(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】水中目標地点測位システム、水中目標地点測位方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20220425BHJP
G01C 13/00 20060101ALI20220425BHJP
G01S 19/14 20100101ALI20220425BHJP
【FI】
G01C15/00 102C
G01C13/00 D
G01S19/14
(21)【出願番号】P 2017252470
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-12-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度採択、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業・CREST「ハイパー・マルチスペクトル空海リモートセンシングによる藻場3次元マッピング法の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】林崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】小松 輝久
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-053936(JP,A)
【文献】特開平10-185569(JP,A)
【文献】特開2003-014455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00- 1/14
G01C 5/00-15/14
G01S 19/00-19/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の目標地点に当接される当接部を有する本体部と、前記当接部が前記目標地点に当接された際に前記本体部の水上に位置する部位に取り付けられた3個以上の測位用受信アンテナと、を具備する水中目標地点測位装置と、
前記測位用受信アンテナによって受信した無線信号に基づいて、当該測位用受信アンテナの絶対位置を測位するアンテナ絶対位置測位部と、
前記測位用受信アンテナの各々の取り付け位置から前記当接部までの距離を示す距離情報と、前記測位用受信アンテナの各々の絶対位置の測位結果とに基づいて、前記当接部の絶対位置を推定する目標地点絶対位置推定部と、
を備え、
前記目標地点絶対位置推定部は、
前記測位用受信アンテナの各々の絶対位置の測位結果と、仮に定めた絶対位置に位置する仮目標地点とに基づいて、当該仮目標地点と前記測位用受信アンテナの各々との距離である仮想距離を演算するとともに、前記仮想距離と前記距離情報に示される距離との誤差が最小になる前記仮目標地点の絶対位置を探索する
水中目標地点測位システム。
【請求項2】
前記本体部は、
一端を前記当接部とするポール状部材と、
前記ポール状部材の、前記当接部とは異なる一端に設けられた部材であって、前記3個以上の測位用受信アンテナの各々を互いに異なる位置に配置可能とする測位用受信アンテナ取り付け部材と、
を含む請求項1に記載の水中目標地点測位システム。
【請求項3】
水中の目標地点に当接される当接部を有する本体部と、前記当接部が前記目標地点に当接された際に前記本体部の水上に位置する部位に取り付けられた3個以上の測位用受信アンテナと、を具備する水中目標地点測位装置を用いて水中目標地点の位置を測位する水中目標地点測位方法であって、
前記測位用受信アンテナによって受信した無線信号に基づいて、当該測位用受信アンテナの絶対位置を測位するアンテナ絶対位置測位ステップと、
前記測位用受信アンテナの各々の取り付け位置から前記当接部までの距離を示す距離情報と、前記測位用受信アンテナの各々の絶対位置の測位結果とに基づいて、前記当接部の絶対位置を推定する目標地点絶対位置推定ステップと、
を有
し、
前記目標地点絶対位置推定ステップは、
前記測位用受信アンテナの各々の絶対位置の測位結果と、仮に定めた絶対位置に位置する仮目標地点とに基づいて、当該仮目標地点と前記測位用受信アンテナの各々との距離である仮想距離を演算するとともに、前記仮想距離と前記距離情報に示される距離との誤差が最小になる前記仮目標地点の絶対位置を探索する
水中目標地点測位方法。
【請求項4】
水中の目標地点に当接される当接部を有する本体部と、前記当接部が前記目標地点に当接された際に前記本体部の水上に位置する部位に取り付けられた3個以上の測位用受信アンテナと、を具備する水中目標地点測位装置を備える水中目標地点測位システムのコンピュータを、
前記測位用受信アンテナによって受信した無線信号に基づいて、当該測位用受信アンテナの絶対位置を測位するアンテナ絶対位置測位部、
