(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】綴じ具
(51)【国際特許分類】
B42F 13/22 20060101AFI20220425BHJP
【FI】
B42F13/22
(21)【出願番号】P 2017233269
(22)【出願日】2017-12-05
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕子
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-188053(JP,A)
【文献】特許第5590142(JP,B2)
【文献】米国特許第06293722(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42F 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジを介してその軸心周りに相対回動可能であり、その回動動作を通じて綴じ桿を開閉させる一組の綴じ桿部材と、
前記綴じ桿部材に対して相対変位可能であり、綴じ桿部材が前記綴じ桿を開放する方向に回動することを禁止するロック位置とこれを許容するアンロック位置とを選択的にとり得る操作部材と、
前記一組の綴じ桿部材のうちの少なくとも何れかと前記ロック位置にある前記操作部材との間に差し入ることで、同操作部材がアンロック位置に向かって変位することを抑止する拘束部材とを具備
し、
前記操作部材は、前記綴じ桿部材に対し前記軸心方向に沿ってスライド可能であり、綴じ桿部材が前記綴じ桿を開放する方向に回動することを禁止するストッパを有しており、
前記操作部材が前記ロック位置にあるときに前記ストッパが前記綴じ桿部材の所定部位に接触する一方、前記アンロック位置にあるときには綴じ桿部材を回動させても当該ストッパが綴じ桿部材の所定部位に接触せず、
前記拘束部材は、前記綴じ桿部材における前記軸心方向に沿った一方側の端部と、前記ロック位置にある前記操作部材の前記軸心方向に沿った一方側の端部との間に差し入るものであって、
前記拘束部材が、前記綴じ桿部材の一方側の端部と前記操作部材の一方側の端部との間に差し入る拘束位置と、それら両者の間から脱出する非拘束位置との間で回動可能であるように操作部材に支持されている綴じ具。
【請求項2】
前記綴じ桿部材と前記操作部材との間に介在し、前記操作部材を前記ロック位置から前記アンロック位置に向けて変位させる操作力を、前記綴じ桿部材を前記綴じ桿が開放する方向に回動させる力に変換する操作力変換機構を具備する請求項1記載の綴じ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類を綴じ止めるための綴じ具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献に、ルーズリーフやクリアブックのリフィル等の紙葉類を綴じ止めることのできるリング綴じ具が開示されている。この綴じ具は、ヒンジを介してその軸心周りに相対回動可能な一組の綴じ桿部材と、綴じ桿部材に対し軸心方向に沿って相対変位可能な操作部材とを具備してなる。操作部材は、ロック位置において綴じ桿部材が綴じ桿を開放する方向に回動することを禁止し、アンロック位置において綴じ桿部材が同方向に回動することを許容する。ユーザが操作部材をロック位置からアンロック位置にスライド移動させれば、綴じ桿を開くことができ、任意に紙葉類を差し替えることが可能となる。
【0003】
上掲の綴じ具は、綴じ桿を簡単に開放操作できる優れた利便性を有している。一方で、鞄やリュックサックの中に収納されているとき等に、操作部材に強い外力が作用してこれがアンロック位置に変位し、その結果不意に綴じ桿が開いて、綴じていた紙葉類がばらけてしまう可能性を完全には否定できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5590142号公報
【文献】特許第5590143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、綴じ具の操作部材が意図せずロック位置からアンロック位置へと変位することを防止しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、ヒンジを介してその軸心周りに相対回動可能であり、その回動動作を通じて綴じ桿を開閉させる一組の綴じ桿部材と、前記綴じ桿部材に対して相対変位可能であり、綴じ桿部材が前記綴じ桿を開放する方向に回動することを禁止するロック位置とこれを許容するアンロック位置とを選択的にとり得る操作部材と、前記一組の綴じ桿部材のうちの少なくとも何れかと前記ロック位置にある前記操作部材との間に差し入ることで、同操作部材がアンロック位置に向かって変位することを抑止する拘束部材とを具備する綴じ具を構成した。
【0007】
前記操作部材は、前記綴じ桿部材に対し前記軸心方向に沿ってスライド可能であり、綴じ桿部材が前記綴じ桿を開放する方向に回動することを禁止するストッパを有しており、前記操作部材が前記ロック位置にあるときに前記ストッパが前記綴じ桿部材の所定部位に接触する一方、前記アンロック位置にあるときには綴じ桿部材を回動させても当該ストッパが綴じ桿部材の所定部位に接触しないものとすれば、綴じ桿部材、操作部材及び拘束部材によって綴じ具の基本構成が完結し、部品点数を削減することができる。
【0008】
前記拘束部材は、例えば、前記綴じ桿部材における前記軸心方向に沿った一方側の端部と、前記ロック位置にある前記操作部材の前記軸心方向に沿った一方側の端部との間に差し入るものである。この場合、前記拘束部材が、前記綴じ桿部材の一方側の端部と前記操作部材の一方側の端部との間に差し入る拘束位置と、それら両者の間から脱出する非拘束位置との間で回動可能であるように操作部材に支持されていることが好ましい。
【0009】
さらに、前記綴じ桿部材と前記操作部材との間に介在し、前記操作部材を前記ロック位置から前記アンロック位置に向けて変位させる操作力を、前記綴じ桿部材を前記綴じ桿が開放する方向に回動させる力に変換する操作力変換機構を具備していれば、操作部材をロック位置におくことで綴じ桿を閉止状態に維持できる上、綴じ桿を開放するべく操作部材をロック位置からアンロック位置へと変位させる過程で綴じ桿部材が自ずから相対回動し、綴じ桿を開くことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、綴じ具の操作部材が意図せずロック位置からアンロック位置へと変位することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態における綴じ具を使用したリングノートを示す斜視図。
【
図3】同実施形態の綴じ具の綴じ桿部材を示す斜視図。
【
図4】同実施形態の綴じ具の操作部材を示す斜視図。
