(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】細菌バイオポリマーを含み、特有の外観を有する染色布帛を製造する方法
(51)【国際特許分類】
D06M 15/05 20060101AFI20220425BHJP
D06M 15/15 20060101ALI20220425BHJP
D06M 15/70 20060101ALI20220425BHJP
D06M 23/16 20060101ALI20220425BHJP
D06P 1/22 20060101ALI20220425BHJP
D06P 3/82 20060101ALI20220425BHJP
C12N 1/12 20060101ALN20220425BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20220425BHJP
C12P 1/04 20060101ALN20220425BHJP
C12P 13/04 20060101ALN20220425BHJP
C12P 19/04 20060101ALN20220425BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20220425BHJP
【FI】
D06M15/05
D06M15/15
D06M15/70
D06M23/16
D06P1/22
D06P3/82 Z
C12N1/12 C
C12N1/20 A
C12P1/04 Z
C12P13/04
C12P19/04 C
C12P21/02 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017044147
(22)【出願日】2017-03-08
【審査請求日】2020-01-14
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】イトカ イルマズ
(72)【発明者】
【氏名】オナー ユッケレン
(72)【発明者】
【氏名】オズギュル シバノグル
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-040872(JP,A)
【文献】特開平09-279483(JP,A)
【文献】特開2007-063709(JP,A)
【文献】特開2009-102755(JP,A)
【文献】特開2010-004784(JP,A)
【文献】国際公開第2008/020187(WO,A1)
【文献】特開平08-100374(JP,A)
【文献】特開昭50-116776(JP,A)
【文献】特開平06-322676(JP,A)
【文献】特開平02-080680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M10/00-16/00
19/00-23/18
D06P1/00-7/00
C12N1/00-7/08
C12P1/00-41/00
D06B1/00-23/30
D06C3/00-29/00
D06G1/00-5/00
D06H1/00-7/24
D06J1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 少なくとも複数の縦糸ヤーン(2)及び少なくとも複数の横糸ヤーン(3)を供給すること;
b. 前記少なくとも複数の縦糸ヤーン(2)及び前記少なくとも複数の横糸ヤーン(3)を製織して、表面(5)及び裏面(6)を有する織布(1)を供給すること;
c. 複合織布(10)を提供するために、前記ヤーン(2)(3)上または前記織布(1)の少なくとも片側の少なくとも一部に、微生物によって生産される少なくとも1つのバイオポリマー
の層(4)を提供すること;
d. 前記複合織布(10)の少なくとも一部を染色して、前記ヤーン(2)(3)の少なくとも一部を、前記バイオポリマー層(4)と一緒に染色すること;
e. 前記バイオポリマーの層(4)の少なくとも一部を、前記複合織布(10)から除去して、処理布(100)を得ることを含む処理布(100)を製造する方法。
【請求項2】
前記少なくとも一層のバイオポリマー層(4)の少なくとも一つの厚さ(T)は、前記バイオポリマー層(4)の全体に亘って不均一である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一つのバイオポリマー層(4)の少なくとも一部は、不連続層である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
微生物によって生産される前記バイオポリマー層(4)は、糖-ベースバイオポリマー、好ましくは細菌および/または藻類によって生産されるセルロース、及びアミノ酸-ベースバイオポリマー、好ましくは細菌によって生産されるコラーゲン、又はそれらの混合物である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程cは、織布(1)の上に前記バイオポリマー層(4)を形成することによって、工程bの後に実施されるか、前記織布を製織する前に、前記バイオポリマー層(4)を、前記ヤーンの上に形成することによって、工程bの前に実施される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記織布(1)は、別個に製造されたバイオポリマー層(4)と結合される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記織布(1)の一部又は少なくともヤーン(2)(3)の一部と、バイオポリマーを生産する微生物の培養物(200)とを接触させる工程と、
少なくとも前記織布(1)の一部又は少なくともヤーン(2)(3)の一部に前記バイオポリマー層(4)を提供するために、前記バイオポリマーを生産する微生物を培養する工程とを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記バイオポリマーを生産する微生物の培養物(200)は、前記織布(1)の少なくとも一部、好ましくは前記織布(1)の表面(5)の少なくとも一部に散布される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオポリマーを生産する微生物の培養物(200)は、メッシュワイヤー(300)を介して、前記織布(1)の少なくとも一部に散布される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記織布(1)の少なくとも一部、又は前記ヤーン(2)(3)の少なくとも一部を、バイオポリマーを生産する微生物の培養物の中に浸漬することによって、前記織布(1)の少なくとも一部、又は前記ヤーン(2)(3)の少なくとも一部を、バイオポリマーを生産する微生物の培養物(200)と接触させる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオポリマーを生産する微生物であるバイオポリマー生産性微生物は、バイオポリマー生産細菌、バイオポリマー生産藻類、及びこれらの混合物から選択され、前記バイオポリマー生産細菌は、好ましくは、Gluconacetobacter,Aerobacter,Acetobacter,Achromobacter,Agrobacterium,Azotobacter,Salmonella,Alcaligenes,Pseudomonas;Rhizobium,Sarcina,Streptoccoccus及びBacillus genus,並びにそれらの混合物から選択され、かつバイオポリマー生産性藻類は、好ましくは、Phaeophyta,Rhodophyta及びChrysophyta,及びそれらの混合物から選択される、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記織布(1)は、前記織布(1)の面(5)(6)の少なくとも一つの上に、ループ部分の形状の前記織布(1)の追加の層を形成する複数の縦糸ヤーン(2)及び/又は複数の横糸ヤーン(3)を含み、かつ前記追加の層の少なくとも一部は、前記バイオポリマー層(4)に含まれる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記縦糸ヤーン(2)及び/又は横糸ヤーン(3)は、天然ヤーン、合成ヤーン、及び混合ヤーンから選択され、かつ前記天然ヤーンは、コットン、ウール、亜麻、ケナフ、ラミ、大麻、及びそれらの混合物から選択された天然繊維を含んでおり、前記合成ヤーンは、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ライクラ(登録商標)、及びそれらの混合物から選択された合成繊維を含んでおり、前記混合ヤーンは、天然繊維及び合成繊維の両方を含んでいる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記織布(1)はデニム布帛である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記工程dは、プリント捺染、インディゴ染色、前記複合織布の染色浴への浸漬から選択され、好ましくは染料はインディゴ染料である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記工程eは、洗濯による洗浄、及び/又は前記少なくとも一つのバイオポリマー層(4)を、前記複合織布(10)から摩耗させるものである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
染色ヤーン及び染色バイオポリマー層の部分を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法によって得た処理布(100)。
【請求項18】
請求項17に記載の処理布(100)を含む衣料品。
【請求項19】
前記処理布(100)が衣料品に製織された場合、前記処理布(100)の表面(5)は、外から見える面であり、前記処理布(100)の裏面(6)は、内側にあって見えない面である、請求項18に記載の衣料品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特有の外観を有する布帛を製造する方法、前記方法によって製造された布帛、及び前記布帛を含む衣料物品、即ち、衣料品に関する。特に、本発明は、特有の外観、例えば、「使用済み」(即ち;使い古した)、又は「多様な形状」外観を有している織布を製造する方法に関し、この方法は、細菌バイオポリマーの使用を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
