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特許7062108噴射ノズルおよびこれを含む金属粉末製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】噴射ノズルおよびこれを含む金属粉末製造装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/08 20060101AFI20220422BHJP
   B05B 1/06 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
B22F9/08 A
B05B1/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021024005
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2021130872
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0021220
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(73)【特許権者】
【識別番号】514100360
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ インダストリアル テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF INDUSTRIAL TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】89, Yangdaegiro-gil, Ipjang-myeon,Seobuk-gu, Cheonan-si Chungcheongnam-do 331-822,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,チュンニョン ポール
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ウォン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ヨン ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ス ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,フィ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,ド フン
(72)【発明者】
【氏名】チャ,ウン ジ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,グ ウォン
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104107919(CN,A)
【文献】特開昭48-020751(JP,A)
【文献】特開2017-145442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F9/02,9/08
B05B1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末化された溶融金属の液滴を冷却するチャンバーの内部に固定手段によって固定されて冷却水を噴射する噴射ノズルであって、
前記固定手段に連結されるベース部、前記チャンバーの内部に向かって第1方向に突出する先端部、および前記ベース部および前記先端部の内部を貫通して形成され、前記冷却水が前記第1方向に流れる中空の流路を含む噴射ノズルホルダーと;
前記先端部に結合される締結部、および前記先端部から前記冷却水の供給を受けて前記チャンバーの内部に噴射するノズル孔付き噴射部を含む噴射ノズルチップと;を含み、
前記噴射ノズルチップは前記第1方向よりも下方を向く第2方向に前記冷却水を噴射し、
前記噴射ノズルチップは、前記ノズル孔から噴射される冷却水流が広がる角度である噴射カバレージ角を、一定の範囲内に誘導するガイド部材を含み、
前記ガイド部材は、前記ノズル孔の両側から噴射方向に突出してスリットを形成する形状である、噴射ノズル。
【請求項2】
前記流路は、
前記ベース部から前記第1方向に向かって形成され、
前記先端部から前記第1方向よりも下方の方向に向かって形成される、請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項3】
前記噴射ノズルチップは、前記噴射ノズルホルダーの先端部にて回転して噴射方向が調節できる、請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項4】
前記噴射ノズルホルダーの長さが前記チャンバーの内径の0.1倍~0.7倍である、請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項5】
前記噴射ノズルチップの噴射方向と前記第1方向との差が35~50°の範囲である、請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項6】
前記流路の直径が前記ノズル孔の直径の10倍~50倍である、請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項7】
