(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】中詰材成形用型枠装置および土木工事用袋体の位置決め方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
E02B3/04 301
(21)【出願番号】P 2021044614
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2021-11-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】井坂 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】川端 聡史
(72)【発明者】
【氏名】坪田 憲紀
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-117280(JP,A)
【文献】特開2005-240348(JP,A)
【文献】特開2021-017729(JP,A)
【文献】登録実用新案第3122664(JP,U)
【文献】実開平04-060813(JP,U)
【文献】特開2007-170092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04- 3/14
E02D 17/00-17/20
B65B 67/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編地製の土木工事用袋体に中詰材を投入するために使用する中詰材成形用型枠装置であって、
型枠本体が上口を開放した逆テーパ状を呈し、
前記型枠本体の外周面に
突設し、袋体の位置決め機能とステップ機能を具備する単数または複数の張出取手を設け、
前記土木工事用袋体が張出取手に掛止しないように、張出取手が土木工事用袋体を構成する編地の網目の寸法より大きい寸法関係にあることを特徴とする、
中詰材成形用型枠装置。
【請求項2】
型枠本体の軸方向に沿って分割した複数の円弧枠よりなる分割組立式の構造体であり、前記円弧枠の外周面に単数または複数の張出取手を有することを特徴とする、請求項1に記載の中詰材成形用型枠装置。
【請求項3】
前記円弧枠の外周面に複数の張出取手を有し、前記張出取手が前記型枠本体の外周面の同一の高さに設けてあることを特徴とする、請求
項2に記載の中詰材成形用型枠装置。
【請求項4】
前記張出取手が、型枠本体内に収容した土木工事用袋体の上半を型枠本体の外部へ垂らしたとき、土木工事用袋体に周回して設けた仮止め用ロープを前記張出取手の下位で締め付けて位置決めできる高さに設けてあることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の中詰材成形用型枠装置。
【請求項5】
前記張出取手が型枠本体の周方向に沿って間欠的または連続的に設けてあることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の中詰材成形用型枠装置。
【請求項6】
間欠的に形成した前記張出取手が型枠本体の周方向に沿って横長であることを特徴とする、請求項5に記載の中詰材成形用型枠装置。
【請求項7】
間欠的に形成した前記張出取手が型枠本体の軸方向に沿って縦長であることを特徴とする、請求項5に記載の中詰材成形用型枠装置。
【請求項8】
前記型枠本体が複数の縦枠材を並設した面格子構造体であることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか一項に記載の中詰材成形用型枠装置。
【請求項9】
逆テーパ状を呈する中詰材成形用型枠装置と、周回して仮止め用ロープを設けた編地製の土木工事用袋体を使用し、中詰材の投入によって土木工事用袋体が中詰材成形用型枠装置内に引き込まれないように位置決めする土木工事用袋体の位置決め方法であって、
前記請求項1乃至8の何れか一項に記載した中詰材成形用型枠装置を使用し、
