(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】引き戸装置
(51)【国際特許分類】
E05F 7/04 20060101AFI20220425BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20220425BHJP
E05F 1/16 20060101ALI20220425BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
E05F7/04
E05D15/06 119
E05F1/16 B
E05F5/02 A
(21)【出願番号】P 2018101520
(22)【出願日】2018-05-28
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390021153
【氏名又は名称】株式会社SKB
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】若松 知哉
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-31793(JP,A)
【文献】実開平6-51455(JP,U)
【文献】特開2005-68856(JP,A)
【文献】実開昭54-52148(JP,U)
【文献】実開平7-14070(JP,U)
【文献】国際公開第2015/129494(WO,A1)
【文献】特開2012-193535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04
17/00
E05D 15/00-15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸パネル(3)が、ガイドレール(2)で移動案内されるランナー体(6)と、壁面(W)に固定した振止め構造(4)で開閉自在に支持されている引き戸装置であって、
振止め構造(4)は、戸パネル(3)に固定されるスライドレール(11)と、同レール(11)を案内するガイド体(12)と、戸パネル(3)と対向する壁面(W)に装着されてガイド体(12)を支持する振止め枠(14)とを備えており、
振止め枠(14)は、ガイド体(12)に固定される第1フレーム(15)と、壁面(W)に装着されて第1フレーム(15)と連結される第2フレーム(16)と、両フレーム(15・16)を連結する締結構造(17)とを備えており、
第1フレーム(15)と第2フレーム(16)の連結部分には、両フレーム(15・16)を仮組みした状態において、上下に接合される第1締結座(29)および第2締結座(38)が形成されており、
第1締結座(29)および第2締結座(38)に、互いに係合して両フレーム(15・16)の分離を防ぐ第1係合体(30)と第2係合体(40)とが設けられて
おり、
第1フレーム(15)の第1締結座(29)の左右両側に第1係合体(30)が形成され、第2フレーム(16)の第2締結座(38)の左右両側に第2係合体(40)が形成されており、
第1係合体(30)にはパネル側爪部(31)が設けられ、第2係合体(40)には壁側爪部(41)が設けられており、
両締結座(29・38)を仮組みした状態において、パネル側爪部(31)と壁側爪部(41)が係合しており、
第1係合体(30)と第2係合体(40)のいずれか一方に、第2締結座(38)を第1締結座(29)に対して押上げ案内する仮組みガイド部(32)が斜めに形成されていることを特徴とする引き戸装置。
【請求項2】
第2フレーム(16)が、壁面(W)に固定した振止めベース(13)と第2フレーム(16)の間に設けた上下位置調整構造で上下位置調整可能に支持されており、
上下位置調整構造が、振止めベース(13)と第2フレーム(16)のいずれか一方に形成される上下調整溝(39)と、他方に固定されて上下調整溝(39)と相対スライドする調整ガイド軸(36)とを備えている請求項1に記載の引き戸装置。
【請求項3】
締結構造(17)が、第1締結座(29)に上方からねじ込まれる複数のねじ体(44)と、第2締結座(38)に形成される複数のねじ挿通溝(45)と、ねじ挿通溝(45)の前端に形成されるねじ連結口(46)で構成されており、
ねじ連結口(46)が第2締結座(38)の前縁で開口されている請求項1、または2に記載の引き戸装置。
【請求項4】
戸パネル(3)を開閉ストロークの少なくとも一端寄りで制動しながらストローク端まで移動させるアシストユニット(5A)が戸パネル(3)に配置されており、
アシストユニット(5A)は、アシストケース(49)で往復スライド自在に支持されるスライダー(50)と、スライダー(50)をアシストケース(49)の一側端から他側端に向かって移動付勢する蓄力ばね(51)と、戸パネル(3)の移動動作を開閉ストロークの一端寄りで制動するダンパーユニット(52)とを含み、
ダンパーユニット(52)は、シリンダー型の一対のダンパー(64)と、アシストケース(49)で左右スライド自在に案内されて、両ダンパー(64)のシリンダー(69)を支持するダンパーホルダー(65)とを備えており、
一方のダンパー(64)のピストンロッド(70)はアシストケース(49)の前記他側端のケース壁に連結され、他方のダンパー(64)のピストンロッド(70)は前記他側端から最も離れたスライダー(50)の側端に設けた連結部(60)に連結されている請求項
1から3のいずれかひとつに記載の引き戸装置。
【請求項5】
引張りばねからなる蓄力ばね(51)の一端が前記他側壁に掛止され、蓄力ばね(51)の他端が前記他側端から最も離れたスライダー(50)の側端に掛止されており、
蓄力ばね(51)の中途部が、スライダー(50)に形成したばね溝(57)に収容されている請求項
4に記載の引き戸装置。
【請求項6】
アシストユニット(5A)は、スライダー(50)で揺動可能に、かつ同行移動可能に支持される切換えレバー(73)と、同レバー(73)を蓄力保持姿勢と蓄力開放姿勢に切換え操作するガイド体(12)の切換え部(24)を備えており、
切換えレバー(73)には、切換え部(24)が係脱する受動凹部(74)と、アシストケース(49)のロック開口(79)に係脱するロック爪(76)が形成されており、
