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特許7062283新規なポルフィリン誘導体、ポルフィリン誘導体の製造方法、ドナー材料、光電変換装置、および光電変換装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】新規なポルフィリン誘導体、ポルフィリン誘導体の製造方法、ドナー材料、光電変換装置、および光電変換装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20220425BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20220425BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220425BHJP
【FI】
C07D519/00 311
H01L31/04 154Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2018117844
(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2019006770
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2017122797
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小汲 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】松尾 豊
【審査官】東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】OGUMI, Keisuke,J.Mater.Chem.A,2017年,5,23067-23077, Supp.Info.S1-S62
【文献】KUO, Ming-Cheng,Dalton Trans.,2007年,1433-1439
【文献】LI, Lisheng,ACS Applied Materials& Interfaces,2015年,7,21495-21502, Supp.Info.S1-S5
【文献】GIGUERE,Jean-Benoit,J.Org.Chem.,2014年,79,2404-2418
【文献】波多野淳一,化学工業,63(11),2012年,856-862
【文献】ALAM, Md.M.,Phys.Chem.Chem.Phys.,2016年,18,21954-21965, Suppl.Mater.pp.1-33
【文献】GAO,Ke,J.Am.Chem.Soc.,2015年,137,7282-7285, Supp.Info. S1-S18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(化学式1)に示すポルフィリン誘導体。
【化50】
【請求項2】
以下の(化学式2)に示すポルフィリン誘導体。
【化51】
【請求項3】
以下の(反応式1)に示す、ポルフィリン誘導体P1とテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体P1のTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体P1とDPP-Brとの第2反応により、以下の(化学式1)のポルフィリン誘導体を生成する、ポルフィリン誘導体の製造方法。
【化52】
【化53】
【請求項4】
請求項3記載のポルフィリン誘導体の製造方法において、
前記第2反応は、パラジウム触媒を用いる反応である、ポルフィリン誘導体の製造方法。
【請求項5】
以下の(反応式2)に示す、ポルフィリン誘導体P2とテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体P2のTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体P2とDPP-Brとの第2反応により、以下の(化学式2)のポルフィリン誘導体を生成する、ポルフィリン誘導体の製造方法。
【化54】
【化55】
【請求項6】
請求項5記載のポルフィリン誘導体の製造方法において、
前記第2反応は、パラジウム触媒を用いる反応である、ポルフィリン誘導体の製造方法。
【請求項7】
以下の(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体を有する、光電変換装置用のドナー材料。
【化56】
【化57】
【請求項8】
第1電極と、前記第1電極の上方に設けられた電荷輸送層と、前記電荷輸送層の上方に設けられた第2電極と、を有し、
前記電荷輸送層は、ドナー材料とアクセプター材料とが混合された層であり、
前記ドナー材料として、以下の(一般式1)に示すポルフィリン誘導体を有する、光電変換装置。
【化58】
(但し、Rは、H、(CH CH 、CF 、N(CH 、NO 、CH -C(CH CH )H-CH -CH -CH CH 、またはC(CH Hである。)
【請求項9】
請求項8記載の光電変換装置において、
前記(一般式1)に示すポルフィリン誘導体は、以下の(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体である、光電変換装置。
【化59】
【化60】
【請求項10】
(a)第1電極となる第1導電体層の上方に、ドナー材料とアクセプター材料と溶媒とを有する液を塗布することにより塗布層を形成する工程、
(b)前記塗布層を固化することにより、前記ドナー材料と前記アクセプター材料とを有する電荷輸送層を形成する工程、
(c)前記電荷輸送層の上方に、第2電極となる第2導電体層を形成する工程、
を有し、
前記ドナー材料は、以下の(一般式1)に示すポルフィリン誘導体である、光電変換装置の製造方法。
【化61】
(但し、Rは、H、(CH CH 、CF 、N(CH 、NO 、CH -C(CH CH )H-CH -CH -CH CH 、またはC(CH Hである。)
【請求項11】
請求項10記載の光電変換装置の製造方法において、
前記(一般式1)に示すポルフィリン誘導体は、以下の(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体である、光電変換装置の製造方法。
【化62】
【化63】
【請求項12】
請求項10記載の光電変換装置の製造方法において、
前記(一般式1)に示すポルフィリン誘導体は、以下の(反応式3)に示す、ポルフィリン誘導体とテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体のTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体とDPP-Brとの第2反応により生成される、光電変換装置の製造方法。
【化64】
(但し、Rは、H、(CH CH 、CF 、N(CH 、NO 、CH -C(CH CH )H-CH -CH -CH CH 、またはC(CH Hである。)
【請求項13】
以下の(式1)に示すポルフィリン誘導体。
【化65】
(但し、Rは、H、(CH CH 、CF 、N(CH 、NO 、CH -C(CH CH )H-CH -CH -CH CH 、またはC(CH Hであり、Mは、Mg、Zn、CaまたはFeである。)
【請求項14】
請求項13記載のポルフィリン誘導体において、
前記Mは、Zn、CaおよびFeから選択される元素であり、
前記Rは、Hまたは(CHCHである、ポルフィリン誘導体。
【請求項15】
以下の(化学反応式1)に示す、ポルフィリン誘導体PMとテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体PMのTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体PMとDPP-Brとの第2反応により、以下の(式1)のポルフィリン誘導体を生成する、ポルフィリン誘導体の製造方法。
【化66】
【化67】
(但し、Rは、H、(CH CH 、CF 、N(CH 、NO 、CH -C(CH CH )H-CH -CH -CH CH 、またはC(CH Hであり、Mは、Mg、Zn、CaまたはFeである。)
【請求項16】
請求項15記載のポルフィリン誘導体の製造方法において、
前記Mは、Zn、CaおよびFeから選択される元素であり、
前記Rは、Hまたは(CHCHである、ポルフィリン誘導体の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載のポルフィリン誘導体の製造方法において、
前記第2反応は、パラジウム触媒を用いる反応である、ポルフィリン誘導体の製造方法。
【請求項18】
以下の(式1)に示すポルフィリン誘導体を有する、光電変換装置用のドナー材料。
【化68】
(但し、Rは、H、(CH CH 、CF 、N(CH 、NO 、CH -C(CH CH )H-CH -CH -CH CH 、またはC(CH Hであり、Mは、Mg、Zn、CaまたはFeである。)
【請求項19】
請求項18記載の光電変換装置用のドナー材料において、
前記Mは、Zn、CaおよびFeから選択される元素であり、
前記Rは、Hまたは(CHCHである、光電変換装置用のドナー材料。
【請求項20】
第1電極と、前記第1電極の上方に設けられた電荷輸送層と、前記電荷輸送層の上方に設けられた第2電極と、を有し、
前記電荷輸送層は、ドナー材料とアクセプター材料とが混合された層であり、
前記ドナー材料として、以下の(式1)に示すポルフィリン誘導体を有する、光電変換装置。
【化69】
(但し、Rは、H、(CH CH 、CF 、N(CH 、NO 、CH -C(CH CH )H-CH -CH -CH CH 、またはC(CH Hであり、Mは、Mg、Zn、CaまたはFeである。)
【請求項21】
請求項20記載の光電変換装置において、
前記Mは、Zn、CaおよびFeから選択される元素であり、
前記Rは、Hまたは(CHCHである、光電変換装置。
【請求項22】
(a)第1電極となる第1導電体層の上方に、ドナー材料とアクセプター材料と溶媒とを有する液を塗布することにより塗布層を形成する工程、
(b)前記塗布層を固化することにより、前記ドナー材料と前記アクセプター材料とを有する電荷輸送層を形成する工程、
(c)前記電荷輸送層の上方に、第2電極となる第2導電体層を形成する工程、
を有し、
前記ドナー材料は、以下の(式1)に示すポルフィリン誘導体である、光電変換装置の製造方法。
【化70】