使い古した衣服、特にデニムは、ファッション産業として、また遊び心をもったものとして人気がある。その理由は、生地に仕上げ処理を施して、多様な外観を作りだし、生地の表面、即ち、その生地で製造された物品を着用した時に視認される表面に、様々な視認効果を付与するからである。実際、デニム業界は、生地に特有の外観を付与する多種多様な生地の仕上げに関する創造性に、大いに依存している。
【0003】
生地の外観、及びその生地で製造された衣料品は、種々の仕上げ技術を適用することによって、修飾・変化させられている。
【0004】
「使用済み」又は「ビンテージ」或いは「使い古した」外観をもつ生地は、通常、衣料品又は生地に適用される仕上げ方法で処理して製造することができる。従来の仕上げ方法では、ストーンウォッシュ、酸ウォッシュ、レーザー処理、又はサンドブラスト等の特定の薬品又は機械摩耗方法を使用している。例えば、ストーンウォッシュの場合、生地を、軽石の入った洗濯槽で洗濯する。洗濯槽が回転する間に、生地は石と接触して、ヤーン繊維の部分に含まれている染料は除去される。
【0005】
この場合、布帛、及び、特にインディゴで染めた着用済み布帛を使用すると、インディゴ染料が、ヤーンの表面に移行し、染められていないヤーンのコアーを分離し、ストーンウォッシュ(又はサンドブラスト)仕上げ処理を施すと、インディゴで染めたヤーンの未染色コアーの量が変化し、眼に見えるようになる。
【0006】
これら多様な仕上げ処理によって、多種多様な、目立つ効果、特に、着古した外観を発揮し、衣料及び繊維産業において、織布を、ファッショナブルにしている。然しながら、従来の仕上げ処理による目立つ効果には、限界がある。そのため、別々の製造業者が製造した衣料品が、互いに似ていることがあり、製品の市場価値、及び他の製造業者の製品との差別化は低減していた。
【0007】
従来のストーンウォッシュの欠点は、石が生地を損傷することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2013/0048140号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0038042号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、前述した諸課題を解決して、「特有の外観」を備える布帛の製造方法を提供することである。ここで、「特有の外観」とは、従来とは異なる外観を意味する。即ち、従来の仕上げ処理では、達成できなかった改良された「使用済」又は「ビンテージ」或いは「着古した」ような外観、特に、従来の処理方法では得ることができなかった独特の着古した外観を意味している。
【0010】
本発明が解決しようとする別の課題は、市場で望まれ、認知され、かつ他の製品と容易に見分けがつく「特有の外観」を有する布帛の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする、さらに別の課題は、製造又は仕上げ処理の間、ヤーン及びヤーンで製造された布帛への損傷を、実質的に防止するか、または低減する方法を提供することである。本発明が解決しようとする、さらに別の課題は、従来の仕上げ工程における環境保護コストを低減させるか、又は防止し、かつ、従来の仕上げ工程よりも低コストの仕上げ方法を提供することである。
【0012】
これら、及びそれ以外の課題は、請求項1に記載の方法によって達成され、その結果、請求項17に記載した布帛を製造する方法、即ち、請求項19に記載の衣料品を製造するための適当な布帛を製造する方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特に本発明は、下記の工程を含む布帛を製造する方法に関する:
a. 少なくとも複数の縦糸ヤーンと、少なくとも複数の横糸ヤーンを提供すること;
b. 前記少なくとも複数の縦糸ヤーンと、前記少なくとも複数の横糸ヤーンを織って、表面及び裏面を有している織布を提供すること;
c. 前記ヤーン又は前記織布の少なくとも一方の面の少なくとも一部に、少なくとも1つの細菌バイオポリマーの少なくとも1つの層を提供し、複合布帛を提供すること;
d. 前記複合布帛の少なくとも一部を染色し、前記布帛ヤーンの少なくとも一部を前記細菌バイオポリマー層と一緒に染色すること;
e. 前記細菌バイオポリマーの前記層の少なくとも一部を、前記複合布帛から除去して、処理された布帛を製造すること。
【0014】
好ましい態様は、従属請求項に記載してある。
【0015】
例示した態様では、工程dの後で、工程eの前に、布帛が製造される。即ち、衣料品に仕立てられ、仕上げ工程が、布帛又は布帛を含む衣料品に適用される。以下の記載において、少なくとも仕上げ工程に関する限り、保護範囲は、布帛のみの処理に限定するものではなく、「布帛」は衣料品と同じとみなす。実際、請求項1に記載した方法は、衣料品に対して実施することができる。従って、請求項1は、衣料品の状態の布帛の処理を包含する。
【0016】
本発明による方法によって「処理された布帛」、即ち、仕上げ処理後の織布を、改良された(即ち「特有の」)審美的効果をもったものとすることができる。得られた布帛、即ち「処理」された布帛は、「多重色合い」効果を発揮する。即ち、従来の仕上げ工程では得られなかった「多重色合い」外観を発揮する。特に、発現された「多重色合い」効果は、特徴的な外観、好ましくは、「使用済み」又は「着古した」外観を有しており、再生産不可能な分布による布帛(従って、布帛を含む衣料品)全体に分散された複数の色の色合いを含んでいて、別の布帛から同じ色合いの分布を得ることは不可能である。
【0017】
特定の科学的説明に拘束されることなく、以下に説明する。細菌バイオポリマー層は、生きている微生物から生産されるので、別の細菌バイオポリマー層とは、たとえそれが、同じ微生物によって、同じ条件で生産されたとしても、構造が同じではない。従って、2種類の異なる細菌バイオポリマー層により、細菌バイオポリマー層自体及び細菌バイオポリマー層を結合した布帛(又はヤーン)は異なる染色結果を提供することとなる。
【0018】
上述したように、本発明による方法によって、「処理された布帛」、即ち、仕上げ処理後「特有」の審美的効果を有する織布を得ることができる。換言すれば、本発明による方法によって「処理された」2つの布帛は、異なる審美的効果を発揮する。即ち、カラー色合い」が同じ分布を有する布帛が再現されることはない。従って、本発明による方法によって製造された「処理された布帛」は、実質的に「特有」の審美的効果、即ち、実質的に「再現不可能」な審美的効果を発揮する。
【0019】
染色された複合布帛から、細菌バイオポリマー層の少なくとも一部を除去した後に得られる本発明の処理された布帛は、細菌バイオポリマー層により吸収され、かつ基布である織布における染料の量に応じて、複数の色合いを示す。
【0020】
このことは、好ましい態様において、前記少なくとも一つの細菌バイオポリマー層の厚さ「T」が、細菌バイオポリマー層の全体に亘って均一でない場合、即ち、細菌バイオポリマー層の厚さが、全体に亘って同じでない場合に、特に言えることである。
【0021】
特定の科学的説明に拘束されることなく説明すると、本発明の方法における工程cで得られ、かつ、請求項に記載した細菌バイオポリマー層を有する布帛が吸収する染料は、細菌バイオポリマー層の厚さの変化に関係して、変化することが観察された。
【0022】
特に、厚さTが厚くなるほど、細菌バイオポリマー層の染料吸収量、即ち、細菌バイオポリマー層によって吸収される染料の量は多くなり、かつ、ヤーンに達する染料の量は少なくなること、及び細菌バイオポリマー層を有するヤーンを染めることが観察された。換言すれば、例えば、複合布帛が、不均一(即ち「不定」)の厚さを有している細菌バイオポリマー層を含んでいる場合、種々の量の染料が、細菌バイオポリマー層の厚さに応じて、織布の下地表面(例えば、表面)に達し、布帛ヤーンは、異なる領域で、種々の量の染料を吸収することが観察された。
【0023】
本発明による複合布帛の細菌バイオポリマー層の厚さ「T」と、細菌バイオポリマー層を有する織布に達する染料の量は反比例する。換言すれば、細菌バイオポリマー層の厚さが厚くなるほど、細菌バイオポリマー層を有する織布に達する染料の量は、少なくなる。例えば、本発明による複合布帛の細菌バイオポリマー層の厚さが厚い場合、細菌バイオポリマー層によって吸収される染料の量が多くなり、極く僅か(又は、ゼロ)の量の染料が、細菌バイオポリマー層を有する織布に達する。従って、細菌バイオポリマー層を除去した後、僅かに着色されたか(即ち、より明るい色合いで着色されたか)、又は実質的に非着色の処理布帛が得られる。
【0024】
逆に、たとえば、細菌バイオポリマー層の厚さ「T」が薄い場合、細菌バイオポリマー層によって吸収される染料の量は少なくなる。従って、細菌バイオポリマー層を有する織布の表面(即ち、たとえば、前面)に達する染料の量は、多くなる。従って、細菌バイオポリマー層を除去した後、強く着色された(即ち、より濃い色合いに着色された)処理布帛が得られる。
【0025】
本発明で使用する用語「厚さ」は、何かの物品の上面と下面、又は表面と裏面の間の距離、例えば、細菌バイオポリマー層の上面と下面の間の距離である。細菌バイオポリマー層の下面は、布帛又はヤーンと接触している細菌バイオポリマー層の表面である。細菌バイオポリマー層の上面は、細菌バイオポリマー層の表面で、前記底面と対向していて、布帛又はヤーンと接触していない表面である。
【0026】
本発明で使用する用語「均一厚さ」は、実質的に一定の厚さ(実質的に変化していない厚さ)を意味する。例えば、細菌バイオポリマー層の上面及び底面の間の距離が、細菌バイオポリマー層の長さに沿って、実質的に変化していないことを意味する。
【0027】
逆に、本発明で使用する用語「不均一厚さ」は、変化する厚さを意味する。例えば、細菌バイオポリマー層の上面及び底面の間の距離が、細菌バイオポリマー層の長さに沿って、変化している(即ち、一定でない)ことを意味する。
【0028】
好ましい態様では、前記細菌バイオポリマー層の少なくとも一部は、不連続層である。
【0029】