前記測位用受信アンテナの各々の取り付け位置から前記当接部までの距離を示す距離情報と、前記測位用受信アンテナの各々の絶対位置の測位結果とに基づいて、前記当接部の絶対位置を推定する目標地点絶対位置推定部、
として機能させるプログラム
であって、
前記目標地点絶対位置推定部は、
前記測位用受信アンテナの各々の絶対位置の測位結果と、仮に定めた絶対位置に位置する仮目標地点とに基づいて、当該仮目標地点と前記測位用受信アンテナの各々との距離である仮想距離を演算するとともに、前記仮想距離と前記距離情報に示される距離との誤差が最小になる前記仮目標地点の絶対位置を探索する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中目標地点測位システム、水中目標地点測位方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水中の目標位置の絶対位置を計測するための装置として、例えば特許文献1には、GNSS受信アンテナと、計測用ポールの傾斜角度を検出する傾斜計と、傾斜の方位を特定するためのGPSコンパスと、が装着された計測用ポールを備える水中位置計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置は、基準とするGNSS受信アンテナの他、種々の計測機器を要するため、製造するには複雑な工程を要し、且つ、製造コスト高となる。また、それ故、測位精度を高めることが困難となる可能性がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、水中の位置座標を高精度に取得可能な測位システムをより簡易な構成で安価に実現することができる水中目標地点測位システム、水中目標地点測位方法、及び、プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
本願発明の第1の態様によれば、水中目標地点測位システムは、水中の目標地点に当接される当接部を有する本体部と、前記当接部が前記目標地点に当接された際に前記本体部の水上に位置する部位に取り付けられた3個以上の測位用受信アンテナと、を具備する水中目標地点測位装置と、前記測位用受信アンテナによって受信した無線信号に基づいて、当該測位用受信アンテナの絶対位置を測位するアンテナ絶対位置測位部と、前記測位用受信アンテナの各々の取り付け位置から前記当接部までの距離を示す距離情報と、前記測位用受信アンテナの各々の絶対位置の測位結果とに基づいて、前記当接部の絶対位置を推定する目標地点絶対位置推定部と、を備える。
このような構成とすることで、水中目標地点測位装置の本体部には少なくとも3個の測位用受信アンテナを取り付けるのみでよい。したがって、傾斜センサやコンパス等の種々の計測機器を搭載させることなく、水中の目標位置の絶対位置を高精度に推定することができる。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る水中目標地点測位システムにおいて、前記本体部は、一端を前記当接部とするポール状部材と、前記ポール状部材の、前記当接部とは異なる一端に設けられた部材であって、前記3個以上の測位用受信アンテナの各々を互いに異なる位置に配置可能とする測位用受信アンテナ取り付け部材と、を含む。
このような構成とすることで、水中目標地点測位システムは、それぞれ異なる位置に配置された測位用受信アンテナと、測位用受信アンテナ各々から当接部までの距離を示す距離情報とに基づいて、当接部の絶対位置を一地点に絞り込むことができるので、測位精度を向上させることができる。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、第1又は第2の態様に係る水中目標地点測位システムにおいて、前記目標地点絶対位置推定部は、前記測位用受信アンテナの各々の絶対位置の測位結果と、仮に定めた絶対位置に位置する仮目標地点とに基づいて、当該仮目標地点と前記測位用受信アンテナの各々との距離である仮想距離を演算するとともに、前記仮想距離と前記距離情報に示される距離との誤差が最小になる前記仮目標地点の絶対位置を探索する。
このような構成とすることで、水中目標地点測位システムは、誤差を最小として測位精度を向上させることができる。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、水中目標地点測位方法は、水中の目標地点に当接される当接部を有する本体部と、前記当接部が前記目標地点に当接された際に前記本体部の水上に位置する部位に取り付けられた3個以上の測位用受信アンテナと、を具備する水中目標地点測位装置を用いて水中目標地点の位置を測位する水中目標地点測位方法であって、前記測位用受信アンテナによって受信した無線信号に基づいて、当該測位用受信アンテナの絶対位置を測位するアンテナ絶対位置測位ステップと、前記測位用受信アンテナの各々の取り付け位置から前記当接部までの距離を示す距離情報と、前記測位用受信アンテナの各々の絶対位置の測位結果とに基づいて、前記当接部の絶対位置を推定する目標地点絶対位置推定ステップと、を有する。