【
図8】同実施形態の綴じ具における綴じ桿部材の腕部並びに操作部材の切欠の形状及び位置関係を示す図。
【
図21】本発明の変形例の一に係る綴じ桿部材を示す要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1ないし
図20に示す本実施形態の綴じ具0は、開閉可能な複数本の綴じ桿12、22を備えたリング綴じ具である。綴じ桿12、22は、予め紙葉類Sに穿たれている綴じ孔に挿通されて、紙葉類Sを綴じ止める。特に、
図1に示しているように、ノートの中紙となる複数枚のリーフやクリアブックのリフィル(さらには、表表紙や裏表紙)等Sを綴じることで、リングノートとしての用途に供することができる。このリングノートは、ページを180°の角度に開いた見開き状態とすることが可能である。
【0013】
本実施形態の綴じ具0は、互いに相対的に回動する第一の綴じ桿部材1及び第二の綴じ桿部材2と、両綴じ桿部材1、2が支持する綴じ桿の開放状態/閉止状態を切り替えるために操作される操作部材3と、操作部材3を弾性付勢する弾性付勢部材たるコイルばね4とを構成部材とする。
【0014】
第一の綴じ桿部材1の形状と第二の綴じ桿部材2の形状とは相似している。第一の綴じ桿部材1は、軸心方向に対して平行に長尺な棒状の基体11と、基体11から伸び出した綴じ桿要素12と、基体11から離間し当該綴じ桿部材1の回転中心となる軸体13と、この軸体13を基体11に連接する腕部14とを備える。本実施形態では、これら基体11、綴じ桿要素12、軸体13及び腕部14を樹脂一体成形している。
【0015】
綴じ桿要素12は多数本存在し、それらが軸心方向に沿って立ち並んでいる。個々の綴じ桿要素12は、基体11の外側面112から軸心方向に対して垂直な外側方に一旦直進して突き出し、その外方端から円弧または楕円弧を描くように湾曲して立ち上がっている。綴じ桿要素12の基端部の直進部分の上面は、基体11の頂面113と略面一である。また、綴じ桿要素12の先端部は、相手方である第二の綴じ桿部材2の綴じ桿要素22に向かうように直線的に伸びている。その伸長方向は、基体11、21の頂面113、213に対して略平行である。綴じ桿要素12の湾曲部分の断面は、軸心方向に少しく拡張した扁平な形状、略長円状または略角丸四角状をなす。綴じ桿要素12の先端部は、合决りの如く切り欠いてある。
【0016】
軸体13は、全体的には略円柱状の外形をなし、軸心方向に沿って伸長している。但し、詳しくは後述するが、軸体13にはその一部を切り欠いた部位が存在する。軸体13は、複数(図示例では、綴じ桿要素12の本数の約半数)に分かたれている。そして、綴じ桿部材1の軸心方向に沿った中間部を除き、それら軸体13が同心軸上に所定の間隙を隔てて並んでいる。軸体13は、その軸心が基体11の内側面111と略同一平面上にあるように、基体11からやや内側方に偏倚している。
【0017】
軸体13の一端面には凹部131を、他端面には凸部132を、それぞれ形成している。凸部132は、軸体13の軸心に重なる半球状の突起である。凹部131は、軸体13の軸心位置から外側方に延びて軸体13の外周にまで達した、即ち外側方に開口した凹溝であって、その内面は縦断面視(軸心方向と平行な面で切った断面視、または外側面視)凸部132、232の径と同等の径の半円筒状をなしており、その溝幅も凸部132、232の径に略等しい。さらには、凹部131の内方端縁もまた、横断面視(軸心方向と直交する面で切った断面視、または軸心方向から見て)凸部132、232の径と同等の径の半円弧状となっている。
【0018】
腕部14は、一つの軸体13について二つ存在し、軸体13の軸心方向に沿った両端部をそれぞれ基体11に接合している。腕部14における、基体11の内側面111に連なる内方の側面141は、基体11の内側面111に対して傾斜している。他方、腕部14における、基体11の外側面112に連なる外方の側面142は、基体11の外側面112と略面一である。加えて、各腕部14の外方の下面における、軸心方向に沿って他端側に、基体11の底面114よりも若干ながら下方に突出する突出部143を成形している。この腕部14の外方の突出部143は、
図5等に示しているように、軸心方向に沿った両端縁が外側面視Rをとったような曲面状となっている。
【0019】
基体11は、ちょうど角棒の内側面111と底面114とに跨るように凹曲面115を成形した横断面形状を有している。この凹曲面115により、基体11と軸体13との狭間にある、腕部14の対に挟まれた領域には、横断面視軸心回りの円環をなすようなスリット状の空隙15が形成される。加えて、基体11における、複数の軸体13の間隙に臨む部位では、内側面111と凹曲面115とが交わる隅角を面取りしている。
【0020】
基体11の内側面111と一端側の端面との隅角116は、その側面が軸心方向に対して交差する方向を向くように面取りまたは丸面取りしてある。
【0021】
第二の綴じ桿部材2は、第一の綴じ桿部材1側の基体11と同等に長尺な棒状の基体21と、基体21から伸び出した綴じ桿要素22と、基体21から離間し当該綴じ桿部材2の回転中心となる軸体23と、この軸体23を基体21に連接する腕部24とを備える。そして、やはりこれら基体21、綴じ桿要素22、軸体23及び腕部24を樹脂一体成形している。
【0022】
綴じ桿要素22は、第一の綴じ桿部材1側の綴じ桿要素12と対をなして環状の綴じ桿を構成する。各綴じ桿要素22は、基体21の外側面212から軸心方向に対して垂直な外側方に一旦直進して突き出し、その外方端から円弧または楕円弧を描くように湾曲して立ち上がっている。綴じ桿要素22の基端部の直進部分の上面は、基体21の頂面213と略面一である。また、綴じ桿要素22の先端部は、相手方である第一の綴じ桿部材1の綴じ桿要素12に向かうように直線的に伸びている。その伸長方向は、基体11、21の頂面113、213に対して略平行である。綴じ桿要素22の湾曲部分の断面は、軸心方向に少しく拡張した扁平な形状、略長円状または略角丸四角状をなす。綴じ桿要素22の先端部は、合决りの如く切り欠いてある。
【0023】
軸体23は、全体的には第一の綴じ桿部材1側の軸体13と同径の略円筒状の外形をなしており、軸心方向に沿って伸長している。但し、後述するように、軸体23にはその一部を切り欠いた部位が存在する。軸体23は複数に分かたれており、綴じ桿部材2の軸心方向に沿った中間部を除き、それらが同心軸上に所定の間隙を隔てて並んでいる。これら軸体23は、第一の綴じ桿部材1側の複数の軸体13の間隙に収まるように配設してある。第二の綴じ桿部材2側の軸体23の軸心方向寸法は第一の綴じ桿部材1側の軸体13の間隙のそれに略等しく、第一の綴じ桿部材1側の軸体13の軸心方向寸法は第二の綴じ桿部材2側の軸体23の間隙のそれに略等しい。軸体23は、その軸心が基体21の内側面211と略同一平面上にあるように、基体21からやや内側方に偏倚している。
