(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】火炎の外部漏出を防止可能な構造を有するESSモジュール及びそれを含むバッテリーパック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6563 20140101AFI20220425BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20220425BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20220425BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220425BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
H01M10/6563
H01M10/6555
H01M10/647
H01M10/613
H01M10/04 Z
(21)【出願番号】P 2020546108
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 KR2019017894
(87)【国際公開番号】W WO2020179994
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0025994
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ダル-モ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ホ・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-オ・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-ウク・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ビン・ユ
【審査官】坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-206605(JP,A)
【文献】特開2018-137065(JP,A)
【文献】特開2016-201333(JP,A)
【文献】特表2019-500736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/04
10/06-10/34
10/52-10/667
50/20-50/298
50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリーセルと複数の雲母隔壁アセンブリとが積層されて形成されたセル積層体、及び前記セル積層体の両側面に結合される一対のバスバーフレームを含むセル積層体アセンブリと、
前記セル積層体アセンブリを収容し、前記セル積層体アセンブリの前方、後方及び両側部に対応する位置に形成される複数の流路孔を備えるハウジングとを含み、
前記雲母隔壁アセンブリは、隣接したバッテリーセル同士の間及び前記セル積層体の最外郭に備えられ、基準温度未満では前記セル積層体の積層方向に沿って流路を形成し、基準温度以上では前記流路を遮断するように動作する、ESSモジュール。
【請求項2】
前記雲母隔壁アセンブリは、
上端及び下端の少なくとも一方に形成された流路溝を備える雲母隔壁と、
前記流路溝の一部を満たし、基準温度以上で膨張して前記流路溝を完全に満たす第1膨張グラファイトシートとを含む、請求項1に記載のESSモジュール。
【請求項3】
前記バッテリーセルは、パウチ型バッテリーセルであり、幅方向の両側部に貼り付けられるシーリングテープを備える、請求項1または2に記載のESSモジュール。
【請求項4】
前記ESSモジュールは、前記セル積層体の積層方向の両側部に密着して前記セル積層体を加圧し、前記バスバーフレームに固定される一対の加圧プレートをさらに含む、請求項3に記載のESSモジュール。
【請求項5】
前記ハウジングは、
前記セル積層体アセンブリの下部を覆う下部プレート、前記セル積層体アセンブリの前方を覆う前方プレート及び前記セル積層体アセンブリの後方を覆う後方プレートを含む下部ハウジングと、
前記セル積層体アセンブリの上部を覆う上部プレート及び前記セル積層体アセンブリの両側部を覆う一対の側方プレートを含む上部ハウジングとを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のESSモジュール。
