の存在は、PANVACと比較して連続継代中の安定性を向上させる、上記39から上記41のいずれか1項に記載の方法。
43.前記第1の核酸配列は、配列番号2または配列番号3に対して少なくとも95%、96%、97%または98%の同一性を有する核酸配列を含む、上記39から上記42のいずれか1項に記載の方法。
44.前記第1の核酸配列は配列番号2または配列番号3を含む、上記39から上記43のいずれか1項に記載の方法。
45.癌胎児性抗原(CEA)をコードする第2の核酸を更に含む、上記39から上記44のいずれか1項に記載の方法。
46.前記第2の核酸は配列番号13を含む、上記45に記載の方法。
47.前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含み、前記少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域は、a)3以上の連続反復したGまたはCヌクレオチド及び/またはb)3以上の連続反復したTヌクレオチドと定義される、上記45から上記46のいずれか1項に記載の方法。
48.前記少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域は、a)3以上の連続反復したGヌクレオチド及び/またはb)3以上の連続反復したCヌクレオチドと更に定義される、上記45から上記47のいずれか1項に記載の方法。
49.前記反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記45から上記48のいずれか1項に記載の方法。
50.前記反復領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記47から上記49のいずれか1項に記載の方法。
51.前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも2、3、4、5または10の前記反復ヌクレオチド領域に少なくとも1つの置換を含む、上記47から上記50のいずれか1項に記載の方法。
52.前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15及び/または少なくとも19の反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む、上記47から上記51のいずれか1項に記載の方法。
53.前記第2の核酸は、前記第2の核酸の19領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む、上記47から上記52のいずれか1項に記載の方法。
54.前記第2の核酸は配列番号14を含む、上記47から上記53のいずれか1項に記載の方法。
55.前記組換えポックスウイルスはオルソポックスウイルス及びアビポックスウイルスから選択される、上記39から上記54のいずれか1項に記載の方法。
56.前記オルソポックスウイルスはワクシニアウイルスである、上記55に記載の方法。
57.前記ワクシニアウイルスは改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)である、上記56に記載の方法。
58.前記MVAはMVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である、上記57に記載の方法。
59.前記組換えポックスウイルスは少なくとも継代3または継代4中に安定である、上記39から上記58のいずれか1項に記載の方法。
60.前記アビポックスウイルスは鶏痘ウイルスである、上記55に記載の方法。
61.前記組換えポックスウイルスは少なくとも継代3または継代4中に安定である、上記60に記載の方法。
62.前記第1の核酸は、YLAPPAHGV(配列番号25)、YLDTRPAPV(配列番号26)、YLAIVYLIAL(配列番号27)、YLIALAVCQV(配列番号28)、YLSYTNPAV(配列番号29)、SLFRSPYEK(配列番号30)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるペプチド断片をコードするヌクレオチド配列を更に含む、上記39から上記61のいずれか1項に記載の方法。
63.前記ポックスウイルスは、1以上の共刺激分子をコードする核酸を更に含む、上記39から上記62のいずれか1項に記載の方法。
64.前記1以上の共刺激分子は、B7-1、ICAM-1、LFA-3及びこれらの組み合わせから選択される、上記63に記載の方法。
65.前記B7-1核酸は、配列番号15、16または17に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記64に記載の方法。
66.前記B7-1核酸は配列番号15、16または17を含む、上記64から上記65のいずれか1項に記載の方法。
67.前記B7-1核酸は配列番号17を含む、上記64から上記66のいずれか1項に記載の方法。
68.前記B7-1核酸は配列番号15を含む、上記64から上記66のいずれか1項に記載の方法。
69.前記ICAM-1核酸は、配列番号18、19または20に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記64に記載の方法。
70.前記ICAM-1核酸は配列番号18、19または20を含む、上記64及び上記69のいずれか1項に記載の方法。
71.前記ICAM-1核酸は配列番号18を含む、上記64及び上記69から上記70のいずれか1項に記載の方法。
72.前記ICAM-1核酸は配列番号20を含む、上記64及び上記69から上記70のいずれか1項に記載の方法。
73.前記LFA-3核酸は、配列番号21、22または23に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記64に記載の方法。