例えば、細菌バイオポリマー層は、不連続層でよい。即ち、細菌バイオポリマー層は、その全面に沿って、中断していてもよい。この場合、たとえば、不連続部分をもった細菌バイオポリマー層を有する布帛又はヤーンは、その表面(例えば、製織布の表面)に、細菌バイオポリマー層によって「被覆」されていない部分がある。例えば、(本発明の工程cで得られるような)複合布帛は、その細菌バイオポリマー層が不連続、すなわち、細菌バイオポリマー層を有する布帛が、その全面に亘って切断部があると有利である。その場合、バイオポリマー層で「被覆されていない」部分を備えている。従って、本発明の工程cによって、複合布帛を染めた場合、細菌バイオポリマー層で「被覆されていない」織布部分は、完全に、かつ「直接」に染色される。換言すれば、織布の「被覆」されていない部分では、染料が、織布に直接適用される。
【0030】
複合布帛が、不連続な細菌バイオポリマー層を含んでいる場合、模様又は柄のように(以下、「パターン化された」という)多重色合い」効果をもって染色された布帛を得ることができるので有利である。
【0031】
換言すれば、本発明による不連続な細菌バイオポリマー層は、「不連続部分」が予め決められた「パターン化された」分布を示し、前述したように、織布が「完全」及び「直接」染色され、予め決められたパターン化処理された布帛を提供する。従って、本発明の工程cによって、細菌バイオポリマー層が、一旦除去されると、「多重色合い」効果を有し、かつ、「完全染色され」、パターン化された分布を有する処理布帛を得ることができる。逆に、織布が、細菌バイオポリマー層を備えている場合、染色後、一旦細菌バイオポリマー層を除去すると、前記で規定した多重色合い効果を有する部分が製造される。換言すれば、複合布帛が染色される時、細菌バイオポリマー層が「ステンシル」として機能する。
【0032】
本発明の態様によると、織布の製織パターンの変化は、更なる視覚効果を発揮する。事実、製織パターンは、最終外観に寄与することが観察された。
【0033】
好ましい態様においては、細菌バイオポリマー層は、不均一、かつ不連続層である。換言すれば、本発明による細菌バイオポリマー層の厚さは変化し、その全表面に亘って、不連続部分を有している。
【0034】
本発明の好ましい態様によると、織布は、少なくとも表面及び/又は裏面に、少なくとも1枚の細菌バイオポリマー層を備えている。
【0035】
本明細書等で、布帛に使用する用語「表面」は、布帛を含む衣料品を製織した場合の外側の可視面を意味する。
【0036】
本明細書等で、布帛に使用する用語「裏面」は、布帛を含む衣料品を製織した場合の内側の不可視面を意味する。
【0037】
本発明の態様において、織布は、表面及び裏面に、少なくとも1層の細菌バイオポリマー層を有している。
【0038】
例えば、本発明による織布は、2枚の細菌バイオポリマー層、即ち、前記織布の表面の第1の細菌バイオポリマー層、及びその裏面の第2の細菌バイオポリマー層を有しており、織布及び2枚の細菌バイオポリマー層を含む複合布帛を提供する。
【0039】
例示的な態様として、第1の細菌バイオポリマー層(表面)及び第2の細菌バイオポリマー層(裏面)は、同じか又は異なる細菌バイオポリマー層を含んでいてもよい。
【0040】
本明細書等で使用する用語「細菌バイオポリマー層」、「細菌ポリマー層」、「細菌層」及び「ポリマー層」は、少なくとも1枚の細菌バイオポリマー層を含む層の意味である。
【0041】
本明細書等で使用する用語「細菌バイオポリマー」及び「細菌ポリマー」は、微生物によって生産される全てのポリマーの意義である。ここで、用語「微生物」は、遺伝子修飾されていない(即ち、野生型)微生物、及び遺伝子修飾された微生物を包含している。例えば、微生物は、遺伝子的修飾されて、細菌バイオポリマーを生産する。然し、当該生産される細菌バイオポリマーは、微生物が同じでも、遺伝子修飾されていない微生物(即ち、野生型微生物)による場合には生産されない。
【0042】
本明細書で使用する用語「微生物」は、小さな単細胞又は多細胞生物で、非常に微少であるため、肉眼での観察は不可能で、顕微鏡下での観察が可能である、バクテリア、酵母、糸状菌、ウイルス、及び藻類を包含している。前述したように、用語「微生物」は、遺伝子修飾されていない(即ち、野生型)微生物、及び遺伝子修飾された微生物を含んでいる。
【0043】
本明細書において、バイオポリマーに関して、「細菌バイオポリマー」と包括し、簡略化して総称するが、本発明の請求の範囲を制限することなく、「細菌」が生産したポリマーだけではなく、上記で定義した全ての微生物が生産した全てのポリマーを包含するものである。
【0044】
本発明の一態様によると、細菌バイオポリマー層は、糖-ベースバイオポリマー、又はアミノ酸-ベースバイオポリマー、又はそれらの混合ポリマーを含んでいる。
【0045】
本明細書において使用する用語「糖-ベースバイオポリマー」は、線状及び分枝ポリサッカライド、それらの変性体、及びそれらの誘導体を包含している。糖-ベースバイオポリマーの例は、細菌セルロースである。
【0046】
本明細書等において使用する用語「アミノ酸-ベースバイオポリマー」は、線状及び分枝ポリペプタイド、それらの変性体、及びそれらの誘導体を包含している。アミノ酸-ベースバイオポリマーの例は、細菌コラーゲンである。
【0047】
好ましい態様において、前記細菌バイオポリマー層は、細菌セルロース、細菌コラーゲン、細菌セルロース/キチンコポリマー、細菌シルク、及びそれらの混合物から選択された細菌バイオポリマーを含んでいる。これらのバイオポリマー自体は、当業界において周知である。
【0048】
例えば、本発明による細菌バイオポリマー(例えば、細菌セルロース)は、細菌バイオポリマーを生産する微生物、好ましくは、細菌、藻類、酵母、糸状菌、及びそれらの混合物を培養して生産される。
【0049】
例えば、細菌コラーゲンの層は、織布の表面に提供され、細菌セルロースの層は、織布の裏面に提供される。
【0050】
本発明の実施例においては、細菌バイオポリマー-生産性微生物は、Gluconacetobacter,Aerobacter,Acetobacter,Achromobacter,Agrobacterium,Azotobacter,Salmonella,Alcaligenes,Pseudomonas;Rhizobium,Sarcina,Streptoccoccus及びBacillus genus,及びそれらの混合物から選択される。本発明の実施例においては、細菌バイオポリマー-生産性藻類は、Phaeophyta,Rhodophyta及びChrysophyta,及びそれらの混合物から選択される。
【0051】
例えば、細菌セルロ-スは、Aerobacter xylinumの菌株のようなAcetobacter細菌の菌株を培養することにより、及び/又はGluconacetobacter hanseniiの菌株のようなGluconacetobacterの菌株を培養することにより製造することができる。
【0052】
例えば、細菌コラーゲンは、Bacillus、Pseudomonas、Streptoccoccusの細菌菌株、又はコラーゲンを生産する修飾菌株を得るために遺伝子修飾された細菌菌株を培養することによって生産される。例えば、Acetobacter xylinumの菌株のようなAcetobacter細菌の菌株を培養すること、及び/又はGluconacetobacter hanseniiの菌株のようなGluconacetobacterの菌株を培養することによって製造することができる。
【0053】
細菌コラーゲンを布帛に生産し、擬革様材料(「皮(又は革)」又は「スキン」の主要構成成分が、強靱なフィブリル形状のI型コラーゲンである「人造皮革」又は、「人造皮膚」)を得ると有利である。例えば、細菌セルロース/キチンコポリマーは、予め遺伝子修飾されたAcetobacter xylinumの菌株を培養して、細菌セルロース/キチンコポリマーを生産する修飾された菌株を得ることにより、生産することができる。
【0054】
本発明の例示的な態様によれば、細菌バイオポリマーを生産する微生物は、野生型及び遺伝子修飾された微生物の混合物である。
【0055】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の方法の工程cは、少なくとも複数の縦糸ヤーンの少なくとも一部、及び/又は少なくとも複数の横糸ヤーンの少なくとも一部、又は織布の少なくとも一部と、細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物を接触して、前記細菌バイオポリマーを生産する微生物を培養し、細菌バイオポリマー層を備えている前記少なくとも複数の縦糸ヤーンの少なくとも一部、及び/又は前記少なくとも複数の横糸ヤーンの少なくとも一部、又は織布の少なくとも一部を提供することによって実施される。
【0056】
換言すれば、本発明の方法の工程cによる複合布帛は、布帛に直接「成長」(即ち、生産)された細菌バイオポリマー層を有する織布を提供することによって得ることができる。
【0057】
例えば、本発明による複合布帛は、織布の表面及び/又は裏面を、細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物と接触し、前記細菌バイオポリマーを生産する微生物を培養することによって、有利に得ることができる。より詳細に述べると、一旦、織布を細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物と接触させ、細菌バイオポリマーを生産する微生物を培養し、細菌バイオポリマーの層を、直接布帛に製造し、本発明の方法の工程cによって、複合布帛が提供される。
【0058】
本発明の態様によると、本発明の工程aで提供された少なくとも複数の縦糸ヤーンの少なくとも一部、及び/又は少なくとも複数の横糸ヤーンの少なくとも一部は、工程bによる製織工程前に、細菌バイオポリマー層を備えている。
【0059】
たとえば、細菌バイオポリマー層(例:細菌セルロース層)、好ましくは、薄い細菌バイオポリマー層(例:細菌バイオポリマーの「フィルム」)は、コットンヤーンに直接成長させることができる。
【0060】
製織前に、ヤーン(縦糸及び/又は横糸ヤーン)に提供された細菌バイオポリマー層は、サイジング剤として機能し、従って、製織工程の間、ヤーンを保護するので有利である。
【0061】
更に、ヤーンに提供された細菌バイオポリマーは、製織工程後、ヤーンがダメージを受けないように保護する。
【0062】
更に、細菌バイオポリマー層(例:細菌バイオポリマーフィルム)が、縦糸及び/又は横糸ヤーンに、直接、成長(即ち:生産)させられるとき、製織前に、ヤーンのサイジング工程を省略すること、及び、製織後の、湯通し(デ-サイジング)工程を省略することができ、従って、製造コストを低減させることができる。
【0063】
例示的な態様によって、本発明の工程aで提供された少なくとも複数の縦糸ヤーンの少なくとも一部、及び/又は少なくとも複数の横糸ヤーンの少なくとも一部は、細菌バイオポリマー層を有しており、工程bによる製織工程前に染色される。