【請求項6】
前記ESSモジュールは、前記前方プレートとセル積層体アセンブリとの間及び前記後方プレートとセル積層体アセンブリとの間に介在されるメッシュ隔壁アセンブリをさらに含む、請求項5に記載のESSモジュール。
【請求項7】
前記メッシュ隔壁アセンブリは、
上端及び下端の少なくとも一方に形成された結合溝を備えるメッシュ隔壁と、
前記結合溝を満たしながらメッシュ隔壁に結合され、基準温度以上で前記流路孔が消えるように膨張する第2膨張グラファイトシートとを含む、請求項6に記載のESSモジュール。
【請求項8】
前記ESSモジュールは、前記側方プレートとセル積層体アセンブリとの間に介在されるメッシュプレートをさらに含む、請求項5から7のいずれか一項に記載のESSモジュール。
【請求項9】
前記ESSモジュールは、前記セル積層体とメッシュプレートとの間に介在されて前記メッシュプレートと並んで配置され、複数の流路孔を備える第1雲母プレートをさらに含む、請求項8に記載のESSモジュール。
【請求項10】
前記ESSモジュールは、前記セル積層体とメッシュプレートとの間に配置されて前記メッシュプレートと垂直に配置され、前記バスバーフレームの内部空間を区画する第2雲母プレートをさらに含む、請求項9に記載のESSモジュール。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のESSモジュールを複数個含む、ESSパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎の外部漏出を防止可能な構造を有するESSモジュール及びそれを含むESSパックに関し、より具体的には、バッテリーセルのベンティング(venting)によるガスの外部排出は容易であるが、内部に火炎が発生した場合、火炎の外部漏出は効果的に防止可能な構造を有するESSモジュール及びそれを含むESSパックに関する。
【0002】
本出願は、2019年3月6日出願の韓国特許出願番号第10-2019-0025994号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ESS(energy storage system)モジュールは、火災テストに対応するため、UL9450A規定に準じて設計される。UL9450A規定による火災テストでは、ESSモジュール内部のバッテリーセルをヒーティングパッドで1分当り5~7℃の昇温速度で加熱してバッテリーセルに熱暴走を起こす。
【0004】
また、UL9450A規定を満たすためには、熱暴走が発生した場合、ESSモジュールの外部にはベンティングによるガス排出のみが行われ、内部で発生した火炎が外部に漏出してはならない。
【0005】
しかし、空冷式の冷却方式を採用しているESSモジュールの場合、空気の円滑な流れのため、バッテリーセルの積層方向に沿って流路が形成されているが、このような流路によって、特定のバッテリーセルで熱暴走が起きる場合、熱及び火炎が流路に沿って隣接したバッテリーセルに拡散し易いという問題がある。
【0006】
さらに、バッテリーセルの温度上昇によって熱暴走が起きる場合は、それに先立ってバッテリーセルのベンティングによるガス発生が伴う。このようなガスが円滑に外部へ排出されなければ、ESSモジュールの内圧増加による火炎の増加及び爆発などのさらに大きい問題を引き起こすため、ESSモジュールにはガスの円滑な排出が可能な構造が必要である。
【0007】
したがって、一般的な使用状況における内部バッテリーセルの円滑な冷却、及びベンティングによって発生したガスの円滑な排出が可能であるとともに、一部のバッテリーセルで発生した火炎が隣接したバッテリーセルに拡散することを最大限に防止可能な構造を有するESSモジュール構造の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、一般的な使用状況で内部バッテリーセルの円滑な冷却及びベンティングによって発生したガスの円滑な排出が可能であるとともに、一部のバッテリーセルで発生した火炎が隣接したバッテリーセルに拡散することを最大限に防止可能な構造を有するESSモジュール構造を提供することを目的とする。
【0009】