【0024】
軸体23の一端面には凹部231を、他端面には凸部232を、それぞれ形成している。凹部231は、第一の綴じ桿部材1側の軸体13の凸部132を収容する。逆に、凸部232は、第一の綴じ桿部材1側の軸体13の凹部131に挿入する。凸部232は、軸体23の軸心に重なる半球状の突起である。凹部231は、軸体23の軸心位置から外側方に延びて軸体23の外周にまで達した凹溝であって、その内面は縦断面視凸部132、232の径と同等の径の半円筒状をなしており、その溝幅も凸部132、232の径に略等しい。凹部231の内方端縁もまた、横断面視凸部132、232の径と同等の径の半円弧状となっている。
【0025】
腕部24は、軸体23の軸心方向に沿った両端部をそれぞれ基体21に接合している。腕部24における、基体21の内側面211に連なる内方の側面241は、基体21の内側面211に対して傾斜している。他方、腕部24における、基体21の外側面212に連なる外方の側面242は、基体21の外側面212と略面一である。加えて、各腕部24の外方の下面における、軸心方向に沿って他端側に、基体21の底面214よりも若干ながら下方に突出する突出部243を成形している。この腕部24の外方の突出部243は、
図8等に示しているように、軸心方向に沿った両端縁が外側面視Rをとったような曲面状となっている。
【0026】
基体21は、ちょうど角棒の内側面211と底面214とに跨るように凹曲面215を成形した横断面形状を有している。この凹曲面215により、基体21と軸体23との狭間にある、腕部24の対に挟まれた領域には、横断面視軸心回りの円環をなすようなスリット状の空隙25が形成される。加えて、基体21における、複数の軸体23の間隙に臨む部位では、内側面211と凹曲面215とが交わる隅角を面取りしている。
【0027】
基体21の内側面211と一端側の端面との隅角216は、その側面が軸心方向に対して交差する方向を向くように面取りまたは丸面取りしてある。
【0028】
しかして、
図3及び
図9に示すように、第二の綴じ桿部材2の中間部、軸体23の存在しない領域に、フック26を設けている。フック26は、コイルばね4の一端を支持するためのもので、縦断面視基体21の底面214よりも下方に突き出した略L字形をなす。
【0029】
操作部材3は、綴じ桿部材1、2におけるヒンジの軸となる軸体13、23をくわえ込んで保持し、当該軸体13、23を被覆する被覆体である。操作部材3は、軸心方向に対して平行に延伸しつつ並立した側壁31、32と、両側壁31、32を連結する底壁33とを備える。本実施形態では、これら側壁31、32及び底壁33を樹脂一体成形しており、側壁31、32と底壁33とで略C字またはU字管状の周壁を形作っている。操作部材3の全長は、綴じ桿部材1、2の基体11、21のそれよりも大きい。
【0030】
各側壁31、32の上端縁には、複数箇所に切欠311、321を形成してある。一方側の側壁31の切欠311の数は第一の綴じ桿部材1の腕部14の数と同じであり、他方側の側壁32の切欠321の数は第二の綴じ桿部材2の腕部24の数と同じである。また、一方側の側壁31の切欠311の位置は第一の綴じ桿部材1の腕部14の配置に対応しており、他方側の側壁32の切欠321の位置は第二の綴じ桿部材2の腕部24の配置に対応している。それ故、切欠311と切欠321とは、軸心方向にずれている。切欠311、321の軸心方向に沿った開口幅寸法は、腕部14、24の軸心方向寸法よりも多少大きい。切欠311、321の下端は、側壁31、32の内側面近傍を除き、外側方に向かうほど下方に落ち込む傾斜端面である。
【0031】
さらに、両側壁31、32における、切欠311、321の形成箇所から軸心方向に偏倚した場所に、突起312、313、322、323を設けている。即ち、一方側の側壁31の上端部の内側面から突起312、313が他方側の側壁32の内側面に向かって突出し、他方の側壁32の上端部の内側面からは突起322、323が一方の側壁31の内側面に向かって突出している。ここで、突起313、323が側壁31、32の内側面から内側方に突出する寸法は、突起312、322が側壁31、32の内側面から内側方に突出する寸法よりも大きい。
【0032】
一方側の突起312、313と、他方側の突起322、323とは、両側壁31、32が離間する方向(両側壁31、32の内側面が向き合う方向)に沿って対向していることがある。但し、その場合にも、突出寸法の大きい突起313、323同士が対向することはなく、突出寸法の大きい突起313、323は突出寸法の小さい突起322、312と対向する。一方側の突起312、313と、他方側の突起322、323とが、軸心方向に沿って互いに偏倚していてもよい。換言すれば、一方側の突起312、313と、他方側の突起322、323とを、軸心方向に沿って互い違いに設けることもできる。
【0033】
底壁33は、両側壁31、32の下端部同士を連接し、両側壁31、32とともにチャネル状をなす操作部材3の内部空間を包囲している。綴じ桿部材1、2の軸体13、23は、この操作部材3の内部空間に収容される。側壁31、32間の内法、換言すれば両側壁31、32が離間する方向に沿った内部空間の内寸は、綴じ桿部材1、2の軸体13、23の外径に略等しいかそれよりも若干大きい。一方側の側壁31の上端部から突出する突起312、313と他方側の側壁32との間の隙間、並びに、他方側の側壁32の上端部から突出する突起322、323と一方側の側壁31との間の隙間(さらに言えば、一方側の突起312、313と他方側の突起322、323との間の隙間)は何れも、両側壁31、32の離間方向に沿った内部空間の内寸よりも狭まっている。また、底壁33は、軸体13、23の外径に略等しいかそれよりも若干大きい内径を有する略部分円筒となっている。因みに、底壁33における、突起312、322の直下にあたる位置に穿たれている貫通孔331は、突起312、322を成形するための型抜き用の孔である。
【0034】
操作部材3の周壁31、32、33により包囲された内部空間は、操作部材3の軸心方向に沿った両端部にて閉塞されている。操作部材3の一端は、ユーザがこれを把持するための把手34となる。そして、この把手34に隣接する位置に、拡開部35を設けている。拡開部35は、操作部材3の他端に向かって延びるブロック状の部位で、その先端側に平面視くさび形をなすように両外側方を向いた傾斜面351、352を形成してある。拡開部35の傾斜面351、352は、それぞれが軸心方向に対して交差しており、両綴じ桿部材1、2の基体11、21の一端に形成した各傾斜面116、216に略平行である。操作部材3の拡開部35と両綴じ桿部材1、2の基体11、21の一端とは、後述する操作力変換機構を構成する。
【0035】
しかして、
図4及び