土木工事用袋体の上半を中詰材成形用型枠装置の外部へ垂らし、
前記仮止め用ロープを
、袋体の位置決め機能とステップ機能を具備した張出取手の下位の位置で締め付けて土木工事用袋体を中詰材成形用型枠装置に位置決めしたことを特徴とする、
土木工事用袋体の位置決め方法。
【請求項10】
土木工事用袋体が袋本体の開口部から離隔した位置に取り付けられた吊りロープと、袋本体の開口部の近傍に取り付けられ口縛りロープと、吊りロープの下方位置に設けた中間口絞りロープとを具備し、前記した何れか一本のロープが仮止め用ロープを兼用することを特徴とする、請求項9に記載の土木工事用袋体の位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は河川、海洋または陸上において、根固工、護岸工、仮設基盤工等の各種土木工事に使用可能な土木工事用袋体に天然石やコンクリートガラ等の中詰材を投入する際に使用する、中詰材成形用型枠装置および土木工事用袋体の位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事用袋体(以下「袋体」という)に中詰材を投入した土木工事用構造体は広く知られている。
一般的な袋体は、メッシュ生地で製作した袋本体からなり、袋本体の開口部近くの網目に周回して取り付けた無端構造の吊りロープと、袋本体の開口部の口開きを防止する口絞りロープとを具備する(特許文献1)。
【0003】
袋体の内部に中詰材を投入して土木工事用構造体を製作する際に型枠装置を使用する。
土木工事用構造体を製作するには、型枠装置内に袋体をセットする工程と、袋体内に中詰材を投入する工程と、袋本体の口元部を口縛りロープで閉じる袋体の口縛り工程と、袋本体の複数箇所から無端構造の吊りロープを引き出す引出工程と、引き出した複数の吊りロープをまとめてクレーン等のフックに掛止する掛止工程と、クレーン等で土木工事用構造体を吊り上げて型枠装置から脱型する工程を経て製作している。
【0004】
特許文献2には、袋体を収容可能な上下を開放した筒状型枠を具備し、脱型時に筒状型枠の上口を開閉可能に構成した型枠装置が開示されている。
この型枠装置は、筒状型枠の上口を広げて土木工事用構造体の取り出しを易くしてある。
【0005】
筒状型枠内に袋体を単にセットしただけでは、中詰材の投入時に袋体が筒状型枠の内側へ引き込まれてしまう。
特許文献3には、筒状型枠の周囲に突設したピン状の取付部により袋体の口元部を仮固定して、袋体の引き込みを防止する型枠装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-1828号公報
【文献】特開2008-274698号公報
【文献】特開2012-117280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の型枠装置はつぎのような問題点を内包している。
<1>特許文献1に記載の型枠装置は、袋体の引き込み防止手段を具備しないので、中詰材を投入する際に袋体が型枠内へ引き込まれてしまい、その後に袋体の口縛り作業や袋体の吊上げ作業に支障が生じる。
<2>特許文献2に記載の型枠装置は、ピン状の取付部が放射状に突出しているので、袋体の取扱中に編地が取付部に引っ掛かり、袋体の取扱性が悪くなる。
<3>取付部に袋本体の編地を引っ掛けた状態で、過大な引張力がはたらくと、編地が破ける恐れがある。
<4>袋本体を型枠装置に仮固定するには、型枠装置の周囲を周回しながら袋本体に配備した口縛りロープを複数の取付部に掛止しなければならず、袋本体の仮固定作業に時間がかかる。
<5>中詰材の投入に伴って袋本体の編地にある程度の張力がはたらくため、中詰材の投入後にテンションのかかった口縛りロープを取付部から取り外し難くい。
<6>中詰材の投入作業後における、袋本体の口縛り作業、吊りロープの引き出し作業、引き出した複数の吊りロープをまとめてクレーン等のフックに掛止する掛止作業は、型枠装置の中央位置での作業となる。
