(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】シート材の位置調整方法
(51)【国際特許分類】
B31F 1/24 20060101AFI20220425BHJP
B65H 23/032 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
B31F1/24 E
B65H23/032
(21)【出願番号】P 2019120814
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】593155330
【氏名又は名称】株式会社ホニック
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】高田 泰和
(72)【発明者】
【氏名】河内 俊英
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-148579(JP,A)
【文献】特許第5548291(JP,B1)
【文献】特許第5226033(JP,B2)
【文献】特開昭57-77556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31F 1/24
B65H 23/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールシートの製造ラインにおいて、シングルフェーサまたはダブルフェーサである貼合装置までミルロールスタンドから繰り出されたシート材を供給する過程で、シート材の幅方向における位置を調整するシート材の位置調整方法であって、
前記ミルロールスタンドは、それぞれ一対のアーム間にシート材のロールを回転可能に保持する左ロール保持部及び右ロール保持部を備え、前記左ロール保持部からのシート材の供給と、前記右ロール保持部からのシート材の供給とを交互に行うものであり、
前記左ロール保持部から繰り出されたシート材が前記貼合装置に供給され、前記右ロール保持部が紙継ぎのために前記ロールを保持して待機している状態では、過去に前記右ロール保持部から前記貼合装置にシート材を供給していたときに前記貼合装置の上流で検出したシート材の幅方向へのずれ量に基づいて、待機している前記右ロール保持部における前記ロールの保持位置を移動させ、
前記右ロール保持部から繰り出されたシート材が前記貼合装置に供給され、前記左ロール保持部が紙継ぎのために前記ロールを保持して待機している状態では、過去に前記左ロール保持部から前記貼合装置にシート材を供給していたときに前記貼合装置の上流で検出したシート材の幅方向へのずれ量に基づいて、待機している前記左ロール保持部における前記ロールの保持位置を移動させる
ことを特徴とするシート材の位置調整方法。
【請求項2】
前記左ロール保持部から繰り出されたシート材が前記貼合装置に供給されている状態で、前記貼合装置の上流で検出したシート材の幅方向へのずれ量に基づいて、前記左ロール保持部における前記ロールの保持位置を移動させ、
前記右ロール保持部から繰り出されたシート材が前記貼合装置に供給されている状態で、前記貼合装置の上流で検出したシート材の幅方向へのずれ量に基づいて、前記右ロール保持部における前記ロールの保持位置を移動させる
ことを特徴とする
請求項1に記載のシート材の位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシートの製造ラインにおいて、走行するシート材の幅方向の位置を調整するシート材の位置調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
段ボールシートは、一般的にコルゲータと称される装置で製造される。コルゲータでは、シングルフェーサにおいて、波形に成形された中芯と裏ライナとの貼合により片面段ボールシートが製造され、ダブルフェーサにおいて、片面段ボールシートと表ライナとの貼合、または複数の片面段ボールシートと表ライナとの貼合が行われ、両面段ボールシート、複両面段ボールシート等の段ボールシートが製造される。製造された段ボールシートは、スリッタスコアラにおいて走行方向と平行に罫線入れ及び溝切りが行われた後、所定の長さで流れ方向と直交する方向に裁断される。
【0003】
上記の工程は、中芯、ライナ、片面段ボールシート等のシート材を走行させながら行われるが、シート材が走行する位置が幅方向(走行方向と直交する方向)にずれることにより、貼合されるシート材同士で幅方向の位置が不揃いとなることがある。一般的に、段ボールシートの幅方向の寸法精度を確保するために、両端を化粧断ちするための落し代が予め設定されているが、端辺における不揃い幅が落し代を超えると、その部分の段ボールシートは廃棄対象となり大きな無駄となる。