前記固定手段の中心軸と噴射方向とがなす角のうちの小さい角である垂直方向噴射角;および
前記噴射方向を前記中心軸に沿った方向から観察するとき、前記噴射方向が前記中心軸方向から外れた角度である円周方向噴射角;にについて制御するための、
垂直方向噴射角制御器および円周方向噴射角制御器を含む、請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項8】
前記垂直方向噴射角が10~70°である、請求項に記載の噴射ノズル。
【請求項9】
前記円周方向噴射角が0~90°である、請求項に記載の噴射ノズル。
【請求項10】
前記冷却水は、前記ベース部から前記第1方向に流動して前記先端部に流れ、前記先端部から第2方向に形成された前記噴射ノズルチップを介して前記ノズル孔から前記チャンバーの内部に噴射される、請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項11】
溶融金属を粉末化した後、冷却する金属粉末製造装置であって、
溶融金属が内部で冷却されるチャンバーと;
前記チャンバーの内部に溶融金属を供給する溶融金属供給部と;
前記溶融金属供給部から噴射される溶融金属液に流体を噴射して分裂させるアトマイザーと;
前記チャンバーの内部にて固定手段によって固定されて冷却水を噴射する噴射ノズルと;を含み、
前記噴射ノズルは、請求項1~10のいずれか一項の噴射ノズルである、金属粉末製造装置。
【請求項12】
前記冷却水の噴射圧力が30~500barである、請求項11に記載の金属粉末製造装置。
【請求項13】
前記冷却水の流量が20~200L/minである、請求項11に記載の金属粉末製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、金属粉末を製造するための装置にて、金属粉末を冷却するために冷却水を噴射する噴射ノズル、および金属粉末を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子産業の飛躍的な発展、電子機器の普及拡大および処理速度の向上のための高密度電子回路素子の微小化、高機能化、多様化および精密化を導き出すためには、化学的に安定し、伝導性に優れた微粒金属粉末の製造技術が優先的に確立される必要がある。
【0003】
このような金属粉末製造技術として代表的な方法は、急速凝固法(rapid solidification process)が使用される。すなわち、急速凝固法は、硬質磁性材料や軟質磁性材料、水素貯蔵合金材料、熱電素材などの機能性合金素材だけでなく、アルミニウム系合金や銅系合金、ステンレス鋼などの構造用に使用される様々な機械部品のための球状粉末を製造するための方法である。
【0004】
一般に、急速凝固法には、金属溶湯で金属粉末を製造する際に出湯される金属溶湯に高速で流体または気体を吹き込み、そのせん断力で金属溶湯を微粒化する技術である水噴霧法(water atomization)、ガス噴霧法(gas atomization)、および高速回転するカップまたはディスクの遠心力によって微粒化する遠心噴霧法(centrifugal atomization)が主に使用されている。
【0005】
従来の粉末製造のための冷却システムの場合は、単にガス噴射または遠心噴霧による一次的な冷却作用に止まるので、金属粉末の冷却速度(≦103℃)に限界があって急冷効果が不十分である。これを改善し且つ高い冷却速度を得るために提案された方式であるSWAP(Spinning water atomization process)が、流体による粉末の噴霧と、水による冷却とを同時に実現することができるように開発された。
【0006】
しかし、溶融金属粉末の冷却の際に、粉末の表面に、気化された冷却水が気泡を発生させたり水蒸気層が形成されたりして、一定レベル以上の冷却速度を実現するのに困難を伴うという限界がある。
【0007】
特に、アモルファス金属粉末を製造するためには、従来の金属粉末の製造装置で得ることができる冷却速度よりも高い冷却速度が必須である。
【0008】
アモルファスとは、結晶を成さない、無秩序で不規則な原子配列状態を有する物質の状態を示す用語であって、代表的なアモルファス物質の例として、ガラスがある。アモルファス金属は、結晶の方向性がないため高い強度および優れた延性を有し、自己異方性がなく、電気抵抗が低くなるなどの特性があり、様々な目的で使用できるので、最近、需要が増加している。
【0009】
このようなアモルファス金属粉末の製造には、冷却速度が重要な要因として作用するが、これは、金属溶融液が冷却される速度が十分に高くなければ、溶融金属内で金属原子が冷える際に安定した結晶を形成して、結晶質の金属粉末を形成するためである。
【0010】
SWAPを含む従来の金属粉末製造装置は、溶融金属のアトマイズ化(微粒化)後に、冷却剤を用いた冷却を試みたが、アモルファスの金属粉末を形成するのに冷却速度が低すぎるか、または、冷却速度が十分であってアモルファスの粉末を得ても、粒子サイズが不規則であり、粉末が球状から外れた形状に生産されるなどの問題があった。溶融金属を分裂させて冷却させるのにガスまたは冷却水が多く使用されて高い生産コストがかかるという問題点があり、効率よく、高いアモルファス比率を有する金属粉末を製造する装置に関する研究が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国登録特許第10-1334156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、アトマイズされた溶融金属の液滴を、高い冷却速度で冷却して、アモルファス相の比率が高い金属粉末を製造することができ、様々な冷却条件の下でアモルファス金属粉末を製造するのに適した噴射ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、
