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特許7062378成膜抑制ガス排気のためのシャワープレート構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】成膜抑制ガス排気のためのシャワープレート構造
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20220425BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220425BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/31 C
H01L21/302 101B
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017109552
(22)【出願日】2017-06-01
(65)【公開番号】P2018138691
(43)【公開日】2018-09-06
【審査請求日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】15/380,557
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512144771
【氏名又は名称】エーエスエム アイピー ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】山田 令子
(72)【発明者】
【氏名】川原 潤
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和男
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-065272(JP,A)
【文献】特開2016-039356(JP,A)
【文献】特開平05-166734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
H01L 21/31
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス入口ポートと、シャワーヘッドと、加工物支持部と、反応チャンバと、排気ダクトとを備えるプラズマ成膜装置に組み込むように適合されたシャワープレートであって、
前記シャワープレートは、前記シャワーヘッドに取り付けられるように適合され、該シャワープレートは、
前記ガス入口ポートと対向する前表面と、
前記前表面とは反対側にある後表面と、を有し、
前記シャワープレートは、ガスを通過させるため、前記前表面から前記後表面へ延びる複数の開口部を備え、
前記排気ダクトは、前記シャワープレートの前記後表面側にある前記反応チャンバと排気ポンプとを接続し、
前記シャワープレートは、さらに、副産物ガスを通過させるため、該シャワープレートの前記前表面側から前記排気ダクトまで延びる少なくとも1つの開口部を備える、シャワープレート。
【請求項2】
前記シャワープレートは、さらに、該シャワープレートの前記前表面側に段部を備え、前記前表面は周囲を前記段部に取り囲まれており、少なくとも1つの開口部が前記段部の表面から前記排気ダクトまで延びる、請求項1に記載のシャワープレート。
【請求項3】
前記段部の前記表面から前記排気ダクトまで延びる少なくとも1つの開口部は、前記段部の前記表面と垂直な方向に対して傾斜している、請求項2に記載のシャワープレート。
【請求項4】
前記シャワープレートの前記前表面に対する少なくとも1つの開口部の傾斜角が、0-90度の範囲にある、請求項3に記載のシャワープレート。
【請求項5】
前記シャワープレートは、前記シャワープレートの前記前表面から前記排気ダクトまで延びる少なくとも1つの開口部を備える、請求項1に記載のシャワープレート。
【請求項6】
前記シャワープレートの前記前表面から前記排気ダクトまで延びる少なくとも1つの開口部は、前記シャワープレートの前記前表面と垂直な方向に対して傾斜している、請求項5に記載のシャワープレート。
【請求項7】
前記シャワープレートの前記前表面に対する少なくとも1つの開口部の傾斜角が、0-90度の範囲にある、請求項6に記載のシャワープレート。
【請求項8】
