(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】複合カート収容型配膳車
(51)【国際特許分類】
A47B 31/00 20060101AFI20220425BHJP
A47B 31/02 20060101ALI20220425BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20220425BHJP
A47J 47/14 20060101ALI20220425BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20220425BHJP
F25D 23/12 20060101ALI20220425BHJP
F25D 17/06 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
A47B31/00 H
A47B31/02 A
A47B31/02 D
A61G12/00 C
A47J47/14
F25D11/00 101D
F25D23/12 L
F25D23/12 M
F25D17/06 302
(21)【出願番号】P 2018029494
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504288627
【氏名又は名称】株式会社井上製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-217638(JP,A)
【文献】特開2015-155247(JP,A)
【文献】特開2014-040937(JP,A)
【文献】実開昭54-085657(JP,U)
【文献】特開2017-093862(JP,A)
【文献】特開平09-269175(JP,A)
【文献】米国特許第04232789(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 31/00
A47B 31/02
A61G 12/00
A47J 47/14
F25D 11/00
F25D 23/12
F25D 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にトレイが多段に配置され、底部に取り付けられた車輪で移動自在な
トレイ収容車と該トレイ収容車が内蔵される複合カート本体とからなる複合カートと、内部に前記複合カート全体を収容する複合カート収容室が形成された配膳車本体を有し、配膳車本体は、前記複合カート収容室におけるカートの出し入れを行う
複合カート出入口部が複合カート収容室の前側に形成され、複合カート収容室の後壁には過熱蒸気等が噴き出す過熱蒸気等噴出口および過熱蒸気等を吸い込む過熱蒸気等吸入口並びに冷気が噴き出す冷気噴出口および冷気を吸い込む冷気吸入口が形成されており、且つ配膳車本体は前記冷気噴出口から冷気を送入する冷却設備および前記過熱蒸気等噴出口から過熱蒸気または温風を送入する加熱設備を有し、前記複合カート出入口部には本体扉が取り付けられており、複合カートは、その
複合カート本体が上下壁、左右壁を有し、後側が、前記配膳車本体内の過熱蒸気等噴出口および過熱蒸気等吸入口並びに冷気噴出口および冷気吸入口のそれぞれと連通する連通開口部となされ、複合カート本体の前側が、該
複合カート本体内に内蔵されたトレイ収容車を出し入れするトレイ収容車出入口部となされ、トレイ収容車出入口部および連通開口部にはそれぞれカート扉が取り付けられ、前記トレイ収容車は少なくとも略方形のベース部と、ベース部の上面四隅に立設された支柱と、これら支柱によって支持されるトップ部と、前記ベース部の下面に取り付けられた車輪とを有する、複合カート収容型配膳車。
【請求項2】
配膳車本体の下壁に複合カートの車輪が進入する車輪進入用開口部が形成されている、請求項1記載の複合カート収容型配膳車。
【請求項3】
加熱設備が配膳車本体の下部に設けられ、冷却設備が配膳車本体の上部に設けられている、請求項1または請求項2記載の複合カート収容型配膳車。
【請求項4】
配膳車本体における過熱蒸気等噴出口の後側に一または複数のヒーターが配置され、加熱設備から出た温風または蒸気が前記ヒーターによって、加熱されるようになされており、