【0004】
そこで、本出願人は過去に、走行するシート材の幅方向の位置を調整する装置(以下、「シート材位置調整装置」と称する)を、種々提案し実施している(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
ところが、設置スペースや導入コスト等の問題により、既存の製造ラインの途中に上記のようなシート材位置調整装置を付加することができない場合もある。そのような場合、現行の製造現場では、走行中のシート材の幅方向の位置ずれを作業者が目視で確認した後、ミルロールスタンドにおいてロールの状態で保持されているシート材の位置を軸方向に移動させる機構を手動で作動させることにより、シート材の幅方向の位置の調整を図っていることが多い。しかしながら、ミルロールスタンドとシングルフェーサまたはダブルフェーサとの間は、距離が30m~50mと大きく離れていることに加え、作業者の目視によるずれ量の把握と、手動によるロールの移動では、試行錯誤の繰り返しとなるため、貼合されるシート材の幅方向の位置調整を正確に行うことが難しく、できたとしても非常に時間がかかるという問題があった。
【0006】
一方、シングルフェーサの直前で走行中のシート材の幅方向における位置を光電センサで検出し、この検出に基づいて、走行中のシート材を繰り出しているミルロールスタンドにおけるロールの位置を移動させる方法も提案されている(特許文献3参照)。ところが、この方法によっても、貼合前のシート材の幅方向の位置が調整されるまでの所要時間が長く、その時間に走行してしまうシート材の距離が長いために無駄が大きいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5226033号公報
【文献】特許第5548291号公報
【文献】特開昭57-77556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、段ボールシートの製造ラインにおいて、走行するシート材の貼合前における幅方向の位置を、短時間で調整することができるシート材の位置調整方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるシート材の位置調整方法は、
「段ボールシートの製造ラインにおいて、シングルフェーサまたはダブルフェーサである貼合装置までミルロールスタンドから繰り出されたシート材を供給する過程で、シート材の幅方向における位置を調整するシート材の位置調整方法であって、
前記ミルロールスタンドは、それぞれ一対のアーム間にシート材のロールを回転可能に保持する左ロール保持部及び右ロール保持部を備え、前記左ロール保持部からのシート材の供給と、前記右ロール保持部からのシート材の供給とを交互に行うものであり、
前記左ロール保持部から繰り出されたシート材が前記貼合装置に供給され、前記右ロール保持部が紙継ぎのために前記ロールを保持して待機している状態では、過去に前記右ロール保持部から前記貼合装置にシート材を供給していたときに前記貼合装置の上流で検出したシート材の幅方向へのずれ量に基づいて、待機している前記右ロール保持部における前記ロールの保持位置を移動させ、
前記右ロール保持部から繰り出されたシート材が前記貼合装置に供給され、前記左ロール保持部が紙継ぎのために前記ロールを保持して待機している状態では、過去に前記左ロール保持部から前記貼合装置にシート材を供給していたときに前記貼合装置の上流で検出したシート材の幅方向へのずれ量に基づいて、待機している前記左ロール保持部における前記ロールの保持位置を移動させる」ものである。
【0010】
ミルロールスタンドは、シート材のロールの中心を装置の中心に合わせるセンタリング機能を有しているのが一般的である。しかしながら、ミルロールスタンドから繰り出されたシート材(成形される前の中芯原紙、及び貼合される前の裏ライナ、表ライナ)には、シングルフェーサやダブルフェーサに至るまでの走行過程で、搬送用のローラや加熱用の可動プレヒータとの摩擦、滑りなど種々の要因によって、幅方向にずれが生じる。
【0011】
つまり、特許文献3のように下流側のシート材の幅方向におけるずれ量をフィードバックしてミルロールスタンドにおけるロールの保持位置を調整する場合に、下流側のシート材の幅方向の位置が適正に修正されるまでに時間がかかってしまうのは、そもそもシート材の供給が開始される時点でのミルロールスタンドにおけるロールの保持位置が不適切であるためと考えられた。
【0012】
また、ミルロールスタンドは左ロール保持部と右ロール保持部を備えており、紙継ぎを介して、左ロール保持部からのシート材の供給と右ロール保持部からのシート材の供給とを交互に行う。従来、この紙継ぎの際、その時点で供給されているシート材である現シートと、待機しているシート材である新シートとの位置合わせは、新シートの位置を現シートに合わせることによって行っていた。