【0010】
本発明の第5の態様によれば、プログラムは、水中の目標地点に当接される当接部を有する本体部と、前記当接部が前記目標地点に当接された際に前記本体部の水上に位置する部位に取り付けられた3個以上の測位用受信アンテナと、を具備する水中目標地点測位装置を備える水中目標地点測位システムのコンピュータを、前記測位用受信アンテナによって受信した無線信号に基づいて、当該測位用受信アンテナの絶対位置を測位するアンテナ絶対位置測位部、前記測位用受信アンテナの各々の取り付け位置から前記当接部までの距離を示す距離情報と、前記測位用受信アンテナの各々の絶対位置の測位結果とに基づいて、前記当接部の絶対位置を推定する目標地点絶対位置推定部、として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
上述の水中目標地点測位システム、水中目標地点測位方法、及び、プログラムによれば、水中の位置座標を高精度に取得可能な測位システムをより簡易な構成で安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水中目標地点測位システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る水中目標地点測位システムの機能構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る水中目標地点測位システムの処理の一例を示す第1のフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る水中目標地点測位システムの機能を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る水中目標地点測位システムの処理の一例を示す第2のフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る距離情報の一例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る演算装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図8】本発明の変形例に係る水中目標地点測位システムの機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る水中目標地点測位システム1について、
図1~
図7を参照しながら説明する。
【0014】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る水中目標地点測位システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、水中目標地点測位システム1は、水中目標地点測位装置10と、演算装置20と、を有してなる。
水中目標地点測位装置10は、オペレータ(測位者)によって保持されながら、一部を水中の水底地盤WGに当接される。
演算装置20は、水中目標地点測位装置10を用いて得られた情報を処理して水中目標地点の絶対位置を推定するための演算を行う。演算装置20は、例えば、船上等に搭載された一般的なコンピュータであってよい。
【0015】
水中目標地点測位装置10は、ポール状部材100aと、測位用受信アンテナ取り付け部材100bと、を有してなる。以下、ポール状部材100a、及び、測位用受信アンテナ取り付け部材100bを総称して水中目標地点測位装置10の「本体部100」とも表記する。
【0016】
ポール状部材100aは、水底地盤WGの目標地点WG1の測位時において、その一端側が水中に位置するように保持される。ポール状部材100aの水中側の一端である当接部100cは、目標地点WG1に当接される。測位者は、当接部100cが目標地点WG1から動かないように、ポール状部材100aを把持する。
【0017】
測位用受信アンテナ取り付け部材100bは、ポール状部材100aの、当接部100cとは反対側の一端に設けられる。測位用受信アンテナ取り付け部材100bは、水底地盤WGの目標地点WG1の測位時において、常に水面WSより上に位置する。測位用受信アンテナ取り付け部材100bには、4個の測位用受信アンテナ101a、101b、101c、101dが取り付けられている。以下、測位用受信アンテナ101a、101b、101c、101dを総称して、単に、「測位用受信アンテナ101」とも記載する。
【0018】
測位用受信アンテナ101aは、GNSS(Global Navigation Satellite System)における複数の航法衛星からの無線信号(航法信号)を受信する。4個の測位用受信アンテナ101は、測位用受信アンテナ取り付け部材100bのうちの互いに異なる位置にそれぞれ取り付けられている。これにより、4個の測位用受信アンテナ101は、測位の際には水上に配置されるため、航法衛星からの無線信号を正しく受信することができる。
