(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物
(51)【国際特許分類】
C23C 18/30 20060101AFI20220425BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
C23C18/30
H05K3/18 C
(21)【出願番号】P 2020117844
(22)【出願日】2020-07-08
(62)【分割の表示】P 2020053893の分割
【原出願日】2020-03-25
【審査請求日】2020-07-13
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504137554
【氏名又は名称】株式会社イオックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 悠人
(72)【発明者】
【氏名】中辻 達也
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】平塚 政宏
【審判官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-374055(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152938(WO,A1)
【文献】特開平6-77626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00 - 20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき物であって、
基
材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、及び(iii)バインダーを含有する触媒組成物から成る触媒層を、全面に有し、
前記金属粒子は、パラジウム粒子であり、
前記触媒層の表面に、パターン形状の無電解めっき層を有し、
前記パターン形状の無電解めっき
層は、
前記触媒層の触媒活性が残
る部分に形成された無電解めっき
層と、
前記触媒層の触媒活性が失活し
た部分に無電解めっき層が
形成されていないことで、
パターン形状の無電解めっき層と成る、めっき物。
【請求項2】
めっき物であって、
基
材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、及び(iii)バインダーを含有する触媒組成物から成る触媒層を有し、
前記金属粒子は、パラジウム粒子であり、
前記触媒層の表面に、パターン形状の無電解めっき層を有し、
前記パターン形状の無電解めっき
層は、
前記触媒層の触媒活性が残
る部分に形成された無電解めっき
層と、
前記触媒層の触媒活性が失活し
た部分に無電解めっき層が
形成されていないことで、
パターン形状の無電解めっき層と成り、
前記触媒活性が失活した部分の触媒層が除去されていない、めっき物。
【請求項3】
前記基材の表面に、前記触媒層を、全面に有する、請求項
2に記載のめっき物。
【請求項4】
前記基材は、基板であり、
前記無電解めっき層は、導体回路であり、
前記めっき物は、回路基板である、請求項1~
3のいずれかに記載のめっき物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材の表面に、触媒金属錯イオンを含有する触媒処理液を付着させ、
次いで形成すべき回路パターンを有するパターンマスクを用いて基材表面に光を照射して
、光照射部分の触媒活性を失活させ、その後基材を無電解めっき浴中に浸漬して光が照射
されていない未照射部分にめっき回路を形成する方法が開示されている。この技術では、
パターンマスクによる光未照射部分にめっき回路を形成するが、一方で、光が照射された
部分では触媒処理液(触媒としてPd錯イオンを含む処理液)を、塩酸、硫酸等の酸によっ
て除去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新たに、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、めっき物において、基材の表面に、(i)金属粒子と
分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する触媒組成物から成る
触媒層を有し、前記触媒層の表面に、パターン形状の無電解めっき層を有する、新たなめ
っき物を開発した。
【0006】
即ち、本発明は、次のめっき物である。
【0007】
項1.
めっき物であって、
基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダ
ーを含有する触媒組成物から成る触媒層を有し、
前記触媒層の表面に、パターン形状の無電解めっき層を有する、めっき物。
【0008】
項2.
前記基材の表面に、前記触媒層を、全面に有する、前記項1に記載のめっき物。
【0009】
項3.
前記パターン形状の無電解めっき層では、前記触媒層の表面に、
UV照射されず、無電解めっき層が有る部分と、
UV照射されて、無電解めっき層が無い部分とで、
パターン形状の無電解めっき層と成る、前記項1又は2に記載のめっき物。
【0010】
項4.
前記パターン形状の無電解めっき層では、前記触媒層の表面に、
マスキングされて、前記UV照射されず、無電解めっき層が有る部分と、
マスキングされず、前記UV照射されて、無電解めっき層が無い部分とで、
パターン形状の無電解めっき層と成る、前記項3に記載のめっき物。
【0011】
項5.
前記基材は、基板であり、
前記無電解めっき層は、導体回路であり、
回路基板である、前記項1~4のいずれかに記載のめっき物。
【0012】
項6.
めっき物の製造方法であって、
(1)基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バ
インダーを含有する触媒組成物から成る触媒層を形成する工程、
(2)前記触媒層を形成する工程の後、前記触媒層の表面にマスキング層を形成する工
程、
(3)前記マスキング層を形成する工程の後、前記触媒層及び前記マスキング層の表面
にUV照射する工程、
(4)前記UV照射する工程の後、マスキング層を除去する工程、
(5)前記マスキング層を除去する工程の後、パターン形状の無電解めっき層を形成す
る工程、
を含む、めっき物の製造方法。
【0013】
項7.
前記触媒層を形成する工程では、
前記基材の表面に、前記触媒層を、全面に形成する、前記項6に記載のめっき物の製造
方法。
【0014】
項8.
前記パターン形状の無電解めっき層を形成する工程では、前記触媒層の表面に、
前記マスキング層を形成して、前記UV照射せず、無電解めっき層を形成することと、
前記マスキング層を形成せず、前記UV照射して、無電解めっき層を形成しないこととで
、
パターン形状の無電解めっき層を形成する、前記項6又は7に記載のめっき物の製造方法
。
【0015】
項9.
