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特許7062166硫黄-炭素複合体、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】硫黄-炭素複合体、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20220425BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220425BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220425BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220425BHJP
   C01B 32/00 20170101ALI20220425BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M4/36 A
H01M4/13
C01B32/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020519363
(86)(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 KR2018012662
(87)【国際公開番号】W WO2019103326
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】10-2017-0158293
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウイ・テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】クォンナム・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0032190(KR,A)
【文献】特表2020-533768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/38
H01M 4/62
H01M 4/36
H01M 4/13
C01B 32/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性炭素材;及び
前記多孔性炭素材の内部及び表面の中の少なくとも一部に硫黄がコーティングされた硫黄-炭素複合体において、
前記硫黄-炭素複合体の気孔体積が0.180ないし0.300cm/gであり、
前記硫黄-炭素複合体の平均気孔サイズが40.0ないし70.0nmである、硫黄-炭素複合体。
【請求項2】
前記硫黄-炭素複合体の気孔体積が0.200ないし0.250cm/gであり、
前記硫黄-炭素複合体の平均気孔サイズが50.0ないし65.0nmである、請求項1に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項3】
前記多孔性炭素材の直径が100nmないし50μmである、請求項1または2に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項4】
前記硫黄-炭素複合体は、硫黄と多孔性炭素材が7.5:2.5ないし4:6の重量比で含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項5】
前記多孔性炭素材は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維及び活性炭素からなる群から選択された1種以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体を含む、リチウム-硫黄電池用正極。
【請求項7】
(a)1nmないし1μmの粒径を有する硫黄と多孔性炭素材をミキサーで混合する段階;及び
(b)前記混合された硫黄と多孔性炭素材を乾燥する段階;を含み、
前記(b)段階の乾燥は、130℃ないし180℃のオーブンで15分ないし2時間乾燥する、硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項8】
前記ミキサーによる混合は500ないし3000rpmの速度で混合する、請求項7に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項9】
前記ミキサーによる混合は15分ないし3時間混合する、請求項7または8に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項10】
前記硫黄-炭素複合体は、その粒度分布でd90が100ないし140μmで、d10が7ないし15μmで、d50が30ないし70μmである、請求項7から9のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項11】
前記硫黄-炭素複合体は、その粒度分布でd90が110ないし130μmで、d10が8ないし12μmで、d50が40ないし60μmである、請求項7から10のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項12】
前記多孔性炭素材は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維及び活性炭素からなる群から選択された1種以上である、請求項7から11のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項13】
前記(b)段階の乾燥は、130ないし155℃のオーブンで15分ないし30分乾燥する、請求項7から12のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項14】
前記硫黄-炭素複合体は、硫黄と多孔性炭素材が7.5:2.5ないし4:6の重量比で含まれる、請求項7から13のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項15】
前記ミキサーが、ヘンシェルミキサーである、請求項7から14のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項16】
