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特許7062206セリア‐炭素‐硫黄複合体、この製造方法、これを含む正極及びリチウム‐硫黄電池
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  • 特許-セリア‐炭素‐硫黄複合体、この製造方法、これを含む正極及びリチウム‐硫黄電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】セリア‐炭素‐硫黄複合体、この製造方法、これを含む正極及びリチウム‐硫黄電池
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/168 20170101AFI20220425BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220425BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220425BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220425BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220425BHJP
【FI】
C01B32/168
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
H01M10/052
H01M10/0566
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020536665
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 KR2019002879
(87)【国際公開番号】W WO2019177355
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0030737
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】516224101
【氏名又は名称】ソガン・ユニヴァーシティ・リサーチ・ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スンボ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】クォンナム・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヒョク・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ドンヒ・グオン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・テ・ファン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107293715(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0142425(KR,A)
【文献】Dengji Xiao, Chunxiang Lu, Chengmeng Chen, Shuxia Yuan,,CeO2-webbed carbon nanotubes as a highly efficient sulfur host for lithium-sulfur batteries,Energy Storage Materials,vol.10,2018年,pp.216-222,https://doi.org/10.1016/j.ensm.2017.05.015
【文献】Donghee Gueon et al.,Spherical Macroporous Carbon Nanotube Particles with Ultrahigh Sulfur Loading for LithiumSulfur Battery Cathodes,ACS Nano,vol.12, no.1,2018年,pp.226-233,https://doi.org/10.1021/acsnano.7b05869
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/168
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 10/052
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリア(CeO)粒子が表面に組み合わせられた円柱型炭素材が互いに絡まって3次元で相互連結されているセリア‐炭素(CeO‐C)複合体;及び
前記セリア‐炭素複合体の外部表面及び内部の中の少なくとも一部に取り入れられた硫黄;を含み、
前記セリア‐炭素複合体は、円柱型炭素材が整列された気孔からなる階層型気孔構造を有し、
前記セリア‐炭素複合体の孔隙率は10ないし60%であり、全体BET比表面積は50ないし700m /gであり、
前記気孔は300ないし800nmである、セリア‐炭素‐硫黄(CeO‐C‐S)複合体。
【請求項2】
前記セリア粒子は、セリウム前駆体を円柱型炭素材の表面で化学的成長させて形成されたことを特徴とする請求項1に記載のセリア‐炭素‐硫黄複合体。
【請求項3】
前記化学的成長は、酸を添加して水熱反応によって行われることを特徴とする請求項2に記載のセリア‐炭素‐硫黄複合体。
【請求項4】
前記円柱型炭素材は、炭素ナノチュブ、グラファイトナノファイバ、カボンナノファイバ及び活性炭素繊維からなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のセリア‐炭素‐硫黄複合体。
【請求項5】
前記セリア粒子の粒径は10ないし30nmであることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のセリア‐炭素‐硫黄複合体。
【請求項6】
前記セリア粒子は、セリア‐炭素複合体の総重量に対して10ないし50重量%で含まれることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のセリア‐炭素‐硫黄複合体。
【請求項7】
前記セリア‐炭素複合体の直径は3ないし10μmであることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のセリア‐硫黄‐炭素複合体。
【請求項8】
前記セリア‐炭素‐硫黄複合体は、セリア‐炭素複合体及び硫黄を1:9ないし9:1の重量比で含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のセリア‐炭素‐硫黄複合体。
【請求項9】
(a)鋳型粒子及び円柱型炭素材が混合された分散液を製造する段階;
(b)前記分散液を噴霧乾燥して鋳型粒子‐炭素複合体を製造する段階;
(c)前記鋳型粒子‐炭素複合体を熱処理して階層型気孔構造の炭素凝集体を製造する段階;
(d)前記炭素凝集体及びセリウム前駆体の混合液を製造する段階;
(e)前記混合液を加熱した後、酸を添加して水熱反応によってセリア‐炭素(CeO‐C)複合体を製造する段階;及び
(f)前記セリア‐炭素複合体に硫黄を含浸させてセリア‐炭素‐硫黄複合体を製造する段階;を含む、請求項1に記載のセリア‐炭素‐硫黄(CeO‐C‐S)複合体の製造方法。
【請求項10】
前記(a)段階の円柱型炭素材及び鋳型粒子は、1:1ないし1:5の重量比で混合されることを特徴とする請求項に記載のセリア‐炭素‐硫黄複合体の製造方法。
【請求項11】
前記(c)段階の熱処理は、不活性雰囲気で600ないし1200℃で行われることを特徴とする請求項または10に記載のセリア‐炭素‐硫黄複合体の製造方法。
【請求項12】
前記(e)段階の水熱反応は70ないし150℃で行われ、前記温度を維持して酸を添加することを特徴とする請求項から11のいずれか一項に記載のセリア‐炭素‐硫黄複合体の製造方法。
【請求項13】