粉末化された溶融金属の液滴を冷却するチャンバーの内部に、固定手段によって固定されて、冷却水を噴射する噴射ノズルであって、
前記固定手段に連結されるベース部(根本側の部分)、前記チャンバーの内部に向かって第1方向に突出する先端部、および、前記ベース部および前記先端部の内部を貫通して形成され、前記冷却水が前記第1方向に流れる中空の流路を含む噴射ノズルホルダーと;
前記先端部に結合される締結部、および前記先端部から前記冷却水の供給を受けて前記チャンバーの内部に噴射するノズル孔付きの噴射部を含む噴射ノズルチップと;を含み、
前記噴射ノズルチップは前記第1方向よりも下方を向く第2方向に前記冷却水を噴射する、噴射ノズルを提供する。
【0014】
前記流路は、
前記ベース部から前記第1方向に向かって形成され、
前記先端部から前記第1方向よりも下方の方向に向かって形成されることが好ましい。
【0015】
前記噴射ノズルチップは、前記ノズル孔から噴射される冷却水流が広がって行く角度である噴射カバレージ角を、一定の範囲内に誘導するガイド部材を含むことが好ましい。
【0016】
また、前記噴射ノズルチップは、前記噴射ノズルホルダーの先端部にて回転して噴射方向が調節できる。
【0017】
前記噴射ノズルホルダーの長さは、前記チャンバーの内径の0.1倍~0.7倍であることが好ましい。
【0018】
前記噴射ノズルチップの噴射方向と前記第1方向との差は、35~50°の範囲であることが好ましい。
【0019】
ここで、前記流路の直径は、前記ノズル孔の直径の10倍~50倍であることが好ましい。
【0020】
前記固定手段の中心軸と噴射方向とがなす角のうちの小さい角である垂直方向噴射角、および、前記噴射方向を前記中心軸に沿った方向から観察するときに、前記噴射方向が前記中心軸方向から外れた角度である円周方向噴射角について制御するための、垂直方向噴射角制御器および円周方向噴射角制御器を含むことができる。
【0021】
前記垂直方向噴射角は10~70°であることが好ましい。
【0022】
また、前記円周方向噴射角は0~90°であり、前記噴射カバレージ角は15~150°であることが好ましい。
【0023】
前記ガイド部材は、ノズル孔の両側から噴射方向に突出してスリットを形成する形状または中空筒体の形状であることが好ましい。
【0024】
また、前記スリットの幅、または、スリットを形成する一対の互いに平行な板状のガイド部材の間隔は、前記ノズル孔の直径の3倍~4倍であることが好ましく、前記スリットの幅、または、一対のガイド部材の間隔は、0.3~5.0mmであることが好ましい。なお、ここで、スリットは、両端が開いたものでも、両端が閉じてスロットをなすものでも良く、このスロットは、必ずしも全体にわたって等幅に延びるのでなくてもよく、例えば、長円状または楕円形などでもあっても良い。
【0025】
前記冷却水は、前記ベース部から前記第1方向に流動して前記先端部に流れ、前記先端部から第2方向に形成された前記噴射ノズルチップを介して前記ノズル孔から前記チャンバーの内部に噴射されることが好ましい。
【0026】
本発明の他の態様は、
溶融金属を粉末化した後、冷却する金属粉末製造装置であって、
溶融金属が内部で冷却されるチャンバーと;
前記チャンバーの内部に溶融金属を供給する溶融金属供給部と;
前記溶融金属供給部から噴射される溶融金属液に流体を噴射して分裂させるアトマイザーと;
前記チャンバーの内部で固定手段によって固定されて冷却水を噴射する噴射ノズルと;を含み、
前記噴射ノズルは、
前記固定手段に連結されるベース部、前記チャンバーの内部に向かって第1方向に突出する先端部、および前記ベース部および先端部の内部を貫通する中空の流路を含む噴射ノズルホルダーと;
前記先端部に結合される締結部、および冷却水を前記チャンバーの内部に噴射するノズル孔付き噴射部を含む噴射ノズルチップと;を含み、
前記噴射ノズルホルダーは、前記第1方向に突出して連結され、前記噴射ノズルチップは、噴射方向が前記第1方向よりも下方を向くように備えられる、金属粉末製造装置を提供する。
【0027】
前記噴射ノズルは2~16個の範囲で備えられることが好ましく、前記冷却水の噴射圧力は30~500barであることが好ましい。
【0028】
前記冷却水の流量は20~200L/minであることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様による噴射ノズルは、ガスアトマイザーによって飛散する溶融金属液滴に冷却水を噴射して、飛散する溶融金属液滴の表面に形成される水蒸気層を破壊することができ、粉末がより速い速度で冷却されて高いアモルファス相の比率を有する金属粉末が製造できる。
【0030】
噴射ノズルは、噴射ノズルホルダーがチャンバーの内部を向く第1方向に突出することで、冷却水の噴射位置から見て、溶融金属液滴の衝突地点が近くに形成されるので、冷却水の噴射圧力が効果的に伝達でき、噴射ノズルチップは、第1方向よりも下方を向く方向に噴射方向が形成されて、噴射角度の調節が容易であり、広い噴射角度を形成することが有利である。