切換えレバー(73)が切換え部(24)で蓄力保持姿勢に切換え操作された状態では、ロック爪(76)がロック開口(79)と係合し、切換えレバー(73)が切換え部(24)で蓄力開放姿勢に切換え操作された状態では、ロック爪(76)がロック開口(79)から離脱する請求項
4、または5に記載の引き戸装置。
【請求項7】
アシストケース(49)の内部の上側から順に、一対のダンパー(64)と、スライダー(50)および蓄力ばね(51)と、切換えレバー(73)が記載順に配置されている請求項6に記載の引き戸装置。
【請求項8】
戸パネル(3)の開放端側に、戸パネル(3)を閉じ端寄りでアシストする閉じ支援用のアシストユニット(5A)が配置され、
戸パネル(3)の閉じ端側に、戸パネル(3)を開放端寄りでアシストする開放支援用のアシストユニット(5B)が配置されている請求項
4から7のいずれかひとつに記載の引き戸装置。
【請求項9】
開口枠(1)と戸パネル(3)の関係が、閉じ位置における戸パネル(3)の開放端の軌跡と、開放位置における戸パネル(3)の閉じ端の軌跡とが、開口枠(1)の開放端側の縦枠部分を間に挟んで前後に重なるように設定されており、
両アシストユニット(5A・5B)の切換えレバー(73)を、前記両軌跡が重なる部分に配置した1個のガイド体(12)で切換え操作する請求項8に記載の引き戸装置
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸パネルを開閉案内する引き戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の引き戸装置は、例えば下荷重型のアウトセット引き戸に適用されるが、この種の引き戸装置は特許文献1に公知である。特許文献1の引き戸装置は、戸板の下端に設けた走行部材(ランナー体)を床面に固定したレールで開閉移動可能に案内している。また、戸板の上端に案内レールを固定し、壁面に設けたガイド部材(振止め体)で先の案内レールを支持して戸板の前後移動を規制している。案内レールの閉じ端と開放端には制動部材受が設けられており、戸板が閉じ端寄り、あるいは開放端寄りまで開閉されたとき、ガイド部材に設けた制動部材を制動部材受で受止めて、両者の摩擦抵抗で戸板の走行移動を減衰している。制動部材受は、閉じ端と開放端において制動部材を位置保持するキャッチ作用も発揮する。制動部材受には接触調整機構が設けられており、同機構の調整ねじを調整操作することにより、制動部材と制動部材受の接触度合を調整できる。また、制動部材には前後調整機構が設けられており、同機構の調整用ねじを調整操作することにより、戸板の壁面に対する隙間を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の引き戸装置によれば、床面にレールを固定し、壁面にガイド部材を固定したのち、戸板をレールとガイド部材の間に建込むことで、アウトセット型の引き戸を構築できる。しかし、戸板をレールとガイド部材の間に組む際には、戸板を起立保持した状態のままで、案内レールをガイド部材に上向きに差込む必要があるため、一人の作業者のみで施工を行う場合に、戸板の吊込みに手間取ることがある。また、戸板の吊込み時にバランスを崩した作業者に戸板が倒れ込むことがあり、施工時の安全性を向上するうえで改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、戸パネルの建込み作業を単独の作業者のみで安全に行え、しかも建込み作業をより少ない手間で確実に行うことができ、全体として施工性に優れた引き戸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の引き戸装置は、戸パネル3が、ガイドレール2で移動案内されるランナー体6と、壁面Wに固定した振止め構造4で開閉自在に支持されている。振止め構造4は、戸パネル3に固定されるスライドレール11と、同レール11を案内するガイド体12と、戸パネル3と対向する壁面Wに装着されてガイド体12を支持する振止め枠14とを備えている。振止め枠14は、ガイド体12に固定される第1フレーム15と、壁面Wに装着されて第1フレーム15と連結される第2フレーム16と、両フレーム15・16を連結する締結構造17とを備えている。第1フレーム15と第2フレーム16の連結部分には、両フレーム15・16を仮組みした状態において、上下に接合される第1締結座29および第2締結座38が形成されている。第1締結座29および第2締結座38に、互いに係合して両フレーム15・16の分離を防ぐ第1係合体30と第2係合体40とが設けられている。第1フレーム15の第1締結座29の左右両側に第1係合体30が形成され、第2フレーム16の第2締結座38の左右両側に第2係合体40が形成されている。第1係合体30にはパネル側爪部31が設けられ、第2係合体40には壁側爪部41が設けられている。両締結座29・38を仮組みした状態において、パネル側爪部31と壁側爪部41が係合している。第1係合体30と第2係合体40のいずれか一方に、第2締結座38を第1締結座29に対して押上げ案内する仮組みガイド部32が斜めに形成されていることを特徴とする。
【0008】
第2フレーム16は、壁面Wに固定した振止めベース13と第2フレーム16の間に設けた上下位置調整構造で上下位置調整可能に支持されている。上下位置調整構造は、振止めベース13と第2フレーム16のいずれか一方に形成される上下調整溝39と、他方に固定されて上下調整溝39と相対スライドする調整ガイド軸36とを備えている。
【0010】
締結構造17は、第1締結座29に上方からねじ込まれる複数のねじ体44と、第2締結座38に形成される複数のねじ挿通溝45と、ねじ挿通溝45の前端に形成されるねじ連結口46で構成されている。ねじ連結口46は第2締結座38の前縁で開口されている。
【0011】
戸パネル3を開閉ストロークの少なくとも一端寄りで制動しながらストローク端まで移動させるアシストユニット5Aを戸パネル3に配置する。アシストユニット5Aは、アシストケース49で往復スライド自在に支持されるスライダー50と、スライダー50をアシストケース49の一側端から他側端に向かって移動付勢する蓄力ばね51と、戸パネル3の移動動作を開閉ストロークの一端寄りで制動するダンパーユニット52とを含む。