前記酸は、塩酸、6‐アミノヘキサン酸、硝酸及び酢酸からなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項から12のいずれか一項に記載のセリア‐炭素‐硫黄複合体の製造方法。
【請求項14】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のセリア‐炭素‐硫黄複合体を含むリチウム‐硫黄電池用正極。
【請求項15】
請求項14に記載の正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム‐硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年3月16日付韓国特許出願第10‐2018‐0030737号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、セリア‐炭素‐硫黄複合体、この製造方法、これを含む正極及びリチウム‐硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電子製品、電子機器、通信機器などの小型軽量化が急速に進められていて、環境問題と係って電気自動車の必要性が大きく台頭されることによって、これらの製品の動力源で使用される二次電池の性能改善に対する要求も増加する実情である。その中でリチウム二次電池は、高いエネルギ‐密度及び高い標準電極電位のため高性能電池として相当な脚光を浴びている。
【0004】
特に、リチウム‐硫黄(Li‐S)電池は、S‐S結合(Sulfur‐Sulfur bond)を有する硫黄系物質を正極活物質として使用し、リチウム金属を負極活物質として使用する二次電池である。正極活物質の主材料である硫黄は資源がとても豊かで、毒性がなく、原子の低い重さを有している長所がある。また、リチウム‐硫黄電池の理論放電容量は1675mAh/g‐sulfurで、理論エネルギ‐密度が2,600Wh/kgで、現在研究されている他の電池システムの理論エネルギ‐密度(Ni‐MH電池:450Wh/kg、Li‐FeS電池:480Wh/kg、Li‐MnO電池:1,000Wh/kg、Na‐S電池:800Wh/kg)に比べてとても高いので、現在まで開発されている電池の中で最も有望な電池である。
【0005】
リチウム‐硫黄電池の放電反応の間、負極(Negative electrode)ではリチウムの酸化反応が発生し、正極(Positive electrode)では硫黄の還元反応が発生する。放電前の硫黄は環形のS構造を有しているが、還元反応(放電)時にS‐S結合が切れてSの酸化数が減少し、酸化反応(充電)時にS‐S結合が再び形成され、Sの酸化数が増加する酸化‐還元反応を利用して電気エネルギ‐を保存及び生成する。このような反応の中で硫黄は環形のSから還元反応によって線形構造のリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide、Li、x=8、6、4、2)に変換され、結局このようなリチウムポリスルフィドが完全に還元されれば最終的にリチウムスルフィド(Lithium sulfide、LiS)が生成されるようになる。それぞれのリチウムポリスルフィドに還元される過程によって、リチウム‐硫黄電池の放電挙動はリチウムイオン電池とは違って段階的に放電電圧を示すことが特徴である。
【0006】
しかし、このようなリチウム‐硫黄電池の場合、硫黄の低い電気伝導度、充・放電時のリチウムポリスルフィドの溶出及び体積膨脹問題と、これによる低いク‐ロン効率及び充・放電による急激な容量減少問題を解決しなければならない。
【0007】
従来の技術では、リチウム‐硫黄電池の寿命特性を向上させるために、充・放電時に生成されるリチウムポリスルフィドの溶出を防ぐための研究が進められており、代表的に様々な気孔デザインを通じた物理的な吸着と様々な酸化物を取り入れた化学的吸着に対する研究が進められた。しかし、金属酸化物のような化学吸着性物質は、低い電気伝導度によって電気化学的特性が完全に発現されない問題がある。よって、電池の寿命及び電気化学特性を向上させることができる開発が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国公開特許第108417852号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、セリウム前駆体が円柱型炭素材表面でセリア粒子に化学的に成長してリチウム‐硫黄電池の充・放電による体積膨脹にもセリア粒子の脱離が発生しないので、電極の安定性及び優れた電気化学的特性を示すことができ、階層型気孔構造によって電子の移動通路が確保され、電子伝導性が向上されて優れた電気化学的特性を示すことができるセリア‐炭素‐硫黄複合体を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は前記セリア‐炭素‐硫黄複合体を含む正極、これを含むリチウム‐硫黄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、
本発明は、セリア(CeO)粒子が表面に組み合わせられた円柱型炭素材が互いに絡まって3次元で相互連結されているセリア‐炭素(CeO‐C)複合体;及び
前記セリア‐炭素複合体の外部表面及び内部の中の少なくとも一部に取り入れられた硫黄;を含むセリア‐炭素‐硫黄(CeO‐C‐S)複合体を提供する。
【0012】
また、本発明は(a)鋳型粒子及び円柱型炭素材が混合された分散液を製造する段階;
(b)前記分散液を噴霧乾燥して鋳型粒子‐炭素複合体を製造する段階;
(c)前記鋳型粒子‐炭素複合体を熱処理して階層型気孔構造の炭素凝集体を製造する段階;
(d)前記炭素凝集体及びセリウム前駆体の混合液を製造する段階;
(e)前記混合液を加熱した後、酸を添加して水熱反応によってセリア‐炭素(CeO‐C)複合体を製造する段階;及び
(f)前記セリア‐炭素複合体に硫黄を含浸させてセリア‐炭素‐硫黄複合体を製造する段階;を含むセリア‐炭素‐硫黄(CeO‐C‐S)複合体の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記本発明のセリア‐炭素‐硫黄複合体を含むリチウム‐硫黄電池用正極を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記本発明の正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム‐硫黄電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセリア‐炭素‐硫黄複合体をリチウム‐硫黄電池の正極物質に適用すれば、リチウム‐硫黄電池の充・放電による体積膨脹にもセリア粒子の脱離が発生しないので、電極の安定性、電極の寿命及び電気化学的特性を向上させることができる。
【0016】
また、前記セリア‐炭素‐硫黄複合体の階層型気孔構造によって比表面積が増加して電子の移動通路が確保され、電子伝導性が向上されて電極容量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のセリア‐炭素複合体の構造を示す模式図である。
図2】本発明の階層型気孔構造の炭素凝集体表面のSEM写真である。
図3】本発明のセリア‐炭素複合体表面のSEM写真である。
図4】実施例1のセリア‐炭素複合体のSEM写真である。
図5】比較例1のセリア‐炭素複合体のSEM写真である。
図6】実施例1の製造過程で撮影したセリア‐炭素‐硫黄複合体のEDX写真である。
図7】実施例1の炭素ナノチュ‐ブの表面で成長したセリア粒子のTEM写真である。
図8】実施例1のセリア‐炭素複合体のXRDグラフである。
図9】実施例2及び比較例2のリチウム‐硫黄電池の容量特性及びク‐ロン効率グラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をより詳しく説明する。
セリア‐炭素‐硫黄(CeO‐C‐S)複合体