前記基材は、基板であり
前記無電解めっき層は、導体回路であり、
回路基板である、前記項6~8のいずれかに記載のめっき物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、新たに、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を提供できる。
【0017】
本発明は、触媒層は絶縁性であり、触媒層を除去する工程が不要である、めっき物を提
供できる。
【0018】
本発明は、マスキング技術により、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成
するめっき物であり、より微細な回路配線を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明を詳細に説明する。但し、この実施の形態は、発明の趣旨がより良く理解
できる説明であり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
【0021】
本発明は、触媒層は、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バ
インダーを含有する触媒組成物から成り、絶縁性であることから、触媒層を除去する工程
が不要である、めっき物を提供できる。
【0022】
本発明は、マスキング技術により、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成
するめっき物であり、より微細な回路配線を形成することができる。
【0023】
従来技術(特開平6-77626号公報)では、触媒処理液は、触媒として触媒金属(Pd等)
錯イオンを含み、これは導電性を表す。その触媒処理液が、UV照射部分やUV未照射部分で
残ると、そのUV照射部分は回路を形成しない部分であっても、導電性を表すので、回路と
して短絡を起こす。従来技術は、その理由から、UV照射部分に対して、塩酸、硫酸等の酸
によって、その触媒処理液を除去することが必要である。
【0024】
本発明は、(ア)触媒層に対してマスキングする部分は、UV未照射部分と成り、触媒層
は失活せず、無電解めっき層(導体回路)が形成されること、(イ)触媒層に対してマス
キングしない部分は、UV照射部分と成り、触媒層は失活し、無電解めっき層(導体回路)
が形成されないことを含む、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物を提供できる
。
【0025】
本発明は、また、(ウ)触媒層は絶縁性であることから、その触媒層を除去すること無
く、導体回路のパターン形成を可能とし、(エ)触媒層が存在しても、それ自体が導電性
を表さず、短絡しないめっき物を提供できる。
【0026】
本発明は、好ましくは、触媒層は透明であり、透明なめっき物を提供できる。
【0027】
本発明は、パターン形状を有することから、好ましくは、回路のパターン形成に、フォ
トエッチング、パターン印刷等の工程が不要であるめっき物を提供できる。
【0028】
本発明のめっき物は、好ましくは、前記基材は基板であり、前記無電解めっき層は導体
回路である、パターン形状の導体回路を有する回路基板である。
【0029】
(1)めっき物(回路基板)
本発明は、新たな、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物(回路基板、プリン
ト配線板)を提供できる。
【0030】
本発明のめっき物は、基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒
、及び(iii)バインダーを含有する触媒組成物から成る触媒層を有し、前記触媒層の表
面に、パターン形状の無電解めっき層を有する。
【0031】
本発明のめっき物は、好ましくは、前記パターン形状の無電解めっき層では、前記触媒
層の表面に、UV照射されず、無電解めっき層が有る部分と、UV照射されて、無電解めっき
層が無い部分とで、パターン形状の無電解めっき層と成る。
【0032】
本発明のめっき物は、好ましくは、前記パターン形状の無電解めっき層では、前記触媒
層の表面に、マスキングされて、前記UV照射されず、無電解めっき層が有る部分と、マス
キングされず、前記UV照射されて、無電解めっき層が無い部分とで、パターン形状の無電
解めっき層と成る。
【0033】
本発明のめっき物は、好ましくは、前記基材は、基板であり、前記無電解めっき層は、
導体回路であり、回路基板である。
【0034】
本発明のめっき物は、好ましくは、触媒層は絶縁性であり、触媒層を除去する工程が不
要である。前記触媒層は、好ましくは、透明である。
【0035】
本発明のめっき物は、マスク層(UV未照射部)に無電解めっき層(回路)が形成される
ので、回路のパターン形成を可能とする。
【0036】
本発明のめっき物は、回路のパターン形成に、フォトエッチング、パターン印刷等の工
程が不要であり、触媒層の除去の工程も不要である、パターン形状の無電解めっき層(導
体回路)を有する。
【0037】
(2)基材(基板)
本発明のめっき物は、基材の表面に触媒層を有し、前記触媒層の表面にパターン形状の
無電解めっき層を有する。
【0038】
前記基材(好ましくは、基板、回路基板)の材料は、好ましくは、絶縁基板であり、プ
ラスチック(樹脂)、ガラス、セラミックス等を用いる。
【0039】
前記基材は、好ましくは、基板であり、回路基板である。
【0040】
前記基材(基板)の材料は、マスク処理のし易さの点で、好ましくは、均一な厚み(高
さ)を有する。
【0041】
前記プラスチックとして、好ましくは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの共重
合樹脂(ABS樹脂)等を用いる。
【0042】
前記プラスチックとして、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチ
レンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸エステル等のポ
リエステル;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;ポリカーボネート(PC)
;ポリ塩化ビニル;ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール;ポ
リエーテルエーテルケトン;ノルボルネン骨格を有する環状ポリオレフィン;ポリフェニ