【0013】
しかしながら、左ロール保持部と右ロール保持部では、同じ位置にロールを保持している場合であっても、それぞれから繰り出されたシート材の下流側における幅方向のずれ量やずれの方向が異なる場合が多いことに、本発明者らは気づいた。これは、左ロール保持部と右ロール保持部とは、理想的には左右対称ではあるが、全く同一に製造することは困難であることに加え、使用に伴う各部の摩耗やガタツキの発生により、両者の機械的な差異が経時的に大きくなるためと考えられた。そのため、新シートの位置を現シートに合わせる従来の紙継ぎでは、新シートにとっては適切ではない位置から、その供給が開始されることとなる。
【0014】
本発明は、左ロール保持部から供給されたシート材と、右ロール保持部から供給されたシート材とでは、その走行に、左ロール保持部及び右ロール保持部それぞれの機械的な差異に起因する“くせ”のような傾向があることに着目してなされたものである。すなわち、左ロール保持部が紙継ぎのために待機するときのロールの保持位置は、過去に左ロール保持部を使用してシート材を供給していたときの貼合前における幅方向のずれ量の検出に基づいて決定する。同様に、右ロール保持部が紙継ぎのために待機するときのロールの保持位置は、過去に右ロール保持部を使用してシート材を供給していたときの貼合前における幅方向のずれ量の検出に基づいて決定する。
【0015】
これにより、シート材の供給が開始される時点でのミルロールスタンドにおけるロールの保持位置が適正な位置となるため、貼合前のシート材における幅方向のずれを低減することができる。
【0016】
なお、本方法では、走行中のシート材のロールからの繰り出し位置に関係なく、次に供給されるシート材のロールの待機位置が決定されるため、紙継ぎの際には新旧のシート材がずれた状態で接合されることがある。しかしながら、このように紙継ぎの際に新旧のシート材にずれが生じるとしても、新シートを現シートに合わせる従来の紙継ぎをした場合より短時間で、下流側のシート材(貼合前のシート材)の幅方向の位置を調整することができる。
【0017】
本発明にかかるシート材の位置調整方法は、上記構成に加え、
「前記左ロール保持部から繰り出されたシート材が前記貼合装置に供給されている状態で、前記貼合装置の上流で検出したシート材の幅方向へのずれ量に基づいて、前記左ロール保持部における前記ロールの保持位置を移動させ、
前記右ロール保持部から繰り出されたシート材が前記貼合装置に供給されている状態で、前記貼合装置の上流で検出したシート材の幅方向へのずれ量に基づいて、前記右ロール保持部における前記ロールの保持位置を移動させる」ものとすることができる。
【0018】
本構成では、貼合前のシート材について検出したずれ量に基づいて、その時点でシート材を供給しているロールの繰り出し位置を調整する。このように、過去の製造の際の検出に基づいて、シート材の供給が開始される時点でのミルロールスタンドにおけるロールの保持位置を調整することに加えて、走行中のシート材について検出したずれ量をフィードバックして、シート材を供給中のロールの保持位置を調整することにより、貼合前のシート材の幅方向の位置を、より短時間で調整することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、段ボールシートの製造ラインにおいて、走行するシート材の貼合前における幅方向の位置を、短時間で調整することができるシート材の位置調整方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態であるシート材の位置調整方法を使用する段ボールの製造装置の構成図である。
【
図2】(a)ミルロールスタンドの側面図、及び、(b)ミルロールスタンドの平面図である。
【
図3】ミルロールスタンドにおけるシート材のロールの待機位置の調整を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態であるシート材の位置調整方法(以下、単に「位置調整方法」と称することがある)について、図面を用いて説明する。まず、段ボールシートの製造に使用される製造装置(コルゲータ)の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0022】
コルゲータ50は、第一ミルロールスタンド11から供給された中芯原紙1を波形に成形し、第二ミルロールスタンド12から供給された裏ライナ2と貼合して片面段ボールシート4とするシングルフェーサ52と、シングルフェーサ52で形成された片面段ボールシート4を、第三ミルロールスタンド13から供給された表ライナ3と貼合し段ボールシート5(両面段ボールシート5)とするダブルフェーサ55と、段ボールシート5に対して走行方向Fに平行に切断線及び罫線入れをするスリッタスコアラ57と、段ボールシート5を所定長さで裁断するカッタ58と、を具備している。
