(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】二次電池用正極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20220425BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220425BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220425BHJP
H01G 11/24 20130101ALI20220425BHJP
H01G 11/46 20130101ALI20220425BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 D
H01M4/36 E
H01G11/24
H01G11/46
(21)【出願番号】P 2020552659
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 KR2019001473
(87)【国際公開番号】W WO2019151834
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0013114
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ドン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウク・パク
(72)【発明者】
【氏名】ワン・モ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ビン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ドン・フィ・キム
(72)【発明者】
【氏名】テ・グ・ユ
【審査官】浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-026594(JP,A)
【文献】特開2013-218787(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061653(WO,A1)
【文献】特開2013-218875(JP,A)
【文献】特開2014-112540(JP,A)
【文献】国際公開第2014/133063(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0330429(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103794799(CN,A)
【文献】中国特許第103811744(CN,B)
【文献】中国特許出願公開第103022499(CN,A)
【文献】特開2017-107727(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104724763(CN,A)
【文献】特開2010-086693(JP,A)
【文献】特開2013-065468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00~4/62
H01G 11/24
H01G 11/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1正極活物質及び第2正極活物質を含み、
前記第1正極活物質の平均粒径(D
50)は、前記第2正極活物質の平均粒径(D
50)の2倍以上であり、
前記第2正極活物質の結晶子サイズが200nm以上であり、
前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質は、それぞれ独立して下記化学式1で表され、
[化学式1]
Li
p
Ni
1-(x1+y1+z1)
Co
x1
M
a
y1
M
b
z1
M
c
q1
O
2
前記化学式1中、M
a
は、Mn及びAlよりなる群から選択された少なくとも一つの元素であり、M
b
は、Ba、Ca、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoよりなる群から選択された少なくとも一つの元素であり、M
c
は、Al、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb、Mo及びCrよりなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、0.9≦p≦1.5、0<x1≦0.4、0<y1≦0.4、0≦z1≦0.1、0≦q1≦0.1であり、0<x1+y1+z1≦0.4である、二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記第2正極活物質は、一次粒子が凝集されてなる二次粒子であり、前記第2正極活物質の一次粒子の平均粒径(D
50)が1μm以上である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記第2正極活物質の平均粒径(D
50)は9μm以下である、請求項1または請求項2に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記第1正極活物質の平均粒径(D
50)は8μmから30μmである、請求項1または請求項2に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質は、互いに同一または異なる組成のリチウム複合遷移金属酸化物である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記第1正極活物質と前記第2正極活物質は、9:1から1:9の重量比で混合されている、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項7】
第1正極活物質及び第2正極活物質を提供した後、前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質を混合する段階を含み、
前記第1正極活物質の平均粒径(D
50)は、前記第2正極活物質の平均粒径(D
50)の2倍以上であり、前記第2正極活物質は、結晶子サイズが200nm以上となるように過焼成して製造さ
れ、
前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質は、それぞれ独立して下記化学式1で表され、