前記シャワープレートは、該シャワープレートの前記前表面の縁部又は該前表面の該縁部から内側に2mm以内の場所から前記排気ダクトまで延びる少なくとも1つの開口部を備える、請求項5に記載のシャワープレート。
【請求項9】
前記シャワープレートは、該シャワープレートの前記前表面の縁部付近から前記排気ダクトまで延びる少なくとも1つの開口部を備える、請求項5に記載のシャワープレート。
【請求項10】
前記シャワープレートは、該シャワープレートの前記前表面側から前記排気ダクトまで延びる複数の開口部を備え、該複数の開口部は周囲に実質的に均一に配置されている、請求項1に記載のシャワープレート。
【請求項11】
前記シャワープレートは、該シャワープレートの前記前表面側から前記排気ダクトまで延びる90から120の範囲の数の開口部を備える、請求項1に記載のシャワープレート。
【請求項12】
前記シャワープレートは、さらに、副産物ガスを該シャワープレートの前記前表面側から前記排気ダクトまで間接的に通過させるために、前記シャワープレートの前記前表面の縁部又は該縁部から内側に2mm以内の場所から該シャワープレートの後表面まで延びる少なくとも一つの開口部を備える、請求項1に記載のシャワープレート。
【請求項13】
前記シャワープレートは、さらに、副産物ガスを該シャワープレートの前記前表面側から前記排気ダクトまで間接的に通過させるために、前記シャワープレートの前記前表面の縁部付近から該シャワープレートの後表面まで延びる少なくとも一つの開口部を備える、請求項1に記載のシャワープレート。
【請求項14】
前記シャワープレートの前記前表面の縁部付近から該シャワープレートの後表面まで延びる少なくとも1つの開口部の方向は、それぞれが前記前表面から前記後表面まで延びる前記複数の開口部の方向と実質的に同一である、請求項13に記載のシャワープレート。
【請求項15】
前記シャワープレートの前記前表面の縁部付近から該シャワープレートの前記後表面まで延びる少なくとも1つの開口部は、前記シャワープレートの前表面と垂直な方向から傾斜している、請求項13に記載のシャワープレート。
【請求項16】
前記シャワープレートの前記前表面に対する少なくとも1つの開口部の傾斜角が、0-90度の範囲にある、請求項15に記載のシャワープレート。
【請求項17】
請求項1に記載のシャワープレートを備える、基板処理装置。
【請求項18】
ガス入口ポートと、
シャワーヘッドと、
加工物支持部と、
反応チャンバと、
前記反応チャンバと排気ポンプとを接続する排気ダクトと、
該シャワーヘッドに取り付けられるシャワープレートと、を備える処理装置であって、該シャワープレートは、
前記ガス入口ポートと対向するよう適合された前表面と、
前記前表面とは反対側にある後表面と、有し、
前記反応チャンバは、前記シャワープレートの前記後表面側にあり、
前記シャワープレートは、ガスを通過させるため、前記前表面から前記後表面へ延びる複数の開口部を備え、
前記シャワープレートは、さらに、副産物ガスを通過させるため、該シャワープレートの前記前表面側から前記排気ダクトまで延びる少なくとも一つの開口部を備える、処理装置。
【請求項19】
前記シャワープレートは、さらに、該シャワープレートの前記前表面側に段部を有し、前記前表面は前記段部により周囲を取り囲まれており、前記少なくとも1つの開口部は、前記段部の表面から前記排気ダクトまで延びている、請求項18に記載の処理装置。
【請求項20】
前記処理装置が加工物上に物質を堆積させるように構成された、請求項18に記載の処
理装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
【0002】
本願発明は、半導体製造処理で用いられるプラズマ成膜装置に一般的に関連し、特に、当該装置に提供されるシャワープレート構造に関するものである。
【背景技術】
【0003】
プラズマエンハンストCVD(PECVD)及びプラズマエンハンストALD(PEALD)処理は、一般的に、半導体ウェハのような基板のパターン表面に膜を形成するために用いられる。これらの処理では、典型的に、基板を収容するチャンバにプリカーサガス又は混合ガスを導入することによってなされる。プリカーサガス又は混合ガスは、通常、チャンバ内上部付近に設置されたシャワープレートを介して下方向に方向付けられる。
【0004】
