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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 107/28 20060101AFI20220422BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20220422BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20220422BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20220422BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20220422BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220422BHJP
【FI】
C10M107/28
C09K5/04 E
C09K5/04 F
C09K5/04 B
C09K5/04 A
C10N40:30
C10N20:04
C10N20:02
C10N30:00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020053014
(22)【出願日】2020-03-24
(62)【分割の表示】P 2016521038の分割
【原出願日】2015-05-11
(65)【公開番号】P2020109188
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2020-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2014106547
(32)【優先日】2014-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】今野 聡一郎
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-275397(JP,A)
【文献】特開2011-162766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/04
C10M 107/28
C10N 20/04,30/00,
30/06,40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

[式中、R 及びR は水素原子、R は水素原子又はメチル基、R は炭化水素基又は酸素含有有機基を示す。]
で表される構造単位を有する(メタ)アクリレート系ポリマーを基油として含有し、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも一つを含有する冷媒と共に用いられる冷凍機油であって、
前記(メタ)アクリレート系ポリマーが、前記一般式(1)におけるRが炭素数1~4のアルキル基である構造単位から選ばれる一種以上である第一の構造単位と、Rが炭素数5~8のアルキル基である構造単位から選ばれる一種以上である第二の構造単位とを含む共重合体である、
前記第一の構造単位の含有量は、前記共重合体を構成する構造単位全量を基準として50モル%以上であり、
前記(メタ)アクリレート系ポリマーは、300以上3000以下の数平均分子量Mnを有し、1.10以上2.00以下の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnを有する、冷凍機油。
【請求項2】
下記一般式(1):
【化2】

[式中、R 及びR は水素原子、R は水素原子又はメチル基、R は炭化水素基又は酸素含有有機基を示す。]
で表される構造単位を有する(メタ)アクリレート系ポリマーを基油として含有し、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも一つを含有する冷媒と共に用いられる冷凍機油であって、
前記(メタ)アクリレート系ポリマーは、前記一般式(1)におけるR が炭素数1~4のアルキル基である構造単位から選ばれる一種以上である第一の構造単位と、が、メトキシエチル基、エトキシメチル基、又はグリシジル基である構造単位から選ばれる一種以上である第二の構造単位とを含む共重合体であり、
前記第一の構造単位の含有量は、前記共重合体を構成する構造単位全量を基準として50モル%以上であり、
前記(メタ)アクリレート系ポリマーは、300以上3000以下の数平均分子量Mnを有し、1.10以上2.00以下の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnを有する、冷凍機油。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート系ポリマーの40℃における動粘度が、10mm/s以上400mm/s以下である、請求項1又は2に記載の冷凍機油。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の冷凍機油と、
ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも一つを含有する冷媒と、を含有する冷凍機用作動流体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機油、冷凍機用作動流体組成物、ポリマーを基油として含有する組成物の冷凍機油又は冷凍機用作動流体組成物への応用、及びポリマーの冷凍機油又は冷凍機用作動流体組成物の製造のための応用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のオゾン層破壊の問題から、冷凍機器の冷媒として従来使用されてきたCFC(クロロフルオロカーボン)及びHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が規制の対象となり、これらに代わってHFC(ハイドロフルオロカーボン)が冷媒として使用されつつある。さらに、HFC冷媒よりも地球温暖化係数(GWP)が低い冷媒の開発がなされている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、従来のCFCやHCFCを冷媒とする場合は、冷凍機油として鉱油やアルキルベンゼンなどの炭化水素油が好適に使用されてきたが、冷凍機油は共存する冷媒の種類によって冷媒との相溶性、潤滑性、冷媒との溶解粘度、熱・化学的安定性など予想し得ない挙動を示すため、冷媒ごとに冷凍機油の開発が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2005/105947号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、所定の冷媒との適合性に優れた冷凍機油、及びそれを用いた冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式(1):