【0031】
また、噴射ノズルのノズル孔の両側面に形成されたガイド部材が噴射カバレージ角を所望の範囲に誘導することができるので、冷却水による冷却環境が安定的に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施例による噴射ノズルが結合された状態を概略的に示す正面図および断面図である。
図2】噴射ノズルチップの一例示を示す図である。
図3】実験例1~4における粉末粒度による結晶化エンタルピーの値を示す図である。
図4】実験例1~4で製造された金属粉末をX線回折(XRD)分析装置で分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使用された用語は、特定の実施例を記述するためのものに過ぎず、添付する特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定しようとするものではないのを理解すべきである。本明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は、他の記載がない限りは、技術的に通常の技術を有する者に一般的に理解されるのと同じ意味を持つ。
【0034】
ここで、1)添付図面に示された形状、大きさ、比率、角度、数などは、概略的なものであって、多少変更できる。2)添付図面は、観察者の視線で図示されるため、図面を説明する方向や位置は、観察者の位置に応じて多様に変更できる。3)図面番号が異なっても、同じ部分については同じ図面符号が使用できる。
【0035】
4)「含む(comprise、comprises、comprising)」、「有する」、「からなる」などが使用される場合、「~のみ」が使用されない限り、他の部分が追加できる。5)単数で説明される場合、多数とも解釈できる。6)形状、大きさの比較、位置関係などが「約」、「実質的」などと説明されなくても、通常の誤差範囲が含まれるように解釈される。
【0036】
7)「~後」、「~前」、「続いて」、「後続して」、「この時」などの用語が使用されても、時間的位置を限定する意味では使用されない。8)「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、単に区分の便宜のために、選択的、交換的または反復的に使用され、限定的な意味で解釈されない。
【0037】
9)「~の上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~の隣に」、「~の側面に」、「~の間に」などで2つの部分の位置関係が説明される場合、「すぐ」や「直」が使用されない限り、2つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置することもできる。10)部分が「~または」で電気的に接続される場合、各部分が単独でも、組み合わせでも含まれるように解釈されるが、「~または」、「~のいずれか」で電気的に接続される場合、各部分単独でのみ解釈される。
【0038】
以下、図面に基づいて、本発明の構成要素について詳細に説明する。
【0039】
図1は本発明の一態様による金属粉末製造用噴射ノズルの断面を概略的に示す図である。金属粉末製造用噴射ノズルは、噴射ノズルホルダー32、及び噴射ノズルチップ34を含んでなり、固定手段31によって、金属粉末製造装置のチャンバー10の内壁に備え付けられ得る。
【0040】
固定手段31は、金属粉末を製造する反応器の内部に噴射ノズルを固定する手段であって、噴射ノズルホルダー32が固定手段31に結合でき、大きさや形状が特に限定されないが、中心軸を有する円筒体の形状に構成されることが好ましい。
【0041】
固定手段31は、噴射ノズルをチャンバー10に固定するために設置でき、上部の近くに設置されることが好ましい。
【0042】
溶融金属溶解炉は、チャンバー10の上部に配置でき、溶解炉が固定されて安定的に溶融金属を噴射することができるようにするために、溶融金属溶解炉が、据え付けられるか、或いは結合されて固定される上部板が、チャンバー10の上部と、溶解炉との間にさらに含まれ得る。
【0043】
上部板は、溶解炉を支えることができ、溶解炉が固定されるように外部にねじが結合できる締結孔を含む。上部板は、中央部に同心円状の上部ホールを含んで構成され、溶融金属は、上部ホールを貫通してチャンバー10の内部に噴射できる。上部ホールの内径はチャンバー10の内径よりも小さく形成されるのがよい。
【0044】
固定手段31の形状が例えば円筒形である場合には、円周面に沿って一つ以上の噴射ノズルが設置できる。噴射ノズルは、固定された位置に設置でき、設置された後に位置が移動するか、或いは噴射ノズル同士の間の間隔が変化しうる。
【0045】
固定手段31に結合される噴射ノズルの数および位置を異ならせて設置することができるように、噴射ノズルホルダー32が結合できる結合部の位置が変わり得る。固定手段31が円筒体である場合、内部の円周面に沿って、噴射ノズルホルダー32が結合されうる固定手段の結合部が形成されうるのであり、結合部は、レールまたは溝の形状を含んで構成されうる。
【0046】
噴射ノズルホルダー32は、固定手段31に連結されて噴射ノズルをチャンバー10に固定させ、外部から供給される冷却水を噴射ノズルへと一定に提供する役割を果たす。
【0047】