チャンバ内に導入されるプリカーサガス又は混合ガスは、次に、チャンバと接続されている一つ又は複数の高周波パワー源(RFパワー源)から当該チャンバに加えられる高周波パワー(RFパワー)により、活性化又は励起されてプラズマ状態にされる。プラズマ状態に励起されたガス又は混合ガスは化学反応を起こして、温度制御された基板支持部に配置されている基板の表面に物質層を形成する。この化学反応の間に生成される副産物(例えば、成膜抑制ガス)は、排気システムを通って当該チャンバから吸い出される。
【0005】
図1は、ガス入口空間を画定するシャワープレート構造2及びシールドプレート3を備えた従来のシャワーヘッド1の外観を示している。シャワープレート構造2とシールドプレート3は互いにネジ5で固定されている。Oリング(オーリング)4は、シャワープレート構造2及びシールドプレート3の間に取り付けられている。ガス入口空間内のプリカーサガス又は混合ガスは、シャワープレート構造の多数の開口部を経由してチャンバに導入される。
【0006】
本開示に含まれている背景技術の議論は、本願発明の背景を提供する目的のためだけのものであって、「上記議論の一部又は全部が先行技術の一部を成している」ことを自認したもの、或いは「上記議論の一部又は全部が、本願発明の時点で、周知であった」ことを自認したもの、と解釈されてはならない。
【発明の概要】
【0007】
近年、シャワープレート構造の改良により、パターン表面上の成膜方法が提案されている。パターン表面上に膜を均一に形成する要求は益々強まっているが、従来型のシャワーヘッドを用いた成膜ではこの要求に応えることは困難である。その理由の一つは、シャワープレート構造とシールドプレートとの間(例えば、ガス入口空間の両端部及びOリング(オーリング)4の周囲領域)に残存する副産物の問題であり、この残存副産物は基板表面上の均一な成膜に悪影響を及ぼす。かくして、基板表面上の均一な膜形成の向上に資するために、このような残存副産物をシャワーヘッドとチャンバの外に排出することができるシャワーヘッドの開発が重要になってきている。
【0008】
本願発明の一実施形態では、ガス入口ポートと、シャワーヘッドと、加工物支持部と、反応チャンバと、排気ダクトとを備えるプラズマ成膜装置に組み込むように適合されたシャワープレートであって、前記シャワープレートは、前記シャワーヘッドに取り付けられるように適合され、該シャワープレートは、前記ガス入口ポートと対向する前表面と、前記前表面とは反対側にある後表面とを、有し、前記シャワープレートは、ガスを通過させるため、前記前表面から前記後表面へ延びる複数の開口部を備え、前記シャワープレートは、さらに、副産物ガスを通過させるため、該シャワープレートの前記前表面側から前記排気ダクトまで延びる少なくとも一つの開口部を備える。
【0009】
本願発明の一実施形態では、シャワーヘッドは、シャワープレートの前表面側に段部を有し、当該前表面はその周囲(例えば、周方向)を段部(段差部ともいう)により取り囲まれており、少なくとも1つの開口部が当該段部から排気ダクトに延びている。本願発明の一実施形態では、当該シワープレートは、その前表面から当該排気ダクトまで延びる少なくとも1つのの開口部を備える。
【0010】
本願発明の態様及び本願発明により達成される関連技術に対する優位性を要約する目的で、本開示は本願発明の対象物及び優位性を説明している。当然ながら、「これらの対象物及び優位性は、必ずしも本願発明の特定の実施例に従ってのみ達成可能であるという訳ではない」と理解するべきものである。かくして、例えば、当業者は、「本願発明は、本書面で教示されている一つの優位性又は一群の優位性を達成するような又は最適化するような態様で実施又は実行され得る。その際に、本書面で教示された又は示唆された一つ又は複数の他の目的又は他の優位性を達成することを必須としない」ことを認識するであろう。本願発明のさらなる態様・特徴・優位性は以下の詳細説明の中で明らかになるであろう。
【0011】