図9に示すように、操作部材3の中間部、綴じ桿部材1、2の軸体13、23の存在しない領域に、フック36を設けている。フック36は、コイルばね4の他端を支持するためのもので、縦断面視底壁33の上面よりも上方に突き出した略L字形をなし、第二の綴じ桿部材2に設けたフック26と軸心方向に沿って対向する。
【0036】
本実施形態の綴じ具0を組み立てるにあたっては、まず、第一の綴じ桿部材1の軸体13と第二の綴じ桿部材2の軸体23とを同心軸上に配置する。軸体13の凸部132は軸体23の凹部231内に挿入し、軸体23の凸部232は軸体13の凹部131内に挿入する。両綴じ桿部材1、2の軸体13、23は、互いに密接ないし近接して交互に並ぶ様相となる。
【0037】
その上で、両綴じ桿部材1、2の軸体13、23をくわえ込むように操作部材3を組み付ける。即ち、操作部材3の側壁31、32及び底壁33に包囲された内部空間に、両綴じ桿部材1、2の軸体13、23を嵌め入れる。なお、このとき、
図7、
図16ないし
図19に示すように、双方の綴じ桿要素12、22が開放した姿勢をとるよう、予め綴じ桿部材1、2を回動させておく必要がある。さもなくば、綴じ桿部材1、2の軸体13、23の外周が操作部材3の突起313、323と干渉して、軸体13、23を操作部材3の内部空間にうまく挿入することができない。
【0038】
操作部材3が両綴じ桿部材1、2の軸体13、23を被覆し保持している状態で、各綴じ桿部材1、2は、その軸体13、23を回転軸として正逆回転することが可能である。なおかつ、操作部材3は、綴じ桿部材1、2に対して相対的に、軸体13、23に沿って軸心方向にスライド移動することが可能である。操作部材3の側壁31、32の内面から突出している突起312、313、322、323は、綴じ桿部材1、2の軸体13、23に係合して、軸体13、23が操作部材3の内部空間から脱出することを阻む。つまり、突起312、313、322、323は、操作部材3の綴じ桿部材1、2からの脱離、ひいては綴じ具0の分解を抑止する係止部として機能する。
【0039】
また、
図9に示しているように、第二の綴じ桿部材2に設けたフック26と操作部材3に設けたフック36とに、コイルばね4の両端をそれぞれ掛け止める。綴じ桿部材1、2の軸体13、23を操作部材3に嵌め入れることで、操作部材3のフック36は、第二の綴じ桿部材2のフック26よりもさらに他端側に配置される。
【0040】
第一の綴じ桿部材1と第二の綴じ桿部材2とは、軸体13、23の軸心周りに相対的に回動する。その回動動作を通じて、綴じ桿要素12と綴じ桿要素22とで構成する環状の綴じ桿を開閉することができる。
図6、
図10等に示すように、綴じ桿12、22を閉じた状態では、一方側の綴じ桿要素12の先端部と他方側の綴じ桿要素22の先端部とが合决り構造の如く軸心方向に重なり合い、綴じ桿に綴じ止めている紙葉類Sの抜出を阻止する。
図7、
図11等に示すように、綴じ桿12、22を開いた状態では、両綴じ桿要素12、22の先端部同士が離反して、紙葉類Sの抜出を許容する。
【0041】
操作部材3は、綴じ桿部材1、2に対して軸心方向に相対変位し、
図10に示すロック位置と、
図11に示すアンロック位置とを選択的にとり得る。操作部材3がロック位置にあるとき、一方側の側壁31に形成している切欠311は同じ側の綴じ桿部材1の腕部14に対して軸心方向にずれており、他方側の側壁32に形成している切欠321も同じ側の綴じ桿部材2の腕部24に対して軸心方向にずれている。そのため、
図12ないし
図15に示しているように、両綴じ桿部材1、2を綴じ桿12、22を開放する方向に回動させようとしても、腕部14、24が操作部材3の側壁31、32の端縁に衝突してしまい、回動させることができない。換言すれば、操作部材3の側壁31、32における切り欠かれていない端縁がストッパとなって、綴じ桿12、22を開放することを禁止する。
【0042】
加えて、操作部材3がロック位置にあり、綴じ桿12、22が閉じているとき、第一の綴じ桿部材1の基体11と、第二の綴じ桿部材2の基体21とは、その内側面111、211同士が当接ないし近接した状態となる。操作部材3の一端側に設けた拡開部35は、両綴じ桿部材1、2の基体11、21の一端に(近接はしているものの)必ずしも接触していない。操作部材3に設けたフック36は、第二の綴じ桿部材2に設けたフック26に比較的近い位置にあり、両フック26、36に掛けているコイルばね4は張力を発揮しない。
【0043】
翻って、操作部材3をロック位置からアンロック位置に向けてスライド移動させると、
図8及び
図11に示すように、一方側の側壁31に形成している切欠311の軸心方向に沿った位置が同じ側の綴じ桿部材1の腕部14に合致し、また他方側の側壁32に形成している切欠321の軸心方向に沿った位置も同じ側の綴じ桿部材2の腕部24に合致する。従って、腕部14、24が切欠311、321内に進入できるようになる。のみならず、同一の軸体13、23に連接する腕部14、24の対に挟まれた空隙15、25に、操作部材3の側壁31、32における、切欠311、321の対に挟まれた部位が進入できるようにもなる。結果として、
図16ないし
図19に示すように、両綴じ桿部材1、2を相対回動させて綴じ桿12、22を開放することが許容されることとなる。
【0044】
同時に、操作部材3がロック位置からアンロック位置へと変位する過程で、操作部材3の一端側に設けた拡開部35の傾斜面351、352が、両綴じ桿部材1、2の基体11、21の一端に形成している傾斜面116、216に接触し、さらにはこれら基体11、21を互いに離反する方向に押し広げる。最終的に、操作部材3の拡開部35は両綴じ桿部材1、2の基体11、21の内側面111、211間に入り込む。つまり、拡開部35と基体11、21の一端とが操作力変換機構として働き、操作部材3を軸心方向にスライドさせる操作力を、綴じ桿部材1、2を綴じ桿12、22が開放する方向に回動させる力に変換する。
【0045】
総じて言えば、操作部材3をロック位置からアンロック位置へと変位させることで、ストッパが両綴じ桿部材1、2の腕部14、24から軸心方向に沿って退避しつつ、拡開部35が両綴じ桿部材1、2を押し広げて綴じ桿12、22を開放させる。また、操作部材3の変位により、操作部材3に設けたフック36が第二の綴じ桿部材2に設けたフック26から遠ざかるため、両フック26、36に掛けているコイルばね4が引き伸ばされて張力を発揮するようになる。
【0046】
綴じ桿12、22を開放している間は、操作部材3をアンロック位置からロック位置に向けて変位させる方向の弾性付勢力、即ちコイルばね4の引っ張り張力が働くが、綴じ桿部材1、2の腕部14、24が側壁31、32の切欠311、321の開口縁に係合することから、操作部材3はアンロック位置に維持される。この状態で、ユーザが両綴じ桿要素12、22を手指で摘んで閉じる操作を行うと、綴じ桿部材1、2が互いに相寄る方向に回動し、各腕部14、24が操作部材3の側壁31、32の切欠311、321から脱出する。従って、操作部材3がロック位置に復帰することが許容される。
