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特許7062023ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーおよび光学膜
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  • 特許-ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーおよび光学膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーおよび光学膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/16 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
C08G73/16
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020026587
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021070804
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】108139100
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508054404
【氏名又は名称】達興材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】陳 冠萍
(72)【発明者】
【氏名】高 敏慈
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-300527(JP,A)
【文献】特開2012-111894(JP,A)
【文献】特開2014-180846(JP,A)
【文献】特開昭60-071638(JP,A)
【文献】特開2010-174195(JP,A)
【文献】特開平08-231721(JP,A)
【文献】特開平06-345841(JP,A)
【文献】特開2018-172669(JP,A)
【文献】特開2019-105830(JP,A)
【文献】特開2020-204012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00-73/26
C08L 1/00-101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミド結合、エステル結合、およびアミド結合を含むポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーであって、前記イミド結合、前記エステル結合、および前記アミド結合のモル比が56~65:19~23:12~24である、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー。
【請求項2】
前記イミド結合が芳香族ジアミンモノマーとテトラカルボン酸二無水物モノマーとに由来し、前記テトラカルボン酸二無水物モノマーには、エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーおよびエステル基を持たないテトラカルボン酸二無水物モノマーの少なくとも1つが含まれる、請求項1に記載のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー。
【請求項3】
前記エステル結合が、エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーに由来するか、またはエステル基を持つジアミンモノマーに由来する、請求項1に記載のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー。
【請求項4】
エステル基を持つ前記テトラカルボン酸二無水物モノマーに、ヒドロキノンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ)、メチルヒドロキノンビス(トリメリテート無水物)(M-TAHQ)、メトキシヒドロキノンビス(トリメリテート無水物)(MeO-TAHQ)、4,4’-ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イルカルボニルオキシ)ビフェニル(BP-TME)、1,4-シクロヘキシレンビス(トリメリテート無水物)(TACH)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノールビス(トリメリテート無水物)、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノールビス(トリメリテート無水物)(TABPFL)、およびエチレングリコールビス(無水トリメリテート)の少なくとも1つが含まれる、請求項2または3に記載のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー。
【請求項5】
エステル基を持つ前記ジアミンモノマーに、1,4-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)ベンゼン(ABHQ)、4-アミノフェニル-4-アミノ安息香酸(APAB)、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート(BPTP)、およびビス(4-アミノフェニル)-シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートの少なくとも1つが含まれる、請求項3に記載のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー。
【請求項6】
エステル基を持たない前記テトラカルボン酸二無水物モノマーに、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、および3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の少なくとも1つが含まれる、請求項2に記載のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー。
【請求項7】
前記アミド結合が、芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーと芳香族ジアミンモノマーとに由来するか、または前記芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーとアミン基もしくはイソシアネート基を含有するアルコキシシランとに由来し、