(但し、Rは、H、(CH CH 、CF 、N(CH 、NO 、CH -C(CH CH )H-CH -CH -CH CH 、またはC(CH Hであり、Mは、Mg、Zn、CaまたはFeである。)
【請求項23】
請求項22記載の光電変換装置の製造方法において、
前記Mは、Zn、CaおよびFeから選択される元素であり、
前記Rは、Hまたは(CHCHである、光電変換装置の製造方法。
【請求項24】
請求項22記載の光電変換装置の製造方法において、
前記(式1)に示すポルフィリン誘導体は、以下の(化学反応式1)に示す、ポルフィリン誘導体とテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体のTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体とDPP-Brとの第2反応により生成される、光電変換装置の製造方法。
【化71】
(但し、Rは、H、(CH CH 、CF 、N(CH 、NO 、CH -C(CH CH )H-CH -CH -CH CH 、またはC(CH Hであり、Mは、Mg、Zn、CaまたはFeである。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポルフィリン誘導体、ポルフィリン誘導体の製造方法、光電変換装置、および光電変換装置の製造方法に関し、特に、ドナー材料として用いて好適なポルフィリン誘導体やその製造方法、また、このポルフィリン誘導体をドナー材料として用いた光電変換装置や光電変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー問題の対応策として、光電変換装置の一種である太陽電池の開発が注目されている。中でも、有機材料よりなる薄膜を有する有機薄膜太陽電池においては、最高効率が13%を超えるものが開発されており、一部で実用化も始まってきている。
【0003】
このような、有機薄膜太陽電池の活性層としては、ドナー層(p型層)とアクセプター層(n型層)との積層体を用い、層界面のヘテロ接合を利用するタイプ(p-nヘテロ接合型と言う)と、ドナーとアクセプターとが混合された層を用い、層中のヘテロ接合を利用するタイプ(バルクヘテロ接合型、BHJ(bulk heterojunction)型と言う)と、の2種が存在する。
【0004】
これらの内、BHJ型は、活性層内において、ドナーとアクセプターが絡み合った状態となるため、p-n接合界面(電荷分離界面)の面積が増大し、電荷分離の効率を向上させることができる。
【0005】
BHJ型は、1992年に基本コンセプトが提唱され、それ以降、有機薄膜太陽電池の主流の構成となっている。中でも、ドナーとアクセプターとが混合された溶液を塗布した後、固化させることにより活性層を形成する、塗布-BHJ型は、材料や製法の低コスト化が可能であり、さらに、活性層の大面積化も容易であることから、商業的利点を有する。
【0006】
これまで塗布-BHJ型は、ドナー材料にポリマーを用いることが多かったが、近年は低分子のドナー材料が注目を集めている。低分子のドナー材料は、ポリマーのドナー材料に比べて、合成や精製が簡単であることやロット間の性能のばらつきが少ないなどの長所を有する。低分子のドナー材料として、フタロシアニンやジケトピロロピロール、オリゴチオフェン、ポルフィリンなど、様々な骨格の化合物が検討されている。
【0007】
中でも、ポルフィリン骨格を有する化合物は、光のエネルギーを吸収し糖類を生成するという光合成のメカニズムの中で用いられるクロロフィルなどのように、自然界にも多く存在し、その構造修飾の多様性や高い耐光性、優れた吸光収率から生命科学分野だけでなく、有機ELや太陽電池への応用研究も進んでいる。
【0008】
そして、ポルフィリン骨格を有する化合物は、前述の有機薄膜太陽電池への応用も行われており、これまで、ポルフィリン骨格を有する化合物(ポルフィリン誘導体とも言う)を用いた有機薄膜太陽電池の研究例が知られている。
【0009】
このようなポルフィリン誘導体をドナー材料として用いた塗布-BHJ型の有機薄膜太陽電池については、例えば、非特許文献1~6に開示されている。
【0010】
例えば、これらの非特許文献の中には、ポルフィリン骨格にジケトピロロピロール(DPP=Diketopyrrolopyrrole)ユニットが連結したポルフィリン誘導体をドナー材料として用いた有機薄膜太陽電池が開示されている。中には、変換効率が9%に達する有機薄膜太陽電池が報告されているものもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Li, L.; Huang, Y.; Peng, J.; Cao, Y.; Peng, X. J. Mater. Chem. A. 2013, 1, 2144_2150.
【文献】Qin, H.; Li, L.; Guo, F.; Su, S.; Peng, J.; Cao, Y.; Peng, X. Energy. Environ. Soc. 2014, 7, 1397_1401.
【文献】Gao, K.; Li, L.; Lai, T.; Xiao, L.; Huang, Y.; Huang, F.; Peng, J.; Cao, Y.; Liu, F.; Russell, T. P.; Janssen, R.-A. J.; Peng, X. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 7282_7285.
【文献】Gao, K.; Miao, J.; Xiao, L.; Deng, W.; Kan, Y.; Liang, T.; Wang, C.; Huang, F.; Peng, J.; Cao, Y.; Liu, F.; Russell, T. P.; Wu, Hongbin, w.; Peng, X. Adv. Mater. 2016, 28, 4727_4733.
【文献】Li,M.; Kao, K.; Wan, X.; Zhang, Q.; Kan, B.; Xia, R.; Liu, F.; Yang, X.; Feng, H.; ni, w.; Wang, Y.; Peng, J.; Zhang, H.; Liang, Z.; Yip, H.-L.; Peng, X.; Cao, Y.; Chen, Y. Nature Photonics. 2017, 11, 85_90.
【文献】Hatano, J.; Obata, N.; Yamaguchi, S.; Yasuda, T.; Matsuo, Y. J. Mater. Chem. 2012, 22, 19258_19263.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記DPPは、優れた光学特性を有し、顔料やインクとして用いられており、また、可視光領域の波長を幅広く吸収するため、有機薄膜太陽電池への適用が検討され、前述のような高効率な有機薄膜太陽電池の実現が可能となったと考えられる。
【0013】
一方で、塗布-BHJ型の有機薄膜太陽電池は、活性層において、ドナーとアクセプターが絡み合った構造となるため、電荷輸送経路が複雑となり電子及び正孔の電荷輸送効率が低下することが課題とされている。
【0014】
そこで、本発明者らは、電荷移動度の向上による電子または正孔の電荷輸送効率の向上や、長い励起寿命などの特性向上を図るべく、ドナー材料として用いて好適なポルフィリン誘導体の構成について鋭意検討を行い、その合成に成功し、ドナー材料として、有機薄膜太陽電池に用いた場合の性能を確認した。
【0015】
本発明の目的は、新規なポルフィリン誘導体、その製造方法を提供し、さらに、太陽電池のような光電変換装置に用いて好適なドナー材料を提供することにある。また、本発明の目的は、上記ドナー材料を用いた光電変換装置やその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明のポルフィリン誘導体は、以下の(化学式1)に示すポルフィリン誘導体である。
【0017】
【化1】
【0018】
(2)本発明のポルフィリン誘導体は、以下の(化学式2)に示すポルフィリン誘導体である。
【0019】
【化2】
【0020】
(3)本発明のポルフィリン誘導体の製造方法は、以下の(反応式1)に示す、ポルフィリン誘導体P1とテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体P1のTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体P1とDPP-Brとの第2反応により、以下の(化学式1)のポルフィリン誘導体を生成する、ポルフィリン誘導体の製造方法である。
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
例えば、上記第2反応は、パラジウム触媒を用いる反応である。
【0024】
(4)本発明のポルフィリン誘導体の製造方法は、以下の(反応式2)に示す、ポルフィリン誘導体P2とテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体P2のTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体P2とDPP-Brとの第2反応により、以下の(化学式2)のポルフィリン誘導体を生成する、ポルフィリン誘導体の製造方法である。
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
例えば、上記第2反応は、パラジウム触媒を用いる反応である。
【0028】
(5)本発明のドナー材料は、以下の(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体を有する、光電変換装置用のドナー材料である。
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
(6)本発明の光電変換装置は、第1電極と、前記第1電極の上方に設けられた電荷輸送層と、前記電荷輸送層の上方に設けられた第2電極と、を有し、前記電荷輸送層は、ドナー材料とアクセプター材料とが混合された層であり、前記ドナー材料として、以下の(一般式1)に示すポルフィリン誘導体を有する。
【0032】
【化9】
【0033】
上記(一般式1)に示すポルフィリン誘導体は、以下の(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体である。
【0034】
【化10】
【0035】
【化11】
【0036】
