(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20220422BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20220422BHJP
【FI】
B29B17/02
B29C48/08
(21)【出願番号】P 2021139403
(22)【出願日】2021-08-27
(62)【分割の表示】P 2021122777の分割
【原出願日】2021-07-27
【審査請求日】2021-08-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】高市 隼
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-333952(JP,A)
【文献】特開2007-090876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00-17/04
B29C 48/00-48/96
B31D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ層及び樹脂層を有するフィルムラベル、及び該フィルムラベルが装着された樹脂ボトルの少なくとも一方を出発原料として用意することと、
前記出発原料から比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収することと、
前記回収された熱可塑性樹脂を原料に含め、比重が1未満の樹脂フィルムを押出成形することと、
を備え、
前記比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収することは、
前記出発原料または前記樹脂層を個片化することと、
前記フィルムラベルまたは前記フィルムラベルの個片から前記インキ層を分離して、前記インキ層が除去された前記樹脂層または前記樹脂層の個片を得ることと、
前記出発原料、前記樹脂層、またはこれらの個片を比重分離して、比重が1未満の前記出発原料、前記樹脂層、またはこれらの個片を回収することと、
を含
み、
前記押出成形される比重が1未満の樹脂フィルムは、オレフィン系樹脂を主成分とする、
樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収することは、
前記出発原料を個片化することと、
前記フィルムラベルの個片から前記インキ層を分離して、前記インキ層が除去された前記樹脂層の個片を得ることと、
前記樹脂層の個片を比重分離して、比重が1未満の前記樹脂層の個片を回収することと、をこの順に含む、
請求項1に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記押出成形された樹脂フィルムにインキ層を積層し、インキ層及び樹脂層を有するフィルムラベルを作製すること、
をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記作製されたフィルムラベルを前記出発原料とし、さらに比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収することと、前記回収された熱可塑性樹脂を原料に含め、比重が1未満の樹脂フィルムを作製することと、を1回以上繰り返す、
請求項3に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記インキ層が除去された前記樹脂層または前記樹脂層の個片を得ることは、前記フィルムラベルまたは前記フィルムラベルの個片をアルカリ性水溶液に浸漬することにより前記インキ層を分離することを含む、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ性水溶液に浸漬された後の前記樹脂層または前記樹脂層の個片を中和すること、
をさらに備える、
請求項5に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記インキ層が除去された前記樹脂層または前記樹脂層の個片を得ることは、前記フィルムラベルまたは前記フィルムラベルの個片を水に浸漬することにより前記インキ層を分離することを含む、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記インキ層が除去された前記樹脂層または前記樹脂層の個片を得ることは、前記インキ層が分離された後の前記樹脂層または前記樹脂層の個片を洗浄することを含む、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収することと前記比重が1未満の樹脂フィルムを押出成形することとの間に、前記回収された比重
が1未満の熱可塑性樹脂を乾燥させること、
をさらに備える、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ラベルが装着されたプラスチックボトルを再生ペレット化する場合に、純度の高いペレットを得るための技術を開示する。より具体的には、インキ層を除去するのが容易な熱可塑性重合体ラベル、熱可塑性重合体ラベル上のインキを除去する方法、及びインキを除去したラベルとボトルとの再生方法等を開示する。特許文献1に開示されるラベルは、アルカリ性温湯中に浸漬することにより、これに積層されたインキ層を容易に除去することができる。インキ層が除去されたラベルの熱可塑性樹脂は、比重別に分離して選別され、再生ペレットの作製に利用される。
【0003】
また、特許文献2は水に浸漬することでインキ層が分離可能な積層フィルムを開示する。この積層フィルムは、樹脂フィルムとインキにより印刷された印刷層との間に、ポリビニルアルコールを含有する樹脂層を備える。特許文献2によれば、この積層フィルムを水に浸漬すると、各層の単層フィルムやインキが水中で分離するので、比重別に各分離物を選別回収することができる。
【0004】