[化学式1]
Li
p
Ni
1-(x1+y1+z1)
Co
x1
M
a
y1
M
b
z1
M
c
q1
O
2
前記化学式1中、M
a
は、Mn及びAlよりなる群から選択された少なくとも一つの元素であり、M
b
は、Ba、Ca、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoよりなる群から選択された少なくとも一つの元素であり、M
c
は、Al、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb、Mo及びCrよりなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、0.9≦p≦1.5、0<x1≦0.4、0<y1≦0.4、0≦z1≦0.1、0≦q1≦0.1であり、0<x1+y1+z1≦0.4である、二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記第2正極活物質は一次粒子が凝集されてなる二次粒子であり、前記第2正極活物質の一次粒子の平均粒径(D
50)が1μm以上である、請求項
7に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記第2正極活物質の平均粒径(D
50)は9μm以下である、請求項
7または請求項
8に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記第1正極活物質の平均粒径(D
50)は8から30μmである、請求項
7または請求項
8に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記第1正極活物質と第2正極活物質は、9:1から1:9の重量比で混合される、請求項
7から請求項
10のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、二次電池用正極。
【請求項13】
請求項
12に記載の正極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年2月1日付韓国特許出願第10-2018-0013114号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池用正極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車など、電池を用いる電子器具の急速な普及に伴い、小型軽量でありながらも相対的に高容量である二次電池の需要が急速に増大されている。特に、リチウム二次電池は、軽量でかつ高エネルギー密度を有しているので、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。これによって、リチウム二次電池の性能向上のための研究開発の努力が活発に進められている。
【0004】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充電させた状態で、リチウムイオンが正極及び負極で挿入/脱離される際の酸化と還元反応によって電気エネルギーが生産される。
【0005】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO2またはLiMn2O4など)、リン酸鉄リチウム化合物(LiFePO4)などが用いられていた。また、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)の優れた可逆容量は維持しながらも、低い熱安定性を改善するための方法として、ニッケル(Ni)の一部をコバルト(Co)やマンガン(Mn)/アルミニウム(Al)で置換したリチウム複合金属酸化物(以下、簡単に「NCM系リチウム複合遷移金属酸化物」または「NCA系リチウム複合遷移金属酸化物」と記す)が開発された。
【0006】
また、電極の単位体積当たりの容量を増加させるために大粒子及び小粒子をブレンド(blending)してバイモーダル(bimodal)で正極活物質層を製造することにより圧延密度を増加させるなどの研究がなされている。しかし、未だに高容量ながらも優れた熱安定性を同時に満たす正極活物質に対する開発が依然として必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、大粒子及び小粒子の正極活物質を用いてエネルギー密度を向上させ、圧延による正極活物質のクラック(crack)の発生及び破損を防止し、高温寿命特性を向上させ、高温貯蔵時のガス発生量を低下させるなど、安定性を改善した二次電池用正極活物質の提供を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1正極活物質及び第2正極活物質を含み、前記第1正極活物質の平均粒径(D50)は、前記第2正極活物質の平均粒径(D50)の2倍以上であり、前記第2正極活物質は、結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm以上である二次電池用正極活物質を提供する。
【0009】
また、本発明は、第1正極活物質及び第2正極活物質を提供した後、前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質を混合する段階を含み、前記第1正極活物質の平均粒径(D50)は、前記第2正極活物質の平均粒径(D50)の2倍以上であり、前記第2正極活物質は、結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm以上となるように過焼成して製造された二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記正極活物質を含む正極及びリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大粒子及び小粒子をブレンド(blending)してバイモーダル(bimodal)の正極活物質を製造することによりエネルギー密度を向上させることができ、このとき、過焼成して結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm以上である小粒子を用いることで、圧延による正極活物質のクラック(crack)の発生及び破損を防止することができる。これを介して、二次電池の容量特性及び高温寿命特性を向上させ、高温貯蔵時のガス発生量を低下させるなど、安定性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。このとき、本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0013】
