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特許7062041ピック・アンド・プレース計画策定方法およびピック・アンド・プレースシステム
<図1>
  • 特許-ピック・アンド・プレース計画策定方法およびピック・アンド・プレースシステム 図1
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  • 特許-ピック・アンド・プレース計画策定方法およびピック・アンド・プレースシステム 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】ピック・アンド・プレース計画策定方法およびピック・アンド・プレースシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020175474
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】514074382
【氏名又は名称】カワダロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】力石 直也
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 学
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-042859(JP,A)
【文献】国際公開第2019/053888(WO,A1)
【文献】特開2019-185258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの動作を制御するコントローラがピック・アンド・プレース計画を策定する方法であって、
前記アームに対してピッキング領域を設定し、前記ピッキング領域内を小区画に分割し、前記小区画にワークが配置されていると仮定した場合に、前記アームがワークをピック・アンド・プレースするのに要するサイクルタイムを計算するための予測モデルを作成する事前処理工程と、
前記ピッキング領域内にあるワークの位置情報を取得し、前記ワークが前記アームの把持対象であるかを決定し、前記予測モデルから、前記ワークをピック・アンド・プレースするのに要するサイクルタイムを計算し、前記ワークに対して、前記アームがピッキングに失敗する要素がある場合に前記ワークがピッキング対象となる選択優先度を下げるように機能するペナルティを付加し、前記サイクルタイムと前記ペナルティの合計から、前記アームがピッキング対象とするワークの選択順位を設定し、ワーク選択順位の設定を複数回繰り返して前記ワーク選択順位および当該ワーク選択順位におけるペナルティの合計を記録する逐次処理工程と、
前記複数のワーク選択順位において、前記ペナルティの合計が最も小さいワーク選択順位パターンをピック・アンド・プレース計画として採用し、前記ピック・アンド・プレース計画における前記ワーク選択順位が一位のワークをピック・アンド・プレースの対象ワークとして決定するワーク決定処理工程と、から構成されることを特徴とするピック・アンド・プレース計画策定方法。
【請求項2】
さらに、ワークの移動およびワークの消失、新規出現に伴い、ピック・アンド・プレース計画の再策定を判定するワーク状況確認工程と、前記ワーク選択順位が二位のワークをピック・アンド・プレースの対象ワークとして更新する対象ワーク更新工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載のピック・アンド・プレース計画策定方法。
【請求項3】
前記事前処理工程は、
複数のアームに対してそれぞれのピッキング領域を設定し、前記ピッキング領域内を小区画に分割し、前記小区画にワークが配置されていると仮定した場合に、前記複数のアームがワークをピック・アンド・プレースするために要するサイクルタイムを計算するための予測モデルを作成し、
前記逐次処理工程は、
前記ピッキング領域内にあるワークの位置情報を取得し、前記ワークが前記複数のアームのうちの一つのアームまたは複数のアームの把持対象であるかを決定し、前記予測モデルから、前記ワークをピック・アンド・プレースするために要するサイクルタイムを計算し、前記ワークに対して、前記複数のアームごとにピッキングに失敗する要素がある場合に前記ペナルティを付加し、前記サイクルタイムと前記ペナルティの合計から、前記複数のアームごとにピッキング対象とするワークの選択順位を設定し、ワーク選択順位の設定を複数回繰り返して前記ワーク選択順位および当該ワーク選択順位におけるペナルティの合計を記録することを特徴とする請求項1または2に記載のピック・アンド・プレース計画策定方法。
【請求項4】
前記複数のアームが、双腕型ロボットのアームであることを特徴とする請求項3に記載のピック・アンド・プレース計画策定方法。
【請求項5】
ピック・アンド・プレース作業を実施するためのシステムであって、
ワークのピッキング手段を有するアームと、前記ワークの位置情報を取得する手段と、事前処理部、逐次処理部およびワーク決定処理部を有するコントローラと、を具えるロボットと、
前記アームの作業範囲であるピッキング領域に前記ワークを搬入する手段と、
前記ワークのプレース位置を更新する手段と
を設け、
前記事前処理部が、前記アームに対してピッキング領域を設定し、前記ピッキング領域内を小区画に分割し、前記小区画にワークが配置されていると仮定した場合に、前記アームがワークをピック・アンド・プレースするのに要するサイクルタイムを計算するための予測モデルを作成するように構成され、
前記逐次処理部が、前記ピッキング領域内にあるワークの位置情報を取得し、前記ワークが前記アームの把持対象であるかを決定し、前記予測モデルから、前記ワークをピック・アンド・プレースするのに要するサイクルタイムを計算し、前記ワークに対して、前記アームがピッキングに失敗する要素がある場合に前記ワークがピッキング対象となる選択優先度を下げるように機能するペナルティを付加し、前記サイクルタイムと前記ペナルティの合計から、前記アームがピッキング対象とするワークの選択順位を設定し、ワーク選択順位の設定を複数回繰り返して前記ワーク選択順位および当該ワーク選択順位におけるペナルティの合計を記録するように構成され、