トレイ収容車は、その幅中央部分に多数の仕切壁が上下方向に多段に列設され、該仕切壁の両側面にはトレイ受板が一体に取り付けられる、請求項1~請求項3のうちのいずれか一項記載の複合カート収容型配膳車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や老人ホーム等で食事を提供するにあたり、料理が載ったトレイを多段に配置する移動自在な複合カートと、該カートを収容する本体とからなる複合カート収容型配膳車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種配膳車は、その本体内にトレイを多段に収容するトレイ収容室とトレイ収容室に対して、冷気を送入するための冷却設備および温風を送入するための加熱設備が一体に組み込まれたものであったが、このような一体型配膳車の場合、冷却設備と加熱設備によって配膳車の全体重量が重くなってしまい、病院等の各部屋に配膳を行う際に、移動や方向転換等が行い難いという不都合があった。
【0003】
また、このような問題に対処するために、冷却設備と加熱設備を備えたステーションを所定の場所に設置しておき、該ステーションに対してトレイが多段に収容されたカートをドッキングさせて、該カート内に冷気や温風等を送入して各トレイ上の料理を一定時間冷蔵したり、加熱するようにし、配膳にあたっては、前記カートのみを移動させるようにしたドッキング式の配膳車も知られている。
【0004】
前述したドッキング式配膳車の場合、ステーションからカートを切り離してトレイが多段に収容されたカートのみを移動させて配膳を行えば良いため、前記一体型の配膳車に比べれば、移動が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-105205号公報
【文献】特開2012-45142号公報
【文献】特開2013-27517号公報
【文献】特開2014-54487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したドッキング式配膳車においても、ステーションに対してドッキングするカートは、カート内に多段に収容されたトレイの料理を冷却したり、加熱したりする際に、外気との断熱を図るために、全体が箱形であって、上下壁、左右壁および前後の扉等をそれぞれ厚みのある断熱性パネルで構成する必要があることから、各壁や扉が分厚くなり、製造に手間を要すると共にコストも高くなると共に、前記カート単体でも移動容易性がなお不十分であるという不都合があった。
【0007】
また、前記カートを内側カートと外側カートの二部材構成としたドッキング式配膳車も知られているが、このような配膳車においても外気と接触する外側カートについては、その構成パネルを厚くする必要があり、しかも外側カートに対する内側カートの出し入れに手間と人力が必要であり、操作性が低いという不都合があった。
【0008】
本発明の目的は、カート自体の断熱性を高めることなく、該カート内に収容されたトレイ上の食品や食材を効率的に加熱・冷却することができ、しかも配膳にあたっては、カートの機動性・利便性を高めることができる複合カート収容型配膳車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明は、内部にトレイが多段に配置され、底部に取り付けられた車輪で移動自在なトレイ収容車と該トレイ収容車が内蔵される複合カート本体とからなる複合カートと、内部に前記複合カート全体を収容する複合カート収容室が形成された配膳車本体を有し、配膳車本体は、前記複合カート収容室におけるカートの出し入れを行う複合カート出入口部が複合カート収容室の前側に形成され、複合カート収容室の後壁には過熱蒸気等が噴き出す過熱蒸気等噴出口および過熱蒸気等を吸い込む過熱蒸気等吸入口並びに冷気が噴き出す冷気噴出口および冷気を吸い込む冷気吸入口が形成されており、且つ配膳車本体は前記冷気噴出口から冷気を送入する冷却設備および前記過熱蒸気等噴出口から過熱蒸気または温風を送入する加熱設備を有し、前記複合カート出入口部には本体扉が取り付けられており、複合カートは、その複合カート本体が上下壁、左右壁を有し、後側が、前記配膳車本体内の過熱蒸気等噴出口および過熱蒸気等吸入口並びに冷気噴出口および冷気吸入口のそれぞれと連通する連通開口部となされ、複合カート本体の前側が、該複合カート本体内に内蔵されたトレイ収容車を出し入れするトレイ収容車出入口部となされ、トレイ収容車出入口部および連通開口部にはそれぞれカート扉が取り付けられ、前記トレイ収容車は少なくとも略方形のベース部と、ベース部の上面四隅に立設された支柱と、これら支柱によって支持されるトップ部と、前記ベース部の下面に取り付けられた車輪とを有する複合カート収容型配膳車である。