図7に示すようにダンパーユニット52は、シリンダー型の一対のダンパー64と、アシストケース49で左右スライド自在に案内されて、両ダンパー64のシリンダー69を支持するダンパーホルダー65とを備えている。一方のダンパー64のピストンロッド70はアシストケース49の前記他側端のケース壁に連結し、他方のダンパー64のピストンロッド70は前記他側端から最も離れたスライダー50の側端に設けた連結部60に連結する。
【0012】
引張りばねからなる蓄力ばね51の一端は前記他側壁に掛止され、蓄力ばね51の他端は前記他側端から最も離れたスライダー50の側端に掛止されている。蓄力ばね51の中途部は、スライダー50に形成したばね溝57に収容されている。
【0013】
アシストユニット5Aは、スライダー50で揺動可能に、かつ同行移動可能に支持される切換えレバー73と、同レバー73を蓄力保持姿勢と蓄力開放姿勢に切換え操作するガイド体12の切換え部24を備えている。
図8に示すように、切換えレバー73には、切換え部24が係脱する受動凹部74と、アシストケース49のロック開口79に係脱するロック爪76が形成されている。切換えレバー73が切換え部24で蓄力保持姿勢に切換え操作された状態では、ロック爪76がロック開口79と係合し、切換えレバー73が切換え部24で蓄力開放姿勢に切換え操作された状態では、ロック爪76がロック開口79から離脱する。
【0014】
アシストケース49の内部の上側から順に、一対のダンパー64と、スライダー50および蓄力ばね51と、切換えレバー73が記載順に配置されている。
【0015】
戸パネル3の開放端側に、戸パネル3を閉じ端寄りでアシストする閉じ支援用のアシストユニット5Aが配置されている。戸パネル3の閉じ端側に、戸パネル3を開放端寄りでアシストする開放支援用のアシストユニット5Bが配置されている。
【0016】
開口枠1と戸パネル3の関係が、閉じ位置における戸パネル3の開放端の軌跡と、開放位置における戸パネル3の閉じ端の軌跡とが、開口枠1の開放端側の縦枠部分を間に挟んで前後に重なるように設定されている。両アシストユニット5A・5Bの切換えレバー73を、前記両軌跡が重なる部分に配置した1個のガイド体12で切換え操作する。
【発明の効果】
【0017】
本発明における引き戸装置では、それぞれ独立した部品からなる第1フレーム15および第2フレーム16で振止め枠14を構成し、各フレーム15・16の第1締結座29と第2締結座38に、仮組み時に互いに係合する第1係合体30と第2係合体40を設けた。こうした引き戸装置によれば、第1フレーム15と第2フレーム16とを連結することで、第1係合体30と第2係合体40を互いに係合させて、戸パネル3を仮組み状態に保持することができる。また、戸パネル3を仮組みしたのちの作業者は、戸パネル3から手を離して戸パネル3の垂直姿勢の確認作業や、ねじ体44の締結作業を行うことができるので、従来の引き戸装置に比べて、戸パネル3の建込み作業を単独の作業者のみで安全に、しかもより少ない手間で確実に行うことができる。以上より、本発明によれば、施工性に優れた引き戸装置を提供できる。
【0018】
第1締結座29の左右両側にパネル側爪部31を備えた第1係合体30を設け、第2締結座38の左右両側に壁側爪部41を備えた第2係合体40を設けるようにした。こうした振止め構造4によれば、両締結座29・38を仮組みした状態において、パネル側爪部31と壁側爪部41が係合して、戸パネル3が壁面Wから離れる向きに傾くことを防止できる。また、各締結座29・38の左右両側に第1係合体30と第2係合体40が設けられているので、仮組み状態において第1締結座29と第2締結座38が左右にずれ動くことを第1係合体30または第2係合体40で規制して、ねじ体44による両締結座29・38の締結をさらに的確に行うことができる。
【0019】
振止めベース13と第2フレーム16の間に、上下調整溝39と調整ガイド軸36を備えた上下位置調整構造を設けて、第2フレーム16を振止めベース13で上下スライド可能に案内支持するようにした。こうした振止め構造4によれば、下荷重型の戸パネル3を開閉するとき、第2フレーム16が上下動することでガイドレール2の不陸を吸収することができるので、ランナー体6が下凹み状の不陸部分を通過するとき、脱輪することをよく防止できる。
【0020】
第1係合体30と第2係合体40のいずれか一方に、仮組みガイド部32が形成された振止め構造4によれば、戸パネル3を第2フレーム16へ向かって押込み操作する際に、第2締結座38を仮組みガイド部32で上向きに移動させて、第1係合体30が第2係合体40の下面側を潜り抜けるのを補助できる。また、第1係合体30が第2係合体40の下面側を潜り抜けるのと同時に、第2フレーム16が自重で落下して、第2締結座38が第1締結座29の上面で支持され、第2係合体40が第1係合体30の前側に落ち込んで仮組み状態を保持する。従って、第1係合体30を第2係合体40に係合させる手間を省いて、戸パネル3を第2フレーム16へ向かって押込み操作するだけで、戸パネル3の仮組み作業を簡便に行える。
【0021】
第1締結座29にねじ込まれる複数のねじ体44と、第2締結座38に形成される複数のねじ挿通溝45と、ねじ挿通溝45の前端に形成されるねじ連結口46で、締結構造17を構成した。また、ねじ連結口46は第2締結座38の前縁で開口させるようにした。こうした振止め構造4によれば、第1フレーム15と第2フレーム16の左右方向の位置合わせを行うとき、ねじ体44のねじ軸をねじ連結口46に落込ませることにより、第1締結座29と第2締結座38を大まかに位置決めできる。また、大まかに位置決めされた状態で、戸パネル3を第2フレーム16に向かって押し込み操作することで、ねじ体44をねじ挿通溝45に係合させて、両締結座29・38をより正確に位置決めし、同時に両締結座29・38が左右にずれ動くのを規制できる。従って、戸パネル3の仮組み作業をさらに的確に行える。また、ねじ体44を第1締結座29に上方からねじ込むので、ねじ体44による両締結座29・38の締結作業を、振止め構造の上側の自由空間で確実にしかも簡便に行える。
【0022】
