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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】可逆的なヘイズを有する多層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/32 103
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020511803
(86)(22)【出願日】2017-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 SG2017050439
(87)【国際公開番号】W WO2019050469
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】イー、ウ アイク
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、ぺー チン
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニアン、ムトゥ セルヴァ アナマライ
(72)【発明者】
【氏名】前原 豊
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チエン
(72)【発明者】
【氏名】チョア、ロウホア
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-513396(JP,A)
【文献】特開平06-091799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 55/00-55/30、61/00-61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルムを150%~300%の伸長まで伸張して、前記多層フィルムに30%超のヘイズ値を付与するステップであって、前記多層フィルムが、少なくとも2つの層、(A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されているコア層と、(B)前記コア層と接触している第1のスキン層と、を有し、前記スキン層が、エチレン-系ポリマーで構成されており、前記多層フィルムが4:1~8:1のコア層(A)対スキン層(B)の層体積比を有するステップと、
前記伸張多層フィルムから前記伸張力を解放して、30%超のヘイズ値を有するヘイズ多層フィルムを形成するステップであって、前記ヘイズが、ASTM D1003に従って測定される、ステップと、
前記ヘイズ多層フィルムを延伸して、80%超の明瞭値を有する延伸多層フィルムを形成するステップであって、前記明瞭度が、ASTM D1746-15に従って測定される、ステップと、
前記延伸多層フィルムから前記延伸力を弛緩して、30%超のヘイズ値を有する弛緩多層フィルムを形成するステップと、
を含み、
前記伸張、前記解放、前記延伸、および前記弛緩のひずみ-応力挙動が、ASTM D5459に従って、25℃、500mm/分で測定される、プロセス。
【請求項2】
前記伸張するステップが、前記ヘイズ多層フィルムに30%超のヘイズ値を付与する、請求項に記載のプロセス。
【請求項3】
前記伸張するステップが、前記多層フィルムのヘイズを活性化する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
(A)0.860g/cc~0.890g/ccの密度を有するエチレン/C-Cα-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されている前記コア層と、(B)0.910g/cc~0.935g/ccの密度を有する線状低密度ポリエチレンを含む前記第1のスキン層と、を有する多層フィルムを提供するステップを含み、前記密度が、ASTM D792に従って測定される、請求項1~のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
(A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されている前記コア層と、(B)前記コア層の第1の表面と直接接触している前記第1のスキン層と、(C)前記コア層の第2の表面と直接接触している第2のスキン層と、を有する多層フィルムを提供するステップを含み、前記第2のスキン層が、エチレン系ポリマーで構成されている、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
多層フィルムであって、
(A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されているコア層と、
(B)前記コア層と接触している第1のスキン層と、を含み、
前記多層フィルムが、単軸配向ヘイズ多層フィルムであり、(i)4:1~8:1のコア層(A)対スキン層(B)の層体積比を有し、(ii)30%超のヘイズ値を有し、
前記ヘイズ多層フィルムが、少なくとも150%の伸張~300%未満の伸張までの延伸力を受けると、80%超の明瞭値を呈し、前記ヘイズ多層フィルムが、前記延伸力を除去すると、30%超のヘイズ値をさらに呈し、
前記ヘイズが、ASTM D1003に従って測定され、前記明瞭度が、ASTM D1746-15に従って測定される、多層フィルム。
【請求項7】
前記ヘイズ多層フィルムが、前記延伸力を除去すると、弛緩多層フィルムになる、請求項に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記第1のスキン層が、前記コア層に直接接触している、請求項またはのいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項9】
第2のスキン層(C)を含み、前記第1の層(B)が、前記コア層(A)の第1の表面と直接接触し、前記第2のスキン層(C)が、前記コア層(A)の第2の表面と直接接触し、前記第2のスキン層が、エチレン系ポリマーで構成されている、請求項に記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記スキン(B)-コア(A)-スキン層(C)の体積比が1:4:1~1:8:1である、請求項に記載の多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フィルムを延伸すると透明性を呈し、弛緩すると不透明性を呈するポリマーブレンドで構成されるフィルムが知られている。そのようなフィルム用のポリマーブレンドには、典型的には、エチレン系ポリマーなどのエラストマーポリマーに混和性の、プロピレン系ポリマーなどの結晶性/半結晶性ポリマーが含まれる。
【0002】
延伸および弛緩すると可逆的な透明性および不透明性を呈するフィルムに対する需要が高まっている。可逆的な透明性/不透明性を有するフィルムに対する需要を満たすために、現行のプロピレン系ポリマーおよびエチレン系ポリマー以外の新たな異なる材料から作製することができる弾性ポリマーフィルムの必要性を、当該技術分野は認識している。可逆的な透明性および不透明性を達成するために当技術分野でさらに望まれるのは、プロピレン系ポリマーを必要としないフィルムである。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、プロセスを提供する。一実施形態では、プロセスは、多層フィルムを伸張して、多層フィルムに30%超のヘイズ値を付与することを含む。多層フィルムは、少なくとも2つの層、(A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されているコア層と、(B)コア層と接触している第1のスキン層と、を有し、スキン層が、エチレン-系ポリマーで構成されている。プロセスは、伸張多層フィルムから伸張力を解放して、30%超のヘイズ値を有するヘイズ多層フィルムを形成することを含む。プロセスは、ヘイズ多層フィルムを延伸して、80%超の明瞭値を有する延伸多層フィルムを形成することを含む。プロセスは、延伸多層フィルムから延伸力を弛緩して、30%超のヘイズ値を有する弛緩多層フィルムを形成することを含む。
【0004】
一態様では、プロセスであって、
多層フィルムを伸張して、多層フィルムに30%超のヘイズ値を付与することであって、多層フィルムが、少なくとも2つの層、(A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されているコア層と、(B)コア層と接触している第1のスキン層と、を有し、スキン層が、エチレン-系ポリマーで構成されている、ヘイズ値を付与することと、伸張多層フィルムから伸張力を解放して、30%超のヘイズ値を有するヘイズ多層フィルムを形成することであって、ヘイズが、ASTM D1003に従って測定される、ヘイズ多層フィルムを形成することと、
ヘイズ多層フィルムを延伸して、80%超の明瞭値を有する延伸多層フィルムを形成することであって、明瞭度が、ASTM D1746-15に従って測定される、延伸多層フィルムを形成することと、
延伸多層フィルムから延伸力を弛緩して、30%超のヘイズ値を有する弛緩多層フィルムを形成することと、を含み、
伸張、解放、延伸、および弛緩のひずみ-応力挙動が、ASTM D5459に従って、25C、500mm/分で測定される、プロセスが提供される。
【0005】
本開示は、多層フィルムを提供する。一実施形態では、多層フィルムは、(A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されているコア層と、(B)コア層と接触している第1のスキン層と、を含む。多層フィルムは、単軸配向ヘイズ多層フィルムであり、30%超のヘイズ値を有する。ヘイズ多層フィルムは、少なくとも150%の伸張~300%の伸張の延伸力を受けると、80%超の明瞭値を呈する。ヘイズ多層フィルムはさらに、延伸力を除去すると、30%超のヘイズ値を呈する。
【0006】
別の態様では、多層フィルムであって、
(A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されているコア層と、