前記ワーク決定処理部が、前記複数のワーク選択順位において、前記ペナルティの合計が最も小さいワーク選択順位パターンをピック・アンド・プレース計画として採用し、前記ピック・アンド・プレース計画における前記ワーク選択順位が一位のワークをピック・アンド・プレースの対象ワークとして決定するように構成されていることを特徴とするピック・アンド・プレースシステム。
【請求項6】
さらに、コントローラが、ワークの移動およびワークの消失、新規出現に伴い、ピック・アンド・プレース計画の再策定を判定するように構成されたワーク状況確認部と、前記ワーク選択順位が二位のワークをピック・アンド・プレースの対象ワークとして更新するように構成された対象ワーク更新部と、を有することを特徴とする請求項5に記載のピック・アンド・プレースシステム。
【請求項7】
前記アームが複数のアームであって、
前記事前処理部が、前記複数のアームに対してそれぞれのピッキング領域を設定し、前記ピッキング領域内を小区画に分割し、前記小区画にワークが配置されていると仮定した場合に、前記複数のアームがワークをピック・アンド・プレースするために要するサイクルタイムを計算するための予測モデルを作成するように構成され、
前記逐次処理部が、前記ピッキング領域内にあるワークの位置情報を取得し、前記ワークが前記複数のアームのうちの一つのアームまたは複数のアームの把持対象であるかを決定し、前記予測モデルから、前記ワークをピック・アンド・プレースするために要するサイクルタイムを計算し、前記ワークに対して、前記複数のアームごとにピッキングに失敗する要素がある場合に前記ペナルティを付加し、前記サイクルタイムと前記ペナルティの合計から、前記複数のアームごとにピッキング対象とするワークの選択順位を設定し、ワーク選択順位の設定を複数回繰り返して前記ワーク選択順位および当該ワーク選択順位におけるペナルティの合計を記録するように構成されていることを特徴とする請求項5または6に記載のピック・アンド・プレースシステム。
【請求項8】
前記複数のアームが、双腕型ロボットのアームであることを特徴とする請求項7に記載のピック・アンド・プレースシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ピック・アンド・プレースを精度よく行うことを可能とするピック・アンド・プレース計画策定方法およびピック・アンド・プレースシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場において、部品の組み立て等を行う産業用ロボットの導入は広く行われているが、産業用ロボットの導入対象となる工程およびその工程における産業用ロボットの動作にはいくつかの代表的な形態が確立されている。
【0003】
たとえば、産業用ロボットの動作の一つに、所定位置にある部品(ワーク)をつまみ上げ(ピッキング)、所定のプレース位置に移動させるというピック・アンド・プレースがある。図3は、ピック・アンド・プレースによる乗せ換え作業工程を説明する概略図である。図3に示すように、ピック・アンド・プレースでは、先ず、産業用ロボットの多関節アーム301が搬入用コンベア4上のワーク2を把持(ピック)する。次いで、多関節アーム301は、ワーク2をピックした状態で移動し、ワーク2を搬出用コンベア5のプレース位置6まで搬送して下ろす(プレース)。ワーク2がプレース位置6に納まったら、搬出用コンベア5の移動により搬出される。
【0004】
ピック・アンド・プレースは、産業用ロボットのモノづくり現場への導入用途として代表的な工程の一つであるが、近年では、双腕型ロボットのように、1台のコントローラで複数のアームを制御するロボットシステムをピック・アンド・プレース工程に導入するケースが増えてきている。
【0005】
このようなロボットシステムでは、ピック・アンド・プレースの一連の流れである、(1)ワーク位置・姿勢を認識し、(2)ワークを把持・搬送するためのアームやエンドエフェクタの動作計画を策定し、(3)アームやエンドエフェクタを制御して実際にワークを把持・搬送するまでの工程を、1台のコントローラまたは1つのシーケンス制御装置上で行うことが一般的である。
【0006】
一方で、ピック・アンド・プレースでは上記の工程を一つのプロセスとして設計し、ピッキング対象のワークが無くなるまでこのプロセスを複数回繰り返すように行われる。前記ロボットシステムのように複数のアームを有する場合、プロセスをまたいで各アームを独立して制御するのではなく、一つのプロセスごとに全てのアームの一連の動作を完了させることで動作計画をより単純化することができる。しかし、この場合、ピック・アンド・プレースにかかるタクトタイムの短縮のためには、各アームの作業量に偏りが出ないようにプロセスごとの各アームのサイクルタイムを均一化し、一方のアームだけが動作している時間ができるだけ短くなるようにピック・アンド・プレース計画を策定しなければならない。また、複数のアーム間における干渉回避や、アームがワークをピッキングした際に他のワークと干渉して、ワークの位置・姿勢が変化してしまう可能性があるなどの問題も同時に解決しなければならない。
【0007】
従来技術として、たとえば、複数アーム間の接触を回避するアーム動作領域の設定方法(特許文献1)や、ピッキングの成功率を高めるための動作アルゴリズムに関する手法(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-139075号公報
【文献】特開2019-28773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2では、効率的な動作と、複数のアーム間における干渉回避やアームがワークをピッキングした際に他のワークと干渉するなどの問題点が複合する場合のピック・アンド・プレース計画の策定については解決に至っていない。
【0010】