【化1】

[式中、R、R及びRは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭化水素基を示し、Rは炭化水素基又は酸素含有有機基を示す。]
で表される構造単位を有し、300以上3000以下の数平均分子量Mnを有し、1.10以上2.00以下の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnを有するポリマーを基油として含有し、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒と共に用いられる、冷凍機油を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記一般式(1)で表される構造単位を有し、300以上3000以下の数平均分子量Mnを有し、1.10以上2.00以下の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnを有するポリマーを基油として含有する冷凍機油と、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒と、を含有する冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、ポリマーを基油として含有する組成物の冷凍機油又は冷凍機用作動流体組成物への応用であって、ポリマーは、上記一般式(1)で表される構造単位を有し、300以上3000以下の数平均分子量Mnを有し、1.10以上2.00以下の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnを有し、冷凍機油は、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒と共に用いられ、冷凍機用作動流体組成物は、冷凍機油と、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒とを含有する、応用ともいえる。
【0009】
また、本発明は、ポリマーの冷凍機油又は冷凍機用作動流体組成物の製造のための応用であって、ポリマーは、上記一般式(1)で表される構造単位を有し、300以上3000以下の数平均分子量Mnを有し、1.10以上2.00以下の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnを有し、冷凍機油は、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒と共に用いられ、冷凍機用作動流体組成物は、冷凍機油と、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒とを含有する、応用ともいえる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定の冷媒との適合性に優れた冷凍機油、及びそれを用いた冷凍機用作動流体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る冷凍機油は、下記一般式(1):
【化2】

[式中、R、R及びRは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭化水素基を示し、Rは炭化水素基又は酸素含有有機基を示す。]
で表される構造単位を有し、300以上3000以下の数平均分子量Mnを有し、1.10以上2.00以下の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnを有するポリマー(以下「(メタ)アクリレート系ポリマー」ともいう。)を基油として含有し、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒と共に用いられる。
【0012】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、上記一般式(1)で表される構造単位を有し、300以上3000以下の数平均分子量Mnを有し、1.10以上2.00以下の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnを有するポリマーを基油として含有する冷凍機油と、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒と、を含有する。本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物には、本実施形態に係る冷凍機油と、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒と、を含有する態様が包含される。
【0013】
一般式(1)におけるR、R及びRで示される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは1~5、更に好ましくは1~3である。一般式(1)におけるR及びRが水素原子であり、かつRが水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0014】
一般式(1)におけるRは、炭化水素基又は酸素含有有機基を示す。Rで示される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、更に好ましくは1~3である。(メタ)アクリレート系ポリマーを構成する全構造単位におけるRで示される炭化水素基の炭素数の平均値は、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、更に好ましくは1~3である。酸素含有有機基としては、例えばエーテル結合を形成する酸素原子を含有する直鎖又は分岐の炭化水素基、グリシジル基を有する炭化水素基などが挙げられる。
【0015】
一般式(1)における-ORは、下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【化3】