以上のように、熱可塑性樹脂を用いたラベルからインキ層を除去することは、より正確な熱可塑性樹脂の比重分離を可能にする。印刷用のインキには、例えば酸化チタンのように、比重が比較的大きい成分を含むものがある。このようなインキの層が積層されたラベルは、熱可塑性樹脂の種類に関わらず、比重が大きいものとして分離されることがあり、再生ペレットの純度に好ましくない影響を及ぼし得る。特許文献1及び2に開示されるような技術を利用することで、ラベルを含むプラスチックボトルが積極的に再利用されることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-333952号公報
【文献】国際公開第2021/090690号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ラベル及びボトルから分離回収される熱可塑性樹脂のうち、例えばポリエステルのような比重が1を超える樹脂は、回収後にラベル及びボトルとして再生され、資源から製品への循環を繰り返す。しかし、比重が1未満の熱可塑性樹脂については、こうした循環が未だ考慮されておらず、分離回収された後に廃棄されがちである。
【0007】
本開示は、インキ層及び樹脂層を有するフィルムラベル及び該フィルムラベルが装着される樹脂ボトルの少なくとも一方から比重1未満の熱可塑性樹脂を回収し、これを利用して比重が1未満となる樹脂フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係る樹脂フィルムの製造方法は、以下のことを備える。
インキ層及び樹脂層を有するフィルムラベル、及び該フィルムラベルが装着された樹脂ボトルの少なくとも一方を出発原料として用意すること、出発原料から比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収すること、及び回収された熱可塑性樹脂を原料に含め、比重が1未満の樹脂フィルムを押出成形すること。さらに、比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収することは、以下のことを含む。出発原料または樹脂層を個片化すること、フィルムラベルまたはフィルムラベルの個片からインキ層を分離して、インキ層が除去された樹脂層または樹脂層の個片を得ること、出発原料、樹脂層、またはこれらの個片を比重分離して、比重が1未満の出発原料、樹脂層、またはこれらの個片を回収すること。
【0009】
上記樹脂フィルムの製造方法において、比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収することは、出発原料を個片化すること、フィルムラベルの個片からインキ層を分離して、インキ層が除去された樹脂層の個片を得ること、樹脂層の個片を比重分離して、比重が1未満の樹脂層の個片を回収すること、をこの順で含んでもよい。
【0010】
上記樹脂フィルムの製造方法は、押出成形された樹脂フィルムにインキ層を積層し、インキ層及び樹脂層を有するフィルムラベルを作製すること、をさらに備えてもよい。
【0011】
上記樹脂フィルムの製造方法においては、作製されたフィルムラベルを出発原料とし、さらに比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収することと、回収された熱可塑性樹脂を原料に含め、比重が1未満の樹脂フィルムを作製することと、を1回以上繰り返してもよい。
【0012】
上記樹脂フィルムの製造方法において、インキ層が除去された樹脂層または樹脂層の個片を得ることは、フィルムラベルまたはフィルムラベルの個片をアルカリ性水溶液に浸漬することにより、インキ層を分離することを含んでもよい。
【0013】
上記樹脂フィルムの製造方法は、アルカリ性水溶液に浸漬された後の樹脂層または樹脂層の個片を中和することをさらに備えてもよい。
【0014】
上記樹脂フィルムの製造方法において、インキ層が除去された樹脂層または樹脂層の個片を得ることは、フィルムラベルまたはフィルムラベルの個片を水に浸漬することによりインキ層を分離することを含んでもよい。
【0015】
上記樹脂フィルムの製造方法において、インキ層が除去された樹脂層または樹脂層の個片を得ることは、インキ層が分離された後の樹脂層または樹脂層の個片を洗浄することを含んでもよい。
【0016】
上記樹脂フィルムの製造方法は、比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収することと、比重が1未満の樹脂フィルムを押出成形することとの間に、回収された比重が1未満の熱可塑性樹脂を乾燥させることをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記観点によれば、インキ層及び樹脂層を有するフィルムラベル及び該フィルムラベルが装着された樹脂ボトルの少なくとも一方から比重1未満の熱可塑性樹脂を回収し、これを利用して比重が1未満となる樹脂フィルムを製造する方法が提供される。製造される樹脂フィルムは、再びインキ層を有するフィルムラベルとして使用することができる。これにより、フィルムラベルや樹脂ボトルに含まれる比重1未満の熱可塑性樹脂の循環を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る製造方法の流れを示すフローチャート。
【
図2】第2実施形態に係る製造方法の流れを示すフローチャート。
【