<正極活物質>
本発明の二次電池用正極活物質は、第1正極活物質及び第2正極活物質を含み、前記第1正極活物質の平均粒径(D50)は、前記第2正極活物質の平均粒径(D50)の2倍以上であり、前記第2正極活物質の結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm以上である。
【0014】
本発明の二次電池用正極活物質は、大粒子である第1正極活物質と小粒子である第2正極活物質を含む。
【0015】
二次電池用正極の体積当たりの容量を向上させるためには、正極活物質層の密度を増加させる必要があるが、正極活物質層の密度を増加させる方法として、正極活物質粒子間の空隙を減らして圧延密度(または電極密度)を高める方法が用いられる。本発明のように、大粒子及び小粒子の正極活物質を混合したバイモーダル(bimodal)の正極活物質の場合、大粒子の正極活物質の粒子等の間の空いた空間を小粒子の正極活物質で満たすことができるので、より緻密な充填が可能であり、正極のエネルギー密度を増加させることができる。
【0016】
前記第1正極活物質の平均粒径(D50)は、前記第2正極活物質の平均粒径(D50)の2倍以上である。
【0017】
本発明において、平均粒径(D50)は、粒径分布曲線において体積累積量の50%に該当する粒径と定義し得る。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。例えば、前記正極活物質の平均粒径(D50)の測定方法は、正極活物質の粒子を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、マイクロトラック(Microtrac)MT3000)に導入して約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における体積累積量の50%に該当する平均粒径(D50)を算出することができる。
【0018】
より具体的には、前記第1正極活物質と第2正極活物質の平均粒径(D50)比は2:1から8:1であってよく、さらに好ましくは、第1正極活物質と第2正極活物質の平均粒径(D50)比は2:1から4:1であってよい。第1正極活物質及び第2正極活物質の平均粒径(D50)比が前記範囲内を満たすことにより、正極活物質粒子同士の空隙をより効果的に減らし、充填密度を高め、正極密度を向上させて正極体積当たりの容量を効果的に向上させることができる。
【0019】
具体的に、前記第1正極活物質の平均粒径(D50)は8から30μmであってよく、より好ましくは9から25μm、さらに好ましくは10から22μmであってよい。
【0020】
前記第2正極活物質の平均粒径(D50)は9μm以下であってよく、より好ましくは1から9μm、さらに好ましくは2から8μmであってよい。
【0021】
相対的に小粒子である前記第2活物質は過焼成され、結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm以上である。前記第2正極活物質の結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm未満である場合、圧延により正極活物質のクラック(crack)及び破損が発生し、高温寿命特性及び安定性が低下し得る。前記第2正極活物質を過焼成する方法は、結晶子サイズ(Crystallite size)を200nm以上に増加させることができる方法であれば特に制限されないが、例えば、焼成する過程で一般的な正極活物質の焼成温度より約50℃ほど増加させた温度で過焼成してよい。より好ましくは、前記第2正極活物質は、結晶子サイズ(Crystallite size)が200から500nm、さらに好ましくは200から400nmであってよい。
【0022】
本発明において、結晶子サイズ(Crystallite size)は、一次粒子のうち方向性を有している1つのドメイン(domain)と定義し得る。前記結晶子サイズ(Crystallite size)は、XRD測定データを有してシェラーの式(Scherrer equation)を介して導出され得る。
【0023】
前記第1正極活物質及び第2正極活物質は、一次粒子が凝集されてなる二次粒子であってよい。このとき、相対的に小粒子である前記第2正極活物質は過焼成され、一次粒子の平均粒径(D50)が1μm以上であってよい。前記第2正極活物質の一次粒子の平均粒径(D50)が1μm未満である場合、圧延により正極活物質のクラック(crack)及び破損が発生し、高温寿命特性及び安定性が低下し得る。より具体的に、前記第2正極活物質は、一次粒子の平均粒径(D50)が1から8μmであってよく、さらに具体的に、前記第2正極活物質は一次粒子の平均粒径(D50)が1から6μmであってよい。一方、相対的に大粒子である前記第1正極活物質の一次粒子の平均粒径(D50)は100nmから3μmであってよい。
【0024】
本発明の前記第1正極活物質及び第2正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)よりなる群から選択された少なくとも二つの遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物であってよい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記第1正極活物質及び第2正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)を含み、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択された少なくとも一つを含むリチウム複合遷移金属酸化物であってよい。例えば、前記第1正極活物質及び第2正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含むNCM系正極活物質であってよく、または、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びアルミニウム(Al)を含むNCA系正極活物質であってよく、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)の4成分を必須に含む4成分系正極活物質であってよい。