【0064】
例えば、本発明による細菌バイオポリマー(例えばバクテリアセルローズレイヤー)は、前記ヤーンと、細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物と接触し、製織前に、前記細菌バイオポリマーを生産する微生物を培養することによって、ヤーンに生産(即ち、成長)され、「複合ヤーン」が提供される。
【0065】
本発明の態様により、「複合ヤーン」は製織されて、バイオポリマーを備える織布が提供され、次いで染色される。或いは、又は付加的に、複合ヤーンは、製織工程前に染色される。
【0066】
例示的な態様により、細菌バイオポリマー層は、布帛にバイオポリマー層を、成長即ち、製造すること、又は、別々に製造された織布と細菌バイオポリマー層とを結合することによって、工程cにより織布に提供される。
【0067】
例えば、別々に製造された細菌バイオポリマー層は、ラミネート加工によって織布と結合される。例えば、架橋法によって、細菌バイオポリマーを、織布に結合する。他の例示的態様では、細菌バイオポリマー層が、織布の表面及び/又は裏面に縫い付けられる。
【0068】
本発明の態様によって、細菌バイオポリマー層は、製造及び溶解され、次いで、ヤーンおよび/又は織布は、溶解したバイオポリマーと接触させられ、本発明の工程cにより、複合布帛として提供される。
【0069】
好ましい態様によると、本発明の工程cは、織布(又は製織する前の、ヤーンの少なくとも一部)を、細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物と接触させ、前記細菌バイオポリマーを生産する微生物を培養し、細菌バイオポリマー層を備える織布を提供し、複合布帛を得ることによって実施される。
【0070】
前述したように、織布(又は、製織する前のヤーンの少なくとも一部)に、細菌バイオポリマーを製造(即ち、成長)することによって、前述したように、不均一な細菌バイオポリマー層を得ることができるので有利である。
【0071】
本発明の例示的な態様によると、製織布帛(または、製織する前のヤーン)は、布帛(又はヤーン)を、細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物に浸漬することによって、細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物と接触させられる。
【0072】
換言すれば、本発明の例示的な態様によって、織布の少なくとも一部、又はヤーン(例:製織する前のヤーン)の少なくとも一部は、前記織布の少なくとも一部、又は前記ヤーンの少なくとも一部を、前記細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物の中に浸漬することによって、細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物と接触させられる。
【0073】
織布を、細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物の中に浸漬すると、細菌バイオポリマー層は、両面(即ち、織布の表面及び裏面)で成長し、織布が、同じバイオポリマーを含む2枚の細菌バイオポリマー層を備える複合布帛が製造されるので有利である。
【0074】
他の例示的な態様によれば、細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物を、前記織布の少なくとも一部(又は、製織する前のヤーンの少なくとも一部)、好ましくは、前記織布の表面の少なくとも一部に散布する。
【0075】
他の例示的な態様によれば、細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物を、前記織布の少なくとも一部に、メッシュワイヤーを通して散布する。
【0076】
細菌バイオポリマーを生産する微生物の培養物を、メッシュワイヤーを通して、前記織布の少なくとも一部に散布すると、前述したように、織布に、不連続、かつ不均一に、細菌バイオポリマー層が、成長即ち製造されるので有利である。
【0077】
好ましくは、一旦、細菌バイオポリマーが織布に成長したら、メッシュワイヤーを除去する。細菌バイオポリマーが織布に成長した後に、メッシュワイヤーを除去すると、明確なパターンをもった細菌バイオポリマー層を得ることができるので有利である。
【0078】
本発明の態様により、溶解したバイオポリマーが、織布の少なくとも一部、好ましくは、前記織布の表面の少なくとも一部に散布され、本発明の工程cによって、複合布帛が製造される。溶解したバイオポリマーを、メッシュワイヤーを通して、前記織布の少なくとも一部に散布することにより、前記で規定したように、不連続(均一又は不均一)な細菌バイオポリマー層を得ることができるので有利である。
【0079】
本発明の好ましい態様においては、縦糸ヤーン及び/又は横糸ヤーンは、親水性ヤーンである。
【0080】
縦糸ヤーン及び/又は横糸ヤーンが親水性の場合、細菌バイオポリマーを生産する微生物の培地が、(製織前の)ヤーン又は布帛に吸収され、織布に直接細菌バイオポリマー層を合成するための微生物及び成分に栄養素を提供するので有利である。
【0081】
本発明の態様によると、親水性ヤーンは天然ヤーン、即ち天然繊維で製造されたヤーンである。
【0082】
好ましくは、天然ヤーンは、コットン、ウール、亜麻、ケナフ、ラミ、大麻、及びそれらの混合物から選択された天然繊維を含んでいる。
【0083】
本発明の態様によると、親水性ヤーンは、合成ヤーン、即ち合成繊維で製造されたヤーンである。
【0084】
好ましくは、合成ヤーンは、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ライクラ(登録商標)、及びそれらの混合物から選択された合成繊維を含んでいる。好ましい態様によって、合成ヤーン及び/又は合成繊維は、処理(即ち、表面処理)され、親水性を有する合成ヤーン及び/又は合成繊維にされる。
【0085】
例えば、それ自体親水性でない合成ヤーン、及び/又は合成繊維を親水化剤で処理して、親水性の特徴を付与することが出来る。本発明の態様においては、親水性ヤーンは、混合ヤーン、即ち、天然及び合成繊維の両方を含んでいる。この場合、親水性混合ヤーンは、例えば、親水性天然繊維及び疎水性合成繊維を混合することによって製造することができる。
【0086】
本発明の態様においては、縦糸ヤーン及び/又は横糸ヤーンは、天然ヤーン、合成ヤーン、及び混合ヤーンから選択される。好ましい態様においては、縦糸ヤーン及び/又は横糸ヤーンは、天然ヤーンである。好ましくは、天然ヤーンは、コットン、ウール、亜麻、ケナフ、ラミ、大麻、及びそれらの混合物から選択された天然繊維を含んでいる。
【0087】
本発明の別の態様においては、縦糸ヤーン及び/又は横糸ヤーンは合成ヤーン、好ましくは熱可塑性ヤーン、より好ましくは、熱可塑性エラストマーヤーンである。合成ヤーンは、好ましくはポリエステル、レーヨン、ナイロン、ライクラ(登録商標)、及びそれらの混合物から選択された合成繊維を含んでいる。
【0088】
本発明の例示的な態様においては、製織布帛の縦糸ヤーン及び/又は横糸ヤーンは混合ヤーン、即ち、天然繊維及び合成繊維の両方を含んでいる。本発明の例示的な態様において、天然繊維及びヤーンは、硬質繊維及びヤーンである。本発明の例示的な態様において、合成繊維及びヤーンは、エラストマー繊維及びヤーンである。
【0089】
適当なエラストマーヤーンは、エラストマー繊維を含んでいるヤーンである。「エラスマー繊維」は、クリンプ無しで、少なくとも100%の破断点伸びを有している連続フィラメント又は複数のフィラマントで製造された繊維である。破断伸びは、例えば、ASTM D 2256/D2256M-10(2015)に従って測定される。「エラスマー繊維」は、クリンプ無しで、少なくとも100%の破断点伸びを有している連続フィラメント又は複数のフィラマントで製造された繊維である。破断伸びは、その長さを2倍に伸ばし、かつ、その長さを1分間維持した後、離してから1分間、その本来の長さの1.5倍未満に収縮する繊維である。
【0090】
好ましい態様によれば、本発明において使用に適する織布は、一緒に織られた縦糸ヤーン及び横糸ヤーンを含んでおり、表面及び裏面を有しており、前記縦糸ヤーン及び少なくとも複数本の横糸ヤーンが、前記織布の基布層を形成し、かつ、複数の縦糸ヤーン及び/又は少なくとも複数本の横糸ヤーンが、前記織布の両面の少なくとも一方の面に、ループ部分の追加の層を形成するものでる。
【0091】
本発明の例示的な態様によれば、本発明の方法において、「織布」として使用に適する布帛構造は、特許文献1(特に、[0007]、[0010]、[0013]~[0018]、[0041]~[0046]、[0048]~[0050]、[0054]~[0059]、及び実施例1,3~8及び10を参照)、及び特許文献2(特に、[0013]、[0019]‐[0027]、[0030]、[0031]、[0033]、[0049]~[0051]、[0054]、[0055]、[0060]、[0066]、[0068]~[0071]、[0075]、[0076]、[0078]~[0083]、[0086]、[0089]~[0117]を参照)に記載されている。これらの記載は、参照用として、本明細書等に組み込まれるものとする。
【0092】
好ましい態様においては、前記ループ部分の追加の層の少なくとも一部は、例えば、細菌バイオポリマー層に含まれており、例えば、埋入されている。例示的態様においては、本発明の複合布帛は、本出願人による、発明の名称を「細菌バイオポリマー層を含む複合布帛」とする同時継続出願に開示されている。
【0093】
本発明の好ましい態様において、製織生地はデニム生地である。
【0094】
本発明の好ましい態様においては、本発明の方法の工程dは、プリント捺染、好ましくは、インディゴプリント捺染によって、又は複合布帛を、染槽(好ましくは、インディゴ槽)に浸漬することにより実施される。
【0095】