レンスルファイド;液晶ポリマー;シクロオレフィンポリマー(COP);変性ポリフェニ
ルエーテル;ポリスルホン;フェノール;ポリフタルアミド(PPA);ポリアリレート等
を用いる。
【0043】
前記プラスチックとして、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ
スチレン(PS)、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ
イソブチレン、ポリイソプレン等のポリオレフィン等を用いる。
【0044】
前期プラスチックとして、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラ
フルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、フッ化エチレン-フッ化プロピレン共重合
体(FEP)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などのフッ素樹脂を用いる。
【0045】
前記セラミックスとして、好ましくは、ガラス、アルミナ等が挙げられる。また、基材
として不織布を使用する場合、木質繊維、ガラス繊維、石綿、ポリエステル繊維、ビニロ
ン繊維、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維等を用いる。
【0046】
前記基材としてプラスチック、セラミックス等を使用する場合、好ましくは、適宜プラ
イマー等で絶縁性を形成した上で、使用する。
【0047】
前記基材として金属等の導電性物質を使用する場合、好ましくは、プライマー等で絶縁
性を形成した上で、基材として用いる。
【0048】
本発明のめっき物は、前記基材は、好ましくは、基板であり、後述する無電解めっき層
は、導体回路であり、回路基板である。
【0049】
(3)触媒層
本発明のめっき物は、基材の表面に触媒層を有し、前記触媒層の表面にパターン形状の
無電解めっき層を有する。前記触媒層は、好ましくは、(i)金属粒子と分散剤との複合
体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する触媒組成物から成る。
【0050】
本発明のめっき物は、好ましくは、前記基材の表面に、前記触媒層を、全面に有する。
【0051】
(i)金属粒子と分散剤との複合体
本発明のめっき物では、前記触媒層は、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する
触媒組成物から成る。
【0052】
前記金属粒子は、好ましくは、パラジウム粒子、金粒子、銀粒子、又は、白金粒子であ
る。前記金属粒子と分散剤との複合体は、好ましくは、パラジウム粒子(Pd粒子)を含む
パラジウム複合体(Pd複合体)である。
【0053】
前記金属粒子と分散剤との複合体は、好ましくは、例えば、ポリカルボン酸系分散剤、
ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤等の分散剤
の存在下、金属粒子として、例えば、塩化パラジウム(塩化Pd)等のパラジウム化合物(
Pd化合物)から供給されるパラジウムイオン(Pdイオン)を、ヒドラジンヒドラート等の
2級又は3級アミン類で還元することによって得ることができる。
【0054】
前記金属粒子は、無電解めっき触媒として機能するものであり、好ましくは、パラジウ
ム粒子(Pd粒子)、金粒子(Au粒子)、銀粒子(Ag粒子)、白金粒子(Pt粒子)等の貴金
属の超微粒子であり、より好ましくは、Pd粒子である。
【0055】
前記Pd粒子は、好ましくは、前記分散剤の存在下、Pd化合物から供給されるPdイオンを
、還元剤を用いて還元することによって得ることができる(液相還元法)。
【0056】
前記Pd化合物は、好ましくは、塩化パラジウム(塩化Pd)、硫酸パラジウム、硝酸パラ
ジウム、酢酸パラジウム、安息香酸パラジウム、サリチル酸パラジウム、パラトルエンス
ルホン酸パラジウム、過塩素酸パラジウム、ベンゼンスルホン酸パラジウム等を用いる。
Pd化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
前記還元剤は、好ましくは、ヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)、水素化ホ
ウ素ナトリウム、N,Nジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノール
アミン等の1級、2級又は3級アミン類、アスコルビン酸、2,3-ジヒドロキシマレイン酸等
のエンジオール類を用いる。
【0058】
前記Pdイオンを還元する方法は、好ましくは、溶媒(下記の溶媒)中に分散剤及びPdイ
オンを存在させた後、還元剤を前記溶媒中に加える方法であり、これによりPdイオンと還
元剤とが接触し、Pdイオンを還元することができる。
【0059】
前記Pd複合体中のPd粒子と分散剤との重量比は、好ましくは、Pd粒子:分散剤=50:50
~95:5程度であり、より好ましくは、Pd粒子:分散剤=65:35~85:15程度である。
【0060】
前記Pd複合体の平均粒子径は、好ましくは、全体としては平均粒子径20nm~300nm程度
の球形状の構造を有している。前記Pd複合体の平均粒子径は、粒径アナライザー(大塚電
子株式会社、FPAR-1000)で測定する(重量基準平均径)。
【0061】
前記金属粒は、無電解めっき触媒として機能するものであり、好ましくは、Pd粒子、Au
粒子、Ag粒子、Pt粒子等の貴金属の超微粒子である。
【0062】
前記金属粒子として、Pt粒子を用いる時、好ましくは、分散剤の存在下、塩化白金(IV
)等の白金化合物(Pt化合物、貴金属化合物)から供給される白金イオン(Ptイオン)を
、ヒドラジンヒドラート等の2級又は3級アミン類で還元することによって得る。
【0063】
(ii)溶媒
本発明のめっき物では、前記触媒層は、好ましくは、(ii)溶媒を含有する触媒組成物
から成る。
【0064】
前記溶媒(分散媒)は、好ましく、金属複合体(Pd複合体等)を分散させることができ
、また、下記のバインダーとの親和性に優れているものである。前記溶媒は、好ましくは
、触媒組成物の粘度、蒸発速度等の観点で選択し、また、触媒組成物が、基板と良好に密
着する点を満足さものである。
【0065】
前記溶媒は、好ましくは、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IP