【0019】
(機能構成)
図2は、本発明の一実施形態に係る水中目標地点測位システムの機能構成を示す図である。
図2に示すように、演算装置20は、CPU200と、RAM210と、表示部220と、操作部230と、記録媒体240と、を備えている。
【0020】
CPU200は、ROMやストレージ装置等に格納されたプログラムやデータをRAM210上に読み出し、処理を実行することで後述の各機能を実現する演算装置である。
【0021】
RAM210は、CPU200のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリである。
【0022】
表示部220は、例えば、液晶ディスプレイにより実現され、CPU200による処理結果を操作者(測位者)に向けて表示する。
【0023】
操作部230は、例えば、マウス、タッチパネル及びキーボード等で構成され、操作者(測位者)の指示を受けて演算装置20に各種操作等を入力する。
【0024】
記録媒体240は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等により実現され、OS(Operation System)、アプリケーションプログラム、及び各種データ等を記憶する。
なお、本実施形態に係る記録媒体240には、予め、距離情報240aが記録されている。ここで、距離情報240aとは、事前の計測によって得られた情報であって、水中目標地点測位装置10における、4個の測位用受信アンテナ101各々の取り付け位置から当接部100cまでの距離を示す情報テーブルである。
【0025】
CPU200は、専用のプログラムに基づいて動作することで、アンテナ絶対位置測位部201と、目標地点絶対位置推定部202としての機能を発揮する。
アンテナ絶対位置測位部201は、測位用受信アンテナ101によって受信した無線信号に基づいて、当該測位用受信アンテナ101の絶対位置を測位する。
目標地点絶対位置推定部202は、事前に記録媒体240に記録された距離情報240aと、測位用受信アンテナ101の各々の絶対位置の測位結果とに基づいて、当接部100cの絶対位置を推定する。
【0026】
(処理フロー)
図3は、本発明の一実施形態に係る水中目標地点測位システムの処理の一例を示す第1のフローチャートである。
図4は、本発明の一実施形態に係る水中目標地点測位システムの機能を説明するための図である。
水中の目標地点WG1の測位を行う際、測位者は、
図4に示すように水中目標地点測位装置10の当接部100cを目標地点WG1に当接させて固定する。
そうすると、演算装置20のアンテナ絶対位置測位部201は、
図3に示すように、測位用受信アンテナ101(101a、101b、101c、101d)各々が受信した無線信号に基づいて、測位用受信アンテナ101各々の絶対位置A、B、C、D(
図4)を測位する(ステップS10)。
【0027】
次に、目標地点絶対位置推定部202は、ステップS10において測位した測位用受信アンテナ101各々の絶対位置A~Dに基づいて、目標地点WG1と当接する当接部100cの絶対位置P(
図4)を推定する(ステップS11)。
図5は、本発明の一実施形態に係る水中目標地点測位システムの処理の一例を示す第2のフローチャートである。
具体的には、目標地点絶対位置推定部202は、ステップS11において、
図5に示す各処理を実行して当接部100cの絶対位置Pを推定する。
【0028】
まず、目標地点絶対位置推定部202は、記録媒体240から距離情報240aを読み出す(ステップS110)。
図6は、本発明の一実施形態に係る距離情報の一例を示す図である。
図6に示すように、距離情報240aは、測位用受信アンテナ101各々の取り付け位置から当接部100cまでの距離Ri(Ri_a,Ri_b,Ri_c,Ri_d)を示す情報テーブルである。
なお、距離Ri、例えば水中目標地点測位装置10の各部を組み立てる際に不図示のレーザ距離計等により計測され、距離情報240aとして記憶される。また、測位用受信アンテナ取り付け部材100b、測位用受信アンテナ101を取り外し可能な構成としたときは、これらを取り付ける度に、測位用受信アンテナ101各々に対応する距離Riを計測して距離情報240aを更新するようにしてもよい。このようにすることで、水中目標地点測位装置10の各部の取り外しによって距離Riが変化し、測位精度が低下することを抑制することができる。
【0029】
次に、
図5に戻り、目標地点絶対位置推定部202は、当接部100cの絶対位置Pを推定する際の初期位置O(
図4)を設定する(ステップS111)。