【0023】
また、第一ミルロールスタンド11、第二ミルロールスタンド12、及び、第三ミルロールスタンド13それぞれの下流には、紙継ぎを行うためのスプライサ15がそれぞれ配されている。なお、シングルフェーサ52とダブルフェーサ55との間には、片面段ボールシート4がダブルフェーサ55に送られるタイミングを調整するためのブリッジ53と、片面段ボールシート4の中芯1の山に糊付けするグルーマシン54が設けられている。
【0024】
更に、コルゲータ50は、シングルフェーサ52に導入される前の中芯1を加熱するプレヒータ21a,21b、シングルフェーサ52に導入される前の裏ライナ2を加熱するプレヒータ22a,22b、ダブルフェーサ55に導入される前の表ライナ3を加熱するプレヒータ23a,23b、ダブルフェーサ55に導入される前の片面段ボールシート4を加熱するプレヒータ24a,24bを具備している。
【0025】
本実施形態の位置調整方法は、第一ミルロールスタンド11から繰り出されたシート材である中芯原紙1がシングルフェーサ52に供給されるまでの過程、第二ミルロールスタンド12から繰り出されたシート材である裏ライナ2がシングルフェーサ52に供給されるまでの過程、及び、第三ミルロールスタンド11から繰り出されたシート材である表ライナ3がダブルフェーサ55に供給されるまでの過程、で行われる。
【0026】
第一ミルロールスタンド11、第二ミルロールスタンド12、及び、第三ミルロールスタンド13は同一の構成であるため、特に区別する必要がない場合は、「ミルロールスタンド10」と総称する。各ミルロールスタンド10は、シート材のロールSRを保持する機構を左右対称に二つ備えており、これらを左ロール保持部10L、及び、右ロール保持部10Rと称して区別する。左ロール保持部10L及び右ロール保持部10Rは、それぞれ
図2(a),(b)に示すように、支軸33によって回動可能に機台34に軸支された一対のアーム31を備えており、それぞれのアーム31の先端には、他のアーム31に向かって突出しており、ロールSRの中心に挿入されることによりロールSRを回転可能に保持するチャッキングヘッド32が設けられている。
【0027】
また、左ロール保持部10L及び右ロール保持部10Rはそれぞれ、ロールSRの保持のために一対のアーム31間の距離または角度を変化させる保持用アーム駆動装置(図示を省略)と、ロールSRを保持している状態で一対のアーム31を支軸33に沿って同一方向に同時に移動させる移動用アーム駆動装置(図示を省略)を備えている。
【0028】
左ロール保持部10L及び右ロール保持部10Rは、一方がロールSRから繰り出したシート材を貼合装置に供給している間、他方がロールSRを保持して待機し、スプライサ15による紙継ぎを介して交互にシート材の供給を行う。スプライサ15は、待機しているロールSRからシート材(「新シート」と称する)を引き出してその端部を吸着保持し、供給中のロールSRにおけるシート材(「現シート」と称する)が終わりに近づくと、新シートの端部を現シートに押圧して接着するスプライスヘッドと、接着後に現シートを切断するカッタとを備えている。スプライサ15では、スプライスヘッドより下流側に複数のローラが配されており、通常は現シートが九十九折り状に走行するようローラ間に現シートを張設しているが、紙継ぎがなされる際には、ローラが移動してローラ間で現シートの張力を低下させ滞留させる。これにより、シート材の供給を止めることなく紙継ぎがなされ、左ロール保持部10Lからのシート材の供給と右ロール保持部10Rからのシート材の供給とが、交互に連続的に行われる。
【0029】
本実施形態の位置調整方法は更に、貼合装置の上流でシート材の幅方向の位置を検出するための貼合前位置検出装置と、ミルロールスタンド10においてロールSRの位置を検出するための原紙位置検出装置と、貼合前位置検出装置及び原紙位置検出装置それぞれの検出に基づいてロールSRの待機位置を制御する制御装置とを使用する。
【0030】
貼合前位置検出装置は、シングルフェーサ52に導入される中芯原紙1の幅方向の位置を検出する検出点P1、シングルフェーサ52に導入される裏ライナ2の幅方向の位置を検出する検出点P2、ダブルフェーサ55に導入される表ライナ3の幅方向の位置を検出する検出点P3、及び、ダブルフェーサ55に導入される片面段ボール4の幅方向の位置を検出する検出点P4に配置される。