前記芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーに、塩化テレフタロイル(TPC)、二塩化イソフタロイル(IPC)、塩化4,4’-ジフェノイル、および塩化2,2’-ジフェノイルの少なくとも1つが含まれる、請求項1に記載のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー。
【請求項8】
前記芳香族ジアミンモノマーに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビスAPAF)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)、および3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)の少なくとも1つが含まれる、請求項2または7に記載のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー。
【請求項9】
前記芳香族ジアミンモノマーがTFMBを含み、前記芳香族ジアミンモノマーの量100モル%に基づいて、TFMBの量が95モル%以上である、請求項2または7に記載のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー。
【請求項10】
少なくとも1つのポリマーを含む光学膜であって、前記少なくとも1つのポリマーがイミド結合、エステル結合、およびアミド結合を含み、前記イミド結合、前記エステル結合、および前記アミド結合のモル比が56~65:19~23:12~24である、光学膜。
【請求項11】
前記少なくとも1つのポリマーが、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーである、請求項10に記載の光学膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コポリマーおよび光学膜に関し、より詳細には、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーおよび光学膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(PI)は、耐熱性、機械的特性、および電気的特性に優れているため、成形材料、電子材料、光学材料などとして広く使用されており、さまざまな分野で広く使用されている。しかしながら、PIで形成された薄膜には、硬度が不十分であるという問題がある。例えば、PIで形成された薄膜の鉛筆硬度は通常3B未満であり、これにより薄膜の表面に傷や破損などの損傷が生じ、薄膜を使用したデバイスの性能に影響を与える可能性がある。さらに、近年、ポリアミド-ポリイミンコポリマーが薄膜の形成のために開発されているが、これらのポリアミド-ポリイミンコポリマーで形成された薄膜には、依然として柔軟性が低いという問題がある。したがって、そのようなコポリマーで形成される薄膜の柔軟性をどのように改善するかは、当業者が現在解決しようとしている問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、良好な柔軟性、透明性、および硬度を備える光学膜を形成することができるポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーは、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合を含む。イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は40~80:10~30:5~30である。
【0005】
本発明の一実施形態では、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は50~70:15~26:12~27である。
【0006】
本発明の一実施形態では、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は56~65:19~23:12~24である。
【0007】
本発明の一実施形態では、イミド結合は芳香族ジアミンモノマーとテトラカルボン酸二無水物モノマーとに由来する。テトラカルボン酸二無水物モノマーには、エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーおよびエステル基を持たないテトラカルボン酸二無水物モノマーの少なくとも1つが含まれる。
【0008】
本発明の一実施形態では、エステル結合は、エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーに由来するか、またはエステル基を持つジアミンモノマーに由来する。
【0009】
本発明の一実施形態では、エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーには、ヒドロキノンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ)、メチルヒドロキノンビス(トリメリテート無水物)(M-TAHQ)、メトキシヒドロキノンビス(トリメリテート無水物)(MeO-TAHQ)、4,4’-ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イルカルボニルオキシ)ビフェニル(BP-TME)、1,4-シクロヘキシレンビス(トリメリテート無水物)(TACH)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノールビス(トリメリテート無水物)、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノールビス(トリメリテート無水物)(TABPFL)、およびエチレングリコールビス(無水トリメリテート)の少なくとも1つが含まれる。
【0010】
本発明の一実施形態では、エステル基を持つジアミンモノマーには、1,4-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)ベンゼン(ABHQ)、4-アミノフェニル-4-アミノ安息香酸(APAB)、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート(BPTP)、およびビス(4-アミノフェニル)-シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートの少なくとも1つが含まれる。
【0011】
本発明の一実施形態では、エステル基を持たないテトラカルボン酸二無水物モノマーには、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、および3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の少なくとも1つが含まれる。
【0012】
