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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】真空断熱材用外装材
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/065 20060101AFI20220425BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20220425BHJP
   B65D 81/20 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
F16L59/065
B32B7/027
B65D81/20 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2016187997
(22)【出願日】2016-09-27
(65)【公開番号】P2018053949
(43)【公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-08-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
(72)【発明者】
【氏名】上村 光佑
【合議体】
【審判長】林 茂樹
【審判官】槙原 進
【審判官】平城 俊雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183718(JP,A)
【文献】特許第3482408(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/077197(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側から順に、基材フィルム、ガスバリア層及びシーラント層を積層して構成され、かつナイロンフィルムを使用しない真空断熱材用外装材において、
前記基材フィルムがポリブチレンテレフタレートを50重量%以上、ポリエチレンテレフタレートを1~50重量%含む単層構造の二軸延伸フィルムであり、
前記二軸延伸フィルムのMD方向の引張強度とTD方向の引張強度とが、いずれも、150MPa以上であることを特徴とする真空断熱材用外装材。
【請求項2】
前記ガスバリア層が、金属箔、金属又は無機酸化物を蒸着した樹脂フィルムのいずれかから成ることを特徴とする請求項に記載の真空断熱材用外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫や低温コンテナあるいは住居の外壁材などに取り付けられる真空断熱材の真空断熱材用外装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫や低温コンテナあるいは住居の外壁材などには、従来から種々の断熱材が用いられており、特に、断熱性能の優れた断熱材として、コア材2を外装材1内に封入し、内部を真空排気して外装材1をヒートシールすることにより密封した構成の真空断熱材Aが使用されている(図2参照)。
【0003】
この外装材1は、外部からのガスの侵入を防ぎ、内部を長期間真空状態に保持するために、ガスバリア性に優れたものである必要がある。そこで、従来、高いガスバリア性を持たすために、外装材1のガスバリア層として7~15μm程度の厚さの金属アルミニウム箔や金属又は無機物を蒸着した蒸着フィルムを含む積層フィルムが主として用いられてきた。
【0004】
このように断熱材Aはコア材2を外装材1で真空包装して構成されるため、外装材1はコア材2の外形に沿って変形する。このため、図2に示すように、外装材1には微細な凹凸が多数形成され、この凹凸によって屈曲される。外装材1中の金属アルミニウム箔や蒸着層は、この微細な多数の屈曲によりクラックやピンホールが発生し、ガスバリア性が著しく低下するという問題があり、長期間に亘って断熱材Aの内部を真空状態に保っておくことが難しかった。
【0005】
このクラックやピンホールの発生の低減化をはかり、外装材1の内部の真空状態を長期に渡って維持する試みが行われている。例えば、層構成が、外側から順に、第1の延伸ナイロンフィルム、第2の延伸ナイロンフィルム、金属箔等からなるガスバリア層、熱溶着層であり、前記第1、第2の延伸ナイロンフィルム間に接着層が設けられている外装材1があった(特許文献1)。これら延伸ナイロンフィルムは強靭であるため、前述のような微細な屈曲によってもクラックやピンホールを発生することがないのである。
【0006】
しかしながら、これら2枚の延伸ナイロンフィルムを使用しても、真空断熱材Aの角部xにおいてはこれら延伸ナイロンフィルムが引き延ばされて、アルミニウム箔や蒸着層にクラックやピンホールが発生することを確実に防ぐことはできず、この結果、外装材1の内部を真空状態に保っておくことが困難であるという問題を残していた。また、これら延伸ナイロンフィルムは吸湿し易く、このため、真空断熱材Aを製造する前に煩雑な乾燥工程を必要とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3482408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、煩雑な乾燥工程を要することなく、しかも、真空断熱材Aの角部xを含めて、クラックやピンホールの発生を防ぐことができる真空断熱材用外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、外側から順に、基材フィルム、ガスバリア層及びシーラント層を積層して構成され、かつナイロンフィルムを使用しない真空断熱材用外装材において、
