(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】貫流溝を有するプッシャ・バージ船
(51)【国際特許分類】
B63B 35/28 20060101AFI20220425BHJP
B63B 1/32 20060101ALI20220425BHJP
B63B 3/62 20060101ALI20220425BHJP
B63B 21/56 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
B63B35/28
B63B1/32 A
B63B3/62
B63B21/56 Z
(21)【出願番号】P 2021088062
(22)【出願日】2021-05-26
【審査請求日】2021-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520161539
【氏名又は名称】山内 剛太
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】山内 剛太
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02692628(EP,A1)
【文献】特開2014-094612(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104960628(CN,A)
【文献】西独国特許出願公開第02234813(DE,A1)
【文献】特開昭61-98689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/28
B63B 1/00 - 3/70
B63B 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシャ・バージ船において、
前記バージは、二重底構造を有し、船尾中央部に前記プッシャを連結する凹部と、船体中心線に沿って船首から前記凹部に至る貫流溝と、その貫流溝を挟んで対向する左右の縦通隔壁とを有し、
前記プッシャの推進装置は、そのプロペラ羽根に前記貫流溝から流出する流水が
流れる位置に設けられてなるプッシャ・バージ船。
【請求項2】
プッシャ・バージ船において、
前記バージは、二重底構造を有し、船尾中央部に前記プッシャを連結する凹部と、船体中心線に沿って船首から前記凹部に至る貫流溝と、その貫流溝を挟んで対向する左右の縦通隔壁とを有し、
前記貫流溝は、一定寸法の上底と一定角度の傾斜角を有する台形状の横断面形状を有し、後端部の前記上底の高さがプッシャの船底部と同等の高さに設けられ、
前記プッシャの推進装置は、そのプロペラ羽根に前記貫流溝から流出する流水が
流れる位置に設けられてなるプッシャ・バージ船。
【請求項3】
プッシャは、船体中心線に沿って船底に、貫流溝からの流水をプロペラに導く案内溝を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のプッシャ・バージ船。
【請求項4】
二重底構造を有する平底の自走型船舶の船体であって、船首から船底中央部を船体中心線に沿って船尾
に至る貫流溝を有し、その貫流溝から流出する流水が流れる位置にプロペラが設けられてなる船体。
【請求項5】
船体中心線に沿って船首から船尾に向けて流水を貫流させ
る貫流溝を有する平底の自走型船舶の船体であって、
前記貫流溝は、一定寸法の上底と一定角度の傾斜角を有する台形状の横断面形状を有し、
前記貫流溝から流出する流水が流れる位置にプロペラが設けられてなる船体。
【請求項6】
プッシャ・バージ船において、
前記バージは、前記プッシャを連結する凹部と、船体中心線に沿って船首から前記凹部に至る貫流溝とを有し、
前記貫流溝は、一定寸法の上底と一定角度の傾斜角を有する台形状の横断面形状を有し、後端部の前記上底の高さがプッシャの船底部と同等の高さに設けられ、
前記プッシャの推進装置は、そのプロペラ羽根に前記貫流溝から流出する流水が
流れる位置に設けられてなるプッシャ・バージ船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バージが船首から船尾に至る船底に設けられたトンネル状の凹溝を有するプッシャ・バージ船に関し、特にそのトンネル状の凹溝を流れる流水がプッシャのプロペラに導かれるように貫流させる貫流溝を有するプッシャ・バージ船に関する。