図3】第3実施形態に係る製造方法の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示に係る樹脂フィルムの製造方法のいくつかの実施形態について説明する。この製造方法では、フィルムラベルやこれを含む樹脂ボトルから比重1未満の熱可塑性樹脂を回収し、回収された熱可塑性樹脂を用いて比重1未満の樹脂フィルムが製造される。樹脂ボトルは、典型的にはポリエチレンテレフタレート(PET)から主として構成されるペットボトルである。製造される樹脂フィルムは、樹脂ボトルに装着されるフィルムラベルのベースフィルムに適しており、印刷等の処理を施されることにより、ペットボトルを含む樹脂ボトルのフィルムラベルとして再生利用することができる。すなわち、この製造方法によれば、出発原料としてのフィルムラベルから、再生品としてのフィルムラベルを循環的に製造することができる。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る樹脂フィルムの製造方法の流れを示すフローチャートである。
図1に示すように、樹脂フィルムの製造方法は、出発原料を用意する工程(ステップ)と、これに続く工程S1~S5を備える。工程S1~工程S4は、出発原料から比重1未満の熱可塑性樹脂を回収し、回収された熱可塑性樹脂を原料に含め、比重が1未満の樹脂フィルムを押出成形する工程である。工程S5は、製造された樹脂フィルムに印刷用インキのインキ層を形成して、主としてペットボトルに装着されるフィルムラベル(再生品)を製造する工程である。再生品としてのフィルムラベルは再び出発原料とすることができ、新たな工程S1~工程S5に供することができる。なお、
図1中の工程S1、S2、S2A、S2B及びS3の順序は適宜変更することができる。このため、以下では、
図1に示す第1実施形態の方法について詳細に説明した後、各工程の順序が異なる他の実施形態についても詳細に説明する。
【0021】
<1.出発原料>
図1に示す樹脂フィルムの製造方法の循環の起点となる出発原料は、フィルムラベルを含む。フィルムラベルは、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂フィルム(樹脂層)に印刷層が形成され、ラベルとして構成されたものである。フィルムラベルは、熱収縮性であってもよいし、熱収縮性でなくてもよい。このフィルムラベルは、製品として使用済みのもの、未使用のもの、中間処理品、製造過程における廃棄品等であってよく、その履歴は特に限定されない。
【0022】
樹脂フィルムは、主成分によりオレフィン系フィルム、スチレン系フィルム、及びエステル系フィルムに大別される。オレフィン系フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン及び石油樹脂等のオレフィン系樹脂を含有する。オレフィン系フィルムは、比重が1未満のポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方を主成分とし、通常、全体としての比重が1未満である。
【0023】
スチレン系フィルムは、ポリスチレン(比重1.03~1.06)を主成分とし、通常、全体としての比重が1を超える。エステル系フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(比重1.25~1.40)を主成分とし、通常、全体としての比重が1を超える。従って、後述する比重分離工程(S3)で比重が1未満の熱可塑性樹脂として回収される個片は、上記樹脂フィルムのうち、オレフィン系フィルムに由来する。
【0024】
フィルムラベルは、ペットボトルから取り外された状態であってもよく、ペットボトルに装着された状態であってもよい。すなわち、フィルムラベル単体、フィルムラベルが装着されたペットボトル、あるいはこれらが混在したものが出発原料として用意されてもよい。一般的なペットボトルは、容器本体がポリエチレンテレフタレート(PET)で構成され、容器本体に装着される、キャップ及びキャップのリング部分がポリエチレンまたはポリプロピレンで構成される。このキャップ及びリング部分も、後述する比重分離工程(S3)でオレフィン系フィルムと同じ側に分離されるため、資源として回収することができる。回収されたキャップ及びリング部分の資源は、樹脂フィルムの原料に含められてもよい。出発原料とするペットボトルも、フィルムラベルと同様、製品として使用済みのもの、未使用のもの、中間処理品、製造過程における廃棄品等であってよく、その履歴は特に限定されない。
【0025】
<2.個片化工程>
工程S1は、出発原料を個片化し、出発原料が2つ以上に分離された個片を得る個片化工程である。以下、工程S1で得られる個片を個片(P1)と称することがある。個片化工程を後述するインキ分離工程に先立って行うことにより、インキ分離工程におけるインキ層の分離が促進される。出発原料がペットボトルから取り外された状態のフィルムラベル単体である場合、工程S1ではフィルムラベルの個片化が行われる。フィルムラベルを個片化する方法は特に限定されず、公知のスリッター、シュレッダー、及び裁断機等を用いて行うことができる。個片のサイズは特に限定されない。
【0026】
出発原料がペットボトルに装着された状態のフィルムラベルを含む場合、工程S1ではフィルムラベルとともにペットボトルが個片化される。ラベル付きのペットボトルを個片化する方法は特に限定されず、公知の粉砕機、裁断機、及び破砕機等を用いて行うことができる。フィルムラベルは、ペットボトルとともに個片化される過程で、大部分がペットボトルから剥離する。これにより、ペットボトルの個片と、フィルムラベルの個片とがそれぞれ得られる。これらの個片のサイズは特に限定されないが、ペットボトルにおいて、容器本体と、容器本体の首部に装着されているリング部分とが分離されるようなサイズであることが好ましい。また、フィルムラベルとともにペットボトルを個片化する場合、得られた個片からフィルムラベルの個片を選別して、選別されたフィルムラベルの個片を後述するインキ層分離工程に送ってもよい。フィルムラベルの個片を選別する方法は特に限定されず、例えば風力によりフィルムラベルの個片を吹き飛ばす方法や、振動によりフィルムラベルの個片を集める方法等が挙げられる。
【0027】
<3.インキ層分離工程>
工程S2は、フィルムラベルの個片からインキ層を分離して、インキ層が除去された樹脂層の個片を得るインキ層分離工程である。以下、工程S2で得られる、樹脂層の個片を含む個片を個片(P2)とも称する。