図4に示すように、目標地点絶対位置推定部202は、当接部100c付近のある点を初期位置Oとして設定する。例えば、目標地点絶対位置推定部202は、測位用受信アンテナ101各々の重心座標Mからポール状部材100aの長さL分、重力方向下方の位置を初期位置O(座標Xo、Yo、Zo)として設定する。
【0030】
次に、
図5に戻り、目標地点絶対位置推定部202は、初期位置Oを起点とし、測位用受信アンテナ101各々と当接部100cとの間の「距離Ri(Ri_a~Ri_d)」と、測位用受信アンテナ101各々からの距離である「仮想距離」との差の2乗和が最小となる仮目標地点の絶対位置を探索する(ステップS112)。
図4を例に説明すると、測位用受信アンテナ101aと当接部100cとの間の「距離Ri_a」と、測位用受信アンテナ101aの絶対位置A(Xa,Ya,Za)から初期位置O(Xo,Yo,Zo)までの「仮想距離A-O」との差を2乗した値は、初期位置Oよりも当接部100cの絶対位置Pに近い仮目標地点の絶対位置を用いて計算したときの値よりも大きくなるはずである。また、他の測位用受信アンテナ101b~101dについても同様のことが言える。したがって、測位用受信アンテナ101各々に対する「距離Ri」と「仮想距離」との差を2乗した値の総和が最小となる位置が、当接部100cの絶対位置Pからの誤差が最小となる仮目標地点の絶対位置である。
このとき、目標地点絶対位置推定部202は、例えば準ニュートン法(BFGS法)を用いて、「距離Ri」と「仮想距離」との誤差の2乗和が最小となる仮目標地点の絶対位置を求め、これを当接部100cの絶対位置Pであると推定する。
【0031】
次に、
図3に戻り、目標地点絶対位置推定部202は、ステップS11において推定した絶対位置Pを、表示部220に表示するとともに、記録媒体240に記憶して蓄積する(ステップS113)。このとき、絶対位置Pの推定に用いた測位用受信アンテナ101a~101dの測位結果(絶対位置A~D)及び測位日時を、絶対位置Pと関連付けて表示及び記憶するようにしてもよい。また、絶対位置Pは、ECEF(Earth-Centered, Earth-Fixed)直交座標で表されてもよいし、目標地点絶対位置推定部202が測地座標に変換するようにしてもよい。
【0032】
水中目標地点測位システム1の演算装置20は、所定時間(例えば1秒)ごとに上述の各処理を繰り返し実行する。このため、例えば船の動揺時に水中目標地点測位装置10の測位用受信アンテナ101の位置が移動してしまった場合であっても、移動前後の測位用受信アンテナ101の位置に基づいて当接部100c(目標地点WG1)の絶対位置Pを精度よく推定することができる。
【0033】
(ハードウェア構成)
図7は、本発明の一実施形態に係る演算装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
以下、
図7を参照して、本実施形態に係る水中目標地点測位システム1の演算装置20のハードウェア構成の一例について説明する。
図7に示すように、コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
上述の演算装置20は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した演算装置20の各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、演算装置20が各種処理に用いる記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域(記録媒体240)を補助記憶装置903に確保する。
【0034】
補助記憶装置903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904又は通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0035】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
更に、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0036】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る水中目標地点測位システム1は、水中の目標地点WG1に当接される当接部100cを有する本体部100と、当接部100cが目標地点WG1に当接された際に本体部100の水上に位置する部位に取り付けられた3個以上の測位用受信アンテナ101と、を具備する水中目標地点測位装置10と、測位用受信アンテナ101によって受信した無線信号に基づいて、当該測位用受信アンテナ101の絶対位置を測位するアンテナ絶対位置測位部201と、測位用受信アンテナ101の各々の取り付け位置から当接部100cまでの距離を示す距離情報240aと、測位用受信アンテナ101の各々の絶対位置の測位結果とに基づいて、当接部100cの絶対位置を推定する目標地点絶対位置推定部202と、を備える。