本発明は、セリア(CeO)粒子が表面に組み合わせられた円柱型炭素材が互いに絡まって3次元で相互連結されているセリア‐炭素(CeO‐C)複合体;及び前記セリア‐炭素複合体の外部表面及び内部の中の少なくとも一部に取り入れられた硫黄;を含むセリア‐炭素‐硫黄(CeO‐C‐S)複合体に関する。
【0019】
本発明において、前記円柱型炭素材は互いに絡まって3次元で相互連結されていて、整列された気孔からなる階層型気孔構造を有する炭素凝集体を形成する。よって、前記セリア‐炭素複合体は前記階層型気孔構造を有する炭素凝集体を成す円柱型炭素材表面にセリア粒子が結合されていることを意味し、前記セリア粒子はセリウム前駆体が円柱型炭素材の表面で化学的に成長して形成されたものである。
【0020】
本発明における階層型気孔構造(hierarchical porosity)とは、気孔を有し、前記気孔が3次元的に相互連結されるように整列された構造を意味する。
【0021】
この時、3次元構造とは2本以上が交差する交差点が3次元で分布することを意味してもよい。
【0022】
また、3次元構造とは2次元で絡まった各々の基本単位が再び3次元で絡まって最終的に3次元構造を有することを意味してもよい。前記「絡まった」は、2本以上が物理的接触を通じて互いに交差していることを意味する。
【0023】
本発明では、円柱型炭素材が凝集して階層型気孔構造を有する炭素凝集体を形成するが、前記炭素凝集体内の所定の大きさ以上の鋳型粒子、好ましくはマクロ気孔を必須的に含み、前記マクロ気孔がよく整列されて相互連結された構造を有する。
【0024】
前記マクロ気孔は、円柱形状を有する炭素材が互いに凝集されて気孔を成し、後述する鋳型粒子を取り除くことで形成される。
【0025】
前記円柱型炭素材は、球形の粒子やフレ‐ク形態ではなく、一方向に成長したロッド型(rod type)または内部が空いている円筒形構造を有する炭素材質を意味する。球形粒子ではないこのような円柱型構造を通じて一方向に整列されるマクロ気孔を容易に形成することができる。すなわち、円柱型炭素材ではない球形炭素材(例えば、カ‐ボンブラックなど)が炭素凝集体を製造するための原料として考慮することができるが、この時、球形炭素材を利用すると3次元的に互いに連結され、よく整列されたマクロ気孔の形成が容易ではない。
【0026】
本発明における前記円柱型炭素材は、炭素ナノチュ‐ブ(CNT)、グラファイトナノファイバ‐(GNF)、カ‐ボンナノファイバ‐(CNF)及び活性炭素繊維(ACF)からなる群から選択される1種以上を含んでもよく、好ましくは炭素ナノチュ‐ブを含んでもよい。また、前記炭素ナノチュ‐ブは、単一壁炭素ナノチュ‐ブ(SWCNT)または多重壁炭素ナノチュ‐ブ(MWCNT)をいずれも使用可能であり、製造方式によって球形タイプ、絡まった(entangled)タイプ及びバンドル(bundle)タイプからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の形態を有する。
【0027】
前記炭素凝集体は、数多くの複数の円柱型炭素材が互いに架橋されたり絡まって網状構造からなっていて、整列された気孔からなる階層型気孔構造を有する球形または楕円形の粒子であって、前記炭素凝集体を構成する各々の円柱型炭素材の断面の直径は1ないし100nm、具体的に1ないし50nm、より具体的に1ないし10nmであってもよい。
【0028】
前記階層型気孔構造を有する炭素凝集体を使用することによって電解液の浸透能力が向上し、充・放電時にリチウムポリスルフィドが溶出される時間を延ばすことができる。
【0029】
前記セリア粒子は、セリウム前駆体が化学的に成長して円柱型炭素材の表面に形成されたものである。本発明ではセリア粒子を炭素凝集体と物理的に混合したのではなく、セリウム前駆体を利用して円柱型炭素材の表面にセリア粒子を化学的に成長させたものなので、脱離に弱くない長所を持っている。
【0030】
前記化学的成長は、炭素凝集体及びセリウム前駆体に酸を添加して水熱反応によって行われる。前記酸は、セリウム前駆体がセリア粒子になるようにpHを調節するために使われたものであり、本発明で酸の種類を特に限定しないが、具体的に例えば、塩酸、6‐アミノヘキサン酸、硝酸及び酢酸からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0031】
前記セリアの粒径は10ないし30nmであり、好ましくは10ないし20nmである。前記セリアの粒径が10nmないし30nmであれば表面積が増加してリチウムポリスルフィドとの化学的吸着能力及び電池の寿命特性の向上効果を示すことができる。
【0032】
また、前記セリア粒子は、セリア‐炭素複合体の総重量に対して10ないし50重量%で含まれ、好ましくは10ないし30重量%で含まれる。前記セリア粒子が10ないし50重量%で含まれれば、優れた電気伝導度及び電気化学特性を示すことができる。
【0033】
前記セリア‐炭素複合体の平均直径は3ないし10μmであり、好ましくは4ないし7μmである。本発明で前記セリア‐炭素複合体の直径は、複合体断面の直径の中で最大値を意味する。前記セリア‐炭素複合体の直径が3μm未満であれば階層型気孔が多様に分布しないので硫黄を含浸させるには比表面積を確保し難い問題点があり、10μmを超えると電極均一性が低下して粒子間空隙が多量発生して硫黄の含量が減少するようになり、集電体との接触面積が減少するようになる。
【0034】
本発明で前記セリア‐炭素複合体は、上述したように円柱型炭素材が整列された気孔からなる階層型気孔構造を有する炭素凝集体を成す円柱型炭素材の表面にセリウム前駆体がセリア粒子として化学的成長したものであり、前記セリア粒子が炭素凝集体の階層型気孔を塞ぐことなく維持させることができ、そのため本発明の前記セリア‐炭素複合体は階層型気孔構造を有する。
【0035】
前記気孔はマクロ気孔(>50nm、macropore)で、具体的には前記マクロ気孔は300ないし800nmで、好ましくは500ないし600nmである。特に、マクロ気孔が一方向に整列されることで電子トンネリング(tunneling)及び電子パス(path)がセリア‐炭素‐硫黄複合体粒子の表面及び内部でも可能である。
【0036】
また、前記マクロ気孔が存在することによって硫黄の担持及び電解質の浸透を容易にし、高いC‐rateでの容量特性を確保することが可能である。
【0037】
前記セリア‐炭素複合体の孔隙率は10ないし60%であり、好ましくは10ないし30%である。前記セリア‐炭素複合体の孔隙率が10%未満であれば、セリア‐炭素複合体と硫黄の混合が容易ではなく、60%を超えると電極安定性が減少することがある。
【0038】
前記セリア‐炭素複合体の孔隙率は比表面積の増加を意味する。具体的に、本発明のセリア‐炭素複合体はBET方式で測定された比表面積が50ないし700m/gで、好ましくは100ないし400m/g、より好ましくは150ないし250m/gである。
【0039】
一般に、セリア粒子及び炭素凝集体を物理的に混合すればセリア粒子が炭素凝集体の気孔を塞ぐ現象が発生することがあるが、本発明はセリア粒子が炭素凝集体の気孔を塞ぐことなく、円柱型炭素材表面に結合されている。
【0040】
セリア粒子は、リチウムポリスルフィドに対する高い化学的吸着力を有する。前記セリア‐炭素複合体は、上述したようにセリウム前駆体が円柱型炭素材の表面にセリア粒子で化学的に成長したものなので、円柱型炭素材とセリア粒子間の強い結合力を有する。よって、これをリチウム‐硫黄電池に適用すれば、リチウム‐硫黄電池の反復的な充・放電によって約80%以下の体積膨脹が発生してもセリア粒子が円柱型炭素材から脱離されないため、反復的な充・放電にもリチウムポリスルフィドを吸着することができて電池の安定性及び寿命を向上させることができる。
【0041】
また、前記セリア‐炭素複合体の外部表面及び内部の中の少なくとも一部に硫黄が取り入れられてセリア‐炭素‐硫黄複合体を形成する。
【0042】
使用可能な硫黄は、リチウム‐硫黄電池で使用する様々な硫黄が使われてもよく、硫黄元素(Elemental sulfur、S)、硫黄系化合物またはこれらの混合物を含む。前記硫黄系化合物は、具体的に、固体Li(n=1)が溶解されたカソライト(Catholyte)、有機硫黄化合物及び炭素‐硫黄ポリマ‐[(C、x=2.5ないし50、n=2]からなる群から選択されるものであってもよい。