請求項6に記載の正極;負極;及び電解質;を含むリチウム-硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月24日付け韓国特許出願第10-2017-0158293号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、硫黄-炭素複合体、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池は1回放電のみ可能な一次電池と違って、持続的な充電及び放電が可能な電気貯蔵器具として1990年代以後携帯用電子機器の重要電子部品として位置づけられた。特に、リチウムイオン二次電池は、1992年日本ソニー(Sony)社によって常用化された以来、スマートフォン、デジカメ、ノートパソコンなどのような携帯用電子機器の核心部品で情報化時代をリードしてきた。
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池はその活用領域をもっと広げながら清掃機、電動工具の電源と電気自転車、電気スクーターのような分野に使用される中型電池から、電気自動車(electric vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle;HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug―in hybrid electric vehicle;PHEV)、各種ロボット及び大型電力貯蔵装置(Electric Storage System;ESS)のような分野に使用される大容量電池に至るまで速い速度で需要を増やしている。
【0005】
しかし、現在まで販売されている二次電池の中で最も優れる特性を有するリチウム二次電池も電気自動車、PHEVのような輸送器具に活発に使われるには幾つかの問題点があり、その中で最大の問題点は容量の限界である。
【0006】
リチウム二次電池は、基本的に正極、電解質、負極などのような素材で構成され、その中で正極及び負極素材が電池の容量(capacity)を決めるので、リチウムイオン二次電池は正極と負極の物質的な限界によって容量に制約を受ける。特に、電気自動車、PHEVのような用途で使われる二次電池は、一回充電した後で最大限に長く使えなければならないので、二次電池の放電容量がとても重要視される。電気自動車の販売に最大の制約点として指摘されることは、1回充電後に走行できる距離が一般ガソリンエンジン自動車より非常に短いという点である。
【0007】
このようなリチウム二次電池の容量の限界は、多く努力するにもかかわらず、リチウム二次電池の構造及び材料の制約によって完全に解決することが難しい。よって、リチウム二次電池の容量問題を根本的に解決するためには、既存の二次電池の概念を超える新概念二次電池の開発が求められる。
【0008】
リチウム-硫黄二次電池は、既存のリチウムイオン二次電池の基本原理であるリチウムイオンの層状構造の金属酸化物及び黒鉛への挿入/脱離(intercalation)反応によって決定される容量限界を超え、遷移金属の代替及び費用節減などをもたらす新しい高容量、低価電池システムである。
【0009】
リチウム-硫黄二次電池は、正極でリチウムイオンと硫黄の変換(conversion)反応(S+16Li+16e→8LiS)から出る理論容量が1,675mAh/gに至るし、負極はリチウム金属(理論容量:3,860mAh/g)を使用して電池システムの超高容量化が可能である。また、放電電圧は約2.2Vであるため、理論的に正極、負極活物質の量を基準にして2,600Wh/kgのエネルギー密度を示す。これは層状構造の金属酸化物及び黒鉛を使用する常用リチウム二次電池(LiCoO/グラファイト(graphite))のエネルギー理論的エネルギー密度である400Wh/kgよりも6倍ないし7倍ほど高い数値である。
【0010】
リチウム-硫黄二次電池は、2010年頃、ナノ複合体の形成を通じて電池性能が画期的に改善されることができることが知られた以来、新しい高容量、環境にやさしい、低価のリチウム二次電池として注目されていて、現在次世代電池システムで世界的に集中的な研究が行われている。
【0011】
現在まで明かされたリチウム-硫黄二次電池の主な問題点の一つは、硫黄の電気伝導度が5.0×10-14S/cmほどで不導体に近くて電極で電気化学反応が容易ではなく、とても大きい過電圧によって実際の放電容量及び電圧が理論にずっと及ばないという点である。初期研究者らは、硫黄と炭素の機械的ボールミリングやカーボンを利用した表面コーティングのような方法で性能を改善しようとしたが、大きな効果はなかった。
【0012】
電気伝導度によって電気化学反応が制限される問題を効果的に解決するためには、他の正極活物質の一つであるLiFePOの例のように(電気伝導度:10-9ないし10-10S/cm)、粒子の大きさを数十ナノメートル以下の大きさに小さくして、伝導性物質で表面処理する必要があるが、このために様々な化学的(ナノサイズの多孔性炭素ナノ構造体または金属酸化物構造体への溶融含浸(melt impregnation))、物理的方法(高エネルギーボールミル(high energy ball milling))などが報告されている。
【0013】
もう一つのリチウム-硫黄二次電池と係る主な問題点は、放電中に生成される硫黄の中間生成体であるリチウムポリスルフィド(lithium polysulfide)の電解質への溶解である。放電が進められることによって硫黄(S)はリチウムイオンと連続的に反応してS→Li→(Li)→Li→Li→LiSなどでその相(phase)が連続的に変わるようになるが、その中で硫黄が長く並んだチェーン形態のLi、Li(リチウムポリスルフィド)などは、リチウムイオン電池で使用される一般的な電解質で容易に溶解される性質がある。このような反応が発生すれば、可逆正極容量が大きく減るだけでなく、溶解されたリチウムポリスルフィドが負極へ拡散されて様々な副反応(side reaction)を起こすようになる。
【0014】
リチウムポリスルフィドは、特に、充電過程中にシャトル反応(shuttle reaction)を起こすが、これによって充電容量がずっと増加するようになって充放電効率が急激に低下する。最近、このような問題を解決するために様々な方法が提示されたが、大きく電解質を改善する方法、負極の表面を改善する方法、正極の特性を改善する方法などで分けることができる。