噴射ノズルホルダー32は、内部に中空を含む中空管体の形状に構成され、内部の中空を流路33にして冷却水を流動させるのであり、固定手段31に固定されるベース部、および噴射ノズルチップ34が結合される先端部を含み、該先端部は、端部に行くほど外径が減少する形状を有することができる。
【0048】
噴射ノズルホルダー32は、100mm~120mm程度の長さを持つように形成され、噴射ノズルホルダー32の長さは、チャンバー10の内径に比べて0.1~0.7倍、好ましくは0.15倍~0.5倍である。
【0049】
噴射ノズルホルダー32が当該範囲よりも短い場合には、冷却水の噴射位置が、溶融金属の液滴の飛散地点より遠くなり、圧力の伝達効率および冷却速度が減少しうるのであり、粒度の大きい粉末の分布が増加しうるのであり、噴射ノズルホルダーが当該範囲よりも長い場合には、噴射ノズルホルダー32同士の間の間隔が狭くなるので、溶融金属液滴のアトマイズの際に、溶融金属液滴が直接ノズルに衝突するおそれがあるため、球状の粉末を製造する上で問題がある。
【0050】
噴射ノズルホルダー32がチャンバー10の内壁から内側へと突出して形成されるので、加圧されて噴射される冷却水は、飛散する溶融金属の液滴と衝突するまでの距離および所要時間が減少する。このとき、溶融金属と冷却水との衝突時に圧力が効率よく伝達されるため、金属液滴の表面に形成される水蒸気層が容易に破壊されて冷却速度が非常に高くなる。
【0051】
噴射ノズルホルダー32のベース部は、固定手段31の結合部に固定されており、中心軸に対して垂直方向である横方向のまわりに回動自在にする回動軸が、固定手段31と噴射ノズルホルダー32との間の結合部により備えられ得る。噴射ノズルホルダー32は、ベース部の回動軸のまわりに回動して、噴射ノズルホルダー32の方向を調節することができる。
【0052】
本発明の他の実施例においては、固定手段31に、突出高さが等しい直線状または螺旋状のレールの形態の結合部が形成されており、噴射ノズルホルダー32は、固定手段31の結合部に備え付けられて、レールに沿って移動可能に結合される。このようにして、ベース部が固定手段31の円筒状の内周面の結合部に沿って移動可能となっており、所望の位置で固定されて駆動できる噴射ノズルホルダー32が使用できる。
【0053】
噴射ノズルホルダー32は、ベース部から第1方向に向かって延びるように備えられる。第1方向は、チャンバー10の内部、好ましくはチャンバー10の中心軸を向く方向であり、噴射ノズルホルダー32の内部に形成された流路33は、ベース部から第1方向に形成される。
【0054】
噴射ノズルホルダー32の先端部から、流路33は、第1方向よりも下方を向いた第2方向に形成されうる。流路33は、噴射ノズルホルダー32の内部にて曲線に曲がった形状または一つ以上の地点で折れ曲がった形状に形成されうる。
【0055】
このように形成されるとき、噴射ノズルホルダー32にて第1方向に形成された流路の長さが、第2方向に形成された流路の長さよりも長いのが良い。
【0056】
図2は噴射ノズルチップ34の構造を概略的に示す図である。噴射ノズルチップ34は、噴射ノズルホルダー32の流路33に供給された冷却水を、金属粉末製造装置の内部に噴射して溶融金属の液滴を冷却する。噴射ノズルチップ34は、内部に中空が形成される中空体の形状であって、流体の噴射方向を基準に吐出口が前方に形成され、流入口が後方に形成される。
【0057】
噴射ノズルチップ34は、噴射ノズルホルダー32に締結され、後方には締結部が形成され、前方には冷却水を噴射する噴射部が形成される。締結部は、噴射ノズルホルダー32の流路に連結されて冷却水が流入する流入口を含み、周面に噴射ノズルホルダー32に締結するための手段を含み、例えば、ねじ山を含むことができる。
【0058】
噴射ノズルチップ34の締結部の外面にねじが締結される場合、噴射ノズルチップ34は、噴射ノズルホルダー32の先端部の流路の内面に形成されたねじ山と締結される。噴射ノズルホルダー32の内部流路は、先端部の末端から曲げられた形状を有するので、噴射方向は、第1方向よりも下方を向いた方向である第2方向を向くように形成できる。
【0059】
噴射ノズルホルダー32と噴射ノズルチップ34との締結部は、次のようでありうる。すなわち、噴射ノズルホルダー32の先端部における第1方向へと向かう流路の先端部にて噴射ノズルチップ34とねじ山によって締結されうるのであり、また、第2方向に形成された流路にて噴射ノズルチップ34と締結されうる。
【0060】
第1方向は、特に限定されないが、チャンバー10の中心軸に垂直な方向またはチャンバー10の内壁に垂直に形成されるのがよく、好ましくは、チャンバー10の中心軸またはチャンバー10の内壁となす角度が80~100°であることが良い。
【0061】
噴射ノズルホルダー32の先端部から流路が向かう第2方向は、ベース部から流路が形成される第1方向とは異なり、第1方向と第2方向との差(角度)は、35~50°、好ましくは35~45°の範囲である。
【0062】
流路が直線的に構成された場合、噴射方向を調節するために噴射ノズルホルダー32が直接回転するようにすることができる。しかし、この場合、噴射ノズルホルダー32の突出構造により回転半径が大きいため、アトマイズされた溶融金属の液滴との衝突を回避しながら噴射方向を変化させるのが難しい。また、噴射方向を調節するために噴射ノズルチップ34の噴射方向を変化させる場合、一般的に、冷却水の噴射は下側の方向へと向かって行われるので、第1方向の噴射方向を下方へと変化させるためには、一方向にのみ大きい角度が変位すべきである。
【0063】