それゆえ、本発明では、複数のワークのピック・アンド・プレースについて、タクトタイムの短縮、加えて、複数アームを備えるロボットシステムにおけるピッキング時のアーム間の干渉回避、ワーク位置ずれを考慮したピック・アンド・プレース計画策定方法を提案し、その方法を使用するのに適したピック・アンド・プレースシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を有利に解決するこの発明のピック・アンド・プレース計画策定方法は、アームに対してピッキング領域を設定し、前記ピッキング領域内を小区画に分割し、前記小区画にワークが配置されていると仮定した場合に、前記アームがワークをピック・アンド・プレースするのに要するサイクルタイムを計算するための予測モデルを作成する事前処理工程と、前記ピッキング領域内にあるワークの位置情報を取得し、前記ワークが前記アームの把持対象であるかを決定し、前記予測モデルから、前記ワークをピック・アンド・プレースするのに要するサイクルタイムを計算し、前記ワークに対して、前記アームがピッキングに失敗する要素がある場合に前記ワークがピック・アンド・プレースの対象となる優先度を下げるように機能するペナルティを付加し、前記サイクルタイムと前記ペナルティの合計から、前記アームがピッキング対象とするワークの選択順位を設定し、ワーク選択順位の設定を複数回繰り返して前記ワーク選択順位および当該ワーク選択順位におけるペナルティの合計を記録する逐次処理工程と、前記複数のワーク選択順位において、前記ペナルティの合計が最も小さいワーク選択順位パターンをピック・アンド・プレース計画として採用し、前記ピック・アンド・プレース計画における前記ワーク選択順位が一位のワークをピック・アンド・プレースの対象ワークとして決定するワーク決定処理工程と、から構成されることを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明のピック・アンド・プレース計画策定方法は、
(a)さらに、ワークの移動およびワークの消失、新規出現に伴い、ピック・アンド・プレース計画の再策定を判定するワーク状況確認工程と、前記ワーク選択順位が二位のワークをピック・アンド・プレースの対象ワークとして更新する対象ワーク更新工程とを含むこと、
(b)前記事前処理工程は、複数のアームに対してそれぞれのピッキング領域を設定し、前記ピッキング領域内を小区画に分割し、前記小区画にワークが配置されていると仮定した場合に、前記複数のアームがワークをピック・アンド・プレースするために要するサイクルタイムを計算するための予測モデルを作成し、前記逐次処理工程は、前記ピッキング領域内にあるワークの位置情報を取得し、前記ワークが前記複数のアームのうちの一つのアームまたは複数のアームの把持対象であるかを決定し、前記予測モデルから、前記ワークをピック・アンド・プレースするために要するサイクルタイムを計算し、前記ワークに対して、前記複数のアームごとにピッキングに失敗する要素がある場合に前記ペナルティを付加し、前記サイクルタイムと前記ペナルティの合計から、前記複数のアームごとにピッキング対象とするワークの選択順位を設定し、ワーク選択順位の設定を複数回繰り返して前記ワーク選択順位および当該ワーク選択順位におけるペナルティの合計を記録すること、
(c)前記複数のアームが、双腕型ロボットのアームであること、
などが好ましい実施態様になるものと考えられる。
【0013】
一方、この発明のピック・アンド・プレースシステムは、ピック・アンド・プレース作業を実施するためのシステムであって、ワークのピッキング手段を有するアームと、前記ワークの位置情報を取得する手段と、事前処理部、逐次処理部およびワーク決定処理部を有するコントローラと、を具えるロボットと、前記アームの作業範囲であるピッキング領域に前記ワークを搬入する手段と、前記ワークのプレース位置を更新する手段とを備え、前記事前処理部が、前記アームに対してピッキング領域を設定し、前記ピッキング領域内を小区画に分割し、前記小区画にワークが配置されていると仮定した場合に、前記アームがワークをピック・アンド・プレースするのに要するサイクルタイムを計算するための予測モデルを作成するように構成され、前記逐次処理部が、前記ピッキング領域内にあるワークの位置情報を取得し、前記ワークが前記アームの把持対象であるかを決定し、前記予測モデルから、前記ワークをピック・アンド・プレースするのに要するサイクルタイムを計算し、前記ワークに対して、前記アームがピッキングに失敗する要素がある場合に前記ワークがピック・アンド・プレースの対象となる優先度を下げるように機能するペナルティを付加し、前記サイクルタイムと前記ペナルティの合計から、前記アームがピッキング対象とするワークの選択順位を設定し、ワーク選択順位の設定を複数回繰り返して前記ワーク選択順位および当該ワーク選択順位におけるペナルティの合計を記録するように構成され、前記ワーク決定処理部が、前記複数のワーク選択順位において、前記ペナルティの合計が最も小さいワーク選択順位パターンをピック・アンド・プレース計画として採用し、前記ピック・アンド・プレース計画における前記ワーク選択順位が一位のワークをピック・アンド・プレースの対象ワークとして決定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、この発明のピック・アンド・プレースシステムは、
(d)さらに、コントローラが、ワークの移動およびワークの消失、新規出現に伴い、ピック・アンド・プレース計画の再策定を判定するように構成されたワーク状況確認部と、前記ワーク選択順位が二位のワークをピック・アンド・プレースの対象ワークとして更新するように構成された対象ワーク更新部と、を有すること、
(e)前記アームが複数であって、前記事前処理部が、前記複数のアームに対してそれぞれのピッキング領域を設定し、前記ピッキング領域内を小区画に分割し、前記小区画にワークが配置されていると仮定した場合に、前記複数のアームがワークをピック・アンド・プレースするために要するサイクルタイムを計算するための予測モデルを作成するように構成され、前記逐次処理部が、前記ピッキング領域内にあるワークの位置情報を取得し、前記ワークが前記複数のアームのうちの一つのアームまたは複数のアームの把持対象であるかを決定し、前記予測モデルから、前記ワークをピック・アンド・プレースするために要するサイクルタイムを計算し、前記ワークに対して、前記複数のアームごとにピッキングに失敗する要素がある場合に前記ペナルティを付加し、前記サイクルタイムと前記ペナルティの合計から、前記複数のアームごとにピッキング対象とするワークの選択順位を設定し、ワーク選択順位の設定を複数回繰り返して前記ワーク選択順位および当該ワーク選択順位におけるペナルティの合計を記録するように構成されていること、