(7)本発明の光電変換装置の製造方法は、(a)第1電極となる第1導電体層の上方に、ドナー材料とアクセプター材料と溶媒とを有する液を塗布することにより塗布層を形成する工程、(b)前記塗布層を固化することにより、前記ドナー材料と前記アクセプター材料とを有する電荷輸送層を形成する工程、(c)前記電荷輸送層の上方に、第2電極となる第2導電体層を形成する工程、を有し、前記ドナー材料は、以下の(一般式1)に示すポルフィリン誘導体である。
【0037】
【化12】
【0038】
上記(一般式1)に示すポルフィリン誘導体は、以下の(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体である。
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
上記(一般式1)に示すポルフィリン誘導体は、以下の(反応式3)に示す、ポルフィリン誘導体とテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体のTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体とDPP-Brとの第2反応により生成される。
【0042】
【化15】
【0043】
(8)本発明のポルフィリン誘導体は、以下の(式1)に示すポルフィリン誘導体である。
【0044】
【化16】
【0045】
例えば、前記Mは、2価の金属元素である。例えば、前記Mは、Zn、CaおよびFeから選択される元素であり、前記Rは、Hまたは(CHCHである。
【0046】
(9)本発明のポルフィリン誘導体の製造方法は、以下の(化学反応式1)に示す、ポルフィリン誘導体PMとテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体PMのTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体PMとDPP-Brとの第2反応により、以下の(式1)のポルフィリン誘導体を生成する、ポルフィリン誘導体の製造方法である。
【0047】
【化17】
【0048】
【化18】
【0049】
例えば、前記Mは、2価の金属元素である。例えば、前記Mは、Zn、CaおよびFeから選択される元素であり、前記Rは、Hまたは(CHCHである。例えば、第2反応は、パラジウム触媒を用いる反応である。
【0050】
(10)本発明の光電変換装置用のドナー材料は、以下の(式1)に示すポルフィリン誘導体を有する。
【0051】
【化19】
【0052】
例えば、前記Mは、2価の金属元素である。例えば、前記Mは、Zn、CaおよびFeから選択される元素であり、前記Rは、Hまたは(CHCHである。
【0053】
(11)本発明の光電変換装置は、第1電極と、前記第1電極の上方に設けられた電荷輸送層と、前記電荷輸送層の上方に設けられた第2電極と、を有する。そして、前記電荷輸送層は、ドナー材料とアクセプター材料とが混合された層であり、前記ドナー材料として、以下の(式1)に示すポルフィリン誘導体を有する。
【0054】
【化20】
【0055】
例えば、前記Mは、2価の金属元素である。例えば、前記Mは、Zn、CaおよびFeから選択される元素であり、前記Rは、Hまたは(CHCHである。
【0056】
(12)本発明の光電変換装置の製造方法は、(a)第1電極となる第1導電体層の上方に、ドナー材料とアクセプター材料と溶媒とを有する液を塗布することにより塗布層を形成する工程、(b)前記塗布層を固化することにより、前記ドナー材料と前記アクセプター材料とを有する電荷輸送層を形成する工程、を有する。そして、さらに、(c)前記電荷輸送層の上方に、第2電極となる第2導電体層を形成する工程、を有し、前記ドナー材料は、以下の(式1)に示すポルフィリン誘導体である。
【0057】
【化21】
【0058】
例えば、前記Mは、2価の金属元素である。例えば、前記Mは、Zn、CaおよびFeから選択される元素であり、前記Rは、Hまたは(CHCHである。
【0059】
また、例えば、前記(式1)に示すポルフィリン誘導体は、以下の(化学反応式1)に示す、ポルフィリン誘導体とテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体のTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体とDPP-Brとの第2反応により生成される。
【0060】
【化22】
【発明の効果】
【0061】
本発明者らは、上記(化学式1)または(化学式2)等に示す新規なポルフィリン誘導体の合成に成功した。このようなポルフィリン誘導体をドナー材料として用いることにより、光電変換装置の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】実施の形態1の光電変換装置の構成を模式的に示す断面斜視図である。
図2】実施の形態1の光電変化装置の製造工程を示す断面図である。
図3】生成物1のHNMRスペクトルである。
図4】生成物1の13CNMRスペクトルである。
図5】生成物1のCOSYスペクトルである。
図6】生成物1のMSスペクトルである。
図7】生成物2のHNMRスペクトルである。
図8】生成物2の13CNMRスペクトルである。
図9】生成物2のMSスペクトルである。
図10】生成物1(MgTEPDPPPh)の紫外可視吸収スペクトルである。
図11】生成物2(MgTEPDPP2(4-n-hexyl-C)の紫外可視吸収スペクトルである。
図12】実施の形態3の光電変換装置の製造工程を示す断面図である。
図13】生成物2’のHNMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0064】
(光電変換装置の構造)
図1は、本実施の形態の光電変換装置の構成を模式的に示す断面斜視図である。本実施の形態の光電変換装置は、ドナー材料やアクセプター材料として有機材料を用い、薄膜状の活性層を有することから、有機薄膜太陽電池とも呼ばれる。ドナーは、電子供与体とも言い、アクセプターは、電子受容体とも言う。
【0065】
図1に示す光電変換装置は、第1電極EL1と、第1電極EL1上に設けられた活性層(電荷輸送層とも言う)ALと、活性層AL上に設けられた第2電極EL2と、を有する。
【0066】
第1電極EL1上に設けられた活性層ALは、ドナー材料DOとアクセプター材料ACとが混合された状態で存在する層である(図1参照)。活性層ALは、ドナー材料とアクセプター材料と溶媒(溶剤)との混合液を塗布することにより塗布層を形成した後、この塗布層を乾燥させるなどして固化することにより形成することができる。
【0067】
なお、第1電極EL1と活性層ALとの間にバッファ層を設けてもよい。また、活性層ALと第2電極EL2との間にバッファ層を設けてもよい。第1電極EL1および第2電極EL2は、導電性材料(導電体)よりなり、第1電極EL1および第2電極EL2の少なくとも一方は、光透過性を有する。基板(支持体)上に、第1電極EL1を設けてもよい。
【0068】
基板としては、透明基板を用いることができる。透明基板としては、ガラス基板、プラスチックフィルム(フレキシブル基板)などを用いることができる。第1電極EL1としては、ITO(インジウム・スズ酸化物)やインジウム・亜鉛酸化物などを用いることができる。第2電極EL2としては、アルミニウム、銀などの金属や、この金属を含む合金などが用いられる。アクセプター材料としては、フラーレンやフラーレン誘導体(フラーレン化合物)などを用いることができる。
【0069】
(ポルフィリン誘導体)
ここで、本実施の形態においては、ドナー材料として、以下の(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体を有する。
【0070】
【化23】
【0071】
この(化学式1)に示すポルフィリン誘導体は、[5,15-bis(2,5-bis(2-ethyl-hexyl)-3,6-di-thienyl-2-yl-2,5-dihydro-pyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione-5’-yl-ethynyl)-10,20-bis(phenylethynyl)-porphyrionate]magnesium(II)である。これを、“MgTEPDPPPh”の略号で示す場合がある。
【0072】
【化24】
【0073】
この(化学式2)に示すポルフィリン誘導体は、[5,15-bis(2,5-bis(2-ethyl-hexyl)-3,6-di-thienyl-2-yl-2,5-dihydro-pyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione-5’-yl-ethynyl)-10,20-bis(4-hexyl-phenylethynyl)-porphyrionate]magnesium(II)である。これを、“MgTEPDPP(4-n-hexyl-C”の略号で示す場合がある。
【0074】
これらのポルフィリン誘導体は、ポルフィリン骨格に2つのDDP(ジケトピロロピロール、Diketopyrrolopyrrole)ユニットと2つのフェニルユニットとがトランス位置(5位及び15位)に連結されている。そして、これら4つのユニットは、それぞれエチニル架橋を介してポルフィリン骨格に連結させている。上記ポルフィリン誘導体は、π共役系化合物を三重結合を介して連結した化合物とも言える。
【0075】
また、上記ポルフィリン誘導体は、ポルフィリン骨格の中心金属としてマグネシウムを配位させている。このため、上記ポルフィリン誘導体は、Mg・ポルフィリン・DPP錯体とも言える。
【0076】
また、上記のような構造のポルフィリン誘導体においては、分子内にπ共役が広がり、分子全体が平面状になることから、パッキング構造が安定化する。即ち、分子の積層密度が高まるとともに、分子間のπ-πスタッキングが向上する。このようなポルフィリン誘導体をドナー材料として活性層に用いた場合には、次の利点を有する。
【0077】
(1)ポルフィリン骨格に、DPPユニットを連結させることで効率よく可視光領域の光を吸収することができる。また、ドナー材料中に、D-A(D=ドナー:ポルフィリン、A=アクセプター:DPP)構造をとることで、エネルギーバンドギャップを狭くでき、光電変換効率を向上させることができる。
【0078】
(2)前述したように、分子間のπ-πスタッキングの向上により、電荷移動度を向上させることができる。
【0079】
(3)ポルフィリン骨格の中心金属としてマグネシウムを配位させたことにより、励起寿命を長くすることができる。