噴射ノズルホルダー32が前述のように第1方向よりも下方を向いた方向に備えられる条件では、噴射角の調整が上下にすべて行われ得るので、小さい角度範囲の変位でも、上部および下部に広い領域の噴射角度を実現することができるため、装備の実現および操作に有利であるという点がある。
【0064】
結合された噴射ノズルチップ34は、噴射角制御器によって噴射方向が調節される。噴射角制御器は、噴射ノズルホルダー32の先端部に結合された噴射ノズルチップ34の噴射方向を、垂直方向および円周方向に制御することができる。
【0065】
噴射ノズルの噴射方向は、垂直方向の噴射角と、円周方向の噴射角とに分けて表現することができ、当該噴射角を図1に示す。垂直方向噴射角αは、固定手段31またはチャンバー10の中心軸に対して噴射方向がなす角度のうちの小さい角度を意味する。垂直方向噴射角は、10~70°、好ましくは30~60°、さらに好ましくは35~45°であることがよい。
【0066】
円周方向噴射角γは、中心軸に沿って噴射方向を観察したとき、噴射方向が中心軸を向く方向から外れた角度を意味し、冷却水の噴射方向を中心軸に垂直な横断面に投影した正射影が、中心軸とノズルの噴射口を通る仮想の平面となす角度として表現できる。円周方向噴射角は、0~90°、好ましくは0~65°、さらに好ましくは15~45°の範囲である。
【0067】
噴射ノズルチップ34には、噴射部と締結部が互いに独立して回転可能な構造のノズルチップが使用できる。噴射ノズルホルダー32の先端部に結合された締結部は、ねじ山によって噴射ノズルホルダー32に固定されており、噴射ノズルチップ34の噴射部は、ユニバーサルジョイント等により締結部に対して垂直方向および円周方向に回転可能であって、噴射角制御器によって所望の噴射方向に調節されることにより冷却水の噴射方向を制御することができる。
【0068】
噴射ノズルチップ34の噴射方向の制御は、噴射ノズルチップ34の噴射方向が中心軸を向くように整列された状態で、中心軸に沿って垂直方向の噴射角が調節された後、横方向に噴射方向を回転させて円周方向噴射角を調節するという方式で行われ得る。
【0069】
噴射ノズルチップ34の吐出口に形成されるノズル孔35は、0.1~5.0mm、好ましくは0.3~3.0mmの直径を有するように形成できる。噴射ノズルチップ34のノズル孔35の直径に応じて噴射断面積が変化するので、噴射される冷却水の流速が変わり得る。
【0070】
当該範囲よりもノズル孔35の直径が小さい場合、流速が増加して溶融金属がさらに分裂されるか或いは球状粉末の形成が難しいおそれがあり、ノズル孔35の直径が大きい場合、流速が減少して冷却効果が低下するため、製造された金属粉末のアモルファス相の比率が低く形成されるという問題がある。
【0071】
噴射ノズルチップ34の中空の直径は、ノズル孔35と同じ直径であり、噴射ノズルホルダー32の流路の直径よりも小さく、噴射ノズルチップ34の中空の直径に対する噴射ノズルホルダー32の流路の直径の比率は10倍~50倍、好ましくは15倍~30倍である。直径の比率が当該範囲から外れる場合には、噴射される冷却水の流速と供給される冷却水の流速との比率が減少するので、冷却水の噴射速度が減少するか、或いは供給される冷却水を高圧で加圧しなければならないという困難があり、直径の差による抵抗が大きくなって非効率的であるという問題がある。
【0072】
噴射カバレージ角βは、噴射方向に対して噴射される冷却水が広がる角度を意味し、これを図1に示した。噴射カバレージ角は、円錐形あるいは扇形をなす噴射状の中心角を意味する。噴射カバレージ角βは、ノズル孔35の直径とスリットの幅などによって調節できる。
【0073】
噴射ノズルチップ34においてスリットを挟むか囲むガイド部材36の突出面(先端面)から内部の吐出口であるノズル孔35までの深さをdとし、スリットまたは長穴などの幅をD2とし、ノズル孔35の直径をD1としたとき、カバレージ角βに対して、次の不等式が成立する。
【0074】
【0075】
噴射カバレージ角βは、15°~150°の範囲に制御されうるが、好ましくは25~90°、さらに好ましくは25°~65°の範囲で形成されうる。
【0076】
噴射ノズルチップ34が位置する噴射部は、噴射ノズルチップ34から噴射される冷却水の流れを一定の角度範囲内に制限して誘導または制御することができるガイド部材36を含む。
【0077】
ガイド部材36は、噴射ノズルチップ34から、円錐(cone)状または扇状に噴射される冷却水の噴射角または噴射カバレージ角について、一定の範囲内に形成されるようにする。
【0078】
本発明の一実施例は、噴射ノズルチップ34の吐出口の両側面に突出してスリット形状を有する構造を含む。噴射ノズルチップ34は、吐出口の両側面に突出したスリットを含むことにより、噴射される冷却水の噴射の形状およびカバレージ角を調節することができる。噴射ノズルチップ34の吐出口から噴射される冷却水は、円形のノズル孔35の中心軸に対して回転対称である円錐状に噴射でき、冷却水の圧力および流速条件によって、噴射される形状の角度、すなわちカバレージ角の大きさが異なるように得られる。
【0079】
噴射カバレージ角の大きさを所望の角度に設定および維持するために、本発明の一実施例に含まれている噴射ノズルチップ34における突出した、スリット形成構造が使用できる。噴射ノズルチップ34のスリット形成構造(一対のガイド部材36)は、ノズル孔35の両側に突出するので、スリットの間隔に応じて広がることで、噴射される冷却水の噴射形状が決められる。