【0015】
電解質を改善する方法は、新規組成の機能性液体電解質、高分子電解質、イオン性液体(ionic liquid)など新しい電解質を使ってポリスルフィドの電解質への溶解を抑制したり粘度などを調節することで負極への分散速度を制御してシャトル反応を最大限に抑制する方法である。
【0016】
負極表面に形成されるSEIの特性を改善してシャトル反応を制御する研究が活発に行われているが、代表的にLiNOのような電解質添加剤を投入してリチウム負極の表面にLiNO、LiSOなどの酸化膜を形成して改善する方法、リチウム金属の表面に厚い機能型SEI層を形成する方法などがある。
【0017】
最後に、正極の特性を改善する方法は、ポリスルフィドの溶解を防ぐことができるように正極粒子の表面にコーティング層を形成したり、溶解されたポリスルフィドを取ることができる多孔性物質を添加する方法などがあるが、代表的に伝導性高分子で硫黄粒子が入っている正極構造体の表面をコーティングする方法、リチウムイオンが伝導される金属酸化物で正極構造体の表面をコーティングする方法、リチウムポリスルフィドを多量吸収できる、比表面積が広くて気孔が大きい多孔性金属酸化物を正極に添加する方法、炭素構造体の表面にリチウムポリスルフィドを吸着することができる官能基(functional group)を付着する方法、グラフェン(graphene)あるいは参加グラフェン(graphene oxide)などを利用して硫黄粒子を覆う方法などが示された。
【0018】
リチウム硫黄電池の正極活物質である硫黄/炭素複合体は、その形態、構造、比表面積、気孔の体積などによって、正極の反応性及びサイクル安定性に大きい影響を及ぼす。硫黄と炭素の接触範囲が極大化され、比表面積及び気孔の体積が大きいほど、電気伝導性及びリチウムイオン伝導性が確保され、高性能のリチウム-硫黄電池駆動を期待することができる。
【0019】
したがって、前記条件を充たしながら、安価で大量生産が可能な硫黄/炭素複合体製造工程の開発が必要な実情がある。
【0020】
これに係って、既存の硫黄-炭素複合体の製造工程は、ボールミル工程を通じた硫黄と炭素粉末の乾式混合後、加熱による硫黄の液相含浸過程を経るようになるが、ボールミル工程を通じる硫黄と炭素を混合する時、炭素粒子が粉砕されて粒子の大きさが小さくなって気孔の体積が減少するので、これを改善できる余地が存在する。
【0021】
したがって、このような問題を複合的に解決し、リチウム-硫黄電池の性能を改善するための新しい技術の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0135961号公報
【文献】韓国公開特許第10-2016-0037084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
前述した問題点を解決するために、本発明の発明者らはリチウム-硫黄電池の正極に適用可能な硫黄-炭素複合体の製造過程において、ヘンシェルミキサーを利用して硫黄と炭素を混合する場合、炭素粒子の大きさ及び気孔体積が減少することなく均一に硫黄-炭素複合体を製造することができるという事実を確認して本発明を完成した。
【0024】
したがって、本発明の目的は、ヘンシェルミキサーを利用して炭素粒子の大きさ及び気孔体積が減少することなく、硫黄-炭素複合体を製造してこれを電極に適用する場合、既存に比べて向上された初期放電容量及び高率容量が発現される硫黄-炭素複合体及びこの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的を達成するために、本発明は、
多孔性炭素材;及び
前記多孔性炭素材の内部及び表面の少なくとも一部に硫黄がコーティングされた硫黄-炭素複合体において、
前記硫黄-炭素複合体の気孔体積が0.180ないし0.300cm/gで、
前記硫黄-炭素複合体の平均気孔サイズが40.0ないし70.0nmである、硫黄-炭素複合体を提供する。
【0026】
また、本発明は、
(a)1nmないし1μmの粒径を有する硫黄と多孔性炭素材をヘンシェルミキサーで混合する段階;及び
(b)前記混合された硫黄と多孔性炭素材を乾燥する段階;を含む硫黄-炭素複合体の製造方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、前記硫黄-炭素複合体を含む、リチウム-硫黄電池用正極を提供する。
【0028】
また、本発明は、前記正極;負極;及び電解質;を含むリチウム-硫黄電池を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の硫黄と炭素材をヘンシェルミキサーで混合して硫黄-炭素複合体を製造する場合、炭素粒子の大きさ及び気孔体積が減少することなく均一に硫黄-炭素複合体を製造することができ、前記工程で製造された硫黄-炭素複合体をリチウム-硫黄電池の正極活物質で適用する場合、向上された初期放電容量及び高率容量が発現される効果があって、既存のボールミル工程に比べて工程が単純で大量生産が容易という長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明によるヘンシェルミキサーの内部構造イメージを示す。
図2】本発明の実施例による硫黄-炭素複合体を撮影したSEM写真である。
図3】本発明の比較例による硫黄-炭素複合体を撮影したSEM写真である。
図4】本発明の実施例及び比較例による硫黄-炭素複合体の気孔の大きさを測定した結果を示すグラフである。
図5】本発明の実施例及び比較例の硫黄-炭素複合体で製造されたリチウム-硫黄電池の放電容量を示すグラフである。
図6】本発明の実施例及び比較例の硫黄-炭素複合体で製造されたリチウム-硫黄電池の寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、添付の図面を参照して詳しく説明する。しかし、本発明は幾つか異なる形態で具現されてもよく、本明細書に限定されない。
【0032】
図面では本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分を省略し、明細書全体にわたって類似の部分に対しては類似の図面符号を使用した。また、図面で表示された構成要素の大きさ及び相対的な大きさは実際の縮尺とは無関係であり、説明の明瞭性のために縮小または誇張されたことであってもよい。