【0080】
このように、上記(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体をドナー材料として用いることで、光電変換装置の特性の向上を図ることができる。
【0081】
(ポルフィリン誘導体の合成方法)
上記(化学式1)のポルフィリン誘導体は、以下の(反応式1)に示すように、ポルフィリン誘導体P1(前駆体P1、中間体P1とも言う)と、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)と、DPP-Brとの化学反応により合成することができる。
【0082】
【化25】
【0083】
ポルフィリン誘導体P1と、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)との反応により、ポルフィリン誘導体P1のTIPS(Triisopropylsilyl)を脱離させる。そして、薗頭カップリングにより、DPPユニットを導入する。薗頭カップリングは、パラジウム触媒、銅触媒、塩基の作用により末端アルキンとハロゲン化アリールとをクロスカップリングさせてアルキニル化アリールを得る化学反応を言う。
【0084】
TIPSの脱離反応の際の溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン[THF]や水(HO)などが用いられる。薗頭カップリングの際には、溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン[THF]やトリエチルアミン[NEt]などが用いられ、触媒として、パラジウム触媒、銅触媒、塩基、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)[Pd(dba)]、ヨウ化銅(I)[CuI]、トリフェニルホスフィン[PPh]などが用いられる。
【0085】
上記(化学式2)のポルフィリン誘導体は、以下の(反応式2)に示すように、ポルフィリン誘導体P2(前駆体P2、中間体P2とも言う)と、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)と、DPP-Brとの化学反応により合成することができる。反応機構は、上記(化学式1)の場合と同様である。
【0086】
【化26】
【0087】
(光電変換装置の製造方法)
光電変化装置(有機薄膜太陽電池)の製造方法の一例について以下に説明する。図2は、本実施の形態の光電変化装置の製造工程を示す断面図である。
【0088】
図2(a)に示すように、光透過性の基板SUB上に、第1電極EL1を形成する。例えば、基板SUB上に、導電体層として、ITO(インジウム・スズ酸化物、Indium Tin Oxide)を形成し、パターニングすることにより第1電極EL1を形成する。
【0089】
次いで、第1電極EL1上にバッファ層BUF1を形成する。例えば、導電性高分子溶液であるPEDOT:PSS水溶液を、基板上に塗布し、乾燥させることによりバッファ層BUF1を形成する。
【0090】
次いで、図2(b)に示すように、バッファ層BUF1上に、活性層ALを形成する。まず、活性層の形成用の溶液を調整する。ドナー材料と、アクセプター材料を、溶媒に溶かし、必要に応じて添加剤を加える。添加剤は、例えば、ドナー材料やアクセプター材料の溶解性を高めるために用いられる。この活性層の形成用の溶液を、バッファ層BUF1上に塗布し、乾燥させることにより活性層ALを形成する。この後、必要に応じて、活性層ALに対し、アニール処理(熱処理)を行う。
【0091】
次いで、図2(c)に示すように、活性層AL上に、バッファ層BUF2を形成する。例えば、活性層AL上に、バッファ層BUF2として、例えば、カルシウム層を真空蒸着法などを用いて形成する。
【0092】
次いで、バッファ層BUF2上に、第2電極EL2を形成する。例えば、バッファ層BUF2上に、第2電極EL2用の導電体層として、例えば、アルミニウム層を真空蒸着法などを用いて形成する。
【0093】
ドナー材料としては、上記(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体を用いる。
【0094】
アクセプター材料としては、例えば、フラーレン誘導体を用いる。溶媒としては、例えば、クロロベンゼンなどを用いる。添加剤としては、例えば、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン[THF]、ピラジン、トリエチルアミン[NEt]、ピリジンなどを用いる。アニール温度としては、100℃~200℃とすることができる。アニール処理を行わなくてもよい。特に、上記(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体においては、前述したとおり、分子間のπ-πスタッキングの向上により、凝縮性(結晶性)が良好であるため、アニール処理を省略することができる。
【0095】
[実施例]
以下、実施例により本実施の形態をさらに詳しく説明するが、本実施の形態は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0096】
(実施例1)
本実施例においては、上記(化学式1)に示すポルフィリン誘導体(MgTEPDPPPh)を、以下の(反応式4)に示す化学反応により生成した。
【0097】
【化27】
【0098】
窒素雰囲気下で、30mLシュレンクに、ポルフィリン誘導体P1(前駆体P1、中間体P1とも言う)を35.7mgと、テトラヒドロフラン[THF]を2mLと、を入れ、さらに、1mol/Lのテトラブチルアンモニウムフルオリド[TBAF]を0.25mLと、水(HO)を0.3mLとを加え、室温(25℃程度)で1時間撹拌した。塩化メチレンと水で抽出処理したものを、カニューラで20mL、二口フラスコに移し、さらにDPP前駆体[DPP-Br]を30.2mgと、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)[Pd(dba)]を1.14mgと、トリフェニルホスフィン[PPh]を6.56mgと、ヨウ化銅(I)[CuI]を0.23mgと、トリエチルアミン[NEt]を3mLと、テトラヒドロフラン[THF]を7mLとを加え、85℃で30分加熱撹拌した。粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて原点除去をしたのち、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて精製し、30.0mgの生成物1を得た。生成物1の収率は、74%であった。この収率は、ポルフィリン誘導体P1と生成物1のモル数の比率から求めた。
【0099】
(検証)
上記工程により得られた生成物1が、上記(化学式1)に示すポルフィリン誘導体であることを以下のとおり検証した。
【0100】
図3は、生成物1のHNMRスペクトルであり、図4は、生成物1の13CNMRスペクトルである。図5は、生成物1のCOSYスペクトルである。図6は、生成物1のMSスペクトルである。NMRスペクトルにおいて、縦軸はプロトンシグナルの相対強度を示し、横軸は化学シフト(δ)値を示す。
【0101】
図3図4に示すNMRスペクトルから、生成物1が、上記(化学式1)に示すポルフィリン誘導体であることが確認できる。また、図5に示す生成物1のCOSYスペクトルからも生成物1が、上記(化学式1)に示すポルフィリン誘導体であることが裏付けられる。また、図6に示す生成物1のMSスペクトルから得られた、生成物1の分子量(found)は、1624.6248であり、上記(化学式1)の分子量(計算値、calcd)1624.6288と十分一致している。
【0102】
このように、上記(化学式1)に示すポルフィリン誘導体(MgTEPDPPPh)の合成に成功した。
【0103】
(実施例2)
本実施例においては、上記(化学式2)に示すポルフィリン誘導体(MgTEPDPP(4-n-hexyl-C)を、以下の(反応式5)に示す化学反応により生成した。
【0104】
【化28】
【0105】
窒素雰囲気下で、30mLシュレンクに、ポルフィリン誘導体P2(前駆体P2、中間体P2とも言う)を15.9mgと、テトラヒドロフラン[THF]を1.2mLと、を入れ、さらに、1mol/Lのテトラブチルアンモニウムフルオリド[TBAF]を0.15mLと、水(HO)を0.18mLとを加え、室温(25℃程度)で1時間撹拌した。塩化メチレンと水で抽出処理したものを、カニューラで20mL、二口フラスコに移し、さらにDPP前駆体[DPP-Br]を18.1mgと、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)[Pd(dba)]を0.69mgと、トリフェニルホスフィン[PPh]を3.93mgと、ヨウ化銅(I)[CuI]を0.14mgと、トリエチルアミン[NEt]を1.8mLと、テトラヒドロフラン[THF]を4.2mLとを加え、85℃で1時間加熱撹拌した。粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて原点除去をした後、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて精製し、20.0mgの生成物2を得た。生成物2の収率は、74%であった。
【0106】
(検証)
上記工程により得られた生成物2が、上記(化学式2)に示すポルフィリン誘導体であることを以下のとおり検証した。
【0107】
図7は、生成物2のHNMRスペクトルであり、図8は、生成物2の13CNMRスペクトルである。図9は、生成物2のMSスペクトルである。
【0108】
図7図8に示すNMRスペクトルから、生成物2が、上記(化学式2)に示すポルフィリン誘導体であることが確認できる。また、図9に示す生成物2のMSスペクトルから得られた、生成物2の分子量(found)は、1792.8146であり、上記(化学式2)の分子量(計算値、calcd)1792.8166と十分一致している。
【0109】
このように、上記(化学式2)に示すポルフィリン誘導体(MgTEPDPP(4-n-hexyl-C)の合成に成功した。
【0110】
(実施例3)
実施例1および実施例2に示す工程により得られた生成物1、生成物2の紫外可視吸収スペクトルを測定した。図10は、生成物1(MgTEPDPPPh)の紫外可視吸収スペクトルであり、図11は、生成物2(MgTEPDPP2(4-n-hexyl-C)の紫外可視吸収スペクトルである。横軸は波長(Wavelength,nm)を示し、縦軸はモル吸光係数εである。