【0043】
前記セリア‐炭素‐硫黄複合体は、構造体内の様々な大きさの気孔及び3次元的に相互連結され、規則的に整列された気孔によって硫黄を高い含量で担持することができる。これによって、電気化学反応で溶解性があるリチウムポリスルフィドが生成されてもセリア‐炭素‐硫黄複合体の内部に位置するようになれば、リチウムポリスルフィドの溶出時にも3次元で絡まっている構造が維持され、正極構造が崩壊する現象を抑制することができる。その結果、前記セリア‐炭素‐硫黄複合体を含むリチウム‐硫黄電池は、高ロ‐ディング(high loading)でも高容量を具現することができる長所がある。本発明によるセリア‐炭素‐硫黄複合体の硫黄ロ‐ディング量は1ないし7mg/cmであってもよい。
【0044】
前記セリア‐炭素‐硫黄複合体において、セリア‐炭素複合体と硫黄または硫黄化合物の重量比は9:1ないし1:9、好ましくは5:5ないし1:9であってもよい。硫黄または硫黄化合物の含量が前記範囲未満であればセリア‐炭素複合体の含量が多くなり、炭素含量が増加することによって比表面積が増加してスラリ‐製造時にバインダ‐添加量を増加させなければならない。バインダ‐添加量の増加は結局電極の面抵抗を増加させるようになって、電子移動を防ぐ絶縁体の役目をするようになってセルの性能を低下させることがある。硫黄または硫黄化合物の含量が前記範囲を超えると、セリア‐炭素複合体と結合することができなかった硫黄または硫黄化合物がそれら同士で集まったり、セリア‐炭素複合体の表面に再溶出されて電子を受けにくいため、電極反応に直接参加しにくくなることがある。
【0045】
セリア‐炭素‐硫黄複合体の製造方法
本発明のセリア‐炭素‐硫黄複合体の製造方法は、
(a)鋳型粒子及び円柱型炭素材が混合された分散液を製造する段階;
(b)前記分散液を噴霧乾燥して鋳型粒子‐炭素複合体を製造する段階;
(c)前記鋳型粒子‐炭素複合体を熱処理して階層型気孔構造の炭素凝集体を製造する段階;
(d)前記炭素凝集体及びセリウム前駆体の混合液を製造する段階;
(e)前記混合液を加熱した後、酸を添加して水熱反応によってセリア‐炭素(CeO‐C)複合体を製造する段階;及び
(f)前記セリア‐炭素複合体に硫黄を含浸させてセリア‐炭素‐硫黄複合体を製造する段階;を含む。
【0046】
前記(a)段階は、鋳型粒子及び円柱型炭素材が混合された分散液を製造する段階である。
【0047】
前記円柱型炭素材は、前述した炭素ナノチュ‐ブ(CNT)、グラファイトナノファイバ‐(GNF)、カ‐ボンナノファイバ‐(CNF)及び活性炭素繊維(ACF)からなる群から選択される1種以上を含み、好ましくは炭素ナノチュ‐ブを含む。また、前記炭素ナノチュ‐ブは、具体的に単一壁炭素ナノチュ‐ブ(SWCNT)または多重壁炭素ナノチュ‐ブ(MWCNT)であってもよい。
【0048】
前記鋳型粒子は、炭素凝集体にマクロ気孔を形成させる一種の鋳型(template)として作用する。すなわち、マクロサイズの粒径を有する鋳型粒子は、分散液内で分散され、ナノ粒子特有の特性によって自己組織化されて格子形態で配列され、これらの格子間隔の間に円柱型炭素材が満たされる。次いで、鋳型粒子は後続の熱処理工程を通じて取り除かれ、この除去された位置で気孔を形成する。この時、前記円柱型炭素材の一方向に長い粒子相の特性によって前記鋳型粒子が取り除かれた後で形成された気孔は、よく整列されたマクロ気孔が形成されながら、3次元的に相互連結された構造の階層型気孔構造を形成する。
【0049】
使用可能な鋳型粒子は、この分野で通常使用可能なものであれば、いずれも使用されてもよく、特に熱処理工程で取り除くことができれば使用可能である。
【0050】
本発明で使用可能な鋳型粒子の非限定的な例としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレ‐ト、ポリフェニルメタクリレ‐ト、ポリアクリレ‐ト、ポリアルファメチルスチレン、ポリ(1‐メチルシクロヘキシルメタクリレ‐ト)、ポリシクロヘキシルメタクリレ‐ト、ポリベンジルメタクリレ‐ト、ポリクロロベンジルメタクリレ‐ト、ポリ(1‐フェニルシクロヘキシルメタクリレ‐ト)、ポリ(1‐フェニルエチルメタクリレ‐ト)、ポリパ‐フリルメタクリレ‐ト、ポリ(1,2‐ジフェニルエチルメタクリレ‐ト)、ポリペンタブロモフェニルメタクリレ‐ト、ポリジフェニルメチルメタクリレ‐ト、ポリペンタクロロフェニルメタクリレ‐トで、これらの共重合体及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、好ましくはポリスチレンを使用してもよい。
【0051】
特に、前記鋳型粒子の除去を通じてマクロ気孔が形成される点で、本発明の炭素凝集体に形成されるマクロ気孔の大きさは鋳型の粒径によって気孔の大きさが決まることがある。ここで、マクロ気孔の大きさを考慮して前記鋳型の粒径は50nm以上、好ましくは300ないし800nm、より好ましくは500ないし600nmを有するものを使用する。
【0052】
また、炭素凝集体の孔隙率及び比表面積は鋳型粒子の含量によって影響を受けるので、円柱型炭素材及び鋳型粒子は1:1ないし1:5、好ましくは1:2ないし1:4の重量比で混合される。もし、前記範囲未満であれば、密度を逆算した時、70重量%以上の硫黄を炭素材質の内部に含ませることができず、前記範囲を超えると過量の気孔を含んで構造自体の強度が弱くなるので、電極構造を維持し難い問題点がある。
【0053】
前記円柱型炭素材と鋳型粒子の分散液を製造するために使用される分散媒は、蒸溜水、アルコ‐ル、ベンゼン、トルエン、ピリジン、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)及びジメチルホルムアルデヒド(DMF)から選択された1種以上のものであってもよいが、好ましくは蒸溜水を適用して水系分散液を製造することができる。
【0054】
この時、分散液の濃度は様々なパラメ‐タ‐によって調節可能である。しかし、噴霧装置に容易に適用し、分散媒を除去しやすくて早く乾燥するために、分散液は円柱型炭素材を10ないし50g/Lの濃度で含む。さらに好ましくは、分散液は円柱型炭素材を10ないし30g/Lの濃度で含む。
【0055】
前記(b)段階は、前記(a)段階で製造した分散液を噴霧乾燥して鋳型粒子‐炭素複合体を製造する段階である。
【0056】
本発明の一実施例によって使用される前記噴霧乾燥方法は、前記前駆体分散液を噴霧装置内に供給して噴霧によって液滴を形成した後、前記液滴を乾燥して行われてもよい。この時、前記噴霧乾燥装置は噴霧装置(液滴発生装置)、反応器及び捕集部を含むことができるが、これに制限されない。
【0057】
この時、噴霧乾燥は、常温/常圧での噴霧、加圧噴霧または静電噴霧方式が使用されてもよく、本発明で特に限定しない。一例として、加圧噴霧は加圧噴霧器を通じて分散液を加圧噴霧して液滴を形成した後、拡散乾燥器を通じて粒子を製造する方式である。また、静電噴霧は高電圧発生器を利用して静電噴霧ノズルを通して液滴を形成した後、拡散乾燥器を通じて粒子を製造する方式である。
【0058】
本発明によって噴霧乾燥(Spray Drying)方法で製造すれば単一工程で階層型気孔構造を製作することができ、工程条件によって炭素凝集体の比表面積(Specific surface area)及び平均気孔サイズの制御が容易である。
【0059】
本発明の一実施例によれば、前記噴霧によって平均直径が0.5ないし100μmである液滴を形成することができ、前記乾燥によって液滴に含まれた分散媒が除去されることがある。前記液滴の直径は0.5ないし100μmの範囲が好ましく、より好ましくは5ないし30μmの範囲であってもよい。前記液滴の直径が0.5μm未満であれば、生成される炭素凝集体の大きさが小さくなりすぎることがあり、前記液滴の直径が100μmを超える場合は、生成される炭素凝集体の大きさが大きくなりすぎることがある問題点がある。
【0060】
前記乾燥工程は、液滴を構成する物質が粒子(すなわち、凝集体)に転換されるための温度以上であれば特に制限がないし、好ましくは分散媒が充分に取り除かれる50ないし180℃、より好ましくは60ないし150℃範囲の温度範囲で熱処理して行われることが好ましい。この時、前記乾燥温度は使用する分散媒によって変わることがある。