74.前記LFA-3核酸は配列番号21、22または23を含む、上記64及び上記73のいずれか1項に記載の方法。
75.前記LFA-3核酸は配列番号21を含む、上記64及び上記73から上記74のいずれか1項に記載の方法。
76.前記LFA-3核酸は配列番号23を含む、上記64及び上記73から上記74のいずれか1項に記載の方法。
77.少なくとも2つの可変N末端反復(VNTR)ドメインを有するMUC1ペプチドをコードする核酸であって、a)前記少なくとも2つのVNTRドメインの配置はシャッフルされ、b)前記少なくとも2つのVNTRドメインはコドン最適化され、組換えポックスウイルスの一部としての前記核酸の存在は、a)及びb)を伴わないMUC1ペプチドをコードする組換えポックスウイルスと比較して連続継代中における前記核酸及び/または前記組換えポックスウイルスの安定性を向上させる、前記核酸。
78.前記第1の核酸は少なくとも3つのVNTRドメインを含む、上記77に記載の核酸。
79.前記少なくとも2つのVNTRドメインの順番は、配列番号6と比較してシャッフルされている、上記77から上記78のいずれか1項に記載の核酸。
80.MUC1ペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域にヌクレオチド置換を含み、前記反復領域は前記核酸の可変数タンデム反復(VNTR)ドメインの外側にあり、前記反復ヌクレオチド領域は、(i)3以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)3以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTまたはCヌクレオチドと定義され、組換えポックスウイルスの一部としての前記核酸の存在は、ヌクレオチド置換を伴わないMUC1ペプチドをコードする組換えポックスウイルスと比較して連続継代中における前記核酸及び/または前記組換えポックスウイルスの安定性を向上させる、前記核酸。
81.前記反復領域は、(i)3以上の連続したGヌクレオチド、(ii)3以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記80に記載の核酸。
82.前記反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTまたはCヌクレオチドと更に定義される、上記80から上記81のいずれか1項に記載の核酸。
83.前記反復領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記80から上記82のいずれか1項に記載の核酸。
84.前記ヌクレオチド置換は、前記核酸の少なくとも2、3、4または5つの反復ヌクレオチド領域にある、上記80から上記83のいずれか1項に記載の核酸。
85.前記ヌクレオチド置換は、前記核酸の少なくとも10、15、20または25の反復ヌクレオチド領域内にある、上記80から上記84のいずれか1項に記載の核酸。
86.前記核酸は前記VNTRドメインに第1の修飾を更に含み、前記第1の修飾は前記VNTRドメイン反復の順番のシャッフルを含む、上記80から上記85のいずれか1項に記載の核酸。
87.前記核酸は前記VNTRドメインに第2の修飾を更に含み、前記第2の修飾は前記VNTRドメイン反復のコドン最適化を含む、上記80から上記86のいずれか1項に記載の核酸。
88.前記ヌクレオチド置換は前記MUC1ペプチドのアミノ酸配列を修飾しない、上記80から上記87のいずれか1項に記載の核酸。
89.前記核酸は、配列番号4に対して少なくとも95%相同である、配列番号3に対して少なくとも95%相同である、配列番号5に対して少なくとも95%相同である、または、配列番号2(336 MUC1)に対して少なくとも95%相同である、上記80から上記88のいずれか1項に記載の核酸。
90.前記核酸は配列番号2に対して少なくとも95%相同である、上記80から上記89のいずれか1項に記載の核酸。
91.前記核酸は配列番号4に対して少なくとも95%相同である、上記80から上記90のいずれか1項に記載の核酸。
92.前記核酸は配列番号3に対して少なくとも95%相同である、上記80から上記91のいずれか1項に記載の核酸。
93.前記核酸は配列番号4を含む、上記80から上記92のいずれか1項に記載の核酸。
94.前記核酸は配列番号3を含む、上記80から上記93のいずれか1項に記載の核酸。
95.前記核酸は配列番号2を含む、上記80から上記94のいずれか1項に記載の核酸。
96.CEAペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域にヌクレオチド置換を含み、前記反復領域は、(i)3以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)3以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと定義され、組換えポックスウイルスの一部としての前記核酸の存在は、前記置換を伴わないCEAペプチドをコードする組換えポックスウイルスと比較して連続継代中における前記核酸及び/または前記組換えポックスウイルスの安定性を向上させる、前記核酸。
97.前記反復領域は、(i)3以上の連続したGヌクレオチド、(ii)3以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記96に記載の核酸。
98.前記反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記96から上記97のいずれか1項に記載の核酸。
99.前記反復領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記96から上記98のいずれか1項に記載の核酸。