型枠中央部でこれら一連の作業は、作業員が身を乗り出し、さらに両手を伸ばした不安定な姿勢で行わなければならず、作業に多くの時間と労力を要している。
特に近時は土木工事用構造体の大型化に伴い、型枠装置の高さや径が大きくなり、型枠中心部での作業がますますし難くなって、土木工事用構造体の製造効率が低下する。
<7>型枠装置が非分割式の一体構造であると、型枠装置の保管や運搬に多くのスペースを必要とする。
<8>省スペースを目的として型枠装置を分割組立式に構成すると、複数の分割体を積み重ねたときの安定性の確保が難しく、保管中や運搬中に分割体が崩れ落ちるといった新たな問題が生じる。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところはつぎの少なくともひとつの中詰材成形用型枠装置および土木工事用袋体の位置決め方法を提供することにある。
<1>土木工事用袋体を構成する編地の引っ掛かりをなくして、袋体の取扱性をよくすること。
<2>型枠装置に対する袋体の位置決め作業だけでなく、土木工事用袋体の位置決め解除作業がし易いこと。
<3>土木工事用構造体の製造効率が向上すること。
<4>型枠装置の保管性と運搬性を改善できること。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、編地製の土木工事用袋体に中詰材を投入するために使用する中詰材成形用型枠装置であって、型枠本体が上口を開放した逆テーパ状を呈し、前記型枠本体の外周面に突設し、袋体の位置決め機能とステップ機能を具備する単数または複数の張出取手を設け、前記土木工事用袋体が張出取手に掛止しないように、張出取手が土木工事用袋体を構成する編地の網目の寸法より大きい寸法関係にある。
本発明の他の形態において、型枠本体の軸方向に沿って分割した複数の円弧枠よりなる分割組立式の構造体であり、前記円弧枠の外周面に単数または複数の張出取手を有する。
本発明の他の形態において、前記円弧枠の外周面に複数の張出取手を有し、前記張出取手が前記型枠本体の外周面の同一の高さに設けてある。
本発明の他の形態において、前記張出取手が、型枠本体内に収容した土木工事用袋体の上半を型枠本体の外部へ垂らしたとき、土木工事用袋体に周回して設けた仮止め用ロープを前記張出取手の下位で締め付けて位置決めできる高さに設けてある。
本発明の他の形態において、前記張出取手が型枠本体の周方向に沿って間欠的または連続的に設けてある。
本発明の他の形態において、間欠的に形成した前記張出取手が型枠本体の周方向に沿って横長であってもよいし、前記張出取手が型枠本体の軸方向に沿って縦長であってもよい。
本発明の他の形態において、前記型枠本体が複数の縦枠材を並設した面格子構造体であってもよい。
さらに本発明は、逆テーパ状を呈する中詰材成形用型枠装置と、周回して仮止め用ロープを設けた編地製の土木工事用袋体を使用し、中詰材の投入によって土木工事用袋体が中詰材成形用型枠装置内に引き込まれないように位置決めする土木工事用袋体の位置決め方法であって、前記した何れかの中詰材成形用型枠装置を使用し、土木工事用袋体の上半を中詰材成形用型枠装置の外部へ垂らし、前記仮止め用ロープを、袋体の位置決め機能とステップ機能を具備した張出取手の下位の位置で締め付けて土木工事用袋体を中詰材成形用型枠装置に位置決めした。
本発明の他の形態において、土木工事用袋体が袋本体の開口部から離隔した位置に取り付けられた吊りロープと、袋本体の開口部の近傍に取り付けられ口縛りロープと、吊りロープの下方位置に設けた中間口絞りロープとを具備し、前記した何れか一本のロープが仮止め用ロープを兼用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上の構成により、少なくともつぎの一つの効果を奏する。
<1>中詰材成形用型枠装置の張出取手を、土木工事用袋体を構成する編地の網目の寸法より大きい寸法にしてあるので、土木工事用袋体を構成する編地と張出取手の引っ掛かりをなくした。
そのため、土木工事用構造体を製作する際における土木工事用袋体の取扱性が非常によくなる。