(f)前記複数のアームが、双腕型ロボットのアームであること、
などが好ましい実施態様になるものと考えられる。
【発明の効果】
【0015】
この発明のピック・アンド・プレース計画策定方法およびピック・アンド・プレースシステムによれば、複数のワークのピック・アンド・プレースについて、タクトタイムを短縮することが可能となる。また、複数のアームを備えるロボット、たとえば、双腕型ロボットに適用して、アーム間の干渉回避やワークの位置ずれに対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態にかかるピック・アンド・プレース計画策定方法の基本フロー図である。
図2】上記実施形態のピック・アンド・プレース計画策定方法の詳細フロー図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるピック・アンド・プレースシステムの概略構成図であって、(a)はピック・アンド・プレースシステムの平面図を表し、(b)は双腕型ロボットの側面図を表す。
図4】上記実施形態のピック・アンド・プレース計画策定方法に用いるピッキング領域およびプレース位置の設定例を示す平面図である。
図5】上記実施形態のピック・アンド・プレース計画策定方法に用いる第一の仮想テーブル構成例の概念図である。
図6】上記実施形態のピック・アンド・プレース計画策定方法に用いる第二の仮想テーブル構成例の概念図である。
図7】上記実施形態のピック・アンド・プレース計画策定方法に用いる第三の仮想テーブル構成例の概念図である。
図8】上記実施形態のピック・アンド・プレース計画策定方法を用いたピック・アンド・プレースの動作の一例を示すフロー図である。
図9】上記実施形態にかかるピック・アンド・プレース計画策定方法の応用例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、本発明の一実施形態にかかるピック・アンド・プレース計画策定方法の基本フローを表す図である。図1の例では、ピック・アンド・プレース計画策定方法は、事前処理工程S1と逐次処理工程S2とワーク決定処理工程S3とから構成される。
【0018】
図2は、そのピック・アンド・プレース計画策定方法の詳細フロー図である。図3は、そのピック・アンド・プレース計画策定方法を用いるのに適したピック・アンド・プレースシステムの概略構成図である。図3(a)にピック・アンド・プレースシステムの平面図を表し、図3(b)に双腕型ロボットの側面図を表す。まず、図2および図3を例に、複数のアーム301を用いて複数のワーク(部品)2をピック・アンド・プレース作業する場合について、説明する。
【0019】
事前処理工程S1は、複数のアーム301について、各アーム301a、301bの作業範囲内にピッキング領域9a、9bを設定するピッキング領域設定工程S101と、仮想ワーク2の位置・姿勢をピッキング領域9内で網羅的に変更しながら、そのワーク2をピック・アンド・プレースする際にかかる予測時間を計算して、予測モデルを作成するサイクルタイム予測モデル作成工程S102と、からなる。具体的には、図4に示すように、ピッキング領域設定工程S101が設定したピッキング領域9内を小区画に分割し、全ての小区画内にワーク2が配置されていると仮定した場合に、アーム301がワーク2をピック・アンド・プレースするために要するサイクルタイムを計算するための予測モデルを作成する。小区画の格子寸法は、ワーク2の形状・寸法、アーム301やエンドエフェクタ7の形状・構造・寸法などを考慮して適宜定められる。
【0020】
逐次処理工程S2は、ワーク2の位置や姿勢情報を取得するワーク位置・姿勢取得工程S202と、ワーク2がどのアーム301a、301bによる被把持対象となるかを決める所属アーム決定工程S202と、ワーク2の把持や搬送にかかるサイクルタイムを上記予測モデルから取得するサイクルタイム取得工程S203と、前回ピッキングを行ったワーク2の位置情報を取得する前回ワーク情報取得工程S204と、第一多関節アーム301aが対象ワーク2をピッキングする場合に、ワーク2の配置等の条件に応じてサイクルタイムに加算されるペナルティを計算する第一アーム側ペナルティ追加工程S205と、サイクルタイムおよびペナルティの合計が小さいワーク2の中から第一多関節アーム301aの把持対象ワーク2の候補を決定する第一ワーク側候補ワーク決定工程S206と、第二多関節アーム301bが対象ワーク2をピッキングする場合に、ワーク2配置や第一多関節アーム301aとの干渉回避等の条件に応じてサイクルタイムに加算されるペナルティを計算する第二アーム側ペナルティ追加工程S207と、サイクルタイムおよびペナルティの合計が小さく、第一多関節アーム301a側がピック・アンド・プレースに要するサイクルタイムに近いサイクルタイムを持つワーク2の中から第二多関節アーム301bの把持対象ワーク2の候補を決定する第二ワーク側候補ワーク決定工程S208と、第一多関節アーム301aおよび第二多関節アーム301bの把持対象候補ワーク2を、前回ピッキングを行ったワーク2として設定する前回ワーク設定工程S209と、工程S205~S209を繰り返して、ピッキング領域9内のすべてのワーク2に対してピック・アンド・プレース対象となる選択順位を決定するワーク選択順位決定工程S210と、各アーム301a、301bの作業量に偏りがある場合に、第一多関節アーム301aおよび第二多関節アーム301bによるピッキングの組み合わせを作れなかった残ワーク2の数に応じてペナルティを追加する残ワークペナルティ追加工程S211と、全てのワーク2に選択順位が与えられた後にペナルティの合計値を計算する合計ペナルティ計算工程S212と、ワーク2の選択順位およびペナルティ合計値を保存するワーク選択順位・合計ペナルティ保存工程S213と、からなる。単独のアーム301を用いる場合や、複数のアーム301であっても、ピッキング領域が重複せず、アーム301間の干渉がない場合には、個々のアームごとの単独のアームのピック・アンド・プレース作業として、工程S207、S208およびS211は省略できる。
【0021】