本発明の一実施形態では、アミド結合は、芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーと芳香族ジアミンモノマーとに由来するか、または芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーとアミン基(-NH)もしくはイソシアネート基(-NCO)を含有するアルコキシシランとに由来する。芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーには、塩化テレフタロイル(TPC)、二塩化イソフタロイル(IPC)、塩化4,4’-ジフェノイル、または塩化2,2’-ジフェノイルの少なくとも1つが含まれる。
【0013】
本発明の一実施形態では、芳香族ジアミンモノマーには、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビスAPAF)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)、および3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)の少なくとも1つが含まれる。
【0014】
本発明の一実施形態では、芳香族ジアミンモノマーはTFMBを含む。芳香族ジアミンモノマーの量100モル%に基づいて、TFMBの量は95モル%以上である。
【0015】
本発明の光学膜は、少なくとも1つのポリマーを含む。少なくとも1つのポリマーは、ポリイミド結合、エステル結合、およびアミド結合を含む。イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は40~80:10~30:5~30である。
【0016】
本発明の実施形態では、少なくとも1つのポリマーは、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーであるか、またはイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の少なくとも1つを含有する複数のポリマーである。複数のポリマー中のイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の合計は40~80:10~30:5~30のモル比を満たす。
【0017】
本発明の一実施形態では、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は50~70:15~26:12~27である。
【0018】
本発明の一実施形態では、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は56~65:19~23:12~24である。
【0019】
(発明の効果)
上記に基づいて、本発明のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーまたは光学膜は、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合を含み、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は40~80:10~30:5~30である。したがって、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合の合計が40~80:10~30:5~30のモル比を満たすポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーまたは複数のポリマーにより調製された光学膜は、良好な柔軟性、透明性、および硬度を備える。
【0020】
本開示の前述の特徴および利点をより分かりやすくするために、図を伴う実施形態を以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本発明の実施形態を示し、説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
図1】本発明の一例のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーの反応フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の主題を限定することを意図するものではない。用語「含む」、「含まれる」、「含有する」および/または「含んでいる」は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、工程、操作、要素、および/または構成要素の存在を明記するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、工程、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在もしくは追加を除外しないことがさらに理解されよう。
【0023】
<ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー>
本実施形態のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーは、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合を含み、ここでイミド結合、エステル結合、およびアミド結合は、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーの主鎖中にランダムに配置されている。イミド結合は芳香族ジアミンモノマーとテトラカルボン酸二無水物モノマーとに由来する。エステル結合はエステル基を持つモノマーに由来し、ここでエステル基を持つモノマーは、エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーまたはエステル基を持つジアミンモノマーである。アミド結合は、芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーと芳香族ジアミンモノマーとに由来するか、芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーと官能基を持つアルコキシシランとに由来する。イミド結合を形成するテトラカルボン酸二無水物モノマーは、エステル結合を形成するエステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーと同じでも異なっていてもよい。イミド結合を形成する芳香族ジアミンモノマー、アミド結合を形成する芳香族ジアミンモノマー、およびエステル結合を形成するエステル基を持つジアミンモノマーは、互いに同じでも異なっていてもよい。さらに、コポリマー中のイミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は40~80:10~30:5~30、好ましくは50~70:15~26:12~27、より好ましくは56~65:19~23:12~24である。イミド結合、エステル結合、およびアミド結合をコポリマーに含め、各結合のモル比を上記範囲内にすることにより、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーで形成される光学膜は、良好な柔軟性、透明性、および硬度を備える。