(B)コア層と接触している第1のスキン層と、を含み、
多層フィルムが、単軸配向ヘイズ多層フィルムであり、30%超のヘイズ値を有し、
ヘイズ多層フィルムが、少なくとも150%の伸張~300%未満の伸張までの延伸力を受けると、80%超の明瞭値を呈し、ヘイズ多層フィルムが、延伸力を除去すると、30%超のヘイズ値をさらに呈し、
ヘイズが、ASTM D1003に従って測定され、明瞭度が、ASTM D1746-15に従って測定される、多層フィルムが提供される。
【0007】
定義
元素周期表についての任意の言及は、CRC Press、Inc.、1990~1991によって発行されたものである。この表の元素の族についての言及は、族に番号を付けるための新たな表記法によるものである。
【0008】
米国特許実務の目的では、任意の参照されている特許、特許出願、または出版物の内容は、特に定義の開示(特に本開示で提供されている任意の定義と矛盾しない範囲で)および当該技術分野では一般的な知識に関して、参照によりそれらの全体が組み込まれる(あるいはその同等の米国版がそのように参照により組み込まれる)。
【0009】
本明細書に開示の数値範囲は、下限値および上限値を含むすべての値を含む。明確な値(例えば、1、または2、または3~5、または6、または7)を含有する範囲では、任意の2つの明確な値の間の任意の部分範囲(例えば、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6など)が含まれる。
【0010】
別途の記載がない限り、文脈から暗黙的に、または当技術分野で慣例である限り、すべての部およびパーセントは重量に基づき、すべての試験方法は本開示の出願日現在のものである。
【0011】
本明細書で使用される「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーのブレンドである。そのようなブレンドは、混和性(分子レベルで相分離しない)であってもなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離してもしなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野で既知の他の方法から決定される1つ以上のドメイン構成を含有してもしなくてもよい。
【0012】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を指す。
【0013】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」という用語、およびそれらの派生語は、同じことが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を除くことを意図しない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて主張されるすべての組成物は、別途記載がない限り、ポリマーであろうとなかろうと、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「本質的にからなる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、続く任意の記述の範囲から任意の他の成分、ステップ、または手順を除く。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていない任意の成分、ステップ、または手順を除く。「または」という用語は、別途記載がない限り、個々の、ならびに任意の組み合わせの列挙された部材を指す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、逆もまた同様である。
【0014】
「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント(wt%)超の重合エチレンモノマーを含有するポリマーであり、任意選択的に少なくとも1つのコモノマーを含有し得る。エチレン系ポリマーには、エチレンホモポリマー、およびエチレンコポリマー(エチレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)が含まれる。「エチレン系ポリマー」および「ポリエチレン」という用語は、互換的に使用され得る。エチレン系ポリマー(ポリエチレン)の非限定的な例には、低密度ポリエチレン(LDPE)および線状ポリエチレンが含まれる。線状ポリエチレンの非限定的な例には、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ultra low density polyethylene)(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(very low density polyethylene)(VLDPE)、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(オレフィンブロックコポリマー(OBC)としても知られている)、シングルサイト触媒の線状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、実質的に線状、または線状のプラストマー/エラストマー、および高密度ポリエチレン(HDPE)が含まれる。一般に、ポリエチレンは、チーグラーナッタ触媒などの不均質触媒系、第4族遷移金属およびメタロセンなどのリガンド構造を含む均質触媒系、非メタロセン金属中心、ヘテロアリール、ヘテロアリール、ヘテロバレントアリールオキシエーテル、ホスフィンイミン、および他などを使用する、気相、流動床反応器、液相スラリープロセス反応器、または液相溶液プロセス反応器で生成することができる。不均質および/または均質触媒の組み合わせは、単一反応器または二重反応器構成のいずれでも使用することができる。
【0015】
「エチレンプラストマー/エラストマー」は、エチレンに由来する単位と少なくとも1つのC-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位とを含む、均質な短鎖分岐分布を含有する実質的に線状、または線状のエチレン/α-オレフィンコポリマーである。エチレンプラストマー/エラストマーは、0.870g/cc~0.917g/ccの密度を有する。エチレンプラストマー/エラストマーの非限定的な例には、AFFINITY(商標)プラストマーおよびエラストマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)、EXACT(商標)プラストマー(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、Tafmer(商標)(Mitsuiから入手可能)、Nexlene(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)、およびLucene(商標)(LG Chem Ltd.で入手可能)が含まれる。
【0016】
「高密度ポリエチレン」(または「HDPE」)は、エチレンホモポリマー、または少なくとも1つのC-C10α-オレフィンコモノマーもしくはC4-α-オレフィンコモノマーを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーであり、0.940g/cc、または0.945g/cc、または0.950g/cc、または0.953g/cc~0.955g/cc、または0.960g/cc、または0.965g/cc、または0.970g/cc、または0.975g/cc、または0.980g/ccの密度を有する。HDPEは、単峰性コポリマーまたは多峰性コポリマーであり得る。「単峰性エチレンコポリマー」は、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で1つの明瞭なピークを有するエチレン/C-C10α-オレフィンコポリマーである。「多峰性エチレンコポリマー」は、分子量分布を示すGPCで少なくとも2つの明瞭なピークを有するエチレン/C-C10α-オレフィンコポリマーである。多峰性には、2つのピークを有するコポリマー(二峰性)、ならびに3つ以上のピークを有するコポリマーが含まれる。HDPEの非限定的な例には、DOW(商標)高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、ELITE(商標)強化ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、CONTINUUM(商標)二峰性ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、LUPOLEN(商標)(LyondellBasellから入手可能)、ならびにBorealis、Ineos、ExxonMobilからのHDPE製品が含まれる。
【0017】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーの重合によって調製されたポリマーである。この総称には、2つの異なるモノマーから調製されたポリマー、および3つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどを指すために通常用いられるコポリマーが含まれる。
【0018】
「低密度ポリエチレン」(または「LDPE」)は、エチレンホモポリマー、または少なくとも1つのC-C10α-オレフィンを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーからなり、0.915g/cc~0.940g/cc未満の密度を有し、広いMWDを有する長鎖分岐を含有する。LDPEは、典型的には、高圧フリーラジカル重合(フリーラジカル開始剤を用いる管状反応器またはオートクレーブ)の方式で生成される。LDPEの非限定的な例には、MarFlex(商標)(Chevron Phillips)、LUPOLEN(商標)(LyondellBasell)、ならびにBorealis、Ineos、ExxonMobil、および他からのLDPE製品が含まれる。