ワーク決定処理工程S3は、逐次処理工程S2を複数の所定回数行った結果、ペナルティ合計値が最も小さいワーク選択順位パターンを、または、ペナルティ合計値が所定のしきい値を下回った場合に逐次処理工程S2を終了し、そのしきい値を下回ったワーク選択順位パターンをピック・アンド・プレース計画として採用し、その選択順位一位のワーク2をピック・アンド・プレースの対象ワークとして決定する対象ワーク決定工程S301と、その対象ワーク2の位置・姿勢情報を保存する対象ワーク情報保存工程S302とからなる。
【0022】
図3の例では、ピック・アンド・プレースシステム1は、第一多関節アーム301aと、第二多関節アーム301bと、ワーク2の位置情報を取得する手段としてのステレオカメラ302を有する頭部に相当する部位303と、頭部303の向きを変更可能に保持する首部304を具える双腕型ロボット3を備える。さらに、ピック・アンド・プレースシステム1は、双腕型ロボット3の作業範囲内にワーク2を搬入する手段としてのワーク搬入用コンベア4と、プレース領域6にプレースされたワーク2を次工程へ搬出し、プレース位置6a、6bを更新するための手段としてのワーク搬出用コンベア5とを備える。複数の多関節アーム301は、それぞれワーク2を把持するためのエンドエフェクタ7をアーム301の先端に具える。多関節アーム301、ステレオカメラ302、頭部303、首部304、ワーク搬入用コンベア4、ワーク搬出用コンベア5およびエンドエフェクタ7の制御は双腕型ロボットが具えるコントローラ8によって実行される。コントローラ8は、事前処理工程S1を実施するように構成された事前処理部と、逐次処理工程S2を実施するように構成された逐次処理部と、ワーク決定処理工程S3を実施するように構成されたワーク決定処理部と、を有する。なお、双腕型ロボット3としては、たとえば、カワダロボティクス株式会社製の、双腕を持つ人型ロボットの上半身を台車部分で支持する構成の作業ロボット、商品名「NEXTAGE」(登録商標)を使用することができる。また、ピック・アンド・プレースシステム1として、複数のワークをピック・アンド・プレースする構成であれば、単腕型ロボットや、単腕型ロボットや双腕型ロボットを複数組み合わせて適用することもできる。
【0023】
図4に本実施形態のピック・アンド・プレース計画策定方法に用いるピッキング領域およびプレース位置の設定例を平面図に示す。第一多関節アーム301aおよび第二多関節アーム301bの作業範囲内のワーク搬入用コンベア4上に、ワーク2の把持が可能なピッキング領域9が設定される(S101)。ピッキング領域9は、第一多関節アーム301aが対象とする第一ピッキング領域9a、第二多関節アーム301bが対象とする第二ピッキング領域9bおよびそれらが重複する重複ピッキング領域9cからなる。一方、ワーク搬出用コンベア5には、プレース領域6が設定され、第一多関節アーム301aが対象とする第一プレース位置6aおよび第二多関節アーム301bが対象とする第二プレース位置6bが設定される。
【0024】
双腕型ロボット3には、多関節アーム301やステレオカメラ302、頭部303、首部304の規準位置や姿勢を変更する手段として、腰部に相当する部位305や移動機構306を具えていてもよい。
【0025】
本実施形態におけるピック・アンド・プレースシステム1の基本的な動作手順は以下のとおりである。図8に基本的な動作手順をフロー図で示す。
【0026】
(1)ピック・アンド・プレースシステム1は、ピック・アンド・プレース作業条件の決定を行う(SA01)。この工程SA01では、たとえば、ピック・アンド・プレースシステム1が複数のワーク搬入手段やワーク搬出手段を持つ場合に、どのワーク搬入手段を用い、どのワーク搬出手段を用いるのかなどのピック・アンド・プレース作業条件を決定する。
【0027】
(2)コントローラ8は、ピック・アンド・プレース作業条件に合わせて、腰部305および移動機構306のうち、いずれかまたは両方を制御して、双腕型ロボット3の位置や姿勢を変更する(SA02)。この工程SA02は、たとえば、ワーク搬入位置の変化やワーク搬出位置の変化、周囲環境の変化に応じて、各多関節アーム301a、301bの動作範囲やステレオカメラ302の撮像範囲を変更するため、双腕型ロボット3の規準位置や姿勢を変更する場合に実施される。ピック・アンド・プレース作業条件が固定であったり、双腕型ロボットの位置および姿勢が固定されたりしている場合には、この工程SA02は実施しない。
【0028】
(3)双腕型ロボット3の首部304の回転・傾動により、ステレオカメラ302がピッキング領域9全体を撮像できるように、頭部303の姿勢を変化させる。
【0029】
(4)コントローラ8が、本実施形態にかかるピック・アンド・プレース計画策定方法の事前処理工程S1に従い、ピック・アンド・プレース計画策定の事前処理を実施する。
【0030】
(5)コントローラ8が、ワーク搬入用コンベア4を操作し、ピッキング領域9内にワーク2を搬入する(SA03)。
【0031】
(6)コントローラ8が、ステレオカメラ302によりピッキング領域9を撮像し、ピッキング領域9内にあるすべてのワーク2の位置および姿勢の情報を取得する(SA04)。
【0032】
(7)コントローラ8が、本実施形態にかかるピック・アンド・プレース計画策定方法の逐次処理工程S2およびワーク決定処理工程S3に従い、第一多関節アーム301aおよび第二多関節アーム301bが把持・搬送するワーク2を決定する。
【0033】
(8)双腕型ロボット3が、第一多関節アーム301aおよび第二多関節アーム301bならびにそれらの先端に具えたエンドエフェクタ7を操作して、把持・搬送対象として決定されたワーク2を把持し、ワーク搬出用コンベア5上のプレース領域6内のプレース位置6a、6bにそれぞれワーク2を載置する(SA05)。
【0034】
(9)ワーク搬出用コンベア5が、ワーク2を次工程に搬出し、プレース領域6を更新する(SA05)。
【0035】
(10)そして、次のピッキング対象ワークを決めるため、再度処理を実施する(SB03)。具体的には、ピッキング領域内のワークがなくなるまで、工程SA04にもどり、手順(6)~(9)を繰り返し実施する。
【0036】
(11)ピッキング領域9内のすべてのワーク2の搬出が完了(SA07)すると、工程SA03に戻り、コントローラ8が、ワーク搬入用コンベア4を操作し、再度ピッキング領域9内にワーク2を搬入する(SB05)。