【0024】
さらに、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーは、イミド結合を形成するモノマーと、エステル結合を形成するモノマーと、アミド結合を形成するモノマーとの重合、脱水環化などにより形成される。次に、上記の種々のモノマーについて詳細に説明する。
【0025】
(エステル基を持つモノマー)
エステル基を持つモノマーは、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー中にエステル結合を提供する。エステル基を持つモノマーには、エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーおよびエステル基を持つジアミンモノマーの少なくとも1つが含まれる。
【0026】
エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーには、ヒドロキノンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ、CAS No. 2770-49-2)、メチルヒドロキノンビス(トリメリテート無水物)(M-TAHQ)、メトキシヒドロキノンビス(トリメリテート無水物)(MeO-TAHQ)、4,4’-ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イルカルボニルオキシ)ビフェニル(BP-TME)、1,4-シクロヘキシレンビス(トリメリテート無水物)(TACH)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノールビス(トリメリテート無水物)、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノールビス(トリメリテート無水物)(TABPFL)、およびエチレングリコールビス(無水トリメリテート)の少なくとも1つが含まれる。本実施形態では、エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーは、2つのエステル結合を含む。しかしながら、本発明はそれらに限定されず、他の実施形態では、エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーは、1つのエステル結合を含有するテトラカルボン酸二無水物モノマー、3つ以上のエステル結合を含有するテトラカルボン酸二無水物モノマー、または他の適切なテトラカルボン酸二無水物モノマーから選択されてもよい。
【0027】
【表1-1】
【表1-2】
【0028】
エステル基を持つジアミンモノマーには、ABHQ(CAS No. 22095-98-3、Shifeng Technology Co.,Ltd.から購入)、APAB(CAS No. 20610-77-9、Shifeng Technology Co,Ltdから購入)、BPTP(CAS No. 16926-73-1、Shifeng Technology Co.,Ltd.から購入)、およびビス(4-アミノフェニル)-シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートの少なくとも1つが含まれる。本実施形態では、エステル基を持つジアミンモノマーは、1つまたは2つのエステル結合を含む。しかしながら、本発明はそれらに限定されず、他の実施形態では、エステル基を持つジアミンモノマーは、3つ以上のエステル結合を含有するジアミンモノマーまたは他の適切なジアミンモノマーから選択されてもよい。
【0029】
【表2】
【0030】
(テトラカルボン酸二無水物モノマー)
テトラカルボン酸二無水物モノマーは芳香族ジアミンモノマーと反応してイミド結合を形成する。テトラカルボン酸二無水物モノマーには、エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーおよびエステル基を持たないテトラカルボン酸二無水物モノマーの少なくとも1つが含まれる。テトラカルボン酸二無水物モノマーにおいてエステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーは、エステル基を持つモノマーにおいてエステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーと同じであってもよく、本明細書では繰り返さない。イミド結合を形成するテトラカルボン酸二無水物モノマーは、エステル結合を形成するエステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーと同じでも異なっていてもよい。
【0031】
エステル基を持たないテトラカルボン酸二無水物モノマーには、6FDA、CBDA、およびBPDAの少なくとも1つが含まれる。しかし、ながら本発明はそれらに限定されず、他の実施形態では、エステル基を持たないテトラカルボン酸二無水物モノマーは、他の適切なテトラカルボン酸二無水物モノマーから選択されてもよい。
【0032】
(芳香族ジアミンモノマー)
芳香族ジアミンモノマーは、テトラカルボン酸二無水物モノマーと反応してイミド結合を形成する。芳香族ジアミンモノマーは、芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーと反応してアミド結合を形成する。
【0033】
芳香族ジアミンモノマーにはTFMBが含まれる。芳香族ジアミンモノマーの量100モル%に基づいて、TFMBの量は95モル%以上、好ましくは97.5モル%以上、より好ましくは100モル%である。TFMBの量が上記範囲内であるとき、ポリ(アミド-イミド)コポリマーは良好な粘度を有することができ、したがってポリ(アミド-イミド)コポリマーが光学膜に形成されるときに良好なコーティング均一性が達成され、膜形成を促進することができる。
【0034】
他の実施形態では、芳香族ジアミンモノマーは、他の芳香族ジアミンモノマーをさらに含んでもよい。他の芳香族ジアミンモノマーには、ビスAPAF、4,4’-DDS、および(3,3’-DDS)の少なくとも1つが含まれる。しかしながら、本発明はそれらに限定されず、他の実施形態では、他の芳香族ジアミンモノマーは他の適切なジアミンモノマーから選択されてもよい。
【0035】
(芳香族二塩化ジカルボン酸モノマー)
芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーは、芳香族ジアミンモノマーまたは官能基を持つアルコキシシランと反応してアミド結合を形成する。芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーには、塩化テレフタロイル(TPC)、二塩化イソフタロイル(IPC)、塩化4,4’-ジフェノイル、および塩化2,2’-ジフェノイルの少なくとも1つが含まれる。しかしながら、本発明はそれらに限定されず、他の実施形態では、芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーは、他の適切な芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーから選択されてもよい。