【0028】
フィルムラベルは、インキ層を含むことにより、全体としての比重がベースフィルムである樹脂フィルム自体の比重よりも大きくなることが多い。印刷用インキは、比較的比重が大きい成分を含み、全体としての比重が1を超えることが多い。例えば、白インキは、比重が3.9~4.1と比較的大きな酸化チタンを含む。このため、フィルムラベルを単に個片化しただけでは、後の比重分離工程において、比重が1未満の熱可塑性樹脂が、比重が1を超える熱可塑性樹脂から適切に分離されないおそれがある。特に、樹脂フィルムの厚みが薄いものであると、フィルムラベル全体においてインキ層の占める比重割合が大きくなるため、この傾向が顕著となる。工程S3の前に工程S2を行うことで、比重が1未満の熱可塑性樹脂をより多く、効率良く回収することができる。
【0029】
インキ層を分離する方法としては特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、個片(P1)をアルカリ性水溶液に浸漬する方法、個片(P1)を水に浸漬する方法、及びフィルム洗浄装置(脱墨装置)による方法等が挙げられる。なお、個片(P1)は、工程S2の前に選別されたフィルムラベルの個片であってもよいし、ペットボトルの個片を含むフィルムラベルの個片であってもよい。
【0030】
フィルムラベルの方でも、上述した方法により、よりインキ層を除去しやすく工夫されたものが知られている。例えば、インキ層と熱可塑性樹脂製の基材層との間に、アルカリ性の温水中で溶解または膨潤する中間層を有するフィルムラベルが挙げられる(特許文献1参照)。このフィルムラベルは、90℃のNaOH3%溶液に一定時間以上浸漬することで、基材層から中間層ごとインキ層が剥離し、結果的にインキ層を除去することができる。中間層は、アルカリ性の温水中で膨潤または溶解する樹脂組成物から構成される。
【0031】
また、例えば特開2001-350411号公報に開示されるように、インキ層がアルカリ性水溶液中で膨潤または溶解し、樹脂フィルムから分離しやすく構成されるフィルムラベルもある。このフィルムラベルも、60℃のNaOH3%溶液に一定時間浸漬することで、インキ層を除去することができる。
【0032】
別の例では、樹脂フィルムとインキ層との間に、中間層としてポリビニルアルコール(PVA)を含有する層を有するフィルムラベルが挙げられる(特許文献2参照)。このフィルムラベルは、20℃~50℃の水に浸漬するとPVAが膨潤し、樹脂フィルムからPVAごとインキ層が剥離し、結果的にインキ層を除去することができる。
【0033】
上述の方法は、適宜組み合わせて行われてもよい。例えば、個片(P1)を水に浸漬した後、これを引き揚げて、さらにアルカリ性水溶液に浸漬してもよい。反対に、個片(P1)をアルカリ性水溶液に浸漬した後、これを引き揚げて、さらに水に浸漬してもよい。
【0034】
以上のようにして、インキ層が除去された樹脂層の個片を含む個片(P2)が得られる。
【0035】
<4.中和工程>
工程S2Aは、工程S2と工程S3との間に、必要に応じて設けることができる。工程S2Aは、工程S2でアルカリ性水溶液に浸漬した後の個片(P2)を酸性水溶液に浸漬し、アルカリ性を中和する中和工程である。酸性水溶液としては特に限定されないが、例えば酢酸水溶液を用いることができる。工程S2でアルカリ性水溶液を用いる場合は、この工程S2Aを設けることで、後述する洗浄工程で使用する水の量を節約することができる。
【0036】
<5.洗浄工程>
工程S2Bは、工程S2と工程S3との間に、必要に応じて設けることができる。工程S2Bは、工程S2で個片(P1)をアルカリ性水溶液に浸漬した後、個片(P2)に付着したアルカリ性水溶液を水で洗浄する洗浄工程である。工程S2Bは、工程S2Aに代えて、またはこれに加えて設けることができる。
【0037】
<6.比重分離工程>
工程S3は、工程S2で得られた個片(P2)を、比重が1未満の熱可塑性樹脂から構成されるものと、比重が1を超える熱可塑性樹脂から構成されるものとに分離する比重分離工程である。比重分離の方法としては、液体による分離方法、風力による分離方法等があり、特に限定されないが、簡易でありながら正確な分離が可能であるという点で、水による比重分離が好ましい。すなわち、水に個片(P2)を投入すると、比重が1未満の熱可塑性樹脂の個片(以下、「個片(P3)」とも称する)は水面に浮上し、比重が1を超える熱可塑性樹脂の個片(以下、「個片(P4)」とも称する)は水中に沈降する。比重分離の正確性を期するためには、個片(P2)が投入される水は20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、55℃以下であることが好ましく、45℃以下であることがより好ましい。
【0038】
上述したように、オレフィン系フィルム、キャップ及びリング部分の個片は、個片(P3)として水面に浮上する。一方、スチレン系フィルム、エステル系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(容器本体)及びインキ層のオーバーコート成分等の個片は、個片(P4)として水中に沈降する。このように比重分離された個片(P3)及び個片(P4)は、それぞれ分別して回収することができる。
【0039】
個片(P3)は、風力や振動等を利用した公知の方法により、オレフィン系フィルム由来の個片と、キャップ及びリング部分由来の個片とにさらに分別され、オレフィン系フィルム由来の個片が後の工程S4に送られてもよい。また、回収された個片(P4)のうち、ポリエチレンテレフタレートの個片及びエステル系フィルムの個片は、ともに再生ペレットの作製に利用することができる。再生ペレットは、例えば再びペットボトルの容器本体を作製するための原料として用いられる。このため、工程S3は、スチレン系フィルムとエステル系フィルム及びポリエチレンテレフタレートとを分別するため、個片(P4)を回収し、これを再度異なる比重の液体に投入して、さらに細かく比重分離する工程を有してもよい。