【0037】
(12)すべてのワーク2の搬出が完了(SA08)するまで、手順(5)~(11)を繰り返す。途中でピック・アンド・プレース作業条件を変更する場合は、工程SA01に戻り、手順(1)から繰り返す(SB06)。
【0038】
本実施形態にかかるピック・アンド・プレース計画策定方法において、ピック・アンド・プレースの対象となるワーク2は以下のように決定される。
(13)コントローラ8が、事前処理工程S1として、以下の手順(14)および(15)の処理を行う。
【0039】
(14)ピッキング領域設定工程S101において、第一多関節アーム301aおよび第二多関節アーム301bが、ワーク2をそれぞれ自身の把持対象と判別する第一ピッキング領域9aおよび第二ピッキング領域9bを設定する。このとき、第一ピッキング領域9aおよび第二ピッキング領域9bが重複する領域は、重複ピッキング領域9cとして設定する。
【0040】
(15)サイクルタイム予測モデル作成工程S102において、ピッキング領域9を小区画に分割する。そして、各区画にワーク2が置かれているものと仮定した場合に、ワーク搬出用コンベア5上のプレース領域6に設定した第一プレース位置6aおよび第二プレース位置6bにワーク2をプレースする場合のワーク位置・姿勢情報を用いて、第一多関節アーム301aおよび第二多関節アーム301bが仮想ワーク2をそれぞれ第一プレース位置6aおよび第二プレース位置6bに搬送するのに要する時間を、区画ごとにワークの姿勢を変更しながら網羅的に計算し、推定サイクルタイム10として設定し、第一の仮想テーブル11内に保存する(図5)。ここで、第一プレース位置6aおよび第二プレース位置6bに対して、ワーク2のプレース姿勢を複数設定可能な場合は、プレース姿勢ごとに推定サイクルタイム10を計算してもよい。
【0041】
(16)コントローラ8が、逐次処理工程S2として、以下の手順(17)~(21)の処理を行う。
【0042】
(17)ワーク位置・姿勢取得工程S201において、工程SA04でステレオカメラ302が撮像した画像からピッキング領域9内にあるワークの位置・姿勢情報12を取得し、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。
【0043】
(18)所属アーム決定工程S202において、ワーク2が第一ピッキング領域9a、第二ピッキング領域9b、または重複ピッキング領域9cのいずれに所属しているかを取得し、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。
【0044】
(19)サイクルタイム取得工程S203において、第一の仮想テーブル11を参照し、ワーク2を第一プレース位置6aおよび第二プレース位置6bに移動するためのサイクルタイムを取得し、第一アーム推定サイクルタイム10aおよび第二アーム推定サイクルタイム10bとして、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。ここで、第一プレース位置6aおよび第二プレース位置6bに対して、複数のプレース姿勢を設定している場合、ワーク2をピッキングするときの多関節アーム301の姿勢からワーク2をプレースするときの多関節アーム301の姿勢へと変化させる際に必要な移動量が短くなるものをプレース姿勢として採用する。
【0045】
(20)前回ワーク情報取得工程S204において、前回のピック・アンド・プレースの対象としたワーク2のワーク位置情報13を読み込み、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。ここで、前回の対象ワーク位置・姿勢情報13が保存されていない場合には、手順(21)のペナルティ追加条件(i)および手順(24)のペナルティ追加条件(i)におけるペナルティ計算に影響を与えない仮情報を、前回の対象ワーク位置・姿勢情報13として使用する。
【0046】
(21)第一アーム側ペナルティ追加工程S205において、第一ピッキング領域9aおよび重複ピッキング領域9c内にあるワーク2に対して、第一多関節アーム301aがワーク2をピッキングする場合のペナルティ15aを計算する。ペナルティ15aは以下の条件(i)を含むときに加算される。また、第一アームペナルティ15aを、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。
条件(i)計算対象のワーク2について、第一多関節アーム301aまたは第二多関節アーム301bが対象とする前回ワーク位置13の近傍に位置するとき、ペナルティを追加する。ここで、近傍とは、同一の小区画内または周囲の8つの小区画内のいずれかをいう、以下同じ。
このとき、ペナルティは、サイクルタイムに加算される数値として単位は秒とする。
また、手順(21)において、工程SA04に示すステレオカメラ302による撮像を複数回行い、ワーク位置の移動の有無を評価する処理を追加してもよい。ワーク位置が移動したと評価されるワーク2に対しては、手順(21)において、ペナルティを追加する。
【0047】
(22)第一アーム側候補ワーク決定工程S206において、各ワーク2に対する第一アーム推定サイクルタイム10aと第一アームペナルティ15aの合計タイム16aを計算し、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。第一アーム合計タイム16aの小さい順に順位付けし、その上位にあるワーク2について第一ワーク選択候補順位17aとして、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。
【0048】
(23)そして、第一ワーク選択候補順位17aが第一位のワーク2を第一多関節アーム301aの把持・搬送対象候補とする第一アーム選択ワーク候補18aとして決定する(図6)。なお、第一位のワーク2が複数ある場合、または第一位のワーク2に対して合計タイムの差分が所定値以下の場合には、ランダムに選択してもよい。ただし、第一ワーク選択順位17aは、第一アーム合計タイム16aが最も小さいワーク2と比較し、第一アーム推定サイクルタイム10aおよび第一アーム合計タイム16aが所定値を超えるワーク2を順位付けの対象から外し、所定値以内のワーク2に対して第一位とすることができる。