【0036】
(官能基を持つアルコキシシラン)
官能基を持つアルコキシシランは、芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーと反応してアミド結合を形成する。官能基を持つアルコキシシランには、アミン基を持つアルコキシシランおよびイソシアネート基を持つアルコキシシランの少なくとも1つが含まれる。例えば、アミン基を持つアルコキシシランおよびイソシアネート基を持つアルコキシシランは、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー末端に結合してシラン末端構造を形成するように、それぞれアミン基およびイソシアネート基を介して別々にポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー末端に位置する芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーに由来する塩化アシル基と反応し得る。官能基を持つアルコキシシランは、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーの反応におけるブロッキング剤として使用され得る。
【0037】
アミン基を含有するアルコキシシランには、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)および(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)の少なくとも1つが含まれる。しかしながら、本発明はそれらに限定されず、他の実施形態では、アミン基を含有するアルコキシシランは他の適切なモノマーから選択されてもよい。
【0038】
イソシアネート基を含有するアルコキシシランには、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランおよび3-イソシアナトプロピルトリメトキシシランの少なくとも1つが含まれる。しかしながら、本発明はそれらに限定されず、他の実施形態では、イソシアネート基を含有するアルコキシシランは、他の適切なモノマーから選択されてもよい。
【0039】
<ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーの調製>
芳香族ジアミンモノマーとテトラカルボン酸二無水物モノマーとを最初に重合させてポリアミド酸を形成し、ここで芳香族ジアミンモノマーおよびテトラカルボン酸二無水物モノマーの少なくとも一方はエステル基を含有していた。次に、芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーを添加し、官能基を持つアルコキシシランを任意に添加してポリ(アミド酸-エステル-アミド)コポリマーを形成した。次に、ポリ(アミド酸-エステル-アミド)コポリマー中のアミド酸構造単位を脱水環化反応にかけ、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーを形成した。ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーはイミド結合、エステル結合、およびアミド結合を含み、ここでアミド結合は芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーと芳香族ジアミンモノマーとに由来していた。
【0040】
重合反応および脱水環化反応は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒は、例えば、N-メチルピロリドンであるが、本発明はこれに限定されず、必要に応じて他の溶媒を選択してもよい。
【0041】
重合反応の温度は5℃~40℃であり得、その時間は4時間~12時間であり得る。
【0042】
脱水環化反応は、高温環化法または化学環化法を用いて実施することができる。
【0043】
高温環化法の温度は150℃~180℃であり得、その時間は4時間~8時間であり得る。
【0044】
化学環化法では、反応溶液に脱水剤および触媒を添加することができ、70℃~100℃の温度で2時間~5時間反応させることができる。脱水剤は、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物であるが、本発明はこれらに限定されず、必要に応じて他の脱水剤を選択してもよい。触媒は、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、またはジメチルピリジンなどの第3級アミンであるが、本発明はこれらに限定されず、必要に応じて他の触媒を選択してもよい。
【0045】
例えば、化学環化を採用し、その反応に芳香族ジアミンモノマーとしてTFMBを使用し、二塩化ジカルボン酸モノマーとしてTPCを使用し、エステル基を持たないテトラカルボン酸二無水物モノマーとしてCBDAを使用し、エステル基を持つテトラカルボン酸二無水物モノマーとしてTAHQを使用し、および官能基を持つアルコキシシランとしてAPTMSを使用してポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーを形成する反応プロセスは、図1に提供されている通りである。
【0046】
図1に示す反応プロセスでは、TFMB、CBDA、およびTAHQを重合して、エステル基を持つアミド酸構造単位とエステル基を持たないアミド酸構造単位とを含むコポリマーを形成し、ここでエステル基を持たないアミド酸構造単位の量「m」およびエステル基を持つアミド酸構造単位の量「n」はそれぞれ1以上であり、モノマーの添加によって変化した。次に、APTMSとTPCとの反応を行い、エステル基を持つアミド酸構造単位と、エステル基を持たないアミド酸構造単位と、アミド構造単位とを含み、且つシラン末端構造を有するポリ(アミド酸-エステル-アミド)コポリマーを形成し、ここでアミド構造単位の量「p」は1以上であり、モノマーの量によって変化した。最後に、ポリ(アミド酸-エステル-アミド)コポリマーを、無水酢酸およびピリジンの存在下で脱水環化反応にかけ、シラン末端を有するポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーを形成した。本実施形態では、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーは、エステル基を持たないm個のイミド構造単位から形成されるブロックと、エステル基を持つn個のイミド構造単位から形成されるブロックと、p個のアミド構造単位から形成されるブロックとを含むが、本発明はこれらに限定されず、構造単位はポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー中にランダムに配置されていてもよいことが留意されるべきである。