100.前記ヌクレオチド置換は、前記核酸の少なくとも2、3、4、5、8または10の反復ヌクレオチド領域にある、上記96から上記99のいずれか1項に記載の核酸。
101.前記ヌクレオチド置換は前記CEAペプチドのアミノ酸配列を修飾しない、上記96から上記100のいずれか1項に記載の核酸。
102.前記核酸は配列番号14を含む、上記96から上記101のいずれか1項に記載の核酸。
103.B7-1ペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域にヌクレオチド置換を含み、前記反復領域は、(i)3以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)3以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと定義され、組換えポックスウイルスの一部としての前記核酸の存在は、前記ヌクレオチド置換を伴わないB7-1ペプチドをコードする組換えポックスウイルスと比較して連続継代中における前記核酸及び/または前記組換えポックスウイルスの安定性を向上させる、前記核酸。
104.前記反復領域は、(i)3以上の連続したGヌクレオチド、(ii)3以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記103に記載の核酸。
105.前記反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTまたはCヌクレオチドと更に定義される、上記103から上記104のいずれか1項に記載の核酸。
106.前記反復領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記103から上記105のいずれか1項に記載の核酸。
107.前記ヌクレオチド置換は、前記核酸の少なくとも2、3、4、5、8または10の反復ヌクレオチド領域にある、上記103から上記106のいずれか1項に記載の核酸。
108.前記ヌクレオチド置換は前記B7-1ペプチドのアミノ酸配列を修飾しない、上記103から上記107のいずれか1項に記載の核酸。
109.前記核酸は配列番号15に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記103から上記108のいずれか1項に記載の核酸。
110.前記核酸は配列番号15を含む、上記103から上記109のいずれか1項に記載の核酸。
111.前記核酸は配列番号17に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記103から上記108のいずれか1項に記載の核酸。
112.前記核酸は配列番号17を含む、上記103から上記109のいずれか1項に記載の核酸。
113.ICAM-1ペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域にヌクレオチド置換を含み、前記反復領域は、(i)3以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)3以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと定義され、組換えポックスウイルスの一部としての前記核酸の存在は、前記ヌクレオチド置換を伴わないICAM-1ペプチドをコードする組換えポックスウイルスと比較して連続継代中における前記核酸及び/または前記組換えポックスウイルスの安定性を向上させる、前記核酸。
114.前記反復領域は、(i)3以上の連続したGヌクレオチド、(ii)3以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記113に記載の核酸。
115.前記反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTまたはCヌクレオチドと更に定義される、上記113から上記114のいずれか1項に記載の核酸。
116.前記反復領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記113から上記115のいずれか1項に記載の核酸。
117.前記ヌクレオチド置換は、前記核酸の少なくとも2、3、4、5、8または10の反復ヌクレオチド領域にある、上記113から上記116のいずれか1項に記載の核酸。
118.前記ヌクレオチド置換は前記ICAM-1ペプチドのアミノ酸配列を修飾しない、上記113から上記117のいずれか1項に記載の核酸。
119.前記核酸は配列番号18に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記113から上記118のいずれか1項に記載の核酸。
120.前記核酸は配列番号18を含む、上記113から上記119のいずれか1項に記載の核酸。
121.前記核酸は配列番号20に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記113から上記118のいずれか1項に記載の核酸。
122.前記核酸は配列番号20を含む、上記113から上記118のいずれか1項に記載の核酸。
123.LFA-3ペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域にヌクレオチド置換を含み、前記反復領域は、(i)3以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)3以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTまたはCヌクレオチドと定義され、組換えポックスウイルスの一部としての前記核酸の存在は、前記ヌクレオチド置換を伴わないLFA-3ペプチドをコードする組換えポックスウイルスと比較して連続継代中における前記核酸及び/または前記組換えポックスウイルスの安定性を向上させる、前記核酸。