【背景技術】
【0002】
バージとは平底の荷船をいう。バージは、一般に、河川や運河などの内陸水路や港湾内で重い貨物を積んで航行するために作られた平底の荷船であり、エンジンを積んでいないため押航用のプッシャや曳航用のタグボートにより航行される。バージとプッシャからなるプッシャ・バージ船による輸送方式は、推進効率が良く運行が容易であるとされ、このプッシャ・バージ船による運行効率をさらに高めるための提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、バージ船体Aの船尾にプッシャーボートBを侵入させる凹形接衝部1を備えたプッシャーバージにおいて、接衝部1の左右先端をそれぞれプッシャーボートBのほぼ全船体を包囲する長さに延長した防波台2、2を設け、更に同防波台下部を切り上げたことを特徴とするプッシャーバージが提案されている。このプッシャーバージは、プッシャーボート全体を防波台2、2で取り囲んでいるから、荒天、外海の強い波浪、水流は直接プッシャーボートBに働かず届かず且つこれらによって波が消され保護され、プッシャーボートBは激しく動揺することなく、安定して係留され、プッシャーバージAを推進できるものである。しかも、防波台2、2の下部を切り上げることによってプッシャーボートBの推進器8の効率を低下させないようにしている。そして、プッシャーバージ(母船)が大型で荷物を搭載して喫水が深くなって推進効率が低下しないように、空船時のときの防波台2、2を界面すれすれにバージ本体Aの接衝部1に設ければ更に効率的であるとされる。
【0004】
また、特許文献2に、押船が艀に三点支持の形で固定的に連結されている押航船団において、艀の船底は、船尾寄りが押船の垂直な船側から湾曲部が始まる付近に凹入部の下縁が位置する程度に、船尾に向かって次第に高く切り上げられている一方、押船の船底は上記湾曲部とともに凹入部の下縁より下に突き出され、かつ、上記凹入部の下縁と押船の船体との間の間隙は該間隙に渦が生じない程度に狭くなっていることを特徴とする押航船団が提案されている。この押航船団は、艀の凹入部内に渦を発生させないように構成したことで押航船団の速力を通常の船舶と変らぬ程度まで改善でき、押航船団の経済性に画期的な向上をもたらすことができるとされる。
【0005】
特許文献3には、船体中心線に沿い船首部船底から船尾部船底まで連続的に凹人貫通された船底トンネルを有し、この船底トンネルの上方への凹入量が、船首垂線から船首部横隔壁付近まではしだいに増加するが、この船首部横隔壁付近から船尾部横隔壁付近まではほほ-定に保たれて、この船底トンネルの後端がプッシャー嵌入用船尾ウエルに連通し、且つ上記の船首部横隔壁と船尾部横隔壁との間に設けられた土砂艙の下部における船底トンネルの外板部には扉付き土砂投棄口が設けられたことを特徴とする底開式土砂投棄船が提案されている。この底開式土砂投棄船は、航行時には船底へ向かう水流が船底トンネルに沿って円滑に導かれ、そのまま渦を発生することなく船尾ウエルへ通り抜け船体後方へと流れ去るので、船体の受ける抵抗が著しく軽減されるとされる。
【0006】
特許文献4に、船尾部に押船の進入路を設け、前記進入路に押船を進入させ、該押船と連結した後、この押船の推進力によって移動または航行を行う母船において、船底部に、船首部から前記進入路にわたるトンネル状の凹部を形成したことを特徴とする母船が提案されている。この母船によれば、航行速度を約20%向上させることができるとされる。
そして、この押船-母船からなる作業船の航行効率を高めるため、特許文献5及び6に、台船(母船)の航行時に受ける水中摩擦抵抗をさらに低減することができる作業用の台船が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭59-40198号公報
【文献】特開2001-206281号公報
【文献】実開昭49-40995号公報
【文献】特開平10-236382号公報
【文献】特開2016-185800号公報