<2>張出取手の下方位置で仮止め用ロープにより土木工事用袋体を仮止めできるので、中詰材の投入作業時に土木工事用袋体の引き込みを確実に防止することができる。
<3>土木工事用袋体に周回して設けた仮止め用ロープを張出取手の下位の位置で締め付けるだけの簡単な操作で以て土木工事用袋体を位置決めできるだけでなく、仮止め用ロープを解くだけの簡単な作業で以て土木工事用袋体の位置決め解除作業を行うことができる。
<4>作業者は、中詰材成形用型枠装置が具備する張出取手を踏み段として転用できるので、土木工事用袋体が具備する口絞りロープの締付作業や吊りロープの引き出し作業等の型枠中心部での一連の作業を安定した姿勢で効率良く行うことができる。
したがって、型枠中心部で行う一連の作業を行う際の作業者の作業負担を大幅に軽減することができる。
<5>土木工事用構造体の製作時において、木工事用袋体と張出取手との引っ掛かりをなくし、しかも木工事用袋体の位置決め操作および位置決め解除操作を簡単に行え、さらに中詰材投入後の吊り上げ準備作業を効率よく行えるので、従来と比べて土木工事用構造体の製造効率が向上する。
<6>型枠本体が複数の円弧枠よりなる分割組立式の構造体である場合は、円弧枠に設けた張出取手を活用することで、複数の円弧枠を安定した姿勢で段積みすることができる。
そのため、中詰材成形用型枠装置の保管性と運搬性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1に係る中詰材成形用型枠装置の説明図で、(A)は中詰材成形用型枠装置の完成図、(B)は中詰材成形用型枠装置の分解組立図
【
図5】中詰材成形用型枠装置内に位置させた土木工事用構造体の平面図
【
図8】土木工事用構造体の製作方法の説明図で、(A)は中詰材成形用型枠装置内に袋体をセットするまでの工程の説明図、(B)は中詰材の投入工程までの説明図、(C)は脱型工程までの説明図
【
図10】複数の円弧枠を段積みしてパレットに載置したモデル図
【
図11】縦向きの張出取手を適用した実施例2に係る中詰材成形用型枠装置の説明図
【
図12】環状を呈する張出取手を適用した実施例3,4に係る中詰材成形用型枠装置の説明図で、(A)は型枠本体を分割した円弧枠に円弧状の張出取手を適用した実施例3の説明図、(B)は一体構造の型枠本体に環状の張出取手を適用した実施例4の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。
【0013】
[実施例1]
<1>中詰材成形用型枠装置
中詰材成形用型枠装置(以下「型枠装置」という)10の説明にあたり、「周方向」とは型枠装置10の円周方向を指し、「軸方向」とは型枠装置10の中心軸に沿った方向を指す。
【0014】
図8を参照して説明すると、型枠装置10は、袋体20の内部に中詰材30を投入して土木工事用構造体40を製作する際に使用する筒状型枠である。
型枠装置10はその外周面に張出取手17を有していて、型枠装置10の張出取手17と、袋体20に配備した仮止め用ロープ(中間口絞りロープ25)とを組み合わせることで、型枠装置10にセットした袋体20の引き込みを防止する。
【0015】
<1.1>型枠装置の全体形状
図1,2を参照して説明すると、型枠装置10は、土木工事用構造体40の抜き取りをし易くするため、全体形状が逆テーパ状(逆円錐台形)の型枠本体を有する。
型枠装置10の高さや上下部の径寸法は、適宜選択が可能である。
型枠装置10のテーパ角度は適宜選択が可能であるが、実用上、型枠装置10のテーパ角度は20°~30°の範囲が望ましい。
【0016】
<1.2>型枠本体の分割組立式構造
本例では、保管や搬送の省スペース化を図るため、型枠装置10の型枠本体を軸方向に沿って複数に分割した円弧状を呈する複数の円弧枠15で構成し、複数の円弧枠15の両側端面16の間を連結手段により連結して構成する分割組立式である形態について説明する。
【0017】
<1.3>型枠本体の素材
型枠本体は棒材またはパイプ材を縦横方向に組み合わせて製作する。