【0026】
また、本発明の一実施形態による前記第1正極活物質及び第2正極活物質は、リチウム複合遷移金属酸化物に含有された全体金属元素のうち、ニッケル(Ni)の含量が60モル%以上の高含量ニッケル(High‐Ni)の正極活物質であってよい。より好ましくは全体金属元素のうちニッケル(Ni)の含量が80モル%以上であってよい。本発明のように、全体金属元素のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高含量ニッケル(High‐Ni)の第1正極活物質及び第2正極活物質を用いれば、より一層高容量の確保が可能である。
【0027】
一方、前記第1正極活物質及び第2正極活物質は、互いに同一な組成のリチウム複合遷移金属酸化物であってもよく、または異なる組成のリチウム複合遷移金属酸化物であってよい。
【0028】
より具体的に、前記第1正極活物質及び第2正極活物質は、それぞれ独立して下記化学式1で表されるリチウム複合遷移金属酸化物であってよい。
【0029】
[化学式1]
LipNi1-(x1+y1+z1)Cox1Ma
y1Mb
z1Mc
q1O2
【0030】
前記式中、Maは、Mn及びAlよりなる群から選択された少なくとも一つの元素であり、Mbは、Ba、Ca、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoよりなる群から選択された少なくとも一つの元素であり、Mcは、Al、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb、Mo及びCrよりなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、0.9≦p≦1.5、0<x1≦0.4、0<y1≦0.4、0≦z1≦0.1、0≦q1≦0.1であり、0<x1+y1+z1≦0.4である。
【0031】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Liは、pに該当する含量、すなわち0.9≦p≦1.5で含まれてよい。pが0.9未満であれば容量が低下する虞があり、1.5を超過すれば焼成工程で粒子が焼結されてしまうので、正極活物質の製造が困難であり得る。Li含量の制御による正極活物質の容量特性の改善効果の顕著さ、及び活物質製造時の焼結性のバランスを考慮するとき、前記Liは、より好ましくは1.0≦p≦1.15の含量で含まれてよい。
【0032】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Niは、1-(x1+y1+z1)に該当する含量、例えば、0.6≦1-(x1+y1+z1)<1で含まれてよい。前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物内のNiの含量が0.6以上の組成になれば、充放電に寄与するに十分なNi量が確保されて高容量化を図ることができる。より好ましくは、Niは、0.8≦1-(x1+y1+z1)≦0.99で含まれてよい。
【0033】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Coは、x1に該当する含量、すなわち0<x1≦0.4で含まれてよい。前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物内のCoの含量が0.4を超過する場合、費用増加の虞がある。Co包含による容量特性の改善効果の顕著さを考慮するとき、前記Coは、より具体的に0.05≦x1≦0.2の含量で含まれてよい。
【0034】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Maは、MnまたはAlであるか、Mn及びAlであってよく、このような金属元素は、活物質の安定性を向上させ、結果として電池の安定性を改善させることができる。寿命特性の改善効果を考慮するとき、前記Maはy1に該当する含量、すなわち0<y1≦0.2の含量で含まれてよい。前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物内のy1が0.2を超過すれば、却って電池の出力特性及び容量特性が低下する虞があり、前記Maはより具体的に0.05≦y1≦0.2の含量で含まれてよい。
【0035】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Mbはリチウム複合遷移金属酸化物の結晶構造内に含まれたドーピング元素であってよく、Mbはz1に該当する含量、すなわち0≦z1≦0.1で含まれてよい。
【0036】
前記化学式1のリチウム複合遷移金属酸化物において、Mcの金属元素は、リチウム複合遷移金属酸化物構造内に含まれないこともあり、前駆体とリチウムソースを混合して焼成するとき、Mcソースを共に混合して焼成するか、リチウム複合遷移金属酸化物を形成した後、別にMcソースを投入して焼成する方法を介し、前記Mcがリチウム複合遷移金属酸化物の表面にドーピングされたリチウム複合遷移金属酸化物を製造してよい。前記Mcは、q1に該当する含量、すなわち0≦q1≦0.1の範囲内で正極活物質の特性を低下させない含量で含まれてよい。
【0037】
本発明の一実施形態は、前記第1正極活物質と第2正極活物質が9:1から1:9の重量比で混合されてよく、より好ましくは8:2から3:7の重量比、最も好ましくは8:2から5:5の重量比で混合されてよい。大粒子である第1正極活物質と、小粒子で結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm以上である第2正極活物質を前記範囲内で混合して使用することにより、正極のエネルギー密度を高め、高容量及び優れた熱安定性を確保することができ、電解液との副反応を抑制することができる。これにより、前記のような正極活物質を用いて製造されたリチウム二次電池は、高い容量を具現し、高温寿命特性などの電池特性が向上され得る。
【0038】
<正極活物質の製造方法>
次に、本発明の正極活物質の製造方法を説明する。
【0039】
本発明の正極活物質は、第1正極活物質及び第2正極活物質を提供した後、前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質を混合する段階を含み、前記第1正極活物質の平均粒径(D50)は、前記第2正極活物質の平均粒径(D50)の2倍以上であり、前記第2正極活物質は、結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm以上となるように過焼成して製造される。