【文献】特開2016-185801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1又は2に記載のプッシャ・バージ船においては、バージの船底部からプッシャに流れ込む流水がなめらかで渦が発生せず、また、波浪の影響を受けないので効率的な運行ができるとされる。また、特許文献3に記載の底開式土砂投棄船、特許文献4~6記載に記載の作業船においては、底開式土砂投棄船、母船又は台船(バージ)が船底に船底トンネル又はトンネル状の凹部(トンネル状の凹溝)を有するので、バージに作用する水中摩擦抵抗を低減することができ、運行効率を向上させることができるとされる。また、特許文献4~6に記載のトンネル状の凹溝は、「トンネル状の凹部が船首部から進入路まで続いているため・・押船では、スクリューが前方の海水を効率的に引き込み、推進力を効率的に得ることができる。」と記載されているところ、「トンネルの高さと幅は従来のものと同様に、高さは台船の深さの略3割に構成され、幅は凹部の幅の略6割で構成されている」と記載されている。
【0009】
引用文献3~6に記載のバージの船底にトンネル状の凹溝を有する船体は、好ましい構造であると考えられるところ、必ずしも海水が効率的にスクリューに引き込まれる構造になっていない。プッシャ・バージ船のさらなる運行効率的を高めるには、プッシャとバージを含めた好適な配置・構造が求められる。また、船底にトンネル状の凹溝を有する船体構造は特異な構造であり、その構造を利用した安全で利便性のよい船体構造が求められる。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点及び要請に鑑み、運行効率が高く、また、安全性に優れるプッシャ・バージ船を提供することを目的とする。また、本発明を適用した自走型船舶の船体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、プッシャ・バージ船の運行効率を高めるにはプッシャの推力を有効に発揮させることが必要であり、そのためにはスクリューに整流状の流水を貫流させるのが好ましいとする技術思想に基づいて本発明をなした。
【0012】
本発明に係るプッシャ・バージ船は、プッシャ・バージ船において、前記バージは、二重底構造を有し、船尾中央部に前記プッシャを連結する凹部と、船体中心線に沿って船首から前記凹部に至る貫流溝と、その貫流溝を挟んで対向する左右の縦通隔壁とを有し、前記プッシャの推進装置は、そのプロペラ羽根に前記貫流溝からの流水が貫流する位置に設けられてなる。
【0013】
上記発明において、プロペラ軸は、プロペラ羽根に向かって下降するように傾斜してなるものとすることができる。
【0014】
また、プッシャは、船体中心線に沿って船底に、貫流溝から流出する整流状の流水をプロペラに導く案内溝を有するものとすることができる。
【0015】
本発明に係る自走型船舶の船体は、二重底構造を有する平底の自走型船舶の船体であって、船首から船底中央部を船体中心線に沿って流れる流水を船尾のプロペラに導く貫流溝を有してなる。
【0016】
上記船体に係る発明において、船体は貫流溝を挟んで対向する左右の縦通隔壁が設けられてなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来のプッシャ・バージ船のトンネル状の凹溝と異なりバージの貫流溝から流出する水流がそのままプッシャのプロペラに流入するので、効率的なプッシャ・バージ船を提供することができる。本発明は、上記貫流溝に相当する案内溝をさらにプッシャに設けることができ、また、上記貫流溝を自走型船舶の船体に適用することができる。また、本発明に係るプッシャ・バージ船は、貫流溝に相当する容積分をバージの主要寸法、L.B.DにおいてB又はDに振り分けることができ、バージの安定性を向上させることができる。そして、かかる余裕容積分により、船舶のトン数測度に関する法律との関係において好適な船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るプッシャ・バージ船の側面を示す説明図である。
【
図2】
図1に示すバージの中央断面を示す説明図である。
図3(a)は、幅狭の貫流溝を有するバージ、
図3(b)は幅広の貫流溝を有するバージの例を示す。
【
図3】
図1に示すバージのA-A断面を示す説明図である。
【
図4】本発明を適用した船舶の船体部分を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を基に説明する。本発明に係るプッシャ・バージ船の例を
図1~3に示す。