アシストユニット5Aは、往復スライド自在なスライダー50と、スライダー50を移動付勢する蓄力ばね51と、戸パネル3の移動動作を制動するダンパーユニット52などを備えるようにした。また、ダンパーユニット52は、一対のダンパー64と、両ダンパー64のシリンダー69を支持するダンパーホルダー65を備えるようにした。こうしたアシストユニット5Aによれば、一対のダンパー64におけるピストンロッド70の出退ストロークを、制動ストロークの約半分程度に小さくすることができるので、その分だけダンパーユニット52の左右長さを小さくしてアシストユニット5Aをコンパクトに構成できる。従って、パネル幅が小さな戸パネル3であっても、アシストユニット5Aを問題なく適用できる。
【0023】
蓄力ばね51はアシストケース49の一側壁と、同壁から最も離れたスライダー50の側端に掛止して、その中途部がスライダー50に形成したばね溝57に収容されるようにした。こうしたアシストユニット5Aによれば、スライダー50のスライドスペースを利用して、蓄力ばね51をスライダー50と平行に配置できるので、蓄力ばね51の配置スペースが別途確保されている場合に比べて、アシストユニット5Aを小形化しコンパクト化できる。
【0024】
アシストユニット5Aは、先の部材以外に、スライダー50で揺動可能に、かつ同行移動可能に支持される切換えレバー73と、同レバー73を蓄力保持姿勢と蓄力開放姿勢に切換え操作するガイド体12の切換え部24を備えるようにした。また、切換えレバー73には、切換え部24が係脱する受動凹部74と、ロック開口79に係脱するロック爪76を形成した。こうしたアシストユニット5Aによれば、切換えレバー73が切換え部24で蓄力保持姿勢に切換え操作された状態では、ロック爪76がロック開口79と係合してスライダー50の移動を阻止し、蓄力ばね51を最大伸張姿勢に保持する。また、切換えレバー73が切換え部24で蓄力開放姿勢に切換え操作された状態では、ロック爪76がロック開口79から離脱してスライダー50の移動を許し、蓄力ばね51がスライダー50を引寄せ操作する。このようにアシストユニット5Aを備えた引き戸装置によれば、開閉ストロークの端部寄りからストローク端まで、戸パネル3にダンパー64の制動力を作用させながら、蓄力ばね51の付勢力でゆっくりと移動させることができる。
【0025】
アシストケース49の内部の上側から順に、一対のダンパー64と、スライダー50および蓄力ばね51と、切換えレバー73を記載順に配置するようにした。こうしたアシストユニット5Aによれば、同ユニット5Aの前後厚みを小さくできるので、前後厚みが小さな戸パネル3であっても、アシストユニット5Aを支障なく組込むことができる。
【0026】
戸パネル3の開放端側と閉じ端側に、閉じ支援用のアシストユニット5Aと、開放支援用のアシストユニット5Bを配置した。こうした引き戸装置によれば、閉じ端側と開放端側の双方において、戸パネル3をアシストユニット5A・5Bで閉じ支援し、あるいは開放支援できる。従って、ユーザーが戸パネル3を閉じ端や開放端まで開閉する手間を省いて、引き戸装置の使い勝手を向上できる。
【0027】
一対のアシストユニット5A・5Bの切換えレバー73を1個の切換え部24で切換え操作できるようにした引戸装置によれば、個々のアシストユニット5A・5Bに対応して切換え部24を2個所に設ける必要がなく、その分だけ戸パネル3のアシスト構造を簡素化して低コスト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例1に係る本発明の引き戸装置を構成する振止め構造の縦断側面図である。
【
図6】振止め構造が仮組みされた状態を示す縦断側面図である。
【
図8】アシストユニットの切換え構造を示す横断平面図である。
【
図9】戸パネルの建込み手順を示す一部破断側面図である。
【
図10】仮組み時の第1フレームと第2フレームの動作を示す縦断側面図である。
【
図11】切換えレバーが蓄力保持姿勢から蓄力開放姿勢に切換え操作される動作を示す動作説明図である。
【
図12】切換えレバーが蓄力開放姿勢から蓄力保持姿勢に切換え操作される動作を示す動作説明図である。
【
図13】実施例2に係る本発明の引き戸装置を構成する振止め構造の分解側面図である。
【
図14】振止め構造の仮組み動作を示す動作説明図である。
【
図15】実施例3に係る本発明の引き戸装置を構成する振止め構造の分解
側面図である
。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施例1)
図1から
図12に、本発明をアウトセット型の引き戸装置に適用した実施例1を示す。本発明における前後、左右、上下とは、
図2および
図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表示した前後、左右、上下の文字表示に従う。
図2において引き戸装置は、開口枠1の床面側に配置したガイドレール2と、同レール2で開閉自在に案内支持される木質系の戸パネル3と、戸パネル3の前後動を規制する振止め構造4と、戸パネル3の上部に配置される一対のアシストユニット5A・5Bなどで構成される。戸パネル3の左右の下隅には、ガイドレール2で移動案内される戸車(ランナー体)6が設けられており、戸パネル3の閉じ端寄りの前後のパネル面には把手7が装着されている。
【0030】
図3および
図6に示すように振止め構造4は、戸パネル3の上端に形成した装着部10に固定されるスライドレール11と、同レール11をスライド案内するガイド体12と、戸パネル3の上部後面と正対する壁面Wに装着される振止めベース13と、同ベース13に装着されてガイド体12を支持する振止め枠14とを備えている。戸パネル3を振止め構造4に対して簡便に組むために、振止め枠14は、ガイド体12に固定される第1フレーム15と、振止めベース13に装着されて第1フレーム15に連結される第2フレーム16と、両フレーム15・16を連結する締結構造17とで構成する。
【0031】
図6に示すように、スライドレール11は断面がL字状のアルミニウム条材からなり、装着部10の底面に接合される底壁20と、底壁20に連続して装着部10の後開口の下半側を塞ぐ縦壁21と、縦壁21の前面と底壁20の上面から突設される上下一対のレール壁22を一体に備えている。スライドレール11は戸パネル3の一側端から他側端にわたって配置されて、その両端が図示していないキャップで塞いである。ガイド体12は、滑性に優れたプラスチック材を素材とする成形品からなり、
図4に示すように横長長方形状に形成されて、その上下に先のレール壁22を案内するガイド溝23が凹み形成されている。ガイド体12の前面の左右中央には、後述する切換えレバー73を切換え操作する四角形状の切換え部24が一体に設けられている。