【0047】
(イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比の計算)
ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー中のイミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は、イミド結合を形成するモノマーの量、エステル結合を形成するモノマーの量、およびアミド結合を形成するモノマーの量から計算した。詳細には、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は以下の式1~式3によって計算することができる:
式1:イミド結合のモル数=テトラカルボン酸二無水物のモル数×2
式2:エステル結合のモル数=Σ(n個のエステル基を含有するモノマーのモル数×n)
式3:アミド結合のモル数=芳香族二塩化ジカルボン酸モノマーのモル数×2
【0048】
<光学膜>
光学膜を、少なくとも1つのポリマーで形成した。少なくとも1つのポリマーは、ポリイミド結合、エステル結合、およびアミド結合を含んでいた。イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は40~80:10~30:5~30、好ましくは50~70:15~26:12~27、より好ましくは56~65:19~23:12~24である。少なくとも1つのポリマーは、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーであり得るか、またはイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の少なくとも1つを含有する複数のポリマーであり得る。複数のポリマー中のイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の合計は、40~80:10~30:5~30、好ましくは50~70:15~26:12~27、より好ましくは、56~65:19~23:12~24のモル比を満たす。それにより、少なくとも1つのポリマーは、良好な柔軟性、透明性、および硬度を備える光学膜を形成することができる。
【0049】
光学膜がイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の少なくとも1つを含有する複数のポリマーで形成されるとき、例えば、光学膜が第1ポリマーおよび第2ポリマーで形成されるとき、第1ポリマーはイミド結合を含有することができ、第2ポリマーはエステル結合およびアミド結合を含有することができる;第1ポリマーに含有されるイミド結合、第2ポリマーに含有されるエステル結合、および第2ポリマーに含有されるアミド結合のモル比は、上記範囲内である。別の実施形態では、第1ポリマーはイミド結合およびエステル結合を含有することができ、第2ポリマーはイミド結合およびアミド結合を含有することができる;第1ポリマーに含有されるイミド結合と第2ポリマーに含有されるイミド結合の合計、および第1ポリマーに含有されるエステル結合と第2ポリマーに含有されるアミド結合のモル比は、上記範囲内である。
【0050】
光学膜が複数のポリマーで形成されるとき、複数のポリマー中のイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の合計のモル比は、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー中のイミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比と同じ方法で計算することもでき、各ポリマー中のモノマーの量から計算され、本明細書ではさらに説明はしない。
【0051】
光学膜は、例えば、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーまたはイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の少なくとも1つを含有する複数の混合ポリマーを基板上にコーティングし、その後乾燥させることにより調製される。
【0052】
基板は特に限定されず、必要に応じて選択することができる。基板は、例えば、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、硬質ガラス、または石英ガラスである。
【0053】
コーティング方法は特に限定されず、必要に応じて選択することができる。コーティング方法は、例えば、フロー法、ロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、カーテンコーティング法、または浸漬法である。
【0054】
乾燥方法は特に限定されず、必要に応じて選択することができる。乾燥方法は、例えば、オーブンもしくはホットプレートを使用してポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーまたはイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の少なくとも1つを含有する複数のポリマーがコーティングされた基板を加熱し、溶媒を除去することである。乾燥温度は200~300℃であり得、その時間は20分~1時間であり得る。焼成は、必要に応じて勾配加熱により実施され得る。
【0055】
一実施形態では、曲げ回復角度(bend recovery angle)は85度よりも大きく、好ましくは90度以上である。さらに、米国材料試験協会(ASTM)D1003によれば、70μm~80μmの厚さを有する光学膜は、1%未満、好ましくは0.7%未満のヘイズを有する。さらに、ASTM E313によれば、70μm~80μmの厚さを有する光学膜は、550nmの波長で85%を超える、好ましくは88%を超える透過率、および5以下、好ましくは3以下の黄色度指数(YI)を有する。さらに、70μm~80μmの厚さを有する光学膜は、3Bを超える、好ましくはFを超える鉛筆硬度を有する。
【0056】
本発明をより具体的に説明するために、例を以下に提供する。以下の実験について説明するが、使用される材料およびそれら各々の量および比率、ならびに処理の詳細および処理手順などは、本発明の範囲を超えることなく適宜変更され得る。したがって、本発明は、以下に説明する実験に基づいて限定的に解釈されるべきではない。
【0057】
エステル基を持つモノマーの調製を、TACHの調製を例として以下に説明する。
【0058】
1,4-シクロヘキサンジオール21.6gを、50.5gのTHFと36.8gのピリジンとの混合溶液に溶解した。さらに、86.3gのTMACを200gのTHFに溶解し、TMAC溶液を作った。次に、1,4-シクロヘキサンジオールを含有する混合溶液を、氷浴を使用して0℃でTMAC溶液にゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。その後、氷浴を取り外し、室温で12時間連続して撹拌した。次に、純水を用いて吸引ろ過を行い、ピリジン/塩酸塩を除去して白色固体を得た。続いて、白色固体を150℃で12時間焼成して、約86gのTACH固体を得た。