【0019】
「線状低密度ポリエチレン」(または「LLDPE」)は、エチレンに由来する単位と少なくとも1つのC-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位とを含む、不均質な短鎖分岐分布を含有する線状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、長鎖分岐があるとしてもわずかであることを特徴とする。LLDPEは、0.910g/cc~0.940g/cc未満の密度を有する。LLDPEの非限定的な例には、TUFLIN(商標)線状低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、およびMARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)が含まれる。
【0020】
「多成分エチレン系コポリマー」(または「EPE」)は、特許参照文献USP6,111,023、USP5,677,383、およびUSP6,984,695に記載のものなど、エチレンに由来する単位と少なくとも1つのC-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位とを含む。EPE樹脂は、0.905g/cc~0.962g/ccの密度を有する。EPE樹脂の非限定的な例には、ELITE(商標)強化ポリエチレン(The Dow Chemical Companyから入手可能)、ELITE AT(商標)先端技術樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、SURPASS(商標)ポリエチレン(PE)樹脂(Nova Chemicalsから入手可能)、およびSMART(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)が含まれる。
【0021】
「オレフィン系ポリマー」または「ポリオレフィン」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合オレフィンモノマーを含有するポリマーであり、任意選択的に少なくとも1つのコモノマーを含有し得る。オレフィン系ポリマーの非限定的な例は、エチレン系ポリマーである。
【0022】
「ポリマー」は、同じかまたは異なるタイプのモノマーを重合することにより調製された化合物であり、重合形態では、ポリマーを構成する複数のおよび/または繰り返される「単位」または「モノマー単位」を提供する。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指すために通常用いられるホモポリマーという用語、および少なくとも2つのタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために通常用いられるコポリマーという用語を包含する。それはまた、例えばランダム、ブロックなどのすべての形態のコポリマーを包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」および「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれエチレンまたはプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーとを重合することから調製された上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、特定のモノマーまたはモノマータイプに「基づく」特定のモノマー部分を含有する、1つ以上の特定のモノマーで「作製された」ものなどを指すが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残留物を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書のポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づいているものを指す。
【0023】
「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合プロピレンモノマーを含有するポリマーであり、任意選択的に少なくとも1つのコモノマーを含有し得る。プロピレン系ポリマーには、プロピレンホモポリマー、およびプロピレンコポリマー(プロピレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)が含まれる。「プロピレン系ポリマー」および「ポリプロピレン」という用語は、互換的に使用され得る。
【0024】
「シングルサイト触媒の線状低密度ポリエチレン」(または「m-LLDPE」)は、エチレンに由来する単位と、少なくとも1つのC-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位とを含む均質な短鎖分岐分布を含有する、線状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。m-LLDPEは、0.913g/cc~0.940g/cc未満の密度を有する。m-LLDPEの非限定的な例には、EXCEED(商標)メタロセンPE(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、LUFLEXEN(商標)m-LLDPE(LyondellBasellから入手可能)、およびELTEX(商標)PF m-LLDPE(Ineos Olefins&Polymersから入手可能)が含まれる。
【0025】
「超低密度(Ultra low density)ポリエチレン」(または「ULDPE」)および「超低密度(very low density)ポリエチレン」(または「VLDPE」)は各々、エチレンに由来する単位と少なくとも1つのC-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位とを含む、不均質な短鎖分岐分布を含有する線状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。ULDPEおよびVLDPEは各々、0.887g/cc~0.915g/ccの密度を有する。ULDPEおよびVLDPEの非限定的な例には、ATTANE(商標)超低密度(ultra low density)ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)およびFLEXOMER(商標)超低密度(very low density)ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)が含まれる。
【0026】
試験方法
小さい角度で光を偏向する明瞭性は、狭角散乱であるため、光の強度は、この狭角範囲内に集中する。明瞭性は、BYK HazeGard PLUS 4725装置を使用してASTM D 1746-15に従って測定し、結果はパーセント(%)で報告する。
【0027】
密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定する。結果は、グラム/立方センチメートル(g/cc)で記録する。
【0028】
応力-ひずみ挙動は、25℃で500mm/分の変形速度でZwickユニバーサル試験機を使用して測定する。300%弾性回復は、延伸ラップフィルムの機械方向の弾性回復、および永久変形、および応力保持についてのASTM D5459標準試験方法を使用して、300%ひずみまでの負荷サイクルに続く除荷サイクルから決定する。すべての実験の回復パーセントは、負荷がベースラインに戻るときのひずみを使用して、除荷サイクル後に計算する。回復パーセントは、次のように定義する。
回復%=100*(Ef-Es)/Ef
式中、Efが、周期的な負荷でのひずみであり、Esが、除荷サイクル後に負荷がベースラインに戻るひずみである。
【0029】
「伸張」は、フィルムの塑性変形を引き起こすのに十分な程度まで、機械方向または横断方向にフィルムを一軸延伸することである。伸張結果は、パーセント(%)で表す。伸張は、公称25mm厚の標準試験片を使用して、ASTM D882試験手順に従って測定する。引張試験は、Zwick(商標)Model Z10引張試験機で、500mm/分の試験速度で、開始時あご間隔50mmで実施する。結果は、パーセント(%)で表す。
【0030】
「ヘイズ」とは、フィルムの光散乱特性を指し、低ヘイズフィルムは、可視光散乱が高ヘイズフィルムよりも少ない。ヘイズは、光源CIE Illuminant Cを備える、BYK(登録商標)Gardner(Melville,New York)から入手可能なHazeGard PLUS Hazemeterを使用して、ASTM D1003に従って測定する。ヘイズ結果は、パーセント(%)で報告する。
【0031】
メルトインデックス(MI)(I2)は、ASTM D1238(190℃/2.16kg)を使用して測定し、結果は10分あたりのグラム数(g/10分)で報告する。
【0032】
示差走査熱量測定(DSC)
結晶化温度Tcは、接線が結晶化ピークの高温側に引かれていることを除き、上記のDSC冷却曲線から決定する。この接線がベースラインと交差する場所は、外挿される結晶化の開始(Tc)である。
【0033】
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、幅広い温度にわたりポリマーの融解、結晶化、およびガラス転移挙動を測定することができる。例えば、RCS(冷蔵冷却システム)およびオートサンプラーを備えるTA Instruments Q1000 DSCを使用して、この分析を実施する。試験中、50ml/分の窒素パージガス流量を使用する。各試料を、約175℃で融解プレスして薄膜にし、次いで融解した試料を室温(約25℃)に空冷する。冷却されたポリマーから3~10mg、直径6mmの試験片を抜き取り、重量を測定し、軽い(約50mg)アルミニウムパンに入れ、圧着して閉じる。次いで、分析を実施して、熱的特性を決定する。
【0034】