最良の結果は、染料を、細菌バイオポリマー(例:細菌セルロース)が成長している布帛の面にだけに適用するプリント捺染、すなわちダイ-コーティングによって得ることができる。従って、細菌バイオポリマー(例:細菌セルロース)がバリヤーとして機能するこの方法によって、特有の視覚効果を得ることができる。然しながら、非常に良好な結果は、布帛を、インディゴ浴に浸漬し(布帛の両面を染色し)、細菌バイオポリマー(例:細菌セルロース)を除去する洗浄処理の間だけ、色合い変化が出現する従来のインディゴ染色法によって得ることができる。此処で、再び次のことを説明しておく。細菌セルロースの厚さが重要な役割を担っている。細菌バイオポリマー(例:細菌セルロース)の厚さが厚くなればなるほど、染料が、それぞれの繊維の中心まで浸透する量が少なくなる。その結果、浅しぼりリング効果が観察され、逆に厚さが薄い場合、リング効果は深くなる。これにより、特に洗浄処理の間に、全体に亘って視覚的色彩変化が生成される。
【0096】
好ましくは、工程cで得た複合布帛を、プリント捺染で染色する場合、プリント捺染は、複合布帛において、細菌バイオポリマー層が形成されている面に実施される。
【0097】
この場合、プリント捺染工程の間、細菌バイオポリマー層は、バリヤーとして機能し、細菌バイオポリマー層の下地である織布が損傷しないように保護し、かつ、織布に大量の染料が浸透しないように保護するので有利である。例えば、前述したように、細菌バイオポリマー層の厚さ、及び/又はパターン(即ち、連続又は不連続パターン)に依存して、織布に達し、かつ、浸透する染料の量は変化する。
【0098】
本発明の態様においては、工程dは、前記複合布帛を、インディゴ染料、硫黄染料、ピグメント染料、反応性染料から成る群から選択された染料で染色することによって実施される。選択された染料を付与する好ましい方法は、プリント捺染である、プリント捺染を適用する場合、バット(VAT)、直接、反応性等、如何なる染色法も適用することができうる。
【0099】
例示的な態様によれば、本発明の方法の工程eは、仕上げ処理、例えば、リンス洗浄、酵素洗浄、ストーン洗浄、レーザー処理等、並びに洗濯による洗浄等によって実施され、前記複合布帛から、前記少なくとも1枚の細菌バイオポリマー層を、少なくとも部分的に除去し、本発明に従って処理された布帛が製造される。
【0100】
換言すれば、染色された複合布帛を、化学薬品を使用せずに、水で洗浄、例えば、洗濯による洗浄によって、細菌バイオポリマーを、少なくとも部分的に、複合布帛から除去することができる。本発明の方法の工程eは、前記少なくとも1枚の細菌バイオポリマー層の少なくとも一部を、前記複合布帛から剥離することによって実施される。
【0101】
換言すれば、複合布帛から細菌バイオポリマー層を除去して、処理された布帛を得るには、細菌バイオポリマー層を剥離(即ち、「ラビング、「スクレーピング」)して、バイオポリマー層にダメージを与え、布帛にはダメージを与えずに、実質的にすべてのバイオポリマー層を除去することによって、実施される。
【0102】
本発明の好ましい態様によれば、工程eは、工程dで得た前記染色した複合布帛を、ストーン洗浄することによって実施される。
【0103】
工程dで得た複合布帛をストーン洗浄、即ち、軽石の存在下で複合布帛を洗浄することによって、バイオポリマー層の下地である織布にダメージを与えず、細菌バイオポリマー層を効果的、かつ、迅速に除去することができるので有利である。従って、布帛の引っ張り強度等の機械的健全性及び物性には、悪影響(即ち、低減又は減衰)を与えず、「多重色合い」効果を有する処理布帛が提供される。
【0104】
好ましい態様においては、工程eは、工程dで得た前記染色された複合布帛を、バイオ-ストーンニングすることによって実施される。
【0105】
好ましい態様によって、本発明の方法の工程dで得た複合布帛のバイオ-ストーンニング、即ち、複合布帛を、複合布帛から細菌バイオポリマー層を除去することができる酵素の存在中で洗浄すると、引っ張り強度等布帛の機械的健全性及び物性には悪影響(即ち、低減又は減衰)を与えず、「多重色合い」効果を有する処理布帛が提供され、かつ、化学薬品及び汚染物質の使用が排除される。
【0106】
本発明の態様によると、工程eは、本発明の工程dで得た複合布帛を含む衣料品を、洗濯による洗浄、及び/またはストーン洗浄、及び/またはバイオ-ストーンニングすることによって実施することができる。
【0107】
本発明の実施において、工程eは、レーザー処理でも実施しうる。
【0108】
本発明の他の目的は、本発明の方法によって得られる処理布帛にある。
【0109】
有利なことに、本発明の方法によって得た処理布帛は、「多重色合い」効果、即ち、従来の仕上げ工程では得ることができなかった「多重色合い」外観を示す。
【0110】
特に、前述したように、「多重色合い」効果は、複数の色の陰影を含んでおり、同じ色合いの分布を、或る布帛から別の布帛へ再現することが不可能な再現不可能パターンで、布帛全体(及び布帛を含む衣料品全体)に分布されている。
【0111】
本発明の一つの特徴によると、処理布帛の「多重色合い」効果は、細菌バイオポリマー層の厚さ、及び/又はパターン(連続又は不連続)に依存しており、本発明の方法の工程cに従って、非処理織布に付与される。
【0112】
例えば、「非処理」織布は、細菌バイオポリマー層を有しており、複合布帛を提供する。その後、複合布帛は染色される。次いで、細菌バイオポリマー層の少なくとも一部は、染色複合布帛から除去され、「多重色合い」効果を有する処理布帛が提供される。
【0113】
前述したように、処理布帛の「多重色合い」効果は、細菌バイオポリマー層の厚さ及び/又はパターン(即ち、連続又は不連続)に依存する。
【0114】
例えば、細菌バイオポリマー層の厚さTは、概略、3つの異なる値、即ち、T1、T2及びT3を有しており、T3>T2>T1である。
【0115】
この場合、厚さがT3の細菌バイオポリマー層の染料の吸収量は、厚さがT2の細菌バイオポリマー層の染料の吸収量よりも多く、さらに、厚さがT1の細菌バイオポリマー層の染料の吸収量よりも多い。従って、一定量の染料が、厚さがT1の細菌バイオポリマー層の下地である織布に達した場合、低量の染料が、細菌バイオポリマー層の厚さがT2の織布に達し、更に低量の染料が、細菌バイオポリマー層の厚さがT3の織布に達する。この場合、3つの異なる色合いをもった処理布帛を得ることができる。
【0116】
上述した例は、単に、概説であるということに留意されるべきである。実際、本発明の処理布帛は、「多重色合い」をもった外観を有している。即ち、本発明の処理布帛は、染料が、細菌バイオポリマー層の全体に亘って、様々な状態で浸透しているので、多種多様の色合いを示している。
【0117】
本発明による処理布帛は、染色されたヤーン、及び染色されたバイオポリマー層の部分を含んでいる。換言すれば、本発明の複数の態様において、本発明の方法によって得た処理布帛は、残留細菌バイオポリマー部分、即ち、細菌バイオポリマー層が、完全には除去されていない部分を含んでいる。
【0118】
本発明の更なる目的は、本発明の方法で得られる処理布帛を含む衣料品である。
【0119】
本発明の好ましい態様によって、衣料品が製織された場合、処理布帛の表面は、外側の可視面であり、他方、衣料品が製織された場合、処理布帛の裏面は、内側の不可視面である。
【0120】
本発明の別の目的は、本発明の方法で得られる複合布帛を含む衣料品である。好ましくは、本発明の工程b又は工程cの後に、前記布帛は衣料品に仕立てられる。
【0121】
本発明の態様によって、衣料品が、本発明の工程c又は工程dで得られた複合布帛を含んでいる場合、「多重色合い」効果は、細菌バイオポリマー層の少なくとも一部を衣料品から除去することによって、即ち、複合布帛が、衣料品の製造のために使用された後で、細菌バイオポリマー層の少なくとも一部を複合布帛から除去することによって、得ることができるので有利である。
【発明の効果】
【0122】
本発明によって、「特有の外観」、即ち、従来の仕上げ処理では達成できなかった改良された「使用済」、又は「ビンテージ」、或いは「着古した」ような外観を呈し、特に、従来の処理方法では得ることができなかった独特の着古した外観を備える布帛が、製造又は仕上げ処理の際に、ヤーン及びヤーンで製造された布帛への損傷を、実質的になくすか、または低減し、かつ、従来の仕上げ工程の環境保護コストを低減するか、又は防止し、かつ、従来の仕上げ工程より低コストの仕上げ方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
以下、本発明の特徴及び利点を、添付した図面を参照して、より詳細に説明する。
【
図1】本発明の方法の工程cを実施する前の本発明による例示的な織布、即ち、非処理織布の一部を示す斜視図。
【
図2】本発明の方法の工程cの後で得られる、本発明による複合織布、即ち、細菌ポリマー層を備えた織布の一部を示す斜視図。
【
図3】本発明の方法の工程dの後で得られる、本発明による例示的な複合織布、即ち、染色された複合布帛の一部を示す斜視図。
【
図4】本発明の方法によって得られる処理布帛の例示的態様の斜視図。
【
図5】本発明の方法によって得られる処理布帛の例示的態様の斜視図。
【
図6】本発明の方法によって得られる処理布帛の例示的態様の斜視図。
【
図7】本発明の方法によって得られる処理布帛の例示的態様の斜視図。
【
図8】細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物を、メッシュワイヤーを通して、例示的な織布に散布している本発明の態様を示す斜視図。
【
図9】不連続な細菌バイオポリマー層を備えた、本発明による例示的な織布の一部を示す斜視図。
【
図10】染色工程後、不連続な細菌バイオポリマー層を備えた、本発明による例示的な織布の一部を示す斜視図。
【
図11】本発明の方法によって得た処理布帛の例示的態様を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0124】
本発明の特徴として、処理布帛は、実質的に、非処理布帛(即ち、本発明の方法の工程c、d、及びe前の織布)と同じである。換言すれば、本発明の方法は、実質的に、本発明の方法が適用される織布の構造を変化させることはない。
【0125】
従って、本発明の態様において、「織布」1(即ち、本発明の方法の工程c、d、及びeの前の布帛)及び「処理布帛」100(即ち、本発明の方法の工程eの後の布帛)は、本発明の方法の前後で同じ布帛である。
【0126】
換言すれば、処理布帛は、本発明に従って、既に処理された後の織布である。
【0127】
図1は、本発明の方法の工程cを実施する前の本発明による例示的な織布、即ち、非処理織布の一部を示す斜視図である。
【0128】
図1は、織布1で、縦糸ヤーン2及び横糸ヤーン3、及び表面5、並びに裏面6を備えている。横糸ヤーン3及び縦糸ヤーン2は、或るパターンで製織されており、横糸ヤーン3は、布帛の表面5の上、及び裏面6における1本の縦糸ヤーン2の下で、2本の縦糸ヤーン2の上を通過している。