【0032】
第1フレーム15は逆L字状のプレス金具からなり、ガイド体12の前面に接合される縦壁28と、縦壁28に連続して後向きに折曲げられる水平の第1締結座29を一体に備えている。縦壁28は、ガイド体12に対して左右一対のリベット(締結具)27で固定されている。第1締結座29の左右両側には、矢印形の第1係合体30が下向きに折り曲げ形成されており、第1係合体30の上縁後部に、パネル側爪部31が第1締結座29より上方に突出する状態で設けられている。また、パネル側爪部31に隣接して、第1係合体30の後端へ向かって下り傾斜する仮組みガイド部32が形成されている。一対の第1係合体30の対向間隔は、後述する第2締結座38の左右寸法より僅かに大きく設定されている。
【0033】
振止めベース13は十文字状の金属板材からなり、左右に張出された締結座のそれぞれが、壁面Wに上下一対のビス35で固定されている。壁面Wに固定された振止めベース13は、左側の締結座が開口枠1の開放端側の縦枠部分に隣接している(
図3、
図4参照)。上下に張出された締結座には第2フレーム16を支持する調整ガイド軸36がかしめ固定してある。戸パネル3の左右幅は、開口枠1の開口幅より大きく設定してある。そのため、戸パネル3が閉じ位置にあるとき、振止め構造4の前面は
図11(d)に示すように戸パネル3の開放端側のパネル面で覆われている。同様に、戸パネル3が開放位置にあるとき、振止め構造4の前面は戸パネル3の閉じ端側のパネル面で覆われている。このように開口枠1と戸パネル3の関係は、閉じ位置における戸パネル3の開放端の軌跡と、開放位置における戸パネル3の閉じ端の軌跡とが、開口枠1の開放端側の縦枠部分を間に挟んで前後に重なるように設定されている。こうすることにより、各アシストユニット5A・5Bの切換えレバー73を、前記両軌跡が重なる部分に配置した1個のガイド体12で切換え操作することができる。
【0034】
第2フレーム16は、逆L字状のプレス金具からなり、振止めベース13の前面に接合される縦壁37と、縦壁37に連続して前向きに折曲げられる水平の第2締結座38を一体に備えている。第2フレーム16は、振止めベース13と第2フレーム16の間に設けた上下位置調整構造で上下位置調整可能に支持されている。上下位置調整構造は、縦壁37の上下に形成した一対の縦長の上下調整溝39と、先の調整ガイド軸36からなり、上下調整溝39を調整ガイド軸36で上下スライド自在に案内している。このように、第2フレーム16が振止めベース13で上下スライド可能に案内支持してあると、ガイドレール2の不陸を第2フレーム16が上下動することで吸収できるので、戸パネル3を開閉するとき下凹み状の不陸部分を通過する戸車6が脱輪するのをよく防止できる。第2締結座38の前部の左右両側には、第2締結座38と面一の矩形の第2係合体40が横向きに張出し形成してあり、その後縁に第1係合体30のパネル側爪部31を受止める壁側爪部41が設けてある。
【0035】
両フレーム15・16を連結する締結構造17は、第1締結座29のねじ穴に上方からねじ込まれる左右一対のボルト(ねじ体)44と、ボルト44に対応して第2締結座38に形成される左右一対のねじ挿通溝45と、ねじ挿通溝45の前端に形成されるねじ連結口46を備えている。この実施例では、ねじ挿通溝45を第2締結座38の前縁から後縁に向かって形成し、ねじ連結口46が、ねじ挿通溝45の前開口において前拡がり状に傾斜するように形成した。加えて、左右のねじ挿通溝45に連続する第2締結座38の前縁を、左右のねじ挿通溝45に挟まれる第2締結座38の前縁より僅かに前方へ突出させて、ボルト44をねじ挿通溝45に誘導しやすくしている。
【0036】
戸パネル3を開閉ストロークの端部寄りで制動しながら、開閉ストロークの端部までゆっくりと移動させるために、装着部10に一対のアシストユニット5A・5Bを設けている。詳しくは、装着部10の開放端側に戸パネル3を閉じ端寄りでアシストする閉じ支援用のアシストユニット5Aを設け、装着部10の閉じ端側に戸パネル3を開放端寄りでアシストする開放支援用のアシストユニット5Bを設けている。一対のアシストユニット5A・5Bは左右対称構造であるので、前者のアシストユニット5Aの構造について説明し、後者のアシストユニット5Bは同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図6、
図7に示すようにアシストユニット5Aは、装着部10に固定されるアシストケース49と、同ケース49で往復スライド自在に支持されるスライダー50と、スライダー50とアシストケース49の間に配置される蓄力ばね51と、スライダー50とガイド体12との間に設けられる切換え構造と、戸パネル3の移動動作を制動するダンパーユニット52などで構成する。アシストケース49は横長のケース本体53とカバー54とからなり、カバー54の内面の上下に設けたガイドリブ55・56で、スライダー50とダンパーユニット52を左右スライド自在に案内している。アシストケース49は、その左右両端と左右中途部の3個所がビス62で装着部10に固定されている(
図7参照)。
【0038】
スライダー50は、滑性に優れたプラスチック材を素材とする横長矩形状のプラスチックブロックからなり、その前面に蓄力ばね51を収容するためのばね溝57が形成され、後面に先のガイドリブ55で案内されるスライド溝58が形成されている。スライダー50の下面には、後述する切換えレバー73を支持する支軸59が突設されており、上面にはダンパー64を連結するための連結部60が突設されている(
図7参照)。ケース本体53の底壁には、支軸59のスライド移動を許す逃げ溝61が形成されている。蓄力ばね51は引張りばねからなり、
図7に示すように、一端がケース本体53の右側壁に固定され、他端がスライダー50の左側端に固定されて、スライダー50を右側壁へ向かって引張り付勢している。上記のように、蓄力ばね51の中途部をスライダー50のばね溝57に収容するアシストユニット5Aによれば、スライダー50のスライドスペースを利用して、蓄力ばね51をスライダー50と平行に配置できるので、蓄力ばね51の配置スペースが別途確保してある場合に比べて、アシストユニット5Aを小形化しコンパクト化できる。また、蓄力ばね51の付勢力をスライダー50の中心付近に作用させて、スライダー50を円滑にスライド移動させることもできる。