【0111】
図10に示すように、生成物1(MgTEPDPPPh)は、可視光領域全体において吸収を有することが分かった。また、図11に示すように、生成物2(MgTEPDPP2(4-n-hexyl-C)においても、可視光領域全体において吸収を有することが分かった。このような可視光領域における吸収は、DPPユニットの導入によるものと考えられる。また、分子内のπ共役の広がりによりバンドギャップが狭くなり、長波長側に吸収がシフトする傾向が見られる。
【0112】
(実施例4)
実施例1および実施例2に示す工程により得られた生成物1、生成物2をドナー材料として、デバイス(光電変換装置、光電変換素子)を作製し、評価した。
【0113】
パターニングされたITO膜(第1電極)が形成されたガラス製の基板(ジオマテック製FLAT ITO)を準備し、洗浄液、純水、アセトン、IPA(イソプロピルアルコール)を用いてそれぞれ15分間超音波洗浄を行った。基板を風乾させUV/O照射を15分行った。次いで、基板上に、導電性高分子溶液であるPEDOT:PSS水溶液(Clevious製 Al4083)を40nmの膜厚でスピンコートし、不要部分を拭き取り、空気下で120℃で10分間加熱乾燥させることによりバッファ層を形成した。次いで、基板を窒素充填されたグローブボックスへと導入した。グローブボックス内の水や酸素の濃度は、0.1ppm未満である。
【0114】
活性層の形成用の溶液を調整した。調液は、水や酸素の濃度が、0.1ppm未満である窒素充填グローブボックス内で行った。ドナー材料である実施例1に示す工程により得られた生成物1と、アクセプター材料であるフラーレン誘導体と、の混合物に、溶媒として、ドナー材料の量に対して10mg/mlの割合でクロロベンゼンを加え、さらに、添加剤を加え、グローブボックス中において、60℃で加熱撹拌し、ドナー材料およびアクセプター材料を溶媒に溶解させ、活性層の形成用の溶液を得た。
【0115】
この溶液をフィルターろ過後、ろ液をバッファ層上にスピンコートにより塗布し、塗布膜を形成した後、シャーレの中で2時間程度、ゆっくりと乾燥(固化)させることにより、活性層を形成した。次いで、活性層に対し、アニール処理を施した。
【0116】
その後、活性層上に、バッファ層として、カルシウム層を20nmの膜厚で、真空蒸着機を用いて形成した後、バッファ層上に、第2電極として、アルミニウム層を80nm程度の膜厚で、真空蒸着機を用いて形成した。
【0117】
以上の工程により、光電変換装置を作製した。作製した光電変換装置を、ソーラーシミュレータを用い1SUNの光を照射し、変換効率(光電変換効率)の測定を行った。
【0118】
上記光電変換装置の作製工程において、フラーレン誘導体、添加剤、アニール温度の条件を表1に示す組み合わせで変えて、No.1~No.23に示すデバイスを作製した。フラーレン誘導体であるPC61BMは、フラーレンC60の誘導体である[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl esterである。また、PC71BMは、フラーレンC70の誘導体である[6,6]-Phenyl C71 butyric acid methyl esterである。アニールの欄において、「-」の表示は、アニール処理を行っていないことを意味する。また、添加剤の欄において、「-」の表示は、添加剤を使用していないことを意味する。
【0119】
変換効率PCE(%)は、開放電圧(Voc)と、短絡電流密度(Jsc)と、フィルファクター(FF)の積(PCE=Voc×Jsc×FF)から求めた。結果を、表1に示す。
【0120】
また、ドナー材料を生成物1から実施例2に示す工程により得られた生成物2とし、フラーレン誘導体、添加剤、アニール温度の条件を表2に示す組み合わせで変えて、No.24~No.29に示す光電変換装置(デバイス)を作製し、変換効率を求めた。結果を、表2に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
(考察)
表1、表2に示すように、実施例1および実施例2に示す工程により得られた生成物1、生成物2、即ち、以下の(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体をドナー材料として用いることで、変換効率が0.08%~4.71%の光電変換装置(デバイス)を得ることができた。
【0124】
【化29】
【0125】
【化30】
【0126】
(化学式1)に示すポルフィリン誘導体を用いた場合の最高変換効率は、4.34%であり、(化学式2)に示すポルフィリン誘導体を用いた場合の最高変換効率は、4.71%であった。(化学式2)に示すポルフィリン誘導体は、溶媒に対する溶解性が高く、この点が変換効率の上昇に結びついた可能性がある。
【0127】
また、添加剤として、ピリジンを用いたデバイスの変換効率が高い傾向にあった。ピリジンの添加により溶解性が向上し、変換効率の上昇に結びついた可能性ある。
【0128】
また、アニール温度が200℃と高い場合には、変換効率の低下が見られた。これは、加熱により、ポルフィリン誘導体の凝縮性(結晶性)が高まりすぎ、結果として、変換効率が低下した可能性ある。
【0129】
前述したように、本実施の形態の活性層ALは、ドナー材料DOとアクセプター材料ACとが混合された状態で存在する層である(図1参照)。ドナー材料DOとアクセプター材料ACは、それぞれ、凝縮(結晶化)し粒子となり、程よく相分離することでキャリアネットワークを形成する。高温アニールにより、ポルフィリン誘導体の凝縮性(結晶性)が高まり、粒子が大きくなりすぎ、その結果として、p-n接合界面となる粒界の面積が低下や、電荷移動度の低下により、変換効率が低下したと考えられる。
【0130】
前述したように、上記(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体においては、分子間のπ-πスタッキングの向上により、凝縮性(結晶性)が良好であるため、アニール処理をしていないデバイスにおいても高い変換効率が得られている。例えば、アニール温度としては、150℃未満が好ましく、100℃以下がより好ましい。
【0131】
また、フラーレン誘導体としては、PC61BMよりPC71BMを用いたデバイスにおいても変換効率が高い傾向が見られた。
【0132】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、上記(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体の合成原料について説明する。
【0133】
(1)まず、実施例1において、(反応式4)を参照しながら説明した、ポルフィリン誘導体P1(前駆体P1、中間体P1とも言う)の合成について説明する。
【0134】
【化31】
【0135】
このポルフィリン誘導体P1は、例えば、以下の(反応式6)に示す化学反応により生成することができる。
【0136】
【化32】
【0137】
(反応式6)に示すように、ポルフィリン誘導体P3(前駆体P3、中間体P3とも言う)と、反応物質であるフェニルアセチレンとを用い、薗頭カップリングにより、ポルフィリン誘導体P1を合成することができる。溶媒としては、トルエン、トリエチルアミン[NEt]、ピリジンを用い、80℃、3時間の反応を行う。
【0138】
(2)次いで、ポルフィリン誘導体P3(前駆体P3、中間体P3とも言う)の合成について説明する。上記ポルフィリン誘導体P3は、例えば、以下の(反応式7)に示す化学反応により生成することができる。
【0139】
【化33】
【0140】
(反応式7)に示すように、原料MTであるTIPSアセチレンからの4ステップの反応を経て、上記ポルフィリン誘導体P3を合成することができる。第1ステップ(St1)は、アセチレン末端をアルデヒドに変更する工程であり、第2ステップ(St2)は、ポルフィリン環骨格を形成する工程である。また、第3ステップ(St3)は、マグネシウムを挿入する工程であり、第4ステップ(St4)は、ジブロモ化の工程である。
【0141】
(3)次いで、実施例2において、(反応式5)を参照しながら説明した、ポルフィリン誘導体P2(前駆体P2、中間体P2とも言う)の合成について説明する。
【0142】
【化34】
【0143】
このポルフィリン誘導体P2(前駆体P2、中間体P2とも言う)は、上記(反応式6)の反応物質であるフェニルアセチレンを、4-ヘキシルフェニルアセチレンに代えることにより合成することができる。
【0144】
このように、ポルフィリン誘導体の合成原料を予め化学修飾することにより、ドナー材料となるポルフィリン誘導体に更なる機能を持たせることができる。
【0145】
即ち、ドナー材料として、以下の(一般式1)に示すポルフィリン誘導体を用いることで、光電変換装置の更なる特性向上を図ることができる。
【0146】
【化35】
【0147】
上記一般式のRとしては、例えば、表3に示すR1~R7が例示される。上記(化学式1)に示すポルフィリン誘導体の場合、Rは、R1として示す、-Hとなり、反応物質Xは、フェニルアセチレンである。また、上記(化学式2)に示すポルフィリン誘導体の場合、Rは、“R2”の欄に示すように、-(CHCHとなり、反応物質は、“X”の欄に示す物質である。この他、表3に示す反応物質Xを用いることで、R3~R7に示す基を導入することができる。
【0148】
【表3】
【0149】
このように、上記(一般式1)に示すポルフィリン誘導体をドナー材料として用いることにより、光電変換装置の特性を向上(電荷移動度や励起寿命の向上)を図ることができる。また、Rとして、種々の基を導入することにより、物性の調整を図ることができる。
【0150】
ここで、上記(一般式1)に示すポルフィリン誘導体は、以下の(反応式3)に示す、ポルフィリン誘導体とテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体のTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体とDPP-Brとの第2反応により生成される。
【0151】
【化36】
【0152】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、ロールツーロールと呼ばれる連続塗布法を用いた光電変換装置の製造方法について説明する。
【0153】
図12は、本実施の形態の光電変換装置の製造工程を示す断面図である。図12に示すように、フレキシブル基板10が、ローラ11からローラ12に水平搬送されている。このフレキシブル基板10上には、連続塗布法などを用いて、第1電極やバッファ層(図示せず)が予め形成されている。