[式中、Rは二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、Rは炭化水素基を示し、mは0以上の整数を示す。mが2以上である場合には、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0016】
一般式(2)におけるRで示される二価の炭化水素基及びエーテル結合酸素含有炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、更に好ましくは1~3である。一般式(2)におけるRで示される二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基は、例えばエーテル結合を形成する酸素原子を側鎖に有する炭化水素基であってもよい。
【0017】
一般式(2)におけるRは、炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましい。この炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基などが挙げられる。これらの中でも、アルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましい。
【0018】
一般式(2)におけるmは、好ましくは0以上、より好ましくは1以上の整数であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下の整数である。(メタ)アクリレート系ポリマーを構成する全構造単位におけるmの平均値は、0~10であることが好ましい。
【0019】
(メタ)アクリレート系ポリマーは、一般式(1)で表される構造単位から選ばれる1種で構成される単独重合体であってもよく、一般式(1)で表される構造単位から選ばれる2種以上で構成される共重合体であってもよく、一般式(1)で表される構造単位と他の構造単位とで構成される共重合体であってもよい。(メタ)アクリレート系ポリマーを共重合体とすることにより、冷凍機油の冷媒との相溶性を満足しつつ、潤滑性、絶縁性、吸湿性等を一層向上させることができる。
【0020】
(メタ)アクリレート系ポリマーが共重合体である場合、当該共重合体は、上記式(1)におけるRが炭素数1~4のアルキル基である構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。この共重合体は、上記式(1)におけるRが炭素数1~4のアルキル基である構造単位から選ばれる2種以上の構造単位を有していてもよく、上記式(1)におけるRが炭素数1~4のアルキル基である構造単位から選ばれる1種以上の構造単位と、上記式(1)におけるRが炭素数5~8のアルキル基又は酸素含有有機基である構造単位から選ばれる1種以上の構造単位とを有していてもよい。上記式(1)におけるRが炭素数1~4のアルキル基である構造単位の含有量は、共重合体を構成する構造単位全量を基準として、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
【0021】
上記の共重合体のうち、例えば下記(A)~(E)の共重合体が好適である。なお、(A)~(E)中のR~Rは、それぞれ上記式(1)におけるR~Rを意味する。
(A)R~Rが水素原子であり、Rがエチル基である構造単位と、R~Rが水素原子であり、Rがn-ブチル基である構造単位と、R~Rが水素原子であり、Rがi-ブチル基(2-メチルプロピル基)である構造単位とを有する共重合体。
(B)R~Rが水素原子であり、Rがエチル基である構造単位と、R~Rが水素原子であり、Rがプロピル基である構造単位とを有する共重合体。
(C)R及びRが水素原子であり、R及びRがメチル基である構造単位と、R~Rが水素原子であり、Rがi-オクチル基(例えば2-エチルヘキシル基)である構造単位とを有する共重合体。
(D)R~Rが水素原子であり、Rがエチル基である構造単位と、R及びRが水素原子であり、Rがメチル基であり、Rがグリシジル基である構造単位とを有する共重合体。
(E)R~Rが水素原子であり、Rがi-ブチル基(2-メチルプロピル基)である構造単位と、R及びRが水素原子であり、Rがメチル基であり、Rがメトキシエチル基である構造単位とを有する共重合体。
【0022】
(メタ)アクリレート系ポリマーは、例えば国際公開01/083619号に記載されているような公知の方法により製造される。この際、原料となるモノマーの種類、開始剤の種類、共重合体における構造単位の比率等を適宜選択することにより、上記の冷凍機油の諸特性を所望のものとすることが可能となる。したがって、冷凍システム又は空調システムにおけるコンプレッサの型式、潤滑部の材質、冷凍能力、冷媒の種類等により異なる潤滑性、相溶性等の要求に応じた冷凍機油を自在に得ることができる。共重合体は、ブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0023】
(メタ)アクリレート系ポリマーの数平均分子量(Mn)は、好ましくは300以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは500以上、特に好ましくは600以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1500以下、特に好ましくは1000以下である。数平均分子量が300以上であると、所定の冷媒共存下での潤滑性(特に耐摩耗性)が向上する。数平均分子量が3000以下であると、所定の冷媒に対する相溶性が向上する。
【0024】
(メタ)アクリレート系ポリマーにおいては、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.10以上、より好ましくは1.11以上、更に好ましくは1.12以上、特に好ましくは1.13以上であり、また、好ましくは2.00以下、より好ましくは1.90以下、更に好ましくは1.80以下、特に好ましくは1.70以下である。Mw/Mnが1.10以上であると、所定の冷媒に対する相溶性が向上する。Mw/Mnが2.00以下であると、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害を抑制できる。(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、Mn及びMw/Mnが上記の条件を満たすように適宜選定される。
【0025】