図1には、満載状態のプッシャ・バージ船1が記載されており、バージ10はプッシャ20に押航されている。バージ10は、船底外板12と内底板13を有する二重底構造を有し、船尾中央部にプッシャ20を連結する凹部18(
図3)を有している。そして、バージ10は、船体中心線に沿って船首から凹部18に至る貫流溝14と、その貫流溝14を挟んで対向する右縦通隔壁112A左縦通隔壁112B(
図2)とを有する。なお、
図1において、B.L.は基線、L.W.L.は満載喫水線を示す。
【0020】
プッシャ20は、
図1に示すように、キール式の船底形状をなし、ほぼ船体本体部21がバージ10にはまり込んでいる。プッシャ20の推進装置は、プロペラ軸がブラケットに保持されたブラケット式で、プロペラ軸がプロペラ羽根に向かって下降するように傾斜している。また、プッシャ20は、スカイブリッジ26を有し、クレーン等大きな構造物を有するバージ10であっても対応できるようになっている。本例のプッシャ20は、公知のピン式連結構造によりバージ10に連結されるようになっている。
【0021】
貫流溝14は、
図1に示すように、バージ10の船底部に基線B.Lにほぼ水平に設けられ、プッシャ20の船底部に連なるように設けられている。貫流溝14の後端部14aは、プッシャ20の船底部とほぼ同一の高さになっている。貫流溝14は、
図2に示すように、バージ10の船体本体1の中央部分、右側縦通隔壁112Aと左側縦通隔壁112Aに挟まれ、船底外板12及び内底板13により、センターラインに沿って船底外板12の中央部に設けられる。船底外板12は、右側船底外板12aと左側船底外板12bとが凹状の中央船底外板12cにより連結されてなる。内底板は、右側内底板13aと左側内底板13bとが凸状の中央内底板13cにより連結されてなる場合(
図2(a))と、全体が平板状の内底板13とされる場合(
図2(b))がある。
【0022】
貫流溝14は、
図2(a)に示す幅狭にするか、または
図2(b)に示す幅広にするかは、プッシャ・バージ船1の仕様、規模等により決定される。
図2(a)の形態のバージ10は、その中央部分を強化し易く、また、船体本体11の左右の構成に特徴を持たせる場合や船体本体11の中央部分を所定の目的に使用する場合に好適である。また、中央縦通隔壁112Cを設けることにより船体強度を向上させることができる。
図2(b)の場合は、隔壁甲板111と右及び左側縦通隔壁112A、112Bにより、水密構造の中央船艙を形成することができる。また、
図2(b)の場合は、二機二軸の推進機構を採用するのがよい。
【0023】
貫流溝14を形成する中央船底外板12cの凹状の形態は、台形状であるのが好ましい。これにより整流状の流水が貫流溝14を貫流し易くなる。
図2は、傾斜角が約60の台形になっている。整流状の流水は、プッシャ20のプロペラ25に直接導かれるようになっているのがよい。このため、貫流溝14の後端部14aの位置・形状、あるいはプロペラ25の所定の支持構造が採用される。例えば、プッシャ20の推進装置の支持構造はブラケット式が採用され、プロペラ軸がプロペラ羽根に向かって下降するように設けられる。また、貫流溝14からの流水がプロペラ羽根に貫流するように、プッシャ20の船底に貫流溝14と同等の案内溝が設けられる。
なお、上記台形状の貫流溝14において傾斜角とは、貫流溝14の横断面の開口部に対向する辺を上底とすると、上底と脚とがなす角度をいう。
【0024】
上記船底に設けられる貫流溝14や案内溝は、船舶のトン数の測度に関する法律において暴露場所に相当するから、その暴露場所に相当する容積分について有利になる。例えば、プッシャ20に案内溝を設ける場合は、その暴露場所に相当する容積分について最大船幅B又は船体長さの中央における船体深さDを増大させることができ、船体の復元性を向上させることができる。これにより、復原力が増大した分だけ、積載重量を増加し又は重心を上げることが可能となり、船舶の所要設備をより多く取り入れることが可能となる。また、プッシャに所要のスカイブリッジ26を設け、船橋からの視界を確保することができる。さらに、プッシャ20を、総トン数二十トン未満、船の長さ二十四メートル未満とすれば、小型船舶安全規則が適用され、プッシャ20の操縦が小型船舶操縦士免許でできるようになる。そして、船舶のトン数の測度に関する法律施行規則(昭和五十六年運輸省令第四十七号)第八条の規定の適用が可能になる。