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は、通常的や辞書的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0034】
本明細書で使われている用語「複合体(composite)」は、二つの以上の材料が組み合わされて物理的、化学的に異なる相(phase)を形成しながらより有効な機能を発現する物質を意味する。
【0035】
リチウム-硫黄電池は正極活物質で硫黄を、負極活物質でリチウム金属を使用する。リチウム-硫黄電池の放電時、負極ではリチウムの酸化反応が起きるし、正極では硫黄の還元反応が発生する。この時、還元された硫黄は、負極から移動されてきたリチウムイオンと結合してリチウムポリスルフィドに変換され、最終的にリチウムスルフィドを形成する反応を伴う。
【0036】
リチウム-硫黄電池は、既存のリチウム二次電池に比べて遥かに高い理論エネルギー密度を有し、正極活物質で使われる硫黄は資源が豊富で安価であるため、電池の製造単価を下げることができる長所で次世代電池として脚光を浴びている。
【0037】
このような長所にもかかわらず、正極活物質である硫黄の低い電気伝導度及びリチウムイオンの伝導特性により、実際の駆動においては理論的エネルギー密度全部を具現することが困難である。
【0038】
硫黄の電気伝導度を改善するために、炭素、高分子など伝導性素材との複合体形成、コーティングなどの方法が使用されている。多くの方法の中で、硫黄-炭素複合体が正極の電気伝導性を改善することに効果的であるため、正極活物質で最も多く使用されているが、充放電容量及び効率の側面ではまだ十分ではない。リチウム-硫黄電池の容量と効率は、正極に伝達されるリチウムイオンの量によって変わることがある。よって、硫黄-炭素複合体の内部へリチウムイオンを容易に伝達させることが電池の高容量及び高効率化に重要である。
【0039】
硫黄-炭素複合体
ここで、本発明では硫黄-炭素複合体と電解液との反応性及びリチウム-硫黄電池の容量及び効率特性の改善効果を確保するために、多孔性炭素材の内部及び表面に硫黄がコーティングされた硫黄-炭素複合体を提供する。前記多孔性炭素材の内部は、多孔性炭素材の気孔内部を含む意味である。
【0040】
本発明の硫黄-炭素複合体は、多孔性炭素材;及び前記多孔性炭素材の内部及び表面の中で少なくとも一部に硫黄がコーティングされたものである。
【0041】
本発明の硫黄-炭素複合体の多孔性炭素材は、正極活物質の硫黄が均一で安定的に固定化される骨格を提供し、硫黄の電気伝導度を補完して電気化学反応が円滑に行われるようにする。
【0042】
前記多孔性炭素材の形態は、球形、棒型、針状、板状、チューブ型またはバルク型で、リチウム-硫黄電池に通常使用されるものであれば制限せずに使用されてもよい。
【0043】
前記多孔性炭素材は、多孔性構造であるか比表面積が高いものとして当業界で通常使われるものであれば、いずれも構わない。例えば、前記多孔性炭素材としては、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノ繊維(GNF)、カーボンナノ繊維(CNF)、活性化炭素繊維(ACF)などの炭素繊維;及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに制限されない。
【0044】
前記多孔性炭素材粒子の直径は100nmないし50μmのものを使用することができる。
【0045】
本発明の硫黄-炭素複合体の硫黄は、無機硫黄(S)、Li(n≧1)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C、x=2.5ないし50、n≧2]からなる群から選択された1種以上であってもよい。好ましくは無機硫黄(S)を使用してもよい。
【0046】
また、前記硫黄は前記多孔性炭素材の気孔内部だけでなく表面に位置し、この時、前記多孔性炭素材の外部全体表面の100%未満、好ましくは1ないし95%、より好ましくは60ないし90%の領域に存在してもよい。前記硫黄が多孔性炭素材の表面で前記範囲内にある時、電子伝達面積及び電解液の濡れ性の面で最大効果を示すことができる。具体的に、前記範囲の領域で硫黄が多孔性炭素材の表面に薄くて均一に含浸されるので、充放電過程で電子伝達接触面積を増加させることができる。もし、前記硫黄が多孔性炭素材の表面の100%の領域に位置する場合、前記多孔性炭素材が完全に硫黄で覆われて電解液の濡れ性が落ちるし、電極内に含まれる導電材との接触性が低下して電子が伝達されないため、反応に参加することができなくなる。
【0047】
前記硫黄-炭素複合体は、構造体内で様々な大きさの気孔及び3次元的に相互連結され、規則的に整列された気孔によって硫黄を高い含量に担持することができる。これにより、電気化学反応で溶解性があるポリスルフィドが生成されても硫黄-炭素複合体内部に位置するようになれば、ポリスルフィドが溶出する時も3次元で絡まっている構造が維持され、正極構造が崩壊する現象を抑制することができる。その結果、前記硫黄-炭素複合体を含むリチウム-硫黄電池は、高ローディング(high loading)でも高容量を具現することができる長所がある。本発明による硫黄-炭素複合体の硫黄ローディング量は、1~20mg/cmになってもよい。
【0048】
本発明による硫黄-炭素複合体において、前述した硫黄と多孔性炭素材の重量比は7.5:2.5ないし4:6、好ましくは7.5:2.5ないし6:4であってもよい。もし、前記硫黄の含量が前記重量比範囲の未満である場合、多孔性炭素材の含量が増加することによって正極スラリーを製造する時に必要なバインダー添加量が増える。このようなバインダー添加量の増加は、結局電極の面抵抗を増加させ、電子移動(electron pass)を防ぐ絶縁体の役目をしてセル性能を低下させることがある。逆に、硫黄の含量が前記重量比範囲を超える場合、硫黄同士集まるようになるし、電子を受けにくくて電極反応に直接参加することが難しくなることがあって、特に後述する気孔体積、比表面積及び平均気孔サイズを充たすことができなくなる。
【0049】