【0080】
ノズル孔35から噴射される冷却水の角度がノズル孔35とスリットの端部との角度よりも小さい場合には、噴射される冷却水は、スリット幅(ガイド部材同士の間隔)の内側に噴射され、ノズル孔35から噴射される冷却水の角度が、ノズル孔35とスリットの端部との角度よりも大きい場合には、噴射される冷却水は、スリットの内側面に衝突し、スリット幅(ガイド部材同士の間隔)によって決められる角度範囲内に噴射されて均一なカバレージ角が得られ得る。
【0081】
また、スリットの存在により、円錐状の噴射形状と、平らな扇形形状の噴射形状に冷却水が噴射されうるため、冷却面積および集中冷却の要求事項に応じて、適正な噴射形状が使用できるといいう利点がある。
【0082】
噴射ノズルチップ34のスリット間隔は、0.3~5.0mmの範囲が使用でき、好ましくは0.8~4.5mmの範囲、さらに好ましくは1~2.5mmであり、ノズル孔35の直径に比べて2倍~6倍、好ましくは3倍~4倍であることがよい。
【0083】
ガイド部材36の形状は、特に限定されず、前述したように、ノズル孔35の両側から突出した、スリットをなす平行板の形状であるか、または、ノズル孔35の周辺部から突出して周囲を取り囲む中空円筒体の形状であり得る。
【0084】
金属粉末製造用噴射ノズルが金属粉末製造装置に使用される場合、ノズルの数および配置は、特に限定されないが、ノズルの数が2~16個の範囲であることがよく、各ノズル間の間隔は10~100mmの範囲であることが好ましい。
【0085】
ノズルの数が1つである場合、冷却水が落下する溶融金属液滴の一面にのみ噴射されるので、全般的な溶融金属液滴を均一に冷却することが難しく、ノズルの数が17個以上である場合、大きい直径を有するチャンバー10が使用されるべきであり、ノズルの数が増加するにつれて上方に跳ねる水を防止するために、噴射されるそれぞれのノズルの噴射角を異ならせる必要があり、噴射される冷却水の流量が増加して生産コストが増加するという問題点がある。
【0086】
ノズル同士の間の間隔が当該範囲から外れる場合には、速い冷却速度で結晶構造を制御しなければならない金属粉末の製造に問題点があり、また、液滴で飛散する際に十分に冷却できないため、内部チャンバー10にぶつかることで、球状粉末ではなく、板状の不健全な粉末の形状が製造できるという問題点がある。
【0087】
金属粉末製造用噴射ノズルが2つ以上備えられる場合、金属粉末製造用噴射ノズルは、中心軸に対して対称の形に配置でき、好ましくは、回転対称の形を持つように正多角形の頂点に対応する位置に、それぞれの噴射ノズルが備えられることが良い。
【0088】
供給される冷却水は、加圧装置によって供給されて噴射ノズルホルダー32の流路に沿って複数の冷却水噴射ノズルから供給され、供給される冷却水の流量は20~200L/minの範囲であり、加圧された冷却水の水圧は30~500barであることが好ましい。
【0089】
本発明の他の実施例は、前述した金属粉末製造用噴射ノズルを含む金属粉末製造装置である。
【0090】
金属粉末製造装置は、金属粉末製造用噴射ノズル、固定手段31が結合されるチャンバー10、チャンバー10の上部から溶融金属を噴射する溶融金属供給部、および溶融金属に流体を噴射して液滴に分裂させるアトマイザー20または流体噴射ノズルを含む。本明細書において、流体噴射ノズルは、アトマイザー20と同じ意味で使用され、前述した噴射ノズルとは区別される概念であって、溶湯流に直接流体を噴射して液滴化する手段であるが、冷却効果が不十分であるため、球状の金属粉末を製造することは難しい。
【0091】
金属粉末製造用噴射ノズルは、前述した特徴を含むノズルが使用でき、噴射ノズルの構成についての説明は、前述した内容と同じなので省略した。
【0092】
チャンバー10は、アトマイズされた溶融金属液滴が冷却される空間を含む筒体であって、その形状は特に限定されないが、円筒形、または直径が変化する筒体であることが好ましい。チャンバー10は、外部と内部を分けて外部の空気がチャンバー10の内部に流入しないように密閉した構造を持ち、内壁には金属粉末製造用噴射ノズルが結合されるための固定手段31が備えられる。
【0093】
チャンバー10は、上部チャンバーと下部チャンバーからなり、上部チャンバーと下部チャンバーとは互いに連結されて使用できる。チャンバー10の下部には、冷却された金属粉末と噴射された冷却水が存在し、金属粉末と冷却水を分離するための分離部が存在することができ、分離された金属粉末は乾燥され、分離された冷却水は処理された後に再び加圧され、金属粉末製造用噴射ノズルを介してチャンバー10の内部に循環して使用できる。
【0094】
チャンバー10は、内径と長さの比率が3~10倍、好ましくは6~7倍であることがよい。
【0095】
当該内径と長さの比率から外れる場合、ノズルから高圧で噴霧される水の流れに沿って発生するチャンバー10内の気流が十分に抜け出さないため、気流が上方に逆流して溶融し、オリフィスを通過して流下した金属液状を冷やすことにより詰まってしまうという問題があり得る。
【0096】
溶融金属供給部は、チャンバーの上部に位置してチャンバー10の内部に溶融金属を注入することができ、外部の空気が内部に流入しないようにチャンバー10の上部に結合できる。
【0097】
溶融金属液は、溶融金属供給部を介して噴射されるか或いは重力によって流下することができる。溶融金属の組成は限定されないが、製造しようとする金属粉末の組成に応じて予め決定されて備えられ、粉末の冷却時にアモルファス相の比率が高く形成されるように組成が調節できる。