【0040】
<7.乾燥工程>
工程S3で回収された個片(P3)は、後述する押出成形工程(S4)の前に、工程S3Aを経ることが好ましい。工程S3Aは、工程S3で回収された個片(P3)から水分を除去する乾燥工程である。乾燥方法は特に限定されず、熱風式乾燥機、真空乾燥機、及び送風機等を用いて乾燥することができる。乾燥温度は、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。乾燥温度を上記温度以下とすることで、オレフィン系樹脂が融着することを回避することができる。また、乾燥温度を上記温度以上とすることで、乾燥時間を短縮することができる。さらに、個片(P3)がオレフィン系フィルム、キャップ及びリング部分の個片を含む場合、工程S3で個片(P3)を乾燥させつつ、オレフィン系フィルム由来の個片と、キャップ及びリング部分由来の個片とを分別してもよい。この分別は、既に述べた公知の方法で行うことができる。
【0041】
乾燥工程において、個片(P3)から水分を除去することにより、工程S4で押出成形される樹脂フィルムに気泡が生じる等の製造不良を回避することができる。また、オレフィン系フィルム由来の個片を選別して工程S4に送る場合は、工程S4で押出成形される樹脂フィルムの着色がないか、殆どない。このため、ベースフィルムとして利用する場合の制約が少なく、より品質の高いフィルムラベルを作製することができる。
【0042】
<8.押出成形工程>
工程S4は、個片(P3)を押出機に供し、溶融混練を経て押出成形することで比重が1未満の樹脂フィルムを得る工程である。樹脂フィルムは、これに限定されないが、本実施形態では押出後に延伸され、熱収縮性を有するフィルムとして構成される。
【0043】
個片(P3)は、単独で混練されてもよいが、リサイクル原料ではない、他の原料組成物(以下、「追加原料」とも称する)とともに混練されることが好ましい。また、押出は共押出であってもよい。つまり、樹脂フィルムは、単層であっても多層であってもよく、個片(P3)由来の熱可塑性樹脂(以下、「再生原料(P3)」とも称する)と追加原料との配合、及び各層の厚みの兼ね合いを調整することにより、全体として比重が1未満となるように構成される。共押出法がTダイによるものである場合、積層の方法は、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、またはこれらを併用した方式のいずれも採用することができる。
【0044】
樹脂フィルムが多層構成である場合、再生原料(P3)は、内側の層に含有されることが好ましい。本実施形態では、追加原料としてオレフィン系樹脂が組み合わせられ、基材層と、基材層の両面に隣接してそれぞれ積層される隣接層とを備える、3層構成の樹脂フィルムが共押出される。隣接層は追加原料を含有し、基材層は再生原料(P3)及び追加原料を含有する。基材層は、基材層を構成する熱可塑性樹脂の合計100質量%に対して、再生原料(P3)を、1質量%以上含有することが好ましく、5質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以下含有することが好ましく、40質量%以下含有することがより好ましい。再生原料(P3)を、基材層に適量配合することで、樹脂フィルムの熱収縮率がより好ましい範囲となる一方、自然収縮が抑制される。また、樹脂フィルムの剛性が向上する。このような好ましい効果は、再生原料(P3)では、樹脂の結晶性が低下することが一因として考えられる。
【0045】
追加原料となるオレフィン系樹脂としては、例えばエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、石油樹脂、及びこれらのうち少なくとも2種類が混合された混合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、基材層及び隣接層のいずれにも用いることができる。以下、それぞれの樹脂について説明する。
【0046】
[エチレン系樹脂]
エチレン系樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、及びこれらの混合物等が挙げられる。この中では、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0047】
直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。α-オレフィンとしては、具体的には、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等からなるものが好ましく、2種類以上のα-オレフィンを含んでいても良い。直鎖状低密度ポリエチレンの比重は、通常0.910~0.940である。
【0048】
上述したような直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の市販品としては、エボリュー(プライムポリマー社製)、ユメリット(宇部丸善ポリエチレン社製)、ノバテック(日本ポリエチレン社製)等が挙げられる。
【0049】
[プロピレン系樹脂]
樹脂フィルムに熱収縮性を発現させる場合、プロピレン系樹脂としては、プロピレンを主成分として、α-オレフィンを共重合成分とする二元、または、三元ランダム共重合体が好ましい。共重合成分であるα-オレフィンの比率は1~10モル%であるのが好ましい。また、プロピレン系樹脂は、異なるプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体の混合物であってもよい。α-オレフィンについては、上述したとおりである。プロピレン系樹脂の比重は、通常0.900~0.910である。また、プロピレン系樹脂には、長鎖分岐ポリプロピレン、プロピレン系エラストマー等が含まれていてもよい。
【0050】