【0039】
ダンパーユニット52は、シリンダー形の2個のダンパー64・64を、左右に長い矩形枠状のダンパーホルダー65の装着座に、上下に隣接する状態で嵌合装着して構成される。ダンパー64・64は、シリンダー69・69の内部にオイルが封入されたシリンダー型のオイルダンパーからなる。シリンダー69・69の前周面は、ケース本体53の内面に形成した部分円弧状のガイド凹部67で保持されている。ダンパーホルダー65の後面にはガイドリブ56で案内されるスライド溝68が形成されている。ダンパーホルダー65がスライダー50に同行して移動するとき、ダンパー64・64のシリンダー69・69もダンパーホルダー65と同行移動する。2個のダンパー64・64のうち、下側のダンパー64のピストンロッド70はスライダー50の連結部60に連結され、上側のダンパー64のピストンロッド70は、蓄力ばね51が固定されたケース本体53の右側壁に固定されている。
【0040】
図8に示すように切換え構造は、スライダー50の支軸59で揺動可能に支持される板状の切換えレバー73と、ガイド体12に設けた切換え部24で構成される。切換えレバー73の後縁には切換え部24が係脱するコ字形の受動凹部74と、傾動規制片75が形成され、同レバー73の前部の左側端にはロック爪76が一体に設けられている。切換えレバー73の大半の部分は、アシストケース49の内部に収容されているが、受動凹部74に臨む角部77と傾動規制片75は、カバー54に形成した溝開口78の外に露出されている。ケース本体53の前壁には、ロック爪76が係脱するロック開口79が形成されている。
【0041】
切換えレバー73は切換え部24で切換え操作されて、
図8に示すようにロック爪76がロック開口79に係合する蓄力保持姿勢と、ロック爪76がロック開口79から離脱する蓄力開放姿勢(
図11(c)に示す状態)に切換え操作される。切換えレバー73が蓄力保持姿勢に切換えられた状態における蓄力ばね51は、最大伸張姿勢に保持されている。また、切換えレバー73が蓄力開放姿勢に切換えられた状態における蓄力ばね51は、スライダー50をダンパー64側へ引寄せて、戸パネル3を閉じストロークの端部まで移動させる。その詳細は後述する。
【0042】
次に、引き戸装置の施工手順を説明する。まず、戸パネル3に戸車6を組み、装着部10に一対のアシストユニット5A・5Bとスライドレール11を組む。また、第1締結座29にボルト44をねじ込んだ状態で、第1フレーム15が一体化されたガイド体12を、スライドレール11のレール壁22に組付ける。このとき、ボルト44の操作頭部と第1締結座29の間に、第2締結座38の厚みより大きな間隔を確保しておく。床面の所定の位置にガイドレール2を固定し、第2フレーム16が一体化された振止めベース13を壁面Wの所定位置にビス35で固定する。次に、
図9に示すように戸車6をガイドレール2に落とし込んだ状態で戸パネル3を起立させ、第1フレーム15が第2フレーム16と正対する位置まで戸パネル3を移動させる。
【0043】
上記の状態で戸パネル3を第2フレーム16に向かって押し込み操作すると、
図10(a)に示すように、第1係合体30の仮組みガイド部32が第2係合体40の前縁の下面に接当するため、第2フレーム16は調整ガイド軸36に案内されて徐々に上向きに押上げられて、第1係合体30が第2係合体40の下面側を潜り抜けるのを補助する。戸パネル3をさらに接近させて、第1係合体30が第2係合体40の下面側を潜り抜けたら、第2フレーム16が自重で落下して、
図10(b)に示すように第2締結座38が第1締結座29の上面で支持され、同時に第2係合体40が第1係合体30の前側に落ち込んで仮組み状態を保持する。従って、戸パネル3を第2フレーム16へ向かって押込み操作するだけで、戸パネル3の仮組み作業を簡便に行って、第1係合体30を第2係合体40に係合させる手間を省くことができる。
【0044】
また、パネル側爪部31の上端が第2係合体40の下面を潜り抜ける間に、戸パネル3を左右に調整移動することにより、ボルト44のねじ軸がねじ連結口46に落ち込み係合するので、以後は戸パネル3を押込み操作することで、ボルト44のねじ軸をねじ挿通溝45に係合させて、仮組み状態に保持できる。最後に、パネル上部を前後に調整移動したのち、
図1に示すように戸パネル3が垂直姿勢になった状態でボルト44を締込んで、第2締結座38と第1締結座29を固定する。このとき、ボルト44が第1締結座29に上方からねじ込んであるので、ボルト44による両締結座29・38の締結作業を、振止め構造の上側の自由空間で確実にしかも簡便に行える。
【0045】
上記のように実施例1の引き戸装置によれば、第1フレーム15と第2フレーム16の位置合わせを行い、さらにボルト44のねじ軸がねじ連結口46に接当する状態で、戸パネル3を第2フレーム16へ向かって押込み操作することにより、第1係合体30と第2係合体40を互いに係合させて、戸パネル3を仮組み状態に保持することができる。従って、従来の引き戸装置に比べて、戸パネル3の建込み作業を単独の作業者のみで安全に行える。また、戸パネル3を仮組みしたのちの作業者は、戸パネル3を起立状態のままで支持し続ける必要がない。そのため、戸パネル3から手を離して、ボルト44を締込むために脚立を準備し、あるいは戸パネル3の垂直姿勢の確認作業や、ボルト44の締結作業を行うなど、戸パネル3の建込み作業をより少ない手間で確実に行うことができ、全体として施工性に優れた引き戸装置を提供できる。
【0046】
次に、戸パネル3が開閉されるときのアシストユニット5A・5Bの作動状況を説明する。戸パネル3が全開放された状態では、アシストユニット5Aの切換えレバー73は蓄力保持姿勢に切換っており、蓄力ばね51は
図11(a)に示すように最大伸張姿勢に保持されている。また、アシストユニット5Bの切換えレバー73は蓄力開放姿勢に切換っており、蓄力ばね51は最小収縮姿勢に保持されている。この状態から戸パネル3が閉じ操作されて閉じ端寄りまで接近すると、切換えレバー73の受動凹部74がガイド体12の切換え部24に接当するため、切換えレバー73は
図11(b)に示すように時計回転方向へ揺動操作され、
図11(c)に示すように、そのロック爪76がロック開口79から離脱して、角部77が切換え部24で受止められる。
【0047】