A)、1-ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチル
エチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジアセトンアルコール(4-ヒ
ドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコー
ルモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル
類;安息香酸メチル、安息香酸エチル、サリチル酸メチル等の芳香族カルボン酸エステル
類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-へキサン、n-へプタン、ミネラルスピ
リット等の脂肪族炭化水素類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテー
ト、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール
アセテート等のグリコールエーテルエステル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のアルカノー
ルエステル類;2-フェノキシエタノール(エチレングリコールフェニルエーテル)等を用
いる。
【0066】
前記溶媒は、好ましくは、印刷性及び塗装性、印刷・塗装後のレベリング過程を考慮し
て、蒸発速度が遅い溶媒を使用する。前記蒸発速度が遅い溶媒として、好ましくは、ジア
セトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ
アセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカル
ビトールアセテート、2-フェノキシエタノール等を用いる。
【0067】
前記溶媒は、触媒組成物中の金属複合体(Pd複合体等)を良好に分散させることができ
るという観点から、好ましくは、水、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等を
用いる。
【0068】
前記非プロトン性極性溶媒は、好ましくは、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチ
ルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性極性溶媒
;ジメチルスルホキシド;γ-ブチロラクトン等を用いる。
【0069】
前記溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
(iii)バインダー
本発明のめっき物では、前記触媒層は、好ましくは、(iii)バインダーを含有する触
媒組成物から成る。
【0071】
前記バインダーは、好ましくは、触媒組成物の粘度、触媒組成物と基板(PETフィルム
、ABS基材等)との密着性、硬化条件等の観点から、良好に無電解めっきの反応性が得ら
れるものを選択する。前記バインダーは、好ましくは、前記溶媒に分散又は溶解するもの
である。
【0072】
前記バインダーは、好ましくは、アセタール樹脂(POM)、エポキシ樹脂、エステル樹
脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂(PA、ポリアミド、ナイロン)、イミド樹
脂(ポリイミド)、アミドイミド樹脂(PAI、ポリアミドイミド)、シェラック樹脂、メ
ラミン樹脂、尿素樹脂、硝化綿、アルキド樹脂、石油樹脂、ロジン系樹脂、スチレン/マ
レイン酸樹脂、シリコン樹脂、塩ビ-酢ビ共重合体、アクリルモノマー/オリゴマー及び
オレフィン樹脂(ポリオレフィン)等を用いる。
【0073】
前記塩ビ-酢ビ共重合体(塩化ビニル・酢酸ビニル系変性樹脂)は、塩化ビニルと酢酸
ビニル等との共重合樹脂である。
【0074】
前記バインダーは、より好ましくは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アミドイミド樹脂
、及び塩ビ-酢ビ共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種を用い、2種以上を組み
合わせて使用することもできる。前記バインダーは、特に好ましくは、エポキシ樹脂、ウ
レタン樹脂及びアミドイミド樹脂を使用する。
【0075】
前記バインダーは、必要に応じて、硬化剤を併用する方が好ましい。硬化剤を併用する
ことで、より短時間でUV照射による効果を発現できるため、よりパターンの鮮明化が可能
になる。
【0076】
前記硬化剤は、特に限定されず、使用するバインダー樹脂に合わせて適宜選択すること
が可能である。前記硬化剤は、好ましくは、イソシアネート、アミド樹脂、フェノール樹
脂、メルカプタン、イミダゾール、ケティミン、オキサゾリン、カルボジイミド、エポキ
シ等を用いる。
【0077】
本発明では、前記触媒組成物には、必要に応じて、フィラー、増粘剤等の添加物を使用
しても良い。前記フィラーは、好ましくは、シリカ、アルミナ等を用いる。前記増粘剤は
、好ましくは、スメクタイト系粘土鉱物等の無機増粘剤、セルロースナノファイバー等の
有機系増粘剤等を用いる。
【0078】
前記フィラー、増粘剤等の添加物の粒子径は、特に限定されない。本発明では、導体回
路として微細配線を形成する場合では、好ましくは、粒子径がより小さいフィラー、増粘
剤等の添加物を用いる。その理由から、フィラー、増粘剤等の添加物の粒子径は、好まし
くは、100nm以下であり、より好ましくは、10nm以下である。
【0079】
(iv)触媒層の形成方法
本発明のめっき物では、前記触媒組成物を、基材(回路基板)上に、好ましくは、バー
コート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレー塗布、グラビアコート法、ロー
ルコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアリバースロ
ールコーティング法等の公知の手段により、塗布・乾燥させて、触媒層を形成する。
【0080】
前記触媒層の形成は、より好ましくは、基材(回路基板)上に、前記触媒組成物を、バ
ーコート法、スピンコート法、若しくはグラビアリバースロールコーティング法により塗
布し、触媒組成物を乾燥させて、触媒層を形成する。
【0081】
前記触媒層の厚みは、好ましくは、良好に無電解めっきを行い、無電解めっきの反応性
を得ることができ、基材(基板)にめっき皮膜を良好に形成することができる点から、20