【0059】
エステル基を持つ他のテトラカルボン酸二無水物モノマーは、合成工程で使用されるジオールを変更することにより調製され得る。さらに、エステル基ビス(4-アミノフェニル)-シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートを有するジアミンモノマーは、合成工程で使用されるTMACを4-アミノベンゾイルクロリドに変更することにより調製され得る。
【0060】
以下に、ポリマーの合成例1~11について説明する。
(合成例1)
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)271gを、撹拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器、および凝縮器を備えた1Lの反応器に、窒素ガスを反応器に導入する際に加えた。次に、反応器の温度を25℃に設定した後、26.46g(0.083mol)のTFMBをNMPに溶解し、得られた溶液を25℃に維持した。次に、9.71g(0.021mol)のTAHQ、3.32g(0.017mol)のCBDA、および9.41g(0.021mol)の6FDAを添加し、2時間~4時間撹拌して溶解および反応させた。次に、溶液の温度を0℃~5℃に維持した後、0.94g(0.004mol)のAPTESを添加し、混合液を均一に撹拌した。その後、5.16g(0.025mol)のTPCを加え、25℃で12時間反応させ、11重量%の固形分を有するポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーの溶液を得た。
【0061】
次に、11.72gのピリジンおよび15.42gの無水酢酸(AcO)をポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーの溶液に加えた。均一に撹拌した後、混合液を85℃で4時間撹拌した。次に、反応溶液を室温まで冷却し、5Lのエタノールで沈殿させた。沈殿した固体を60℃で12時間乾燥させ、固体形態のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー49.5gを得た。
【0062】
(合成例2~11)
合成例2~11の調製方法は、各成分の量およびそれらの種類を変更したことを除き、合成例1の調製方法と同様であった。各合成例の組成およびそれらの量、ならびにポリマー中のイミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比を表3に示す。
【表3】
【0063】
表3では、略語は次のとおりである:
PEsIA:ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー
PI:ポリイミド
PEsI:ポリ(エステル-イミド)コポリマー
PAI:ポリ(アミド-イミド)コポリマー
PEsA:ポリ(エステル-アミド)コポリマー
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
APTES:(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン
Alink25:3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン
TAHQ:ヒドロキノンビス(トリメリテート無水物)
TACH:1,4-シクロヘキシレンビス(トリメリテート無水物)
CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TPC:塩化テレフタロイル
IPC:二塩化イソフタロイル
BPEF:ビスフェノキシエタノールフルオレン
【0064】
次に、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーまたは他のポリマーを使用して光学膜を形成した実施例および比較例について説明する。
【0065】
(実施例1)
固体形態のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー10gを56.66gのジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、それにより15重量%溶液を得た。次に、得られた溶液をガラス基板上に塗布し、湿潤膜厚は540μmであった。次に、120℃で1時間乾燥させ、その後230℃で20分間乾燥させ、その後徐冷した。次に、得られた膜をガラス基板から剥離し、厚さ80μmのポリ(アミドイミド)コポリマーで調製された光学膜を得た。
【0066】
(実施例2~4および比較例1~6)
実施例2~4および比較例1~6の調製方法は、各成分の量およびそれらの種類を変更したことを除き、実施例1の調製方法と同じであった。各実施例の組成およびそれらの量を表4に示す。さらに、各実施例および比較例で得られた光学膜の物性の評価結果も表4に示す。
【0067】
<物性の測定>
1.曲げ回復角度
各実施例および比較例について、2つの80μm光学膜をそれぞれ調製し、一方の光学膜を内側曲げ試験(3mmのR角度)にかけ、他方の光学膜を外側曲げ試験(3mmのR角度)にかけ、光学膜を高温高湿環境(温度60℃、湿度90%)に120時間置いた後に取り外した。続いて、内側曲げ試験で光学膜を取り外した後の曲げ回復角度と、外側曲げ試験で光学膜を取り外した後の曲げ回復角度とを測定し、平均値をとった。値が85度を超えると、光学膜は吸湿性が改善し、良好な柔軟性を備えていた。測定方法としては、KRUSS社製の接触角測定器(型番DSA100)などの市販の角度測定機を使用することができる。
【0068】
2.ヘイズ
各実施例および比較例で調製した80μmの光学膜のヘイズを、ASTM D1003の仕様に従ってヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、型番NDH5000)を用いて測定した。ヘイズが1%未満であると、ディスプレイ光学膜は良好な透明度を備えていた。
【0069】
3.鉛筆硬度
各実施例および比較例で調製した80μmの光学膜の鉛筆硬度を、765gの荷重でASTM D3363の仕様に従って測定した。鉛筆硬度が3Bを超えると、光学膜は良好な硬度を備えていた。
【0070】
4.透過率と黄色度指数
各実施例および比較例で調製した80μmの光学膜の波長550nmにおける透過率および黄色度指数(YI)を、ASTM E313の仕様に従って測定した。透過率が85%を超えると、ディスプレイ光学膜は良好な光線透過率を備えていた。黄色度指数(YI)が5以下であると、光学膜は良好な耐黄変性を備えていた。
【0071】
【表4】
【0072】