【0010】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載の複合カート収容型配膳車について、配膳車本体の下壁に複合カートの車輪が進入する車輪進入用開口部が形成されているものである。
【0011】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1または請求項2記載の複合カート収容型配膳車について、加熱設備が配膳車本体の下部に設けられ、冷却設備が配膳車本体の上部に設けられているものである。
【0012】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1~請求項3のうちのいずれか一項記載の複合カート収容型配膳車について、配膳車本体における過熱蒸気等噴出口の後側に一または複数のヒーターが配置され、加熱設備から出た温風または蒸気が前記ヒーターによって、加熱されるようになされており、トレイ収容車は、その幅中央部分に多数の仕切壁が上下方向に多段に列設され、該仕切壁の両側面にはトレイ受板が一体に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合カート収容型配膳車は、配膳車本体の複合カート収容室内に複合カート全体が収容され、該複合カート収容室内で複合カート内に冷気や過熱蒸気等が循環されるようになされているため、この冷却および加熱時において、複合カート自体は外気と完全に遮断された状態となっており、したがって、従来の一体型配膳車やドッキング式配膳車に比べて、複合カート本体を構成する上下壁、左右壁および前後の扉の構造を簡略化することができ、各壁の厚みを薄くすると共に軽量化することが可能となり、またカートの全体サイズを小型化することもでき、そのためカートの移動や方向転換等の操作性も更に向上し、また製造も容易に行えて、コストの削減も可能となる。
【0014】
更に、本発明の複合カート収容型配膳車によれば、病院や老人ホーム等の施設において、配膳を行う際に、施設内の厨房室等に配置されている配膳車本体の複合カート収容室から先ず複合カートを出して、最終的な配膳場所の近傍まで移動させ、そして最終の配膳場所へは、複合カート本体からトレイ収容車だけを出して配膳を行うことができる。そのため、配膳途中でのトレイ上の食品への埃等の異物の進入が確実に防止されると共に、機動性のあるスムーズな配膳作業が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る複合カート収容型配膳車の斜視図であって、複合カート収容前の状態を示している。
【
図2】同実施形態に係る配膳車の正面図であって、複合カート収容後の状態を示している。
【
図3】配膳車本体の正面図であって、左右の本体扉を開けた状態を示す。
【
図4】同実施形態における配膳車本体の後壁後方における冷却設備および加熱設備を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0017】
なお、本明細書において、前後、左右および上下は
図2を基準とし、前とは
図2の図面紙葉の表側方向を指し、後とは同図の裏側方向をいう。また左右は
図2の左右を意味し、上とは
図2の上側方向を指し、下とは同図の下側方向を指すものとする。
【0018】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る複合カート収容型配膳車1は、内部にトレイTが多段に配置され、底部に取り付けられた車輪5A・5Bで移動自在な複合カート3と、内部に複合カート3全体を収容する複合カート収容室4が形成された配膳車本体2を有するものである。
【0019】
図1~
図6に示すように、配膳車本体2は、前記複合カート収容室4の前側に複合カート出入口部6が形成され、複合カート収容室4の後壁7には過熱蒸気等が噴き出す過熱蒸気等噴出口8Aおよび過熱蒸気等を吸い込む過熱蒸気等吸入口8B並びに冷気が噴き出す冷気噴出口9Aおよび冷気を吸い込む冷気吸入口9Bが形成されており、且つ前記冷気噴出口9Aから冷気を送入する冷却設備11および前記過熱蒸気等噴出口8Aから過熱蒸気または温風を送入する加熱設備12を有し、前記複合カート出入口部6には観音開き状の本体扉10が取り付けられている。なお、図中D1・D2は冷気、過熱蒸気等のダクトを示す。
【0020】