本書面で開示されているシステムと方法の他の目的・特徴・特性、並びに操作方法及び構造上の関連要素の機能と部品の組合せ及び製造上の経済性は、添付図面を参照しつつ下記説明と付属の請求項を考慮することによって、より明確になるであろう。これらの図面は、全て本出願の一部を成しており、そこでは、数字番号は、参照と同様に、種々の形状の対応部品を指定している。しかし、「上記図面は図示及び説明のためだけのものであって、本願発明の範囲を画定することを意図するものではない」ことは明示的に理解されるべきである。本仕様書及び請求項で使用されている如く、不定冠詞及び定冠詞の付いた指示物は、文脈上明らかに他の意味がある場合を除き、それぞれ複数形の指示物を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本願発明の上記及びその他の特徴を、好ましい実施形態の設計図を参照して、説明する。但し、これらの実施形態は本願発明を実例説明するためであって、本願発明をこれらの実施形態に限定するためではない。上記設計図は、実例説明の目的上過度に単純化されており、必ずしも一定の縮尺で示されたものではない。
図1図1は、シャワープレート構造とシールドプレートを備えた従来型シャワーヘッドの概略図である。
図2図2は、一実施形態による基本構造を示すプラズマエンハンストALD(PEALD)装置の概略図である。
図3図3は、段部に複数の開口部を有するシャワープレート構造の一実施形態の概略図である。
図4図4は、第1例の場合の基板表面に形成された膜の各場所における厚さの比を示す図である。
図5図5は、段部に複数の開口部を有するシャワープレート構造の一実施形態の概略図である。
図6図6は、段部に複数の開口部を有するシャワープレート構造の一実施形態の概略図である。
図7図7は、第3例の場合の基板表面に形成された膜の各場所における厚さの比を示す図である。
図8図8は、前側シャワープレートの斜視図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明は、下記の実施形態を含むが、それらの実施形態に限定されない。
【0014】
処理の一例として、膜を形成させるためにシャワープレートがいつどのように使用されるかをより良く理解できるよう、プラズマエンハンストALD(PEALD)処理が説明される。勿論のことながら、シャワープレートは、プラズマエンハンストCVD(PECVD)処理において、代替的に又は追加的に使用することが可能である。しかし、本願発明の実施形態は、プラズマエンハンストALD(PEALD)処理及びプラズマエンハンストCVD(PECVD)処理における使用に限定されない。
【0015】
上記説明の如く、シャワープレートはプラズマエンハンストALD(PEALD)処理及びプラズマエンハンストCVD(PECVD)処理において使用可能である。プラズマエンハンストALD(PEALD)処理においては、基板又は加工物は反応チャンバ内に置かれ、交互に繰り返して表面反応に晒される。シリコン窒化膜は自己制御式ALDサイクルの繰り返しにより形成される。シリコン窒化膜の形成には、それぞれのALDサイクルが少なくとも二つの異なるフェーズを含むことが望ましい。
【0016】
反応物質の反応スペースへの導入とそこからの除去は一つのフェーズであると考えることが可能である。一つのフェーズにおいて、シリコンを含む反応物質が導入されて、それが基板表面に僅かに大体一つの単分子層を形成する。この反応物質は、本実施例中、「シリコンプリカーサ」、「シリコン含有プリカーサ」、「ハロゲン含有シリコンプリカーサ」、「シリコン反応物質」と称され、化学記号で示せば、例えば、H2SiI2、(SiI2)(NH2)2、(SiI2)(NHMe)2 、(SiI2)(NHEt)2、(SiI2)(NHiPr)2、(SiI2)(NHtBu)2、(SiI2)(NMe2)2、(SiI2)(NMeEt)2、(SiI2)(NMeiPr)2、(SiI2)(NMetBu)2、(SiI2)(NEt2)2、(SiI2)(NEtiPr)2、(SiI2)(NEttBu)2、(SiI2)(NiPr2)2、(SiI2)(NiPrtBu)2及び(SiI2)(NtBu)2である。
【0017】
上記とは別のフェーズに於いて、反応種を含む別の反応物質が導入され、それが吸着されたシリコンを窒化シリコンに転換する。この反応物質は窒素プリカーサを含むことが可能である。この反応種は励起種を含むことが可能である。希ガスからの反応種は必ずしも成膜に大きく寄与するという訳ではないが、ある状況では膜の成長に寄与し、且つプラズマの生成と点火を助ける働きをする。いくつかの実施形態では、プラズマを生成するために使われるガスは上記膜形成中、定常的に流れるが、活性化されるのは断続的にのみである。