【0129】
添付図に示す製織パターンは、単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。実際、如何なる種類の製織パターンでも、本発明の特許請求の範囲に包含される。前述したように、製織パターンは、最終の外観に寄与する。
【0130】
【0131】
図2は、本発明の方法の工程cの後で得られる例示的な複合織布10の一部を示す斜視図である。織布1は、表面5に細菌バイオポリマー層4を備えており、複合織布10となっている。
【0132】
図2は、織布1の裏面6も示している。この場合、織布1の裏面6は、複合織布10の裏面に対応している。
【0133】
図2において、細菌バイオポリマー層4は、連続及び均一層として、模式的に示してある。即ち、細菌バイオポリマー層4は、織布1の表面5を連続的(即ち、中断無く)被覆しており、かつ全面に亘って、実質的に、同じ厚さTを維持している。
【0134】
本発明の好ましい態様においては、細菌バイオポリマー層4は、織布1に直接製造される。即ち、細菌バイオポリマー層4は、細菌バイオポリマー生産性微生物を、織布1の上で直接培養することによって製造される。
【0135】
例えば、織布1を、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物と接触させ、織布1の上で、直接、培養することができる。織布1の上で、微生物を直接培養することにより、織布1の上で、細菌バイオポリマー層4を成長(即ち、製造)させることができる。
【0136】
本発明の態様において、細菌バイオポリマー層4は、不均一層である。即ち、細菌バイオポリマー層4は、その全面に亘って変化する厚さTを有している。
【0137】
本発明の態様において、細菌バイオポリマー層4は、不連続層、即ち、断続層であり、織布1において、細菌バイオポリマー層4を有していない(即ち、被覆されていない)部分を有している。
【0138】
図3は、本発明の方法の工程dで得られる、即ち、染色された本発明による例示的な複合織布10の一部を示す斜視図である。
図3は、特に、染色した後の、細菌バイオポリマー層4を示している。
図2と同じように、細菌バイオポリマー層4は、連続及び均一層として模式的に示してある。即ち、細菌バイオポリマー層4は、織布1の表面5を連続的(即ち、中断無く)に被覆し、かつその全面に亘って、実質的に、同じ厚さTを有している。然しながら、前述したように、本発明の態様において、細菌バイオポリマー層4は、不連続及び/又は不均一である。
図3には、織布1の裏面6も示してある。この場合、織布1の裏面6は、複合織布10の裏面に対応する。
【0139】
図4は、本発明の方法によって得られた処理布100、即ち、細菌バイオポリマー層4の少なくとも一部が、複合織布10から除去された例示的態様の斜視図である。
【0140】
図4は、縦糸ヤーン2及び横糸ヤーン3,及び表面5及び裏面6を有する処理布100を示している。横糸ヤーン3及び縦糸ヤーン2は、パターン製織されており、横糸ヤーン3は、布帛の表面5において、2本の縦糸ヤーン2の上を通過し、裏面2において、1本の縦糸ヤーン2の下を通過している。
【0141】
図4は、細菌バイオポリマー層4が、複合織布10、例えば、織布1の表面5から、完全に除去された態様を模式的に示している。
【0142】
図4に示す態様では、処理布100は、その表面5において、強く着色された第1部分7、僅かに着色された(即ち、第1部分7より明るい色合いで染色された)第2部分8、及び実質的に着色されていない、即ち染色されていない第3部分9を有している。
【0143】
図4は、第1部分7が、処理布100の表面5の大部分を被覆している態様を示している。
図4の処理布100は、第1部分7に比べて明るい色合いで着色された第2部分8、及び実質的に染色されていない第3部分9を有している。
【0144】
従って、
図4に示す処理布100は、実質的に、濃く染色されており、かつ、明るい色合いの部分、並びに染色されていない部分を示していて、概ね「ライト-オン-ダーク」の色合い効果、即ち「ライト-オン-ダーク」着古し外観効果を発揮している。
【0145】
図4は、本発明による処理布100を、単に、模式的に示すものである。実際、本発明の処理布100は、「多重色合い」外観を有している。即ち、処理布100は、染料が、細菌バイオポリマー層4の全体に亘って、即ち、細菌バイオポリマー層4の厚さT方向に、完全に浸透しているので、様々な色合いを示している。
【0146】
このことは、細菌バイオポリマー層4の厚さTが、不均一、即ち、細菌バイオポリマー層4の全範囲において厚さが同じでないこと、換言すれば、細菌バイオポリマー層4の異なる部分で、厚さTが異なる値を有する本発明の態様において、特に言えることである。
【0147】
実際、複合織布10が、多様な厚さTをもつ細菌バイオポリマー層4の場合、複合織布10が吸収する染料の量は、細菌バイオポリマー層4の厚さTの変化に応じて変化する。
【0148】
特に、厚さTが増加するほど、細菌バイオポリマー層4が吸収する染料の量は多くなる。換言すれば、複合織布10が、様々な厚さTを有する細菌バイオポリマー層4を示している場合、様々な量の染料が、細菌バイオポリマー層4の全体に沿って、厚さTの変化に応じて、織布1の表面(即ち、例えば、表面5)に達する。
【0149】
例えば、細菌バイオポリマー層4の厚さTが大きい場合、極く僅かの量(又は零)の染料が、織布1の表面(即ち、例えば、表面5)に達し、僅かに着色された第2部分8及び/又は、実質的に着色されていない、即ち、染色されていない第3部分9を備える処理布100が提供される。
【0150】
逆に、例えば、細菌バイオポリマー層4の厚さTが小さい場合、大量の染料が、織布1の表面(即ち、例えば表面5)に達し、濃く着色された第1部分7を備える処理布100が提供される。
【0151】
本発明の好ましい態様によって、織布1の上で、直接、細菌バイオポリマー層4を成長させると、様々な厚さTを有する細菌バイオポリマー層4を得ることができる。
【0152】
例えば、(本発明の方法の工程eに従って除去された)細菌バイオポリマー層4が、第1部分7に相当する値T1、第2部分8に相当する厚さT2>T1、及び第3部分9に相当する厚さT3>T2>T1を有する厚さTを有している場合、
図4に示す処理布100を得ることができる。この際、
図4に示すように、細菌バイオポリマー層4の厚さTがT3である場合、実質的に全ての染料が、細菌バイオポリマー層4に吸収される。換言すれば、染料は、織布1の表面(例、表面5)に実質的に達しないので、実質的に着色されていない第3部分9を有する処理布100が形成される。更に、細菌バイオポリマー層4の厚さTがT2の場合、染料の極く僅かの部分が、織布1の表面、例えば、表面5に達し、僅かに着色された第2部分8をもつ処理布100が形成される。更に、細菌バイオポリマー層4の厚さTがT1の場合、実質的に全ての染料が、織布1の表面(例、表面5)に達し、濃く着色された第1部分7をもつ処理布100が形成される。
【0153】
従って、
図4に示したような処理布100は、概ね、染色されており、かつ、染色されていない部分(即ち、第3部分9)、及びより明るい色合いの部分(即ち、第2部分8)を示し、「ライト-オン-ダーク」色合い効果、即ち「ライト-オン-ダーク」調の着古し外観を呈する。
【0154】
図5は、本発明の方法、即ち、細菌バイオポリマー層4の少なくとも一部を、複合布から除去した後に得られる処理布100の例示的な態様の斜視図である。
【0155】
図5は、縦糸ヤーン2及び横糸ヤーン3、及び表面5、並びに裏面6を有する処理布100を示している。横糸ヤーン3及び縦糸ヤーン2は、パターンに製織されており、横糸ヤーン3は、布の表面5において、2本の縦糸ヤーン2を通過し、かつ、裏面6において、1本の縦糸ヤーン2の下を通過している。
図5は、細菌バイオポリマー層4が、本発明の方法の工程eにおいて、例えば、織布1の表面5から、完全に除去された状態を示している。
【0156】
図5は、表面5において、濃く着色された第1部分7、僅かに着色された(即ち、第1部分7より明かるい色合いで染色された)第2部分、及び実質的に着色されていない、即ち染色されていない第3部分9を有する処理布100を示している。
図5は、第3部分9が、表面5の大部分を被覆している処理布100の一態様を示している。処理布100は、濃く染色された第1部分7、及び第1部分7より明るい色合いの染料で着色された第2部分を有している。
【0157】
従って、
図5に示す処理布100は、十分に染色されていないで、強く染色された部分(即ち、第1部分7)、及び僅かに着色された部分(即ち、第2部分8)を示しており、「ダーク-オン-ライト」色合い効果、即ち「ダーク-オン-ライト」調の着古し外観を呈している。
【0158】
例えば、細菌バイオポリマー層4(本発明の方法の工程eで除去された)が、第1部分7に対応する厚さT1、第2部分8に対応する厚さT2>T1、及び第3部分9に対応する厚さT3>T2>T1を有している場合に、
図5に示す処理布100を得ることができる。
【0159】
例えば、様々な厚さTを有する細菌バイオポリマー層4は、前記バイオポリマーを、布の表面、即ち、織布1の表面5で、直接成長させる(即ち、製造する)ことによって、得ることができる。
【0160】
この場合、
図5に示すように、細菌バイオポリマー層4の厚さTがT3である場合、実質的に全ての染料が、細菌バイオポリマー層4に吸収される。換言すれば、染料は、実質的に、織布1の表面(例、表面5)にまで達しない。従って、実質的に着色されていない第3部分9を有する処理布100が形成される。
【0161】
更に、細菌バイオポリマー層4の厚さTがT2である場合、極く僅かの部分の染料が、織布1の表面(例、表面5)にまで達し、僅かに着色された第2部分8を有する処理布100が形成される。更に、細菌バイオポリマー層4の厚さTがT1の場合、実質的に全ての染料が、織布1の表面5にまで達し、濃く着色された第1部分7を有する処理布100が形成される。
【0162】
前述したように、
図5は、
図4と同じように、本発明による処理布100を模式的に示しているということを理解されるべきである。その理由は、染料が、細菌バイオポリマー層4の厚さTの全体に亘って、様々に浸透しているので、本発明による処理布100は、多種多様の色合い(即ち、多重色合い効果)を示しているからである。
【0163】
図6は、本発明の方法によって得られる、即ち、細菌バイオポリマー層4の少なくとも一部が、複合布10から除去された後の、縦糸ヤーン2及び横糸ヤーン3、並びに表面5と裏面6を有している処理布100の例示的な態様を示す斜視図である。