配膳車本体2の複合カート収容室4は、上下壁28・29と左右壁31・32と前記後壁7と前記複合カート出入口部6を備えている。
【0021】
前記複合カート収容室4の下壁29の外面四隅には車輪44A・44Bと脚体45がそれぞれ取り付けられており、下壁29における左右壁31・32寄り部分には複合カート3の車輪5A・5Bが進入する車輪進入用開口部(図示せず)が所定間隔をあけて形成されている。
【0022】
図1、
図2および
図7~
図9に示すように、複合カート3は、外側の本体30が、上下壁13・14、左右壁15・16を有し、本体30の後側が、配膳車本体2内の過熱蒸気等噴出口8Aおよび過熱蒸気等吸入口8B並びに冷気噴出口9Aおよび冷気吸入口9Bのそれぞれと連通する連通開口部17となされ、本体30の前側が、後述するトレイ収容車23が出し入れされるトレイ収容車出入口部18となされ、トレイ収容車出入口部18および連通開口部17にはそれぞれカート扉21が取り付けられ、且つ前記複合カート本体30内には、少なくとも略方形のベース部22と、ベース部22の上面四隅に立設された支柱24と、これら支柱24によって支持されるトップ部25と、前記ベース部22の下側に取り付けられた車輪25(5B)とを有し、内部にトレイTを多段に収容するトレイ収容車23が内蔵されている。
【0023】
トレイ収容車23は、幅中央部分に多数の仕切壁26が上下方向に多段に列設されたものであり、仕切壁26の両側面には平面から見て略半円状のトレイ受板27が一体に取り付けられている。
【0024】
そして、前述した上下に隣り合う仕切壁26間にトレイTを差し込むことで、該トレイTの下面が前記トレイ受板27によって支持される構造となされている。更に、トレイ収容車23では、前側がトレイTを出し入れするトレイ出入口部23Aとなされ、後側が前述した過熱蒸気や冷気等が入る温冷口23Bとなされている。
【0025】
本実施形態に係る複合カート収容型配膳車1は、要するに、その配膳車本体2の複合カート収容室4内に、トレイTを多段に配置した複合カート3全体がそのまま収容され、カート出入口部6の本体扉10を閉めて、冷却設備11および加熱設備12により、複合カート3の本体30内に内蔵されたトレイ収容車23の各トレイT上に載せられた食品や食材を冷蔵したり、加熱したりするものである。
【0026】
なお、本実施形態では、前記加熱設備12は、過熱蒸気発生のための設備であって、当該配膳車1内には過熱蒸気が循環される。また、前記ダクトD2内には、蒸気加熱のためのコイル状ヒータ(図示せず)が適宜配置される。
【0027】
次に、本実施形態に係る複合カート収容型配膳車1の使用方法について説明すると、先ず、
図1に示すように、トレイ収容車23における上下に隣り合う仕切壁26間に、食品等が載置されたトレイTを差し込んで、該トレイTが支持された状態とした後、トレイ収容車23を複合カート3の本体30内に入れて、該複合カート3を配膳車本体2の複合カート収容室4内に収容した後、本体扉10を閉めて、配膳車本体2の冷却設備11や加熱設備12を使用して前記トレイT上の食品等を冷却・加熱する。
【0028】
そして、前記加熱・冷却が完了した後、配膳車本体2内から複合カート3を引き出し、該複合カート3を配膳場所近傍まで移動させ、最終的に配膳を行う際に複合カート3の本体30からトレイ収容車23だけを引き出して最終的な配膳場所まで移動させ、トレイ収容車23から食品が載せられているトレイTを引き出して配膳する。
【0029】
以上述べたような一連の配膳作業において、前記複合カート3の本体30によって、トレイT上の食品への埃等の異物の進入や食品の乾燥等が確実に防止され、また最終的に前記複合カート本体30からトレイ収容車23だけを出して機動性のある配膳作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の配膳車によれば、前述した通り、配膳を行う際の各トレイ上の食品の乾燥や異物の混入等が確実に防止されると共に、機動性のある配膳が行えるため、病院や介護施設等において幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0031】
1 複合カート収容型配膳車
2 配膳車本体
3 複合カート
4 複合カート収容室
5A・5B 車輪
6 複合カート出入口部
7 複合カート収容室の後壁
8A 過熱蒸気等噴出口
8B 過熱蒸気等吸入口
9A 冷気噴出口
9B 冷気吸入口
10 本体扉
11 冷却設備
12 加熱設備
23 トレイ収容車
30 複合カート本体