図1では、中芯原紙1を加熱するプレヒータ21a,21bとシングルフェーサ52との間に検出点P1を、裏ライナ2を加熱するプレヒータ22a,22bとシングルフェーサ52との間に検出点P2を、表ライナ3を加熱するプレヒータ23a,23bとダブルフェーサ55の間に検出点P3を、片面段ボール4を加熱するプレヒータ24a,24bbとダブルフェーサ55の間に検出点P4を設ける場合を例示している。
【0031】
貼合前位置検出装置としては、少なくともシート材の端辺側を撮影するラインセンサカメラやエリアカメラ、光を投射し反射光または透過光を受光することによりシート材の有無によって端辺を検出する光電センサ、超音波を照射し反射波または透過波を受信することによりシート材の有無によって端辺を検出する超音波センサを、使用することができる。
【0032】
原紙位置検出装置は、左ロール保持部10L及び右ロール保持部10Rそれぞれにおいて、ロールSRの支軸33方向の位置を検出する。原紙位置検出装置としては、例えば、回転運動を直線運動に変換することによってアーム31を支軸33方向に移動させる機構において、その回転角度を検出するポテンショメータやエンコーダを使用することができる。或いは、何処かに設けられた基準点から支軸33方向におけるロールSRまでの距離を計測する光電センサ等の距離センサを、使用することができる。
【0033】
制御装置は、記憶装置、中央処理装置(CPU)、及び補助記憶装置を備えるコンピュータであり、主記憶装置には、ずれ量算出手段、及びアーム移動手段として、コンピュータを機能させるプログラムが記憶されている。
【0034】
ずれ量算出手段は、貼合前位置検出装置によるシート材の端辺の検出に基づき、シート材が貼合前にあるべき位置から幅方向にどれだけずれているかを算出する。例えば、貼合前の中芯原紙1及び裏ライナの端辺が、それぞれ基準となる位置、例えば、シングルフェーサのマシンセンタからシート幅の1/2に相当する距離だけ離れた位置から、どれだけ離れているかのずれ量を算出する。或いは、中芯原紙1及び裏ライナ2の一方の幅方向における位置を基準として、他方のシート材の幅方向のずれ量を算出する。また、表ライナ3については、片面段ボール4の幅方向における位置を基準として、その幅方向のずれ量を算出する。
【0035】
アーム移動手段は、ずれ量算出手段により算出されたずれ量に基づき、移動用アーム駆動手段を制御し、ロールSRを保持している一対のアーム31を支軸33に沿って移動させる。その際、アーム移動手段は、貼合前のシート材におけるずれの方向とは反対方向にロールSRを移動させる。
【0036】
なお、ずれ量算出手段として機能するコンピュータと、アーム移動手段として機能するコンピュータとは、ハード構成として同一であっても別体であっても良い。
【0037】
次に、本実施形態の位置調整方法における処理の流れを説明する。段ボールシートの製造を開始するに当たり、第一ミルロールスタンド11には中芯原紙1のロールSRをセットし、第二ミルロールスタンド12には裏ライナ2のロールSRをセットし、第三ミルロールスタンド13には表ライナ3のロールSRをセットする。その際、各ミルロールスタンド10では、左ロール保持部10L及び右ロール保持部10RそれぞれにロールSRを保持させる。このときのロールSRの支軸33方向における中心位置を、初期位置CLとする。支軸33方向におけるロールSRの位置は、ロールSRから繰り出されるシート材の幅方向の位置である。
【0038】
一般的なミルロールスタンド10は、左ロール保持部10L及び右ロール保持部10Rそれぞれが保持するロールSRの中心を、マシンセンタに一致させる機構を有している。その場合、ロールSRの初期位置CLは、
図2(b)に示すようにマシンセンタとなる。なお、本位置調整方法では、ロールSRの初期位置CLはマシンセンタでなくても良い。
【0039】
左ロール保持部10L及び右ロール保持部10Rの一方からシート材を繰り出し、段ボールシートの製造を開始する。ここでは、左ロール保持部10Lから先にシート材の供給を行い、右ロール保持部10RがロールSRを保持して待機する場合を例示する。また、左ロール保持部10Lから供給されたシート材によるn回目の段ボールシートの製造を「Ln製造」と称し、右ロール保持部10Rから供給されたシート材によるn回目の段ボールシートの製造を「Rn製造」と称することにより、段ボールシートの製造が、L1製造、R1製造、L2製造、R2製造、L3製造、R3製造、・・Ln製造、Rn製造・・と進行することとする。
【0040】