124.前記反復領域は、(i)3以上の連続したGヌクレオチド、(ii)3以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記123に記載の核酸。
125.前記反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTまたはCヌクレオチドと更に定義される、上記123から上記124のいずれか1項に記載の核酸。
126.前記反復領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記123から上記125に記載の核酸。
127.前記ヌクレオチド置換は、前記核酸の少なくとも2、3、4、5、8または10の反復ヌクレオチド領域にある、上記123から上記126のいずれか1項に記載の核酸。
128.前記ヌクレオチド置換は前記LFA-3ペプチドのアミノ酸配列を修飾しない、上記123から上記127のいずれか1項に記載の核酸。
129.前記核酸は配列番号21に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記123から上記128のいずれか1項に記載の核酸。
130.前記核酸は配列番号21を含む、上記123から上記128のいずれか1項に記載の核酸。
131.前記核酸は配列番号23に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記123から上記128のいずれか1項に記載の核酸。
132.前記核酸は配列番号23を含む、上記123から上記128のいずれか1項に記載の核酸。
133.プロモーター、及び前記プロモーターと機能的に連結した上記77から上記132のいずれか1項に記載の組換え核酸を含む、発現カセット。
134.上記1から上記38のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス、上記77から上記132のいずれか1項に記載の核酸、または、上記133に記載の発現カセットを含む、免疫原性組成物。
135.上記1から上記38のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス、上記76から上記132のいずれか1項に記載の核酸、または、上記133に記載の発現カセットを含む、宿主細胞。
136.上記77から上記132のいずれか1項に記載の核酸、または、上記133に記載の発現カセットを含む、ベクター。
137.組換えポックスウイルスの連続継代中に安定なMUC1導入遺伝子を有する前記組換えポックスウイルスを作製するための方法であって、前記方法は、
上記77から上記132に記載の核酸または上記133に記載の発現カセットのいずれか1つを提供することと、
前記核酸または前記発現カセットを組換えポックスウイルス内に挿入することと、
を含む、前記方法。
138.前記組換えポックスウイルスはオルソポックスウイルス及びアビポックスウイルスから選択される、上記137に記載の方法。
139.前記オルソポックスウイルスはワクシニア、MVA、MVA-BN及びMVA-BNの誘導体から選択される、上記138に記載の方法。
140.前記組換えポックスウイルスは最大4継代中に安定である、上記137から上記139のいずれか1項に記載の方法。
141.前記アビポックスウイルスは鶏痘ウイルスである、上記137に記載の方法。
142.前記アビポックスウイルスは少なくとも3または4継代中に安定である、または、少なくとも7継代中に安定である、上記137及び上記141のいずれか1項に記載の方法。
143.組換えポックスウイルスの連続継代中に安定なMUC1ペプチドをコードする前記組換えポックスウイルスを作製するための方法であって、前記方法は、
MUC1タンパク質をコードする第1の核酸を提供することであって、前記MUC1タンパク質は少なくとも2つのVNTRドメインを含む、前記提供することと、
前記少なくとも2つのVNTRドメイン反復の順番をシャッフルまたは再編成することと、
前記少なくとも2つのVNTRドメイン反復のコドンを最適化することと、
前記第1の核酸配列を前記ポックスウイルス内に挿入して、連続継代中に安定な組換えポックスウイルスを作製することと、
を含む、前記方法。
144.前記置換は前記MUC1ペプチドのアミノ酸配列を修飾しない、上記143に記載の方法。
145.前記第1の核酸は、配列番号2に対して少なくとも95%相同である、配列番号4に対して少なくとも95%相同である、配列番号3に対して少なくとも95%相同である、または、配列番号5に対して少なくとも95%相同である、上記143から上記144のいずれか1項に記載の方法。
146.前記核酸は配列番号2に対して少なくとも95%相同である、上記143から上記145のいずれか1項に記載の方法。
147.前記核酸は配列番号3に対して少なくとも95%相同である、上記143から上記145のいずれか1項に記載の方法。
148.前記核酸は配列番号2を含む、上記143から上記145のいずれか1項に記載の方法。
149.前記核酸は配列番号5を含む、上記143から上記145のいずれか1項に記載の方法。
150.上記143から上記149のいずれか1項に記載の方法であって、前記方法は、CEAペプチドをコードする第2の核酸の反復ヌクレオチド領域内における少なくとも1つのヌクレオチドを置換することであって、前記反復ヌクレオチド領域は、(i)3以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)3以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTまたはCヌクレオチドと定義される、前記置換することと、前記第2の核酸を前記組換えポックスウイルス内に挿入することと、を更に含む、前記方法。