一般に、多孔性炭素材は様々な炭素材質の前駆体を炭化させて製造されてもよく、このような多孔性炭素材は内部に約40nmないし70μm範囲の平均直径を持つ気孔を有することになる。
【0050】
しかし、本発明の硫黄-炭素複合体は、前記多孔性炭素材の内部及び外部表面の一部に硫黄がコーティングされ、具体的に硫黄が多孔性炭素材の気孔内部にコーティングされるので、多孔性炭素材の気孔の大きさに変化が生じる。
【0051】
既存の方式によって製造された硫黄-炭素複合体の場合、製造に使われる硫黄粒子の大きさが数十マイクロメートル水準に大きいため、このような硫黄粒子を多孔性炭素材の気孔内部にコーティングしても、多孔性炭素材の気孔内部に硫黄粒子が容易に進入できなくなるし、むしろ気孔の入口を硫黄粒子が防いでしまう問題があった。よって、硫黄-炭素複合体の比表面積、気孔の大きさ及び気孔体積を測定する時、むしろ小さくなる問題点が発生した。
【0052】
しかし、本発明の製造方法によって硫黄-炭素複合体を製造する場合は、多孔性炭素材の粒子が粉砕されて粒子の大きさが小さくなる問題点を改善して気孔の体積が減少しない効果を有するので、1マイクロメートル未満の粒子の大きさを有する硫黄を使用して多孔性炭素材の気孔内部に硫黄を薄くて均一にコーティングすることができる。
【0053】
したがって、本発明の硫黄-炭素複合体は、多孔性炭素材の粒子の大きさが小さくなることを防ぐことができるので、硫黄-炭素複合体の気孔体積が0.180ないし0.300cm/gであってもよく、好ましくは0.200ないし0.250cm/gであってもよい。
【0054】
また、多孔性炭素材の粒子の大きさが小さくなることが防止されるので、前記硫黄-炭素複合体の平均気孔サイズが40.0ないし70.0nmであってもよく、好ましくは50.0ないし65.0nmであってもよい。
【0055】
本発明の硫黄-炭素複合体が前記範囲の気孔体積及び平均気孔サイズを充たす場合、硫黄が多孔性炭素材の気孔内部に薄くて均一にコーティングされ、電極に適用するようになれば優れた放電容量及び寿命特性を有するようになる。前記範囲を充たせない場合には、硫黄が気孔内にほとんどコーティングされていないか、または硫黄が気孔の入口を防いでしまったことなので、電極で使用する場合、使用者が必要とする放電容量及び寿命特性を充たすことができなくなる。
【0056】
硫黄-炭素複合体の製造方法
本発明の硫黄-炭素複合体は、(a)1nmないし1μmの粒径を有する硫黄と多孔性炭素材をヘンシェルミキサーで混合する段階;及び(b)前記混合された硫黄と多孔性炭素材を乾燥する段階;を通じて製造される。
【0057】
先ず、本発明の硫黄-炭素複合体の製造方法は、1nmないし1μmの粒径を有する硫黄と多孔性炭素材をヘンシェルミキサーで混合する(a)段階を含む。
【0058】
前記(a)段階では、硫黄と多孔性炭素材を混合する時、硫黄と多孔性炭素材の重量比は7.5:2.5ないし4:6、好ましくは7.5:2.5ないし6:4であってもよい。もし、前記硫黄の含量が前記重量比範囲の未満である場合、多孔性炭素材の含量が増加することによって正極スラリーを製造する時に必要なバインダー添加量が増える。このようなバインダー添加量の増加は、結局電極の面抵抗を増加させ、電子移動(electron pass)を防ぐ絶縁体の役目をするようになってセル性能を低下することがある。逆に、硫黄の含量が前記重量比範囲を超える場合、硫黄同士で集まるようになって、電子を受けにくくなるので電極反応に直接参加することが難しくなるし、特に後述する気孔体積、比表面積及び平均気孔サイズを充たすことができなくなる。
【0059】
本発明で使用されたヘンセルミックキサーは、図1で見るように、特殊製作されたインペラーが高速回転しながら素材の撹拌及び配合を均一に混合してくれる機械設備を言うことで、本発明では硫黄と多孔性炭素材を混合するのに使われる。
【0060】
リチウム-硫黄電池の正極活物質に含まれる硫黄-炭素複合体を製造するために、既存にはボールミル(ball-mill)工程を通じた硫黄と炭素材の乾式混合を主に使用したが、このようなボールミル工程を通じて混合すれば、硫黄と炭素を混合する時、炭素粒子の過度な粉砕によって炭素粒子の大きさが小さくなり、気孔体積が減少する問題点があった。
【0061】
本発明によるヘンシェルミキサーによる混合は500ないし3000rpmの速度で混合することができる。もし、前記速度範囲未満で混合する場合、硫黄と多孔性炭素材が充分に混合されなくて電池の効率が減少するおそれがあるし、前記範囲を超える場合、多孔性炭素材粒子が粉砕されて炭素材の気孔体積が減少することがあるので、前記範囲で適宜調節する。前記混合速度の範囲で粒度が容易に制御され、本記載による硫黄-炭素複合体の粒度分布を達成することができる。
【0062】
本発明によるヘンシェルミキサーによる混合は15分ないし3時間混合することができる。もし、前記時間未満で混合する場合、硫黄と多孔性炭素材が充分に混合されなくて電池の効率が減少することがあるし、前記範囲を超える場合、過度な混合によって多孔性炭素材粒子が粉砕されて炭素材の気孔体積が減少することがあるので、前記範囲で適宜調節する。
【0063】
本発明による硫黄-炭素複合体は、前記速度でヘンシェルミキサーを通じて混合されるので、その粒度分布でd90が100ないし140μmで、d10が7ないし15μmで、d50が30ないし70μmであってもよく、好ましくはd90が110ないし130μmで、d10が8ないし12μmで、d50が40ないし60μmであってもよい。
【0064】
本記載において、d10、d90及びd50は粒子の粒度分布で最も小さい値の粒度からそれぞれ10%、90%及び50%地点での粒径を意味する。
【0065】
前記(a)段階で使われる前記硫黄は1nmないし1μmの粒径を有する硫黄であって、他の特徴は前述した内容と同様である。また、多孔性炭素材の特徴も前述した内容と同様である。
【0066】
次に、本発明の硫黄-炭素複合体の製造方法は、前記混合された硫黄と多孔性炭素材を乾燥する(b)段階を含む。
【0067】
前記乾燥方法は、130ないし180℃のオーブンで15分ないし2時間乾燥することができる。
【0068】
したがって、本発明の硫黄-炭素複合体の製造方法によって製造された硫黄-炭素複合体は、ヘンシェルミキサーで硫黄と炭素が混合されることによって、硫黄-炭素複合体の気孔体積が0.180ないし0.300cm/gであってもよく、好ましくは0.200ないし0.250cm/gであってもよく、平均気孔サイズが40.0ないし70.0nmであってもよく、好ましくは50.0ないし65.0nmであってもよい。