本実施形態の位置調整方法では、L1製造の際に貼合前検出装置によって検出されたずれ量に基づいて、L2製造を開始する前に待機している左ロール保持部10LにおけるロールSRの位置を調整する。このとき、ロールSRを移動させる距離は、貼合前検出装置によって検出されたずれ量から求めた距離であり、例えば、検出されたずれ量の平均値、中央値、移動平均値、移動中央値とすることができる。或いは、L3製造を開始する前のロールSRの待機位置を、L1製造及びL2製造の際に検出されたずれ量に基づいて調整するというように、左ロール保持部10Lからのシート材の供給による過去の複数回の製造におけるずれ量を考慮して、左ロール保持部10LにおけるロールSRの待機位置を調整することができる。
【0041】
同様に、R1製造の際に検出された貼合前のずれ量に基づいて、R2製造を開始する前に待機している右ロール保持部10RにおけるロールSRの位置を調整し、或いは、R3製造を開始する前のロールSRの待機位置を、R1製造及びR2製造の際に検出されたずれ量に基づいて調整するというように、右ロール保持部10Rからのシート材の供給による過去の複数回の製造におけるずれ量を考慮して、右ロール保持部10RにおけるロールSRの待機位置を調整する。
【0042】
このような制御では、左ロール保持部10Lからシート材を供給したときと、右ロール保持部10Rからシート材を供給したときとで、貼合前のシート材のずれ量やずれの方向が相違する傾向がある場合、その傾向に合わせてロールSRの待機位置が調整される。例えば、右ロール保持部10Lからシート材を供給したときの貼合前のシート材のずれ量が「△a」で、左ロール保持部10Rからシート材を供給したときの貼合前のシート材のずれ量が反対方向に「△b」であったとき、左ロール保持部10L及び右ロール保持部10RそれぞれにおけるロールSRの待機位置は、
図3に示すように調整される。
【0043】
このような制御により、左ロール保持部10L及び右ロール保持部10Rそれぞれにおける部材の摩耗やガタツキに起因して、下流側でシート材の幅方向にずれが生じる場合、そのずれを予めロールの待機位置で修正しておくことにより、貼合前のシート材の幅方向のずれを早期に修正することができる。
【0044】
また、本実施形態の位置調整方法では、Ln製造の際の貼合前のシート材のずれ量の検出に基づいて、その時点でシートを供給している左ロール保持部10LにおけるロールSRの位置調整を行うと共に、Rn製造の際の貼合前のシート材のずれ量の検出に基づいて、その時点でシートを供給している右ロール保持部10RにおけるロールSRの位置調整を行う。上記のように、そのロール保持部からのシート材の供給による製造を開始する時点で、ロールSRが適正な位置に近付けられていても、貼合前のシート材に幅方向のずれが生じることがある。このような場合であっても、貼合前のシート材について検出したずれ量をフィードバックして、供給中のシート材のロールSRの保持位置を調整することにより、貼合前のシート材の幅方向のずれを速やかに修正することができる。
【0045】
なお、ロールSRの待機位置の調整のために、過去の1回の製造における貼合前のずれ量のデータを使用するに当たり、製造1回分の全データを使用しても良いし、製造1回分のデータのうち一部分のみを使用しても良い。例えば、初期位置CLにあるロールSRからシート材を繰り出して製造を開始してから、あまり時間が経過していない初期段階では、貼合前のシート材のずれ量は大きいが、ずれ量をフィードバックしてシート材を供給中のロールSRの位置を調整していると、貼合前のシート材におけるずれ量は徐々に減少していく。このような場合、初期段階の大きなずれ量が、左ロール保持部10Lまたは右ロール保持部10Rそれぞれに特有な要素に起因して生じるずれ量であると考えられる。そこで、ロールSRの待機位置の調整のために、過去に同じロール保持部からシート材を供給して製造したときに検出したずれ量のデータの内、検出の初期段階におけるずれ量のデータを使用することができる。
【0046】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0047】
例えば、上記では、ミルロールスタンドから供給されるシート材が表ライナ3である場合について、片面段ボール4と貼合されて両面段ボール5が製造される場合を例示したが、二以上の片面段ボールシートに表ライナが貼合されて複両面段ボールシートや複々両面段ボールシート等が製造される場合の表ライナについても、同様に本発明の位置調整方法を適用し、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 中芯原紙(シート材)
2 裏ライナ(シート材)
3 表ライナ(シート材)
10 ミルロールスタンド
11 第一ミルロールスタンド(ミルロールスタンド)
12 第二ミルロールスタンド(ミルロールスタンド)
13 第三ミルロールスタンド(ミルロールスタンド)
10L 左ロール保持部
10R 右ロール保持部
31 アーム
52 シングルフェーサ(貼合装置)
55 ダブルフェーサ(貼合装置)
SR ロール(シート材のロール)