試料温度を上下に傾斜させて、熱流対温度プロファイルを作成することにより、試料の熱的挙動を決定する。まず、試料を180℃に急速に加熱し、3分間等温に保持して熱履歴を除去する。次に、試料を10℃/分の冷却速度で-40℃に冷却し、-40℃で3分間等温に保持する。次いで、試料を10℃/分の加熱速度で180℃に加熱する(これが「第2の加熱」傾斜である)。冷却曲線および第2の加熱曲線を記録する。結晶化の開始から-20℃までのベースラインエンドポイントを設定することによって、冷却曲線を分析する。-20℃から融解終了までのベースラインエンドポイントを設定することによって、加熱曲線を分析する。決定された値は、外挿される融解開始Tmおよび外挿される結晶化開始Tcである。融解熱(H)(ジュール/グラム)、および次の等式を使用して計算されるポリエチレン試料の結晶化度%:結晶化度%=((H)/292J/g)x100
【0035】
融解熱(H)(融解エンタルピーとしても知られている)およびピーク融解温度は、第2の加熱曲線から報告する。ピーク結晶化温度は、冷却曲線から決定する。
【0036】
融点Tmは、まず融解遷移の開始と終了との間のベースラインを引くことにより、DSC加熱曲線から決定する。次いで、融解ピークの低温側のデータに接線を引く。この線がベースラインと交差する場所は、外挿される融解開始(Tm)である。これは、Bernhard Wunderlich,The Basis of Thermal Analysis,in Thermal Characterization of Polymeric Materials 92,277-278(Edith A.Turi ed.,2d ed.1997)に記載のとおりである。
【0037】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
Robotic Assistant Deliver(RAD)システムを装備した高温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)システムは、試料調製および試料注入に使用する。濃度検出器は、Polymer Char Inc.(Valencia,Spain)からの赤外線検出器(IR-5)である。データ収集は、Polymer Char DM100データ取得ボックスを使用して実施する。担体溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)である。システムには、Agilentからのオンライン溶媒脱気デバイスが装備されている。カラムコンパートメントは、150℃で操作する。カラムは、4つのMixed A LS 30cm、20ミクロンカラムである。溶媒は、およそ200ppmの2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含有する窒素パージされた1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)である。流量は1.0mL/分であり、注入量は200μlである。「2mg/mL」の試料濃縮物は、試料をNパージおよび予熱したTCB(200ppmのBHTを含有する)に溶解し、160℃で2.5時間穏やかに攪拌することにより調製する。
【0038】
GPCカラムセットは、狭い分子量分布20のポリスチレン標準物質で実験することにより較正する。標準物質の分子量(MW)は、580g/mol~8,400,000g/molの範囲であり、標準物質は6つの「カクテル」混合物中に含有される。各標準物質混合物は、少なくとも一桁は離れた個々の分子量を有する。各PS標準物質の同等のポリプロピレン分子量は、次の等式を使用して計算し、ポリプロピレン(Th.G.Scholte,N.L.J.Meijerink,H.M.Schoffeleers,&A.M.G.Brands,J.Appl.Polym.Sci.,29,3763-3782(1984))、およびポリスチレン(E.P.Otocka,R.J.Roe,N.Y.Hellman,&P.M.Muglia,Macromolecules,4,507(1971))のMark-Houwink係数で報告し、
【数1】
式中、Mppが、PP等価MWであり、MPSが、PS等価MWであり、対数K、ならびにPPおよびPSのMark-Houwink係数の値を以下に列挙する。
【表1】
【0039】
対数分子量較正は、溶出体積の関数として4次多項式回帰を使用して生成する。数平均および重量平均分子量は、次の等式に従って計算する。
【数2】
、式中、WfおよびMは、それぞれ、溶出成分Iの重量分率および分子量である。
【0040】
13核磁気共鳴(NMR)
試料の調製:10mmのNMRチューブ内で、0.21gの試料に、クロムアセチルアセトネート(緩和剤)中0.025Mであるテトラクロロエタン-d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物およそ2.7gを添加することにより試料を調製する。チューブとその内容物を150℃に加熱することにより、試料を溶解し、均質化する。
【0041】
データ取得パラメーター:データは、Bruker Dual DUL高温CryoProbeを装備したBruker 400MHz分光計を使用して、収集する。データは、データファイルごとに320のトランジェント、7.3秒のパルス繰り返し遅延(6秒の遅延+1.3秒の取得時間)、90度のフリップ角、および125℃の試料温度での逆ゲートデカップリングを使用して取得する。すべての測定は、ロックモードの非回転試料で行う。加熱した(130℃)NMR試料チェンジャーに挿入する直前に試料を均質化し、データ取得の15分前にプローブ内で熱平衡化させる。NMRは、例えばエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーに対する、エチレンの総重量パーセントを決定するために使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示は、可逆的なヘイズを有する多層フィルムを製造するためのプロセスに関する。一実施形態では、プロセスは、多層フィルムを伸張して、多層フィルムに30%超のヘイズ値を付与することを含む。多層フィルムは、少なくとも2つの層、(A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されているコア層と、(B)コア層と接触している第1のスキン層と、を有する。第1のスキン層は、エチレン系ポリマーで構成されている。プロセスは、伸張多層フィルムから伸張力を解放して、30%超のヘイズ値を有するヘイズ多層フィルムを形成することを含む。プロセスは、ヘイズ多層フィルムを延伸して、80%超の明瞭値を有する延伸多層フィルムを形成することを含む。プロセスは、延伸多層フィルムを弛緩して、30%超のヘイズ値を有する弛緩多層フィルムを形成することを含む。
【0043】
1.多層フィルム
本プロセスは、多層フィルムを伸張することを含む。多層フィルムは、少なくとも2つの層、(A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されているコア層と、(B)コア層と接触している第1のスキン層と、を有する。スキン層は、エチレン系ポリマーで構成されている。
【0044】
A.コア層(A)
多層フィルムは、コア層を含む。コア層(A)は、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーを含む。「エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー」という用語は、重合形態のエチレンおよび1つ以上の共重合性α-オレフィンコモノマーを含み、化学的または物理的特性が異なる2つ以上の重合モノマー単位の複数のブロックまたはセグメントを特徴とする。コポリマー中の「エチレン」または「コモノマー」の量について言及するとき、これはその重合単位を意味すると理解される。いくつかの実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、次の式により表すことができる。
(AB)
【0045】
nが少なくとも1、好ましくは2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上などの1超の整数の場合、「A」は、ハードブロックまたはセグメントを表し、「B」はソフトブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、実質的に分岐または実質的に星形の様式とは対照的に、実質的に線状の様式で、または線状の様式で、連結または共有結合している。他の実施形態では、AブロックおよびBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。言い換えれば、ブロックコポリマーは、通常次のような構造を有さない。
AAA-AA-BBB-BB
【0046】
さらに他の実施形態では、ブロックコポリマーは、異なるコモノマー(複数可)を含む第3のタイプのブロックを通常有さない。なお他の実施形態では、ブロックAおよびブロックBの各々は、ブロック内に実質的にランダムに分布したモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、ブロックの残りとは実質的に異なる組成を有する先端セグメントなどの別個の組成の2つ以上のサブセグメント(またはサブブロック)を含まない。
【0047】
好ましくは、エチレンは、全ブロックコポリマーの大部分のモル分率を構成する、すなわち、エチレンは、全ポリマーのうちの少なくとも50重量パーセントを構成する。より好ましくは、エチレンは少なくとも60重量パーセント、少なくとも70重量パーセント、または少なくとも80重量パーセントを構成し、全ポリマーの実質的な残りが、好ましくは3つ以上の炭素原子、または4~8個の炭素原子を有するα-オレフィンである少なくとも1つの他のコモノマーを含む。いくつかの実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、50重量%~90重量%、または60重量%~85重量%、または65重量%~80重量%のエチレンを含み得る。多くのエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーでは、組成物は、全ポリマーのうちの80重量パーセント超のエチレン部分、および全ポリマーのうちの10~15、または15~20重量パーセントのオクテン部分を含む。