上記の状態のスライダー50は、蓄力ばね51のばね力を受けてケース本体53の右側壁へ向かってスライド移動する。また、スライダー50が移動するのに伴って、
図7において下側のダンパー64のピストンロッド70がシリンダー69内へ押込まれて、ダンパー64から制動力を受ける。スライダー50がさらにスライドして連結部60がダンパーホルダー65に接当すると、ダンパーユニット52がスライダー50に同行して移動する。その結果、
図7において上側のダンパー64のピストンロッド70がシリンダー69内へ押込まれて、ダンパー64から制動力を受ける。
図11(d)に示すように、戸パネル3が閉じ端まで移動したときの蓄力ばね51は最小収縮姿勢に切換わる。このように、一対のダンパー64は順に制動力を発揮して戸パネル3を連続して制動する。
【0048】
戸パネル3が閉じ端から開放操作されると、
図12(b)に示すように、切換えレバー73の角部77が切換え部24で受止められた状態のままで、ケース本体53が戸パネル3に同行して開放方向へ移動する。このときのスライダー50は、切換えレバー73と共に切換え部24で移動不能に保持されているので、蓄力ばね51はケース本体53が移動する向きに引伸ばされながら徐々にばね力を蓄える。そして、蓄力ばね51が最大伸張姿勢に近づくと、
図12(b)に示すように、ケース本体53のロック開口79が切換えレバー73のロック爪76の下面に接近する。この状態の切換えレバー73は、角部77が切換え部24で受止められているので、反時計回転方向へ揺動しようとする。そのため、
図12(c)に示すように、ロック開口79の右側縁がロック爪76の下面を潜り抜けるのと同時に、ロック爪76がロック開口79に落込む向きに切換えレバー73が揺動し、蓄力ばね51が最大伸張姿勢に保持される。以後、スライダー50はケース本体53に同行して移動し、切換えレバー73は切換え部24の下面側を通り抜けて、切換え部24から離れて行く。
【0049】
先に説明したように、一対のアシストユニット5A・5Bは左右対称に配置してあり、前者ユニット5Aが閉じ端側で作動するのに対し、後者ユニット5Bは開放端側で作動する点が異なる。以下では、アシストユニット5Bの作動状況の概略を説明する。戸パネル3が全開放された状態におけるアシストユニット5Bの切換えレバー73は、蓄力開放姿勢に切換っており、蓄力ばね51は最小収縮姿勢に保持されている。この状態から戸パネル3が閉じ操作される間に、アシストユニット5B側の切換えレバー73の受動凹部74がガイド体12の切換え部24で捕捉され、その状態のままでケース本体53が戸パネル3に同行して閉じ方向へ移動する。このときのスライダー50は、切換えレバー73と共に切換え部24で移動不能に保持されているので、蓄力ばね51はケース本体53が移動する閉じ方向に引伸ばされながら徐々にばね力を蓄える。そして、ロック爪76がロック開口79に落込むことにより、蓄力ばね51が最大伸張姿勢に保持される。
【0050】
戸パネル3が開放端寄りまで開放移動すると、切換えレバー73の受動凹部74がガイド体12の切換え部24で捕捉され、切換えレバー73が揺動して、そのロック爪76がロック開口79から離脱し、角部77が切換え部24で受止められる。この状態のスライダー50は、蓄力ばね51のばね力を受けてスライド移動する。また、スライダー50が移動するのに伴って、ダンパー64のピストンロッド70がシリンダー69内へ押込まれて、ダンパー64から制動力を受ける。スライダー50がさらにスライドして連結部60がダンパーホルダー65に接当すると、ダンパーユニット52がスライダー50に同行して移動する。その結果、上側のダンパー64のピストンロッド70がシリンダー69内へ押込まれて、ダンパー64から制動力を受ける。戸パネル3が開放端まで移動したときの蓄力ばね51は最小収縮姿勢に切換わる。
【0051】
以上のように、一対のアシストユニット5A・5Bが戸パネル3に設けられている引き戸装置によれば、閉じ端寄り(あるいは開放端寄り)から閉じ位置(あるいは開放位置)まで、戸パネル3にダンパー64の制動力を作用させながらゆっくりと移動させることができる。従って、使用者はロック爪76がロック開口79から離脱する位置まで戸パネル3を閉じ操作(あるいは開放操作)するだけでよく、以後は、アシストユニット5A(あるいは5B)が戸パネル3を自動的に閉じ位置(あるいは開放位置)まで移動操作する。このように、一対のアシストユニット5A・5Bを備えた引き戸装置によれば、ユーザーが戸パネル3を閉じ端や開放端まで開閉する手間を省いて、引き戸装置の使い勝手を向上できる。また、戸パネル3が勢いよく開閉される場合でも、戸パネル3に各アシストユニット5A・5Bの制動力を作用させてゆっくりと移動できるので、閉じ位置(あるいは開放位置)において手指が開口枠1と戸パネル3の間に挟まれることを解消できる。さらに、一対のアシストユニット5A・5Bの切換えレバー73を1個の切換え部24で切換え操作できるので、個々のアシストユニット5A・5Bに対応して切換え部24を2個所に設ける必要がなく、その分だけ戸パネル3のアシスト構造を簡素化して低コスト化できる。
【0052】
戸パネル3が閉じ位置まで移動した場合、あるいは戸パネル3が開放位置まで移動した場合の振止め構造4は、その前面が戸パネル3で完全に覆われている。そのため、とくにデザインや外観上の印象が重視される引き戸装置において、振止め構造4を好適に応用できる利点がある。また、振止め構造4は、開口枠1に隣接する状態で、戸パネル3の開閉ストロークの中央付近の1か所に配置してあればよいので、開放操作された戸パネル3が戸袋内に収容される引き戸装置の場合でも、必要に応じて振止め構造4の交換や補修を支障なく行うことができる。
【0053】
上下に隣接する一対のダンパー64と、両ダンパー64を支持するダンパーホルダー65でダンパーユニット52を構成し、各ダンパー64のピストンロッド70をアシストケース49の右側壁(他側端)と、スライダー50の左端の連結部60に連結するようにした。こうしたアシストユニット5A・5Bによれば、各ダンパー64におけるピストンロッド70の出退ストロークを、制動ストロークの約半分程度に小さくすることができるので、その分だけダンパーユニット52の左右長さを小さくしてアシストユニット5A・5Bをコンパクトに構成できる。従って、パネル幅が小さな戸パネル3であっても、アシストユニット5A・5Bを問題なく適用できる。アシストケース49の内部の上側から順に、一対のダンパー64と、スライダー50および蓄力ばね51と、切換えレバー73を記載順に配置するようにした。こうしたアシストユニット5A・5Bによれば、同ユニット5A・5Bの前後厚みを小さくできるので、前後厚みが小さな戸パネル3であっても、アシストユニット5A・5Bを支障なく組込むことができる。