【0047】
綴じ桿部材1、2の基体11、22は長尺であるので、多数本存在する綴じ桿の一部を摘んで閉じようとしても、当該部位と他の部位との間でねじれを生じ、綴じ桿部材1、2全体が綴じ桿12、22を閉じる方向に回動しないおそれがある。しかしながら、弾性付勢されている操作部材3がロック位置に向けて変位しようとし、その力が側壁31、32の切欠311、321の開口縁を介して綴じ桿部材1、2の腕部14、24を内側方に押し戻そうとするため、基体11、21のねじれが抑制され、綴じ桿部材1、2全体が回動して全ての綴じ桿12、22を一斉に閉じることができる。
【0048】
本実施形態では、円柱状の外形を有した軸体13、23の一部を、横断面視略扇形をなすように切り欠いている。
図14、
図15、
図18及び
図19に示すように、切欠133、233は、横断面視軸体13、23の軸心近傍から径方向に沿って外方に向かうにつれて拡開する略扇形をなし、その中心角の大きさは90°よりも大きく180°よりも小さい。つまり、軸体13、23における、切欠133、233が形成されている部位の横断面形状は、中心角が180°よりも大きく270°よりも小さい扇形となっている。
【0049】
軸体13、23を操作部材3の側壁31、32間の内部空間に嵌め入れたとき、切欠133、233は双方の綴じ桿12、22が開く側に向かって開口するとともに、その切欠133、233の内に突出寸法の大きい突起313、323が入り込む。切欠133、233は、軸体13、23の軸心方向に沿って、操作部材3がロック位置とアンロック位置との間でスライド移動する際の変位量と同程度に、またはそれよりもやや大きく拡張している。切欠133、233内にある突起313、323が、操作部材3のロック位置からアンロック位置への、またはアンロック位置からロック位置へのスライド移動の妨げとなることはない。
【0050】
軸体13、23の切欠133、233が形成されている部位の、軸体13、23を操作部材3(の内部空間)に対して挿抜する方向である上下方向から見た外寸(両側壁31、32の離間方向に沿った外寸)W、W’は、
図18及び
図19に示すように綴じ桿12、22を開放した状態でより小さくなり、
図14及び
図15に示すように綴じ桿12、22を閉止した状態ではより大きくなる。ここに言う上下方向とは、軸心方向及び操作部材3の両側壁31、32の離間方向と略直交する方向であり、軸体13、23を操作部材3に対して挿抜する際に当該軸体13、23が底壁33に向かって接近しまたは底壁33から離反する方向である。何れにせよ、軸体13、23の切欠133、233が形成されている部位の外寸W、W’は、操作部材3において対向している小さな突起312、322と大きな突起323、313との間の隙間よりは大きい。
【0051】
しかも、切欠133、233の内に収まる突起313、323の下面314、324は、軸体13、23を操作部材3に対して挿抜する上下方向に沿って底壁33側、即ち下方を向いている。そして、
図14及び
図15に示しているように、綴じ桿12、22が閉止した姿勢をとる状態では、軸体13、23の切欠133、233の上方を向く端面134、234がこの突起313、323の下面314、324に面接触して当接する。従って、この状態で軸体13、23を操作部材3の内部空間から脱出させることは不可能であるか、そうでなくとも極めて困難となる。換言すれば、綴じ桿12、22を閉じて紙葉類Sを綴じ止めている綴じ具0(の綴じ桿部材1、2または操作部材3)に大きな衝撃が加わったとしても、操作部材3が綴じ桿部材1、2から脱離して綴じ具0が分解し、綴じていた紙葉類Sがばらけてしまうようなことがない。
【0052】
既に述べた通り、軸体13、23を操作部材3の内部空間に嵌め入れ、または軸体13、23を操作部材3の内部空間から抜き出すためには、
図18及び
図19に示すように、綴じ桿部材1、2を回動させて綴じ桿12、22が開放した姿勢とする。さすれば、上下方向から見た軸体13、23の外寸Wが(綴じ桿12、22を閉止したときの外寸W’よりも)小さくなるとともに、切欠133、233の端面134、234が突起313、323の下面314、324から離反して当該下面314、324とは異なる方向を向くようになる。これにより、操作部材3の弾性変形を伴って軸体13、23を上方から操作部材3の内部空間に挿入し、または逆に軸体13、23を操作部材3の内部空間から上方に抜出することが可能となる。
【0053】
本実施形態の綴じ具0では、操作部材3に、当該操作部材3が不意にロック位置からアンロック位置に変位することを抑止するための拘束部材37を設けている。
図4、
図6、
図7、
図9及び
図20に示すように、拘束部材37は、操作部材3の両側壁31、32の離間方向と同方向に離間して並立した側壁371、372と、両側壁371、372を連結する頂壁373と、両側壁371、372にそれぞれ穿ち設けた当該側壁371、372を貫通する軸孔374、375と、頂壁373から突出する突片376とを備える。本実施形態では、これら側壁371、372、頂壁373、軸孔374、375及び突片376を樹脂一体成形している。
【0054】
拘束部材37の側壁371、372と頂壁373とは、横断面視略Π字形をなす周壁を形作る。両側壁371、372の離間方向に沿った内法は、操作部材3の両側壁31、32の離間方向に沿った外法に略等しいか、これよりも若干大きい。拘束部材37は、その各側壁371、372が操作部材3の各側壁31、32に外側方から添うように、操作部材3の一端に覆い被さる。
【0055】
操作部材3の一端における、拘束部材37の側壁371、372の内側面に近接する側壁31、32の外側面には、外側方に向けて突き出した支軸315、325を設けてある。各支軸315、325は、各側壁371、372の軸孔374、375にそれぞれ挿入する。これら支軸315、325と軸孔374、375との凹凸嵌合を介して、拘束部材37を、操作部材3に対し、両側壁31、32の離間方向に沿って伸びる軸回りに回動可能に支持させることができる。操作部材3の一端に支持させた拘束部材37は、把手34の一部をなすとともに、
図9に示す拘束位置と、
図20に示す非拘束位置とを選択的にとり得る。
【0056】
操作部材3がロック位置にあるとき、操作部材3の内部空間に挿入されている綴じ桿部材2の軸体23の一端と、操作部材3の一端側の隔壁38との間には、空隙39が形成される。この空隙39は、軸心方向に沿って、操作部材3がロック位置とアンロック位置との間でスライド移動する際の変位量と同程度に、またはそれよりもやや大きく拡張している。操作部材3がロック位置からアンロック位置に向かってスライド移動する過程では、操作部材3が綴じ桿部材1、2に対して相対変位する結果、上記の空隙39が縮小、即ち隔壁38が軸体23の一端に接近する。逆に、操作部材3がアンロック位置からロック位置に向かってスライド移動する過程では、上記の空隙39が拡大、即ち隔壁38が軸体23の一端から遠ざかる。