【0018】
膜の最終的組成を調整するために望ましければ、それに応じてフェーズを追加することもフェーズを取り除くことも可能である。キャリア・ガス(例えば、アルゴン又はヘリウム)の助けを借りて、少なくとも1つの反応物質を導入することも可能である。シリコンプリカーサと上記の別の反応物質はキャリア・ガスの助けを借りて、導入される。上記二つのフェーズを重ねることも可能であるし、又は二つのフェーズを組み合わせることが可能である。例えば、シリコンプリカーサと上記の別の反応物質は、部分的に又は完全に重なるパルスで同時に導入することが可能である。さらに、第一のフェーズと第二のフェーズ、第一の反応物質と第二の反応物質と称しているが、これらのフェーズの順序は変更可能であり、ALDサイクルは任意のフェーズから始める事が可能である。要するに、特に指定されない限り、反応物質は任意の順序で導入可能であり、上記処理は任意の反応物質で始める事が可能である。
【0019】
次に、プラズマ成膜装置の構成の詳細を説明する。
【0020】
プラズマ成膜装置の例として、図2は、PEALD装置の一実施形態の概略図を示している。既に述べたように、シャワープレートは、プラズマエンハンストCVD(PECVD)処理に於いて追加的に又は代替的に使うことが出来、或いは、PEALDやPECVDとは全く別の処理において使用することができる。図2に示すように、PEALD装置100は、真空チャンバ(反応室)10、真空チャンバ10の上部に設けられ且つ真空チャンバそのものからは絶縁されているシャワーヘッド11、真空チャンバ10の内部に設けられ且つシャワーヘッドと略平行なサセプタ50、及び、シャワーヘッド11に取り付けられたガスダクトに連結されたRFパワー源7及び8から成っている。
真空チャンバ10は、その側面部分に排気弁49を備えた隙間を有し、排気ポンプ(図示せず。)に連結した排気ダクト34(排気ポート)を含む。さらに、真空チャンバ10は接地されており、その内側側壁に基板を送るための仕切弁(図示せず。)を備えた隙間を有する。
【0021】
シャワーヘッド11は中空構造であって、その上方管状部は、ガス管(図示せず。)に連結されたガス導入口32(図示せず。)を含む。さらに、シャワーヘッドの底面に、シャワープレート構造12(シャワープレート)が着脱可能に取り付けられている。シャワープレート構造12内には、図3図5図7に示するように、多くのガス開口部(穴ないし孔)が設けられており、それにより、ガス導入口32から導入される原料ガス噴流がこれらの排出孔からサセプタ50に向かって放出される。ガス導入口32は、少なくとも部分的にシャワープレート構造12とシールドプレート13により画定されている。シャワープレート構造12を着脱可能に取り付けることにより、維持管理がより容易になり、部品交換等の費用も削減可能となる。サセプタ50は、その下端部のヒータ51に取り付けられている。サセプタ50は、シャワープレート構造12と略平行に配置され、その上部表面に置かれる基板16を保持する。
【0022】
図2に示すように、シャワープレート構造12とシールドプレート13は互いにネジ5で固定されており、これら二つの間にはOリング(オーリング)14が取り付けられている。一実施形態では、シャワーヘッド12はさらにその前表面側に段部18を有し、前表面領域20は周囲を(周方向に)段部18によって囲まれており、副産物ガスを排気ダクトの方向に通過させるための少なくとも1つの穴22(複数の穴であることが望ましい。)が当該段部18の表面から排気ダクト34に向けて延びている。図8はシャワープレート構造12の上部斜視図の概略図であり、このシャワープレート構造内部の複数の排気孔21、複数の開口部22、段部18及び前表面領域20が描写されている。
【0023】
成膜処理中に発生し、ガス導入口の先端の周囲及びOリングの周囲に漏れ出す(マイクロリークとも呼ばれる)副産物ガスは、基板表面に堆積する膜の厚みの均一性に悪影響を与える。しかしながら、図2に示すように、追加的に少なくとも1つの開口部22を段部18の表面から排気ダクト34まで形成することにより、問題となる副産物ガスを、段部18の上部に位置するOリングの周囲の領域から直接排気ダクト34に効率的に排出することが可能となる。一実施形態では、かかる副産物ガスを排出するために、シャワープレート12の段部18の縁部からシャワープレート12の後側にある排気ダクト34までの少なくとも1つの開口部を形成する。一実施形態では、段部18の側壁表面から排気ダクトまで延びる少なくとも1つの開口部22を形成する。この開口部は副産物ガスを通過させるのに効率的である。