【0061】
乾燥された鋳型粒子‐炭素複合体は粒子形態(粉末)で得られ、前記鋳型粒子を取り除くために回収機を通じて回収する。
【0062】
前記(c)段階は、前記(b)段階で製造した鋳型粒子‐炭素複合体を熱処理して階層型気孔構造の炭素凝集体を製造する段階である。
【0063】
前記熱処理を通じて鋳型粒子を取り除いて円柱型炭素材が整列された気孔からなる階層型気孔構造の炭素凝集体を製造することができる。
【0064】
前記熱処理温度は、使用される鋳型粒子を取り除くことができる温度範囲で選択可能であり、熱処理時間は特に制限されないが、前記鋳型粒子が全て除去されるために充分な時間範囲で適切に選択する。例えば、前記熱処理温度は600ないし1200℃、好ましくは700ないし1100℃、より好ましくは800ないし1000℃範囲であってもよく、前記熱処理時間は1時間以上、具体的に1ないし10時間の範囲であってもよいが、これに制限されることではない。
【0065】
この時、熱処理は酸素を含まない不活性雰囲気、すなわち、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの不活性気体、水素、窒素、またはSF気体を含む雰囲気で行われるものであってもよく、前記不活性雰囲気での熱処理を通じて前記鋳型粒子を取り除くためのものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0066】
前記製造された炭素凝集体は、粒子の大きさを均一にするために必要な場合乾式ボ‐ルミル方法、乾式ジェットミル方法または乾式ダイノミル方法を利用して行ってもよく、具体的な方法はこの分野で通常使用する方法が使われてもよい。
【0067】
前記(d)段階は、前記(c)段階で製造された炭素凝集体とセリウム前駆体を含む混合液を製造する段階である。
【0068】
前記セリウム前駆体はその種類を特に限定しないが、本発明の一実施例としてCe(NO・6HOを使用した。
【0069】
前記炭素凝集体及びセリウム前駆体の混合溶媒は、セリウム前駆体を溶解させることができるものであれば、その種類を特に限定せず、好ましくは蒸溜水が使用されてもよい。
【0070】
前記(e)段階は、前記(d)段階で製造した混合液を加熱した後、酸を添加して水熱反応によってセリア‐炭素(CeO‐C)複合体を製造する段階である。
【0071】
前記水熱反応は70ないし150℃、好ましくは80ないし120℃で行われてもよい。前記温度が70℃未満であれば反応が開始されないか、または反応速度が遅すぎてセリア粒子が形成されないこともあり、150℃を超えるとセリア粒子の大きさがナノ水準を超えるバルク(bulk)した粒子が不均一に形成される。
【0072】
前記加熱温度を維持しながら前記混合液に酸を添加して水熱反応によって混合液に含まれたセリウムイオンをセリア粒子に転換させ、前記反応は4ないし12時間行われることができる。
【0073】
前記酸は、セリウムイオンがセリア粒子に転換されるようにpHを調節する役目をし、本発明で好ましいpH範囲は2ないし7である。
【0074】
また、前記酸はその種類が特に限定されるものではないが、具体的に例えば、塩酸、6‐アミノヘキサン酸、硝酸及び酢酸からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0075】
前記セリア粒子は、炭素凝集体の構成である円柱型炭素材の表面で化学的に成長する。前記セリアの粒径は10ないし30nmで、好ましくは10ないし20nmである。
【0076】
前記酸を添加する反応後、蒸溜水及びエタノ‐ルなどを使用して数回の洗浄過程を経た後、乾燥してセリア‐炭素複合体を収得することができる。
【0077】
前記セリア‐炭素複合体の総重量に対してセリアは10ないし50重量%、好ましくは10ないし30重量%で含まれてもよい。
【0078】
また、前記セリア‐炭素複合体の直径は3ないし10μmで、好ましくは4ないし7μmである。本発明において、前記セリア‐炭素複合体の直径は、複合体断面の直径の中で最大値を意味する。前記セリア‐炭素複合体の直径が3μm未満であれば、階層型気孔の分布が多様に分布しないため、硫黄を含浸させるには比表面積を確保し難い問題点があって、10μmを超えると電極均一性が低下しながら粒子間空隙が多量発生して硫黄含有量が減少するようになって、集電体との接触面積が減少するようになる。
【0079】
前記セリア‐炭素複合体の気孔はマクロ気孔であり、具体的に前記マクロ気孔は300ないし800nmで、好ましくは500ないし600nmである。
【0080】
また、前記セリア‐炭素複合体の孔隙率は10ないし60%であり、好ましくは10ないし30%である。前記セリア‐炭素複合体の孔隙率が10%未満であれば、セリア‐炭素複合体と硫黄の混合が容易ではなく、60%を超えると電極安定性が減少することがある。
【0081】
前記セリア‐炭素複合体の孔隙率は、比表面積の増加を意味する。具体的に、本発明のセリア‐炭素複合体は、BET方式で測定された比表面積が50ないし700m/gであり、好ましくは100ないし400m/g、より好ましくは150ないし250m/gである。
【0082】
前記(f)段階は、前記(e)段階で製造したセリア‐炭素複合体に硫黄を含浸させセリア‐炭素‐硫黄(CeO‐C‐S)複合体を製造する段階である。
硫黄の含浸は本発明で特に限定せず、公知の方法が利用されてもよい。
【0083】
前記硫黄または硫黄化合物を含浸させる段階は、セリア‐炭素複合体と硫黄または硫黄化合物の粉末を均一に混合した後、混合物を加熱して溶融された硫黄または硫黄化合物を炭素凝集体に含浸させて行うことができる。
【0084】
この時、毛細管現象によって硫黄または硫黄化合物が周りにあるセリア‐炭素複合体の内部に流れ込んで含浸されることがある。
【0085】
前記加熱温度は115ないし180℃以下、より具体的に150ないし160℃以下であってもよい。一実施例によると、硫黄がセリア‐炭素複合体の間の空隙よりはセリア‐炭素複合体の周りで均一にコ‐ティングされたことをEDS(energy dispersive spectroscopy)分析を通じて確認することができる。
【0086】
前記加熱時間は、硫黄または硫黄化合物とセリア‐炭素複合体の含量によって調節することができ、例えば、10秒以上、30秒以上であってもよく、2時間以下、1時間以下、30分以下、10分以下であってもよい。
【0087】
前記溶融温度が115℃未満の場合、硫黄または硫黄化合物の粒子が溶融されないため、硫黄または硫黄化合物がセリア‐炭素複合体に十分に含浸されないこともある。
【0088】
硫黄または硫黄化合物を含浸させる段階は、有機溶媒に硫黄または硫黄化合物を溶かした後、セリア‐炭素複合体を添加して硫黄または硫黄化合物を成長させて行うことができる。
【0089】
前記有機溶媒は、エタノ‐ル、トルエン、ベンゼン、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン及びメチレンクロライドからなる群から選択される一つまたは二つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0090】
前記硫黄または硫黄化合物を含浸させる段階は、炭素凝集体と硫黄または硫黄化合物粉末を混合した後、ボ‐ルミル方法で含浸させて行うことができる。
【0091】
前記混合方法は、一定時間パウダ‐ミキサ‐に入れて行うことができる。この時、混合時間は10分以上、30分以上であってもよく、10時間以下、5時間以下、2時間以下であってもよい。
【0092】
リチウム‐硫黄電池用正極
また、本発明は上述した本発明のセリア‐炭素‐硫黄複合体を含むリチウム‐硫黄電池用正極に関する。
【0093】
前記正極は、正極集電体上に正極活物質層形成用組成物を塗布及び乾燥して製作される。前記正極活物質層形成用組成物は、上述したセリア‐炭素‐硫黄複合体を導電材及びバインダ‐と混合した後、40ないし70℃で4時間ないし12時間乾燥して製造する。
【0094】