本発明における重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、GPC分析により得られるMw、Mn及びMw/Mn(ポリスチレン(標準試料)換算値)を意味する。Mw、Mn及びMw/Mnは、例えば以下のように測定することができる。
【0026】
溶剤としてテトラヒドロフランを使用し、希釈して試料濃度を1質量%とした溶液を調製する。その試料溶液を、GPC装置(Waters Alliance2695)を用いて分析を行う。溶剤の流速は1ml/min、分析可能分子量100から10000のカラムを使用し、屈折率を検出器として分析を実施する。なお、分子量が明確なポリスチレン標準を用いてカラム保持時間と分子量との関係を求め、検量線を別途作成した上で、得られた保持時間から分子量を決定する。
【0027】
(メタ)アクリレート系ポリマーの引火点は、195℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、205℃以上であることが更に好ましい。本発明における引火点は、JIS K2265-4:2007「引火点の求め方-第4部:クリーブランド開放法」に準拠して測定される値を意味する。
【0028】
(メタ)アクリレート系ポリマーの自然発火点は、335℃以上であることが好ましく、340℃以上であることがより好ましく、345℃以上であることが更に好ましい。本発明における自然発火点は、ASTM E659-1978に準拠して測定される値を意味する。
【0029】
(メタ)アクリレート系ポリマーの40℃における動粘度は、好ましくは10mm/s以上、より好ましくは20mm/s以上、更に好ましくは30mm/s以上であり、また、好ましくは400mm/s以下、より好ましくは300mm/s以下、更に好ましくは200mm/s以下である。40℃における動粘度が下限値以上であると、潤滑性や圧縮機の密閉性が向上するという傾向にある。40℃における動粘度が上限値以下であると、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が広くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害を抑制できる。
【0030】
(メタ)アクリレート系ポリマーの100℃における動粘度は、好ましくは1mm/s以上、より好ましくは2mm/s以上、更に好ましくは3mm/s以上であり、また、好ましくは50mm/s以下、より好ましくは40mm/s以下、更に好ましくは30mm/s以下である。100℃における動粘度が下限値以上であると、冷媒共存下での潤滑性が向上する。100℃における動粘度が上限値以下であると、冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が広くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害を抑制できる。
【0031】
(メタ)アクリレート系ポリマーの粘度指数は、好ましくは80以上、より好ましくは90以上、更に好ましくは100以上であり、また、好ましくは200以下、より好ましくは180以下、更に好ましくは150以下である。粘度指数が下限値以上であると、所定の冷媒共存下での高温での潤滑性(特に耐摩耗性)が向上する。粘度指数が上限値以下であると、所定の冷媒共存下での低温での潤滑性(特に耐摩耗性)が向上する。
【0032】
本発明において、40℃における動粘度及び100℃における動粘度、並びに粘度指数は、JIS K-2283:1993に準拠して測定される値を意味する。
【0033】
(メタ)アクリレート系ポリマーの流動点は、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下であり、また、好ましくは-50℃以上である。流動点が-10℃以下の(メタ)アクリレート系ポリマーを用いると、低温時に冷媒循環システム内で冷凍機油が固化するのを抑制できる傾向にある。本発明における流動点は、JIS K2269:1987に準拠して測定される値を意味する。
【0034】
冷凍機油は、(メタ)アクリレート系ポリマーのみを単独で含有していてもよく、(メタ)アクリレート系ポリマー以外の基油及び/又は添加剤を更に含有していてもよい。冷凍機油中の(メタ)アクリレート系ポリマーの含有量は、上記の優れた特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。(メタ)アクリレート系ポリマーの含有量が50質量%以上であると、所定の冷媒との適合性をより向上させることができる。
【0035】
(メタ)アクリレート系ポリマー以外の基油としては、鉱油、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等の炭化水素系油、及び、エステル系基油(モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル等)、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテル等の構成元素として酸素を含有する化合物からなる合成油(含酸素油)を用いることができる。含酸素油としては、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテルが好ましく用いられる。
【0036】
基油の含有量は、潤滑性、相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性など冷凍機油に要求される特性に優れる観点から、冷凍機油全量基準で、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
【0037】
添加剤としては、酸捕捉剤、酸化防止剤、極圧剤、油性剤、消泡剤、金属不活性化剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤、摩擦調整剤、防錆剤などが挙げられる。添加剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
冷凍機油は、上記の添加剤の中でも、熱・化学的安定性をより向上させる観点から、酸捕捉剤を更に含有することが好ましい。酸捕捉剤としては、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物が例示される。
【0039】