【0057】
ロック位置にある操作部材3がアンロック位置に向かって変位することを抑止する、つまりは操作部材3をロック位置に保定するためには、操作部材3の一端に支持させた拘束部材37を支軸315、325を中心に回動させ、
図9に示しているように、その突片376を操作部材3の隔壁38と綴じ桿部材2の軸体23との間の空隙39に差し入れる。拘束部材37がこの拘束位置をとるときには、操作部材3がアンロック位置に向かって変位しようとしても、綴じ桿部材2の軸体23の一端が拘束部材37の突片376に軸心方向から衝突し、それ以上空隙39が縮小することができない。従って、ロック位置にある操作部材3がアンロック位置に向かって変位することが阻まれ、閉じていた綴じ桿12、22が意図せず開いてしまうことがない。
【0058】
翻って、操作部材3をロック位置からアンロック位置に変位させて綴じ桿12、22を開放したい場合には、拘束部材37を支軸315、325を中心に回動させて、
図20に示しているように、その突片376を隔壁38と軸体23との間の空隙39から抜出する。そして、拘束部材37をこの非拘束位置に退避させてしかる後、操作部材3をアンロック位置に向けて変位させればよい。
【0059】
本実施形態では、ヒンジを介してその軸心周りに相対回動可能であり、その回動動作を通じて綴じ桿12、22を開閉させる一組の綴じ桿部材1、2と、前記綴じ桿部材1、2に対して相対変位可能であり、綴じ桿部材1、2が前記綴じ桿12、22を開放する方向に回動することを禁止するロック位置とこれを許容するアンロック位置とを選択的にとり得る操作部材3と、前記一組の綴じ桿部材1、2のうちの少なくとも一方の綴じ桿部材2と前記ロック位置にある前記操作部材3との間39に差し入ることで、同操作部材3がアンロック位置に向かって変位することを抑止する拘束部材37とを具備する綴じ具0を構成した。
【0060】
本実施形態によれば、紙葉類Sを綴じ止めた綴じ具0を鞄やリュックサック等の中に収納しているときに、意図せず操作部材3がロック位置からアンロック位置に変位して綴じ桿12、22が開くことが防止される。従って、鞄やリュックサック等の中で不意に紙葉類Sがばらけてしまうことがなくなる。
【0061】
前記操作部材3は、前記綴じ桿部材1、2に対し前記軸心方向に沿ってスライド可能であり、綴じ桿部材1、2が前記綴じ桿12、22を開放する方向に回動することを禁止するストッパを有している。具体的には、前記操作部材3の側壁31、32の端縁に切欠311、321を形成し、切欠311、321に隣接する(切り欠いていない)部位を綴じ桿12、22の開放を禁止するためのストッパとしている。前記操作部材3が前記ロック位置にあるときには前記ストッパが前記綴じ桿部材1、2の所定部位14、24に接触する一方、同操作部材3が前記アンロック位置にあるときには
前記綴じ桿部材1、2の所定部位14、24がこの切欠311、321内に収まる、つまり綴じ桿部材1、2を回動させても当該ストッパが綴じ桿部材1、2の所定部位14、24に接触しない。綴じ桿部材1、3及び操作部材3によって綴じ具0の基本構成が完結することから、部品点数の削減につながる。
【0062】
前記拘束部材37は、前記綴じ桿部材2における前記軸心方向に沿った一方側の端部23と、前記ロック位置にある前記操作部材3の前記軸心方向に沿った一方側の端部38との間39に差し入るものである。前記拘束部材37は、前記綴じ桿部材2の一方側の端部23と前記操作部材3の一方側の端部38との間39に差し入る拘束位置と、それら両者23、38の間39から脱出する非拘束位置との間で回動可能であるように操作部材3に支持されており、ユーザが手指でこの拘束部材37を操作しやすい。
【0063】
本実施形態の綴じ具0は、前記綴じ桿部材1、2と前記操作部材3との間に介在し、前記操作部材3を前記ロック位置から前記アンロック位置に向けて変位させる操作力を、前記綴じ桿部材1、2を前記綴じ桿12、22が開放する方向に回動させる力に変換する操作力変換機構を具備しており、操作部材3をアンロック位置に変位させる操作によって綴じ桿12、22を開かせることができる。このため。綴じ桿12、22が多数本存在していたとしても、それらを一斉に開放する操作が容易であって利便性が高い。
【0064】
並びに、本実施形態では、ヒンジを介してその軸心周りに相対回動可能であり、回動動作を通じて綴じ桿12、22を開閉させる一組の綴じ桿部材1、2と、互いに離間して並立する一対の側壁31、32を有し、その側壁31、32間の空間に前記綴じ桿部材1、2における前記ヒンジの軸となる軸体13、23をくわえ込んで収容する被覆体3とを具備し、前記軸体13、23を被覆体3に対して挿抜する方向から見て、前記綴じ桿12、22を閉止するように前記綴じ桿部材1、2を回動させた状態での軸体13、23の前記一対の側壁31、32の離間する方向に沿った外寸W’が、綴じ桿12、22を開放するように綴じ桿部材1、2を回動させた状態での軸体13、23の前記離間方向に沿った外寸Wよりも大きくなるような部位を、軸体13、23が備えている綴じ具0を構成した。
【0065】
本実施形態によれば、綴じ桿12、22を綴じている状態で、綴じ桿部材1、2の軸体13、23をくわえ込んで被覆する被覆体3から軸体13、23が脱出することを効果的に抑止できる。従って、綴じ具0が落下する等して強い衝撃を受けたとしても、紙葉類Sを綴じている綴じ具0が分解せず、紙葉類Sがばらけてしまうことがない。
【0066】
前記軸体13、23は、その軸心方向と直交する面で切った断面が略扇形をなすように一部が切り欠かれた外形を有する。より具体的には、前記被覆体3の側壁31、32の一方から他方に向かって突き出す係止部313、323により、当該係止部313、323と他方の側壁32、31との間の隙間が、一対の側壁31、32間の空間の両側壁31、32の離間方向に沿った内寸よりも狭められており、前記係止部313、323が前記空間に収容された前記軸体13、23に係合することで、軸体13、23の当該空間からの脱出を抑制する。
【0067】
特に、本実施形態では、前記係止部313、323の当接面314、324が下方を向き、前記綴じ桿12、22を閉止した状態での前記軸体13、23の切欠133、233の端面134、234が上方を向いており、これらの面314、324、134、234が軸体13、23を前記被覆体3に対し挿抜する方向に沿って対向するようになっている。前記綴じ桿12、22を閉止した状態では、前記係止部313、323と前記軸体13、23とがこれらの面314、324、134、234を介して面接触するため、被覆体3の内部空間に挿入した軸体13、23が当該空間から脱出することが確実に阻止される。
【0068】