μm以下程度であり、より好ましくは、0.01μm~10μm程度である。
【0082】
本発明は、触媒層に対して、マスキングする部分は、UV未照射部分と成り、触媒層は失
活せず、無電解めっき層(導体回路)が形成されること、触媒層に対してマスキングしな
い部分は、UV照射部分と成り、触媒層は失活し、無電解めっき層(導体回路)が形成され
ないことを含む、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物を提供できる。
【0083】
本発明のめっき物は、好ましくは、前記基材の表面に、前記触媒層を、全面に有する。
本発明のめっき物では、触媒層は絶縁性であることから、その触媒層を除去すること無く
、導体回路のパターン形成を可能とし、触媒層が存在しても、それ自体が導電性を表さず
、短絡しないめっき物と成る。
【0084】
本発明のめっき物は、好ましくは、めっき回路に応じた光透過模様を有するマスキング
(マスキング層)を除去すれば良い。
【0085】
(4)パターン形状及びマスク層(マスキング)
本発明のめっき物は、基材の表面に触媒層を有し、前記触媒層の表面にパターン形状の
無電解めっき層を有する。
【0086】
前記基材において、前記パターン形状の無電解めっき層では、好ましくは、前記触媒層
の表面に、UV照射されず、無電解めっき層が有る部分と、UV照射されて、無電解めっき層
が無い部分とで、パターン形状の無電解めっき層と成る。
【0087】
前記基材において、前記パターン形状の無電解めっき層では、好ましくは、前記触媒層
の表面に、マスキングされて、マスク層を形成し、その部分はUV照射されず、無電解めっ
き層が有る部分と、マスキングされず、マスク層を形成せず、その部分はUV照射されて、
無電解めっき層が無い部分とで、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)と成る。
【0088】
前記パターン形状及びマスク層(マスキング)は、好ましくは、めっき回路に応じた光
透過模様を有する金属板、ガラス板、フィルム等、若しくはレジスト等の樹脂をパターン
印刷し、マスクとしたものを用いる。光透過性が無い金属板等を用いることで、めっき回
路に応じたマスキングを行うことができる。
【0089】
本発明のめっき物は、基材の表面に、触媒金属錯イオンを含有する触媒処理液を付着さ
せ、触媒層を形成し、次いで形成すべき回路パターンを有するパターンマスクを用いて基
材表面に光を照射(UV照射)して、光照射部分の触媒活性を失活させ、その後基材を無電
解めっきして(浴中に浸漬等)、光が照射されていない未照射部分(マスキング部分)に
めっき回路を形成する方法である。
【0090】
本発明のめっき物は、触媒金属(パラジウム(Pd)等)錯イオンを含有する触媒処理液
(触媒組成物)を用い、光照射部分(UV照射部分)は触媒活性を失活させて、光の未照射
部分(UV未照射部分)にめっき回路を形成する。
【0091】
前記パターン形状及びマスク層(マスキング、パターンマスク)は、好ましくは、形成
しようとするめっき回路に応じた光透過模様を有している。
【0092】
前記光照射に用いる光として、好ましくは、紫外線光(UV光)、可視光等であり、基材
表面に付着させた触媒組成物(触媒処理液)中の触媒を失活させることができる光を用い
る。
【0093】
前記光照射に用いる光は、好ましくは、紫外線(UV光)であり、波長が10nm~400nm程
度、即ち可視光線より短く軟X線より長い不可視光線の電磁波である。前記光照射に用い
る光は、より好ましくは、紫外線(UV光)であり、波長が10nm~300nm程度の電磁波であ
る。
【0094】
前記紫外線光(UV光)の光源は、好ましくは、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ
、紫外線LEDランプである。
【0095】
また、前記光源は紫外(UV)レーザーであってもよい。前記紫外(UV)レーザーは、好
ましくは、UV-YAG、DUV-YAGもしくはエキシマである。前記紫外(UV)レーザーは、より
好ましくは、DUV-YAGもしくはエキシマである。
【0096】
前記紫外線光(UV光)の積算光量は、好ましくは、1mJ/cm2~20,000mJ/cm2、より好
ましくは、1mJ/cm2~2,000mJ/cm2、更に好ましくは、1mJ/cm2~1,000mJ/cm2である。
【0097】
前記基材表面に形成された触媒層では、形成すべき回路パターンに応じて、光を照射(
UV照射)した部分は、その触媒活性が失活される。前記触媒層では、一方で、光が照射さ
れていない未照射部分(マスキング部分)は、その触媒活性は残り、その部分に無電解め
っきが形成されて、めっき回路を形成することができる。
【0098】
(5)無電解めっき層(回路基板)
本発明のめっき物は、前記基材を基板とし、前記無電解めっき層を導体回路として、回
路基板とすることが好ましい。
【0099】
本発明は、触媒層に対して、マスキングする部分(金属板部分)は、UV未照射部分と成
り、触媒層は失活せず、無電解めっき層(導体回路)が形成され、触媒層に対して、触媒
層に対してマスキングしない部分は、UV照射部分と成り、触媒層は失活し、無電解めっき
層(導体回路)が形成されない。本発明は、こうして、導体回路のパターン形成を可能と
するめっき物を作製する。
【0100】
本発明の回路基板では、好ましくは、失活していない触媒層(マスキングする部分(金
属板部分))に対して、無電解めっきを行うことで、基板の上にパターンめっきを形成す
ることができる。
【0101】
前記触媒組成物によって形成された触媒層は、無電解めっきの反応性がよく、得られた
無電解めっき皮膜はむらがなく、密着性及び外観性に優れる。
【0102】
本発明の回路基板では、前記無電解めっき層は、導体回路(導通)であることが好まし
い。
【0103】
前記めっき液は、好ましくは、導体回路(導通)を形成し、銅、金、銀、ニッケル等を
用いる。前記めっき液は、好ましくは、触媒層(触媒膜)との関係から、銅又はニッケル
を含むめっき液を用いる。
【0104】
前記めっき条件は、好ましくは、触媒層(触媒膜)は無電解めっきの反応性が非常に良
好である為、めっき液の還元剤濃度やアルカリ成分濃度を高める必要がない。その為、め
っき液の寿命が長持ちし、触媒層のパターン通りにめっきが選択的に析出される。即ち、
触媒組成物から形成される触媒(触媒膜)は、パターン形成能に優れる。
【0105】
前記無電解めっき層(めっき皮膜)の厚みは、好ましくは、0.05μm~10μm程度であり