【0049】
(24)第二アーム側ペナルティ追加工程S207において、第二ピッキング領域9bおよび重複ピッキング領域9c内にあるワーク2に対して、第二多関節アーム301bがワーク2をピッキングする場合のペナルティ15bを計算する。ペナルティ15bは以下の条件(i)~(iii)を含むときに加算される。また、第二アームペナルティ15bを、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。
条件(i)計算対象のワーク2について、第一多関節アーム301aまたは第二多関節アーム301bが対象とする前回ワーク位置13の近傍に位置するとき、ペナルティを追加する。
条件(ii)計算対象のワーク2が、重複ピッキング領域9c内、かつ、第一アーム選択ワーク候補18aの近傍に位置するとき、ペナルティを追加する。
条件(iii)計算対象のワーク2について、第一アーム選択ワーク候補18aに対して、第一多関節アーム301aと第二多関節アーム301bが交差する位置関係にあるとき、ペナルティを追加する。
このとき、ペナルティは、サイクルタイムに加算される数値として単位は秒とする。
また、手順(24)において、工程SA04に示すステレオカメラ302による撮像を複数回行い、ワーク位置の移動の有無を評価する処理を追加してもよい。ワーク位置が移動したと評価されるワーク2に対しては、手順(24)において、ペナルティを追加する。
【0050】
(25)第二アーム側候補ワーク決定工程S208において、各ワーク2に対する第二アーム推定サイクルタイム10bと第二アームペナルティ15bの合計タイム16bを計算し、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。第二アーム合計タイム16bの小さい順に順位付けし、その上位にあるワーク2について第二ワーク選択候補順位17bとして、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。
【0051】
(26)そして、第二ワーク選択候補順位17aが第一位のワーク2を第二多関節アーム301bの把持・搬送対象候補とする第二アーム選択ワーク候補18bとして決定する(図6)。なお、第一位のワーク2が複数ある場合、または第一位のワーク2に対して合計タイムの差分が所定値以下の場合には、ランダムに選択してもよい。ただし、第二ワーク選択順位17bは、第二アーム合計タイム16bが最も小さいワーク2と比較し、第二アーム推定サイクルタイム10bおよび第二アーム合計タイム16bが所定値を超えるワーク2を順位付けの対象から外し(他に候補となるワークがない場合を除く)、所定値以内のワーク2に対して第一位とすることができる。
【0052】
(27)前回ワーク設定工程S209において、第一アーム選択ワーク候補18aおよび第二アーム選択ワーク候補18bを、前回対象ワーク13として再設定し、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。
【0053】
(28)ワーク選択順位決定工程S210において、第一アーム選択ワーク候補18aおよび第二アーム選択ワーク候補18bに対して、逐次処理工程S2の繰り返し試行回数に従い、ワーク選択順位19を付与する。
【0054】
(29)第一アーム選択ワーク候補18aおよび第二アーム選択ワーク候補18bをワーク群から除外し、工程S205に戻って、ピッキング領域9内のワークがなくなるまで手順(21)~(28)を繰り返す(SB01)。
【0055】
(30)残ワークペナルティ追加工程S211において、各アーム301a、301bの作業量に偏りが生じる場合に追加するペナルティとして、第一アーム選択ワーク候補18aおよび第二アーム選択ワーク候補18bの組み合わせが作れなかったワーク2の残数に応じて残ワークペナルティ20を定め、第二の仮想テーブル14内に保存する(図6)。
【0056】
(31)合計ペナルティ計算工程S212において、第二の仮想テーブル14内の合計ペナルティ21を計算する。
【0057】
(32)ワーク選択順位・合計ペナルティ保存工程S213において、ワーク選択順位19および合計ペナルティ21を、第三の仮想テーブル22に保存する(図7)。
【0058】
(33)工程S205に戻り、手順(21)~(32)を複数回行い、試行回数ごとにワーク選択順位19および合計ペナルティ21を第三の仮想テーブル22に保存する。
【0059】
(34)コントローラ8は、ワーク決定処理工程S3として、以下の手順(35)~(37)を実施する。
【0060】
(35)対象ワーク決定工程S301において、第三の仮想テーブル22に保存された複数のワーク選択順位19に対して、合計ペナルティ21が最も小さくなる選択順位パターンを最終ワーク選択順位パターン23とする。
【0061】
(36)そして、最終ワーク選択順位パターン23において、選択順位が一位のワーク2をピック・アンド・プレース対象ワーク24として決定する。
【0062】
(37)対象ワーク情報保存工程S302において、ピック・アンド・プレース対象ワーク24の位置情報を前回ワーク位置13として、再設定する。
【0063】
なお、ペナルティの重みづけを選択することができる。たとえば、崩れにくいワーク形状・配置であれば、ワーク位置変化に関するペナルティの追加量を下げることでサイクルタイムをより優先した選択順位が得られる。
【0064】
また、ワーク2が重なっている場合、下側のワークにペナルティを追加することで、上側のワーク2が先にピッキングされるようになる。
【0065】
本実施形態は、上記したように複数のワーク2を単独のアームでピック・アンド・プレース処理する場合、複数のワーク2を単独のアームを持つ複数のロボットでピック・アンド・プレース処理する場合、複数のワーク2を双腕型ロボット3でピック・アンド・プレース処理する場合のいずれにも対応可能である。特に、双腕型ロボット3は、一個のコントローラ8でピック・アンド・プレース計画策定とピック・アンド・プレース作業にかかるロボットの制御とを実施でき、好ましい。
【0066】
また、ワーク搬入用コンベア4を複数備えることで、一方のコンベア上でピック・アンド・プレース作業を実施中に、他方のコンベアがワーク2を搬入することができ、ワーク搬入中のロボット側待機時間を削減できる。