【0054】
(実施例2)
図13および
図14に、実施例2に係る本発明の引き戸装置を構成する振止め構造4を示す。この実施例2では、第2フレーム16の第2係合体40の前部分に逆ヘ字状の第2の仮組みガイド部82を一体に形成し、さらにねじ挿通溝45の前端にボルト44の操作頭部の出入りを許す円形のねじ連結口46を形成している。他は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
【0055】
戸パネル3を建込む場合には、戸車6をガイドレール2に落とし込んだ状態で戸パネル3を起立させ、第1フレーム15が第2フレーム16と正対する位置まで戸パネル3を移動させる。この状態で戸パネル3を第2フレーム16に向かって移動させ、第1係合体30の仮組みガイド部32に、第2係合体40の第2の仮組みガイド部82の前端縁を接当させる。その状態で戸パネル3を第2フレーム16に向かって押込むことにより、第2フレーム16が徐々に上向きに押上げられる。仮組みガイド部32が第2の仮組みガイド部82の前端縁を潜り抜けるのに連続して、
図14(a)に示すように第1係合体30のパネル側爪部31の上端が、第2の仮組みガイド部82の下面を潜り抜け、さらにボルト44の操作頭部が第2締結座38の前縁を潜り抜けて、ねじ連結口46の真下まで移動する。
【0056】
上記の状態では、第2フレーム16が自重で落下するので、
図14(b)に示すように第2締結座38は第1締結座29で支持され、ボルト44の操作頭部がねじ連結口46を介して第2締結座38の上面に突出する。また、第1係合体30のパネル側爪部31が、第2係合体40の壁側爪部41と正対して仮組み状態に保持される。以後は戸パネル3を押込み操作することで、ボルト44のねじ軸をねじ挿通溝45に係合できる。最後に、パネル上部を前後に調整移動して、戸パネル3が垂直姿勢になった状態でボルト44を締込んで、第2締結座38と第1締結座29を固定する。
【0057】
以上のように、ねじ挿通溝45とねじ連結口46が鍵穴状に形成されていると、仮組み状態において、第2フレーム16の第2締結座38が外部衝撃を受けて第1締結座29から浮き離れることがあったとしても、ボルト44の操作頭部がねじ連結口46の内面で受止められるので、第1フレーム15が第2フレーム16から分離することはなく、仮組み状態を保持し続けることができる。なお、必要があれば、第2の仮組みガイド部82の外側面に下向きの垂壁を折曲げ形成することができ、その場合には、第1係合体30の仮組みガイド部32を垂壁で受止めて、第1係合体30が横ずれして第2の仮組みガイド部82の下面から分離するのを解消できる。
【0060】
(実施例3) 図15に、実施例3に係る本発明の引き戸装置を構成する振止め構造4を示す。そこでは、第1締結座29の左右両側に、第1締結座29と面一の矩形の第1係合体30を横向きに張出し形成し、その前縁に第2係合体30の壁側爪部41で受止められるパネル側爪部31を設けた。また、第2締結座38の前部の左右両側に、矢印形の第2係合体40を上向きに折り曲げ形成し、第2係合体40の下縁に、第2締結座38より下側へ突出する状態で壁側爪部41を設けた。さらに、壁側爪部41に隣接して、第1係合体30の後端へ向かって上り傾斜する仮組みガイド部32を形成した。この実施例においては、第1フレーム15を第2フレーム16に仮組みする際に、第1係合体30の後縁の上面が、第2係合体40の仮組みガイド部32に接当するため、第2フレーム16が徐々に上向きに押上げられたのち、パネル側爪部31の上端が第2係合体40の下面を潜り抜けた時点で、第2フレーム16が自重で落下して第2締結座38の前部が第1締結座29で支持される。
【0061】
上記の実施例では、第1締結座29にボルト44をねじ込んだが、その必要はなく、ボルト44は第2締結座38にねじ込んであってもよく、その場合には、第1締結座29が第2締結座38の上面側に接合する状態で仮組みして、両締結座29・38をボルト44で締結固定するとよい。また、ねじ体44は、ボルトとそのねじ軸にねじ込まれるナットで構成してあってもよい。第2フレーム16はばねで下向きに移動付勢してあってもよく、その場合には、パネル側爪部31の上端が第2係合体40の下面を潜り抜けた時点で、第2フレーム16を強制的に下降移動させることができる。上下位置調整構造は、調整ガイド軸36が第2フレーム16の縦壁37に固定され、上下調整溝39が振止めベース13に形成してある構造であってもよい。仮組みガイド部32は、湾曲面や円弧面で形成してあってもよい。
【0062】
本発明に係る振止め構造は、吊車型のランナー体を備えた戸パネル3に適用してもよい。その場合には、スライドレール11およびアシストユニット5A・5Bを戸パネル3の下端に配置し、壁面Wに固定した第2フレーム16と、ガイド体12に固定した第1フレーム15で振止め枠14を構成して、スライドレール11をガイド体12でスライド案内するとよい。戸パネル3には、少なくとも1個のアシストユニット5Aが設けてあればよい。
【符号の説明】
【0063】
1 開口枠
2 ガイドレール
3 戸パネル
4 振止め構造
5A・5B アシストユニット
6 戸車(ランナー体)
10 装着部
11 スライドレール
12 ガイド体
13 振止めベース
14 振止め枠
15 第1フレーム
16 第2フレーム
17 締結構造
22 レール壁
23 ガイド溝
24 切換え部
29 第1締結座
30 第1係合体
31 パネル側爪部
32 仮組みガイド部
36 調整ガイド軸
38 第2締結座
39 上下調整溝
40 第2係合体
41 壁側爪部
44 ボルト(ねじ体)
45 ねじ挿通溝
46 ねじ連結口
49 アシストケース
50 スライダー
51 蓄力ばね
52 ダンパーユニット
57 ばね溝
64 ダンパー
65 ダンパーホルダー
73 切換えレバー
74 受動凹部
75 傾動規制片
76 ロック爪
77 角部
79 ロック開口