本例では横枠材11,12と複数の縦枠材13とにより円弧枠15を製作する。円弧枠15は軸方向に配置した複数の縦枠材13の上下部を円弧形の横枠材11,12で連結した面格子構造体になっている。
【0018】
なお、型枠本体の素材は棒材またはパイプ材に限らず、金属製や樹脂製等の硬質板体で形成してもよい。
【0019】
<1.4>型枠装置の分割数
本例では、型枠装置10を四分割した形態について説明する。
型枠装置10の分割数は適宜選択が可能であり、二分割以上であればよい。
【0020】
<1.5>張出取手
型枠装置10はその外周面に周方向に沿って突設した単数または複数の張出取手17を有する。
【0021】
張出取手17はすべての円弧枠15に設けてもよいし、一部の円弧枠15に対して選択的に設けてもよい。
【0022】
円弧枠15に対して複数の張出取手17を設ける場合は、間隔を隔てて同一の高さに並設する。
【0023】
張出取手17は、円弧枠15を取り扱う際の取手としての機能だけでなく、型枠装置10にセットした袋体20の引き込みを防止する位置決め機能と、作業員が型枠装置10上で作業する際の足掛けに利用できるステップ機能等を有する。
さらに円弧枠15の外周面の同一高さに複数の二つの張出取手17を並設した場合は、型枠装置10の分割体である複数の円弧枠15を積み重ねた際に、円弧枠15の自由な揺動を防止する揺動防止機能を発揮する。
【0024】
<1.5.1>張出取手の取付高さ
張出取手17が、型枠装置10内にセットした袋体20の位置決め機能を発揮し得るように、型枠装置10にセットして外方に垂れ下げた袋体20の仮止め用ロープ(中間口絞りロープ25)が、張出取手17の下方に位置するように、張出取手17の取付高さを予め設定する。
具体的には、袋体20の全体寸法と、仮止め用ロープ(中間口絞りロープ25)の形成位置等を考慮して張出取手17の取付高さを選択する。
【0025】
<1.5.2>張出取手の形状
張出取手17は上記した複数の機能を発揮できれば、形状的な制約はまったくない。
本例では棒材をコ字形に屈曲して横長に形成した張出取手17の両端部を隣り合う縦枠材13の間に横架した形態を示しているが、張出取手17の形状はコ字形に限定されず、半円形の棒材でもよい。
さらに張出取手17は棒材の他に面状の板材であってもよい。
【0026】
<1.5.3>張出取手の突出角度
図2を参照して説明すると、張出取手17は水平線に対してわずかに下向きに取り付ける。
張出取手17を僅かに下向きに取り付けることで、袋体20に配備した仮止め用ロープ(中間口絞りロープ25)が型枠装置10から外れ難くなって袋体20の位置決め機能が高くなる。
【0027】
<1.5.4>張出取手と縦枠材間隔との関係
隣り合う縦枠材13の間に張出取手17の両端部を横架した形態において、複数の円弧枠15を積み重ねたときに張出取手17が、隣り合う縦枠材13の間に貫通しない寸法関係にしてある。
【0028】
<2>連結手段
複数の円弧枠15は連結手段を介して組立てまたは解体が可能である。
図3を参照して説明すると、本例では隣り合う円弧枠15の両側端板16,16の間をボルト18とナット19で締結した形態を示す。
円弧枠15は連結手段は、ボルト18とナット19に限らず、隣り合う円弧枠15の両側端板16,16間を締め付け可能なグリップ金具や、複数の円弧枠15を円筒状に組み立てた型枠装置10の全体に外装して締め付け可能なベルト式締付装置を適用することも可能である。
【0029】
<3>土木工事用袋体(袋体)
図4,5を参照して、本発明で使用する土木工事用袋体20(以下「袋体20」という)について説明する。
【0030】
袋体20は、中詰材30を充填するメッシュ状の袋本体21と、袋本体21の開口部の近くに配備した複数のロープ(口絞りロープ23、吊りロープ24、中間口絞りロープ25)とを具備する。
【0031】
<3.1>袋本体
袋本体21は開口部を有するネット生地製の有底袋である。
袋本体21は、中詰材30の収容量(1~8t)に応じて外形寸法が異なる。
【0032】