ただし、本発明が解決しようとする技術的課題は上述した課題に制限されず、他の課題は下記の発明の説明から当業者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明の一実施形態によるESSモジュールは、複数のバッテリーセルと複数の雲母隔壁アセンブリとが積層されて形成されたセル積層体、及び前記セル積層体の両側面に結合される一対のバスバーフレームを含むセル積層体アセンブリと、前記セル積層体アセンブリを収容し、前記セル積層体アセンブリの前方、後方及び両側部に対応する位置に形成される複数の流路孔を備えるハウジングとを含み、前記雲母隔壁アセンブリは、隣接したバッテリーセル同士の間及び前記セル積層体の最外郭に備えられ、基準温度未満では前記セル積層体の積層方向に沿って流路を形成し、基準温度以上では前記流路を遮断するように動作する。
【0011】
前記雲母隔壁アセンブリは、上端及び下端の少なくとも一方に形成された流路溝を備える雲母隔壁と、前記流路溝の一部を満たし、基準温度以上で膨張して前記流路溝を完全に満たす第1膨張グラファイトシートとを含み得る。
【0012】
前記バッテリーセルは、パウチ型バッテリーセルであり、幅方向の両側部に貼り付けられるシーリングテープを備え得る。
【0013】
前記ESSモジュールは、前記セル積層体の積層方向の両側部に密着して前記セル積層体を加圧し、前記バスバーフレームに固定される一対の加圧プレートをさらに含み得る。
【0014】
前記ハウジングは、前記セル積層体アセンブリの下部を覆う下部プレート、前記セル積層体アセンブリの前方を覆う前方プレート及び前記セル積層体アセンブリの後方を覆う後方プレートを含む下部ハウジングと、前記セル積層体アセンブリの上部を覆う上部プレート及び前記セル積層体アセンブリの両側部を覆う一対の側方プレートを含む上部ハウジングとを含み得る。
【0015】
前記ESSモジュールは、前記前方プレートとセル積層体アセンブリとの間及び前記後方プレートとセル積層体アセンブリとの間に介在されるメッシュ隔壁アセンブリをさらに含み得る。
【0016】
前記メッシュ隔壁アセンブリは、上端及び下端の少なくとも一方に形成された結合溝を備えるメッシュ隔壁と、前記結合溝を満たしながらメッシュ隔壁に結合され、複数の流路孔を備え、基準温度以上で前記流路孔が消えるように膨張する第2膨張グラファイトシートとを含み得る。
【0017】
前記ESSモジュールは、前記側方プレートとセル積層体アセンブリとの間に介在されるメッシュプレートをさらに含み得る。
【0018】
前記ESSモジュールは、前記セル積層体とメッシュプレートとの間に介在されて前記メッシュプレートと並んで配置され、複数の流路孔を備える第1雲母プレートをさらに含み得る。
【0019】
前記ESSモジュールは、前記セル積層体とメッシュプレートとの間に配置されて前記メッシュプレートと垂直に配置され、前記バスバーフレームの内部空間を区画する第2雲母プレートをさらに含み得る。
【0020】
また、上述した課題を解決するため、本発明の他の一実施形態によるESSパックは、本発明の一実施形態によるESSモジュールを複数個含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態によれば、ESSモジュールの一般的な使用状況では内部バッテリーセルの円滑な冷却及びベンティングによって発生したガスの円滑な排出が可能であるとともに、一部のバッテリーセルで発生した火炎が隣接したバッテリーセルに拡散することを遅延及び/または防止することができる。
【0022】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態によるESSモジュールを示した斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるESSモジュールを示した分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるESSモジュールを示した分解斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるESSモジュールを示した分解斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるESSモジュールに適用されるセル積層体アセンブリを示した分解斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるESSモジュールに適用されるセル積層体アセンブリを示した結合斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるESSモジュールから上部ハウジングを除去した形態を示した図であって、膨張グラファイトが膨張していない状態を示した図である。