上述したようなプロピレン系樹脂の市販品としては、例えばAdsyl(Basell社製)、ノバテック(日本ポリプロ社製)、ウェイマックス(日本ポリプロ社製)、タフマー(三井化学社製)等が挙げられる。
【0051】
[環状オレフィン系樹脂]
環状オレフィン系樹脂は、樹脂フィルムの結晶性を低下させ、熱収縮率を高めるとともに、製造時の延伸性も高めることができる。環状オレフィン系樹脂とは、例えば(a)エチレンまたはプロピレンと環状オレフィンとのランダム共重合体、(b)該環状オレフィンの開環重合体またはα-オレフィンとの共重合体、(c)上記(b)の重合体の水素添加物、(d)不飽和カルボン酸及びその誘導体等による(a)~(c)のグラフト変性物等である。
【0052】
環状オレフィンとしては特に限定されず、例えば、ノルボルネン、6-メチルノルボルネン、6-エチルノルボルネン、5-プロピルノルボルネン、6-nーブチルノルボルネン、1-メチルノルボルネン、7-メチルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン等、ノルボルネン及びその誘導体が挙げられる。さらに、テトラシクロドデセン、8-メチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-エチルテトラシクロ-3-ドデセン、5,10-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン等、テトラシクロドデセン及びその誘導体が挙げられる。α-オレフィンについては、上述したとおりである。
【0053】
上述したような環状オレフィン系樹脂の市販品としては、アペル(三井化学社製)、TOPAS COC(ポリプラスチックス社製)、ZEONOR(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0054】
[石油樹脂]
石油樹脂は、ナフサの熱分解によって生成したC5留分やC9留分、あるいはこれらの混合物を重合して得られた樹脂、並びにこれらの水素添加物である。これらの中でも、樹脂フィルムの100℃以下における軟化を抑制したり、透明性や剛性を確保する観点より、一部または完全に水素化された脂環構造を有する、水添脂環族炭化水素樹脂が好ましい。また、C5留分やC9留分中の単一、または複数の成分を精製し重合したものであっても同じく使用することができる。
【0055】
上述したような石油樹脂の市販品としては、例えばアイマーブ(出光興産社製)、アルコン(荒川化学工業社製)、Regalite(Eastman社製)等が挙げられる。
【0056】
その他、樹脂フィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0057】
本実施形態の樹脂フィルムは、押出後に引取ロールにて巻き取りながら冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸される。延伸の方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法またはこれらの組み合わせのいずれも採用することができる。延伸温度は、これに限定されないが、65℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、120℃以下であることが好ましく、115℃以下であることがより好ましい。主収縮方向の延伸倍率は、これに限定されないが、3倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、7倍以下が好ましく、6倍以下がより好ましい。
【0058】
工程S4により、再生原料(P3)を含有する、比重が1未満の樹脂フィルムが作製される。この樹脂フィルムは、次の工程S5でインキ層が積層され、ペットボトルのフィルムラベルとして好適に利用することができる。しかし、これに限定されず、ペットボトル以外の容器のフィルムラベルとして用いることもできるし、樹脂フィルムのまま包装材として用いることもできる。
【0059】
<9.インキ層積層工程>
工程S5は、工程S4で作製された樹脂フィルムに印刷用インキによるインキ層を積層する工程である。インキ層の積層方法は、特に限定されない。例えば、隣接層に印刷を施し、隣接層の表面にインキ層を積層してもよい。この場合、印刷層を形成する印刷用インキは、例えば上述したもののように、アルカリ性水溶液中で膨潤または溶解しやすいものであることが好ましい。また、隣接層には印刷を施さず、インキ層が形成された印刷済みの熱可塑性樹脂フィルムを別途用意し、これを隣接層上に積層してもよい。この場合、後にインキ層と樹脂フィルムとを容易に比重分離する観点から、印刷済みの熱可塑性樹脂フィルムと隣接層との間に、水またはアルカリ性水溶液中で膨潤または溶解しやすい樹脂組成物から構成される中間層を設けることが好ましい。
【0060】
上記のいずれの場合も、印刷方法は特に限定されず、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷等、公知の方法を採用することができる。インキ層には、適宜オーバーコート層が積層されてもよい。
【0061】
工程S5では、例えばロール状に巻き取られた樹脂フィルムを順次繰り出しながらインキ層を順次積層していくことで、多数のフィルムラベルが繋がったフィルムラベルのシートが得られる。得られたシートを適切な幅にスリット後、両端をシールすることで筒状に繋がったフィルムラベルを作製する。シール方法は特に限定されず、ヒートシール、超音波シール、接着剤によるシール、及び有機溶剤によるシール等、公知の方法を採用することができる。
【0062】
このようにして作製された筒状のフィルムラベルを、ペットボトルに装着し、ペットボトルとともに加熱すると、フィルムラベルが熱収縮して、ペットボトルの外形に沿うようにペットボトルに密着する。このようにして、フィルムラベルが装着されたペットボトルが作製される。加熱方法は特に限定されず、熱風によるものであってもよいし、蒸気によるものであってもよい。