袋本体21のネット生地としては、例えばポリエステル等の合成繊維糸を二重に編成した極太ラッセル網地を使用できる。
ネット生地の網目22はその展開形状が四角形または六角形を呈している。
網目22は中詰材30が抜け出ない寸法に設定してあり、一般的な網目22の寸法は25~50mmである。
【0033】
<3.2>張出取手と網目寸法の関係
図6,7を参照して、型枠装置10が具備する張出取手17と袋本体21の網目寸法の関係について説明する。
張出取手17の最大幅寸法L
1は、袋本体21の編地の網目22の最大幅寸法L
2よりも大きい寸法関係にある。
張出取手17の寸法を網目22の寸法より大きくしたのは、袋体20の取扱中に張出取手17に袋体20の編地が引っ掛かるのを防止するためである。
【0034】
<3.3>袋本体が具備する複数のロープ
図4,5を参照して、袋本体21が具備する複数のロープについて説明する。
袋本体21は開口部の近くに3本のロープ(口絞りロープ23、吊りロープ24、中間口絞りロープ25)を具備していて、袋本体21に対して開口部から底部側へ向けて、口絞りロープ23、吊りロープ24、中間口絞りロープ25の順に配置してある。
【0035】
口絞りロープ23は袋本体21の開口部の最も近い位置に取り付けたロープであり、袋本体21の開口部を開閉するために機能する。
【0036】
吊りロープ24は口絞りロープ23と中間口絞りロープ25の間の網目に挿通して取り付けた無端構造のロープである。
【0037】
中間口絞りロープ25は袋本体21の一部にくびれを形成して中詰材30を包持する機能と口絞りロープ機能を併有した複合ロープである(
図8(C))。
袋本体21の一部にくびれを形成するのは、吊りロープ24による吊上げ時に袋本体21(首部)の頂部の吊り角度を小さくして吊りロープ24を挿通した網目の引き裂きを防止するためと、土木工事用構造体40の敷設後に袋本体21の未収容部の肩部で中詰材30の天端面の周縁部を弾力的に包持するためである。
【0038】
<3.4>袋体の仮止め用ロープ
本例では型枠装置10にセットした袋本体21の仮止め用ロープとして、袋体20に配備した中間口絞りロープ25を兼用する形態について説明する。
【0039】
袋本体21の仮止め用ロープは、中間口絞りロープ25に代えて口絞りロープ23や吊りロープ24を使用してもよい。
【0040】
さらに袋本体21の仮止め用ロープとしては、これらのロープ23~25以外の締付専用ロープを袋本体21の適宜の位置に取り付けてもよい。
【0041】
<4>中詰材
中詰材30は、例えば玉石等の自然骨材、コンクリートガラ、各種廃棄物の焼成体等を使用できる。
根固工に使用する場合、直径150mm程度の中詰材30を使用するが、中詰材30の大きさは使途に応じて適宜選択する。
【0042】
[土木工事用構造体の製作方法]
つぎに
図8を参照しながら型枠装置10を使用した土木工事用構造体の製作方法について説明する。
【0043】
<1>中詰材の投入準備(
図8(A))
既述した型枠装置10と袋体20を準備する。
【0044】
<1.1>袋体のセット(
図8(A))
型枠装置10の内側に袋本体21を展開した状態で収容する。
型枠装置10からはみ出した袋本体21の上半部を外方へ折り返し、型枠装置10の外周面に被せる。
袋本体21に配備した仮止め用ロープ(例えば中間口絞りロープ25)を張出取手17の下方に位置させる。
【0045】
<1.2>袋本体の仮止め(
図8(A))
仮止め用ロープ(中間口絞りロープ25)を締め付けて、型枠装置10から垂れ下がった袋本体21を張出取手17の下方位置で仮止めする。
袋本体21の仮止め作業は、袋本体21に予め取り付けてある仮止め用ロープを締め付けるだけの簡単な作業でよく、型枠装置10を周回して取り付ける作業は不要である。
【0046】
<2>中詰材の投入(
図8(B))
バックホウ等の重機を用いて袋本体21に所定量の中詰材30を投入する。
中詰材30は型枠装置10の内周面に沿って広がり、袋本体21を型枠装置10の内周面に沿って押し付ける。
【0047】
<2.1>袋本体の引き込み防止作用