【0048】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、さまざまな量の「ハード」セグメントと「ソフト」セグメントとを含む。「ハード」セグメントは、エチレンが、ポリマーの重量に基づいて、90重量パーセント超、または95重量パーセント、または95重量パーセント、または98重量パーセント超~最大100重量パーセントの量で存在する重合単位のブロックである。言い換えれば、ハードセグメント中のコモノマー含有量(エチレン以外のモノマーの含有量)は、ポリマーの重量に基づいて、10重量パーセント未満、または5重量パーセント、または5重量パーセント未満、または2重量パーセント未満であり、限りなくゼロに近くてもよい。いくつかの実施形態では、ハードセグメントは、すべて、または実質的にすべてがエチレンに由来する単位を含む。「ソフト」セグメントは、コモノマー含有量(エチレン以外のモノマーの含有量)が、ポリマーの重量に基づいて、5重量パーセント超、または8重量パーセント超、10重量パーセント超、または15重量パーセント超の重合単位のブロックである。いくつかの実施形態では、ソフトセグメント中のコモノマー含有量は、20重量パーセント超、25重量パーセント超、30重量パーセント超、35重量パーセント超、40重量パーセント超、45重量パーセント超、50重量パーセント超、または60重量パーセント超であり得、最大100重量パーセントであってもよい。
【0049】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー中のソフトセグメントは、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの総重量のうちの1重量パーセント~99重量パーセント、またはエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの総重量のうちの5重量パーセント~95重量パーセント、10重量パーセント~90重量パーセント、15重量パーセント~85重量パーセント、20重量パーセント~80重量パーセント、25重量パーセント~75重量パーセント、30重量パーセント~70重量パーセント、35重量パーセント~65重量パーセント、40重量パーセント~60重量パーセント、もしくは45重量パーセント~55重量パーセントで存在することができる。逆に、ハードセグメントは、同様の範囲で存在することができる。ソフトセグメントの重量割合およびハードセグメントの重量割合は、DSCまたはNMRから得たデータに基づいて計算することができる。そのような方法および計算は、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Colin L.P.Shan,Lonnie Hazlitt,et al.の名で2006年3月15日出願され、Dow Global Technologies Incに譲渡された、「エチレン/α-オレフィンブロックインターコポリマー」と題された米国特許第7,608,668号に開示されている。具体的には、ハードセグメントおよびソフトセグメントの重量割合およびコモノマー含有量は、米国特許第7,608,668号の第57欄~第63欄に記載のように決定することができる。
【0050】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、線状の様式で、好ましくは結合(または共有結合している)2つ以上の化学的に別個の領域またはセグメント(「ブロック」と称される)を含むポリマー、すなわち、吊り下げ式またはグラフト式ではなく、重合エチレン性官能基に関して末端同士で結合されている、化学的に異なる単位を含むポリマーである。一実施形態では、ブロックは、組み込まれたコモノマーの量もしくはタイプ、密度、結晶化の量、そのような組成のポリマーに寄与する結晶子サイズ、タクティシティーのタイプもしくは程度(イソタクチックまたはシンジオタクチック)、レジオ規則性もしくはレジオ不規則性、分岐の量(長鎖分岐または超分岐を含む)、均質性、または任意の他の化学的もしくは物理的特性において異なる。連続的なモノマー添加、流動触媒、またはアニオン重合技法によって生成されたインターポリマーを含む従来技術のブロックインターポリマーと比較して、本エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、一実施形態では、それらの調製に使用される複数の触媒と組み合わせたシャトリング剤(複数可)の効果による、ポリマー多分散性(PDIまたはMw/MnまたはMWD)、多分散ブロック長分布の両方の独特な分布、および/または多分散ブロック数分布を特徴とする。
【0051】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、連続プロセスで生成され、1.7~3.5、または1.8~3、または1.8~2.5、または1.8~2.2の多分散指数(Mw/Mn)を持つ。バッチまたはセミバッチプロセスで生成されると、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、1.0~3.5、または1.3~3、または1.4~2.5、または1.4~2のMw/Mnを持つ。
【0052】
加えて、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、ポアソン分布ではなくSchultz-Flory分布に適合するPDI(またはMw/Mn)を持つ。本エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、多分散ブロック分布、ならびにブロックサイズの多分散分布の両方を有する。これにより、改善され際立った物理的特性を有するポリマー製品の形成をもたらす。多分散ブロック分布の理論的な利点は、以前にモデル化され、Potemkin,Physical Review E(1998)57(6),pp.6902-6912,and Dobrynin,J.Chem.Phvs.(1997)107(21),pp 9234-9238で考察されている。
【0053】
一実施形態では、本エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、最も確実性の高いブロック長の分布を持つ。
【0054】
さらなる実施形態では、本開示のエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー、特に連続溶液重合反応器で作製されたものは、最も確実性の高いブロック長の分布を持つ。本開示の一実施形態では、エチレンマルチブロックインターポリマーは、以下を有すると定義される:
【0055】
(A)約1.7~約3.5のMw/Mn、摂氏温度での少なくとも1つの融点Tm、およびグラム/立方センチメートルでの密度d、Tmおよびdの数値は以下の関係に相当する:
Tm>-2002.9+4538.5(d)-2422.2(d)、ならびに/または
【0056】
(B)約1.7~約3.5のMw/Mn、最高DSCピークと最高結晶化分析分別(「CRYSTAF」)ピークとの間の温度差として定義される摂氏温度でのJ/gでの融解熱ΔHおよびデルタ量ΔTを特徴とし、ΔTおよびΔHの数値が、次の関係を有する:
ΔT>-0.1299(ΔH)+62.81(ΔHはゼロ超~最大130J/g)
ΔT≧48℃(ΔHはH130J/g超)。
CRYSTAFピークが、累積ポリマーのうちの少なくとも5パーセントを使用して決定され、ポリマーのうちの5パーセント未満が識別可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は30℃である;ならびに/または
【0057】
(C)エチレン/α-オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムで測定した300パーセントひずみおよび1サイクルでのパーセントでの弾性回復Re、グラム/立方センチメートルでの密度dを有し、エチレン/α-オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含まないとき、Reおよびdの数値が次の関係を満たす;
Re>1481-1629(d)、ならびに/または
【0058】
(D)TREFを使用して画分すると、40℃~130℃で溶出する分子量分率を有し、この分率は、同じ温度の間で溶出する相当するランダムエチレンインターポリマー分率のものよりも少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含有量を有し、当該相当するランダムエチレンインターポリマーが、同じコモノマー(複数可)を有し、エチレン/α-オレフィンインターポリマーのものの10%以内のメルトインデックス、密度、およびモルコモノマー含有量(全ポリマーに基づく)を有することを特徴とし、ならびに/または
【0059】
(E)25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)、および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を有し、G’(25℃)対G’(100℃)の比が、約1:1~約9:1の範囲である。
【0060】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーはまた、以下を有し得る:
【0061】
(F)TREFを使用して画分すると40℃~130℃で溶出する分子分率であって、分率が、少なくとも0.5および最大約1のブロックインデックス、および約1.3超の分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とし、ならびに/または
【0062】
(G)ゼロ超および最大約1.0の平均ブロックインデックス、および約1.3超の分子量分布Mw/Mn。
【0063】
本エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの調製に使用するのに好適なモノマーには、エチレン、およびエチレン以外の1つ以上の付加重合性モノマーが含まれる。好適なコモノマーの例には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセンなどの3~30、または3~20、または4~8個の炭素原子の直鎖または分岐α-オレフィン;シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、および2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどの3~30、または3~20個の炭素原子のシクロオレフィン;ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、および5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエンなどのジ-およびポリオレフィン;ならびに3-フェニルプロペン、4-フェニルプロペン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、および3,3,3-トリフルオロ-1-プロペンが含まれる。
【0064】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、スチレンがない(すなわち、スチレンを含まない)。
【0065】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,858,706号に記載のものなど鎖シャトリングプロセスを介して生成することができる。具体的には、好適な鎖シャトリング剤および関連情報については、第16欄第39行~第19欄第44行に列挙されている。好適な触媒については、第19欄第45行~第46欄第19行に、好適な共触媒については、第46欄第20行~第51欄第28行に記載されている。プロセスについては文書全体で、具体的には第51欄欄第29行~第54欄第56行に記載されている。プロセスについてはまた、例えば次の米国特許第7,608,668号、同第7,893,166号、および同第7,947,793号にも記載されている。
【0066】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、ハードセグメントとソフトセグメントとを有し、スチレンを含まず、(i)エチレンと、(ii)C-Cα-オレフィンコモノマーと(任意選択的に添加剤)のみからなり、以下を有するものとして定義される:
【0067】
1.7~3.5のMw/Mn、摂氏温度での少なくとも1つの融点Tm、およびグラム/立方センチメートルでの密度d、Tmおよびdの数値は以下の関係に相当する:
Tm<-2002.9+4538.5(d)-2422.2(d)
式中、dが、0.86g/cc、または0.87g/cc、または0.88g/cc~0.89g/ccであり、
Tmが、80℃、もしくは85℃、もしくは90℃~95、もしくは99℃、もしくは100℃、または105℃~110℃、もしくは115℃、もしくは120℃、もしくは125℃である。
【0068】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、60重量%超のエチレンを有するエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(エチレンおよびオクテンコモノマーのみからなる)であり、以下の特性(i)~(ix)のうちの1つ、いくつか、任意の組み合わせ、またはすべてを有する:
(i)115℃、もしくは118℃~120℃、123℃、もしくは125℃の融解温度(Tm)、ならびに/または
(ii)0.860g/cc、もしくは0.865g/cc、もしくは0.870g/cc、もしくは0.875g/cc~0.877g/cc、0.880g/cc、もしくは0.885g/cc、もしくは0.890g/ccの密度、ならびに/または
(iii)65重量%~91重量%のソフトセグメントおよび9重量%~35重量%のハードセグメント、ならびに/または
(iv)ソフトセグメント中16.4mol%、もしくは17.0mol%、もしくは17.5mol%~18.0mol%、もしくは18.6mol%のオクテン、ならびに/または
(v)ハードセグメント中0~5mol%、もしくは0.7mol%~0.8mol%、もしくは0.9mol%、もしくは1.0mol%のオクテン、ならびに/または
(vi)0.5g/10分、もしくは1g/10分、もしくは2g/10分、もしくは5g/10分、もしくは7g/10分~10g/10分、もしくは15g/10分のメルトインデックス(MI)、ならびに/または
(vii)50、もしくは55、もしくは60、もしくは65、もしくは70~75、もしくは80、もしくは83、もしくは85のショアA硬度、ならびに/または
(viii)ASTM D1708に従って測定される21℃で300%分の変形速度で、64%、もしくは70%~75%、もしくは80%、もしくは85%、もしくは86%の弾性回復(Re)、ならびに/または
(ix)ブロックの多分散分布およびブロックサイズの多分散分布。
【0069】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーである。
【0070】
本エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、本明細書に開示の2つ以上の実施形態を含み得る。
【0071】
一実施形態では、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、商標INFUSE(商標)で販売されており、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan,USA)から入手可能である。さらなる実施形態では、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、INFUSE(商標)9507である。
【0072】
一実施形態では、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、INFUSE(商標)9530である。
B.スキン層
【0073】
本多層フィルムは、コア層(A)と接触する第1のスキン層を含む。スキン層は、エチレン系ポリマーで構成されている。エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーまたはエチレン/α-オレフィンコポリマーであり得る。好適なα-オレフィンの非限定的な例には、C-C20α-オレフィン、またはC-C20α-オレフィン、またはC-C10α-オレフィン、またはC-C10α-オレフィン、またはC-Cα-オレフィンが含まれる。代表的なα-オレフィンには、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンが含まれる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、その中に重合された芳香族コモノマーを含有しない。
【0074】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、線状ポリエチレンである。線状ポリエチレンの非限定的な例には、LLDPE、ULDPE、VLDPE m-LLDPE、実質的に線状、または線状のプラストマー/エラストマー、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0075】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、LLDPEであり、LLDPEの重量に基づいて、50重量%超のエチレンに由来する単位、または51重量%、もしくは55重量%、もしくは60重量%~70重量%、もしくは80重量%、もしくは90重量%、もしくは95重量%、もしくは99重量%のエチレンに由来する単位を含有する線状ポリエチレンである。LLDPEは、補足する量のα-オレフィンコモノマーに由来する単位、またはエチレン系ポリマーの重量に基づいて、50重量%未満、49重量%、もしくは45重量%、もしくは40重量%~30重量%、もしくは20重量%、もしくは10重量%、もしくは5重量%、もしくは1重量%のα-オレフィンコモノマーに由来する単位を含有する。
【0076】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、LLDPEであり、エチレン/C-Cα-オレフィンコポリマーであり、LLDPEは、次の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する:
(a)0.910g/cc、もしくは0.915g/cc、もしくは0.920g/cc~0.925g/cc、もしくは0.930g/cc、もしくは0.935g/ccの密度、ならびに/または
(b)0.5g/10分、もしくは3g/10分、もしくは5g/10分、もしくは7g/10分~10g/10分、もしくは13g/10分、もしくは15g/10分のメルトインデックスからのメルトインデックス、ならびに/または
(c)90℃、もしくは100℃、もしくは110℃~120℃、もしくは130℃、もしくは135℃の融解温度(Tm)。
【0077】
一実施形態では、LLDPEは、Dow Chemical Companyから入手可能なDOWLEX D2606Gである。
3.多層フィルム構造
【0078】
第1のスキン層は、コア層に接触している。多層フィルムは、1つ以上の介在層(すなわち、内層)を含んでもよい。各内層は、コア層と第1のスキン層との間に位置し得る。各内層は、多層フィルムに存在する他の内層と同じでも異なっていてもよい。
【0079】
一実施形態では、第1のスキン層(B)は、コア層(A)に直接接触している。本明細書で使用される「直接接触する」という用語は、第1の層が、第2の層のすぐ隣に位置し、第1の層と第2の層との間に介在層または介在構造が存在しない層構成を指す。言い換えれば、スキン層は、コア層と第1のスキン層との間に介在層が存在しないように、コア層と直接接触している。