151.前記第2の核酸の前記反復領域は、(i)3以上の連続したGヌクレオチド、(ii)3以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記150に記載の方法。
152.前記第2の核酸の前記反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTまたはCヌクレオチドと更に定義される、上記150から上記151のいずれか1項に記載の方法。
153.前記第2の核酸の前記反復領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記150から上記152のいずれか1項に記載の方法。
154.前記置換は、前記第2の核酸の少なくとも2、3、4、5または10の反復ヌクレオチド領域にある、上記150から上記153のいずれか1項に記載の方法。
155.前記第2の核酸は配列番号14を含む、上記150から上記154のいずれか1項に記載の方法。
156.上記143から上記155のいずれか1項に記載の方法であって、前記方法は、B7-1、ICAM-1及び/またはLFA-3、CEAから選択される共刺激分子をコードする第3の核酸の反復ヌクレオチド領域内における少なくとも1つのヌクレオチドを置換することであって、前記反復ヌクレオチド領域は、(i)3以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)3以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTまたはCヌクレオチドと定義される、前記置換することと、前記第3の核酸を前記組換えポックスウイルス内に挿入することと、を更に含む、前記方法。
157.前記共刺激分子反復領域は、(i)3以上の連続したGヌクレオチド、(ii)3以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)3以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記156に記載の方法。
158.前記共刺激分子反復ヌクレオチド領域は、(i)4以上の連続反復したヌクレオチド、(ii)4以上の連続したGまたはCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTまたはCヌクレオチドと更に定義される、上記156から上記157のいずれか1項に記載の方法。
159.前記共刺激分子反復領域は、(i)4以上の連続したGヌクレオチド、(ii)4以上の連続したCヌクレオチド及び/または(iii)4以上の連続したTヌクレオチドと更に定義される、上記156から上記158のいずれか1項に記載の方法。
160.前記置換は、前記共刺激分子核酸の少なくとも2、3、4、5または10の反復ヌクレオチド領域にある、上記156から上記159のいずれか1項に記載の方法。
161.前記共刺激分子をコードする前記核酸はB7-1、ICAM-1、LFA-3及びこれらの組み合わせから選択される、上記156から上記160のいずれか1項に記載の方法。
162.前記B7.1共刺激分子をコードする前記核酸は、配列番号15または配列番号17に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記156から上記160のいずれか1項に記載の方法。
163.前記B7.1共刺激分子をコードする前記核酸は配列番号15または配列番号17を含む、上記156から上記162のいずれか1項に記載の方法。
164.前記ICAM-1共刺激分子をコードする前記核酸は、配列番号18または配列番号20に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記156から上記163のいずれか1項に記載の方法。
165.前記ICAM-1共刺激分子をコードする前記核酸は配列番号18または配列番号20を含む、上記156から上記164のいずれか1項に記載の方法。
166.前記LFA-3共刺激分子をコードする前記核酸は、配列番号21または配列番号23に対して少なくとも80%、85%、90%または95%相同である、上記156から上記164のいずれか1項に記載の方法。
167.前記LFA-3共刺激分子をコードする前記核酸は配列番号21または配列番号23を含む、上記156から上記164のいずれか1項に記載の方法。
168.前記ポックスウイルスはオルソポックスウイルスである、上記143から上記167のいずれか1項に記載の方法。
169.前記オルソポックスウイルスはワクシニアウイルスである、上記168に記載の方法。
170.前記ワクシニアウイルスは改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスである、上記169に記載の方法。
171.前記MVAはMVA-BNまたはMVA-BNの誘導体である、上記170に記載の方法。
172.前記ポックスウイルスは少なくとも継代3または継代4中に安定である、上記168から上記171のいずれか1項に記載の方法。
173.前記ポックスウイルスはアビポックスウイルスである、上記143から上記167のいずれか1項に記載の方法。
174.前記アビポックスウイルスは鶏痘ウイルスである、上記173に記載の方法。
175.前記ポックスウイルスは少なくとも継代4中に安定である、上記173から上記174のいずれか1項に記載の方法。
176.連続継代中に安定な組換えポックスウイルスを作製するための方法における、a)上記77から上記132のいずれか1項に記載の核酸、b)上記133に記載の発現カセット、c)上記134に記載の組成物、d)上記135に記載の宿主細胞またはe)上記136に記載のベクターの使用。
177.前記ポックスウイルスはワクシニアウイルス、MVA、MVA-BNまたはMVA-BNの誘導体から選択され、前記ポックスウイルスは継代4中に安定である、上記176に記載の使用。