【0164】
図6は、本発明の方法の工程eにおいて、細菌バイオポリマー層4が、複合布10、例えば、織布1の表面5から、完全に除去された状態を示している。
【0165】
図6は、第2部分8が処理布100の表面5の大部分を被覆している処理布100の一態様を示している。処理布100は、濃く染色された第1部分7、及び実質的に染色されていない第3部分9を有している。
【0166】
従って、
図6に示す処理布100は、実質的に、「僅かに染色」されており、濃く染色された部分(即ち、第1部分7)、及び、実質的に染色されていない部分(即ち、第3部分9)を示しており、「混合」色合い効果、即ち「ダーク-オン-ライト」色合い効果、及び「ライト-オン-ダーク」色合い効果、例えば、「混合」調着古し外観を示している。
【0167】
例えば、
図6に示す処理布100は、細菌バイオポリマー層4(本発明の方法の工程eで除去された)が、第1部分7に対応する厚さT1、第2部分8に対応する厚さT2>T1、及び第3部分9に対応する厚さT3>T2>T1を有している場合に得ることができる。例えば、多様な厚さTを有する細菌バイオポリマー層4は、布の表面、即ち、織布1の表面5で、前記バイオポリマーを、直接、成長(即ち、製造)させることによって得ることができる。この場合、
図6に示すように、細菌バイオポリマー層4の厚さがT3の場合、染料が、実質的に、織布1の表面(即ち、表面5)に到達せずに、実質的に染色されていない第3部分9を有する処理布100を得ることができる。細菌バイオポリマー層4の厚さがT1の場合、実質的に、全ての染料が、織布1に到達し、濃く染色された第1部分7を有する処理布100を得ることができる。
【0168】
更に、細菌バイオポリマー層4の厚さがT2の場合、極僅かの量の染料が、織布1の表面(即ち、表面5)に到達し、僅かに着色された第2部分8を有する処理布100を得ることができる。
【0169】
図7は、本発明の方法によって得られる、即ち、細菌バイオポリマー層4の少なくとも一部が複合布10から除去された後の、縦糸ヤーン2及び横糸ヤーン3、及び表面5並びに裏面6を有する処理布100の例示的な態様を示す斜視図である。
【0170】
図7は、本発明の方法の工程eにおいて、細菌バイオポリマー層4が、複合織布10、例えば、織布1の表面5から、部分的に(即ち、完全に除去ではなく)除去された態様を示している。
【0171】
図7は、残存している細菌バイオポリマー層4が、処理布100の表面5に存在していることを示している。前記残存細菌バイオポリマー部分4aは、染色されている。
【0172】
図7に示す態様は、処理布100の表面5の大部分を被覆している第3部分9を示している。換言すれば、処理布100の前表面の大部分は染色されていない。処理布100は、濃く染色された第1部分7、及び僅かに着色された(即ち、第1の部分7に比べて、より明るい色合いで染色された)第2部分8を有している。
【0173】
処理布100に、染色された残存細菌バイオポリマー部分4aがあると、更なる「視覚効果」を発揮し、染色された細菌バイオポリマー層4の特有の色合いが、処理布100の他の全ての色合い効果と組み合わさる。更に、染色された残存細菌バイオポリマー部分4aがあると、細菌バイオポリマー層4が、完全に除去された布の手触り感とは、異なる手触り感をもった処理布100が提供される。処理布100において、残存細菌バイオポリマー層4の量が変化すると、多様な手触り感効果を得ることができる。
【0174】
図8は、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200を、メッシュワイヤー300を通して、例示的な織布1に散布している本発明の方法の一態様を示している。織布1は、縦糸ヤーン2及び横糸ヤーン3、及び表面5並びに裏面6を有している。
図8に示す織布1は、染色されていない。
図8に示す本発明の方法の態様では、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200は、メッシュワイヤー300を通して、散布手段201により、例示的な織布1に散布されている。メッシュワイヤー300は、織布1と散布手段210の間に置かれている。メッシュワイヤー300は、メッシュワイヤー構造体301を有していて、メッシュワイヤー窓302を形成している。
【0175】
細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200を、メッシュワイヤー300を通して、散布することにより、細菌バイオポリマー生産性微生物が、織布1に不均質に分散される。例えば、細菌バイオポリマー生産性微生物のパターン分散を得ることができ、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200と接触している部分と、散布された細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200と接触していない部分とが混在した織布1が形成される。メッシュワイヤー300は、どのような材料からでも製造される。細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物の適用は、スクリーン印刷によって行なわれる。即ち、メッシュワイヤー300を、織布1の表面に置いて、織布1の幾つかの部分を「隠す」、即ち、織布1の幾つかの部分を、メッシュワイヤー構造体301の下に置く。メッシュワイヤー構造体301で「隠された」織布1の幾つかの部分は、散布手段201から散布された細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200と、実質的に接触されない。
【0176】
散布された細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200は、織布1を隠していないメッシュワイヤー300のメッシュワイヤー窓302を貫通して織布1に達し、メッシュワイヤー窓302に対応している織布1は、散布手段201によって散布された細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200と自由に接触する。
【0177】
上述したように、細菌バイオポリマー生産性微生物を、織布1の上で、直接培養することにより、織布1の上で、細菌バイオポリマー層4を、直接成長させる(即ち、生産する)ことが出来る。
【0178】
本発明の例示的態様において、細菌バイオポリマー生産性微生物の、織布1への分散は、不均質分散であるので、不連続(即ち、断続的)な細菌バイオポリマー層4が形成される。
【0179】
例えば、上述したように、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200を、メッシュワイヤー300から散布することによって、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200と接触している部分と、散布された細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200と接触していない部分とを有する織布1を得ることができる。この場合、不連続(即ち、断続)細菌バイオポリマー層4が得られ、従って、不連続(即ち、断続)細菌バイオポリマー層4を有する複合織布10が形成される。換言すれば、細菌バイオポリマー層4で被覆された部分と、細菌バイオポリマー層4で被覆されていない部分が形成された織布1を得ることができる。
【0180】
特に、織布1において、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200と接触している部分は、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200が、織布1に散布される時、メッシュワイヤー窓302と対応している織布1の部分である。この様な部分は、織布1の上で微生物が培養された後に、複合織布10において、細菌バイオポリマー層4が形成された部分となる。
【0181】
他方、織布1が、メッシュワイヤー構造体301で隠されている場合、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200が、織布1に散布される時、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200は、実質的には、織布1と接触しない。従って、細菌バイオポリマー層4は製造されないで、細菌バイオポリマー層4を備えていない部分を有する複合織布10が製造される。好ましくは、細菌セルロースが、織布の上で成長して、染色する前、即ち、約10~23時間、例えば、14~18時間前に、メッシュワイヤー300は除去される。
【0182】
図9は、不連続な細菌バイオポリマー層4を備える複合織布10の一例の一部を示す斜視図である。
図9の例示的な複合織布10は、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物200を、メッシュワイヤー300を通して、織布1に散布し、その後、メッシュワイヤー300を除去せずに、細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物を、織布1の上で培養することによって製造される。前記メッシュワイヤー300は、細菌バイオポリマー層4の「成長」が、望ましい程度に完了した後で、かつ、細菌バイオポリマー層4が、少なくとも部分的に、織布又はヤーンから除去される前に除去することが好ましい。
【0183】
織布1は、不連続な細菌バイオポリマー層4と結合して、複合織布10を形成する。
図9の複合布10の例示的態様は、その表面5において、不連続な細菌バイオポリマー層4と結合している織布1を有している。
【0184】
図9には、織布1の裏面6も示してある。この場合、織布1の裏面6は、複合織布10の裏面に対応する。
【0185】
図9の態様において、細菌バイオポリマー層4は、不連続均質層として、模式的に示してある。即ち、
図9の細菌バイオポリマー層4は、「不連続」である。その理由は、細菌バイオポリマー層4は、織布1の表面5を「断続」的に被覆、即ち、細菌バイオポリマー層4を有していない部分を残しながら、被覆しているからである。
図9の細菌バイオポリマー層4は、その全面に亘って、同じ厚さTを維持しているので、「均質」である。
【0186】
本発明の幾つかの態様において、細菌バイオポリマー層4は、不連続均質層、即ち、断続層であって、細菌バイオポリマー層4の全体に亘って、多様な厚さTを有している。