【0024】
一実施形態では、段部の表面から排気ダクトまで延びる少なくとも1つの開口部は、段部表面と垂直な方向に対して傾斜していても良い。他の実施形態では、少なくとも1つの開口部は、シャワープレートの前表面から排気ダクトまで延びていても良い。シャワープレート前表面から排気ダクトまで延びる開口部は、シャワープレートの前表面と垂直な方向に対して傾斜していてもよい。
【0025】
一実施形態では、シャワープレートには、その前表面の縁部から延びる少なくとも1つの開口部、又は、その縁部の内側5mm以内の場所から延びる少なくとも1つの開口部を設けることが出来る。他の実施形態では、シャワープレートには、シャワープレートの前表面の縁部付近から排気ダクトまで延びる少なくとも1つの開口部を設けることが出来る。
【0026】
一実施形態では、シャワープレートには、代替的に又は追加的に、その前表面の縁部からその後表面まで延びる少なくとも1つの開口部、又はその縁部の内側5mm以内の場所からその後表面まで延びる少なくとも1つの開口部を設けることができる。この開口部は、副産物ガスをシャワープレートの前表面側から排気ダクトまで間接的に通過させるためのものである。これとは別の実施形態では、上記シャワープレートには、その前表面の縁部付近からその後表面まで延びる少なくとも1つの開口部を設けることができる。この開口部は、副産物ガスをシャワープレートの前表面側から排気ダクトまで間接的に通過させるためのものである。
【0027】
一実施形態では、シャワープレートの前表面の縁部付近からその後表面まで延びる開口部の方向は、前表面から後表面までそれぞれ延びている複数の開口部の方向と実質的に同一である。別の実施形態では、シャワープレートの前表面の縁部付近からその後表面まで延びる少なくとも1つの開口部は、前表面と垂直な方向に対して傾斜していてもよい。
【0028】
本願発明の複数の実施形態を、特定の例を参照して詳細に説明する。但し、これらの例は本願発明を限定するものではない。特定の例の中で使用されている数値は、プラス・マイナス50パーセント以上(上限点と下限点の数字含めても含めなくてもよい)の範囲内で修正可能である。
【実施例
【0029】
本願発明の一実施形態を下記の複数の例を参照して説明する。但し、これらの例は本願発明の範囲を限定するものではない。
【0030】
第1例
段部から排気ダクトまで延びる複数の開口部を備えたシャワープレート
【0031】
図3は、シールドプレート(シャワーヘッド)を備えたシャワープレート構造の一実施形態の概略図である。シャワーヘッド11はシャワープレート構造12とシールドプレート13を含み、これらはガス導入空間を部分的に画定している。シャワープレート構造12及びシールドプレート13は互いにネジ5で固定されており、これらの間には、Oリング14が取り付けられている。シャワープレート12は、その前表面側に段部18を有し、前表面領域20(前表面)は、周方向で段部18に取り囲まれている。副産物ガスを通過させるために、少なくとも1つの開口部22が段部18の表面から排気ダクトまで延びている。
【0032】
開口部22の構成
開口部の数:96個
直径:1mm
長さ:33.88mm
シャワープレートの前表面と垂直な方向に対する開口部の傾斜角度:51.5度
開口部の位置:段部の縁部
【0033】
ガス導入スペース内のプリカーサガス又は混合ガスは、シャワープレートの複数の開口部21を経由して反応チャンバ内に導入される。成膜処理中に生成され、ガス導入口の先端部付近及びOリング14付近に漏れ出す副産物ガス(マイクロリークとも呼ばれる)は、基板表面上に形成される膜の厚さの均一性に悪影響を及ぼす。
【0034】
この副産物ガスをOリング14付近の領域から排気ダクト34まで排気することにより、この問題を実質的に回避すること又は実質的に減少させることが可能であることが見出された。この副産物ガスを排気するために、シャワープレート12の段部18の縁部からシャワープレート後側の排気ダクト34まで延びる複数の開口部22(例えば、96個の開口部)を設ける。また、段部18の側壁表面から排気ダクトまで延びる少なくとも1つの開口部22も副産物ガスを通過させるのに効果的であることが見出された。