【0154】
そして、ローラ間において、スリットコーター13から活性層の形成用の溶液(例えば、実施例1、実施例2で説明した溶液)が塗布され、塗布膜は円筒状のヒータ14によりアニール処理される。これにより、活性層ALがフレキシブル基板10上に形成され、ローラ12に巻き取られる。
【0155】
この後、活性層AL上に、バッファ層や第2電極が、連続塗布法などを用いて形成される。
【0156】
このように、実施の形態1、2で説明した上記(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体を用いた活性層は、連続塗布法により形成することが可能であり、デバイス製造コストの低コスト化が可能であり、さらに、活性層の大面積化にも容易に対応することができる。
【0157】
また、前述したように、上記(化学式1)または(化学式2)に示すポルフィリン誘導体においては、凝縮性(結晶性)が良好であるため、アニール処理を省略することができるため、さらに、短工程、低コストで光電変換装置を製造することが可能となる。
【0158】
(実施の形態4)
本実施の形態においては、実施の形態1で説明した(化学式2)のポルフィリン誘導体をドナー材料として用いたデバイス(光電変換装置、光電変換素子)について、実施例に基づき説明する。
【0159】
[実施例]
(実施例A)
実施例2に示す工程により得られた生成物2をドナー材料として、デバイス(光電変換装置、光電変換素子)を作製し、評価した。
【0160】
パターニングされたITO膜(第1電極)が形成されたガラス製の基板(ジオマテック製FLAT ITO)を準備し、洗浄液、純水、アセトン、IPA(イソプロピルアルコール)を用いてそれぞれ15分間超音波洗浄を行った。基板を風乾させUV/O照射を15分行った。次いで、基板上に、導電性高分子溶液であるPEDOT:PSS水溶液(Clevious製 Al4083)を40nmの膜厚でスピンコートし、不要部分を拭き取り、空気下で120℃で10分間加熱乾燥させることによりバッファ層を形成した。次いで、基板を窒素充填されたグローブボックスへと導入した。グローブボックス内の水や酸素の濃度は、0.1ppm未満である。
【0161】
活性層の形成用の溶液を調整した。調液は、水や酸素の濃度が、0.1ppm未満である窒素充填グローブボックス内で行った。ドナー材料である実施例2に示す工程により得られた生成物2と、アクセプター材料であるフラーレン誘導体と、の混合物に、溶媒として、ドナー材料の量に対して10mg/mlの割合でクロロベンゼンを加え、さらに、添加剤を加え、グローブボックス中において、60℃で加熱撹拌し、ドナー材料およびアクセプター材料を溶媒に溶解させ、活性層の形成用の溶液を得た。
【0162】
この溶液を室温まで冷却後、フィルターろ過し、ろ液をバッファ層上にスピンコートにより塗布し、塗布膜を形成した後、シャーレの中で2時間程度、ゆっくりと乾燥(固化)させることにより、活性層を形成した。次いで、活性層に対し、必要に応じてアニール処理を施した。
【0163】
その後、活性層上に、バッファ層として、カルシウム層を20nmの膜厚で、真空蒸着機を用いて形成した後、バッファ層上に、第2電極として、アルミニウム層を80nm程度の膜厚で、真空蒸着機を用いて形成した。
【0164】
以上の工程により、光電変換装置を作製した。作製した光電変換装置を、ソーラーシミュレータを用い1SUNの光を照射し、変換効率(光電変換効率)の測定を行った。
【0165】
上記光電変換装置の作製工程において、フラーレン誘導体、添加剤、アニール温度の条件を表Aに示す。フラーレン誘導体であるPC61BMは、フラーレンC60の誘導体である[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl esterである。アニールの欄において、「-」の表示は、アニール処理を行っていないことを意味する。
【0166】
変換効率PCE(%)は、開放電圧(Voc)と、短絡電流密度(Jsc)と、フィルファクター(FF)の積(PCE=Voc×Jsc×FF)から求めた。結果を、表4に示す。
【0167】
【表4】
【0168】
(考察)
表4に示すように、ドナー材料およびアクセプター材料の混合溶液を室温まで冷却した後、ろ過したろ液を用いることで、変換効率が5.73%の光電変換装置(デバイス)を得ることができた。
【0169】
本実施例Aは、実施の形態1の実施例4の表2のNo.28の場合と、条件が類似しているが、No.28の場合は、上記混合溶液のろ液の温度が60℃、即ち、熱時ろ過を施したろ液であるのに対し、本実施例Aにおいては、上記混合溶液を室温(25℃)まで冷却した後のろ液である。
【0170】
このように、上記混合溶液を室温(25℃)まで冷却した後、フィルターろ過することで、活性層の特性が向上し、変換効率が4.71%から5.73%に上昇したと考えられる。
【0171】
(実施の形態5)
本実施の形態においては、後述する(化学式1’)または(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体をドナー材料として用いたデバイス(光電変換装置、光電変換素子)について説明する。
【0172】
(光電変換装置の構造)
本実施の形態の光電変換装置は、実施の形態1(図1)において説明した光電変換装置と同様の構成とすることができる。本実施の形態の光電変換装置は、第1電極EL1と、第1電極EL1上に設けられた活性層(電荷輸送層とも言う)ALと、活性層AL上に設けられた第2電極EL2と、を有する(図1参照)。
【0173】
第1電極EL1上に設けられた活性層ALは、ドナー材料DOとアクセプター材料ACとが混合された状態で存在する層である。活性層ALは、ドナー材料とアクセプター材料と溶媒(溶剤)との混合液を塗布することにより塗布層を形成した後、この塗布層を乾燥させるなどして固化することにより形成することができる。
【0174】
なお、第1電極EL1と活性層ALとの間にバッファ層を設けてもよい。また、活性層ALと第2電極EL2との間にバッファ層を設けてもよい。第1電極EL1および第2電極EL2は、導電性材料(導電体)よりなり、第1電極EL1および第2電極EL2の少なくとも一方は、光透過性を有する。基板(支持体)上に、第1電極EL1を設けてもよい。
【0175】
基板としては、透明基板を用いることができる。透明基板としては、ガラス基板、プラスチックフィルム(フレキシブル基板)などを用いることができる。第1電極EL1としては、ITO(インジウム・スズ酸化物)やインジウム・亜鉛酸化物などを用いることができる。第2電極EL2としては、アルミニウム、銀などの金属や、この金属を含む合金などが用いられる。アクセプター材料としては、フラーレンやフラーレン誘導体(フラーレン化合物)などを用いることができる。
【0176】
(ポルフィリン誘導体)
前述したとおり、本実施の形態においては、ドナー材料として、以下の(化学式1’)または(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体を有する。
【0177】
【化37】
【0178】
この(化学式1’)に示すポルフィリン誘導体は、[5,15-bis(2,5-bis(2-ethyl-hexyl)-3,6-di-thienyl-2-yl-2,5-dihydro-pyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione-5’-yl-ethynyl)-10,20-bis(phenylethynyl)-porphyrionate]zinc(II)である。これを、“ZnTEPDPPPh”の略号で示す場合がある。
【0179】
【化38】
【0180】
この(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体は、[5,15-bis(2,5-bis(2-ethyl-hexyl)-3,6-di-thienyl-2-yl-2,5-dihydro-pyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione-5’-yl-ethynyl)-10,20-bis(4-hexyl-phenylethynyl)-porphyrionate]zinc(II)である。これを、“ZnTEPDPP(4-n-hexyl-C”の略号で示す場合がある。
【0181】
上記ポルフィリン誘導体は、実施の形態1において説明した(化学式1)(化学式2)で示すポルフィリン誘導体の、ポルフィリン骨格の中心金属をMgからZnに代えたものである。
【0182】
実施の形態1において説明したように、本実施の形態のポルフィリン誘導体も、ポルフィリン骨格に2つのDDP(ジケトピロロピロール、Diketopyrrolopyrrole)ユニットと2つのフェニルユニットとがトランス位置(5位及び15位)に連結されている。そして、これら4つのユニットは、それぞれエチニル架橋を介してポルフィリン骨格に連結させている。上記ポルフィリン誘導体は、π共役系化合物を三重結合を介して連結した化合物とも言える。
【0183】
また、上記ポルフィリン誘導体は、ポルフィリン骨格の中心金属として亜鉛を配位させている。このため、上記ポルフィリン誘導体は、Zn・ポルフィリン・DPP錯体とも言える。
【0184】
また、上記のような構造のポルフィリン誘導体においては、実施の形態1において説明した(化学式1)(化学式2)の場合と同様に、分子内にπ共役が広がり、分子全体が平面状になることから、パッキング構造が安定化する。即ち、分子の積層密度が高まるとともに、分子間のπ-πスタッキングが向上する。このようなポルフィリン誘導体をドナー材料として活性層に用いた場合には、実施の形態1において説明した利点(1)~(3)を有する。
【0185】
このように、上記(化学式1’)または(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体をドナー材料として用いることで、光電変換装置の特性の向上を図ることができる。
【0186】
(ポルフィリン誘導体の合成方法)
上記(化学式1’)のポルフィリン誘導体は、以下の(反応式1’)に示すように、ポルフィリン誘導体P1’(前駆体P1’、中間体P1’とも言う)と、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)と、DPP-Brとの化学反応により合成することができる。
【0187】
【化39】
【0188】