【0040】
前記第1正極活物質は、平均粒径(D50)が8から30μmである大粒子を用いてよく、より好ましくは9から25μm、さらに好ましくは10から22μmであってよい。
【0041】
前記第2正極活物質は、平均粒径(D50)が9μm以下の小粒子を用いてよく、より好ましくは1から9μm、さらに好ましくは2から8μmであってよい。
【0042】
このとき、相対的に小粒子である前記第2正極活物質は過焼成して製造され、結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm以上である。過焼成の方法は特に制限されないが、例えば、一般的な正極活物質の焼成温度である約800から1000℃の範囲より約50℃ほど増加させた温度で過焼成してよい。より好ましくは、前記第2正極活物質は、結晶子サイズ(Crystallite size)が200から500nm、さらに好ましくは200から400nmとなるように過焼成して製造されてよい。
【0043】
また、相対的に小粒子である前記第2正極活物質は、一次粒子の平均粒径(D50)が1μm以上となるように過焼成して製造されてよい。より具体的に、前記第2正極活物質は、一次粒子の平均粒径(D50)が1から8μm、さらに具体的に、前記第2正極活物質は、一次粒子の平均粒径(D50)が1から6μmとなるように過焼成して製造されてよい。一方、相対的に大粒子である前記第1正極活物質の一次粒子の平均粒径(D50)は、100nmから3μmであってよい。
【0044】
これ以外に、前記第1正極活物質及び第2正極活物質の組成及び混合比などは、前述の正極活物質に対する説明と重複するので省略する。
【0045】
<正極及び二次電池>
本発明のまた他の一実施形態によれば、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池を提供する。
【0046】
具体的に、前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に形成され、前記正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0047】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されてよい。また、前記正極集電体は、通常3から500μmの厚さを有してよく、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0048】
また、前記正極活物質層は、前記で説明した正極活物質とともに、導電材及びバインダを含んでよい。
このとき、前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電気伝導性を有するものであれば、特別な制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記導電材は、通常、正極活物質層の総重量に対して1から30重量%で含まれてよい。
【0049】
また、前記バインダは、正極活物質粒子同士の付着及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を担う。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記バインダは、正極活物質層の総重量に対して1から30重量%で含まれてよい。
【0050】
前記正極は、前記正極活物質を用いることを除いては通常の正極の製造方法により製造されてよい。具体的に、前記正極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を含む正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造されてよい。このとき、前記正極活物質、バインダ、導電材の種類及び含量は、前記で説明した通りである。
【0051】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に用いられる溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して前記正極活物質、導電材及びバインダを溶解または分散させ、それ以後、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示し得る粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0052】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0053】
本発明のまた他の一実施形態によれば、前記正極を含む電気化学素子が提供される。前記電気化学素子は、具体的に電池またはキャパシタなどであってよく、より具体的にはリチウム二次電池であってよい。
【0054】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極、前記正極と対向して位置する負極、前記正極と負極との間に介在されるセパレータ及び電解質を含み、前記正極は前記で説明した通りである。また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含んでよい。
【0055】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0056】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使用されてよい。また、前記負極集電体は、通常3μmから500μmの厚さを有してよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0057】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的にバインダ及び導電材を含む。前記負極活物質層は、例えば、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を含む負極形成用組成物を塗布して乾燥するか、または前記負極形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0058】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインタカレーション及びデインタカレーションが可能な化合物が使用されてよい。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などを挙げることができ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されてもよい。また、炭素材料は、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などが全て使用されてよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso‐carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0059】