【0025】
図3は、
図1のAA断面を示し、船体本体11に設けた隔壁の例を示す。船体本体11の中央部に設けられ、凹部18に至る貫流溝14を囲むように各隔壁が設けられている。この船体本体11は、長手方向に右側縦通隔壁112A及び左側縦通隔壁112Bを有し、それらの縦通隔壁に直交するように、船首側に船首隔壁115A、船尾隔壁115Bを有する。そして、各種隔壁が設けられている。
【0026】
上記貫流溝14又は案内溝と同等の貫流溝を、自走型船舶の船体においても同様に設けることができる。すなわち、船尾にプロペラを有する自走型船舶の平底形の船体であって、その船体中心線に沿って船底に、船首から船尾に至る流水の貫流溝が設けられてなる船体は、高い推進性能及び復元性能を得ることができる。
図4に、この実施例を示す。本船体30は、船底外板312と内底板313を有する二重底構造を有し、船体30を縦走する貫流溝34を有する。そして、左右の船側に沿って船体中心線に対して対称な縦通水密隔壁314(314A、314B)を有する。これにより、船側損傷時において中央船体への浸水が阻止され、非常時の自力航行が可能となる。また、この船体30は、2機2軸の張出軸受構造の推進装置35を有する。これにより船体30の旋回性能を向上させることができる。
【0027】
本船体30は、幅広の貫流溝34が設けられており、船体仕様によって内底板313が平板状であるものにすることでき、また上記バージ10のように船体横断面中央部が台形状であるものにすることができる。また、船体30は、船首隔壁315A、船尾隔壁315B等の横隔壁315を設けることができ、必要に応じて横隔壁315C、315D等を設けることができる。船体30の隔壁は、
図4に示す様に船体中心線に対し左右対称に設けられており、これにより機関室、所要の機器の配置、交通等の便宜を図ることができる。スケグ317は、船体30をドッグに入れたときに、これにより船体30を支持することができる。
【0028】
以上、本発明について説明した。本発明に係るプッシャ・バージ船又は自走型船舶の平底形の船体は、船体中心線に沿って船底に、船首からバージの凹部又は船尾に至る整流状の流水が貫流する貫流溝を有する。また、プッシャは、船体中心線に沿って船底に、貫流溝から流出する整流状の流水をプロペラに導く案内溝を有する。この貫流溝、案内溝により整流状の流水がプロペラに有効に供給され、推進装置は効率的に作用する。貫流溝、案内溝は、流水が船体中央部を貫流するように設けるのが好ましい。そして、旋回性能を考慮すると、プッシャ又は船体は、2機2軸のブラケット式(張出軸受構造)の推進装置を有するのが好ましい。また、貫流溝、案内溝を設けることにより、その暴露場所に相当する容積分について最大船幅B又は船体長さの中央における船体深さDを増大させることができ、船体の復元性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 プッシャ・バージ船
10 バージ
11 船体本体部
111 隔壁甲板
112A 右側縦通隔壁
112B 左側縦通隔壁
112C 中央縦通隔壁
115A 船首隔壁
115B 船尾隔壁
12 船底外板
13 内底板
14 貫流溝
18 凹部
20 プッシャ
21 船体本体部
25 プロペラ
26 スカイブリッジ
30 船体
312 船底外板
313 内底板
314、314A、314B 縦通水密隔壁
315、315C、315D 横隔壁
315A 船首隔壁
315B 船尾隔壁
317 スケグ
34 貫流溝
35 推進装置
【要約】
【課題】本発明は、運行効率が高く、また、安全性に優れるプッシャ・バージ船を提供することを目的とする。また、本発明を適用した自走型船舶の船体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るプッシャ・バージ船は、プッシャ・バージ船において、前記バージは、二重底構造を有し、船尾中央部に前記プッシャを連結する凹部と、船体中心線に沿って船首から前記凹部に至る貫流溝と、その貫流溝を挟んで対向する左右の縦通隔壁とを有し、前記プッシャの推進装置は、そのプロペラ羽根に前記貫流溝からの流水が貫流する位置に設けられてなる。また、本発明は、自走式船舶の船体においても同様に適用することができる。
【選択図】
図1