ポルフィリン誘導体P1’と、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)との反応により、ポルフィリン誘導体P1’のTIPS(Triisopropylsilyl)を脱離させる。そして、薗頭カップリングにより、DPPユニットを導入する。薗頭カップリングは、パラジウム触媒、銅触媒、塩基の作用により末端アルキンとハロゲン化アリールとをクロスカップリングさせてアルキニル化アリールを得る化学反応を言う。
【0189】
TIPSの脱離反応の際の溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン[THF]や水(HO)などが用いられる。薗頭カップリングの際には、溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン[THF]やトリエチルアミン[NEt]などが用いられ、触媒として、パラジウム触媒、銅触媒、塩基、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)[Pd(dba)]、ヨウ化銅(I)[CuI]、トリフェニルホスフィン[PPh]などが用いられる。
【0190】
上記(化学式2’)のポルフィリン誘導体は、以下の(反応式2’)に示すように、ポルフィリン誘導体P2’(前駆体P2’、中間体P2’とも言う)と、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)と、DPP-Brとの化学反応により合成することができる。反応機構は、上記(化学式1’)の場合と同様である。
【0191】
【化40】
【0192】
(光電変換装置の製造方法)
本実施の形態の光電変化装置(有機薄膜太陽電池)は、実施の形態1(図2)において説明した光電変換装置の製造方法により形成することができる。
【0193】
具体的には、実施の形態1において図2を参照しながら説明したように、まず、光透過性の基板SUB上に、第1電極EL1を形成する(図2(a))。次いで、第1電極EL1上にバッファ層BUF1を形成する。次いで、バッファ層BUF1上に、活性層ALを形成する(図2(b))。まず、活性層の形成用の溶液を調整する。ドナー材料と、アクセプター材料を、溶媒に溶かし、必要に応じて添加剤を加える。添加剤は、例えば、ドナー材料やアクセプター材料の溶解性を高めるために用いられる。この活性層の形成用の溶液を、バッファ層BUF1上に塗布し、乾燥させることにより活性層ALを形成する。この後、必要に応じて、活性層ALに対し、アニール処理(熱処理)を行う。次いで、活性層AL上に、バッファ層BUF2を形成する(図2(c))。次いで、バッファ層BUF2上に、第2電極EL2を形成する。なお、各層の材料や形成方法は、実施の形態1の場合と同様の材料や形成方法を用いることができる。
【0194】
ドナー材料としては、上記(化学式1’)または(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体を用いる。
【0195】
アクセプター材料としては、例えば、フラーレン誘導体を用いる。溶媒としては、例えば、クロロベンゼンなどを用いる。添加剤としては、例えば、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン[THF]、ピラジン、トリエチルアミン[NEt]、ピリジンなどを用いる。アニール温度としては、100℃~200℃とすることができる。アニール処理を行わなくてもよい。特に、上記(化学式1’)または(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体においては、前述したとおり、分子間のπ-πスタッキングの向上により、凝縮性(結晶性)が良好であるため、アニール処理を省略することができる。
【0196】
[実施例]
以下、実施例により本実施の形態をさらに詳しく説明するが、本実施の形態は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0197】
(実施例B)
本実施例においては、上記(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体(ZnTEPDPP(4-n-hexyl-C)を、以下の(反応式5’)に示す化学反応により生成した。
【0198】
【化41】
【0199】
窒素雰囲気下で、20mLシュレンクに、ポルフィリン誘導体P2’(前駆体P2’、中間体P2’とも言う)を37.6mgと、テトラヒドロフラン[THF]を4mLと、を入れ、さらに、1mol/Lのテトラブチルアンモニウムフルオリド[TBAF]を0.34mLを加え、室温(25℃程度)で30分撹拌した。塩化メチレンと水で抽出処理したものを、カニューラで20mL、二口フラスコに移し、さらにDPP前駆体[DPP-Br]を41.0mgと、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)[Pd(dba)]を1.56mgと、トリフェニルホスフィン[PPh]を8.92mgと、ヨウ化銅(I)[CuI]を0.32mgと、トリエチルアミン[NEt]を4.4mLと、テトラヒドロフラン[THF]を9.6mLとを加え、85℃で4時間加熱撹拌した。粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて原点除去をした後、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて精製し、44.9mgの生成物2’を得た。生成物2’の収率は、72%であった。この収率は、ポルフィリン誘導体P2’と生成物2’のモル数の比率から求めた。
【0200】
(検証)
上記工程により得られた生成物2’が、上記(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体であることを以下のとおり検証した。
【0201】
図13は、生成物2’のHNMRスペクトルである。図13に示すNMRスペクトルから、生成物2’が、上記(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体であることが確認できる。
【0202】
このように、上記(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体(ZnTEPDPP(4-n-hexyl-C)の合成に成功した。
【0203】
なお、本実施例においては、(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体の生成を行ったが、前述の(化学式1’)に示すポルフィリン誘導体についても、前述の(反応式1’)に示す化学反応により生成することができる。
【0204】
(実施例C)
実施例Bに示す工程により得られた生成物2’をドナー材料として、デバイス(光電変換装置、光電変換素子)を作製し、評価した。
【0205】
パターニングされたITO膜(第1電極)が形成されたガラス製の基板(ジオマテック製FLAT ITO)を準備し、洗浄液、純水、アセトン、IPA(イソプロピルアルコール)を用いてそれぞれ15分間超音波洗浄を行った。基板を風乾させUV/O照射を15分行った。次いで、基板上に、導電性高分子溶液であるPEDOT:PSS水溶液(Clevious製 Al4083)を40nmの膜厚でスピンコートし、不要部分を拭き取り、空気下で120℃で10分間加熱乾燥させることによりバッファ層を形成した。次いで、基板を窒素充填されたグローブボックスへと導入した。グローブボックス内の水や酸素の濃度は、0.1ppm未満である。
【0206】
活性層の形成用の溶液を調整した。調液は、水や酸素の濃度が、0.1ppm未満である窒素充填グローブボックス内で行った。ドナー材料である実施例Bに示す工程により得られた生成物2’と、アクセプター材料であるフラーレン誘導体と、の混合物に、溶媒として、ドナー材料の量に対して10mg/mlの割合でクロロベンゼンを加え、さらに、添加剤を加え、グローブボックス中において、60℃で加熱撹拌し、ドナー材料およびアクセプター材料を溶媒に溶解させ、活性層の形成用の溶液を得た。
【0207】
この溶液をフィルターろ過後、ろ液をバッファ層上にスピンコートにより塗布し、塗布膜を形成した後、シャーレの中で2時間程度、ゆっくりと乾燥(固化)させることにより、活性層を形成した。次いで、活性層に対し、必要に応じてアニール処理を施した。
【0208】
その後、活性層上に、バッファ層として、カルシウム層を20nmの膜厚で、真空蒸着機を用いて形成した後、バッファ層上に、第2電極として、アルミニウム層を80nm程度の膜厚で、真空蒸着機を用いて形成した。
【0209】
以上の工程により、光電変換装置を作製した。作製した光電変換装置を、ソーラーシミュレータを用い1SUNの光を照射し、変換効率(光電変換効率)の測定を行った。
【0210】
上記光電変換装置の作製工程において、フラーレン誘導体、添加剤、アニール温度の条件を表Bに示す。フラーレン誘導体であるPC61BMは、フラーレンC60の誘導体である[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl esterである。アニールの欄において、「-」の表示は、アニール処理を行っていないことを意味する。
【0211】
変換効率PCE(%)は、開放電圧(Voc)と、短絡電流密度(Jsc)と、フィルファクター(FF)の積(PCE=Voc×Jsc×FF)から求めた。結果を、表5に示す。
【0212】
【表5】
【0213】
(考察)
表5に示すように、実施例Bに示す工程により得られた生成物2’、即ち、以下の(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体をドナー材料として用いることで、変換効率が0.20%の光電変換装置(デバイス)を得ることができた。
【0214】
なお、本実施例においては、(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体をドナー材料として用いて光電変換装置を形成したが、前述の(化学式1’)に示すポルフィリン誘導体についても、ドナー材料として用いて光電変換装置を形成することができる。
【0215】
(実施の形態6)
本実施の形態においては、上記(化学式1’)または(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体の合成原料について説明する。
【0216】
(1)まず、上記(反応式1’)の出発原料であるポルフィリン誘導体P1’(前駆体P1’、中間体P1’とも言う)の合成について説明する。