、より好ましくは、0.1μm~6μm程度である。
【0106】
無電解めっき処理で、無電解銅(Cu)めっき浴を用いる時は、その処理温度は、好まし
くは、25℃~65℃程度であり、その処理時間は、好ましくは、10分~60分程度である。こ
の無電解めっき処理により、0.3μm~3μm程度の析出膜厚を形成することができる。
【0107】
無電解めっき処理で、無電解ニッケルボロン浴を用いる時は、その処理温度は、好まし
くは、55℃~70℃程度であり、その析出速度は、好ましくは、5μm/hr(60℃)程度であ
る。
【0108】
無電解めっき処理で、無電解ニッケルりん浴を用いる時は、その処理温度は、好ましく
は、30℃~95℃程度であり、好ましくは、析出速度が浴温30℃では3μm/hr程度であり、
浴温90℃では20μm/hr程度である。
【0109】
(6)回路基板
本発明の回路基板では、前記触媒組成物は、特にABS等の基板を対象とする時に、無電
解めっきの反応性が高く、めっきまでの多層めっきに耐え得る良好な密着性を実現できる
。
【0110】
本発明の回路基板では、無電解めっきの反応性は良く、無電解めっきにおける還元剤の
濃度を高める必要が無く、また無電解めっきの反応温度を上げる必要もない。更に、また
有害な物質によるエッチング工程を必要としない。
【0111】
本発明の回路基板では、好ましくは、電子機器のプリント配線板等の表面に、触媒層を
形成し、無電解用めっきを施すための皮膜をパターン形成(露出)する。その無電解めっ
き用の皮膜(触媒層)が形成された配線板に対して、無電解めっきを行うことで、配線板
に電子回路形成用の無電解めっき皮膜を形成する。本発明の回路基板では、好ましくは、
電子機器のプリント配線板等で、無電解めっきを行うことにより金属配線回路を形成する
。
【0112】
(7)めっき物(回路基板)の製造方法
本発明のめっき物の製造方法は、
(1)基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バ
インダーを含有する触媒組成物から成る触媒層を形成する工程、
(2)前記触媒層を形成する工程の後、前記触媒層の表面にマスキング層を形成する工
程、
(3)前記マスキング層を形成する工程の後、前記触媒層及び前記マスキング層の表面
にUV照射する工程、
(4)前記UV照射する工程の後、マスキング層を除去する工程、
(5)前記マスキング層を除去する工程の後、パターン形状の無電解めっき層を形成す
る工程、を含む。
【0113】
本発明のめっき物の製造方法は、好ましくは、前記触媒層を形成する工程では、前記基
材の表面に、前記触媒層を、全面に形成する。
【0114】
本発明のめっき物の製造方法は、好ましくは、前記パターン形状の無電解めっき層を形
成する工程では、前記触媒層の表面に、前記マスキング層を形成して、前記UV照射せず、
無電解めっき層を形成することと、前記マスキング層を形成せず、前記UV照射して、無電
解めっき層を形成しないこととで、パターン形状の無電解めっき層を形成する。
【0115】
本発明のめっき物の製造方法は、好ましくは、前記基材は、基板であり、前記無電解め
っき層は、導体回路であり、回路基板である。
【0116】
・(1)基材の表面に触媒層を形成する工程
本発明のめっき物では、上記の通り、前記触媒組成物を、基材(回路基板)上に、好ま
しくは、バーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレー塗布、グラビアコ
ート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビ
アリバースロールコーティング法等の公知の手段により、塗布・乾燥させて、触媒層を形
成する。
【0117】
前記触媒層は、好ましくは、前記基材の表面の全面に形成する。
【0118】
前記触媒層の形成は、より好ましくは、基材(回路基板)上に、前記触媒組成物を、バ
ーコート法、スピンコート法、若しくはグラビアリバースロールコーティング法により塗
布し、触媒組成物を乾燥させて、触媒層を形成する。
【0119】
前記触媒層の厚みは、好ましくは、良好に無電解めっきを行い、無電解めっきの反応性
を得ることができ、基材(基板)にめっき皮膜を良好に形成することができる点から、20
μm以下程度であり、より好ましくは、0.01μm~10μm程度である。
【0120】
・(2)触媒層の表面にマスキング層を形成する工程
本発明のめっき物では、上記の通り、好ましくは、めっき回路に応じた光透過模様を有
する金属板等を用いて、触媒層の上に置くことで、光透過性が無い金属板により、めっき
回路に応じたマスキングを行うことができる
前記パターン形状及びマスク層(マスキング)は、好ましくは、めっき回路に応じた光
透過模様を有する金属板、ガラス板、フィルム等、若しくはレジスト等の樹脂をパターン
印刷し、マスクとしたものを用いる。
【0121】
・(3)触媒層及びマスキング層の表面にUV照射する工程
本発明のめっき物では、上記の通り、好ましくは、光照射に用いる光として、好ましく
は、紫外線光(UV光)を用い、基材表面に付着させた触媒組成物(触媒処理液)中の触媒
を失活させる。前記光照射に用いる光は、好ましくは、紫外線(UV光)であり、好ましく
は、波長が10nm~400nm程度、より好ましくは、波長が10nm~300nm程度、即ち可視光線よ
り短く軟X線より長い不可視光線の電磁波である。
【0122】
前記紫外線光(UV光)の光源は、好ましくは、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ
、紫外線LEDランプである。
【0123】
また、前記光源は紫外(UV)レーザーであってもよい。前記紫外(UV)レーザーは、好
ましくは、UV-YAG、DUV-YAGもしくはエキシマである。前記紫外(UV)レーザーは、より
好ましくは、DUV-YAGもしくはエキシマである。
【0124】
前記紫外線光(UV光)の積算光量は、好ましくは、1mJ/cm2~20,000mJ/cm2、より好
ましくは、1mJ/cm2~2,000mJ/cm2、更に好ましくは、1mJ/cm2~1,000mJ/cm2である。
【0125】
・(4)マスキング層を除去する工程
本発明のめっき物は、好ましくは、めっき回路に応じた光透過模様を有するマスキング
(マスキング層)を、金属板であれば、その金属板を除去すれば良い。マスキング層とし
て金属板以外、例えば、ガラス板、フィルムを使った場合も、それを除去すれば良い。
【0126】
・(5)パターン形状の無電解めっき層を形成する工程
本発明のめっき物は、好ましくは、前記触媒層の表面に、前記マスキング層を形成して