前記基材フィルムがポリブチレンテレフタレートを50重量%以上、ポリエチレンテレフタレートを1~50重量%含む単層構造の二軸延伸フィルムであり、
前記二軸延伸フィルムのMD方向の引張強度とTD方向の引張強度とが、いずれも、150MPa以上であることを特徴とする真空断熱材用外装材である。
【0014】
次に、請求項に記載の発明は、前記ガスバリア層が、金属箔、金属又は無機酸化物を蒸着した樹脂フィルムのいずれかから成ることを特徴とする請求項に記載の真空断熱材用外装材である。
【発明の効果】
【0015】
ポリブチレンテレフタレートは吸水性が小さい樹脂である。しかも、ゲルボフレックステストで良好な性質を示すことからも分かるように、局部的な力や伸びに対する耐性が高い。このため、後述する実施例から分かるように、本発明に係る外装材を使用してコア材を真空包装した場合、その角部を含めて、このポリブチレンテレフタレートを含む50重量%以上含む二軸延伸フィルムには、クラックやピンホールがほとんど発生しない。このため、本発明に係る外装材は、煩雑な乾燥工程を要することなく真空断熱材で使用することができ、しかも、クラックやピンホールの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)及び図1(b)は、それぞれ、本発明の外装材の例を示す断面説明図である。
図2図2は断熱材の例に係り、図2(a)はその斜視説明図、図2(b)はその断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る外装材は、コア材を真空包装して断熱材を製造する際に使用するもので、完成した真空断熱材の外面を構成する。
【0018】
この外装材は、その外側から順に、基材フィルム、ガスバリア層及びシーラント層を積層して構成される。基材フィルムは単一のフィルムから成る単層構造を有していてもよいし、複数のフィルムを積層した多層構造を有していてもよい。基材フィルムが単層構造を有する場合には、この基材フィルムはポリブチレンテレフタレート(PBT)を50重量%以上含む二軸延伸フィルム(二軸延伸PBT系フィルム)で構成されている必要がある。また、基材フィルムが多層構造を有する場合でも、この基材フィルムを構成する複数のフィルムのうち、少なくとも1枚のフィルムは二軸延伸PBT系フィルムである必要がある。なお、この二軸延伸PBT系フィルムには、インキ被膜や真空蒸着膜を設けたフィルムを使用することができる。
【0019】
前述のように、真空断熱材Aは、コア材を外装材内に封入し、外装材をヒートシールすることにより密封して構成するから、二軸延伸PBT系フィルムは、外装材の最外層、すなわち、基材フィルムの最外層に位置していることが望ましい。二軸延伸PBT系フィルムは、二軸延伸されているために耐熱性と強靭性とを有しており、これを最外層に配置することにより、ヒートシールの際に外装材1がヒートシールバーやヒートシールロール等に付着することを防止できるからである。
【0020】
基材フィルムが多層構造を有する場合、二軸延伸PBT系フィルムと共に使用できる他のフィルムは任意のフィルムでよいが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(二軸延伸PETフィルム)が好適に使用できる。あるいは、二軸延伸PBT系フィルムを複数枚積層して多層構造としたフィルムであってもよい。
【0021】
このような基材フィルムを使用した外装材の例を示すと、図1(a)~図1(b)に示すような層構成を有するものが例示できる。図1(a)は基材フィルム11を単一のフィルムで構成したもので、このフィルムは二軸延伸PBT系フィルム11aで構成されている。二軸延伸PBT系フィルム11aとして、真空蒸着膜等を設けた二軸延伸PBT系フィルム11aを使用できるのは前述のとおりである。そして、この外装材1は、基材フィルム11(11a)の一方の面に、ガスバリア層12とシーラント層13とをこの順に積層して構成されたものである。
【0022】
次に、図1(b)は、基材フィルム11を2層構成としたものである。基材フィルム11を構成する2枚のフィルムのうち、最外面を構成するフィルムは二軸延伸PBT系フィルム11aで構成されている。また、その内側のフィルム(内側フィルム)11bは二軸延伸PETフィルム又は二軸延伸PBT系フィルムで構成されている。これら二軸延伸PBT系フィルム11aや内側フィルム11bとして、真空蒸着膜等を設けた前記フィルムを使用することも可能である。そして、この外装材1においても、基材フィルム11(11a)の一方の面に、ガスバリア層12とシーラント層13とがこの順に積層されている。
【0023】
ところで、PBTフィルムは、一般に、その高い結晶化速度の影響により二軸延伸が困難である。そこで、PBTにPETを配合してその結晶化速度を抑制することにより、二軸延伸することが可能となる。PETの配合量を増やすにつれて結晶化速度抑制効果が向上するが、フィルムの柔軟性が失われる。このため、PETの配合量は1~50重量%であることが望ましい。PET含有量が1重量%未満の場合には、結晶化速度抑制効果が不十分で、二軸延伸が困難である。一方、50重量%を越えると二軸延伸PBT系フィルム11aの柔軟性が失われ、このため、本発明の外装材1を使用してコア材を真空包装する際、ピンホール等が発生することがある。
【0024】