具体的に、前記製造されたセリア‐炭素‐硫黄複合体にさらに導電性を与えるために、前記正極組成物には導電材が追加されてもよい。前記導電材は電子が正極内で円滑に移動できるようにするための役目をして、電池に化学的変化を引き起こさずに導電性に優れて広い表面積を提供することができるものであれば特に制限しないが、好ましくは炭素系物質を使用する。
【0095】
前記炭素系物質では、天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛、グラフェン(Graphene)のような黒鉛(Graphite)系、活性炭(Active carbon)系、チャンネルブラック(Channel black)、ファ‐ネスブラック(Furnace black)、サ‐マルブラック(Thermal black)、コンタクトブラック(Contact black)、ランプブラック(Lamp black)、アセチレンブラック(Acetylene black)のようなカ‐ボンブラック(Carbon black)系;炭素繊維(Carbon fiber)系、炭素ナノチュ‐ブ(Carbon nanotube:CNT)、フラ‐レン(Fullerene)のような炭素ナノ構造体及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を使用することができる。
【0096】
前記炭素系物質以外も、目的に応じて金属メッシュなどの金属性繊維;銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)などの金属性粉末;またはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料も使用することができる。前記導電性材料は単独または混合して使用されてもよい。
【0097】
また、前記正極活物質に集電体に対する付着力を提供するために、前記正極組成物にはバインダ‐がさらに含まれることができる。前記バインダ‐は、溶媒によく溶解されるべきであり、正極活物質と導電材との導電ネットワ‐クをよく構成する上、電解液の含浸性も適当に持たなければならない。
【0098】
本発明に適用可能なバインダ‐は、当業界で公知された全てのバインダ‐であってもよく、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダ‐;スチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブチジエンゴム、スチレン‐イソプレンゴムを含むゴム系バインダ‐;カルボキシメチルセルロ‐ス(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロ‐ス、再生セルロ‐スを含むセルロ‐ス系バインダ‐;ポリアルコ‐ル系バインダ‐;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダ‐;ポリイミド系バインダ‐;ポリエステル系バインダ‐;シラン系バインダ‐;及びアクリレ‐ト系バインダ‐またはアクリレ‐ト系共重合体バインダ‐;からなる群から選択された1種または2種以上の混合物や共重合体であってもよいが、これに制限されないことは勿論である。
【0099】
前記バインダ‐樹脂の含量は、前記リチウム‐硫黄電池用正極の総重量を基準にして0.5ないし30重量%であってもよいが、これのみに限定されることではない。前記バインダ‐樹脂の含量が0.5重量%未満の場合は、正極の物理的性質が低下して正極活物質と導電材が脱落することがあるし、30重量%を超える場合は正極で活物質と導電材の割合が相対的に減少され、電池容量が減少されることがある。
【0100】
リチウム‐硫黄電池用正極組成物をスラリ‐状態で製造するための溶媒は、乾燥が容易でなければならず、バインダ‐を容易に溶解させることができ、正極活物質及び導電材を溶解させずに分散状態で維持させることができるものが最も好ましい。溶媒が正極活物質を溶解させる場合は、スラリ‐中の硫黄の比重(D=2.07)が高いため硫黄がスラリ‐中で沈むようになって、コ‐ティングの際に集電体に硫黄が集まって導電ネットワ‐クに問題が生じ、電池の作動に問題が発生する傾向がある。
【0101】
本発明による溶媒は、水または有機溶媒が可能であり、前記有機溶媒はジメチルホルムアミド、イソプロピルアルコ‐ル、アセトニトリル、メタノ‐ル、エタノ‐ル及びテトラヒドロフランからなる群から選択される1種以上を含む有機溶媒が適用可能である。
【0102】
前記正極組成物の混合は通常の混合器、例えばレイトスミキサ‐、高速せん断ミキサ‐、ホモミキサ‐などを利用して通常の方法で撹拌することができる。
【0103】
前記正極組成物を集電体に塗布し、真空乾燥してリチウム‐硫黄電池用正極を形成することができる。前記スラリ‐は、スラリ‐の粘度及び形成しようとする正極の厚さによって適切な厚さで集電体にコ‐ティングすることができ、好ましくは10ないし300μmの範囲内で適宜選択することができる。
【0104】
この時、前記スラリ‐をコ‐ティングする方法としてその制限はなく、例えば、ドクタ‐ブレ‐ドコ‐ティング(Doctor blade coating)、ディップコ‐ティング(Dip coating)、グラビアコ‐ティング(Gravure coating)、スリットダイコ‐ティング(Slit die coating)、スピンコ‐ティング(Spin coating)、コンマコ‐ティング(Comma coating)、バ‐コ‐ティング(Bar coating)、リバ‐スロ‐ルコ‐ティング(Reverse roll coating)、スクリ‐ンコ‐ティング(Screen coating)、キャップコ‐ティング(Cap coating)方法などを行って製造することができる。
【0105】
前記スラリ‐のコ‐ティングを進めた後、溶媒及び水を取り除くための乾燥条件は、一般的に硫黄(sulfur)の揮発が可能な80℃以下で進めることができ、より具体的には40ないし70℃の温度で乾燥し、乾燥時間は通常一晩(overnight)で進めることができる。
【0106】
前記正極集電体は、一般的に3~500μmの厚さで作ることができ、電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を有するものであれば特に制限しない。例えば、ステンレススチ‐ル、アルミニウム、銅、チタンなどの伝導性金属を使用することができ、好ましくはアルミニウム集電体を使用することができる。このような正極集電体は、フィルム、シ‐ト、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体または不織布体など様々な形態が可能である。
【0107】
リチウム‐硫黄電池
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極の間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム‐硫黄電池で、前記正極は上述した本発明の正極であるリチウム‐硫黄電池に関する。
【0108】
負極
負極は、負極集電体上に負極活物質が積層された形態を有する。必要な場合、前記負極集電体は省略可能である。
【0109】
この時、負極集電体は電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチ‐ル、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチ‐ルの表面にカ‐ボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使用されてもよい。また、その形態は表面に微細な凹凸が形成された/未形成のフィルム、シ‐ト、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態が使用されてもよい。
【0110】
リチウム金属層はリチウム金属またはリチウム合金であってもよい。この時、リチウム合金はリチウムと合金化が可能な元素を含み、この時の元素ではSi、Sn、C、Pt、Ir、Ni、Cu、Ti、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、Coまたはこれらの合金であってもよい。