、前記UV照射せず、無電解めっき層(導体回路)を形成することと、前記マスキング層を
形成せず、前記UV照射して、無電解めっき層を形成しないこととで、基材(基板)にパタ
ーン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する。
【0127】
本発明の回路基板では、好ましくは、失活していない触媒層(マスキングする部分(金
属板部分))に対して、無電解めっきを行うことで、基板の上にパターンめっきを形成す
ることができる。
【0128】
前記触媒組成物によって形成された触媒層は、無電解めっきの反応性がよく、得られた
無電解めっき皮膜はむらがなく、密着性及び外観性に優れる。
【0129】
本発明の回路基板では、前記無電解めっき層は、導体回路(導通)であることが好まし
い。
【0130】
前記めっき液は、好ましくは、導体回路(導通)を形成し、銅、金、銀、ニッケル等を
用いる。前記めっき液は、好ましくは、触媒層(触媒膜)との関係から、銅又はニッケル
を含むめっき液を用いる。
【0131】
前記めっき条件は、好ましくは、触媒層(触媒膜)は無電解めっきの反応性が非常に良
好である為、めっき液の還元剤濃度やアルカリ成分濃度を高める必要がない。その為、め
っき液の寿命が長持ちし、触媒層のパターン通りにめっきが選択的に析出される。即ち、
触媒組成物から形成される触媒(触媒膜)は、パターン形成能に優れる。
【0132】
前記無電解めっき層(めっき皮膜)の厚みは、好ましくは、0.05μm~10μm程度であり
、より好ましくは、0.1μm~6μm程度である。
【0133】
無電解めっき処理で、無電解銅(Cu)めっき浴を用いる時は、その処理温度は、好まし
くは、25℃~65℃程度であり、その処理時間は、好ましくは、10分~60分程度である。こ
の無電解めっき処理により、0.3μm~3μm程度の析出膜厚を形成することができる。
【0134】
無電解めっき処理で、無電解ニッケルボロン浴を用いる時は、その処理温度は、好まし
くは、55℃~70℃程度であり、その析出速度は、好ましくは、5μm/hr(60℃)程度であ
る。
【0135】
無電解めっき処理で、無電解ニッケルりん浴を用いる時は、その処理温度は、好ましく
は、30℃~95℃程度であり、好ましくは、析出速度が浴温30℃では3μm/hr程度であり、
浴温90℃では20μm/hr程度である。
【0136】
本発明では、無電解めっき層を形成する工程において、無電解めっき層を形成する前に
、必要に応じて、前処理を行っても良い。前記前処理は、好ましくは、例えば、前工程後
の基材に対して、アルカリ脱脂、酸性脱脂、酸活性等の処理を施す。
【0137】
(8)めっき物(回路基板)の利用性
本発明のめっき物(回路基板)では、基材表面に前記触媒層を形成し(触媒処理液を付
着させ)、その上に前記マスキング層を形成し、パターンマスクを介して光を照射(UV照
射)する。この光照射(UV照射)により、光が当った照射部分(UV照射部分)では、触媒
金属イオンがその触媒活性を失活する。次に、前記基材を無電解めっき(例えば、浴中に
浸漬)する。触媒金属イオンとしてPd2+を例に挙げて説明する。パターンマスクされて、
光が照射されていない未照射部分(UV未照射部分)では、Pd金属が存在し、無電解めっき
される。このPd金属、即ち触媒金属の働きによって、基材表面にCu、Ni等のめっき金属が
析出し、めっき回路(導体回路)が形成される。
【0138】
パターンマスクによる光未照射部分(UV未照射部分)に、パターン形状のめっき回路が
形成される。一方、光が照射された部分(UV照射部分)は、めっき回路(導体回路)が形
成されない。
【0139】
本発明のめっき物は、特定の触媒処理液とパターンマスクと光照射とを用いることによ
って、光未照射部分の触媒活性部分(めっき回路形成部分)と、光照射による不活性部分
とに区分し、その後、触媒活性部分にめっき回路用金属を析出させて、めっき回路を形成
することかできる。
【0140】
本発明のめっき物は、従来技術と異なり、触媒層は絶縁性であることから、その触媒層
を除去すること無く、導体回路のパターン形成を可能とし、触媒層が存在しても、それ自
体が導電性を表さず、短絡しないめっき物と成る。
【0141】
本発明のめっき物は、従来技術と異なり、レジストマスクを用いる必要がない。本発明
のめっき物は、基材の種類の制限を受けることが無く、電気特性に優れるめっき回路を形
成することができる。
【実施例】
【0142】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例
に限定されない。
【0143】
<実施例1>
めっき物の製造(回路基板)
・本発明の(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを
含有する触媒組成物から成る触媒層
・メタルマスクによるマスキング
【0144】
(1)基材(基板)の表面に触媒層を形成する工程
回路基板として、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いた。はじめに、こ
のPENフィルムにコロナ処理を行った。前記コロナ処理の放電量は160W/m2/minとした。
このPENフィルムの表面に、メタロイドML-240LV(IOX社製)をバーコーターで塗工すること
により、Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成した。前記触媒層の厚みは0.4μmとした
。前記メタロイドML-240LVは、(i)Pd粒子(金属粒子)と分散剤との複合体、(ii)溶
媒、及び(iii)エポキシ樹脂(バインダー)とから構成される組成物(触媒組成物)で
ある。
【0145】
(2)触媒層の表面にマスキング層を形成する工程
前記触媒層が形成されたPENフィルムの表面にマスキング層を形成するため、メタルマ
スクを被せた。メタルマスクは、マスクの幅が0.1mmのパターンをもつ。
【0146】
(3)UV照射する工程
前記マスキング層を形成した触媒層付きPENフィルムに、高圧水銀ランプによるUV照射
を行った。積算光量は300mJ/cm2とした。
【0147】
(4)マスキング層を除去する工程
前記UV光照射処理されたマスキング層を形成した触媒層付きPENフィルムから、被せて
いたメタルマスクを取り除いた。
【0148】
(5)パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する工程