表4によると、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマー中のイミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比が40~80:10~30:5~30の範囲内であるとき(実施例1~3)、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーで調製された光学膜は、85度を超える曲げ回復角度、1%未満のヘイズ、3Bを超える鉛筆硬度、85%を超える透過率、および5以下の黄色度指数を備えていた。対照的に、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比が上記範囲外であるポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーで調製された光学膜は(比較例3~4)、85度以下の曲げ回復角度、1%以上のヘイズ、85%以下の透過率、または5を超える黄色度指数を備えていた。したがって、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーが上記範囲内のモル比のイミド結合、エステル結合、およびアミド結合を含有するとき、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーで調製された光学膜は、良好な柔軟性、透明性、硬度、光線透過率、および耐黄変性を備え、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比が上記範囲内にないポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーで調製された光学膜は、柔軟性、透明性、硬度、光線透過率、および耐黄変性の要件を同時には満たさない場合がある。
【0073】
さらに、PEsIAで調製された光学膜(実施例1~3)は、85度を超える曲げ回復角度、1%未満のヘイズ、3Bを超える鉛筆硬度、85%を超える透過率、および5以下の黄色度指数を備えていた。対照的に、PAI、PI、またはPEsIで調製された光学膜(それぞれ比較例1~2および5~6)は、85度以下の曲げ回復角度または3B以下の鉛筆硬度を備えていた。したがって、PEsIAで調製された光学膜は、良好な柔軟性、透明性、硬度、光線透過率、および耐黄変性を備え、PAI、PI、またはPEsIで調製された光学膜は、柔軟性、透明性、硬度、光線透過率、および耐黄変性の要件を同時には満たさない場合がある。
【0074】
エステル結合を持つPEsIAで調製された光学膜(実施例1~3)と比較して、エステル結合を持たないPAIで調製された光学膜(比較例1および2)は85度以下の曲げ回復角度を備えていた。したがって、ポリマー中にエステル結合を含めることにより、ポリマーの吸湿性が低下し、得られる光学膜の曲げ回復角度が増加し、光学膜の柔軟性を改善することができる。
【0075】
PEsIAで調製された光学膜(実施例1~3)と比較して、アミド結合を持たないPIまたはPEsIで調製された光学膜(それぞれ比較例5および6)は、3B以下の鉛筆硬度を備えていた。したがって、ポリマー中にアミド結合を含めることにより、得られる光学膜の鉛筆硬度が増加し、光学膜の硬度を改善することができる。
【0076】
上記範囲内のモル比のイミド結合、エステル結合、およびアミド結合を含有するポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーで調製された光学膜と比較して(実施例1~3)、上記範囲を超えるモル比のアミド結合を含有するポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーで調製された光学膜(比較例3および4)は、85度以下の曲げ回復角度、1%以上のヘイズ、および5を超える黄色度指数を備えていた。したがって、コポリマーがエステル結合を含有していたとしても、コポリマー中に含有されるアミド結合が上記範囲を超えると、ポリマーの吸湿性は依然として増加するため、得られる光学膜は曲げ回復角度が減少し、ヘイズが増加し、黄色度指数が増加し、これらは柔軟性、透明性、耐黄変性の改善に貢献しない。さらに、ポリマー中に含有されるアミド結合とエステル結合との合計が過大になると(比較例4)、得られる光学膜のヘイズが著しく増加し、これは透明性の改善には不利であった。
【0077】
また、PIおよびPEsAを混合して光学膜を調製し、PIとPEsAにそれぞれ含まれるイミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比の合計の比が40~80:10~30:5~30(実施例4)であると、複数のポリマーで調製された光学膜は、90度より大きい曲げ回復角度、1%未満のヘイズ、3Bを超える鉛筆硬度、85%を超える透過率、および5以下の黄色度指数を備えていた。すなわち、光学膜が、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合の少なくとも1つを含有する複数のポリマーで形成され、複数のポリマー中のイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の合計のモル比が上記範囲内であると、得られる光学膜は、良好な柔軟性、透明性、硬度、光線透過率、および耐黄変性を備え得る。
【0078】
上記に基づいて、本発明は、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合を含むポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーを提供し、イミド結合、エステル結合、およびアミド結合のモル比は40~80:10~30:5~30である。さらに、光学膜を、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーまたはイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の少なくとも1つを含有する複数のポリマーから形成することができ、複数のポリマーのイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の合計のモル比は上記範囲内である。したがって、ポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーまたはイミド結合、エステル結合、およびアミド結合の少なくとも1つを含有する複数のポリマーで調製された光学膜は、良好な柔軟性、透明性、硬度、光線透過率、および耐黄変性を備える。
【0079】
本発明を上記の実施形態を参照して説明したが、本発明の趣旨から逸脱することなく、説明した実施形態に変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、上記の詳細な説明ではなく添付の特許請求の範囲によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のポリ(イミド-エステル-アミド)コポリマーは、成形材料、電子材料および光学材料に適用され得る。本発明の光学膜は、光学装置に適用され得る。
図1