【0063】
工程S1~工程S5を経た再生品のフィルムラベルは、ペットボトルとともに流通させることができる。その後、再び出発原料とすることができる。出発原料から再生品への循環は、2回以上繰り返されることが好ましい。
【0064】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態に係る製造方法の流れを示すフローチャートである。第2実施形態に係る樹脂フィルムの製造方法は、出発原料から比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収するまでに含まれる工程が第1実施形態と共通であるが、各工程を実施する順序が第1実施形態とは異なる。以下、第1実施形態と共通の構成については説明を省略し、第1実施形態と相違する点について主に説明する。
【0065】
工程S21は、出発原料のフィルムラベルからインキ層を分離して、インキ層が除去された樹脂層を得るインキ層分離工程である。工程S21の実施方法は、工程S2と共通であるが、個片化されていないフィルムラベルに対して実行される点が第1実施形態とは異なる。このため、効率の観点からは、フィルムラベル単体を出発原料として用意することが好ましい。第2実施形態に係る製造方法は、工程S21の後、中和工程である工程S21A、洗浄工程である工程S21Bをさらに備えてもよい。工程S21A及び工程S21Bは、それぞれ第1実施形態の工程S2A及び工程S2Bと共通である。
【0066】
続く工程S22は、工程S21で得られた樹脂層(ペットボトルを含んでもよい)を個片化する個片化工程であり、第1実施形態の工程S1と共通である。インキ層分離工程の後に個片化工程を行うことで、粉砕機、裁断機、破砕機、シュレッダー及びスリッター等の機械が印刷用インキにより汚染されることが防止される。工程S22により、樹脂層の個片(ペットボトルの個片を含んでもよい)が得られる。
【0067】
工程S22以降の工程S23~S25は、工程S22で得られた個片に対して実行され、第1実施形態の工程S3~S5と共通である。このため、説明を省略する。
【0068】
[第3実施形態]
図3は、第3実施形態に係る製造方法の流れを示すフローチャートである。第3実施形態に係る樹脂フィルムの製造方法は、出発原料から比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収するまでに含まれる工程が第1及び第2実施形態と共通であるが、各工程を実施する順序がこれらの実施形態とは異なる。以下、第1実施形態と共通の構成については説明を省略し、第1実施形態と相違する点について主に説明する。
【0069】
工程S31は、出発原料を個片化し、出発原料が2つ以上に分離された個片を得る個片化工程であり、第1実施形態の工程S1と共通である。続く工程S32は、工程S31で得られた個片を比重が1未満の個片と、比重が1を超える個片とに分離する比重分離工程である。工程S32の実施方法は、第1実施形態の工程S3と共通であるが、インキ層分離工程に先立って行われる点で第1実施形態と異なる。工程S32により、出発原料の個片のうち、オレフィン系のフィルムラベルの個片、キャップの個片、及びリング部分の個片が、スチレン系フィルムラベルの個片、エステル系フィルムラベルの個片及び容器本体の個片から分離される。比重が1未満の個片は、まとめて後の工程S33に送られてもよいし、既に例示した公知の方法により、オレフィン系のフィルムラベルの個片が特に選別され、工程S33に送られてもよい。
【0070】
続く工程S33は、比重が1未満のオレフィン系のフィルムラベルの個片からインキ層を分離して、インキ層が除去された樹脂層の個片を得るインキ層分離工程である。工程S33の実施方法は、第1実施形態の工程S3と共通である。工程S33により、主としてオレフィン系樹脂から構成される樹脂層の個片が得られる。工程S33の前に工程S32を行うことにより、ペットボトルの容器本体の個片に分離したインキ層が付着することが防止される。第3実施形態に係る製造方法は、工程S33の後、中和工程である工程S33A、洗浄工程である工程S33B、及び乾燥工程である工程S33Cをさらに備えてもよい。工程S33A、工程S33B及び工程S33Cは、それぞれ工程S2A、工程S2B及び工程S3Aと共通である。さらに続く工程S34及び工程S35は、それぞれ工程S4及び工程S5と共通である。このため、説明を省略する。
【0071】
<10.特徴>
本実施形態に係る樹脂フィルムの製造方法によれば、比較的簡易な工程により、フィルムラベルに含まれる比重が1未満の樹脂フィルムを再利用することができる。特に、この樹脂フィルムから比重が1未満の樹脂フィルムを再生産することで、フィルムラベルからフィルムラベルへの循環が形成される。また、再生材料を利用することにより、オレフィン系樹脂フィルムの熱収縮性、剛性、及び自然収縮性を好ましいものとすることができる。
【0072】
<11.変形例>
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0073】
<11-1>
上記第2実施形態において、工程S22(個片化工程)及び工程S23(比重分離工程)を行う順序は前後してもよい。すなわち、工程S21(インキ層分離工程)、工程S21A(中和工程)、及び工程S21B(洗浄工程)の後に工程S23が行われ、その後に工程S22が行われてもよい。
【0074】
<11-2>
上記第3実施形態において、工程S32(比重分離工程)は、工程S31(個片化工程)に先立って行われてもよい。すなわち、工程S32の後に工程S31及び工程S33(インキ層分離工程)等が行われてもよい。この場合、工程S31及び工程S33は、いずれが先に行われてもよい。工程S32の後に工程S33、工程S33A(中和工程)及び工程S33B(洗浄工程)が続く場合は、その後の工程S31と工程S33C(乾燥工程)の順序も適宜変更することができる。
【0075】