エポキシ化合物としては、特に制限されないが、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、オキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化植物油などが挙げられる。これらのエポキシ化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、n-ブチルフェニルグリシジルエーテル、i-ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロルプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0041】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、グリシジルベンゾエート、グリシジルネオデカノエート、グリシジル-2,2-ジメチルオクタノエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートを挙げることができる。
【0042】
脂環式エポキシ化合物とは、下記一般式(3)で表される、エポキシ基を構成する炭素原子が直接脂環式環を構成している部分構造を有する化合物である。
【化4】
【0043】
脂環式エポキシ化合物としては、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタン、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ-2,3-エポキシノルボルナン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)-スピロ(1,3-ジオキサン-5,3’-[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4-(1’-メチルエポキシエチル)-1,2-エポキシ-2-メチルシクロヘキサン、4-エポキシエチル-1,2-エポキシシクロヘキサンを挙げることができる。
【0044】
アリルオキシラン化合物としては、1,2-エポキシスチレン、アルキル-1,2-エポキシスチレンを挙げることができる。
【0045】
アルキルオキシラン化合物としては、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシウンデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシトリデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシペンタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシヘプタデカン、1,1,2-エポキシオクタデカン、2-エポキシノナデカン、1,2-エポキシイコサンを挙げることができる。
【0046】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキシ化された炭素数12~20の脂肪酸と、炭素数1~8のアルコール又はフェノールもしくはアルキルフェノールとのエステルを挙げることができる。エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニル及びブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0047】
エポキシ化植物油としては、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物を挙げることができる。
【0048】
カルボジイミド化合物としては、特に制限されないが、例えばジアルキルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ビス(アルキルフェニル)カルボジイミドを用いることができる。ジアルキルカルボジイミドとしては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド等を挙げることができる。ビス(アルキルフェニル)カルボジイミドとしては、ジトリルカルボジイミド、ビス(イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(ブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(ジブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(ノニルフェニル)カルボジイミド等を挙げることができる。
【0049】
冷凍機油は、上記の添加剤の中でも、摩耗防止剤を更に含有することが好ましい。好適な摩耗防止剤としては、例えばリン酸エステル、チオリン酸エステル、スルフィド化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛が挙げられる。リン酸エステルの中でも、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルフォスフェート(TCP)が好ましい。チオリン酸エステルの中でも、トリフェニルホスフォロチオネート(TPPT)が好ましい。スルフィド化合物としては、多種あるが、冷凍機油の安定性を確保し、冷凍機器内部に多く使用されている銅の変質を抑制できる点から、モノスルフィド化合物が好ましい。
【0050】
冷凍機油は、上記の添加剤の中でも、酸化防止剤を更に含有することが好ましい。酸化防止剤としては、ジ-tert.ブチル-p-クレゾール等のフェノール系化合物、アルキルジフェニルアミン等のアミン系化合物などが挙げられる。特に、冷凍機油は、酸化防止剤としてフェノール系化合物を、冷凍機油全量基準で0.02質量%以上0.5質量%以下含有することが好ましい。
【0051】
冷凍機油は、上記の添加剤の中でも、摩擦調整剤、極圧剤、防錆剤、金属不活性化剤、消泡剤を更に含有することが好ましい。摩擦調整剤としては、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族イミド、アルコール、エステル、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン塩などが挙げられる。極圧剤としては、硫化オレフィン、硫化油脂などが挙げられる。防錆剤としては、アルケニルコハク酸のエステル又は部分エステルなどが挙げられる。金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体などが挙げられる。消泡剤としては、シリコーン化合物、ポリエステル化合物などが挙げられる。
【0052】