【0187】
図9は、染色されていない、即ち、未だ染色工程を受けていない複合織布10の一例を示している。
図10は、不連続、均質な細菌バイオポリマー層4を有している例示的な複合織布10の一部を示す斜視図である。特に、
図10は、染色した後の複合織布10を示している。
図10の複合織布10の例示的な態様では、その表面5に、厚さTの不連続均質な細菌バイオポリマー層4を有している織布1を含んでいる。
【0188】
織布1の裏面6は、
図10に示してある。この場合、織布1の裏面6は、複合織布10の裏面に相当する。
【0189】
図10の態様では、細菌バイオポリマー層4は、不連続細菌バイオポリマー層4であり、織布1において、細菌バイオポリマー層4と結合していない(即ち、「細菌バイオポリマー層4で被覆されていない」)部分は、細菌バイオポリマー層4と同じように、染色されていない。
【0190】
図11は、本発明の方法によって得られた織布1の例示的態様を示す斜視図である。その後、細菌バイオポリマー層4の少なくとも一部が、複合織布10から除去される。
図11は、縦糸ヤーン2及び横糸ヤーン3、並びに表面5及び裏面6を有する処理布100を示している。
【0191】
図11は、細菌バイオポリマー層4が、織布1から完全除去されてしまい、かつ、複合織布10の細菌バイオポリマー層4が、たとえば、
図9及び
図10に示す複合織布10におけるように、不連続層である場合に得られる態様を示している。
【0192】
図11に示す処理布100では、その表面5において、濃く着色された第1部分7、僅かに着色された(即ち、第1部分7に比べて明るい色合いで染色された)第2部分、及び実質的に着色されていない(即ち、染色されていない)第3部分9を示している。
【0193】
図11は、第1部分7が、細菌バイオポリマー層4と結合していない部分、即ち、細菌バイオポリマー層4の厚さTがゼロである部分に対応している処理布100の一態様を示している。更に、
図11の処理布100は、第1部分7に比べて明るい色合いの染料で着色された第2部分8、及び実質的に染色されていない第3部分9を示している。
【0194】
第3部分9は、例えば、複合織布10に適用された染料が、細菌バイオポリマー層4に完全に吸収されるため、織布1に到達しないで、染色されないままである場合に得られる。
【0195】
第2部分8は、例えば、複合織布10に適用された染料部分が、織布1に到達し、細菌バイオポリマー層4が除去された場合、第1部分7に比べて、より明るい染料の色合いで着色された第2部分8を有する処理布100として形成される場合に得られる。第1部分7は、例えば、複合織布10に適用された染料の大部分が、織布1に達する場合に得られる。
【0196】
図11は、本発明による処理布100の斜視図である。本発明の処理布100は、陰影に富んだ外観をもっている。即ち、染料が、様々な深さで、細菌バイオポリマー層4の全体、即ち、細菌バイオポリマー層4の厚さT全体に浸透するので、処理布100は多種多様な色むらを有している。
【0197】
前述したように、このことは、細菌バイオポリマー層4が、細菌バイオポリマー層4の全体に亘って、同じ厚さTを有していない場合、即ち、厚さTが、細菌バイオポリマー層4の異なる部分で、異なる値(例:T1、T2、T3)であると見做した場合、即ち、細菌バイオポリマー層4が不均質である場合の本発明の態様において言えることである。
【0198】
更に、色むらの数は、細菌バイオポリマー層4が不連続の場合の態様において増加する。実際、複合織布10が吸収する染料の量は、細菌バイオポリマー層4の厚さによって、実質的に決定される。特に、厚さTが厚くなればなる程、染料の取り込み量は、多くなる。換言すれば、複合織布10が、多様な厚さTを有する細菌バイオポリマー層4を有する場合、多様な量の染料が、織布1の表面(即ち、例えば、表面5)に達する。
【0199】
例えば、細菌バイオポリマー層4の厚さTが大きい場合、殆ど又はゼロの染料が、織布1の表面(即ち、例えば、表面5)に達し、僅かに着色された第2部分8、及び/又は実質的に着色、即ち染色されていない第3部分9を有する処理布100が形成される。
【0200】
他方、例えば、細菌バイオポリマー層4の厚さTが小さい場合、又は細菌バイオポリマー層4が無い場合(例えば、細菌バイオポリマー層4が不連続)の場合、大量の染料が、織布1の表面(即ち、例えば、表面5)に達し、濃く着色された第1部分7を有する処理布100が形成される。
【実施例】
【0201】
以下の実施例は、本発明による処理布の例示的製造方法を示している。以下の実施例は、単なる例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0202】
濃度2×104個細胞のGluconacetobacter hanseniiの培養液25mLを、本発明によるサンプルの織布の表面の培養液に散布した。使用した培養液は、2%(w/v)のグルコース、0.5%(w/v)のペプトン、0.5%(w/v)の酵母抽出物、0.27%(w/v)Na2HPO4、及び1.15g/Lクエン酸を含むHestrin-Schramm(HS)培地中のGluconacetobacter hanseniiの培地である。
実施例で使用した本発明による織布の例は以下の通りである。
【0203】
1.「硬質(Rigid)」-12oz 100%コットン:
縦糸ヤーン:Ne 7/1~10/1
横糸ヤーン:Ne 8/1~10/1
布帛の縦糸密度:25~28スレッド/cm
布帛の横糸密度:17~20ピック/cm
織布の質量:640~670g/cm
織布の表面の面密度:407~423g/cm2
織布、特に縦糸ヤーンに使用し得る材料:コットン;コットンと他のステープルファイバーとの混合;又はコットンを含まないステープルファイバー(コットン/テンセル(Tencel(登録商標)),コットン/モダール繊維,コットン/PES,コットン/竹(Bamboo)繊維、100%PES、100% テンセル(Tencel(登録商標)),モダール繊維又はテンセル(Tencel(登録商標))/モダール繊維 混合)。
【0204】
2.[Comfort]-12oz コットン/エラスタン(18%-25% 伸縮率)
縦糸ヤーン:Ne 7/1~10/1
横糸ヤーン:Ne 10/1~12/1
布帛の縦糸密度:17~21スレッド/cm
布帛の横糸密度:17~21ピック/cm
織布の質量:500~550g/cm
織布の表面の面密度:407~423g/cm2
織布、特に縦糸ヤーンに使用し得る材料:コットン;コットンと他のステープルファイバーとの混合;又はコットンを含まないステープルファイバー(コットン/テンセル(Tencel(登録商標)),コットン/モダール繊維,コットン/PES,コットン/竹(Bamboo)繊維、100%PES、100% テンセル(Tencel(登録商標))、モダール繊維又はテンセル(Tencel(登録商標))/モダール繊維 混合)。
【0205】
3.[Supper stretch]-12oz コットン/エラスタン(40%-65% 伸縮率):
縦糸ヤーン:Ne 9/1~12/1
横糸ヤーン:Ne 15/1~18/1
布帛の縦糸密度:29~32スレッド/cm
布帛の横糸密度:20~24ピック/cm
織布の質量:464~490g/cm
織布の表面の面密度:407~423g/cm2
織布、特に縦糸ヤーンに使用し得る材料:コットン;コットンと他のステープルファイバーとの混合;又はコットンを含まないステープルファイバー(コットン/テンセル(Tencel(登録商標)),コットン/モダール繊維,コットン/PES,コットン/竹(Bamboo)繊維、100%PES、100% テンセル(Tencel(登録商標)),モダール繊維又はテンセル(Tencel(登録商標))/モダール繊維 混合)。
【実施例2】
【0206】
実施例1の細菌培養液を、織布に適用(散布)した後、織布を、20℃で16時間培養した。28℃において16時間後、織布の上に、厚さ0.5mm~1mm(平均厚さ0.75mm)の細菌セルロース層が形成された。即ち、複合織布を得た。
【実施例3】
【0207】
細菌-合成セルロースの成長が完了したら、実施例2で得た複合織布を、0.1MNaOHで、80℃で洗浄して、残留している細菌、及び細菌を含んでいる成長培地由来の全ての不純物を除去し、NaOCl中で、20分間、複合織布から残留細菌を除去した。
残留している細菌、及び細菌を含んでいる成長培地由来の全ての不純物を除去した後、複合織布の表面、即ち細菌セルロース層がある面を、インディゴ、ピグメント、反応性硫黄染料から選択された染料、好ましくは、インディゴでプリント捺染するか、又は、複合織布を、従来のインディゴ染色(即ち、布の両面)で染(VAT染め)めた。
【実施例4】
【0208】
実施例3で得た染色済み複合布を、一つ以上の仕上げ技術によって仕上げ処理する。例えば、実施例3で得た染色済み複合布を、40℃、水で洗浄する。追加又は別法として、実施例3で得た染色済み複合布を、40℃で20分間、ストーンウォッシュ(即ち、軽石の存在下での洗濯)し、次いで、50℃、10分間、酵素洗濯をして、ストーンウォッシュで出た小さな毛玉(ピリング)を除去した。追加又は別法として、実施例3で得た染色済み複合布を、40℃で20分間、ストーンブリーチング処理した。追加又は別法として、実施例3で得た染色済み複合布を、レーザー処理した。前述した技術の1つ以上を使用して、細菌-合成セルロース層を除去して、本発明による処理布を得た。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明によって、従来の仕上げ処理では、達成できなかった改良された「使用済」又は「ビンテージ」或いは「着古した」ような外観、特に、従来の処理方法では得ることができなかった独特の着古した外観をもった、市場で望まれ、認知され、かつ、他の製品と容易に見分けがつく、いわゆる「オンリーワン」の織布が提供されるので、この織布の愛好者が増え、紡糸産業、紡織産業、染色産業はもとより、ファッション産業に、大いに資することができる。
【符号の説明】
【0210】
1:織布
2:縦糸ヤーン
3:横糸ヤーン
4:細菌バイオポリマー層
5:表面
6:裏面
7:第1部分
8:第2部分
9:第3部分
10:複合織布
100:処理布
200:細菌バイオポリマー生産性微生物の培養物
201:散布手段
300:メッシュワイヤー
301:メッシュワイヤー構造体
302:メッシュワイヤー窓
T:細菌バイオポリマー層4の厚さ
T1:第1部分7の厚さ
T2:第2部分8の厚さ
T3:第3部分9の厚さ
4a:残存細菌バイオポリマー部分