<11-3>
上記第1~第3実施形態、及びこれらの変形例において、中和工程、洗浄工程及び乾燥工程は、適宜省略されてもよいし、各工程の間に適宜追加して実施されてもよい。また、上記第1~第3実施形態、及びこれらの変形例において、出発原料にペットボトルが含まれる場合、フィルムラベルに由来する原料の選別は上記したタイミングの他、各工程の間に適宜追加して実施されてもよい。
【0076】
<11-4>
上記押出成形工程で作製される樹脂フィルムが2層以上を有する多層構成である場合、押出成形工程は、第1の層と、第1の層とは異なる第2の層との間に水またはアルカリ性水溶液中で膨潤または溶解しやすい樹脂組成物から構成される中間層を形成することを含んでいてもよい。この場合、第1の層及び第2の層とともに中間層を共押出してもよいし、第1の層及び第2の層を別個に押出成形し、いずれかの層表面に中間層を形成する樹脂組成物を積層し、これを挟みこむように第1の層と第2の層とを積層してもよい。
【実施例】
【0077】
以下、本開示の実施例について詳細に説明する。但し、本開示は、これらの実施例に限定されない。
【0078】
<1.実施例及び参考例の準備>
基材層、及び基材層の両面に隣接して積層される隣接層を構成する原料として、表1に示す原料を表1に示す割合(単位は、質量%)で配合し、基材層及び隣接層を構成する樹脂組成物を作製した。実施例には、基材層を構成する原料に、比重が1未満の再生原料が配合された。この再生原料は、1度オレフィン系フィルムとして製造された樹脂フィルムから得られた材料であり、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状オレフィンコポリマー(COC)、石油樹脂を含むことが分かっている。再生原料以外の原料は、市販のリサイクルされていない原料であり、以下の製品が使用されている。
COC1:TOPAS(登録商標)、ポリプラスチックス社製
COC2:TOPAS(登録商標)、ポリプラスチックス社製
LLDPE:エボリュー(登録商標)、プライムポリマー社製
ランダムPPコポリマー:Adsyl(登録商標)、LyondellBasell社製
石油樹脂:アルコン、荒川化学工業社製
【表1】
【0079】
上記樹脂組成物を、基材層及び隣接層を構成する樹脂組成物ごとに溶融させ、Tダイから共押出して、30℃に冷却したロールで冷却固化し、未延伸の樹脂フィルムを作製した。これを温度90℃のテンター式延伸機で5倍延伸し、3層構成の樹脂フィルムを作製した。樹脂フィルム全体の厚み、基材層の厚み、及び隣接層の厚みは、実施例及び参考例で共通であった。また、参考例に係る樹脂フィルムの比重は0.94であった。
【0080】
<2.評価>
上記実施例及び参考例に係る樹脂フィルムについて、以下の評価を行った。
【0081】
<2-1.収縮率>
実施例及び参考例に係る樹脂フィルムの任意の箇所から、主収縮(TD)方向100mm、副収縮(MD)方向100mmのサンプルをそれぞれ3枚ずつ切り出した。各サンプルを温水に10秒間浸漬した後、取り出して20℃の水に10秒間浸漬し、再び取り出した。その後、各サンプルのTD方向の長さL(mm)を計測し、以下の式に従ってTD方向の収縮率(%)をそれぞれ算出した。実施例及び参考例に係る樹脂フィルムにつき、各サンプルの収縮率の平均値を熱収縮率とした。
収縮率(%)={(100-L)/100}×100
温水は、70℃、80℃、90℃の水を用い、それぞれについて上記のサンプルを3枚用意し、収縮率を算出した。
<2-2.自然収縮率>
実施例及び参考例に係る樹脂フィルムの任意の箇所から、MD方向100mm×TD方向100mmのサンプルをそれぞれ3枚ずつ切り出した。各サンプルを40℃に調整した低温恒温器(IL-82 ヤマト科学社製)に7日間静置した後、各サンプルのTD方向の長さL(mm)をそれぞれ計測した。各サンプルについて収縮率と同様の式に従ってTD方向の自然収縮率(%)を算出した。実施例及び参考例に係る樹脂フィルムにつき、各サンプルの自然収縮率の平均値を自然収縮率とした。
【0082】
<2-3.ヤング率>
実施例及び参考例に係る樹脂フィルムの任意の箇所から、MD方向250mm×TD方向5mmのサンプルをそれぞれ3枚ずつ、TD方向250mm×MD方向5mmのサンプルをそれぞれ3枚ずつ切り出した。これらのサンプルについて、ストログラフ(VE-1D 東洋精機製作所社製)を用い、ASTM D882に準拠した方法で、MD方向及びTD方向のヤング率(GPa)をそれぞれ測定した。
【0083】
<3.評価結果>
評価結果は以下の表2の通りとなった。
【表2】
【0084】
表2から分かる通り、再生原料を含有する実施例では、参考例と比較してMD方向、TD方向ともにヤング率が高くなり、剛性が向上した。また、実施例では、参考例と比較して80℃、90℃における収縮率が若干向上した一方で、自然収縮率が抑制されており、参考例と比較しても好ましい性能を有していた。
【符号の説明】
【0085】
S1~S5、S21~S25、S31~S35 工程(ステップ)
【要約】
【課題】フィルムラベルから比重1未満の樹脂フィルムを製造する方法を提供する。
【解決手段】樹脂フィルムの製造方法は、以下のことを備える。インキ層及び樹脂層を有するフィルムラベル、及び該フィルムラベルが装着された樹脂ボトルの少なくとも一方を出発原料として用意すること、出発原料から比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収すること、及び回収された熱可塑性樹脂を原料に含め、比重が1未満の樹脂フィルムを押出成形すること。比重が1未満の熱可塑性樹脂を回収することは、以下のことを含む。出発原料または樹脂層を個片化すること、フィルムラベルまたはフィルムラベルの個片からインキ層を分離して、インキ層が除去された樹脂層または樹脂層の個片を得ること、出発原料、樹脂層、またはこれらの個片を比重分離して、比重が1未満の出発原料、樹脂層、またはこれらの個片を回収すること。
【選択図】
図1