冷凍機油の40℃における動粘度は、特に限定されないが、好ましくは3mm/s以上、より好ましくは4mm/s以上、更に好ましくは5mm/s以上であり、また、好ましくは1000mm/s以下、より好ましくは500mm/s以下、更に好ましくは400mm/s以下である。冷凍機油の100℃における動粘度は、特に限定されないが、好ましくは1mm/s以上、より好ましくは2mm/s以上、更に好ましくは3mm/s以上であり、また、好ましくは100mm/s以下、より好ましくは50mm/s以下、更に好ましくは30mm/s以下である。
【0053】
冷凍機油の水分含有量は、特に限定されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが好ましい。
【0054】
冷凍機油の酸価は、特に限定されないが、冷凍機又は配管に用いられている金属への腐食を防止する観点、及び本実施形態の冷凍機油に含有されるエステルの分解を防止する観点から、好ましくは1.0mgKOH/g以下、より好ましくは0.1mgKOH/g以下である。本発明における酸価は、JIS K2501:2003「石油製品及び潤滑油-中和価試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
【0055】
冷凍機油の灰分は、特に限定されないが、冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するために、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。本発明における灰分は、JIS K2272:1998「原油及び石油製品-灰分及び硫酸灰分試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
【0056】
(メタ)アクリレート系ポリマーを含有する組成物、及び(メタ)アクリレート系ポリマーと上記の各種添加剤とを含有する組成物は、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒と共に用いられる冷凍機油の構成成分として、又は当該冷凍機油と、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒とを含有する冷凍機用作動流体組成物の構成成分として好適に用いられる。
【0057】
(メタ)アクリレート系ポリマー及び上記の各種添加剤は、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒と共に用いられる冷凍機油、又は当該冷凍機油と、ジフルオロメタン、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、ペンタフルオロエタンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンと1,1,1-トリフルオロエタンとの混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる冷媒とを含有する冷凍機用作動流体組成物の製造に好適に用いられる。
【0058】
冷凍機油と共に用いられる冷媒、及び冷凍機用作動流体組成物が含有する冷媒は、ジフルオロメタン(R32)、ジフルオロメタン(R32)とペンタフルオロエタン(R125)との混合物、ジフルオロメタン(R32)とペンタフルオロエタン(R125)と1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)との混合物、ペンタフルオロエタン(R125)と1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)と1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)との混合物、不飽和フッ化炭化水素、炭化水素、及び二酸化炭素から選ばれる。かかる冷媒は、上記の中から選ばれる1種であってもよく、2種以上であってもよい。上記の中から選ばれる冷媒の含有量は、冷媒全量基準で、60~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましい。
【0059】
ジフルオロメタン(R32)とペンタフルオロエタン(R125)との混合物において、質量比(R32/R125)は、例えば40~70/60~30とすることができる。これらの中でも、質量比(R32/R125)が60/40である混合物、50/50である混合物(R410A)、45/55である混合物(R410B)が好適に用いられる。
【0060】
ジフルオロメタン(R32)とペンタフルオロエタン(R125)と1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)との混合物において、質量比(R32/R125/R134a)は、例えば15~35/5~40/40~70とすることができる。これらの中でも、質量比(R32/R125/R134a)が30/10/60である混合物、23/25/52である混合物(R407C)、25/15/60である混合物(R407E)が好適に用いられる。
【0061】
ペンタフルオロエタン(R125)と1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)と1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)との混合物において、質量比(R125/R134a/R143a)は、例えば35~55/1~15/40~60とすることができる。これらの中でも、質量比(R125/R134a/R143a)が44/4/52である混合物(R404A)が好適に用いられる。
【0062】
不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒としては、フッ素数が3~5のフルオロプロペンが好ましく、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ye)、及び3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)から選ばれる1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFO-1225ye、HFO-1234ze及びHFO-1234yfから選ばれる1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。
【0063】