中詰材30の投入に伴い、型枠装置10の外部に垂れ下がった袋本体21に型枠装置10内へ向けた引張力が作用する。
型枠装置10の外部に垂れ下がった袋本体21は、張出取手17の下方位置で仮止め用ロープ(中間口絞りロープ25)により仮止めされているので、中詰材30の投入作業中に袋本体21の引き込みを確実に防止できる。
【0048】
<2.2>袋本体の編地の損傷回避
さらに張出取手17を覆う袋本体21の網目22が張出取手17に引っ掛からない寸法に設定してある(
図6,7)。
したがって、袋本体21に引張力が作用しても、袋本体21の編地が張出取手17に引っ掛って破れる心配がない。
【0049】
<3>吊り上げ準備(
図5、
図8(C))
袋本体に配備した複数のロープ23~25を以下のように操作して吊り上げ準備を行う。
【0050】
<3.1>袋本体の仮止め解除
中詰材30の投入作業を終えたら、仮止め用ロープ(中間口絞りロープ25)の締め付けを解き、袋本体21の上半を中詰材30の上面に被せる。
【0051】
<3.2>ロープの締付操作と引き出し操作
型枠装置10内に袋本体21をセットしたまま、口絞りロープ23を絞り込んで袋本体21の開口部を閉じる。
袋本体21に配備した中間口絞りロープ25を所定の周長に絞り込んで両端が解けないように固定する。
袋本体21の網目に挿通した吊りロープ24の途中を袋本体21の複数箇所(例えば6箇所)からループ状に引出す。
【0052】
型枠装置10の外周面には地上から離れた高さに張出取手17が突設してある。
作業者は、張出取手17を踏み段として利用できるので、型枠装置10の中心部で行う2本の口絞りロープ23,25の締付作業および吊りロープ24の引き出し作業の一連の吊り上げ準備を安定した姿勢で確実に行うことができる。
【0053】
<4>脱型(
図8(C))
袋本体21の複数箇所からループ状に引出した吊りロープ24の複数個所をクレーン等のフック26に吊り掛ける。
吊りロープ24を吊上げて型枠装置10から取り出すことで土木工事用構造体40の製作を完了する。
土木工事用構造体40の脱型にあたり、型枠装置10の内周面が逆テーパ状を呈するので、土木工事用構造体40を円滑に抜き取ることができる。
【0054】
[円弧枠の段積み方法]
図9,10を参照して保管時または運搬時における円弧枠15の段積み方法について説明する。
【0055】
<1>円弧枠の揺動規制
例えば、張出取手17を具備しない円弧枠の湾曲した外面をパレット50や床面等の載置面へ向けて横置きすると、円弧枠が揺動する。
【0056】
これに対し、
図9に示すように、円弧枠15の外周面に二つの張出取手17,17が並設してあると、円弧枠15をパレット50等の載置面へ横置きしても、二つの張出取手17,17がパレット50等の載置面の二点で接するため、円弧枠15の自由な揺動を阻止できる。
【0057】
<2>段積みした円弧枠の姿勢
例えば、張出取手17を具備しない円弧枠は、上部と下部で曲率が異なるだけでなく、上部と下部で幅寸法と厚さ寸法も異なる。
そのため、上下の向きを同一に揃えて複数の円弧枠を積み重ねると、上段に向かうほど傾斜が大きくなって、円弧枠が不安定な姿勢となる。
また、上下の向きを逆にしながら複数の円弧枠を交互に積み重ねると、上下の円弧枠の間で揺動が生じて不安定である。
これは円弧枠の湾曲面上にして伏せた状態で積み重ねた場合も同様である。
【0058】
これに対して、
図10に示すように、円弧枠15の外周面に張出取手17突設してあると、円弧枠15の上下の向きを逆にしながら交互に積み重ねると、張出取手17が円弧枠15の傾斜を解消して、上下に積み重ねた円弧枠15の姿勢を安定させる。
【0059】
このように、張出取手17を具備した複数の円弧枠15を積み上げても安定した姿勢保持できるので、円弧枠15の保管時の省スペース化が図れると共に、複数の円弧枠15を段積みしても安定した姿勢を保持して運搬することができる。
【0060】
[実施例2]