【0069】
リチウム-硫黄電池用正極
本発明で提示する硫黄-炭素複合体は、リチウム-硫黄電池の正極活物質として好ましく使用可能である。
【0070】
前記正極は、正極集電体上に正極活物質層形成用組成物を塗布及び乾燥して製作される。
【0071】
具体的に、前記製造された硫黄-炭素複合体にさらに導電性を与えるために、前記正極組成物には導電材が追加されてもよい。前記導電材は電子が正極内で円滑に移動できるようにするための役目をするもので、電池に化学的変化を引き起こさずに、導電性に優れ、広い表面積を提供することができるものであれば特に制限しないが、好ましくは炭素系物質を使用する。
【0072】
前記炭素系物質では、天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛、グラフェン(Graphene)のような黒鉛(Graphite)系、活性炭(Active carbon)系、チャンネルブラック(Channel black)、ファーネスブラック(Furnace black)、サーマルブラック(Thermal black)、ケッチェン・ブラック( Ketjen black)、ランプブラック(Lamp black)、アセチレンブラック(Acetylene black)のようなカーボンブラック(Carbon black)系;炭素繊維(Carbon fiber)系、カーボンナノチューブ(Carbon nanotube:CNT)、フラーレン(Fullerene)のような炭素ナノ構造体及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を使用することができる。
【0073】
前記炭素系物質以外も、目的によって金属メッシュなどの金属性繊維;銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)などの金属性粉末;またはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料も使用することができる。前記導電性材料は単独または混合して使用されてもよい。
【0074】
また、前記正極活物質に集電体に対する付着力を提供するために、前記正極組成物にはバインダーがさらに含まれてもよい。前記バインダーは溶媒によく溶解されなければならず、正極活物質と導電材との導電ネットワークをよく構成し、電解液の含浸性も適当に持たなければならない。
【0075】
本発明に適用可能なバインダーは、当該業界で公知された全てのバインダーであってもよく、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブチジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー、ポリエステル系バインダー、シラン系バインダー;からなる群から選択された1種または2種以上の混合物や共重合体であってもよいが、これに制限されないことは勿論である。
【0076】
前記バインダー樹脂の含量は、前記リチウム-硫黄電池用正極の総重量を基準にして0.5~30重量%であってもよいが、これのみに限定されることではない。前記バインダー樹脂の含量が0.5重量%未満の場合には、正極の物理的性質が低下されて正極活物質と導電材が脱落することがあるし、30重量%を超える場合には、正極で活物質と導電材の割合が相対的に減少されて電池容量が減少することがある。
【0077】
リチウム-硫黄電池用正極組成物をスラリー状態で製造するための溶媒は、乾燥しやすくて、バインダーをよく溶解することができるが、正極活物質及び導電材は溶解させずに分散状態で維持させることができるものが最も好ましい。溶媒が正極活物質を溶解させる場合には、スラリーで硫黄の比重(D=2.07)が高いので硫黄がスラリーで沈むようになり、コーティングする時に集電体に硫黄が集まって導電ネットワークに問題が生じ、電池作動に問題の発生する傾向がある。
【0078】
本発明による溶媒は水または有機溶媒が可能であり、前記有機溶媒はジメチルホルムアミド、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン群から選択される1種以上を含む有機溶媒が適用可能である。
【0079】
前記正極組成物の混合は、通常の混合器、例えばラテのミキサー(Latte’s mixer)、高速せん断ミキサー、ホモミキサーなどを利用して通常の方法で撹拌することができる。
【0080】
前記正極組成物を集電体に塗布し、真空乾燥してリチウム-硫黄電池用正極を形成することができる。前記スラリーは、スラリーの粘度及び形成しようとする正極の厚さによって適切な厚さで集電体にコーティングすることができ、好ましくは10ないし300μmの範囲内で適切に選択することができる。
【0081】
この時、前記スラリーをコーティングする方法で制限はなく、例えば、ドクターブレードコーティング(Doctor blade coating)、ディップコーティング(Dip coating)、グラビアコーティング(Gravure coating)、スリットダイコーティング(Slit die coating)、スピンコーティング(Spin coating)、コンマコーティング(Comma coating)、バーコーティング(Bar coating)、リバースロールコーティング(Reverse roll coating)、スクリーンコーティング(Screen coating)、キャップコーティング(Cap coating)方法などを行って製造することができる。
【0082】
前記正極集電体では一般に3~500μmの厚さで作ることができ、電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を有するものであれば特に制限しない。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、銅、チタンなどの伝導性金属を使用することができ、好ましくはアルミニウム集電体を使用することができる。このような正極集電体は、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体または不織布体など様々な形態が可能である。