触媒層の表面で、マスキング層を形成した部分は、UV照射されず、無電解めっき層が形成される。触媒層の表面で、マスキング層を形成しない部分は、UV照射されて、無電解めっき層が形成されない。こうして、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する。
【0149】
前記UV光処理された触媒層付きフィルムを、無電解Cuめっき液(奥野製薬社製OPCカッ
パーHFS)に40℃×20分浸漬することで、UV照射されていない部分にのみCuめっきを形成
した。前記無電解Cu層の厚みは1.0μmとした。これにより、得られたサンプル(PENフィ
ルム)は、UV照射されていない部分にのみ導電層(無電解めっき層、導体回路)を有する
。
【0150】
(6)密着性の確認
前記パターン形成された導体回路に対して、テープ剥離試験を行い、基材に対する導体
回路の密着性を評価した。
【0151】
結果、実施例のめっき物では、基材に対して、導体回路部分の剥離は見られなかった。
【0152】
<実施例2>
めっき物の製造(回路基板)
・本発明の(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを
含有する触媒組成物から成る触媒層
・石英ガラス上にステンレスでパターンが形成されたマスクによるマスキング
【0153】
(1)基材(基板)の表面に触媒層を形成する工程
回路基板として、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いた。はじめに、こ
のPENフィルムにコロナ処理を行った。前記コロナ処理の放電量は160W/m2/minとした。
このPENフィルムの表面に、メタロイドML-240LV(IOX社製)をバーコーターで塗工すること
により、Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成した。前記触媒層の厚みは0.4μmとした
。前記メタロイドML-240LVは、(i)Pd粒子(金属粒子)と分散剤との複合体、(ii)溶
媒、及び(iii)エポキシ樹脂(バインダー)とから構成される組成物(触媒組成物)で
ある。
【0154】
(2)触媒層の表面にマスキング層を形成する工程
前記触媒層が形成されたPENフィルムの表面にマスキング層を形成するため、石英ガラ
ス上にステンレスでパターンが形成されたマスクを被せた。前記マスクは、マスクの幅が
0.1mmのパターンをもつ。
【0155】
(3)UV照射する工程
前記マスキング層を形成した触媒層付きPENフィルムに、高圧水銀ランプによるUV照射
を行った。積算光量は300mJ/cm2とした。
【0156】
(4)マスキング層を除去する工程
前記UV光照射処理されたマスキング層を形成した触媒層付きPENフィルムから、被せて
いた石英ガラスのマスクを取り除いた。
【0157】
(5)パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する工程
触媒層の表面で、マスキング層を形成した部分は、UV照射されず、無電解めっき層が形成される。触媒層の表面で、マスキング層を形成しない部分は、UV照射されて、無電解めっき層が形成されない。こうして、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する。
【0158】
前記UV光処理された触媒層付きフィルムを、無電解Cuめっき液(奥野製薬社製OPCカッ
パーHFS)に40℃×20分浸漬することで、UV照射されていない部分にのみCuめっきを形成
した。前記無電解Cu層の厚みは1.0μmとした。これにより、得られたサンプル(PENフィ
ルム)は、UV照射されていない部分にのみ導電層(無電解めっき層、導体回路)を有する
。
【0159】
(6)密着性の確認
前記パターン形成された導体回路に対して、テープ剥離試験を行い、基材に対する導体
回路の密着性を評価した。
【0160】
結果、実施例のめっき物では、基材に対して、導体回路部分の剥離は見られなかった。
【0161】
本発明の触媒層を用いると、マスキング技術により、その触媒層は絶縁性と成り、良好
に、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を提供できる。本発明のマスキング
技術により、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成することができ、より微
細な回路配線を形成するめっき物(回路部品、回路基板)を作製することができると、評
価できる。
【0162】
<比較例1>
めっき物の製造(回路基板)
・従来技術の触媒層
・メタルマスクによるマスキング
【0163】
(1)基材(基板)の表面に触媒層を形成する工程
回路基板として、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを用いた。はじめに、
このPETフィルムにコロナ処理を行った。前記コロナ処理の放電量は160W/m2/minとした
。このPETフィルムを触媒層付与液(奥野製薬社製キャタリストC-7)に35℃×3分浸漬し
た後、活性化促進剤溶液(奥野製薬社製アクセレーターX)に35℃×3分浸漬することによ
り、触媒層を形成した。
【0164】
(2)触媒層の表面にマスキング層を形成する工程
前記触媒層が形成されたPETフィルムの表面にマスキング層を形成するため、メタルマ
スクを被せた。前記マスクは、マスクの幅が0.1mmのパターンをもつ。
【0165】
(3)UV照射する工程
前記マスキング層を形成した触媒層付きPETフィルムに、高圧水銀ランプによるUV照射
を行った。積算光量は300mJ/cm2とした。
【0166】
(4)マスキング層を除去する工程
前記UV光照射処理されたマスキング層を形成した触媒層付きPETフィルムから、被せて
いたメタルマスクを取り除いた。
【0167】
(5)パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する工程
前記UV光処理された触媒層付きフィルムを、無電解Cuめっき液(奥野製薬社製OPCカッ
パーHFS)に40℃×20分浸漬したところ、基材の全面に無電解銅めっき層が形成された。
前記無電解Cu層の厚みは1.0μmとした。これにより、得られたサンプル(PETフィルム)
は、UV照射されている部分、UV照射されていない部分のどちらにも導電層(無電解めっき
層、導体回路)を有する。
【0168】
従来技術の触媒層では、その触媒層は絶縁性と成らず、導電層を形成し、良好に、パタ
ーン形状の無電解めっき層を形成することが出来ない。