このような構成とすることで、水中目標地点測位装置10の本体部100には少なくとも3個の測位用受信アンテナ101を取り付けるのみでよい。したがって、傾斜センサやコンパス等の種々の計測機器を搭載させることなく、水中の目標位置の絶対位置を高精度に推定することができる。
【0037】
また、本体部100は、一端を前記当接部100cとするポール状部材100aと、ポール状部材100aの、当接部100cとは異なる一端に設けられた部材であって、3個以上の測位用受信アンテナ101の各々を互いに異なる位置に配置可能とする測位用受信アンテナ取り付け部材100bと、を含む。
このような構成とすることで、それぞれ異なる位置に配置された測位用受信アンテナ101各々の絶対位置と、測位用受信アンテナ101各々から当接部100cまでの距離を示す距離情報240aとに基づいて、当接部100cの絶対位置を一地点に絞り込むことができるので、測位精度を向上させることができる。
【0038】
また、目標地点絶対位置推定部202は、前記測位用受信アンテナ101の各々の絶対位置の測位結果と、仮に定めた絶対位置に位置する仮目標地点とに基づいて、当該仮目標地点と測位用受信アンテナ101の各々との距離である仮想距離を演算するとともに、仮想距離と距離情報240aに示される距離Riとの誤差が最小になる仮目標地点の絶対位置を探索する。
このような構成とすることで、水中目標地点測位システム1は、誤差を最小として測位精度を向上させることができる。
【0039】
また、目標地点絶対位置推定部202は、測位用受信アンテナ101各々の重心座標Mからポール状部材100aの長さL分、重力方向下方の位置を初期位置Oとして設定し、当該初期位置Oを起点とし、誤差が最小になる仮目標地点を探索する。
このようにすることで、目標地点絶対位置推定部202は、測位用受信アンテナ101各々の絶対位置から、当接部100cに近いと推定される初期位置Oを求めることができる。また、初期位置Oを起点として探索を開始することにより、当接部100cの絶対位置から極端に離れた位置を探索してしまうことを抑制することができるので、探索処理を高速化することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
図8は、本発明の変形例に係る水中目標地点測位システムの機能構成を示す図である。
上述の実施形態において、船上の演算装置20内のCPUにおいて、アンテナ絶対位置測位部201が処理される態様を例として説明したが、これに限られることはない。水中目標位置測定装置10に、各々の測位用受信アンテナ101ごとに演算装置20のアンテナ絶対位置測位部201の処理を行う演算装置を具備させ、各々のアンテナ絶対位置を測位させるようにしてもよい。
具体的には、
図8に示すように、水中目標地点測位装置10は、4個の測位ユニット110a、110b、110c、110dを備える。測位ユニット110aは、測位用受信アンテナ101aと、CPU102aとを有しており、CPU102aは専用のプログラムに基づいて動作することにより、アンテナ絶対位置測位部103aとしての機能を発揮する。なお、アンテナ絶対位置測位部103aの機能は、上述の実施形態におけるアンテナ絶対位置測位部201と同様である。
また、図示は略すが、測位ユニット110b、110c、110d各々も、測位ユニット110aと同様の機能構成を有するものとする。
【0041】
また、上述の実施形態において、水中目標地点測位装置10が4個の測位用受信アンテナ101を有している態様を例として説明したが、これに限られることはない。水中目標地点測位システム1は、3個以上の測位用受信アンテナ101を有していればよい。
なお、水中目標地点測位装置10が3個の測位用受信アンテナ101を有している場合、目標地点絶対位置推定部202は、対称位置に取り付けられた2つの測位用受信アンテナ101の中点からポール状部材100aの長さL分、重力方向下方の位置を初期位置Oとして設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 水中目標地点測位システム
10 水中目標地点測位装置
100 本体部
100a ポール状部材
100b 部材
100c 当接部
101、101a、101b、101c、101d 測位用受信アンテナ
20 演算装置
200 CPU
201 アンテナ絶対位置測位部
202 目標地点絶対位置推定部
220 表示部
230 操作部
240 記録媒体
110a 測位ユニット
110b 測位ユニット
110c 測位ユニット
110d 測位ユニット
102a CPU
103a アンテナ絶対位置測位部
240a 距離情報
900 コンピュータ
901 CPU
902 主記憶装置
903 補助記憶装置
904 インタフェース
WS 水面
WG 水底地盤
WG1 目標地点