【0083】
リチウム-硫黄電池
本発明の一実施例として、リチウム-硫黄電池は上述したリチウム-硫黄電池用正極;負極活物質としてリチウム金属またはリチウム合金を含む負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び前記負極、正極及び分離膜に含浸され、リチウム塩と有機溶媒を含む電解質を含むことができる。
【0084】
前記負極は、負極活物質としてリチウムイオン(Li)を可逆的にインターカレーション(Intercalation)またはデインターカレーション(Deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を使用することができる。前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーションまたはデインターカレーションすることができる物質は、例えば結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。前記リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、チタンナイトレートまたはシリコンであってもよい。前記リチウム合金は、例えば、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al及びSnからなる群から選択される金属の合金であってもよい。
【0085】
また、リチウム-硫黄電池を充・放電する過程において、正極活物質で使用される硫黄が非活性物質に変化され、リチウム負極表面に付着されることができる。このように非活性硫黄(Inactive sulfur)は、硫黄がいくつかの電気化学的または化学的反応を経て正極の電気化学反応にそれ以上参加できない状態の硫黄を意味し、リチウム負極の表面に形成された非活性硫黄は、リチウム負極の保護膜(Protective layer)としての役目をする長所もある。よって、リチウム金属と、このリチウム金属上に形成された非活性硫黄、例えばリチウムスルフィドを負極で使用することもできる。
【0086】
本発明の負極は、前記負極活物質以外にリチウムイオン伝導性物質からなる前処理層及び前記前処理層上に形成されたリチウム金属保護層をさらに含んでもよい。
【0087】
前記正極と負極の間に介在される分離膜は、正極と負極を互いに分離または絶縁させ、正極と負極の間にリチウムイオンを輸送できるようにするもので、多孔性非伝導性または絶縁性物質からなってもよい。このような分離膜は、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁体として薄膜またはフィルムのような独立的な部材であってもよく、正極及び/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。また、電解質としてポリマーなどの固体電解質が使われる場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもある。
【0088】
前記分離膜の気孔の直径は一般的に0.01~10μmで、厚さは一般的に5~300μmが好ましく、このような分離膜では、ガラス電解質(Glass electrolyte)、高分子電解質またはセラミックス電解質などが使われてもよい。例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布、クラフト紙などが使用される。現在市販中の代表例としては、セルガード系列(Celgard 2400、2300 Hoechest Celanese Corp.製品)、ポリプロピレン分離膜(Ube Industries Ltd.製品またはPall RAI社製品)、ポリエチレン系列(TonenまたはEntek)などがある。
【0089】
固体状態の電解質分離膜は、約20重量%未満の非水性有機溶媒を含んでもよく、この場合は有機溶媒の流動性を減らすために適切なゲル化剤(Gelling agent)をさらに含んでもよい。このようなゲル化剤の代表例としては、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0090】
前記負極、正極及び分離膜に含浸されている電解質は、リチウム塩を含有する非水系電解質としてリチウム塩と電解液で構成されていて、電解液では非水系有機溶媒、有機固体電解質及び無機固体電解質などが使用される。
【0091】
本発明のリチウム塩は、非水系有機溶媒に溶解されやすい物質として、例えば、LiSCN、LiCl、LiBr、LiI、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiB10Cl10、LiCHSO、LiCFSO、LiCFCO、LiClO、LiAlCl、LiC(CFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(SFO、LiN(CFCFSO、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド及びこれらの組み合わせからなる群から一つ以上が含まれてもよい。
【0092】
前記リチウム塩の濃度は、電解質混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解された塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウムバッテリー分野に公知された他の要因のような幾つかの要因によって、0.2~2M、具体的に0.6~2M、より具体的に0.7~1.7Mであってもよい。0.2M未満で使用すれば電解質の伝導度が低くなって電解質性能が低下することがあるし、2Mを超えて使用すれば電解質の粘度が増加してリチウムイオン(Li)の移動性が減少することがある。
【0093】
前記非水系有機溶媒はリチウム塩をよく溶解させなければならず、本発明の非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキサン、ジエチルエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、ピロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用されてもよく、前記有機溶媒は一つまたは二つ以上の有機溶媒の混合物であってもよい。