炭化水素冷媒としては、炭素数1~5の炭化水素が好ましく、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン(R290)、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2-メチルブタン、ノルマルペンタン又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2-メチルブタン又はこれらの混合物が好ましい。
【0064】
上記の冷媒に加えて、その他の冷媒を適宜併用してもよい。その他の冷媒としては、例えば、その他の飽和フッ化炭化水素冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド冷媒、3フッ化ヨウ化メタン冷媒、及び、アンモニア等の自然系冷媒が挙げられる。
【0065】
その他の飽和フッ化炭化水素冷媒としては、炭素数1~3、好ましくは1~2の飽和フッ化炭化水素が挙げられる。具体的には例えば、ペンタフルオロエタン(R125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)、1,1-ジフルオロエタン(R152a)、フルオロエタン(R161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R227ea)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(R245fa)、及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(R365mfc)から選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0066】
冷凍機油は、通常、冷凍空調機器において、冷媒と混合された冷凍機用作動流体組成物の形で存在している。冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油の含有量は、特に制限されないが、冷媒100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下である。
【0067】
冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、開放型又は密閉型のカーエアコン、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置、遠心式の圧縮機を有するもの等に好適に用いられる。
【実施例
【0068】
以下、実施例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
表1~3に示される組成及び性状を有する基油を用いた。表1~3中の略称は、それぞれ以下のモノマーを表す。
AC2:アクリル酸エチル
AnC4:アクリル酸ノルマルブチル
AiC4:アクリル酸2-メチルプロピル
AC3:アクリル酸プロピル
MC1:メタクリル酸メチル
AiC8:アクリル酸2-エチルヘキシル
MG:メタクリル酸グリシジル
MMOE:メタクリル酸メトキシエチル
AEOM:アクリル酸エトキシメチル
【0070】
各基油の性状は、以下の方法により評価した。
Mn、Mw/Mn:溶剤としてテトラヒドロフランを使用し、希釈して試料濃度を1質量%とした溶液を調製した。その試料溶液を、GPC装置(Waters Alliance2695)を用いて分析を行った。溶剤の流速は1ml/min、分析可能分子量100から10,000のカラムを使用し、屈折率を検出器として分析を実施した。なお、分子量が明確なポリスチレン標準を用いてカラム保持時間と分子量との関係を求め、検量線を別途作成した上で、得られた保持時間から分子量を決定した。
動粘度及び粘度指数:JIS K2283:1993
流動点:JIS K2269:1987
引火点:JIS K2265-4:2007
自然発火点:ASTM E659-1978
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
上記の各基油と下記の添加剤とを用いて表4~7に示される組成を有する冷凍機油を調製した。各冷凍機油について、以下に示す冷媒相溶性試験及び耐摩耗性試験を行った。結果を表4~7に示す。
添加剤1:2,6-ジ-tert.-ブチル-p-クレゾール
添加剤2:トリクレジルホスフェート
添加剤3:グリシジルネオデカノエート
添加剤4:2-エチルヘキシルグリシジルエーテル
【0075】
(冷媒相溶性試験)
JIS K2211:2009「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して、ジフルオロメタン/ペンタフルオロエタンの混合物(質量比50/50)(R410A)、ジフルオロメタン(R32)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、プロパン(R290)又は二酸化炭素(CO)10gに対して冷凍機油を10g配合し、冷媒と冷凍機油とが0℃において相互に溶解しているかを観察した。なお、表中、「相溶」は冷媒と冷凍機油とが相互に溶解したことを意味し、「分離」は冷媒と冷凍機油とが2層に分離したことを意味する。
【0076】
(耐摩耗性試験)
実コンプレッサと類似の冷媒雰囲気にできる、神鋼造機(株)製の高圧雰囲気摩擦試験機(回転ベーン材と固定ディスク材との回転しゅう動方式)を用いて、耐摩耗性試験を行った。試験条件は、冷媒の種類ごとに下記の耐摩耗性試験-(1)~(5)のいずれかとした。
耐摩耗性試験-(1):冷媒としてR410Aを使用し、試験容器内圧力は1.6MPa。
耐摩耗性試験-(2):冷媒としてR32を使用し、試験容器内圧力は1.6MPa。
耐摩耗性試験-(3):冷媒としてHFO-1234yfを使用し、試験容器内圧力は1.6MPa。
耐摩耗性試験-(4):冷媒としてn-ヘキサン(冷凍機油に対して容積で20%配合。R290等の炭化水素冷媒は安全面での不安があるため代替として使用。)を使用し、試験容器内圧力は常圧より若干高い圧力。
耐摩耗性試験-(5):冷媒としてCOを使用し、試験容器内圧力は1.6MPa。
【0077】
耐摩耗性試験-(1)~(5)のいずれも、油量600ml、試験温度90℃、回転数550rpm、負荷荷重90kgf、試験時間1時間で共通の条件とし、ベーン材としてはSKH-51、ディスク材としてはFC250を用いた。耐摩耗性の評価は、ディスク材の摩耗量が極めて少ないことから、ベーン材の摩耗深さによって行った。
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
【表7】