また、前記バインダ及び導電材は、前記正極で説明したところと同一のものであってよい。
【0060】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池でセパレータとして用いられるものであれば特別な制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が使用されてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてよく、選択的に単層または多層構造で使用されてよい。
【0061】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などを挙げることができ、これらに限定されるものではない。
【0062】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでよい。
【0063】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオン等が移動することができる媒質の役割が可能なものであれば、特別な制限なく使用されてよい。具体的に前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate,DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate,DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate,MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate,EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R‐CN(RはC2からC20の直鎖状、分枝状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されてよい。この中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線形カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは約1:1から約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優れて表れ得る。
【0064】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特別な制限なく使用されてよい。具体的に前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが使用されてよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1から2.0Mの範囲内で使用するのがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0065】
前記電解質には、前記電解質の構成成分等の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量の減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。このとき、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1から5重量%で含まれてよい。
【0066】
前記のように本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び容量維持率を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle,HEV)などの電気自動車の分野などに有用である。
【0067】
これによって、本発明の他の一具現例によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックが提供される。
【0068】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle,PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられてよい。
【0069】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施形態に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、いくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0070】
実施例1
第1正極活物質としてLiNi0.88Co0.10Mn0.02O2の粒子(D50=14μm)、第2正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2の粒子(D50=5μm)を準備した。このとき、前記第1正極活物質は、過焼成されないものとして結晶子サイズ(Crystallite size)が145nmであり、前記第2正極活物質は、過焼成されて結晶子サイズ(Crystallite size)が230nm、一次粒子の平均粒径(D50)が2μmであるものを用いた。前記第1正極活物質と第2正極活物質を8:2の重量比で混合して正極活物質を製造した。
【0071】
実施例2