被覆体である操作部材3が、ヒンジの軸13、23を覆うことで、この軸13、23の凸凹した感触をユーザに与える可能性が小さくなる。しかも、操作部材3を軸心方向にスライド操作することで、綴じ桿12、22の開放状態と閉止状態との切り替えを簡便に行い得る。
【0069】
前記ヒンジの軸13、23が(切欠133、233を除いて)略円柱状の外周をなし、前記操作部材3がこのヒンジの軸13、23をくわえ込むようにヒンジの軸13、23に係合するものであるため、操作部材3の形状が徒に複雑化しない。また、操作部材3の外周面を平滑化して手触りの良化を図ることができる。
【0070】
前記一組の綴じ桿部材1、2の各々に軸体13、23を設け、両者の軸体13、23を直列に配置した状態で前記操作部材3がこれらを相対回動可能に保持するため、各軸体13、23の全てを貫通するような長い細棒が不要となる。
【0071】
前記両軸体13、23の互いに対向する端面の一方に凸部132、232を形成し、他方にこの凸部132、232を受け入れる凹部131、231を形成して、これら凸部132、232と凹部131、231との係合構造を構成しているため、綴じ具0の組立作業の容易化に資する上、綴じ具0としての一体性が高まり、何れかの綴じ桿部材1、2が脱落するようなおそれも小さくなる。
【0072】
また、本実施形態の綴じ具0は、前記操作部材3を前記アンロック位置から前記ロック位置に向けて変位させる方向に弾性付勢する弾性付勢部材4を具備している。この弾性付勢部材4の存在により、綴じ桿部材1、2が間接的に綴じ桿12、22を閉じる方向に弾性付勢されることとなり、開いた綴じ桿12、22を閉じる操作が容易となる。
【0073】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。列挙すると、上記実施形態では、第一の綴じ桿部材1と第二の綴じ桿部材2とは別体の部材であったが、両者を樹脂ヒンジを介して一体成形してもよい。
【0074】
上記実施形態では、操作部材3自体にストッパを設けていたが、ストッパとして機能する部材を操作部材とは別体の部材とし、操作部材の変位によって当該部材を駆動するものとすることを妨げない。
【0075】
弾性付勢部材は、コイルばね4には限定されない。その他の態様のもの、例えば板ばね、樹脂ばね等を採用しても構わない。操作部材の一端側と綴じ桿部材(の基体)の一端側との間に、圧縮弾性力を発生させる弾性付勢部材、即ち圧縮コイルばねの類を介在させることも考えられる。
【0076】
上記実施形態では、操作部材3がロック位置にあり綴じ桿12、22が閉じている状態で、拘束部材37(の突片376)が一方の綴じ桿部材2(の軸体23の軸端)と操作部材3(の隔壁38)との間に差し入り、その綴じ桿部材2及び操作部材3の双方に当接することで、操作部材3のロック位置からアンロック位置への変位を抑止していた。これに対し、拘束部材が両方の綴じ桿部材と操作部材との間に差し入り、両綴じ桿部材及び操作部材に当接して操作部材3のロック位置からアンロック位置への変位を抑止する構造とすることも可能である。
【0077】
上記実施形態では、拘束部材37が操作部材3とは別体をなしていたが、両者を樹脂ヒンジを介して一体成形してもよい。
【0078】
上記実施形態では、拘束部材37を操作部材3に対して回動可能であるように操作部材3に支持させていたが、拘束部材を操作部材に対して(例えば、上下方向に沿って)スライド移動可能であるように操作部材に支持させてもよい。さらには、拘束部材を綴じ桿部材に支持させることも考えられる。何れにせよ、拘束部材が拘束位置と非拘束位置との間で綴じ桿部材及び操作部材に対して相対変位し得るものであればよく、拘束部材を操作部材に対して脱着可能としても構わない。
【0079】
上記実施形態では、円柱状の外形を有する軸体13、23の一部を横断面視略扇形をなすように切り欠き、綴じ桿12、22を閉じた状態での軸体13、23の(軸体13、23を被覆体である操作部材3に対して挿抜する方向から見た)外寸W’が綴じ桿12、22を開いた状態での軸体13、23の外寸Wよりも大きくなるようにしていた。これ以外に、軸体の横断面形状を楕円その他の非円形状に成形することで、綴じ桿を閉じた状態での当該軸体の外寸が綴じ桿を開いた状態でのそれよりも大きくなるように構成することが考えられる。
【0080】
また、
図21ないし
図25に、本発明の変形例の一を示している。この変形例と上記実施形態とでは、綴じ桿部材1、2が備える軸体13、23の形状が異なっている。本変形例における綴じ桿部材1、2の軸体13、23には、被覆体たる操作部材3の側壁31、32間の空間に対して抜差不能な区域135、235と、操作部材3の側壁31、32間の空間に対して抜差可能な区域136、236とを設けている。後者の区域136、236は、軸体13、23の軸心方向に沿って前者の区域135、235に隣接する。
【0081】
前者の区域135、235には、円柱状の外形を有した軸体13、23の左上部及び右上部を各々アングル状に切り欠くことで、上向端面1351、1352、2351、2352を形成してある。
【0082】
前者の区域135、235に連なる後者の区域136、236の横断面形状は、前者の区域135、235の横断面形状よりも縮小している。特に、後者の区域136、236の上縁部を切り落としており、その上面1361、2361は前者の区域135、235の上縁よりも低位置にある。加えて、前者の区域135、235の上向端面1351、2351の下方にある部位を切り落としており、その外側面1362、2362は円柱状の軸体13、23の外周よりも内側方に控えている。綴じ桿12、22を閉じている状態では、外側面1362、2362の下部1363、2363は斜め下方を向くように傾斜している。さらに、上向端面1352、2352と軸体13、23の外周とが交わる隅角を面取りするように切り落として、傾斜面1364、2364を形成している。綴じ桿12、22を閉じた状態で、傾斜面1364、2364は斜め上方を向く。
【0083】
図22及び
図23に示すように、綴じ桿12、22が閉止した姿勢をとり、かつ操作部材3がロック位置にあるとき、操作部材3の側壁31、32の内面から突出する突起312、313、322、323が、綴じ桿部材1、2の軸体13、23における抜差不能な区域135、235と係合する。このとき、係止部たる突起313、323の下面314、324と、軸体13、23の当該区域135、235に形成した上向端面1352、2352とが面接触して当接する。従って、この状態で軸体13、23を操作部材3の内部空間から脱出させることは不可能であるか、そうでなくとも極めて困難となる。
【0084】
並びに、突起312、322の下面316、326と、軸体13、23の当該区域135、235に形成した上向端面1351、2351とが極近接する。なお、本変形例における突起312、322は、上記実施形態におけるそれと比較して突出寸法が大きい。綴じ桿要素12、22に外側方に向かう大きな外力が作用した場合には、綴じ桿要素12、22から離れた側にあるこれらの突起312、322に上向端面1351、2351が衝突するため、軸体13、23が操作部材3から抜け出てしまうことが阻止される。