なお、この二軸延伸PBT系フィルム11aには、PETの他に、滑剤、アンチブロッキング剤、無機増量剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、結晶化抑制剤、結晶化促進剤等の添加剤を配合することができるが、これら添加剤を配合した場合であっても、PBTの含有量は50重量%以上である必要がある。PBTの含有量が50重量%未満の場合には、本発明の外装材1を使用してコア材を真空包装する際、ピンホール等が発生することがある。
【0025】
また、このように真空包装の際にピンホール等の発生を防止するため、この二軸延伸PBT系フィルム11aのMD方向の引張強度とTD方向の引張強度とは、いずれも、150MPa以上であることが望ましい。
【0026】
この二軸延伸PBT系フィルム11aは、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法のいずれも方法によっても製造することができる。同時二軸延伸法としては、例えばチューブラー方式やテンター方式が挙げられる。その延伸倍率は、MD方向とTD方向のそれぞれについて、2.7~4.5倍の範囲であることが好ましい。引張強度が100MPa以下の未延伸PBT系フィルムを、MD方向とTD方向の延伸倍率を2.7~4.5倍の範囲で二軸延伸することにより、MD方向の引張強度とTD方向の引張強度とが150MPa以上のフィルムを製造することができる。
【0027】
次に、この二軸延伸PBT系フィルム11aの厚みは10~100μmであることが望ましい。10μm未満の場合にはその強靭性が不十分である。また、100μm以上である必要がなく、これより厚いフィルムはコストアップにつながる。
【0028】
なお、前述のように、この二軸延伸PBT系フィルム11aは、その表面に真空蒸着膜を設けて使用することができるが、その真空蒸着膜としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の蒸着膜を例示できる。前述のように、二軸延伸PBTフィルムは吸湿しにくいため、蒸着工程における寸法安定性に優れている。
【0029】
次に、ガスバリア層12は、真空断熱材Aの内部に外気が侵入することを防止する機能を有するものである。このガスバリア層12としては、例えば、金属箔、金属又は無機酸化物を蒸着した樹脂フィルムを使用できる。金属箔としては、その代表例としてアルミニウム箔を例示することができる。また、樹脂フィルム上に蒸着する金属や無機酸化物としては、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を挙げることができる。蒸着基材となる樹脂フィルムは任意の材質でよいが、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(EVOHフィルム)を好ましく使用できる。EVOHフィルムはそれ自体酸素バリア性を有するが、水分で酸素バリア性が低下する。このEVOHフィルムに金属蒸着膜又は無機酸化物蒸着膜を設けることにより、水分によるEVOHフィルムの劣化を防ぐと共に、さらに酸素バリア性を向上させることができる。
【0030】
次に、シーラント層13は融点80~300℃のシーラント樹脂を使用することができるが、コア材を真空包装することから、真空下でアウトガスを発生しないものが好ましい。この理由から、スリップ剤や低分子量成分の少ないシーラント樹脂が望ましい。スリップ剤の配合量は500~4000ppmの範囲にあることが望ましい。
【0031】
このようなシーラント樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を例示できる。また、フッ素系シーラント樹脂を使用することも可能である。
【0032】
そして、これら基材フィルム11、ガスバリア層12、シーラント層13は、公知のウレタン系接着剤を使用してドライラミネートすることにより、積層一体化することができる。基材フィルム11が多層構造を有する場合にも、基材フィルム11を構成する各フィルムをドライラミネートすることにより積層一体化することができる。
【実施例
【0033】
(実施例1)
基材フィルム11として単層構造の二軸延伸PBT系フィルム11aを使用した。この二軸延伸PBT系フィルム11aは、PBTにPETを混合して二軸延伸したもので、P
BT含有量は50重量%以上、PET含有量は30重量%以下である。また、厚みは15μmで、MD方向の引張強度は240MPa、TD方向の引張強度は230MPaである。
【0034】
また、ガスバリア層12としては、厚み7μmの8021材アルミニウム箔を使用した。
【0035】
シーラント層13としては、厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製;SE620N)を使用した。
【0036】
そして、これら基材フィルム11、ガスバリア層12、シーラント層13をドライラミネートして一体化することにより、実施例1の外装材1を製造した。
【0037】
(実施例2)
基材フィルム1として2層構造のフィルムを使用した。
【0038】
基材フィルム1を構成する2枚のフィルムのうち、外装材1の最外層を構成するフィルムは二軸延伸PBT系フィルム11aである。この二軸延伸PBT系フィルム11aは、PBTにPETを混合して二軸延伸したもので、PBT含有量は50重量%以上、PET含有量は30重量%以下である。また、厚みは15μmで、MD方向の引張強度は240MPa、T方向の引張強度は230MPaである。
【0039】
また、基材フィルム1を構成する2枚のフィルムのうち、他方のフィルム(内側フィルム)11bは、酸化ケイ素蒸着膜を設けた二軸延伸PETフィルム(凸版印刷(株)製:GL-RD)で、その厚さは12μmである。
【0040】