【0035】
図4はこれらの試験結果を示している。図4は基板表面に形成された膜のそれぞれの場所における厚み比を示したものである。灰色の諧調(グレースケール)で表された変化は厚み比の変化を示している。この試験結果の図では、各場所に於ける膜の厚みをその平均値との関係で示しており、平均値からのかい離はプラス・マイナス3%の範囲内にある。膜の厚みは、49か所で測定されており、これらの測定値に基づき厚みの平均値が算出されている。
【0036】
この結果から、膜の厚みの標準偏差の数値は、この例では1.0(1シグマ%)であり、膜の厚みの平均値は27.6nmである。この標準偏差の数値が小さくなればなるほど、膜の厚みの均一性は高まる。比較の目的のため、図1に示す従来型のシャワープレートでは、同一条件の下で(但し、本例で採用されている開口部22を除く)、膜の厚みの標準偏差の数値は28.1(1シグマ%)と計算されている。膜の厚みの標準偏差の数値が15.0(1シグマ%)又はそれより小さい場合、従来の成膜方法による膜と比較して、好ましい膜の質(即ち、薄膜の均一性)を表していると結論付けることが出来ることが見出された。膜の厚みの標準偏差の数値が10.0(1シグマ%)又はそれより小さい場合は、より一層好ましい膜の質(即ち、薄膜の均一性)を表していると結論付けることができることが見出された。
【0037】
第2例
前表面の縁部から排気ダクトまで延びる複数の開口部を有するシャワープレート
【0038】
図5は、シールドプレート(シャワーヘッド)を備えたシャワープレート構造の一実施形態の概略図である。シャワーヘッド11はシャワープレート構造12とシールドプレート13を含み、これらはガス導入空間を部分的に画定している。シャワープレート構造12及びシールドプレート13は互いにネジ5で固定されており、これらの間には、Oリング14が取り付けられている。シャワープレート12は、その前表面側に段部18を有し、前表面領域20(前表面)は、周方向で段部18に取り囲まれている。副産物ガスを通過させるために、少なくとも1つの開口部23がシャワープレート構造12の前表面20の縁部から排気ダクトまで延びている。
【0039】
開口部23の構成
開口部の数:96個
直径:1mm
長さ:31.93mm
シャワープレートの前表面と垂直な方向に対する開口部の傾斜角度:47.5度
開口部の位置:シャワープレートの前表面の縁部
【0040】
ガス導入スペース内のプリカーサガス又は混合ガスは、シャワープレートの複数の開口部21を経由して反応チャンバ内に導入される。成膜処理中に生成され、ガス導入口の先端部付近及びOリング14付近に漏れ出す副産物ガス(マイクロリークとも呼ばれる)は、基板表面上に形成される膜の厚さの均一性に悪影響を及ぼす。
【0041】
この副産物ガスをこれらの領域から排気ダクト34まで排気することにより、この問題を実質的に回避すること又は実質的に減少させることが可能であることが見出された。この副産物ガスを排気するために、複数の開口部23(例えば、96個の開口部)をシャワープレート12の前表面20の縁部から後表面30まで形成する。
【0042】
図示されてはいないが、本例の試験結果は得られており、その結果は基板表面に形成された膜の各位置における厚さ比の図として得られている。
【0043】
試験結果から、膜の厚みの標準偏差の数値は5.0(1シグマ%)、厚みの平均値は25nmと計算される。縁部から2mm以内で内側の前表面の場所から延びる複数の開口部を有するシャワープレート12は、上記と同様の標準偏差の数値を示すことが見出された。上述と同様に、この標準偏差の数値が小さくなればなるほど、薄膜の厚みの均一性は高くなる。比較の目的のため、図1に示す従来型のシャワープレートでは、同一条件の下で(但し、本例で採用されている開口部22を除く)、膜の厚みの標準偏差の数値は28.1(1シグマ%)と計算されている。膜の厚みの標準偏差の数値が15.0(1シグマ%)又はそれより小さい場合、従来の成膜方法による膜と比較して、好ましい膜の質(即ち、薄膜の均一性)を表していると結論付けることが出来ることが見出された。膜の厚みの標準偏差の数値が10.0(1シグマ%)又はそれより小さい場合は、より一層好ましい膜の質(即ち、薄膜の均一性)を表していると結論付けることができることが見出された。