【0111】
前記リチウム金属層はシ‐トまたはホイルであってもよく、場合によって集電体上にリチウム金属またはリチウム合金が乾式工程によって蒸着またはコ‐ティングされた形態であるか、または粒子相の金属及び合金が湿式工程などによって蒸着またはコ‐ティングされた形態であってもよい。
【0112】
分離膜
正極と負極の間には通常の分離膜が介在されてもよい。前記分離膜は電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜であって、通常の分離膜で使用されるものであれば特に制限せずに使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液の含湿能力に優れるものが好ましい。
【0113】
また、前記分離膜は正極と負極を互いに分離または絶縁させて正極と負極の間にリチウムイオンを輸送できるようにする。このような分離膜は多孔性で、非伝導性または絶縁性の物質からなってもよい。前記分離膜はフィルムのような独立的な部材であるか、または正極及び/または負極に付加されたコ‐ティング層であってもよい。
【0114】
具体的に、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレ‐ト共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用することができ、または通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレ‐ト繊維などからなる不織布を使用してもよいが、これに限定されない。
【0115】
電解液
前記リチウム‐硫黄電池の電解液は、リチウム塩含有電解液で水系または非水系電解液であってもよく、好ましくは有機溶媒電解液とリチウム塩からなる非水系電解質である。この他に有機固体電解質または無機固体電解質などが含まれてもよいが、これらのみに限定されることではない。
【0116】
非水系有機溶媒は、例えば、N‐メチル‐2‐ピロリジノン、プロピレンカ‐ボネ‐ト、エチレンカ‐ボネ‐ト、ブチレンカ‐ボネ‐ト、ジメチルカ‐ボネ‐ト、ジエチルカ‐ボネ‐ト、エチルメチルカ‐ボネ‐ト、ガンマ‐ブチロラクトン、1,2‐ジメトキシエタン、1,2‐ジエトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2‐メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3‐ジオキソラン、4‐メチル‐1,3‐ジオキセン、ジエチルエ‐テル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン、プロピレンカ‐ボネ‐ト誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エ‐テル系、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用されてもよい。
【0117】
この時、非水系溶媒として本発明の電極保護層と類似するようにエ‐テル系溶媒を使用し、その例では、テトラヒドロフラン、エチレンオキシド、1,3‐ジオキソラン、3,5‐ジメチルイソオキサゾ‐ル、2,5‐ジメチルフラン、フラン、2‐メチルフラン、1,4‐オキサン、4‐メチルジオキソランなどが使用される。
【0118】
前記リチウム塩は前記非水系電解質に溶解されやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、LiSCN、LiC(CFSO、(CFSONLi、(FSONLi、LiN(CFCFSO、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェノ‐ルホウ酸リチウム、リチウムイミドなどが使用されてもよい。
【0119】
前記リチウム塩の濃度は、電解質混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解された塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウムバッテリ‐分野に公知された他の要因のような多くの要因によって、0.2ないし2M、具体的に0.6ないし2M、より具体的に0.7ないし1.7Mであってもよい。0.2M未満で使用すると電解質の伝導度が低くなって電解質性能が低下することがあるし、2Mを超えて使用すると電解質の粘度が増加してリチウムイオン(Li)の移動性が減少されることがある。
【0120】
前記非水系有機溶媒は、リチウム塩をよく溶解しなければならず、本発明の非水系有機溶媒では、例えば、N‐メチル‐2‐ピロリジノン、プロピレンカ‐ボネ‐ト、エチレンカ‐ボネ‐ト、ブチレンカ‐ボネ‐ト、ジメチルカ‐ボネ‐ト、ジエチルカ‐ボネ‐ト、エチルメチルカ‐ボネ‐ト、ガンマ‐ブチロラクトン、1,2‐ジメトキシエタン、1,2‐ジエトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2‐メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3‐ジオキソラン、4‐メチル‐1,3‐ジオキセン、ジエチルエ‐テル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン、プロピレンカ‐ボネ‐ト誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エ‐テル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用されてもよく、前記有機溶媒は一つまたは二つ以上の有機溶媒の混合物であってもよい。
【0121】
前記有機固体電解質では、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマ‐、ポリアジテ‐ションリシン(Agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコ‐ル、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用されてもよい。
【0122】
本発明の無機固体電解質では、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN‐LiILiOH、LiSiO、LiSiO‐LiI‐LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO‐LiI‐LiOH、LiPO‐LiSSiSなどのLi窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用されてもよい。
【0123】
前述したリチウム‐硫黄電池の形態は特に制限されないし、例えば、ゼリ‐‐ロ‐ル型、スタック型、スタック‐フォ‐ルディング型(スタック‐Z‐フォ‐ルディング型を含む)、またはラミネ‐ション‐スタック型であってもよく、好ましくはスタック‐フォ‐ルディング型であってもよい。
【0124】
このような前記正極、分離膜及び負極が順次積層された電極組立体を製造した後、これを電池ケ‐スに入れた後、ケ‐ス上部に電解液を注入してキャッププレ‐ト及びガスケットで密封して組み立ててリチウム‐硫黄電池を製造する。
【0125】
前記リチウム‐硫黄電池は、形態によって円筒状、角形、コイン型、ポ‐チ型などに分類することができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分けることができる。これらの電池の構造と製造方法は、この分野に広く知られているので、詳しい説明は省略する。
【0126】
以下、本発明の効果に対して理解しやすくするために、実施例、比較例及び実験例を記載する。ただし、下記記載は本発明の内容及び効果に関する一例に該当するだけであって、本発明の権利範囲及び効果がこれに限定されることではない。
【0127】
<セリア‐炭素‐硫黄複合体の製造>
実施例1.