178.前記ポックスウイルスはアビポックスウイルス及び鶏痘ウイルスから選択され、前記ポックスウイルスは少なくとも継代3または継代4中に安定である、上記176に記載の使用。
179.薬剤、好ましくはワクチンの調製における、a)上記1から上記38のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス、b)上記77から上記132のいずれか1項に記載の核酸、b)上記133に記載の発現カセット、c)上記134に記載の組成物、d)上記135に記載の宿主細胞またはe)上記136に記載のベクターの使用。
180.薬剤、好ましくはワクチンとして使用するための、上記1から上記38のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス、b)上記77から上記132のいずれか1項に記載の核酸、b)上記133に記載の発現カセット、c)上記134に記載の組成物、d)上記135に記載の宿主細胞またはe)上記136に記載のベクター。
181.ワクチンの異種プライムブースト投与レジメンに使用するための、上記1から上記38及び上記180のいずれか1項に記載の組換えポックスウイルス、b)上記134に記載の組成物またはc)上記136に記載のベクター。
182.前記異種プライムブースト投与レジメンは、
a)1回または複数回の初回投与量のワクシニアウイルスであって、前記ワクシニアウイルスは上記77から上記132のいずれか1項に記載の核酸を含む、前記ワクシニアウイルスと、
b)上記77から上記132のいずれか1項に記載の核酸を含む1回または複数回のブースト投与量の鶏痘ウイルスと、
を含む、上記181に使用するための組換えポックスウイルス、組成物またはベクター。
183.前記ワクシニアウイルスは改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、MVA-BN及びMVA-BNの誘導体から選択される、上記182に使用するための組換えポックスウイルス、組成物またはベクター。
184.連続継代中に安定な組換えポックスウイルスを作製するのに使用するための、上記77から上記132のいずれか1項に記載の核酸、b)上記133に記載の発現カセット、c)上記134に記載の組成物、d)上記135に記載の宿主細胞またはe)上記136に記載のベクター。
185.連続継代中に安定な組換えポックスウイルスを作製するための方法であって、前記方法は、
a)少なくとも2つの可変N末端反復(VNTR)ドメインを有するMUC1ペプチドをコードする第1の核酸を提供することであって、前記少なくとも2つのVNTRドメインの配置はシャッフルされ、b)前記少なくとも2つのVNTRドメインはコドン最適化される、前記提供することと、
b)CEAペプチドをコードする第2の核酸を提供することであって、前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含み、前記少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域は、a)3以上の連続反復したGまたはCヌクレオチド及び/またはb)3以上の連続反復したTヌクレオチドと定義される、前記提供することと、
を含む、前記方法。
186.前記第1の核酸は少なくとも3つのVNTRドメインを含む、上記185に記載の方法。
187.少なくとも2つのVNTRドメインの順番は、配列番号6と比較してシャッフルされている、上記185から上記186のいずれか1項に記載の方法。
188.前記第1の核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも95%、96%、97%または98%の同一性を有する核酸配列を含む、上記185から上記187のいずれか1項に記載の方法。
189.前記第1の核酸配列は配列番号2を含む、上記185から上記188のいずれか1項に記載の方法。
190.前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を更に含み、前記少なくとも1つの反復ヌクレオチド領域は、a)3以上の連続反復したGまたはCヌクレオチド及び/またはb)3以上の連続反復したTヌクレオチドと定義される、上記185から上記189のいずれか1項に記載の方法。
191.前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも2、3、4、5または10の前記反復ヌクレオチド領域に少なくとも1つの置換を含む、上記185から上記190のいずれか1項に記載の方法。
192.前記第2の核酸は、前記第2の核酸の少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15及び/または少なくとも19の反復ヌクレオチド領域内に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む、上記185から上記191のいずれか1項に記載の方法。
193.前記第2の核酸は配列番号14を含む、上記185から上記192のいずれか1項に記載の方法。
194.前記組換えポックスウイルスはワクシニアウイルス、MVA、MVA-BN及びMVA-BNの誘導体から選択され、少なくとも継代3または継代4中に安定である、上記185から上記193のいずれか1項に記載の方法。
195.前記組換えポックスウイルスはアビポックスウイルス及び鶏痘ウイルスから選択され、少なくとも継代3または継代4中に安定である、上記185から上記193のいずれか1項に記載の方法。
196.前記組換えポックスウイルスはアビポックスウイルス及び鶏痘ウイルスから選択され、少なくとも継代7中に安定である、上記185から上記193のいずれか1項に記載の方法。
【配列表】