【0080】
一実施形態では、第1のスキン層(B)は、コア層(A)と直接接触し、多層フィルムは、4:1~8:1のコア対スキン層体積比を有する。さらなる実施形態では、多層フィルムは、4:1、または5:1、または6:1~7:1、または8:1のコア対スキン層体積比を有し、コア層(A)は、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(および任意選択的に添加剤)からなり、第1のスキン層(B)は、LLDPE(および任意選択的に添加剤)からなる。
【0081】
一実施形態では、多層フィルムは、第1のスキン層(B)と第2のスキン層(C)との間に配置されているコア層(A)を含み、第2のスキン層はエチレン系ポリマーからなる。言い換えれば、コア層は、対向するスキン層の間に挟まれている。スキン層の組成は同じであってもよいか、あるいはスキン層の組成は異なっていてもよい。第1のスキン層(A)および第2のスキン層(B)の厚さは同じでも異なっていてもよい。一実施形態では、第1のスキン層および第2のスキン層の組成は同じである。さらなる実施形態では、第1のスキン層(A)の組成および厚さは、第2のスキン層(C)の組成および厚さと同じである。
【0082】
1つ以上の介在する(すなわち、内層)は、コア層(A)および第1のスキン層(B)の第1の表面に位置し得る。同様に、1つ以上の内層は、コア層(A)の第2の表面と第2のスキン層(C)との間に位置し得る。
【0083】
一実施形態では、多層フィルムは、各スキン層がコア層と直接接触している第1のスキン/コア/第2スキン(B/A/C)構成の3層からなる。第1のスキン層とコア層との間に介在層は存在しない。第2のスキン層とコア層との間に介在層は存在しない。言い換えれば、コア層の第1の表面は、第1のスキン層と直接接触している。コア層の第2の(対向する)表面は、第2のスキン層と直接接触している。コア層は、0.860g/cc~0.887g/ccの密度を有するエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーからなる。第1のスキン層および第2のスキン層は、同じ構造および組成を有し、各スキン層は、0.910g/cc~0.930g/ccの密度を有するLLDPEからなる。3層フィルムは、1:4~8:1のスキン対コア対スキン層体積比を有する。言い換えれば、3層多層フィルムは、1:4:1、または1:5:1、または1:6:1~1:7:1、または1:8:1のスキン対コア対スキン層の比を有する。
【0084】
一実施形態では、多層フィルムは、プロピレン系ポリマーを含まないか、あるいはプロピレン系ポリマーがない。
【0085】
一実施形態では、多層フィルムは、スチレンを含まないか、あるいはスチレンがない。さらなる実施形態では、多層フィルムは、両方のプロピレン系ポリマーを含まず、スチレンを含まない。
4.任意選択な添加剤(複数可)
【0086】
コア層(A)、第1のスキン層(B)、および/または第2のスキン層(C)は、1つ以上の任意選択的な添加剤を含んでもよい。好適な添加剤の非限定的な例には、スリップ剤、粘着防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、安定剤、核剤、着色剤、顔料、紫外線(UV)吸収剤または安定剤、難燃剤、相溶化剤、可塑剤、充填剤、加工助剤、防曇添加剤、架橋剤(例えば、過酸化物)、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0087】
5.伸張
本プロセスは、多層フィルムを(機械方向または横断方向のいずれかに)伸張して、多層フィルムに30%超のヘイズ値を付与することを含む。元の(伸張前の)多層フィルムは、最初の長さおよび最初の透明性(10%未満のヘイズ)を有する。元の多層フィルムでは、スキン層(複数可)中のエチレン系ポリマーは球晶を有し、その球晶内に結晶ラメラがぎっしり充填されている。元の多層フィルムでは、(コア層の)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの分子鎖は、キャストフィルムプロセスにより機械方向に整列している。
【0088】
伸張ステップは、多層フィルムの降伏強さを超える伸張力で多層フィルムを伸張することを伴う。
【0089】
伸張ステップは、多層フィルムを少なくとも150%~300%の量で伸張することを伴う。一実施形態では、プロセスは、150%、または175%、または200%、または225%~250%、または275%、または280%、または295%、または300%未満の量で多層フィルムを伸張することを含む。
【0090】
出願人は、コア層(1)が、0.860g/cc~0.887g/ccの密度を有するエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されており、(2)スキン層がエチレン系ポリマーであり、(3)多層フィルムが、4:1~8:1のコア:スキン層の比を有すると、150%~300%の伸張が、多層フィルムのヘイズを活性化するのに十分であることを発見した。
【0091】
スキン層(複数可)では、伸張により印加されるひずみにより、球晶が崩れる。伸張により、スキン層(複数可)中の結晶ラメラの伸張力の方向への整列が生じる。伸張力を除去すると、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーコア層によって発揮される収縮力により、結晶ラメラが再整列する。ラメラ間の距離の低減により、光が反射され、ヘイズが生じる。コア層では、伸張力により印加されるひずみにより、ハードブロック間の距離が増加し、ハードブロックが伸張力の方向に整列する。伸張力は、多層フィルムのヘイズを活性化する。「ヘイズを活性化する」という用語は、キャスト押出プロセスからの透明なフィルムを、ヘイズフィルムに変えるための伸張の初期ステップであり、ヘイズフィルムは伸張力の解放時に形成される。多層フィルムを活性化すると、多層フィルムは、その後の延伸により高い明瞭性(50%超の明瞭性)を呈し、延伸力の除去後、多層は高いヘイズ(30%超のヘイズ)を呈する。
【0092】
伸張ステップ(または多層フィルムの伸張)は、リングローリング、テンターフレーミング、漸増的延伸、または他の好適な方法などの非限定的な手順によって達成することができる。
【0093】
プロセスは、伸張多層フィルムから伸張力を解放して、ヘイズ多層フィルムを形成することを含む。本明細書で使用される「ヘイズ多層フィルム」は、機械方向に単軸配向された上述の組成を有するコア/スキン(またはスキン/コア/スキン)多層フィルムであり、ヘイズ多層フィルムは、元の多層フィルムの長さの1.5倍~4.0倍の長さを有し、ヘイズ多層フィルムは、30%超のヘイズ値、または30%超、もしくは40%、もしくは50%、もしくは60%、もしくは70%~80%、もしくは90%、もしくは95%のヘイズを有する。ヘイズ多層フィルムのコア層では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの弾性が、ブロックポリマー鎖が元の形態、すなわち、伸張ステップ前のマルチブロックポリマー鎖の形態に戻ることを可能にする。言い換えれば、ヘイズ多層フィルムでは、伸張力の除去により、ハードブロック間の距離が低減され、マルチブロックポリマー鎖が元の形態に戻る。
【0094】
プロセスは、ヘイズ多層フィルムを延伸して、80%超、または85%、90%、または92%、または94%~95%、または97%、または99%、または100%の明瞭値を有する延伸多層フィルムを形成することを含む。一実施形態では、延伸多層フィルムは、この段落で前述のような明瞭値を有し、また0%、または0%超、または1%、または2%、または3%、または4%、または5%~6%、7%、または8%、または9%、または10%未満のヘイズ値を有する。
【0095】
ヘイズ多層フィルムに延伸力を印加すると、コア層中のエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーのブロックポリマー鎖が延伸力の方向に整列する。延伸力により、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーのハードブロック間の距離が増加する。スキン層(複数可)では、エチレン系ポリマーの結晶ラメラが、延伸力の方向に再配向する。延伸力が印加されている間、スキン層(複数可)中のエチレン系ポリマーの結晶ラメラのラメラ間の距離は、通過する光を干渉するほど近くない。その結果、ヘイズが低減され、延伸多層フィルムに透明性がもたらされる。延伸多層フィルムは、直前の段落で述べられた範囲で80%超の明瞭性および10%未満のヘイズを有する。
【0096】
プロセスは、延伸多層フィルムを弛緩して、30%超、または50%超のヘイズ値を有する弛緩多層フィルムを形成することを含む。本明細書で使用される「弛緩」という用語(および同様の用語)は、延伸多層フィルムに付与された延伸力の除去を指す。延伸多層フィルムを弛緩することにより、ヘイズの再発が生じる。一実施形態では、弛緩多層フィルムは、30%超、または40%、または50%、または60%、または70%、または80%~90%、または95%、または99%のヘイズ値を有する。
【0097】
一実施形態では、弛緩多層フィルムは、ヘイズ多層フィルムの状況または状態に戻る。言い換えれば、弛緩多層フィルムは、ヘイズ多層フィルムと同じ構造、組成、および特性を有する。
【0098】
延伸ステップおよび弛緩ステップを繰り返して、先に開示のそれぞれの延伸多層フィルムおよび弛緩多層フィルムに同じヘイズ/明瞭値を提供することができる。
【0099】
出願人は、(1)150%~300%の伸張を伴う伸張手順、併せて(2)4:1~8:1のコア:スキンの多層フィルム構造、と共に(3)0.860g/cc~0.887g/ccの密度を有するマルチブロックエチレン/αオレフィンコポリマー、および(4)エチレン系ポリマースキン層が、ヘイズ多層フィルムが呈する可逆的なヘイズ現象を思いがけず促進することを発見した。
【0100】