多重壁炭素ナノチュ‐ブ(MWCNT、diameter:10~20nm)の水系分散液とポリスチレン(PS、diameter:500~600nm)コロイド(colloid)溶液をMWCNT:PS=1g:3.5gの割合で混合して水系分散液を製造した。
【0128】
前記分散液を140℃で噴霧乾燥(Labplant社、SD‐Basic)してポリスチレン‐炭素ナノチュ‐ブ(PS‐MWCNT)複合体を製造した。PS‐MWCNT複合体を回収した後、アルゴン(Ar)雰囲気で、500℃で2時間熱処理することでポリスチレンを取り除いて、階層型気孔構造の炭素ナノチュ‐ブ凝集体を製造した(図2)。
【0129】
得られた炭素ナノチュ‐ブ凝集体0.45gとCe(NO・6HO 0.9gを蒸溜水に添加して、これを95℃の温度になるように加熱し、前記温度を維持しながら6‐アミノヘキサン酸1.75g及び塩酸0.07mLを添加して5時間水熱合成した。
【0130】
合成を終了した後、前記混合液を蒸溜水及びエタノ‐ルで数回洗浄した後、オ‐ブンで乾燥して階層型気孔構造を有する、多重壁炭素ナノチュ‐ブの表面にセリア粒子が組み合わせられたセリア‐炭素複合体を収得した(図3、4及び6)。
【0131】
前記セリア‐炭素複合体及び硫黄を3:7の重量比で混合した後、155℃で12時間含浸(melt diffusion)させてセリア‐炭素‐硫黄複合体を製造した。
【0132】
また、前記セリア‐炭素複合体の炭素ナノチュ‐ブを観察した結果、炭素ナノチュ‐ブの表面に約10ないし20nm直径のセリア粒子が結合されていて(図7)、X線回折分析(XRD)結果、炭素ナノチュ‐ブの表面に生成されたナノ粒子がセリア粒子であることを確認した(図8)。
【0133】
比較例1.
セリア(CeO)ナノ粒子(直径25nm)、多重壁炭素ナノチュ‐ブ(MWCNT、diameter:10~20nm)の水系分散液とポリスチレン(PS、diameter:500~600nm)コロイド(colloid)溶液をCeO+MWCNT:PS=1g:3.5gの割合で混合して水系分散液を製造した。
【0134】
前記分散液を140℃で噴霧乾燥(Labplant社、SD‐Basic)してセリア‐ポリスチレン‐炭素ナノチュ‐ブ(CeO‐PS‐MWCNT)複合体を製造した。
【0135】
前記CeO‐PS‐MWCNT複合体を回収した後、アルゴン(Ar)雰囲気で500℃で2時間熱処理することでポリスチレンを取り除いて、セリア粒子及び多重壁炭素ナノチュ‐ブが単純混合されたセリア‐炭素複合体を製造し、前記セリア‐炭素複合体は気孔がほぼ形成されていないことを確認した(図5)。
【0136】
前記セリア‐炭素複合体及び硫黄を3:7の重量比で混合した後、155℃で12時間含浸(melt diffusion)させてセリア‐炭素‐硫黄複合体を製造した。
【0137】
<リチウム‐硫黄電池の製造>
実施例2.
前記実施例1で製造されたセリア‐炭素‐硫黄複合体、導電材及びバインダ‐を8:1:1の重量比で混合した混合物を蒸溜水に溶解して正極活物質スラリ‐を製造した後、20μm厚さのアルミニウムホイルの集電体にコ‐ティングして正極を製造した。
【0138】
前記導電材としてカルボキシメチルセルロ‐ス(CMC)を使用し、バインダ‐としてスチレンブチレンゴム(SBR)を使用した。
【0139】
分離膜としてポリエチレンを使用し、負極として45μm厚さのリチウムホイルを使用してリチウム‐硫黄電池コインセルを製造した。この時、前記コインセルは、ジエチレングリコ‐ルジメチルエ‐テル及び1,3‐ジオキソランが1:1の体積比で混合された溶媒に1M LiFSI及び0.5M LiNOを溶解させて製造された電解液を使用した。
【0140】
比較例2.
前記比較例1で製造されたセリア‐炭素‐硫黄複合体を使用したことを除いては、前記実施例2と同様に行ってリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0141】
実験例1.リチウム‐硫黄電池の電気化学特性測定
前記実施例2及び比較例2で製造したリチウム‐硫黄電池の電気化学的特性を特定した。
充放電電圧の範囲は1.5~2.8V、放電Cレ‐ト1C、充電Cレ‐ト1Cで容量特性とク‐ロン効率を測定し、その結果を下記表1及び図9に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
前記表1の結果からみて、前記本発明の実施例1のセリア‐炭素‐硫黄複合体を含む実施例2のリチウム‐硫黄電池は、50サイクル後も初期容量がある程度維持されることを確認することができた。しかし、比較例1のセリア‐炭素‐硫黄複合体を含む比較例2のリチウム‐硫黄電池は、50サイクル後約40%以上の容量減少を示した。
【0144】
したがって、本発明のセリア‐炭素‐硫黄複合体を含むリチウム‐硫黄電池は、電池の寿命特性がとても優れることを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9