【0098】
溶融金属の温度は、特に限定されないが、溶融金属の組成に応じて合金の溶融温度よりも高く形成され、好ましい冷却速度を得て、アモルファス相の比率が高い金属粉末を製造するために調節できる。
【0099】
金属の溶融および加熱は、溶解炉(melting furnace)で行われ、溶解炉の方式は、特に限定されず、反射炉、坩堝炉、溶銑炉または電気炉などが使用できる。
【0100】
アトマイザー20は、溶融金属供給部から噴射されるか或いは流下する溶融金属液の噴射流または溶湯流に流体を噴射して微細な液滴状に分裂させる。噴射される流体は、特に限定されず、液体を噴射する液体アトマイズ方式と、気体を噴射するガスアトマイズ方式が使用でき、これらの中でも、ガスアトマイズ方式を使用することが好ましい。
【0101】
ガスアトマイズの際に使用される気体の種類は特に限定されないが、高温の溶融金属を酸化させるか或いは反応を起こさない気体が使用でき、ヘリウムやネオン、アルゴンなどの不活性ガスまたは窒素などの反応性が低い気体が使用されるのがよい。
【0102】
アトマイザー20は、溶融金属を噴射する溶解炉の下部に位置し、固定手段31の上部板の上部ホールに結合されて、チャンバー10の内部に噴射される溶融金属液を分裂させることができる。
【0103】
アトマイズに使用される流体噴射ノズルは、様々な形状と数のノズルが使用でき、製造しようとする金属粉末の粒径範囲の溶融金属液滴で溶融金属液の噴射流を分裂させることができる形状および数のノズルであれば、いずれのものでも使用可能である。
【0104】
アトマイザー20の流体噴射ノズルの位置および噴射角度は多様に調節できる。流体噴射ノズルの噴射角度によって、下方に噴射される溶融金属液滴の冷却面積が変わり、備えられる位置、高さによって、冷却速度および冷却面積が変わり得る。
【0105】
本発明の他の実施例は、上部板の上部ホールに流体噴射ノズルが結合できる。流体噴射ノズルは、上部ホールに結合され、内部に溶融金属が貫通して噴射できる貫通孔を含み、貫通孔の周辺を取り囲む環状のスリット形状のノズルまたは噴射口を含むことができる。
【0106】
外部から供給される流体は、気体または冷却水であってもよく、流体噴射ノズルの周辺に形成された供給管に充填された後、環状の流体噴射ノズルを介して噴射される。噴射形状は、円錐状(cone)であり、溶解炉から噴射される溶融金属液を直接分裂させると同時に急冷させてアモルファスの金属粉末を形成するようにすることができる。
【0107】
噴射される溶融金属液滴を高速で冷却し、均一な冷却条件を形成するために、アトマイザー20の流体噴射ノズルの噴射方向が、溶融金属液の噴射流(図示の例でチャンバー10の中心軸)となす角度を、流体噴射角度aとするとき、金属粉末製造用の溶湯流噴射ノズルと、アトマイザー20の流体噴射ノズルとの距離、または高さの差h、流体噴射角度aおよびチャンバー10の内径Dに対して、
h*tana/Dの値は0.1~0.5の範囲の値を持つことが好ましい。
【0108】
当該範囲から外れる場合、溶融金属液滴の飛散角度があまりにも大きくなるので、金属粉末製造用噴射ノズルによる冷却面積から外れる領域に溶融金属液滴が落下して製造される金属粉末の性質が不均一であるか、或いはアモルファス相の比率が低いおそれがある。
【実施例
【0109】
実施例1
アトマイズのために、環状の流体噴射ノズルの噴射方向(流液体噴射角度a)が5°の方向であるガスアトマイザーを使用し、液滴の冷却で垂直方向噴射角αを30°、円周方向噴射角γを20°に設定し、噴射カバレージ角βを65°、噴射ノズルチップ34のホール(ノズル孔35)の直径D1を1.0mmとする噴射ノズルを4つ配置した。
【0110】
比較例1
噴射ノズルを含まず、ガスアトマイザーと静的な状態の冷却水で構成された金属粉末製造装置を準備した。
【0111】
実験例
実験例1~4:金属粉末の製造
実施例1~3、比較例1に対してアトマイズ気体の圧力をそれぞれ65、75、75、60barにし、冷却水の流量はそれぞれ35、40、40、0L/minにし、水圧はそれぞれ110、180、180、0barにした後、噴射される溶融金属の温度はそれぞれ1500、1420、1400、1550℃にして、金属粉末を製造した。
【0112】
下記表1に実験例1~実験例3、比較例1の結果をまとめる。
【0113】
【表1】
【0114】
実験例5~8
実験例1~4で粉末粒度による結晶化エンタルピーの値を、DSC測定装備を用いて測定した。その結果を下記表2にまとめ、測定グラフを図3に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
実験例9~12
実験例1~4で製造された金属粉末をX線回折(XRD)分析装備で分析した。その結果を図4(a)乃至図4(d)に示す。
【0117】
前述した各実施例で例示された特徴、構造、効果などは、実施例の属する分野における通常の知識を有する者によって他の実施例に対しても組み合わせまたは変形が加えられて実施可能である。よって、それらの組み合わせおよび変形に係る内容は、本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0118】
10 チャンバー
20 アトマイザー
31 固定手段
32 噴射ノズルホルダー
33 流路
34 噴射ノズルチップ
35 ノズル孔
36 ガイド部材
図1
図2
図3
図4