【
図8】本発明に適用される雲母プレートアセンブリを示した図であって、膨張グラファイトが膨張していない状態を示した図である。
【
図9】本発明の一実施形態によるESSモジュールから上部ハウジングを除去した形態を示した図であって、膨張グラファイトが膨張した後の状態を示した図である。
【
図10】本発明に適用される雲母プレートアセンブリを示した図であって、膨張グラファイトが膨張した後の状態を示した図である。
【
図11】本発明に適用されるメッシュプレートアセンブリにおいて、膨張グラファイトに形成された流路孔が温度の上昇によって消える様子を示した図である。
【
図12】本発明に適用されるメッシュプレートアセンブリにおいて、膨張グラファイトに形成された流路孔が温度の上昇によって消える様子を示した図である。
【
図13】本発明に適用されるメッシュプレートアセンブリにおいて、膨張グラファイトに形成された流路孔が温度の上昇によって消える様子を示した図である。
【
図14】本発明に適用されるメッシュプレートアセンブリにおいて、膨張グラファイトに形成された流路孔が温度の上昇によって消える様子を示した図である。
【
図16】本発明の一実施形態によるESSモジュールの側方から眺めた内部構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0025】
図1~
図4を参照すると、本発明の一実施形態によるESSモジュールは、セル積層体アセンブリ100、下部ハウジング200、上部ハウジング300、冷却ファンブロック400、メッシュ隔壁アセンブリ500、メッシュプレート600、第1雲母プレート700及び第2雲母プレート800を含むことができる。
【0026】
図5及び
図6を参照すると、上記セル積層体アセンブリ100は、セル積層体110、バスバーフレーム120及び加圧プレート130を含む。
【0027】
上記セル積層体110は、複数のバッテリーセル111と複数の雲母隔壁アセンブリ112とが積層されて形成される。上記バッテリーセル111としてはパウチ型バッテリーセルが適用され得る。上記バッテリーセル111は、長手方向の両側からそれぞれ引き出される一対の電極リード111aを備える。上記バッテリーセル111の幅方向の両側部には、バッテリーセル111を構成するパウチケースの密封性を強化するためのシーリングテープTが貼り付けられる。パウチ型バッテリーセル111は、シーリングテープTの適用によってパウチケースの幅方向の両側部の密封性が長手方向の両側部の密封性よりも優れる特性を有するようになる。
【0028】
上記パウチ型バッテリーセル111のこのような特性によって、ESSモジュールの内圧が増加する場合、ベンティングによる内部ガスの排出は電極リード111aが引き出される方向、すなわちバッテリーセル111の長手方向に沿って行われるようになる。
【0029】
図5及び
図6とともに
図7~
図10を参照すると、上記雲母隔壁アセンブリ112は、隣接したバッテリーセル111同士の間及びセル積層体110の最外郭に備えられ、基準温度未満ではセル積層体110の積層方向に沿って流路を形成し、基準温度以上では流路を遮断するように動作する。ここで、上記流路とは、冷却のための空気の移動及びベンティング発生時のガスの移動のための通路を意味する。
【0030】
ESSモジュールの内部温度が基準温度未満であり、これによって上記流路が形成される場合、ESSモジュールの前方から後方に向かう方向または後方から前方に向かう方向(バッテリーセル111の積層方向に平行な方向)に沿って、バッテリーセル111の冷却のための空気及びベンティングによって排出されたガスが円滑に移動することができる。
【0031】
逆に、ESSモジュールの内部温度が基準温度以上であり、これによって上記流路が遮断される場合、ESSモジュールの前方から後方に向かう方向または後方から前方に向かう方向(バッテリーセル111の積層方向に平行な方向)に沿った空気、ガス及び火炎の移動が全て遮断される。
【0032】
すなわち、ESSモジュールの正常な使用状態では、セル積層体アセンブリ100の内部に形成された流路を通じて、冷却のための空気がバッテリーセル111及び雲母隔壁アセンブリ112の積層方向に平行な方向に沿って円滑に移動することができる。また、ESSモジュールを構成するバッテリーセル111のうち一部に短絡などの異常が生じ、これによってバッテリーセル111の内部温度が上昇してベンティングが発生する温度に到達した場合にも、ベンティングによってバッテリーセル111の外部に流出したガスが流路を通じてバッテリーセル111及び雲母隔壁アセンブリ112の積層方向に平行な方向に沿って円滑に移動することができる。