【0217】
このポルフィリン誘導体P1’は、例えば、以下の(反応式A)、(反応式B)および(反応式C)に示す[a]工程~[c]工程により生成することができる。
【0218】
[a]工程
【化42】
【0219】
(反応式A)に示すように、ポルフィリン誘導体P3(前駆体P3、中間体P3とも言う)に、クロロホルム[CHCl]およびトリフルオロ酢酸[TFA]を作用させ、ポルフィリン骨格の中心金属であるMgを引抜く。なお、ポルフィリン誘導体P3は、前述したとおり実施の形態2の(反応式7)に示す化学反応により生成することができる。
【0220】
[b]工程
【化43】
【0221】
次いで、(反応式B)に示すように、上記(反応式A)の生成物に、クロロホルム[CHCl]および酢酸亜鉛[Zn(OAc)]を作用させ、ポルフィリン骨格の中心に、Znを導入する。これによりポルフィリン誘導体P3のポルフィリン骨格の中心金属であるMgをZnに置換したポルフィリン誘導体P3’を生成することができる。
【0222】
[c]工程
【化44】
【0223】
次いで、(反応式C)に示すように、上記(反応式B)の生成物であるポルフィリン誘導体P3’と、反応物質であるフェニルアセチレンとを用い、薗頭カップリングにより、ポルフィリン誘導体P1’を合成することができる。溶媒としては、トルエン、トリエチルアミン[NEt]、ピリジンを用い、80℃、3時間の反応を行う。
【0224】
(2)次いで、上記(反応式5’)の出発原料であるポルフィリン誘導体P2’(前駆体P2’、中間体P2’とも言う)の合成について説明する。
【0225】
このポルフィリン誘導体P2’(前駆体P2’、中間体P2’とも言う)は、上記(反応式C)の反応物質であるフェニルアセチレンを、4-ヘキシルフェニルアセチレンに代えることにより合成することができる。即ち、上記[c]工程を[c’]工程とすることにより、合成することができる。具体的には、上記(反応式A)、(反応式B)および以下の(反応式C’)よりなる[a]工程~[c’]工程により合成することができる。
【0226】
[c’]工程
【化45】
【0227】
このように、ポルフィリン誘導体の合成原料を予め化学修飾することにより、ドナー材料となるポルフィリン誘導体に更なる機能を持たせることができる。
【0228】
即ち、ドナー材料として、以下の(一般式1’)に示すポルフィリン誘導体を用いることで、光電変換装置の更なる特性向上を図ることができる。
【0229】
【化46】
【0230】
上記一般式のRとしては、実施の形態1において表3に示したR1~R7が例示される。上記(化学式1’)に示すポルフィリン誘導体の場合、Rは、R1として示す、-Hとなり、反応物質Xは、フェニルアセチレンである。また、上記(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体の場合、Rは、“R2”の欄に示すように、-(CHCHとなり、反応物質は、“X”の欄に示す物質である。この他、表3に示す反応物質Xを用いることで、R3~R7に示す基を導入することができる。
【0231】
このように、上記(一般式1’)に示すポルフィリン誘導体をドナー材料として用いることにより、光電変換装置の特性を向上(電荷移動度や励起寿命の向上)を図ることができる。また、Rとして、種々の基を導入することにより、物性の調整を図ることができる。
【0232】
ここで、上記(一般式1’)に示すポルフィリン誘導体は、以下の(反応式3’)に示す、ポルフィリン誘導体とテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体のTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体とDPP-Brとの第2反応により生成される。
【0233】
【化47】
【0234】
(実施例D)
本実施例においては、上記(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体の合成原料を、ポルフィリン誘導体P3から上記(反応式A)、(反応式B)および(反応式C’)に示す[a]工程~[c’]工程により生成した。
【0235】
[a]工程
窒素雰囲気下で、20mL二口ナスフラスコに、ポルフィリン誘導体P3を90.0mgと、クロロホルム[CHCl]を8mL入れ、さらに、トリフルオロ酢酸[TFA]を42μL加え、室温(25℃程度)で1時間撹拌した。クロロホルムと水で抽出処理した。粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、53.0mgの生成物を得た。この[a]工程の生成物の収率は、59%であった。この収率は、ポルフィリン誘導体P3と生成物のモル数の比率から求めた。
【0236】
[b]工程
窒素雰囲気下で、20mL二口ナスフラスコに、[a]工程の生成物(ポルフィリン誘導体)を53.0mgと、クロロホルム[CHCl]を6.13mL入れ、さらに、酢酸亜鉛[Zn(OAc)]69.0mgをメタノール0.55mLに溶かしたものを加え、65℃で2時間撹拌した。粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、50.4mgの生成物(ポルフィリン誘導体P3’)を得た。この[b]工程の生成物の収率は、90%であった。この収率は、[a]工程の生成物とポルフィリン誘導体P3’のモル数の比率から求めた。
【0237】
[c’]工程
窒素雰囲気下で、50mLシュレンクに、ポルフィリン誘導体P3’を53.3mgと、トルエン19.2mL、トリエチルアミン[NEt]を4.81mL、ピリジン0.6mLを入れ、さらに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)[Pd(dba)]を3.30mgと、トリフェニルホスフィン[PPh]を7.24mgと、ヨウ化銅(I)[CuI]を3.09mgと、1-エチニル-4-ヘキシルベンゼン0.128mLを加え、85℃で30分加熱撹拌した。粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて原点除去をしたのち、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて精製し、37.7mgの生成物(ポルフィリン誘導体P2’)を得た。ポルフィリン誘導体P2’の収率は、57%であった。ポルフィリン誘導体P3’とポルフィリン誘導体P2’のモル数の比率から求めた。
【0238】
このポルフィリン誘導体P2’を用いて、上記実施例Bに示す生成物2’を生成し、上記(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体であることを確認した。
【0239】
なお、ポルフィリン誘導体P3’の製造工程は、上記[a]工程、[b]工程に限られず、例えば、実施の形態2で示した反応式7において、St3のMg化合物(MgBr-OEt)を、Zn化合物とすることで製造してもよい。
【0240】
(実施の形態7)
本実施の形態においては、ロールツーロールと呼ばれる連続塗布法を用いた光電変換装置の製造方法について説明する。
【0241】
上記(化学式1’)または(化学式2’)に示すポルフィリン誘導体を用いた活性層は、実施の形態3において説明した、連続塗布法により形成することが可能である。この場合、デバイス製造コストの低コスト化が可能であり、さらに、活性層の大面積化にも容易に対応することができる。
【0242】
(実施の形態8)
上記実施の形態において説明したように、(化学式1)、(化学式2)および(化学式2’)の新規なポルフィリン誘導体の合成に成功し、これらが光電変換装置のドナー材料として機能することが確認できた。
【0243】
上記検討から、以下の(式1)に示すポルフィリン誘導体が製造可能であり、ドナー材料として有効であることが分かる。
【0244】
【化48】
【0245】
ポルフィリン骨格の中心に位置する金属元素Mは、2価の金属元素である。具体的には、金属元素Mは、Mg、Zn、CaおよびFeから選択される元素である。また、Rとして、種々の基を導入することにより、物性の調整を図ることができる。Rとしては、例えば、Hまたは(CHCHなど、表3に示す基を導入することができる。
【0246】
また、(式1)に示すポルフィリン誘導体は、以下の(化学反応式1)により合成することができる。具体的には、ポルフィリン誘導体PMとテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の第1反応により前記ポルフィリン誘導体PMのTIPS基を脱離させた後、前記TIPS基が脱離した前記ポルフィリン誘導体PMとDPP-Brとの第2反応により、上記(式1)のポルフィリン誘導体を合成することができる。上記第2反応には、例えば、パラジウム触媒が用いられる。
【0247】
【化49】
【0248】
そして、上記(式1)のポルフィリン誘導体は、第1電極と、前記第1電極の上方に設けられた電荷輸送層と、前記電荷輸送層の上方に設けられた第2電極と、を有する光電変換装置の活性層(電荷輸送層)として用いることができる。この活性層は、ドナー材料とアクセプター材料とが混合された層であり、ドナー材料として、上記(式1)に示すポルフィリン誘導体を有する。
【0249】
このような光電変換装置は、以下の工程により製造することができる。まず、第1電極となる第1導電体層の上方に、ドナー材料である(式1)に示すポルフィリン誘導体とアクセプター材料と溶媒とを有する液を塗布することにより塗布層を形成する。次いで、塗布層を固化することにより、ドナー材料とアクセプター材料とを有する電荷輸送層を形成する。次いで、電荷輸送層の上方に、第2電極となる第2導電体層を形成する。
【0250】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0251】
10 フレキシブル基板
11 ローラ
12 ローラ
13 スリットコーター
14 ヒータ
AC アクセプター材料
AL 活性層(電荷輸送層)
BUF1 バッファ層
BUF2 バッファ層
DO ドナー材料
EL1 第1電極
EL2 第2電極
SUB 基板
図1
図2
図3
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図5
図6
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図11
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図13