【0067】
さらに、ワーク配置の変化が許容範囲内であれば、作成済みのピック・アンド・プレース計画を流用することで、ピック・アンド・プレース計画の再作成にかかる時間を短縮できる。また、その余剰時間をワーク選択順位の試行回数の増加や検索パターンの拡大に充てることができ、ピック・アンド・プレース工程全体のタクトタイムを短縮できる。
【0068】
たとえば、図9に示すように、ワーク状況確認工程S4や対象ワーク更新工程S5を、ピック・アンド・プレース計画策定方法に追加することができる。以下、本実施形態のピック・アンド・プレース計画策定方法の応用例として、上記基本動作以外の手順を説明する。
この応用例では、基本動作の手順(8)および(9)の工程SA05に続き、ワーク2を搬送した後のピッキング領域9を、ステレオカメラ302により撮像し、ピッキング領域9内にあるすべてのワーク2の位置および姿勢の情報を取得する(SA06)。そして、ピック・アンド・プレース計画策定方法に追加したワーク状況確認工程S4および対象ワーク更新工程S5を実施する。
【0069】
ワーク状況確認工程S4には、ワーク移動有無判定工程S401、ワーク消失・新規出現判定工程S402、再計画要否判定工程S403を含む。
ワークをピック・アンド・プレースしたのちに、ワーク移動有無判定工程S401により、残りのワーク位置が変化しているかを判定し、その変化量を計算する。次に、ワーク消失・新規出現判定工程S402により、ワークをピック・アンド・プレースしたのちに、ワーク2の認識不良や他のワーク2に隠れていたなどして、ワーク2が消失したり、新規出現が検出されたりしていないかを判定する。この2つの判定工程で得られた変化が、再計画要否判定工程S403により許容不可能な範囲の変化であると判定された場合には、工程S201に戻り、ピック・アンド・プレース計画の策定を再度行う(SB04)。一方、許容範囲であると判定された場合には、対象ワーク更新工程S5に進む。たとえば、ワーク2の位置変化量が、先に行ったペナルティ計算の結果に影響を与えない範囲であれば、許容範囲であると判断する。
【0070】
対象ワーク更新工程S5には、対象ワーク決定工程S501と対象ワーク情報保存工程S502とを含む。対象ワーク決定工程S501において、最終ワーク選択順位パターン22から、選択順位一位のワーク2を除外し、選択順位二位のワーク2をピック・アンド・プレース対象ワーク23として更新する。そして、対象ワーク情報保存工程S502において、更新したピック・アンド・プレース対象ワーク23の位置情報を前回ワーク位置13として、再設定する。
【0071】
そして、次のピッキング対象ワークを決めるため再度処理を実施する(SB03)。具体的には、手順(8)の工程SA05に戻る(図9)。これらの手順の繰り返しにより、ピッキング領域9内のすべてのワーク2の搬出が完了(SA07)したら、基本動作手順(11)と同様、工程SA03またはSA01に戻り、コントローラ8が、ワーク搬入用コンベア4を操作し、再度ピッキング領域9内にワーク2を搬入する(SB05、SB06)。
【0072】
上記応用例にかかるピック・アンド・プレースシステム1は、コントローラ8が、さらに、ワーク状況確認工程S4を実施するように構成されたワーク状況確認部および対象ワーク更新工程S5を実施するように構成された対象ワーク更新部を有する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
かくしてこの発明のピック・アンド・プレース計画策定方法によれば、複数のワークのピック・アンド・プレースについて、タクトタイムを短縮したピック・アンド・プレース計画を策定でき、また、複数のアームを備えるロボット、たとえば、双腕型ロボットに適用して、アーム間の干渉回避やワークの位置ずれを考慮した計画を策定できるので作業効率が向上し、産業上有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 ピック・アンド・プレースシステム
2 ワーク(部品)
3 双腕型ロボット(ロボット)
301 多関節アーム(アーム)
301a 第一多関節アーム
301b 第二多関節アーム
302 ステレオカメラ
303 頭部
304 首部
305 腰部
306 移動機構
4 ワーク搬入用コンベア
5 ワーク搬出用コンベア
6 プレース領域
6a 第一プレース位置
6b 第二プレース位置
7 エンドエフェクタ
8 コントローラ
9 ピッキング領域
9a 第一ピッキング領域
9b 第二ピッキング領域
9c 重複ピッキング領域
10 推定サイクルタイム
10a 第一アーム推定サイクルタイム
10b 第二アーム推定サイクルタイム
11 第一の仮想テーブル
12 ワークの位置・姿勢情報
13 前回の対象ワーク位置・姿勢情報(前回ワーク位置)
14 第二の仮想テーブル
15a 第一アームペナルティ
15b 第二アームペナルティ
16a 第一アーム合計タイム
16b 第二アーム合計タイム
17a 第一ワーク選択候補順位
17b 第二ワーク選択候補順位
18a 第一アーム選択ワーク候補
18b 第二アーム選択ワーク候補
19 ワーク選択順位
20 残ワークペナルティ
21 合計ペナルティ
22 第三の仮想テーブル
【要約】
【課題】複数のワークをピック・アンド・プレースするに際し、タクトタイムを短縮した作業計画策定技術を提供する。
【解決手段】アームに対して設定したピッキング領域内の小区画にワークが配置されていると仮定し、ピック・アンド・プレースのサイクルタイムを計算する予測モデルを作成する事前処理工程と、ピッキング領域内にあるワークの位置情報を取得し、アームの把持対象であるワークをピック・アンド・プレースするのに要するサイクルタイムとペナルティを計算し、その合計から、ピッキング対象ワークの選択順位を設定し、複数回繰り返してペナルティの合計を記録する逐次処理工程と、ペナルティの合計が最も小さいワーク選択順位パターンをピック・アンド・プレース計画として採用し、ワーク選択順位が一位のワークを対象ワークとして決定するワーク決定処理工程と、から構成されるピック・アンド・プレース計画策定方法である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9