【0033】
しかし、温度がさらに上昇し、一部のバッテリーセル111で熱暴走が発生する温度以上の基準温度に到達すれば、流路が遮断される。これによって、一部バッテリーセル111の熱暴走によって発生した火炎がセル積層体110の内部で隣接したバッテリーセル111に拡散することが遮断されることで、熱暴走現象の急速な拡散を防止することができる。
【0034】
このような機能を実行するため、上記雲母隔壁アセンブリ112は、バッテリーセル111と対応する長さ及びバッテリーセル111よりも僅かに広い幅を有し、雲母隔壁112a及び第1膨張グラファイトシート112bを含む形態で具現される。
【0035】
図7及び
図8を参照すると、上記雲母隔壁112aは、幅がバッテリーセル111よりも僅かに広く形成され、これによってセル積層体110の上端及び下端でバッテリーセル111よりも突出した形態を有する。また、上記雲母隔壁112aは、その幅方向の上端及び/または下端に一定の深さ及び長さに形成された一対の第1流路溝Gを備える。このような第1流路溝Gには、第1流路溝Gの深さよりも低い高さを有する第1膨張グラファイトシート112bが取り付けられる。すなわち、上記第1膨張グラファイトシート112bは、第1流路溝Gの一部のみを満たし、これによって第1流路溝G内には一部空いた空間が発生するが、このような空いた空間が流路として機能する。
【0036】
上記雲母隔壁112aを構成する雲母は、花崗岩を構成する造岩物質の一つであって、優れた電気絶縁性を有し、加熱時に物性の変化が非常に少ない特性を有する。上記雲母は、500~1000℃の高温でも絶縁抵抗が略150kV/mm程度に維持され、環境にやさしい素材として石綿の代わりに使用することができる。また、上記雲母は、優れた難燃性を有し、燃焼または加熱時に煙が生じない特性を有する。このような特性から、セル積層体110を構成する際、隣接したバッテリーセル111同士の間に雲母材質の雲母隔壁112aを挿入することで、隣接したバッテリーセル111での熱暴走現象の拡散を防止することができる。
【0037】
上記第1膨張グラファイトシート112bを構成する膨張グラファイト粉末は、その組成を調節することで膨張が行われる温度を調節することができる。本発明においては、熱暴走によって火炎が発生する温度以上で第1膨張グラファイトシート112bが膨張するように粉末の組成を調節することができる。すなわち、上記第1膨張グラファイトシート112bは、
図9及び
図10に示されたように、火炎が発生する温度以上の基準温度で膨張して第1流路溝Gを完全に満たすようになる。このように第1流路溝Gが完全に満たされるようになれば、ESSモジュールの内部でセル積層体110の積層方向に沿って形成された流路が無くなり、これによって隣接したバッテリーセル111間の火炎の移動が完全に遮断される。
【0038】
図5及び
図6を参照すると、上記バスバーフレーム120は一対が備えられ、それぞれのバスバーフレーム120は電極リード111aが引き出される方向でセル積層体110に結合される。上記バスバーフレーム120は、リード載置部121及び一対のプレート支持部122を含む。
【0039】
上記リード載置部121は、電極リード111aが通過するリード引出スリット121aを備える。上記電極リード111aは、リード引出スリット121aを通ってセル積層体アセンブリ100の外側に引き出され、リード載置部121上に設けられるバスバー(図示せず)に溶接によって結合される。一つのバスバーに結合される電極リード111aの個数及び極性によって複数のバッテリーセル111間の電気的接続関係が決定される。
【0040】
上記プレート支持部122は、リード載置部121の幅方向の両側端部からリード載置部121に垂直な方向に沿って延びた形態を有し、第1固定スリット122a及び第2固定スリット122bを備える。
【0041】
上記第1固定スリット122aは、プレート支持部122の内側面に形成され、プレート支持部122の長手方向に沿って形成される。上記第1固定スリット122aは、対面する一対のプレート支持部122の内側面にすべて形成され、このような第1固定スリット122aにはESSモジュールの両側部を通じた火炎の外部漏出を防止するための第1雲母プレート700が挿入/固定される(
図15参照)。上記第1雲母プレート700の詳細については