以降に他の実施例について説明するが、その説明に際し、前記した実施例1と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0061】
<1>縦向きの張出取手
先の実施例1では、型枠装置10の外周面に張出取手17を横向きに突設した形態について説明したが、張出取手17は型枠本体の軸方向に沿って縦向きに設けてもよい。
【0062】
図11は型枠装置10の型枠本体を構成する縦枠材15の外周面に張出取手17を縦向きに突設した形態を設けた形態を示している。
張出取手17の底面17aが仮止め用ロープの掛止面として機能し、張出取手17の上面17bが作業者の踏み段面として機能する。
【0063】
<2>本実施例の効果
本実施例においても、既述した実施例1と同様の効果を得ることができて、縦向きに設けた単数または複数の張出取手17により、袋体20の位置決め作用を発揮できると共に、張出取手17を踏み段として活用することができる。
【0064】
[実施例3]
<1>周方向に連続した張出取手
先の実施例1では、型枠装置10の型枠本体の周面方向に沿って複数の張出取手17を間欠的(断続的)に突設した形態について説明したが、張出取手17は型枠本体の周面方向に沿って連続的に突設してもよい。
【0065】
図12(A)は各円弧枠15の外周面に周方向に沿って円弧状を呈する張出取手17を突設した形態を設けた形態を示している。
張出取手17は円弧枠15を横断可能な全長を有し、円弧枠15の端部が側端板16に固定してある。
複数の円弧枠15を接合して型枠装置10を組み立てることで、型枠本体の外周面に環状を呈する円弧枠15が形成される。
【0066】
<2>本実施例の効果
本実施例においても、既述した実施例1と同様の効果を得ることができて、環状を呈する張出取手17により、袋体20の位置決め作用を発揮できると共に、袋体20の位置決め作用を発揮できると共に、張出取手17を踏み段として活用することができる。
【0067】
[実施例4]
<1>縦向きの張出取手
以上の実施例1~3は、型枠装置10の型枠本体を分割組立式に構成する形態について説明したが、型枠装置10は型枠本体を分割せずに一体構造として製作したものでもよい。
本実施例における張出取手17は、既述した実施例1~3に記載の張出取手17を適用できる。
【0068】
図12(B)は実施例3の張出取手17を本例に適用した形態を示していて、型枠装置10の外周面に型枠本体の周方向に沿って環状を呈する張出取手17が突出している。
張出取手17は型枠本体の外周面に接触させて直接固着してもよいし、各種のステー金具を介して型枠本体の外周面に張出取手17を径方向に張り出して設けてもよい。
【0069】
<2>本実施例の効果
本実施例においては、型枠本体の外周面に環状を呈する張出取手17により、袋体20の位置決め作用を発揮できると共に、袋体20の位置決め作用を発揮できると共に、張出取手17を踏み段として活用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10・・・・中詰材成形用型枠装置(型枠装置)
11・・・・下位の横枠材
12・・・・上位の横枠材
13・・・・縦枠材
15・・・・円弧枠
16・・・・側端面
17・・・・張出取手
18・・・・ボルト
19・・・・ナット
20・・・・土木工事用袋体(袋体)
21・・・・袋本体
22・・・・網目
23・・・・口絞りロープ
24・・・・吊りロープ
25・・・・中間口絞りロープ(仮止め用ロープ)
30・・・・中詰材
40・・・・土木工事用構造体
50・・・・パレット
【要約】
【課題】土木工事用袋体を構成する編地の引っ掛かりをなくして土木工事用袋体の取扱性がよく、型枠装置に対する土木工事用袋体の位置決め作業がし易く、土木工事用構造体の製造効率が向上すること。
【解決手段】中詰材成形用型枠装置10の型枠本体が上口を開放した逆テーパ状を呈し、型枠本体の外周面に単数または複数の張出取手17を設け、土木工事用袋体が張出取手に掛止しないように、張出取手を土木工事用袋体を構成する編地の網目の寸法より大きい寸法関係にした。
【選択図】
図1