【0094】
前記有機固体電解質では、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアルギン酸リシン(Polyalginate lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用されてもよい。
【0095】
前記無機固体電解質では、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSなどのLi窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用されてもよい。
【0096】
本発明の電解質には、充・放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を与えるために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含んでもよく、フルオロ-エチレンカーボネート(FEC:Fluoro-ethylene carbonate)、プロペンスルトン(PRS:Propene sultone)、フルオロ-プロピレンカーボネート(FPC:Fluoro-propylene carbonate)などをさらに含んでもよい。
【0097】
前記電解質は液体電解質で使用してもよく、固体状態の電解質セパレーター形態でも使用することができる。液体電解質で使用する場合は、電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜として多孔性ガラス、プラスチック、セラミックスまたは高分子などからなる分離膜をさらに含む。
【0098】
以下、実施例などを通じて本発明をより詳しく説明するが、以下の実施例などによって本発明の範囲と内容が縮小されたり制限されて解釈されてはならない。また、以下の実施例を含む本発明の開示内容に基づくと、具体的に実験結果が提示されていない本発明を通常の技術者が容易に実施できることは自明であり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0099】
[実施例]
硫黄-炭素複合体の製造
[実施例1]
1Lのヘンシェルミキサーに硫黄78g、炭素30gを入れて1500rpmで1時間混合した。前記硫黄と炭素の混合物を155℃のオーブンで30分乾燥して硫黄-炭素複合体を製造した。
【0100】
[比較例1]
1L容器に5mm直径のZrOボール270g、硫黄23.4g、炭素9gを入れて、200rpmで3分間ボールミルして硫黄と炭素を混合した。以後、前記混合物を155℃のオーブンで30分間加熱して硫黄-炭素複合体を製造した。
【0101】
実験例1:複合体の物性評価
(SEM分析及び粒度分析結果)
実施例1及び比較例1で製造した硫黄-炭素複合体を走査電子顕微鏡(SEM、S-4800、HITACHI)で撮影し、これを図2及び図3に示す。
【0102】
また、実施例1及び比較例1で製造した硫黄-炭素複合体を粒度分析機(Beckman Coulter LS13320 Lase diffraction particle size analyzerモデル)を使用して0.4ないし2000μm範囲に対して粒度平均、d10、d90及びd50を測定して表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
図2及び図3に示すように、実施例1の硫黄-炭素複合体は粒度が100μm以上の大きい粒子が複数存在することに対して、比較例1の硫黄-炭素複合体は、殆どの粒子が粒度30μm以下の粒子であることが分かった。
【0105】
(気孔構造比較)
実施例1及び比較例1で製造した硫黄-炭素複合体の気孔の大きさ、比表面積及び気孔体積を窒素吸着装備(BELSorp、BEL)を利用して測定し、表2及び図4に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
前記表2及び図4の解釈を通じて、実施例1で製造された硫黄-炭素複合体の気孔体積及び平均気孔が全て増加したことが分かった。
【0108】
実験例2:電池物性評価
(電池の製造)
実施例1及び比較例1で製造した硫黄-炭素複合体:バインダー(poly(lithium acrylate)(LiPAA)/polyvinyl alcohol(PVA)を6.5:0.5で混合):導電材(Vapor Grown Carbon Fiber(VGCF))を88:7:5の重量比で混合してスラリーを製造した後、20μm厚さのアルミニウムホイルの集電体にコーティングして電極を製造した。
【0109】
前記製造された電極を正極として、リチウム金属を負極として使用してコインセルを製造した。この時、前記コインセルは2-Me-THF/DOL/DME(1:1:1)、LiN(CFSO(LiTFSI)1M、LiNO 0.1Mで製造した電解液を使用した。前記2-Me-THF/DOL/DMEは、溶媒としてそれぞれ2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran)、ジオキソラン(dioxolane)及びジメチルエーテル(Dimethyl ether)を使用した。
【0110】
製造されたコインセルに対し、1.5から2.8Vまでの容量を測定し、表3及び図5に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
表3及び図5に示すように、同一の硫黄:炭素の割合を有する比較例1と実施例1の場合、実施例1の過電圧が減少され、初期放電容量が向上したことが分かった。
【0113】
また、製造されたコインセルに対して0.1Cレート(rate) CCで充電し、0.1Cレート(rate) CCで放電を2.5回繰り返した後、0.2C充電/0.2C放電を3回繰り返し、以後は0.3C充電/0.5C放電するサイクルを70回繰り返して充放電効率を測定した(CC:一定電流(Constant Current))。
【0114】
その結果を図6を通じて確認することができ、実施例1の寿命特性が比較例1に比べて向上されたことを確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6