特定の理論に束縛されるものではないが、スキン層を伸張し、その後伸張力を解放すると、4:1~8:1のコア対スキン体積比でエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーコア層(INFUSE(商標))とLLDPEスキン層とを有する多層フィルムの共押出は、LLDPE結晶ラメラの配列に影響を及ぼす顕著なひずみ比率を誘発すると考えられる。活性化中の初期伸張により、LLDPE中の球晶の崩れが生じるであろう。LLDPEスキン層に印加されるこの初期伸張力またはひずみは、伸張力の除去後のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(INFUSE(商標))コアからの収縮力により、球晶および結晶ラメラの配向が崩れて光を反射する。伸張力を除去すると、ラメラ間の空間の狭まりが生じ、光を反射する。しかしながら、出願人は、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(INFUSE(商標))の弾性により、結晶ラメラがその後の機械的延伸を受けると再配向することができ、延伸すると可視光線を通過させることを発見した。その後の延伸により、結晶ラメラは、延伸力の方向に再配向し、ラメラ間の空間は、光が通過するのに十分な広さになる。延伸力の除去により、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(INFUSE(商標))コア層は、再び収縮力を発揮して、結晶ラメラが再配列し、光の反射を生じる。共押出構造のスキン層中の結晶ラメラの配向におけるそのような変化は、可逆的なヘイズの思いがけない光学現象を生じる。
【0101】
可逆的なヘイズを有する本多層フィルムの用途の非限定的な例には、以下のような可視光制御用途が含まれる:
・グリーンハウスフィルム用途(UV添加剤をスキン層に添加してもよく、本多層フィルムをエレクトロクロミックの窓の代わりとして使用することができる)、
・包帯、おむつ、ファスナー、食品包装など、垂直ひずみが印加されると、ヘイズフィルムから透明なフィルムに移行することにより、危機的なひずみを示すフィルム、
・改ざん防止シール-封止する前に物品上に置かれる透明な延伸フィルム、改ざんされていないと延伸フィルムは透明であり、シールの破壊(改ざん)により延伸フィルムが弛緩し、弛緩したフィルムは曇る。
【0102】
限定ではなく例として、本開示のいくつかの実施形態を、次の実施例で詳述する。
実施例
1.材料
【0103】
多層フィルムの製造に使用される材料を、以下の表1に提供する。
【表2】
【0104】
2.多層フィルムの作製
単層フィルム、およびスキン/コア/スキン構成を有する3層多層フィルムは、以下の表2に提供されるキャスト押出パラメーターの下、表1の材料を使用して作製する。押出機BおよびCにより、コア層を形成する。押出機AおよびDにより、スキン層を形成する。
【表3】
【0105】
表2のキャスト押出条件下で製造された多層フィルムおよび3層多層フィルムの構造および特性を、以下の表3に示す。
【表4】
【0106】
表3のフィルムを、長さ10cm、幅40mm、厚さ50μmの寸法を有する試料ストリップに調製する。Zwick Model Z10引張試験機を使用して、各試料を500mm/分で20%の伸張~300%の伸張に延伸して、各試料の初期ヘイズの活性化ポイントを評価する。活性化後、試料を弛緩する。弛緩後、試料を金属フレーム上で150%に延伸し、ヘイズを評価する。試料の特性を、以下の表4に示す。
【表5】
表4の伸張前の各フィルムの寸法は、10cm×幅40mm×厚さ50μmである。
【0107】
表4からの多層フィルム1A、1B、および1Dのヘイズ開始点(活性化ステップ)を表にする。本発明1Aは、150%の伸張で曇り始めるが、一方本発明1Bは、300%の伸張で曇り始めたことが観察される。試料1Dは、300%超の伸張で曇り始める。出願人は、(1)層比を1:4:1~1:8:1に制御すること、および(2)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(INFUSE(商標)材料)の密度を0.860g/cc~0.887g/ccに制御すること、によって、ヘイズの活性化を150%の伸張に低減することが可能であることを発見した。
【0108】
実施例2
ヘイズ多層フィルム本発明1Aの可逆的ヘイズ現象は、延伸/弛緩を繰り返すシナリオ下で評価する。表4からのヘイズ多層フィルム本発明1Aは、150%の伸張での延伸および弛緩を周期的に行われる。ヘイズおよび明瞭性を各段階で測定し、以下の表5に示す。
【表6】
【0109】
実施例3
表3からの多層フィルム本発明1A(伸張前)を、いくつかの異なる活性化シナリオ下で評価してヘイズ特性を評価する。
【0110】
試料1Aに、(その後のフィルム弛緩で)ヘイズを活性化するための3つの伸張条件を施して、ヘイズ多層フィルムを形成する。フィルムのインラインキャスティング中の連続延伸に、機械方向配向(MDO)機を利用する。
【0111】
伸張条件1-周囲温度での150%の伸張、伸張条件2-周囲温度での250%の伸張、および伸張条件3-周囲温度での250%の伸張、その後70℃でアニーリングステップ。結果を、以下の表6、7、および8にそれぞれ以下に提供する。
【表7】
【表8】
【表9】
【0112】
150%で活性化を行うことができるが、出願人は、250%の延伸を伴う条件2が、可逆的なヘイズを有する多層フィルムの連続的な工業生産に適していることを発見した。
【0113】
本出願は例えば以下の発明も提供する。
[1] 多層フィルムを伸張して、前記多層フィルムに30%超のヘイズ値を付与することであって、前記多層フィルムが、少なくとも2つの層、(A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されているコア層と、(B)前記コア層と接触している第1のスキン層と、を有し、前記スキン層が、エチレン-系ポリマーで構成されている、ヘイズ値を付与することと、
前記伸張多層フィルムから前記伸張力を解放して、30%超のヘイズ値を有するヘイズ多層フィルムを形成することであって、前記ヘイズが、ASTM D1003に従って測定される、ヘイズ多層フィルムを形成することと、
前記ヘイズ多層フィルムを延伸して、80%超の明瞭値を有する延伸多層フィルムを形成することであって、前記明瞭度が、ASTM D1746-15に従って測定される、延伸多層フィルムを形成することと、
前記延伸多層フィルムから前記延伸力を弛緩して、30%超のヘイズ値を有する弛緩多層フィルムを形成することと、を含み、
前記伸張、前記解放、前記延伸、および前記弛緩のひずみ-応力挙動が、ASTM D5459に従って、25℃、500mm/分で測定される、プロセス。
[2] 4:1~8:1のコア層(A)対スキン層(B)の層体積比を有する多層フィルムを提供することを含む、[1]に記載のプロセス。
[3] 前記伸張ステップが、前記多層フィルムを少なくとも150%の伸張~300%未満の伸張まで伸張することを含む、[1]または[2]のいずれかに記載のプロセス。
[4] 前記伸張ステップが、前記ヘイズ多層フィルムに30%超のヘイズ値を付与する、[1]~[3]のいずれかに記載のプロセス。
[5] 前記伸張ステップが、前記多層フィルムのヘイズを活性化する、[1]~[4]のいずれかに記載のプロセス。
[6] (A)0.860g/cc~0.890g/ccの密度を有するエチレン/C -C α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されている前記コア層と、(B)0.910g/cc~0.935g/ccの密度を有する線状低密度ポリエチレンを含む前記第1のスキン層と、を有する多層フィルムを提供することを含み、前記密度が、ASTM
D792に従って測定される、[1]~[5]のいずれかに記載のプロセス。
[7] (A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されている前記コア層と、(B)前記コア層の第1の表面と直接接触している前記第1のスキン層と、(C)前記コア層の第2の表面と直接接触している第2のスキン層と、を有する多層フィルムを提供することを含み、前記スキン第2の層が、エチレン系ポリマーで構成されている、[1]に記載のプロセス。
[8] 多層フィルムであって、
(A)エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成されているコア層と、
(B)前記コア層と接触している第1のスキン層と、を含み、
前記多層フィルムが、単軸配向ヘイズ多層フィルムであり、30%超のヘイズ値を有し、
前記ヘイズ多層フィルムが、少なくとも150%の伸張~300%未満の伸張までの延伸力を受けると、80%超の明瞭値を呈し、前記ヘイズ多層フィルムが、前記延伸力を除去すると、30%超のヘイズ値をさらに呈し、
前記ヘイズが、ASTM D1003に従って測定され、前記明瞭度が、ASTM D1746-15に従って測定される、多層フィルム。
[9] 前記ヘイズ多層フィルムが、前記延伸力を除去すると、弛緩多層フィルムになる、[8]に記載の多層フィルム。
[10] 前記第1のスキン層が、前記コア層に直接接触している、[8]または[9]のいずれかに記載の多層フィルム。
[11] 前記ヘイズ多層フィルムが、4:1~8:1のコア層(A)対スキン層(B)の層体積比を有する、[8]~[10]のいずれかに記載の多層フィルム。
[12] 第2のスキン層(C)を含み、前記第1の層(B)が、前記コア層(A)の第1の表面と直接接触し、前記第2のスキン層(C)が、前記コア層(A)の第2の表面と直接接触し、前記第2のスキン層が、エチレン系ポリマーで構成されている、[8]に記載の多層フィルム。
[13] 前記スキン(B)-コア(A)-スキン層(C)の体積比が1:4:1~1:8:1である、[12]に記載の多層フィルム。

本開示は本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されないが、次の特許請求の範囲内に入る実施形態の一部および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むそれらの実施形態の修正形態を含むことが特に意図される。