図15を参照して後述する。
【0042】
上記第2固定スリット122bは、プレート支持部122の内側面に形成され、プレート支持部122の幅方向に沿って形成される。すなわち、上記第2固定スリット122bは、第1固定スリット122aに垂直な方向に沿って延びた形態を有し、これによって第2固定スリット122bが形成された個数だけ第1固定スリット122aが分割される。上記第2固定スリット122bには、火炎がバスバーフレーム120の内部空間からESSモジュールの前方及び後方に向かって移動することを防止するための第2雲母プレート800が挿入/固定される(
図16参照)。
【0043】
第2雲母プレート800の詳細については
図16を参照して後述する。
【0044】
図5及び
図6を参照すると、上記加圧プレート130は一対が備えられ、それぞれの加圧プレート130は、セル積層体110の積層方向の両側部に密着してセル積層体110を加圧する。すなわち、上記セル積層体110は、積層方向に沿って加圧された状態で一対の加圧プレート130の間に配置され、加圧プレート130はバスバーフレーム120に固定されてセル積層体110に対する加圧を維持する。
【0045】
このような加圧プレート130によるセル積層体110に対する加圧は、セル積層体110のエネルギー密度を向上させ、またバッテリーセル111の温度上昇によるベンティング発生時に電極リード111aの引出し方向へのベンティングを誘導する。すなわち、上記バッテリーセル111は、上述したように、パウチ型バッテリーセルが適用され得、この場合、バッテリーセル111の幅方向の両側部にはシーリングテープTが貼り付けられているため、両側部と比べて相対的に密封性に劣る電極リード111aの引出し部位を通じてガス及び火炎の噴出が誘導される。
【0046】
図1~
図4を再び参照すると、上記ハウジングは、セル積層体アセンブリ100を収容するものであって、セル積層体アセンブリ100の下部、前方及び後方を覆う下部ハウジング200、並びにセル積層体アセンブリ100の上部及び両側部を覆う上部ハウジング300を含む。
【0047】
上記下部ハウジング200は、セル積層体アセンブリ100の下部を覆う下部プレート210、セル積層体アセンブリ100の前方を覆う前方プレート220、及びセル積層体アセンブリ100の後方を覆う後方プレート230を含む。上記前方プレート220及び後方プレート230は、セル積層体110に形成される流路と連通される複数の流路孔Hを備える。
【0048】
上記上部ハウジング300は、セル積層体アセンブリ100の上部を覆う上部プレート310、及びセル積層体アセンブリ100の両側部を覆う一対の側方プレート320を含む。上記側方プレート320は、バスバーフレーム120を覆い、またリード載置部121及びプレート支持部122で囲まれて形成されるバスバーフレーム120の内部空間と連通される複数の流路孔Hを備える。
【0049】
下部ハウジング200及び上部ハウジング300に備えられた上記流路孔Hは、冷却のための空気の移動通路及びベンティング発生時にガスの移動通路として機能する。
【0050】
図1~
図4をさらに参照すると、上記冷却ファンブロック400は、ハウジングの外部に設けられるが、前方プレート220及び/または後方プレート230に隣接して設けられる。上記冷却ファンブロック400の内部空間は、前方プレート220及び/または後方プレート230に形成された流路孔Hと連通される。また、上記冷却ファンブロック400の内部には、冷却のためのファン(図示せず)が備えられ得、冷却ファンの駆動によって前方プレート220から後方プレート230に向かう方向または後方プレート230から前方プレート220に向かう方向に冷却のための空気が移動する。
【0051】
図4とともに
図11~
図14を参照すると、上記メッシュ隔壁アセンブリ500は、前方プレート220とセル積層体アセンブリ100との間及び後方プレート230とセル積層体アセンブリ100との間に介在され、空気及びガスを通過させて火炎を遮断する機能を果たす。
【0052】
上記メッシュ隔壁アセンブリ500は、メッシュ隔壁510及び第2膨張グラファイトシート520を含む形態で具現される。上記メッシュ隔壁510は、冷却のための空気及びベンティングによって発生したガスは通過させて火炎の通過は最小化できるように、微細な多数の空隙が形成されたメッシュ状のプレートであって、その上端及び下端の少なくとも一方に一定の幅及び長さで形成された結合溝511を備える。
【0053】