【0085】
上記実施形態と同様、操作部材3をロック位置からアンロック位置に向けてスライド移動させると、綴じ桿部材1、2が回動して綴じ桿12、22が開放する。その際、操作部材3が綴じ桿部材1、2に対して相対的に軸心方向に沿って変位することから、
図24及び
図25に示すように、突起312、313、322、323が軸体13、23の抜差不能な区域135、235から抜差可能な区域136、236へと遷移し、当該区域136、236に係合するようになる。このときには、操作部材3の突起312、313、322、323と軸体13、23の上向端面1351、2351とが当接しない。
【0086】
また、軸体13、23の当該区域136、236の外周が一部切り落とされており、綴じ桿部材1、2及び軸体13、23の回動に伴って、その切り落とし面1363、1364、2363、2364が上下方向に対して略平行になる。結果、当該区域136、236を上下方向から見た外寸(両側壁31、32の離間方向に沿った外寸)Wは、操作部材3において対向する突起312、322と突起323、313との間の隙間よりは若干大きいものの、
図22及び
図23に示している抜差不能な区域135、235の外寸W’よりも小さくなる。
【0087】
操作部材3をアンロック位置からロック位置に向けてスライド移動させると、綴じ桿部材1、2が回動して綴じ桿12、22が閉止する。その際、操作部材3が綴じ桿部材1、2に対して相対的に軸心方向に沿って変位し、突起312、313、322、323が軸体13、23の抜差可能な区域136、236から抜差可能な区域135、235へと遷移して、再び当該区域135、235に係合するようになる。
【0088】
本変形例の綴じ具0を組み立てるにあたっては、第一の綴じ桿部材1の軸体13と第二の綴じ桿部材2の軸体23とを同心軸上に配置し、双方の綴じ桿要素12、22が開放した姿勢をとるようにこれら綴じ桿部材1、2を回動させてから、操作部材3を軸体13、23をくわえ込むように組み付ける。操作部材3を組み付ける、即ち軸体13、23を操作部材3の内部空間に挿入するにあたっては、軸体13、23の抜差可能な区域136、236を操作部材3の突起312、313、322、323の位置に合わせて、当該区域136、236を突起312、322と突起323、313との間の隙間に押し入れる。
【0089】
本変形例に係る綴じ具0は、ヒンジを介してその軸心周りに相対回動可能であり、回動動作を通じて綴じ桿12、22を開閉させる一組の綴じ桿部材1、2と、互いに離間して並立する一対の側壁31、32を有し、その側壁31、32間の空間に前記綴じ桿部材1、2における前記ヒンジの軸となる軸体13、23をくわえ込んで収容する被覆体3とを具備し、前記軸体13、23を被覆体3に対して挿抜する方向から見て、前記綴じ桿12、22を閉止するように前記綴じ桿部材1、2を回動させた状態での軸体13、23の前記一対の側壁31、32の離間する方向に沿った外寸W’が、綴じ桿12、22を開放するように綴じ桿部材1、2を回動させた状態での軸体13、23の前記離間方向に沿った外寸Wよりも大きくなるような部位(抜差不能な区域135、235及び抜差可能な区域136、236)を、軸体13、23に備えているものである。
【0090】
そして、前記被覆体3の側壁31、32の一方から他方に向かって突き出す係止部313、323により、当該係止部313、323と他方の側壁32、31との間の隙間が、一対の側壁31、32間の空間の両側壁31、32の離間方向に沿った内寸よりも狭められており、前記係止部313、323が前記空間に収容された前記軸体13、23に係合することで、軸体13、23の当該空間からの脱出を抑制する。
【0091】
前記係止部313、323の当接面314、324は下方を向き、前記綴じ桿12、22を閉止した状態での前記軸体13、23(の抜差不能な区域135、235)に形成した端面1352、2352は上方を向いており、これらの面314、324、1352、2352が軸体13、23を前記被覆体3に対し挿抜する方向に沿って対向するようになっている。前記綴じ桿12、22を閉止した状態では、前記係止部313、323と前記軸体13、23とがこれらの面314、324、1352、2352を介して面接触するので、被覆体3の内部空間に挿入した軸体13、23が当該空間から脱出することが確実に阻止される。
【0092】
また、前記被覆体3が、前記綴じ桿部材1、2に対し前記軸心方向に沿ってスライド可能であり、前記綴じ桿部材1、2が前記綴じ桿12、22を開放する方向に回動することを禁止するロック位置とこれを許容するアンロック位置とを選択的にとり得る操作部材であり、前記軸体13、23に、前記被覆体3の側壁31、32間の空間に対して抜差不能な区域135、235と、前記軸心方向に沿って同区域135、235に隣接し被覆体3の側壁31、32間の空間に対して抜差可能な区域136、236とが設けられ、前記被覆体3が前記ロック位置にあるときに前記綴じ桿部材1、2が前記綴じ桿12、22を閉止する姿勢をとりつつ前記係止部313、323が前記軸体13、23の抜差不能な区域135、235に係合する一方、前記被覆体3が前記アンロック位置にあるときに前記綴じ桿部材1、2が前記綴じ桿12、22を開放する姿勢をとりつつ前記係止部313、323が前記軸体13、23の抜差可能な区域136、236に遷移し、このときの軸体13、23の抜差可能な区域136、236の前記一対の側壁31、32の離間する方向に沿った外寸Wが、被覆体3がロック位置にあるときの軸体13、23の抜差不能な区域135、235の前記離間方向に沿った外寸W’よりも小さくなっている。
【0093】
その上で、前記被覆体3が前記ロック位置にあるときに、前記被覆体3の側壁31、32の他方から一方に向かって突出する突起312、322が、前記軸体13、23の抜差不能な区域135、235に極近接しているので、閉止している綴じ桿12、22に外側方に向かう大きな外力が作用したとしても、軸体13、23が被覆体3から抜け出てしまうことが抑止される。
【0094】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、紙葉類を綴じ止める綴じ具に適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
0…綴じ具
1、2…綴じ桿部材
12、22…綴じ桿
13、23…軸体
133、233…切欠
134、234…端面
3…操作部材(被覆体)
31、32…側壁
33…底壁
313、323…突起(係止部)
314、324…当接面
37…拘束部材
376…突片
38…隔壁
39…綴じ桿部材とロック位置にある操作部材との間の空隙
4…弾性付勢部材
S…紙葉類