【0044】
第3例
前表面の縁部から後表面まで延びる複数の開口部を有するシャワープレート
【0045】
図6は、シールドプレート(シャワーヘッド)を備えたシャワープレート構造の一実施形態の概略図である。シャワーヘッド11はシャワープレート構造12とシールドプレート13を含み、これらはガス導入空間を部分的に画定している。シャワープレート構造12及びシールドプレート13は互いにネジ5で固定されており、これらの間には、Oリング14が取り付けられている。シャワープレート12は、その前表面側に段部18を有し、前表面領域20(前表面)は、周方向で段部18に取り囲まれている。副産物ガスを通過させるために、少なくとも1つの開口部24がシャワープレート12の前表面20の縁部からシャワープレート12の後表面30まで延びている。
【0046】
開口部24の構成
開口部の数:102個
直径:1mm
長さ:25mm
開口部の位置:シャワープレートの前表面の縁部
【0047】
ガス導入スペース内のプリカーサガス又は混合ガスは、シャワープレートの複数の開口部21を経由して反応チャンバ内に導入される。成膜処理中に生成され、ガス導入口の先端部付近及びOリング14付近に漏れ出す副産物ガス(マイクロリークとも呼ばれる)は、基板表面上に形成される膜の厚さの均一性に悪影響を及ぼす。
【0048】
この副産物ガスをこれらの領域から排気ダクト34まで排気することにより、この問題を実質的に回避すること又は実質的に減少させることが可能であることが見出された。この副産物ガスを排気するために、複数の開口部24(例えば、102個の開口部)をシャワープレート12の前表面20の縁部から後表面30まで形成する。シャワープレート12の前表面の縁部から排気ダクト34まで直接排気する場合にこの排気効果はより顕著であるが、本例に示すように、副産物ガスは反応チャンバ10を経由して排気ダクト34に排気することも可能であることが見出された(間接排気)。
【0049】
図7はこれらの試験結果を示している。図7は基板表面に形成された膜のそれぞれの場所における厚み比を示したものである。灰色の諧調(グレースケール)で表された変化は厚み比の変化を示している。この試験結果の図では、各場所に於ける膜の厚みをその平均値との関係で示しており、平均値からのかい離はプラス・マイナス3%の範囲内にある。膜の厚みは、49か所で測定されており、これらの測定値に基づき厚みの平均値が算出されている。
【0050】
この結果から、膜の厚みの標準偏差の数値は、この例では13.7(1シグマ%)であり、膜の厚みの平均値は31.2nmである。この標準偏差の数値が小さくなればなるほど、膜の厚みの均一性は高まる。縁部から2mm内側の前表面の場所から延びる複数の開口部を有するシャワープレート12は、上記と同様の標準偏差の数値を示すことが見出された。上述と同様に、この標準偏差の数値が小さくなればなるほど、薄膜の厚みの均一性は高くなる。比較の目的のため、図1に示す従来型のシャワープレートでは、同一条件の下で(但し、本例で採用されている開口部24を除く)、膜の厚みの標準偏差の数値は28.1(1シグマ%)と計算されている。膜の厚みの標準偏差の数値が15.0(1シグマ%)又はそれより小さい場合、従来の成膜方法による膜と比較して、好ましい膜の質(即ち、薄膜の均一性)を表していると結論付けることが出来ることが見出された。
【0051】
本書面に於ける単数形又は複数形の用語の使用に関して、当業者は文脈上相応しいように単数形から複数形に読み直し、又はその逆に読み直すことが出来る。
【0052】
本開示のシステム及び方法の詳細な説明は一例を示す目的のためであって、現時点で最も実用的且つ好ましい実施例に基づくものであるが、かかる詳細はあくまで例を提示する目的のためであるから、本開示が開示された本実施例に限定されるものではなく、その逆に、本付属の請求項の精神と範囲内にある修正及び等価的配列を含むことが意図されていると理解されるべきである。例えば、本開示は、可能な限り、任意の実施例の特徴又は諸特徴を他の実施例の特徴又は諸特徴と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8