上記第2膨張グラファイトシート520は、結合溝511を満たしながらメッシュ隔壁510に結合され、複数の流路孔Hを備える。上記第2膨張グラファイトシート520に形成された流路孔Hは、上述した前方プレート220及び後方プレート230に形成された流路孔Hと対応する位置に形成される。
【0054】
上記第2膨張グラファイトシート520は、上述した第1膨張グラファイトシート112bと同様に、基準温度以上で膨張し、このような膨張によって第2膨張グラファイトシート520に形成された複数の流路孔Hが消え、これによってセル積層体アセンブリ100の前方及び/または後方に沿って噴出される火炎が第2膨張グラファイトシート520を通過できなくなる。
【0055】
図1~
図4を再び参照すると、上記メッシュプレート600は一対で備えられ、それぞれのメッシュプレート600は側方プレート320とセル積層体アセンブリ100との間に介在される。上記メッシュプレート600は、上述したメッシュ隔壁510と同様に、冷却のための空気及びベンティングによって発生したガスは通過させて火炎の通過は最小化できるように、微細な多数の空隙が形成されたメッシュ状のプレートである。
【0056】
このようなメッシュプレート600の適用によって、バッテリーセル111の長手方向に沿って噴出されるガスはESSモジュールの外部へと円滑に排出されるが、バッテリーセル111の長手方向に沿ってESSモジュールの外部に噴出される火炎は漏出量を最小化することができる。
【0057】
次いで、
図15及び
図16を参照すると、上記第1雲母プレート700は、セル積層体110とメッシュプレート600との間に介在される。上記第1雲母プレート700は、プレート支持部122に形成された第1固定スリット122aに挿入/固定される。上記第1雲母プレート700は、メッシュプレート600と並んで配置され、電極リード111aの引き出し方向に沿って集中的に噴出されるガスの円滑な排出のための複数の流路孔Hを備える。
【0058】
上記第1雲母プレート700は、電極リード111aの引き出し方向に沿ってESSモジュールの外部へと火炎が噴出されることを最小化するため、二重で設けることができる。すなわち、上記第1雲母プレート700は、電極リード111aの引き出し方向に沿って離隔して配置される二列の隔壁を形成することができる。
【0059】
上記第2雲母プレート800は、セル積層体110とメッシュプレート600との間に配置され、メッシュプレート600と垂直に配置される。上記第2雲母プレート800は、プレート支持部122に形成された第2固定スリット122bに挿入/固定される。上記第2雲母プレート800は複数個が備えられる。複数の上記第2雲母プレート800は、バスバーフレーム120の内部空間、すなわち、リード載置部121及び一対のプレート支持部122によって囲まれて形成される空間を区画するように、ESSモジュールの前方から後方に向かう方向に沿って離隔して設けられる。
【0060】
このような第2雲母プレート800は、電極リード111aの引き出し方向に沿って噴出された火炎がバスバーフレーム120の内部空間で電極リード111aの引き出し方向に垂直な方向に沿って移動することを防止する。
【0061】
一方、本発明において、上記第1雲母プレート700及び/または第2雲母プレート800は、メッシュプレート600による火炎の漏出防止効果を極大化するために適用されるものである。したがって、本発明によるESSモジュールは、第1雲母プレート700及び/または第2雲母プレート800を省略し、メッシュプレート600のみを適用した形態も含む。
【0062】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
100 セル積層体アセンブリ
110 セル積層体
111 バッテリーセル
111a 電極リード
112 雲母隔壁アセンブリ
112a 雲母隔壁
112b 第1膨張グラファイトシート
120 バスバーフレーム
121 リード載置部
121a リード引出スリット
122 プレート支持部
122a 第1固定スリット
122b 第2固定スリット
130 加圧プレート
200 下部ハウジング
210 下部プレート
220 前方プレート
230 後方プレート
300 上部ハウジング
310 上部プレート
320 側方プレート
400 冷却ファンブロック
500 メッシュ隔壁アセンブリ
510 メッシュ隔壁
511 結合溝
520 第2膨張グラファイトシート
600 メッシュプレート
700 第1雲母プレート
800 第2雲母プレート