第1正極活物質としてLiNi0.87Co0.08Mn0.03Al0.02O2の粒子(D50=15μm)であり、第2正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2の粒子(D50=6μm)を準備した。このとき、前記第1正極活物質は、過焼成されないものとして結晶子サイズ(Crystallite size)が140nmであり、前記第2正極活物質は、過焼成されて結晶子サイズ(Crystallite size)が260nm、一次粒子の平均粒径(D50)が2μmであるものを用いた。前記第1正極活物質と第2正極活物質を7:3の重量比で混合して正極活物質を製造した。
【0072】
比較例1
第1正極活物質としてLiNi0.88Co0.10Mn0.02O2の粒子(D50=14μm)、第2正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2の粒子(D50=5μm)を準備した。このとき、前記第1正極活物質及び第2正極活物質は過焼成されないものとして、第1正極活物質の結晶子サイズ(Crystallite size)が145nmであり、前記第2正極活物質は、結晶子サイズ(Crystallite size)が130nm、一次粒子の平均粒径(D50)が0.5μmであるものを用いたことを除いては、実施例1と同一に実施して正極活物質を製造した。
【0073】
比較例2
正極活物質としてLiNi0.88Co0.10Mn0.02O2の粒子(D50=14μm)であるモノモーダル(monomodal)で用いて正極活物質を製造した。
【0074】
[実験例1:圧延密度の評価]
実施例1から2及び比較例1から2で製造された正極活物質の圧延密度を評価し、その結果を表1に示した。
【0075】
圧延密度は、実施例1から2及び比較例1から2で製造されたそれぞれの正極活物質5gを小分けして円筒状のホルダーに隙間なく満たした後、400kgfから400kgfずつ増加させて2000kgfまでの圧力をかけたとき、2000kgfでの粉体の密度を測定した。
【0076】
【0077】
前記表1を参照すれば、大粒子である第1正極活物質と、小粒子で結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm以上である第2正極活物質を混合して使用した実施例1から2は、モノモーダル(monomodal)の正極活物質を使用した比較例2に比べて圧延密度が向上された。
【0078】
[実験例2:粒子破損の評価]
実施例1から2及び比較例1から2の正極活物質を実験例1の方法と同一に2,000kgfで圧延したときの粒子破損の程度を評価した。粒子破損の程度は、走査電子顕微鏡(SEM,Scanning Electron Microscope)を介して観察し、さらに詳細には、PSD(Particle Size Distribution,粒径分布)のD50の変化量を介して粒子破損の程度を計算し、その結果を表2に示した。
【0079】
【0080】
前記表2を参照すれば、実施例1から実施例2の場合、大粒子及び小粒子のバイモーダル(bimodal)を用いたが、結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm未満である小粒子を用いた比較例1に比べて粒子破損の程度が著しく減少したことを確認することができる。また、実施例1から実施例2の場合、モノモーダル(monomodal)の正極活物質を用いた比較例2に比べて粒子破損の程度がさらに顕著に減少した。
【0081】
[実験例3:高温寿命特性の評価]
正極活物質として実施例1から2及び比較例1から2により製造されたそれぞれの正極活物質とカーボンブラック導電材とPVDFバインダをN‐メチルピロリドン溶媒中で重量比で96.5:1.5:2の比率で混合して正極合剤(粘度:5000mPa・s)を製造し、これをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、130℃で乾燥後、圧延して正極を製造した。負極はリチウムメタルを用いた。
【0082】
前記のように製造された正極と負極の間に多孔性ポリエチレンのセパレータを介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケース内部に位置させた後、ケース内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。このとき、電解液は、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/DMC/EMCの混合体積比=3/4/3)からなる有機溶媒に1.0M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を溶解させて製造した。
【0083】
実施例1から実施例2及び比較例1から2により製造されたそれぞれの正極活物質を用いて製造された各リチウム二次電池ハーフセル(half cell)に対して、45℃でCCCVモードで0.5C、4.25Vとなるまで充電(終了電流1/20C)し、0.5Cの定電流で2.5Vとなるまで放電して100回の充放電実験を進めたときの容量維持率を測定し、高温寿命特性の評価を進めた。その結果を表3に示した。
【0084】
【0085】
前記表3を参照すれば、実施例1から実施例2の場合、大粒子及び小粒子のバイモーダル(bimodal)を用いたが、結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm未満の小粒子を用いた比較例1に比べて高温寿命特性が著しく向上されたことを確認することができる。また、実施例1から実施例2の場合、モノモーダル(monomodal)の正極活物質を用いた比較例2に比べて高温寿命特性がさらに著しく向上され、初期容量も増加した。
【0086】
[実験例4:高温貯蔵特性の評価]
実施例1から2及び比較例1から2により製造されたそれぞれの正極活物質を用いて実験例3のように製造された各リチウム二次電池ハーフセル(half cell)に対して、SOC(充電状態)100%、60℃で2週貯蔵してガス発生量を測定し、その結果を表4に示した。
【0087】
【0088】
前記表4を参照すれば、実施例1から実施例2の場合、大粒子及び小粒子のバイモーダル(bimodal)を用いたが、結晶子サイズ(Crystallite size)が200nm未満の小粒子を用いた比較例1に比べて高温貯蔵時のガス発生量が著しく減少したことを確認することができる。また、実施例1から実施例2の場合、モノモーダル(monomodal)の正極活物質を用いた比較例2に比べて高温貯蔵時のガス発生量がさらに減少した。