次に、ガスバリア層12としては、アルミニウム蒸着膜を設けたEVOHフィルム(クラレ(株)製:TM-XL)を使用した。厚さは15μmである。
【0041】
また、シーラント層13としては、実施例1と同様に、厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製;SE620N)を使用した。
【0042】
そして、これら二軸延伸PBT系フィルム11a、内側フィルム11b、ガスバリア層12、シーラント層13をドライラミネートして一体化することにより、実施例2の外装材1を製造した。
【0043】
(実施例3)
基材フィルム1として、酸化ケイ素蒸着膜を設けた二軸延伸PBT系フィルム11aから成る単層構造のフィルムを使用した。酸化ケイ素蒸着膜の厚さは500nmである。また、二軸延伸PBT系フィルム11aは、PBTにPETを混合して二軸延伸したもので、PBT含有量は50重量%以上、PET含有量は30重量%以下である。また、厚みは15μmで、MD方向の引張強度は240MPa、T方向の引張強度は230MPaである。
【0044】
次に、ガスバリア層12及びシーラント層13としては実施例2と同じものを使用した。すなわち、ガスバリア層12にはアルミニウム蒸着膜を設けたEVOHフィルム(クラレ(株)製:TM-XL,厚さ15μm)を使用した。また、シーラント層13には直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製;SE620N,厚さ50μm)を使用した。
【0045】
そして、これら基材フィルム11、ガスバリア層12、シーラント層13をドライラミネートして一体化することにより、実施例3の外装材1を製造した。
【0046】
(比較例1)
この例は、基材フィルム1として二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)を使用した例である。
【0047】
ガスバリア層12及びシーラント層13としては実施例1と同じものを使用した。すなわち、ガスバリア層12には厚み7μmの8021材アルミニウム箔を使用した。また、シーラント層13には直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製;SE620N,厚さ50μm)を使用した。
【0048】
そして、これら基材フィルム11、ガスバリア層12、シーラント層13をドライラミネートして一体化することにより、比較例1の外装材1を製造した。
【0049】
(比較例2)
この例は、基材フィルム1として、酸化ケイ素蒸着膜を設けた二軸延伸ナイロンフィルム(凸版印刷(株)製:GL-AEY,厚さ15μm)を使用した例である。
【0050】
次に、ガスバリア層12及びシーラント層13としては実施例2と同じものを使用した。すなわち、ガスバリア層12にはアルミニウム蒸着膜を設けたEVOHフィルム(クラレ(株)製:TM-XL,厚さ15μm)を使用した。また、シーラント層13には直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製;SE620N,厚さ50μm)を使用した
そして、これら基材フィルム11、ガスバリア層12、シーラント層13をドライラミネートして一体化することにより、比較例2の外装材1を製造した。
【0051】
(評価)
これら実施例1~3、比較例1~2の外装材に対して5項目の評価を行った。
【0052】
まず、その耐湿性の評価である。この評価は3つの観点から行った。すなわち、まず、これら外装材を40℃、90RH%の条件下で24時間保管した後、外装材がカールするか否かの評価(カール性評価)を行った。カールが発生したものを「×」とし、カールが発生しなかったものを「○」として、その結果を表1に示す。
【0053】
次に、こうして40℃、90RH%の条件下で24時間保管した外装材を使用して、コア材を真空包装して、その生産作業性を評価した(生産作業性評価)。カールのために良品率が低下したものを「×」とし、そうでないものを「○」として、その結果を表1に示す。
【0054】
次に、こうして40℃、90RH%の条件下で24時間保管した外装材を80℃、0RH%の条件下で保管・乾燥して、その重量が安定するまでの時間(乾燥時間)を測定した。この結果も表1に示す。
【0055】
次に、これら外装材を使用し、グラスウールをコア材として、このグラスウールを真空包装して製造したA4サイズの断熱材を製造し、その物性を評価した。この評価は2つの観点から行った。まず、ピンホールの数である。次に、この断熱材を80℃で一ヶ月保管した後、その熱伝導率を測定した(断熱性評価)。比較例1の熱伝導率を100として、各断熱材の熱伝導率の相対値を表1に示す。なお、この値が小さい方が断熱性に優れている。
【0056】
【表1】
【0057】
この結果から、二軸延伸PBT系フィルムを使用した外装材(実施例1~3)は、ナイロンフィルムを使用した外装材(比較例1~2)に比べて、耐湿性が優れており、煩雑な乾燥工程を要することなく、断熱材の製造工程に供することができると理解できる。しかも、吸湿によるカールが少ないから、その歩留まりも向上する。
【0058】
また、二軸延伸PBT系フィルムを使用した外装材(実施例1~3)を使用して断熱材を製造すると、ナイロンフィルムを使用した外装材(比較例1~2)を使用した断熱材に比べて、ピンホールの数が少なく、長期間に亘って断熱材の内部を真空状態に保っておくことができると理解できる。
【符号の説明】
【0059】
1:外装材
11:基材フィルム 11a:二軸延伸PBT系フィルム 11b:内側フィルム
12:ガスバリア層
13:シーラント層
2:コア材
A:断熱材
図1
図2